通知

中労委総発第0118001号
平成17年1月18日
各都道府県労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

労働委員会規則の一部を改正する規則の施行について

当委員会は、今般、労働委員会規則の一部を改正する規則(平成16年中央労働委員会規則第2号。以下「改正規則」という。)を定めた。改正規則は、平成16年12月22日に公布されたところであり、施行日は平成17年1月1日(下記五の8の(1)本文については同年4月1日)となっている。

今回の労働委員会規則の改正は、労働組合法の一部を改正する法律(平成16年法律第140号。以下「改正法」という。)及び労働組合法施行令の一部を改正する政令(平成16年政令第373号。以下「改正令」という。)の施行に伴いその具体的な手続に係る規定等を整備したものであり、その趣旨及び運用に当たっての考え方は、「労働委員会規則の一部を改正する規則について」(平成16年12月22日付け中労委総発第1222001号)によるほか下記のとおりであるので、御留意の上、その円滑な施行につき特段の御配慮を願いたい。


 ※ なお、本文中の法令等又は用語の略称は以下のとおりである。

規則=労働委員会規則

旧規則=改正前の労働委員会規則

都道府県労委規則=都道府県労働委員会規則

委員会=労働委員会

中労委=中央労働委員会

都道府県労委=都道府県労働委員会

本省通達=「労働組合法の一部を改正する法律の施行について」(平成16年12月1日政発第1201002号 厚生労働省政策統括官発 各都道府県知事あて)

目次

 一 都道府県労働委員会関係

 二 会議関係

 三 資格審査関係

 四 審査手続全般関係

 五 初審の手続関係

 六 再審査関係

 七 特定独立行政法人等に係る不当労働行為事件の処理

 八 労調法第42条の請求

 九 あっせん員候補者名簿の記載事項

 十 その他

 十一 附則

一 都道府県労働委員会関係

1 略称の変更等
 改正法(第19条第2項)により地方労働委員会の名称が「都道府県労働委員会」と改められたことに伴い、略称を「都道府県労委」とする等の改正を行ったこと(第2条第3号等)。

2 都道府県労働委員会規則に関する規定の整備
 改正法(第26条第2項)及び改正令(第26条の3)により、都道府県労委に会議の招集その他一定の事項についての規則制定権が付与されたことを踏まえ、次のとおり都道府県労委規則に関する規定を置いたこと。

(1)都道府県労委の総会の付議事項として、都道府県労委規則の制定及び改廃に関する事項を加えるものとしたこと(第5条第1項)。

(2)臨時総会の招集の請求の通告期限及び総会の招集の通知期限について、都道府県労委規則において規則とは別段の定めをすることができるものとしたこと(第4条第3項及び第4項)。
 これは、改正法及び改正令で「会議の招集に関する事項」が都道府県労委規則で定めることができる事項の一つとされたことに伴い、各都道府県労委の実情に応じ短縮又は延伸した期限を都道府県労委規則で定めることができることを明確にしたものであること。
 なお、これら以外の事項にあっても、改正法及び改正令により都道府県労委規則で定めることができるとされた事項については、規則に反しない限りにおいて、都道府県労委規則で定めることができるものであること(改正法第26条第2項)。

二 会議関係

1 部会関係
 改正法(第24条の2第1項、第2項及び第4項)では、中労委については原則公益委員5人をもって構成する合議体で資格審査及び不当労働行為事件の審査等を行うものとされ、また、都道府県労委については条例で定めるところにより、公益委員5人又は7人をもって構成する合議体で資格審査及び不当労働行為事件の審査等を行うことができるものとされたことから、当該合議体を「部会」と称すること(第3条第1項第3号)とし、部会の構成及び付議事項、部会の招集、定足数及び議事等について整備したこと。

(1)部会の構成等(第10条の2から第10条の4まで)。

イ 部会には、会長が指名する部会長及び部会長代理を置くこととしたこと。ただし、会長がその構成に加わる部会の部会長は、会長としたこと(第10条の2第1項から第3項まで)。

ロ 中労委の部会の数は、3としたこと(第10条の2第4項)。
 都道府県労委の部会の委員構成、数等は条例により定められ、一部の公益委員が重複することにより複数の部会を常設すること又は事件ごとに部会を構成することも可能であるとされている(本省通達第2の2の(4))が、中労委にあっては、5人の公益委員から構成される常設の3部会を置くこととしたものであること。

ハ 部会の付議事項について、不当労働行為事件の審査等公益委員のみで行う権限についての公益委員会議と部会への分配等について定めた改正法(第24条第1項、第24条の2第1項、第2項及び第4項)の規定に基づき、具体的に明示するものとしたこと(第10条の3)。

(イ)部会に付議すべき事項は、次のとおりとしたこと(第10条の3)

[1] 労組法第5条又は第11条の規定による労働組合の資格に関する事項

[2] 労組法第7条、第4章第2節及び第3節並びに第27条の23の規定による不当労働行為に関する事項

[3] その他部会長が必要と認める事項

 [1]の事項及び[2]の労組法第7条、第4章第2節及び第3節の規定による不当労働行為に関する事項は改正法の規定(第24条、第24条の2第1項、第2項及び第4項)から部会に付議すべき事項であり、併せて訴訟における指定代理人に関する事項を労組法第27条の23の規定による不当労働行為に関する事項として、部会に付議すべき事項として明示したものであること。

 また、旧規則第9条第1項第5号に規定する公益委員会議の付議事項と同様に、[3]「その他部会長が必要と認める事項」を部会に付議すべき事項として明示したものであること。

