1 相談、指導等状況
図1 平成16年度の相談件数の内訳
表1 相談件数の推移
(件、%) |
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14年度 |
15年度 |
16年度 |
相談計 |
18,182 (100.0) |
18,266 (100.0) |
19,668 (100.0) |
女性労働者等 |
13,037 ( 71.7) |
13,230 ( 72.4) |
13,767 ( 70.0) |
事業主 |
5,145 ( 28.3) |
5,036 ( 27.6) |
5,901 ( 30.0) |
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図2 女性労働者等からの相談の内訳
(注) | 「その他」欄には、賃金・労働時間・深夜業の男女均等取扱等に関する相談が含まれている |
(2) | 労働局雇用均等室における個別紛争解決の援助 (均等法第13条に基づく援助) |
図3 均等法第13条に基づく援助の内訳
図4 均等法13条による援助のうち定年・退職・解雇の内訳
(3) | 雇用均等室における制度是正指導(均等法第25条に基づく助言等) |
表2 是正指導件数の推移
(件) |
事項 |
14年度 |
15年度 |
16年度 |
法第5条関係 (募集・採用) |
259 |
253 |
321 |
法第6条関係 (配置・昇進・教育訓練) |
125 |
108 |
103 |
法第7条関係 (福利厚生) |
64 |
41 |
57 |
法第8条関係 (定年・退職・解雇) |
18 |
16 |
10 |
法第21条関係 (セクシュアルハラスメント防止対策) |
4,975 |
5,190 |
4,628 |
法第22条・23条関係 (母性健康管理) |
7 |
16 |
3 |
計 |
5,448 |
5,624 |
5,122 |
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2 | 労働局雇用均等室における個別紛争解決の援助事例 (均等法第13条に基づく援助) |
(1) | 女性が就いている役職のみ廃止、降格されたとする事例
( 製造業 )
◆ | 女性労働者からの申立内容
女性が就いている係長職のみ廃止され、係長待遇もされず、実態として降格となっている。
また、降格の説明を求めた際、取締役から、「申立者を係長に昇進させた判断が間違いであった」とも言われ大変傷ついた。
係長待遇の保証、上記発言に対する事業主の謝罪を求める。 |
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◆ | 事業主の主張
過去数年、経営状態の悪化に伴いリストラを実施しており、申立者に対する係長職を解く発令も、業務上不要となった係長職を廃止したものである。
過去、係長職廃止時に係長待遇としたこともあったが、モチベーションの維持のための特別措置として行ったものである。
なお、取締役の発言は個人的な感想にすぎず、事業主としての見解ではない。 |
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◆ | 労働局雇用均等室は、双方の主張を踏まえ、事業主に対し、次の事項につき指導を行った。
係長職を解任された者には過去男性も含まれているが、男性については、これにあわせて係長待遇の格付けを維持しており、係長職廃止に伴う雇用管理について、男女均等な取り扱いを行っているとは言えない。均等法では降格について女性に対する差別を禁止していることから、申立者の要望を踏まえ、適切に対応すること。
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◆ | 結果
事業主は、申立者について降格発令日に遡って係長待遇とし、謝罪については今後申立者との間で話し合うことで合意した。 |
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(2) | 夫がいるので経済的に困らないとして執拗に退職を勧奨されたとする事例
( 不動産業 )
◆ | 女性労働者からの申立内容
一般職として勤務しているが、結婚してから仕事を回してもらえなくなり、結婚半年後、事業主から経営悪化を背景に、夫がいて経済的に困らないことを理由に執拗に退職を勧奨されている。
継続勤務できるようにして欲しい。 |
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◆ | 事業主の主張
仕事が減っているため、経費を削減する必要があり人件費の縮減を図りたい。
一般職のうち結婚しているのは申立者のみであり、夫が単身赴任していることから、本人のためを思い主婦業に専念した方がよいと考えたものである。 |
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◆ | 労働局雇用均等室は、双方の主張を踏まえ、事業主に対し、次の事項につき指導を行った。
婚姻したことを理由に女性を解雇することは均等法違反であり、形式的には退職勧奨であっても執拗に行われ、女性労働者の真意に基づくものではない場合については解雇に当たると考えられることから、申立者への執拗な退職勧奨をやめ、働き続けられるようにすること。
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◆ | 結果
事業主は、退職勧奨をやめ、申立者は継続勤務できることとなった。 |
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(3) | 産前産後休業を申し出たことを理由として雇止めを予告されたとする事例
( 教育業 )
◆ | 女性労働者からの申立内容
契約期間1年の嘱託職員であるが、これまで契約の更新により4年勤務している。
事業主に産前産後休業の申出をしたところ、次回の契約期間開始後まもなく産前休業に入ることから、契約を更新しないと言われた。
継続勤務できるようにして欲しい。
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◆ | 事業主の主張
仕事ができないのであれば雇えないとの説明は行ったが、雇止めするとの結論は出していない。 |
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◆ | 労働局雇用均等室は、双方の主張を踏まえ、事業主に対し、次の事項につき指導を行った。
嘱託職員についてはこれまで雇止めの例がほとんどなく、特別話し合いもなく自動的に更新を重ねるなどの契約更新がなされてきたことなどからみて、実質においては期間の定めのない契約と考えられ、妊娠し、産前産後休業の申出がなけれは契約を自動的に更新されていたと強く推察される。
均等法上、妊娠したことを理由とした解雇は違反となるので、雇止めについての結論を出すに当たってはこの点を十分踏まえること。
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◆ | 結果
雇止めが撤回され継続勤務が可能となり、申立者は産前産後休業を取得した。 |
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(4) | 産前産後休業の取得後、子供がいることを理由にパートへの身分変更を強要されたとする事例
( 小売業 )
