健康危機管理について

厚生労働省健康危機管理基本指針

第1章 総則

第1節 定義

(1)この指針において「健康危機管理」とは、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じる国民の生命及び健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、拡大防止、治療等に関する業務であって、厚生労働省の所管に属するものをいう。

(2)この指針において「健康危険情報」とは、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他の何らかの原因により生じる国民の生命及び健康の安全に直接係わる危険情報をいう。

(3)この指針において「健康危機管理担当部局」とは、医政局、健康・生活衛生局、健康・生活衛生局感染症対策部、医薬局及び労働基準局安全衛生部をいう。

第2節 健康危機管理業務従事者の心得

(1)健康危機管理業務に従事する者(以下この節において「健康危機管理業務従事者」という。)は、国民の生命及び健康に関わるものであるとの危機意識を常に持ち、予断を持って判断することなく、健康被害が生じている等の事実を真摯に受け止め、科学的客観的な評価に努めるものとする。

(2)健康危機管理業務従事者は、安易に統計数値のみに頼ることなく、健康被害が生じている現状の状況把握に極力努めるものとする。

第3節 厚生労働省防災業務計画との関係

 地震等の災害に起因する健康危機については、厚生労働省防災業務計画(平成13年2月14日厚生労働省発総第11号)に沿った総合的かつ計画的な対策の推進に努めるものとする。

第2章 健康危機管理担当部局等における対応

第1節 健康危険情報の収集

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報に関する情報収集窓口を設け、情報の広範囲な収集及び分析に努めるものとする。

(2)原因が不明等の理由で、(1)によっては入手し難い健康危険情報の入手を確保するため、健康・生活衛生局において地方公共団体、医師会等の協力の下に保健所等を通じた情報収集に努めるとともに、医政局においては独立行政法人国立病院機構の各病院等を通じた情報収集に努めるものとする。

(3)健康危険情報を入手した部局は、当該情報に伴う対応が想定される関係部局及び関係機関に対し、速やかに当該情報を伝達するものである。

(4)原因が不明等の理由で当該情報についての情報収集窓口が明確でない健康危険情報を入手した部局は、第3章において定める厚生労働省健康危機管理調整会議(第3章に規定する厚生労働省健康危機管理調整会議をいう。以下同じ。)の主査に連絡し、主査は当該情報に関する情報収集窓口について調整するものとする。

(5)健康危機管理担当部局は、その所管する事務に関する健康危険情報の危険の程度について、健康被害の重篤度、規模、治療方法の有無等を勘案して、可能な限り客観的に判断するための方策を講じるものとする。

(6)緊急な対応が必要な重要な健康危険情報を入手した部局は、その重要度に応じ、速やかに当該情報を厚生労働大臣まで伝達するものとする。この場合においては、当該情報を厚生労働省危機管理調整会議の主査にも伝達するものとする。

(7)健康危機管理担当部局は、情報の的確な把握及び対策の検討に資するため、連携して、地方支分部局、試験研究機関、国外の関係機関(世界保健機関、米国食品医薬品庁、米国疾病予防管理センター等)、地方公共団体、研究者等を通じて広範かつ迅速な情報収集に努めるものとする。

(8)重大な健康被害が特定の地域に集中して発生した場合には、健康危機管理担当部局は必要に応じ、関係する地方公共団体との連携の下に、現地に職員を派遣し、情報収集に努めるものとする。

(9)関係省庁の所掌する事務に関わる健康危険情報については、当該関係省庁に迅速に情報を提供するとともに、密接に情報交換を行うものとする。

第2節 対策決定過程

(1)健康危機管理担当部局においては、健康危機管理に係る対策の決定(対策を講じない旨の決定を含む。以下同じ。)を行う場合には、その重要度に応じ、厚生労働大臣まで伝達した上で決定するほか、必要に応じ、他の関係部局の長と協議を行うものとする。この場合においては、当該事項を厚生労働省健康危機管理調整会議の主査にも伝達するものとする。

