厚生労働省

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(照会先)

厚生労働省医薬食品局血液対策課

新村課長・林企画官・秋野補佐

(内2900)(内2901)(内2905)

平成21年4月17日

医薬食品局血液対策課

フィブリノゲン製剤等の納入先医療機関における製剤の使用実態及び当該製剤を使用された患者における肝炎ウイルス感染等の実態に関する研究について

1  調査研究の目的

○  フィブリノゲン製剤等の投与の事実が判明した方への投与の事実のお知らせの状況、診療録等の保管状況等については、厚生労働省から製剤の納入先医療機関に対し、既に調査が行われている。

○  本調査研究事業は、平成19年度より、上記調査結果を基礎として、製剤を投与された方の感染実態等について、医療機関の協力を得ながら、さらに追跡的により詳細な調査を行うもの。

平成20年度はフィブリノゲン製剤だけでなく血液凝固因子製剤も研究対象に加えた。

○  調査の過程を通じ、また、調査結果を公表することにより、製剤投与の事実が判明した方への投与の事実のお知らせと検査の受診勧奨の推進に資することを目的とする。

2  調査研究の概要

主任研究者:山口照英(国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部部長)

平成19年度に引き続き、納入先医療機関において、製剤が投与された元患者を特定するに至った診療録、手術記録・分娩記録等の記録の保管状況等について、実態調査を行った。

注1)協力費用は、1医療機関当たり10万円、調査対象者1人当たり3千円としている。

平成20年度には、納入先医療機関における、製剤の投与方法・投与時期やHCV感染者の状況等について、可能な限り追跡調査を行った。

注2)HCV感染者の調査協力費用は、調査対象者1人当たり4千円又は9千円としている。

フィブリノゲン製剤または血液凝固因子製剤の投与の事実が判明した方に対する調査結果

  フィブリノゲン製剤 血液凝固因子製剤
1  調査対象施設
741施設    (H19:644施設) 190施設
2  有効回答施設

530施設(71.5%)

(H19年度 475施設)

66施設(34.7%)
3  対象患者数

うち氏名が判明

8,799人  (H19:7,406人)

7,883人(89.6%)

862人

851人(98.7%)

4  投与経路

 

静脈注射

フィブリン糊

両者の併用

不明

H20

(%は8,799人中))

2,853人(32.4%)

3,846人(43.7%)

144人(1.6%)

1,630人(18.5%)

H19

(%は7,406人中)

2,376人(32.1%)

2,907人(39.3%)

132人(1.8%)

1,857人(25.1%)

 
5  製剤の種類
 

(%は862人中)

第VIII因子製剤 53人(6.1%)

第IX因子製剤 794人(92.1%)

複数          18人 (2.1%)

不明           1人 (0.1%)

6  投与の通知

 

患者本人

遺族

行っていない

不明

H20

(%は8,799人中)

4,450人(50.6%)

816人 (9.3%)

2,394人(27.2%)

829人 (9.4%)

H19

(%は7,406人中)

3,592人(48.5%)

441人 (6.0%)

2,604人(35.2%)

595人 (8.0%)

 

(%は862人中)

193人(22.4%)

105人(12.2%)

460人(53.4%)

101人(11.7%)

7  現在の状況

 

生存

死亡

不明

H20

(%は8,799人中)

3,056人(34.7%)

2,430人(27.6%)

3,243人(36.9%)

H19

(%は7,406人中)

2,563人(34.6%)

1,817人(24.5%)

2,809人(37.9%)

 

(%は862人中)

90人(10.4%)

566人(65.7%)

206人(23.9%)

8  死因別の人数と割合

 

肝炎関連

肝炎関連以外

不明・無回答

H20

(%は死亡と回答した2,430人中)

129人(5.3%)

823人(33.9%)

1,478人(60.8%)

H19

(%は死亡と回答した1817人中)

99人(5.4%)

588人(32.4%)

1,130人(62.2%)

 

(%は死亡と回答した566人中)

108人(19.1%)

235人(41.5%)

223人(39.4%)

9  肝炎ウイルス感染状況

C型肝炎ウイルス感染

B型肝炎ウイルス感染

両方

いずれでもない

不明

H20

(%は8,799人中)

996人(11.3%)

52人 (0.6%)

10人 (0.1%)

1,429人(16.2%)

5,756人(65.4%)

H19

(%は7,406人中)

