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 「若年者の就職能力に関する実態調査」の結果概要(調査概要は後掲)

(1) 「採用時に重視する能力」について

 採用に当たり重視する能力について調査対象企業に複数回答を求めた。
 半数以上の企業が指摘した能力は上位より「コミュニケーション能力」「基礎学力」「責任感」「積極性・外向性」「資格取得」「行動力・実行力」「ビジネスマナー」であった【第1−(1)図】。
 これを学歴別にみると、高校卒レベルに求められる能力は「コミュニケーション能力」「基礎学力」「責任感」「積極性・外向性」「ビジネスマナー」「行動力・実行力」「資格取得」が上位、また、大学卒レベルでは「コミュニケーション能力」「基礎学力」「責任感」「積極性・外向性」「資格取得」「行動力・実行力」「ビジネスマナー」が上位であった【第1−(2)(3)図】。
 学歴間の比較をした場合、高校卒レベルに比べ大学卒レベルの者に対して一層重視される能力は「積極性・外向性」「資格取得」「行動力・実行力」等であった。逆に高校卒レベルの者に重視される能力は「基礎学力」「責任感」「ビジネスマナー」等であった。

第1図.採用時に重視する能力(複数回答)

第1−(1)図(全体)

第1−(2)図(高校卒レベル)

第1−(3)図(大学卒レベル)

(2) 「重視される能力に関して、企業が若年者に感じる習熟実感」について

 前記(1)の各項目について、企業が感じた「その能力の修得されていた度合」を習熟実感(「満足」「不満」)として把握した。
 全ての項目について「不満」とする企業が「満足」とする企業を上回り、とりわけ半数以上の企業が重視している能力についてみると、「不満」が大きい順に、「資格取得」「ビジネスマナー」「コミュニケーション能力」「行動力・実行力」「積極性・外向性」「責任感」「基礎学力」であった【第2−(1)図】。
 これを学歴別にみると、高校卒レベルでは、「ビジネスマナー」「資格取得」「コミュニケーション能力」、また、大学卒レベルでは、「資格取得」「行動力・実行力」「ビジネスマナー」が「不満」の大きい上位であった【第2−(2)(3)図】。

第2図.重視される能力とその習熟実感

第2−(1)図(全体)

第2−(2)図(高校卒レベル)

第2−(3)図(大学卒レベル)

(3) 「能力修得と採用可能性の関係」について

 採用に当たり重視される個々の能力について、若年者がこれを修得することによって採用可能性が高まる相関を定量化*1した。
 全体では、ウェイトの高い能力の順に「コミュニケーション能力」「基礎学力」「資格取得」「責任感」「ビジネスマナー」「積極性・外向性」「行動力・実行力」「専攻した専門的知識」「プレゼンテーション能力」「向上心・探求心」「職業意識・勤労観」「柔軟性・環境適応力」等となり、能力修得と採用可能性向上の関係が明らかになった【第3−(1)図】。

*1 「仮に△△の能力を持っていることが公証されている者であれば採用」されるその内容と、その個々の能力が「実際の採用にあたりどれぐらいの寄与度(重み)があるか」を数値化(=全体が100となるようウェイト付け)したものとして回答を求めた。

第3図.能力修得と採用可能性との関係

第3−(1)図(全体)

第3−(2)図(高校卒レベル)

第3−(3)図(大学卒レベル)

(4) 「若年者就職基礎能力」の修得と採用可能性向上

 採用に当たり必要とされる能力のうち、半数以上の企業が採用に当たって重視し、かつ、比較的短期間の訓練により向上可能な能力を「若年者就職基礎能力」として定義した場合、それを修得した者の採用可能性は、全体でみると66.5%であった【第4ー(1)図】。
 これを学歴別にみると、高校卒レベルの者の採用可能性は68.8%、大学卒レベルは64.5%であった【第4−(2)(3)図】。
 また、若年者就職基礎能力の構成をみた場合、占める割合の大きい順に、高校卒レベルでは「職業人意識」「コミュニケーション能力」「基礎学力」「資格取得」「ビジネスマナー」、また、大学卒レベルでは「コミュニケーション能力」「職業人意識」「資格取得」「基礎学力」「ビジネスマナー」であった。






