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第2章 制度体系について

 現行の体系以外に、(1)基礎年金を税方式とする体系、(2)一本の所得比例年金に税財源の補足的給付を組み合わせる体系などの議論がある。

 平成16年改正では、いずれの体系でも必要な給付と負担の見直しを行い、制度の安定化を図る。長期的な制度体系の在り方については、議論を継続していく。
1.現行の制度体系と議論されている体系
  公的年金制度の体系については、現行の制度体系(社会保険方式による国民皆年金体制をとり、全国民共通の基礎年金と被用者を対象とする報酬比例年金の組み合わせの体系)以外に、基礎年金を税方式とする体系、被用者か否かを問わず所得比例方式へ一本化し税財源による補足的給付を組み合わせる体系などについて議論がある。

2.基礎年金の税方式化について
 <導入に向けた意見>
  ○ すべての高齢者の基礎的な生活保障を行う役割をより明確にすること。
 ○ 拠出と対応した給付でないことから、国民年金の未納・未加入問題や第3号被保険者制度などの問題が生じないこと。
 ○ 税財源の税目によっては、現行の国民年金の定額保険料による逆進性の問題が緩和される可能性があること。
 ○ 全国民が広く負担する消費税を財源とし、所得制限のない税方式化とすべきこと。

 <問題点>
  ○ 税方式では、拠出に応じた給付とならず、自律・自助を基本とする我が国の経済社会の在り方と整合的でないこと。
 ○ 所得・資産調査に基づく給付制限や給付水準の抑制につながり、所得保障の機能が大きく制限されること。
 ○ 給付と負担の関係が明確でないため、制度の健全性、持続可能性について、現行よりわかりにくくなること。
 ○ 給付費の増大に要する税財源の確保には困難があること。
 ○ 税財源による一律の給付に加えて、これまでの保険料納付に対応した給付を行わなければならないなどの問題があること。

3.一本の所得比例年金に税財源の補足的給付を組み合わせる体系について
 <導入に向けた意見>
  ○ 被用者、自営業者という立場により制度が変わる現行体系では就業形態の多様化、流動化に対応することが困難であること。
 ○ 現役時代の所得喪失を一定程度補填する公的年金制度の役割からは、所得比例年金とすべきであること。

 <問題点>
  ○ 現状では被用者以外の公平な所得把握が困難であること。
 ○ 所得が比較的低い者や就労期間の短い者の給付水準が大きく低下するおそれがあること。
 ○ 補足的給付の水準によっては、相当な財源が必要となること。
 ○ 補足的給付について所得・資産による制限を付すとすると、公正な所得・資産調査が現実的に可能かという問題があること。

4.今回の改革における基本的考え方
 ○ 以上のように、制度体系の在り方についての議論では、国民に共通な基礎的保障をどうしていくかという要素や、公平な負担の確保や負担に応じた給付をどうしていくかという要素など、重要な論点が含まれているが、それぞれの体系について問題点や導入についての様々な制約がある。
 現行制度は、自律と自助の精神に立脚しつつ、所得再分配機能を組み込んでいるものであるが、少なくともこれに替わるものとして、提案されている制度体系が平成16年改正における現実的な選択肢となる状況には至っていない。

 ○ 平成16年改正では、いずれの制度体系でも必要となる給付と負担の見直しを、現行の制度体系の下で行うことにより、制度の安定化を図ることとする。
 長期的な制度体系の在り方については、社会保険方式の下で国民皆年金を維持することを基本に、公平な所得把握が可能となることなど制度体系をめぐる議論の前提となる諸状況を見極めて、今後、少子・高齢化の進行等に伴い負担が高まることが見込まれる中、給付と負担の公平を確保していく上で望ましい制度体系の在り方について、議論を継続していく。


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