厚生労働省

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厚生労働省
厚生労働省発表
平成20年12月18日
厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課
課長 吉本    明子
主任中央賃金指導官 山口    昌志
副主任中央賃金指導官 伊津野  信之
電話 03-5253-1111(内線5531)

約1万9千の事業場に対し地域別最低賃金に係る監督指導実施
違反事業場の割合は6.6%
最低賃金額未満の労働者の割合は1.3%

平成20年1月〜3月、7月の地域別最低賃金の履行確保に係る監督指導結果

厚生労働省では、平成19年10月に全国加重平均時間額673円から687円(14円の引上げ)に改定された地域別最低賃金の履行確保を主眼として、約1万9千の事業場に対し全国の労働基準監督署において監督指導を実施したところであるが、今般その結果を次のとおり取りまとめたので公表する。

平成19年度地域別最低賃金は全国加重平均で14円の引上げであったが、違反事業場の割合(以下「違反率」という。)及び地域別最低賃金額未満の労働者の割合を全国加重平均で5円引き上げた平成18年度と比べるとほぼ同じであった。(平成19年1月〜3月、6月;違反事業場数1,251事業場、違反率6.5%、地域別最低賃金額未満の労働者数3,522人、その割合1.3%)。

製造業(食料品製造業、繊維工業、衣服その他の繊維製品製造業、パルプ・紙・加工品製造業、クリーニング業など)では違反率8.2%と平均を超えていた。

最低賃金未満で就労していた外国人労働者は184人であったが、その内180人が外国人技能実習生。

違反理由は、「適用される最低賃金額を知らなかった」(26.9%)「賃金を時間額に換算して比較していなかった」(11.7%)など最低賃金額や最低賃金制度への理解不足が大半で、「売上減・コスト増により最低賃金を支払うことができなかった」は7.7%であった。

監督指導の結果について

(1)監督指導の概要(表1、表2参照)

地域別最低賃金の履行確保を主眼とした監督指導を、最低賃金の引上げ後間もない平成20年1月〜3月と、改正最低賃金法が施行された同年7月の2回に分けて、これまでの最低賃金監督結果等により地域別最低賃金の履行について問題があると考えられる業種・規模の18,707事業場(労働者数286,701人)に対し実施(平成19年実施分、1月〜3月、6月;19,111事業場、労働者数270,166人)。

(2)違反の概要(表1、表2参照)

最低賃金法第4条違反(改正前の最低賃金法第5条違反を含む。地域別最低賃金額以上の賃金を支払っていない違反。以下同じ。)の概要は、以下のとおりであった。

違反事業場数1,234事業場

違反率6.6%

地域別最低賃金額未満の労働者数3,777人

地域別最低賃金額未満の労働者数の割合1.3%

平成19年度地域別最低賃金は全国加重平均で14円の引上げであったが、全国加重平均で5円引き上げた平成18年度を違反率で0.1ポイント上回り、地域別最低賃金額未満の労働者の割合で同率であった(平成19年1月〜3月、6月;違反事業場数1,251事業場、違反率6.5%、地域別最低賃金額未満の労働者数3,522人、その割合1.3%)。

(3)違反事業場(1,234事業場)の多い業種(表1参照)

違反事業場は、以下の3業種で約9割を占めていた。

製造業(食料品製造業、繊維工業、衣服その他の繊維製品製造業、パルプ・紙・加工品製造業、クリーニング業など685事業場)55.5%

商業(卸売業、小売業、理美容業など286事業場)23.2%

接客娯楽業(旅館業、飲食店など131事業場)10.6%

これを、業種別に監督実施事業場に対する違反率で見ると以下のとおりであった。

製造業8.2%

接客娯楽業5.7%

商業4.7%

(4)地域別最低賃金額未満の労働者(3,777人)の構成(表3、表4参照)

性別、規模別等について

約8割が女性労働者(3,022人)

約4分の3が労働者数30人未満の中小事業場に就労(10人未満が39.3%、10人〜29人が36.3%)。

約7割がパートタイム労働者(2,491人)

外国人労働者について

184人(4.9%)の外国人労働者に対し、53事業場が地域別最低賃金額を下回る賃金しか支払っていなかったが、そのうち180人(97.8%)が外国人技能実習生であった。

違反のあった業種を見ると158人(85.9%)が衣服その他の繊維製品製造業、食料品製造業、農業に就労していた。

(5)平成20年1月〜3月及び平成20年7月の監督指導結果の比較(表3参照)

平成20年1月〜3月の監督指導結果は以下のとおりであった。

違反率は7.6%

地域別最低賃金額未満の労働者の割合は1.6%

一方、平成20年7月の監督指導結果は以下のとおりであった。

違反率は5.8%

地域別最低賃金額未満の労働者の割合は1.1%

改定から期間が経過するにつれて違反率、地域別最低賃金額未満の労働者の割合共に低下していた。この傾向は、昨年と同様であった(平成19年1月〜3月;違反率7.0%、地域別最低賃金額未満の労働者の割合1.5%。6月;違反率6.2%、地域別最低賃金額未満の労働者の割合1.2%)。

