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「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いについて


(別添3)

「疫学研究に関する倫理指針」とがん登録事業の取扱いについて

1 がん登録事業については、本指針は適用されないが、実施主体での運用に資するよう、専門委員会で基本的考え方を以下のとおり整理して公表することとする。

○ がん登録事業は、都道府県が実施主体となって、管内の医療機関とともに全県的に実施するものである。
 がん登録事業が計測するがん罹患数・率やがん患者の生存率は、がんの実態把握や対策に必須の指標であり、また、がん登録資料は、がんの予防のための疫学研究に有用である。

○ 本指針は、疫学研究を対象に一般的な規範を定め、研究機関が自ら指針に基づき研究計画の適否を判断するという仕組みのものである。
 このため、がん登録事業は、その適用対象とはならない。

○ しかし、がん登録事業の取扱いについては、本指針の策定に当たり大きな論点となったことから、実施主体での運用に資するよう、専門委員会で以下のとおり整理し公表することとする。

2 がん登録事業は、医療機関からデータを収集して整理するという保健事業であるが、分析して仮説を立て、検証する疫学研究にもそのデータは活用される。
 分析して仮説を立て、検証する段階を含む個々の疫学研究には、本倫理指針が適用される。

○ がん登録事業は、医療機関からデータを収集して整理する保健事業であり、データを収集して整理し、がん罹患率、診断時の病巣の拡がり(臨床進行度)、受療状況、がん患者の生存率などの指標を定例的に計測し、公表するだけであれば研究に該当しない。

○ しかし、がん登録事業で得られたデータは、分析して仮説を立て、検証する疫学研究にも活用される。これらの研究のうち、連結不可能匿名化されていないがん登録データを用いて行う個々の疫学研究に対しては、本指針が適用される。

○ なお、前者についても、個人情報保護等の要請は同じであり、実施主体の判断で本指針の全部又は一部を準用することが望ましい。

3 がん登録事業の計画の審査については、実施主体である地方公共団体が定める審議会等が行うことが考えられる。

○ がん登録事業は、都道府県が実施主体となって、管内の医療機関とともに全県的に実施するものであり、一般の研究とは規模や性格を異にするこ とから、本指針が準用される場合に、計画の意見を聞くべき組織のあり方が問題となる。

○ ところで、現在、がん登録事業の計画については、個人情報保護条例に基づく審議会で審査し、承認を得て実施される例が見られる。

○ そこで、本指針に基づき計画について意見を聞く組織については、実施主体の判断により、新たな組織を設けたり、あるいは既存の審議会などを活用して審査を行うこと等が考えられる。

○ また、がん登録事業においては、実施主体である地方公共団体の管内に所在する多数の医療機関から資料の提供を受けることとなる。
 本指針においては、資料の提供が行われる場合にも倫理審査委員会の承認を求めているが、がん登録事業において全ての医療機関に倫理審査委員会の設置・付議を求めることは現実的でなく、資料提供の適否についても、実施主体が意見を聞く審議会等の組織に判断を求めざるを得ないことから、実施主体からこの組織に一括して付議することが考えられる。

4 本指針が準用される場合、がん登録事業におけるインフォームド・コンセント等の扱いは、指針の原則に従えば概ね7(2)(2)イ及び11に該当するが、計画の審査に当たる審議会等の判断で、他の適切な措置を講じることがあり得るものと考えられる。

○ がん登録事業は、患者の受療情報が医療機関から実施主体に提供され、実施主体(又はその委託を受けた者)が集計等を行う仕組みであり、基本的に、診療の際の医療情報を資料としており、研究のために特に資料を収集するものではない。
 したがって、原則に従うなら、概ね本指針の7(2)(2)イ及び11に該当する。

○ ただし、がん登録事業には、次のような特色があることから、実施主体が、本指針の11(2)柱書き又は(2)(1)若しくは(2)に定める取扱いを行うことができないと判断する場合には、計画を審査する審議会等の承認を経て、本指針の11(2)(3)に基づき、他の適切な措置を講じることができるものと考えられる。

(1) がん登録事業が計測するがん罹患数・率とがん患者の生存率は、がんの実態把握、がん対策の評価・モニタリングのために必須の指標であり、地域がん登録資料は、がんの予防のための疫学研究に有用である。

(2) 公衆衛生上有意義な成果を得るために、全数調査を目標としている。

(3) 重複登録を避けるための照合作業を行うため、また、長期にわたり患者の予後を調査するため、匿名化できない。

(4) 多数の患者を対象とし、しかも、事業の過程を通じて実施主体自身が事業の対象者に接する機会がないため、個別に同意を受けることが困難である。

(5) がん告知を行っていない等の場合には、事業について説明できない。

(6) 適切な情報保護が行われる限り、事業の対象者に不利益を与えることはないと考えられる。

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