(2)健康危機管理担当部局においては、特に重要な健康危険情報及び対策の決定については、内閣総理大臣まで伝達するものとする。

(3)健康危機管理担当部局においては、健康危機管理に係る対策の決定を行った場合には、当該危険がなくなるまでの間、事案に応じ、監視のための体制を整備し、必要な情報及び知見の蓄積に努めるとともに、対策決定の諸前提条件の変化に応じて対策の見直しを行うものとする。

(4)健康危機管理担当部局においては、適時適切な対策の見直しを継続的に行うため、対策決定の諸前提及び判断理由についての資料を適切に管理するものとする。

(5)健康危機管理部局においては、重要な健康危機管理に係る対策の決定を行った場合には、速やかに、その内容を公開するとともに、特に不確実な情報の下で当該決定を行った場合には、その前提となった情報及び知見の内容、考慮要因、制約条件等を併せて公表するものとする。

(6)健康危機管理担当部局においては、健康危機管理に係る対策の決定に基づき、行政機関、関係団体等に対して指導を行う際には、緊急やむを得ない場合を除き、文書によるものとする。緊急やむを得ず文書によらない場合にあっては、追って文書により指導の内容を明らかにするものとする。

第3節 対策本部の設置等

(1)重大な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、当該被害の程度、緊急度等を勘案し、厚生労働大臣の承認を得て、対策本部を設置するものとする。

(2)重大な健康被害が特定の地域に集中し、現地における的確な対応のために必要がある場合には、当該被害発生地域の地方公共団体との連携の下に、厚生労働大臣の承認を得て、現地対策本部を設置するものとする。

(3)対策本部及び現地対策本部の本部員及び事務局の構成については、事案や状況に応じ柔軟に定めるものとする。この場合においては、事態の推移も想定し、広範囲の部局の職員(地方支分部局、試験研究機関等の職員を含む。)により構成するものとする。
(4)対策本部及び現地対策本部の設置に際しては、対策の実施に関係する部局との役割分担のほか、必要な情報の集積、対策本部と現地対策本部との連絡、報道機関対応、一般国民の問合せへの対応等の各担当の体制を明確にするとともに、各機関相互の連携に努めるものとする。

(5)対策本部構成部局間の施策の連携を図る観点から、必要に応じ、対策本部の下に作業班を置くものとする。この場合において、作業班構成員の所属する部局は、作業班構成員が対策本部の業務に専念できるよう努めるものとする。

第4節 研究班及び審議会での検討

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報について専門的かつ学問的な観点からの知見の集積を行うため、必要に応じ、学識経験者から構成される研究班を機動的かつ弾力的に設置するものとする。

(2)研究班を設置する場合には、設置要綱等において、検討事項の範囲、責務等を明確にするとともに、対策の決定に関わるような研究班については、当該事項等を所掌する審議会(以下「関係審議会」という。)の委員の研究班員への任命、研究班における検討状況の適時の関係審議会への報告等を行い、関係審議会との連携強化を図るものとする。

(3)重大な健康への被害の発生が疑われる問題については、健康危機管理担当部局は、適宜、関係審議会を機動的に開催し、必要な対策等について意見を聞くものとする。

第5節 健康危険情報の提供

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報及びその対応に関する情報を提供する窓口を設けるものとする。

(2)健康危機管理担当部局は、健康危機管理に係る国内外の情報について、適宜、報道機関、政府広報、インターネットその他の高度情報通信ネットワーク等を通じて広く国民に提供するとともに、地方公共団体、医療関係団体等を通じて関係者への提供を図るものとする。

(3)健康危機管理担当部局は、地方支分部局、地方公共団体、保健所、地方衛生研究所、独立行政法人国立病院機構の各病院等に対し、重要かつ緊急な健康危機管理に係る情報及び講じた対策、治療方法等の情報を迅速かつ直接に提供するとともに、必要に応じ、各都道府県担当課長会議等を開催するものとする。
(4)健康危機管理担当部局は、医療機関等向けに診断方法及び治療方法に関する情報基盤を整備するとともに、重要かつ緊急な健康危険情報及び治療方法等の情報について、医療機関等に対し迅速かつ直接に提供するものとする。