729人(9.8%)

40人(0.5%)

12人(0.2%)

845人(11.4%)

4,908人(66.3%)

 

(%は862人中)

83人(9.6%)

12人(1.4%)

3人(0.3%)

105人(12.2%)

639人(74.1%)

フィブリノゲン製剤または血液凝固因子製剤の投与の事実が判明したHCV感染者に対する調査結果

  フィブリノゲン製剤 血液凝固因子製剤
1  調査対象施設
741施設 190施設
2  有効回答施設
198施設 22施設(11.6%)
3  製剤の投与が判明したHCV感染者数
800人 63人
4  性別

男性

女性

不明

(%は800人中)

305人(38.1%)

490人(61.3%)

5人(0.6%)

(%は63人中)

46人(73.0%)

17人(27.0%)

0人(0%)

5  輸血歴の有無

不明

(%は800人中)

571人(71.4%)

99人(12.4%)

130人(16.3%)

(%は63人中)

40人(63.5%)

0人(0%)

23人(36.5%)

6  現在の状況と投与時年齢

生存

死亡

(%は回答532人中)

30.0±7.0才 (396人)

58.0±9.0才 (136人)

(%は回答40人中)

5.2±11.4才 (26人)

56.6±11.1才 (14人)

7  インターフェロン治療の実施

行った

行っていない

無回答

(%は800人中)

111人(13.9%)

234人(29.3%)

455人(56.9%)

(%は63人中)

9人(14.3%)

25人(39.7%)

29人(46.0%)

8  肝炎の状況

治癒

無症候性キャリア

慢性肝炎

肝硬変

肝がん

その他

(%は回答327人中)

47人(14.4%)

48人(14.7%)

142人(43.4%)

31人(9.5%)

20人(6.1%)

39人(11.9%)

(%は回答29人中)

2人 (6.9%)

7人 (24.1%)

10人 (34.5%)

2人 (6.9%)

0人 (0.0%)

8人 (27.6%)

研究要旨

フィブリノゲン製剤等の納入先医療機関における製剤の使用実態及び当該製剤を投与した患者における肝炎ウイルス感染の有無等の実態を明らかにする目的で、該当医療機関の協力のもと、郵送によるアンケート調査をおこなった。

平成19年度と平成20年度に行った調査結果を比較すると、フィブリノゲン製剤等の投与が確認された施設数、投与が判明した患者数、そのうちのC型肝炎ウイルス(HCV)感染状況が判明した患者数は、この1年間でいずれも増加した。

フィブリノゲン製剤投与によるC型肝炎ウイルス感染のリスクの検討は、(1) 製剤投与が判明した調査対象者のうちHCV感染状況が不明である者が多いこと、(2) HCV感染者での輸血歴の頻度が71.4%であったこと、(3) 製剤の製造時期により感染性が異なっていたと考えられたことから、一律に感染リスクを論じることはできないと考えられた。また、輸血歴の有る患者では、その当時の輸血による感染リスクとフィブリノゲン製剤投与による感染リスクが重なっていると考えられた。

フィブリノゲン製剤又は凝固因子製剤を投与され、かつHCV感染が判明している患者の特徴/投与の状況/現況等を調査した。投与時の年齢や男女比については、フィブリノゲン製剤では、20-30代女性が約38%(303/800)を占め、血液凝固因子製剤では男女とも0−9歳が半数以上(52.4%)(33/63)を占めた。現在の患者の状況については、投与時年齢が生存・死亡といった転帰に関連していると考えられた。

得られた調査結果を総合的に判断すると、(製剤投与-HCV感染-無症候性キャリア-慢性肝炎-肝硬変-肝癌-肝炎関連死亡)といった一連の流れを確認されている者の頻度は、現時点では少ないと考えられた。製剤を投与されかつHCV感染が判明している患者のC型肝炎の病態に関しては、慢性肝炎、無症候性キャリアという、C型肝炎の病期としては初期の段階に留まっている例が多く、インターフェロン等の抗ウイルス療法等によるC型肝炎ウイルス持続感染状態からの離脱、肝病期の進展抑止が十分可能であると考えられた。

(別添)

フィブリノゲン製剤等の納入先医療機関における製剤の使用実態及び当該製剤を使用された患者における肝炎ウイルス感染等の実態に関する研究 平成20年度 総括研究報告書(PDF:731KB)


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