違反事業場の多い業種及び地域別最低賃金額未満の労働者の構成についての傾向は、1月〜3月と7月とを比較すると、同様であった。

(6)地域別最低賃金額以上を支払っていない理由(複数回答729件)(表5参照)

平成20年7月の監督時に新たに調査した、地域別最低賃金額以上を支払っていない理由について、上位3つは以下のとおりであり、これらで約6割を占めていた。

一番多かった理由が「適用される最低賃金額を知らなかった。」(196件、26.9%)

次に「最低賃金額改定後に賃金改定をしていなかった。」(141件、19.3%)

3番目が「賃金を時間額に換算して比較していなかった。」(85件、11.7%)

なお、「売上減・コスト増により最低賃金を支払うことができなかった。」は、56件、7.7%であった。

今後の対応について

各労働基準監督署では最低賃金法第4条の違反のあった事業場に対しては、地域別最低賃金額以上の賃金を支払うよう是正指導しているが、厚生労働省では、今後とも遵守のための事業場に対する指導を徹底することとしている。

また、地域別最低賃金額以上を支払っていない理由として「適用される最低賃金額を知らなかった。」などがあげられている。このため、違反のあった事業場には、地域別最低賃金改定の際には、発効前にその額を通知するなどして再発を防止するとともに、新聞等のマスメディアを活用した広報、都道府県・市町村、経営者団体等の広報誌紙への掲載依頼を積極的に行うなど、引き続き最低賃金制度及び地域別最低賃金額の周知、徹底を図ることとしている。


表1地域別最低賃金適用事業場における業種別法違反の状況

業種 地域別最低賃金適用事業場
監督実施事業場数 違反事業場数 違反率% 監督実施事業場労働者数 最低賃金未満労働者数 未満労働者の割合
  うち女性
01製造業 8,343 685 8.2% 122,099 74,698 2,096 1.7%
01食料品製造業 2,896 234 8.1% 50,103 33,242 749 1.5%
02繊維工業 754 70 9.3% 9,143 4,834 156 1.7%
03衣服その他の繊維製品製造業 1,540 167 10.8% 19,996 16,508 615 3.1%
04木材・木製品製造業 132 9 6.8% 1,031 321 20 1.9%
05家具・装備品製造業 99 11 11.1% 881 213 22 2.5%
06パルプ・紙・加工品製造業 208 22 10.6% 3,131 1,401 42 1.3%
07印刷・製本業 411 12 2.9% 6,060 2,028 21 0.3%
08化学工業 362 22 6.1% 5,887 2,667 56 1.0%
09窯業土石製品製造業 139 10 7.2% 1,378 279 15 1.1%
10鉄鋼業 14 0 0.0% 182 27 0 0.0%
11非鉄金属製造業 19 2 10.5% 256 68 3 1.2%
12金属製品製造業 238 13 5.5% 3,177 889 25 0.8%
13一般機械器具製造業 83 4 4.8% 1,236 512 9 0.7%
14電気機械器具製造業 143 13 9.1% 3,127 2,265 87 2.8%
15輸送機械器具製造業 80 5 6.3% 1,015 355 10 1.0%
16電気・ガス・水道業 6 0 0.0% 123 24 0 0.0%
17その他の製造業 1,219 91 7.5% 15,373 9,065 266 1.7%
01自動車整備 369 11 3.0% 2,489 440 13 0.5%
02機械修理業 34 1 2.9% 368 72 1 0.3%
03クリーニング業 630 65 10.3% 9,819 7,205 187 1.9%
04たばこ製造業 0 0 0.0% 0 0 0 0.0%
09その他 186 14 7.5% 2,697 1,348 65 2.4%
02鉱業 8 0 0.0% 47 8 0 0.0%
03建設業 172 8 4.7% 2,137 372 14 0.7%
04運輸交通業 103 14 13.6% 2,913 308 53 1.8%
01鉄道業 4 0 0.0% 57 16 0 0.0%
02道路旅客運送業 34 10 29.4% 1,354 115 38 2.8%
01ハイヤー・タクシー 28 9 32.1% 1,176 101 33 2.8%
02バス業 4 0 0.0% 136 13 0 0.0%
09その他の旅客 2 1 50.0% 42 1 5 11.9%
03道路貨物運送業 58 3 5.2% 1,278 157 11 0.9%
04その他の運輸交通業 7 1 14.3% 224 20 4 1.8%
05貨物取扱業 18 1 5.6% 566 227 2 0.4%
1号〜5号 8,644 708 8.2% 127,762 75,613 2,165 1.7%
06農林業 130 41 31.5% 1,169 830 215 18.4%
07畜産・水産業 57 3 5.3% 675 260 4 0.6%
08商業 6,067 286 4.7% 68,728 39,339 803 1.2%
01卸売業 894 28 3.1% 11,669 4,660 39 0.3%
02小売業 3,836 195 5.1% 48,248 28,741 575 1.2%
03理美容業 1,141 55 4.8% 5,921 4,560 74 1.2%
04その他の商業 196 8 4.1% 2,890 1,378 115 4.0%
09金融・広告業 50 1 2.0% 1,959 1,281 3 0.2%
10映画・演劇業 6 1 16.7% 173 115 1 0.6%
11通信業 6 0 0.0% 546 316 0 0.0%
12教育・研究業 65 0 0.0% 2,294 1,007 0 0.0%
13保健衛生業 578 31 5.4% 18,819 14,862 55 0.3%
01医療保健業 134 8 6.0% 4,691 3,594 17 0.4%
02社会福祉施設 397 19 4.8% 13,145 10,566 29 0.2%
03その他の保健衛生業 47 4 8.5% 983 702 9 0.9%
14接客娯楽業 2,294 131 5.7% 32,515 21,387 344 1.1%
01旅館業 713 45 6.3% 11,718 7,601 123 1.0%
02飲食店 1,445 79 5.5% 18,395 12,522 208 1.1%
03その他の接客娯楽業 136 7 5.1% 2,402 1,264 13 0.5%
15清掃・と畜業 475 22 4.6% 19,955 11,400 133 0.7%
16官公署 0 0 0.0% 0 0 0 0.0%
17その他の事業 335 10 3.0% 12,106 4,711 54 0.4%
01派遣業 74 0 0.0% 4,725 1,993 0 0.0%
02その他の事業 261 10 3.8% 7,381 2,718 54 0.7%
6号〜17号 10,063 526 5.2% 158,939 95,508 1,612 1.0%
合計 18,707 1,234 6.6% 286,701 171,121 3,777 1.3%

