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第1章 今回の年金制度改正の考え方

1.改正の背景

<公的年金制度の堅持>
 ○ 公的年金制度は、高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとして国民生活に不可欠の存在となっている。公的年金は、稼得能力の減退・喪失に対応するものであり、高齢者にとってはもとより、親の高齢期の生活費についての心配や自分自身の高齢期の心配を取り払う役割を果たすことを通じ、現役世代も安心して社会で能力を発揮できる。
 少子化等の社会経済情勢の変化に柔軟に対応でき、将来にわたり、公平で持続可能な制度となるよう、公的年金制度を維持していく必要がある。

<平成12年改正と残された課題>
 ○ 平成12年改正では、少子・高齢化の進行に対応するため、将来の給付水準を適正化し、最終保険料負担を現在のヨーロッパ諸国並みである年収の2割程度に抑制することとした。
 ただし、以下のようないくつかの課題が残された。
 ・ 基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げ
 ・ 厚生年金、国民年金の保険料引上げの凍結の解除
 ・ 女性と年金に関わる課題

<更なる少子・高齢化の進行>
 ○ 平成14年の新人口推計により、少子高齢化が一層進行することが予想されることとなった。
 これに伴い、現行の給付水準を維持した場合、厚生年金の最終保険料率は、現行の13.58%から22.8%(基礎年金に対する国庫負担割合2分の1の場合。3分の1の場合は26.0%。いずれも永久均衡方式により、今回の試算で使用した経済前提等に見直した試算)に上昇することが見込まれる。

<女性の社会進出、就業形態の多様化等>
 ○ また、女性の社会進出、就業形態の多様化等、個人の生き方、働き方の多様化に年金制度が柔軟に対応できる仕組みとしていくことも求められてきている。


2.基本的考え方

社会経済と調和した持続可能な制度を構築し、制度に対する信頼を確保する。
〜現役世代の負担に配慮し、公的年金にふさわしい給付水準を確保する。
 ○ 将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう配慮し、世代間・世代内の公平の観点から、給付と負担の見直しを行う。
 また、頻繁に制度改正を繰り返す必要のない持続的な制度となるよう、人口、社会経済の変動に柔軟に対応でき、安定して運営される仕組みを目指した改正とする。
 あわせて、年金の負担や給付が社会全体に与える影響等も考慮し、社会経済との調和に配慮する。

 ○ その際、公的年金給付は、高齢期の生活の基本的な部分を支えるものとしてふさわしい給付水準を確保すべきであるとともに、公的年金給付が個々人の生活設計に組み込まれていることから、その水準の過度の調整や急激な変更を行うことは適切ではない。

 ○ また、国民年金は国民皆年金の基本であり、国民年金保険料の未納の問題は、制度に対する信頼を損ね、社会連帯に基づく制度の根幹を揺るがしかねない重大な問題であり、制度面の整備を含めて徹底した収納対策を講じていく。

 ○ 現役世代が将来の自らの給付を実感できるわかりやすい制度とし、情報提供等を行っていく。

多様な生き方、働き方に対応し、より多くの者が能力を発揮できる社会につながる制度とする。

 ○ 年金制度について、女性や高齢者の就労を抑制することなく、個々人の多様な生き方、働き方の選択に柔軟に対応できる仕組みとしていく。また、次世代育成支援等の方策についても充実していく。これらにより、就労等様々な形での貢献が年金制度上評価される仕組みとし、より多くの者が能力を発揮できる社会につながる制度とする。


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