第3 地方労働行政の展開に当たっての基本的対応

1 総合的労働行政機関としての機能(総合性)の発揮

都道府県労働局における労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政がそれぞれの専門性を一層発揮しつつ、労働条件の確保、雇用の安定、働き方の見直し、仕事と子育ての両立支援等の課題について、三行政の連携をより一層密にし、労働保険適用徴収業務や総合労働相談業務も含め、総合労働行政機関としての機能を発揮していく必要がある。

複数の行政分野による対応が求められている課題について、都道府県労働局内関係部室の連携、労働基準監督署内又は公共職業安定所内の関係部門間の連携を図り、局署所が一体となって機動的かつ的確な対応を図る。

また、それぞれの重点課題への対応に当たっては、他の行政分野において実施される集団指導、説明会など事業主や労働者が一堂に会する場を積極的に活用し、合同開催とするなど効果的・効率的な方策を講ずるものとする。

こうした取組を推進するため、都道府県労働局内の各部室並びに管内の労働基準監督署及び公共職業安定所で実施を予定している行事等についての情報を相互に共有し活用するとともに、部局内の会議について、創意工夫を凝らした業務展開の在り方、行政間連携方策等を検討する場として機能するよう活用する。



2 計画的・効率的な行政運営
(1) 計画的な行政運営

都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所における行政運営に当たって、各行政分野ごとの課題及び分野横断的な課題について的確に対応していくため、各地域の実情を踏まえた重点施策を盛り込んだ行政運営方針を策定し、これに基づいて計画的に行政運営を行う。

また、行政運営方針等に基づき、業務運営の進捗状況を定期的に分析し、当初の目標に沿った実施状況となっているかフォローアップを行う。

(2) 行政事務の簡素合理化と業務運営の重点化

国の厳しい財政事情の中、行政が取り組むべき緊要な諸課題に的確に対応していくため、経済社会の変化に対応した簡素で効率的な「筋肉質ので政府」を実現することが求められており、地方労働行政もこうした趣旨を踏まえ、労働行政機関としての機能を最大限に発揮する一方で、行政事務の簡素合理化や効率化、重点化を図る必要がある。このため、

第一に、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所において、これまでにも増して独自の工夫をこらして行政事務の簡素合理化を進める。

第二に、経済社会の構造的な変化に伴い、労働行政における課題が増大するとともに複雑困難化する中で、限りある行政資源を集中的に投入することで業務運営の重点化をより強力に推進する。

第三に、庶務関係業務等の都道府県労働局への集中化を着実に実施することにより、行政事務を効率化する。

(3) 既存の業務執行体制の在り方の見直し

経済社会情勢の変化等を踏まえ、業務の運営方法や職員の配置等の業務執行体制及び組織体制について積極的に見直しを進め、可能なものから逐次実施する。

(4) 行政事務の情報化への対応

労働局総務情報システム(雇用均等行政情報システムを含む。以下同じ。)、労働基準行政情報システム及び職業安定行政システム等を積極的に活用して行政事務の情報化を推進する。

また、官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)及び電子入札システムを活用して、会計事務及び入・開札事務の適正化、効率化を図るとともに、労働局総務情報システムのサブシステムであるりん議・決裁システム、電子公文書発行システム及び行政文書管理システムの活用により、都道府県労働局の行政事務の一層の効率化を図る。

電子行政の推進に鑑み申請・届出等手続の電子化への対応に関しては、都道府県労働局が所掌する申請・届出等手続について、インターネットを利用してオンラインで行えることの周知に努めるとともに、的確な受付・審査により、国民の利便性・サービスの向上を図る。

情報セキュリティに関しては、「厚生労働省情報セキュリティポリシー」及び「都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所における厚生労働省情報セキュリティポリシーの運用指針」に十分留意の上、職員研修の的確な実施並びに本省システム及び都道府県労働局独自システムに係る各情報セキュリティ実施手順等に従った情報セキュリティの確保の徹底を図る。



3 地域に密着した行政の展開
(1) 地域の経済社会の実情の的確な把握

地方労働行政を取り巻く情勢及び課題を適切に踏まえた施策を企画、実施し、地域における行政ニーズに適切に応えていくため、都道府県労働局においては、総合労働相談コーナーに寄せられた相談をはじめ各部室で得られた情報の活用に努める。また、関係行政機関及び関係団体等との連携を密にしつつ、地域経済情勢、地域における主要産業・企業の動向等を逐次、綿密に把握し、その分析の上に立った適切な行政課題を設定し、行政運営に努める。

(2) 地方公共団体等との連携

雇用施策を始めとする労働施策について、国と地方公共団体はそれぞれが行う施策が密接な連携の下に円滑かつ効果的に実施されるよう相互に連絡・協力することが重要である。このため、業務執行面において、恒常的に担当者同士の接触が必要な業務の円滑化を一層進めるとともに、都道府県労働局長と知事等都道府県幹部が労働施策全般にわたり意見交換する労働関係連絡会議の開催や職業安定部長を連絡責任者とする連絡窓口を活用する等により相互の連携基盤を強化する。

また、地域の実情に即した雇用施策の推進に係る具体的な連絡調整、情報交換等を行う場として、引き続き、雇用対策連絡調整会議を開催する。

さらに、雇用対策法の改正法案が成立した際には、地域の実情に合った機動的な雇用施策を実施するため、各都道府県労働局長が作成する20年度以降の雇用施策の実施に関する方針(現行の行政運営方針の雇用対策関係部分に相当)について、事前に都道府県の意見を聴くことにより、都道府県とのより一層の連携強化を図ることを予定している。