◆ | 女性労働者からの申立内容
産前産後休業を取得しまもなく職場に復帰するが、子供がいることを理由にパートへ身分変更するよう言われた。正社員のまま働き続けたい。 |
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◆ | 事業主の主張
幼い子がいるとどうしても欠勤しがちになることから、今まで慣行としてパートになってもらっている。 |
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◆ | 労働局雇用均等室は、双方の主張を踏まえ、事業主に対し、次の事項につき指導を行った。
正社員から有期契約のパートタイム労働者に変更することは、従前の労働契約が一旦終了したものと考えられ、その労働契約が労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は「解雇」に当たると解されるところ、子供がいることを理由に、一方的に女性のみをを解雇することは均等法違反にあたる。
従って、正社員として産前産後休業後も勤務できる方向で検討し、あわせて同社のこれまでの慣行を改めること。
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◆ | 結果
身分変更が行われず、正社員としての復帰が可能となり、あわせて事業主はこれに係る慣行の見直しを約した。 |
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(5) | 妊娠したため深夜業の免除を申し出たが拒否され、深夜業をしないのであれば退職するよう勧奨された事例
( 医療業 )
◆ | 女性労働者からの申立内容
妊娠し、夜勤免除を部門長に申し出たが拒否された上、退職を勧奨された。
継続勤務できるようにして欲しい。 |
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◆ | 事業主の主張
部門長に法律上の知識がなく不適切な対応を行ったものであり、法人としての方針ではない。 |
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◆ | 労働局雇用均等室は、双方の主張を踏まえ、事業主に対し、次の事項につき指導を行った。
申立者の立場からすれば、部門長の対応を事業主としての対応と受け止めるのは当然と考える。
均等法を遵守し、妊娠を理由とする退職勧奨を行わないよう、当該部門長はもとより、事業所内の管理職に徹底を図ること。
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◆ | 結果
当該部門の責任者に対し、妊娠を理由とする退職勧奨を行わないよう注意がなされ、また、当該部門を含め管理職の集まる会議において、妊娠を理由とする退職勧奨を行わないことを含め、均等法の遵守について指導がなされた。
申立者については継続勤務できるようになった。 |
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3 | 機会均等調停会議による調停事案の概要 (均等法第14条に基づく調停) |
(1) | 配置関係
同一の職場の者と結婚する旨申し出たところ、そのことを理由として女性のみに対し配置転換が内示され、これを拒否したところ退職を強要されたとする事案
◆ | 女性労働者からの申請内容
・ | 職場結婚を理由として女性のみ配置転換させることの誤りを認めること。 |
・ | 就業意欲があるにもかかわらず退職を余儀なくされたことに対し、謝罪及び金銭補償をすること。 |
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◆ | 事業主の主張
・ | 人事ローテーションによる配置転換を命じたものであり、退職は本人の意思によるものである。 |
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◆ | 結果
機会均等調停会議において、調停委員が関係当事者双方から事情聴取及び意見聴取を行い、(1)事業主は今後均等法を遵守し、職場結婚した社員について女性のみ配置転換するような職場環境・風土を改善する取組を行うこと、(2)申請者については会社都合退職に準じた扱いとし解決金を支払うこと、を内容とする調停案の受諾を勧告。 関係当事者双方が受諾し、調停は終了した。 |
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(2) | 解雇関係
妊娠を理由にパートへ身分を変更するとして辞表の提出を強要され、その後も説明がないまま、執拗な退職勧奨が行われたため退職を余儀なくされたとする事案
◆ | 女性労働者からの申請内容
・ | 妊娠した女性が働きやすい職場とすること。 |
・ | 妊娠を理由として様々な不利益を被ったことに対し、謝罪及び金銭補償をすること。 |
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◆ | 事業主の主張
・ | 経営の悪化と妊娠が重なったことから、正規の職員からパートに変わって欲しいと相談したものであり、妊娠を理由として解雇する意図ではない。 |
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◆ | 結果
機会均等調停会議において、調停委員が関係当事者双方から事情聴取及び意見聴取を行い、(1)事業主は今後均等法を遵守し、妊娠した女性が働き続けやすい職場環境となるよう雇用管理の改善を図ること、(2)祝金として既に支払われた金銭については紛争の早期解決を図るための解決金であることを確認すること、を内容とする調停案の受諾を勧告。申請者は受諾したものの、事業主が受諾しなかったため、調停は打ち切りとなった。
なお、申請者からは、解決金に相当する金銭が支払われていること及び事業主からの謝罪が得られたことから、調停の結果には満足している旨の表明があった。 |
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(3) | 解雇関係
妊娠の報告をしたところ、事業縮小を理由として解雇されたとする事案
◆ | 女性労働者からの申請内容
・ | 解雇を撤回し、せめて産前産後休業の取得の後一ヶ月は勤務し、その後会社都合による自主退職(退職金の割増し)とすること。 |
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◆ | 事業主の主張
・ | 業績悪化により事業を縮小することとなり、申請者について、他に就業させる事業所、業務がないことから、やむを得ず解雇したものであって、申請者が妊娠したことを理由とするものではない。 |
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◆ | 結果
機会均等調停会議において、調停委員が関係当事者双方から事情聴取及び意見聴取を行い、(1)事業主は今後均等法を遵守し、法の趣旨に沿った雇用管理を行うこと、(2)解雇を撤回し、産休取得後1ヶ月は就業継続するとともに、退職に当たっては会社都合退職に準じた扱いとし、割増の退職金を支給すること、を内容とする調停案の受諾を勧告。
関係当事者双方が受諾し、調停は終了した。 |
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