 構成要素が密接に関連し合う能力((@)「コミュニケーション能力」と「プレゼンテーション能力」、(A)「責任感」と「職業意識・勤労観」と「向上心・探求心」)についてはそれぞれ大くくりのものとして整理する((@)「コミュニケーション能力」、(A)「職業人意識」)こととする。
 若年者就職基礎能力の内容は「コミュニケーション能力」「職業人意識」「基礎学力」「資格取得」「ビジネスマナー」となる。






第4図.若年者就職基礎能力の修得と採用可能性

第4−(1)図(全体)

第4−(2)図(高校卒レベル)

第4−(3)図(大学卒レベル)


 「若年者就職基礎能力支援事業」(YES-Program)*2について
〜 新たなアプローチ方法の提案 〜

*2 Youth Employability Support Programの略

 (1) 事業概要
 本調査結果を踏まえて前記1(4)で定義した「若年者就職基礎能力」の修得に向けた具体的なアクションプランを若年者自らが設定できるよう、若年者就職基礎能力修得の目安を学歴別(高校卒レベル/大学卒レベル)に提示(平成16年4月(目途))するものである。
 (具体的な内容は、今後さらに企業ヒアリングを行う等により策定する予定。)
 また、若年者が修得した能力を証明する際に使用する「就職基礎能力証明書(仮称)」(以下、「証明書」という。)を国が作成し、希望する若年者の能力の公証を行う【第5図】。

 (2) 事業展開により得られるメリット
(1) 若年者にとっては、実際に企業が求めている能力を知り具体的な目標設定が可能となるため、就職能力を高めることができるようになる。企業側にとっては若年者就職基礎能力を携えている者がエントリしてくることになるため、即戦力の確保を容易かつ着実に行うことができるようになる。
(2) 若年者は面接場面において、証明書を履歴書等に添付することにより、自らの持つ職業能力を明示でき、採用可能性が向上することになる。また、企業は、証明書によってエントリ者の職業能力を客観的に把握できるようになる。
(3) 採用場面における企業、若年者双方の認識の違いが解消される結果として、社会システムや労働市場の機能強化が図られることが期待できる。

第5図.「若年者就職基礎能力支援事業の流れ」

図


【補足図表】

「若年者の就職能力に関する実態調査」の概要


 本調査は、採用に当たって重視されている職業能力の順位付けにとどまらず、企業が求める能力と若年者の能力とのギャップの状況及び個々の能力によって高まる採用可能性を定量化した初の実態調査。

 主な調査項目

(1) 企業が事務系・営業系職種の採用に当たって重視している能力を把握。
(2) 上記(1)について、企業が感じた「その能力の修得されていた度合」を習熟感(満足/不満)として把握。
(3) 採用に当たり重視される能力の修得と採用可能性向上との関係を把握。

 調査の方法等
(1) 調査方法
 全国の採用意欲や実績のある企業から無作為に抽出した11,255社に対して調査票を郵送(回答時の企業名は無記名)。
(2) 回答率
 有効回答を得た企業数は1,472社(有効回答率13.1%)。
(3) 調査実施時期
 平成15年12月

 回答企業の属性
(1) 従業員規模が、300人以上の企業は422社(回答企業全体の28.7%)、100人以上299人以下の企業は538社(同36.5%)、99人以下の企業は512社(同34.8%)。
(2) 製造業の企業は463社(回答企業全体の31.5%)、非製造業68.5%の企業は1009社(同68.5%)

〔補足図表〕

第6図.採用時に重視する能力(複数回答)

企業規模別


第7図.重視される能力とその習熟実感

第7−(1)図(従業員数100人未満)

第7−(2)図(従業員数100人以上)


第8図.能力修得と採用可能性との関係

第8−(1)図(従業員数100人未満)

第8−(2)図(従業員数100人以上)


第9図.若年者就職基礎能力の修得と採用可能性

第9−(1)図(従業員数100人未満)

第9−(2)図(従業員数100人以上)


第10図.若年者の就職等状況

図

註1 〔無業者〕 卒業時に進路未決定の者(文部科学省「学校基本調査」において学校卒業後の進路について就職・進学等でない者)
註2 〔早期離職者〕 〈就職者数〉×〈1年以内離職率(※)〉により推計。(※ 中学48%、高校26%、短大19%、大学16%)
 厚生労働省調べ(平成12年度卒業者について)
註3 早期離職者以外の数字は全て文部科学省「学校基本調査」により厚生労働省職業能力開発局にて再構成


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