このほか、市町村、他の地方支分部局等との連携にも十分配意する。

(3) 労使団体等関係団体との連携

地域における行政ニーズに即応した地方労働行政を展開するためには、労使団体の要望を適切に把握し、これを業務運営に的確に反映するとともに、都道府県労働局から労使団体に対して必要な働きかけを適時適切に行っていくことが必要である。このため、都道府県労働局長を始めとする局の幹部が地域を代表する労使団体の幹部から率直な意見や要望を聞くとともに、幅広い闊達な意見交換を行う場である地域産業労働懇談会の開催や日常的な意見交換を通じて、労使団体との連携を図る。

また、地域の実情に応じた施策の効果的な推進を図るため、地方労働審議会において、公労使の意見をきめ細かく把握し、行政運営に的確に反映するよう努めるとともに、関係団体、有識者及び調査研究機関等とも緊密な連携を図る。

さらに、先般、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」の第1回会合が開催され、都道府県版円卓会議は、各都道府県労働局が事務局を担うこととされた。都道府県版円卓会議では、(1)中央で開催される円卓会議の決定内容の周知、(2)都道府県における効率的な推進体制の構築に向けた、地域社会全体の合意形成等に努める予定であり、具体的な事項については追って指示する。

(4) 積極的な広報の実施

広報活動は、労使はもとより国民全体の労働行政に対する理解と信頼を高めるために重要であることから、適切な時期・手段により、必要に応じ関係団体等との連携を図りつつ、創意工夫を凝らした広報活動を積極的に推進する。

特に、都道府県労働局において、局幹部とマスコミ関係者との定期的な懇談の場を設けることや、各行政における重要施策、法制度の改正等の動向及び主要な統計資料等を分かりやすく適時適切に提供すること等を通じて、マスコミとの日常的な接触に努める。 

また、重要施策等の周知に当たっては、都道府県・市町村や労使団体の広報誌等を活用し、幅広くかつ効果的な広報活動を推進する。



4 保有個人情報の厳正な管理及び情報公開制度・個人情報保護制度への適切な対応
(1) 保有個人情報の厳正な管理

各労働局において定めている都道府県労働局保有個人情報管理規程に基づき、労働局で保有する個人情報の適切な管理を徹底する。

また、労働行政で保有している個人情報は、個々人に密着した秘匿性の高い情報であり、厳格な保持が求められることを職員に十分理解させるため、研修等による意識啓発・注意喚起を行いつつ、事務処理の見直しにも積極的に取り組む。

(2) 情報公開制度の適切かつ円滑な実施

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく行政文書開示請求に対する事務処理に当たっては、「情報公開事務処理の手引」に基づき、適切な処理に努めることにより、適正かつ円滑な運用を図る。

特に、対象文書の特定及び具体的な不開示理由の付記について、その適切な処理に留意する。

また、都道府県労働局文書管理規程に基づく適切な文書管理に努め、行政文書ファイル管理簿及び同管理簿に記載する行政文書の管理の一層の適正化を図る。

(3) 個人情報保護制度に基づく開示請求等への適切な対応

行政機関の保有する個人情報に対する開示、訂正及び利用停止請求に対しては、「行政機関個人情報保護法開示請求等の事務処理の手引」に基づき、適切な処理に努めることにより、適正かつ円滑な運用を図る。

特に、請求対象となる文書の特定について、企画室と文書所管課との間で十分な調整を行い、補正処理・開示決定通知等適切な処理を徹底する。

(4) 雇用管理に関する個人情報の適切な取扱いに係る周知徹底

個人情報保護法及び「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」及び「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」に基づき、個人情報取扱事業者が保有する個人情報の適切な取扱いを行うよう周知・啓発の徹底を図るとともに、雇用管理に関する個人情報の取扱に係る苦情・相談への適切な対応、個人情報取扱い事業者に対する助言・指導等行政指導を的確に実施する。



5 綱紀の保持と行政サービスの向上
(1) 綱紀の保持

労働行政は、労使を始めとする国民の信頼を得てこそ初めて業務が円滑に運営されるものであるが、会計検査院の全都道府県労働局に対する実地検査の結果、全ての労働局において不正又は不適正経理の指摘を受けたところであることから、不正経理の未然防止、綱紀保持の徹底、適正な勤務時間管理及び超過勤務手当の支給等により、国民の信頼を回復するため、特に以下の点に万全を期する。

(ア)

国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程等を踏まえ、一層の綱紀の保持に努める。

(イ)

会計経理事務、徴収事務等金銭に関わる業務については、定められた事務処理 手順の徹底、責任体制の明確化、職員相互の内部牽制体制の確立等による適正な事務処理の徹底を図る。特に、会計経理実務については、「都道府県労働局不正経理等防止対策要綱」及び、追って作成予定の「会計事務取扱マニュアル(仮称)」を徹底し、「不正経理等再発防止チェックリスト」に基づき、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の管理者は、それぞれの所掌に応じて、再発防止策の実施状況等を定期的に点検する。また、都道府県労働局法令遵守委員会において、問題意識を共有し、一体となって再発防止対策等に取り組む。

(2) 行政サービスの向上

国民から信頼される行政を実現するためには、利用者の立場に立った親切でわかりやすい窓口対応、事務処理の迅速化等行政サービスの向上に努める必要があり、平成14年度から平成16年度まで「行政サービス向上総点検3カ年計画」として集中的に実施してきたところであるが、引き続き、窓口を中心に、職員の応接態度や事務処理の迅速化等行政サービスの改善に努める。


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