(5)健康危機管理担当部局が行う市町村に対する情報提供については、原則として都道府県を経由するが、必要に応じ、市町村に対しても直接に行うものとする。なお、都道府県又は市町村への情報提供については、必要に応じ、関連情報を共有すべき地方公共団体内の部局及び関係機関を明示するものとする。

(6)健康危機管理担当部局は、重要かつ緊急な健康危機管理に係る情報及び講じた対策等の情報については、適宜、海外の関係機関や報道機関に提供するものとする。

第3章 厚生労働省健康危機管理調整会議

第1節 目的

 健康危機管理担当部局における健康危機管理に関する取組についての情報交換を行うとともに、迅速かつ適切な健康危機管理を行うための円滑な調整を確保するため、厚生労働省健康危機管理調整会議(以下「会議」という。)を設置するものとする。

第2節 組織

(1)会議の組織は、厚生労働省健康危機管理調整会議に関する訓令(平成13年厚生労働省訓第4号)に定めるところにより、大臣官房危機管理・医務技術総括審議官を主査とし、大臣官房厚生科学課に事務局を置くものとする。

(2)人事異動等により、会議構成員が変更する場合には、前任者は後任者に役割等を十分に引き継ぐとともに、事務局に報告するものとする。

第3節 業務

 会議の業務は、次のとおりとする。

(1)基本指針の作成、実施及び見直しに関し、健康危機管理担当部局間の連絡調整を行うこと。

(2)健康危機管理担当部局における健康危機管理に関し、定期的に情報交換を行い、必要な調整及び次に掲げる対応を行うこと。

ア 健康危機管理担当部局等から提出された健康危険情報及び当該情報に係る対応について、情報交換及び評価分析を行うこと。

イ 会議における意見交換に基づき、健康危機管理面での対応(情報収集及び研究の実施を含む。)が必要とされる場合には、関係部局の役割分担を含め、主査から健康危機管理担当部局の長及び総務課長等(各健康危機管理担当部局の所掌事務に関する総合調整に関する事務をつかさどる課長及びこれに準ずる者をいう。以下同じ。)健康危機管理担当部局の長等に対し必要な要請を行うこと。

ウ 健康危機管理担当部局の長は、主査から要請された事項について、対応の具体策及び実施状況を主査に報告すること。

(3)健康危機管理担当部局における分野別の実施要領の策定等を支援すること。

(4)健康危機管理業務に従事する職員を対象とした危機管理意識を高めるための研修等の実施を推進すること。

(5)現に健康被害が発生し、又は発生のおそれがある場合であって、対応する部局が定まらない場合若しくは複数の部局による総合的な対応が必要であると主査が判断した場合又は健康危機管理担当部局の長又は総務課長等から要請があった場合には、次に掲げる対応を行うこと。

@ 主査は、当該健康危機事例に関係する部局の幹事等を招集し、関係部局における対応等について情報を交換するとともに、関係部局での役割分担を含め、健康危機管理担当部局の長等に対し、必要な要請を行うこと。

A 特に重大な健康被害が発生し、又は発生のおそれがある場合においては、主査は、直ちに会議を招集し、次に掲げる事項についての検討結果を取りまとめ、対策本部の設置の必要性等について大臣官房長に判断を仰ぐとともに、その結果を大臣、副大臣等に報告すること。

ア 当該健康危機事例に関する被害の状況、過去の事例、病原菌等に関する知見等の情報の整理

イ 関係課の範囲及び状況並びに応援体制の必要性

ウ 対策本部(現地対策本部を含む。)の設置の必要性、対策本部の構成、対策本部構成部局と対策本部との役割分担、各担当等の体制


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