表2監督指導結果

  監督実施
事業場数
違反事業場数 違反率(%) 監督実施事業
場労働者数(人)
最低賃金未満
労働者数(人)
最低賃金未満
労働者の比率(%)
地域別最低賃金
適用事業場
(H20.1-3月)
8,071 612 7.6 124,053 1,987 1.6
[8,357] [582] [7.0] [112,142] [1,681] [1.5]
地域別最低賃金
適用事業場
(H20.7月)
10,636 622 5.8 162,648 1,790 1.1
[10,754] [669] [6.2] [158,024] [1,841] [1.2]
合計 18,707 1,234 6.6 286,701 3,777 1.3
[19,111] [1,251] [6.5] [270,166] [3,522] [1.3]

[]内の数字は前年同期(1〜3月、6月)の監督指導結果である。

表3最低賃金未満労働者の状況

  監督実施事業場
労働者数
(1)うち女性 (2)最賃金未満労働者数
  (3)うち女性 (4)うちパート
・アルバイト
(5)うち障害者 (6)うち外国人
地域別最低賃金
適用事業場
(H20.1-3月)
124,053人            
72,921人 1,987人 1,578人 1,198人 170人 145人
[58.8%] [1.6%] [79.4%] [60.3%] [8.6%] [7.3%]
地域別最低賃金
適用事業場
(H20.7月)
162,648人            
98,200人 1,790人 1,444人 1,293人 193人 39人
[60.4%] [1.1%] [80.7%] [72.2%] [10.8%] [2.2%]
合計 286,701人            
171,121人 3,777人 3,022人 2,491人 363人 184人
[59.7%] [1.3%] [80.0%] [66.0%] [9.6%] [4.9%]

注1(1)、(2)欄の[]内の数字は、監督実施事業場労働者数に対する割合(%)である。

注2(3)〜(6)欄の[]内の数字は、最低賃金未満労働者数に占める割合(%)である。


表4事業場規模別最低賃金未満労働者数

  1−9人 10−29人 30人以上 合計
最低賃金未満労働者数
(%)
1,483 1,371 923 3,777
(39.3%) (36.3%) (24.4%) (100.0%)

)内の数字は、最低賃金未満労働者全体に対する割合である。

表5最低賃金を支払っていない理由

理由 事業場数 割合
適用される最低賃金額を知らなかった。 196 26.9%
最低賃金改定後に賃金改定をしていなかった。 141 19.3%
賃金を時間額に換算して比較していなかった。 85 11.7%
労働能力が低い場合には適用がないと思っていた。 66 9.1%
売上減・コスト増により最低賃金額を支払うことができなかった。 56 7.7%
最低賃金の適用除外許可が未更新であった。 51 7.0%
パート(アルバイト)には適用がないと思っていた。 10 1.4%
外国人には適用がないと思っていた。 0 0.0%
その他 124 17.0%

平成20年7月の一斉監督時の違反事業場に対する調査結果(複数回答)である。


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