厚生労働省 雇用均等・児童家庭局

「平成16年版 働く女性の実情」のあらまし

I  働く女性の状況(平成16年)
(1)  女性の労働力人口は2,737万人で3年ぶりに増加(男性は引き続き減少し3,905万人)したが、労働力率は前年に引き続き48.3%(本文付表1、6、8)。
(2)  M字型カーブの底にあたる30〜34歳層の労働力率の上昇傾向は続き、1.1%ポイント上昇の61.4%(本文図表1-2)。
(3)  女性の雇用者数は昨年に引き続き増加(26万人増)し、雇用者総数に占める女性の割合は41.1%(前年40.8%)とさらに上昇(本文図表1-9)。
(4)  一般労働者の所定内給与額の男女間賃金格差は67.6(前年は66.8)で、長期的には緩やかな縮小傾向が続いている(本文図表1-15)。
(5)  女性の非農林雇用者のうち週間就業時間35時間以上が34万人増加し、35時間未満が4万人減少した結果、女性雇用者に占める短時間雇用者比率は39.9%(前年40.7%)と4年ぶりに低下(本文図表1-23)。

II  女性の就業希望実現に向けて
【 1.女性の労働力率の特徴と推移 】
(1)  我が国の女性の労働力率はバブル崩壊以降停滞し、その水準はイタリアよりは高いものの、その他の欧米諸国よりも低い(図表1 本文図表2-1(1)(2))。
(2)  我が国及び韓国の年齢階級別労働力率はM字型であるが、欧米諸国ではかつてM字型であったイギリス等も含め台形となっている(図表2図表3 本文図表2-2本文図表2-3)。
(3)  また、我が国では高学歴の女性の労働力率が低いという特徴がある(図表4 本文図表2-4)。女性の大卒等の労働力率は他の学歴に比べ40歳以上で低く、配偶者の有無別にみると配偶者ありの大卒等の有業率が他の学歴に比べ低くなっている(本文図表2-13本文図表2-15)。
(4)  近年の我が国女性の年齢階級別労働力率の推移の詳細をみると、35歳以上で横ばいとなっている。労働力率が上昇している25〜34歳について要因分解すると、7〜8割は未婚率の上昇により説明できるが、残りの要因は、未婚者や既婚者の労働力率が上昇していることにより説明される(図表5図表6 本文図表2-6本文図表2-11)。
(5)  地域別には、女性の有業率は都市部で低くM字の底も深い傾向にあるが、政令指定都市等の中で広島市は女性の有配偶比率は3番目に高く、世帯に占める6歳未満の子のいる割合、6歳未満の子がいる核家族での女性の有業率はトップとなっている(図表7図表8 本文図表2-17本文図表2-22(2)本文図表2-23(1)(2))。

【 2.女性の就業実態とM字型カーブ 】
(1)  都市部を抱える都道府県での女性の就業意欲は高いが、就業希望実現者割合は低い傾向。政令指定都市及び特別区では特別区、名古屋市、広島市の順に高いが、特別区を除き、いずれも全国平均を下回っている(図表9図表10 本文図表2-27本文図表2-28)。
(2)  政令指定都市及び特別区を抱える都道府県は日本の女性人口の58%、政令指定都市及び特別区だけで23%を占めている。これらの地域で就業希望実現者割合が全国で最も高い福井県並み(84.0%)になれば、これらの都道府県で187万人、政令指定都市等で75万人の労働力が確保できる。
(3)  末子の年齢別の主婦の働き方の希望は子が小学校入学までは短時間勤務や在宅就業を希望する者が多く、中学生になると残業がないフルタイムや残業して責任ある仕事を希望する者が増加(図表11 本文図表2-31)。
(4)  母親の就業率はむしろ低下傾向にあるが、週35時間未満を中心に雇用者比率は上昇傾向(図表12 本文図表2-34、2-35、2-36)。
(5)  子がある妻では、子の数が多い方が雇用者比率が高い(図表13 本文図表2-37)。

【 3.女性の継続就業と再就職の状況 】
(1)  正社員で就職した新規学卒者のうち、継続就業する者の割合は上昇傾向(図表14 本文図表2-39)。
(2)  子を有する正社員の女性は人数、割合ともに減少しているが、6歳未満の子がある者の割合は上昇(図表15 本文図表2-41)。
(3)  継続就業の条件としては育児・介護の労働時間の配慮が35.2%、男女均等待遇32.0%と両立支援と男女均等のいずれもが重要(図表16 本文図表2-47(2))。
(4)  一方、女性正社員の33.8%、女性パートの30.1%が会社や就業形態を変わりたいとしているが、正社員では「両立がしやすい仕事につきたい」が、パートでは「賃金が低い」が多い(図表17 本文図表2-54)。
(5)  パート、アルバイトの継続就業期間(同一企業)の短い者の割合が高まっている(図表18 本文図表2-43)。ただし、実数ベースでは5年以上継続就業している者も含めて増加している。
(6)  年齢階級別の再就職率をみると、女性は30歳台が低く、失業期間が長期に渡る者の割合も高い(図表19図表20 本文図表2-57本文図表2-58)。また、再就職するために「正社員としての採用」という条件を下げる者が男性に比べ多い(図表21 本文図表2-61)。
(7)  結婚や育児のために離職し、再就職している者の5割は離職期間は3年以内(図表22 本文図表2-63)。

【 4.諸外国の女性の就業状況との比較 】
(1)  6歳未満の子を持つ母親の就業率が高いのはスウェーデン、アメリカ等で、子の数が多い母親の方が就業率が高いのはスウェーデンと日本(図表23図表24(1) 本文図表2-71本文図表2-72)。
(2)  イギリス、ドイツ、オランダ、日本では母親のパートタイム比率が高いが、アメリカやスウェーデンでは母親のフルタイム勤務比率が高い(図表24(2) 本文図表2-73)。
 また、スウェーデン、フランス等では「夫婦でフルタイム」希望者が多く、オランダ、イギリス等では「夫フルタイム、妻パートタイム」希望者が多い(図表25 本文図表2-74)。
(3)  ただし、スウェーデンについては休業者が就業者に算入されていることが就業率を引き上げている面がある(図表26 本文図表2-77)。
(4)  イギリスでは、25〜34歳層についてパートタイム比率の低下と労働力率の上昇が同時進行しているが、パートタイムとフルタイムの賃金格差と労働力率の相関は認められない(図表27 本文図表2-81本文図表2-82)。
(5)  一方、オランダやイギリスでは出産・育児期の女性の労働力率の上昇がすすみ、次いで、管理職女性比率の上昇が強まるという動きがみられる(図表28 本文図表2-83本文図表2-86)。


【 まとめ 】
 女性の就業意欲を顕在化させるためには、時間面で柔軟な就業機会が提供されること、職場において公平・公正な処遇がなされること、子を産み育てながら就業を可能とする社会的サポートが求められる。

 1. 育児期の勤務時間を柔軟化したり短縮できる就業機会、適正な条件のパートタイム労働の機会が創出され、就業継続しやすくなること。
 2. 「労働時間面の配慮を含めた両立支援策」及び「男女均等な待遇と公正な評価の促進」が同時に進められること。
 3. 育児や介護のために退職し、再就職を希望する者に対して早期の再就職を促すよう支援が行われること。
 4. とりわけ都市部で女性が子を産み育てながら就業できる環境の整備が進められること。

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