(ロ)なお、中労委の部会については、(イ)の[1]から[3]までの事項のほか、「労組法第25条第2項の規定による都道府県労委の処分(資格審査の処分及び救済命令等の処分)の再審査に関する事項」及び「労組法第27条の10の規定による証人等出頭命令等の審査の申立てに関する事項」も付議すべき事項となること(規則第9条第2項参照)。

ニ 部会の招集、定足数及び議事について、公益委員会議の規定に準ずることとしたこと(第10条の4)。
  なお、部会の定足数及び議事について、改正令(第26条第1項及び第2項)に部会を構成する公益委員の定員の過半数とすることが規定されているが、規則においても確認的に規定することとしたものであること。

(2)その他部会に関する規定の整備
  (1)のほか、部会について、部会の議事をつかさどる部会長が、委員以外の者の発言の許可(第13条)、議場の整備の指揮(第14条)、議事録の承認(第15条)を行うものとする等、公益委員会議の規定に準じて規定の整備を行ったこと。

2 公益委員会議関係
  部会の付議事項の規定の整備に併せて、公益委員会議(公益委員の全員で行う会議をいう。第3条第1項第2号)の付議事項について、不当労働行為事件の審査等公益委員のみで行う権限についての公益委員会議と部会への分配等について定めた改正法(第24条第1項、第24条の2第1項、第2項及び第4項)の規定に基づき、規定の整備を行ったこと(第9条)。

(1)公益委員会議に付議すべき事項は、次のとおりとしたこと。ただし、部会に[1]の事項又は[2]の事項が付議されることとなる場合には、労組法第24条の2第2項(同条第4項ただし書において準用する場合を含む。)に掲げる場合に限ることとしたこと。

[1] 労組法第5条又は第11条の規定による労働組合の資格に関する事項

[2] 労組法第7条、第4章第2節及び第3節並びに第27条の23の規定による不当労働行為に関する事項

[3] 労調法第42条の規定による請求に関する事項

[4] 地方公労法第5条第2項の規定による認定及び告示に関する事項

[5] その他会長が必要と認める事項

 改正法の規定に則して、部会に[1]の事項又は[2]の事項が付議されることとなる場合には、労組法第24条の2第2項(同条第4項ただし書において準用する場合を含む。)に掲げる場合に限って公益委員会議に付議することとしたこと、及び[2]の事項について「第27条の規定による」を「第4章第2節及び第3節並びに第27条の23の規定による」と改めたこと。

(2)中労委にあっては、(1)の[1]から[3]の事項及び[5]の事項のほか、公益委員会議に付議すべき事項は、次のとおりとしたこと。ただし、部会に(2)の[1]又は[2]の事項が付議されることとなる場合には、労組法第24条の2第2項に掲げる事項に限ることとしたこと。

[1] 労組法第25条第2項の規定による都道府県労委の処分(資格審査の処分及び救済命令等の処分)の再審査に関する事項

[2] 労組法第27条の10の規定による証人等出頭命令等の審査の申立て又は異議の申立てに関する事項

[3] 特労法第4条第2項の規定による認定及び告示に関する事項

 改正法の規定に則して、部会に(2)の[1]又は[2]の事項が付議されることとなる場合には、労組法第24条の2第2項に掲げる場合に限って公益委員会議に付議することとしたこと、及び[2]の事項を追加する等したものであること。

3 総会関係
  「部会における決定及び部会長の指名」を総会報告事項として明示したこと(第5条第3項)。
  従来公益委員会議で行われていた決定が部会で行われることとなったこと、及び部会長の指名が委員会の構成に関わる重要事項であることに鑑み、部会における決定及び部会長の指名を総会への報告事項としたものである。

4 審査委員会関係

(1)旧規則では、第2章の2で、審査委員会が特定独立行政法人等に係る事件処理を行うこと並びに審査委員会の招集、定足数及び議事についての規定を置いていたが、部会等の規定の整備に併せて第2章の会議の章でこれらの規定を置くこととしたものである。

(2)改正法で新たに設けられた証人等出頭命令等については、一般事件では公益委員会議(部会)で決定することとされているが、特定独立行政法人等の事件を処理する場合は審査委員会で決定することとすること等、改正法等に基づく所要の整備を行ったこと。また、旧規則では会長(審査委員、主査)が決定することとしていた審査の実効確保の措置の勧告(旧規則第56条の2第2項及び第56条の3第11項)について、一般事件の審査手続との整合を図るため、審査委員会が決定することとしたこと(第10条の5及び第10条の6)。

三 資格審査関係
  資格審査については、旧規則の枠組みを基本的に維持した上で、資格審査を部会で行うときの規定の整備その他改正法に基づく所要の整備を行うものとしたこと(第23条、第25条から第27条まで)。

1 資格審査の事件の処理及び指揮
 改正法の規定(第24条の2第1項、第2項及び第4項)に従い、資格審査の事件の処理は、公益委員会議又は部会で行うものであること。
 また、資格審査は従前同様、会長(資格審査を部会で行うときは、部会長)が指揮して行うものとしたこと(第23条第1項)。

2 審査委員の選任
 改正法(第24条の2第5項)において、労働委員会が1人又は数人の公益委員に資格審査の全部又は一部を行わせることができる旨が法律上明記された。
  これをうけ、改正法第24条の2第5項の規定に基づき、公益委員会議(資格審査を部会で行うときは、部会)による審査に代えて、会長(資格審査を部会で行うときは、部会長)は、従前同様、公益委員(資格審査を部会で行うときは、部会の公益委員)のうちから1人又は数人の審査委員を選び審査を担当させることができるものとしたこと(第23条第2項)。

3 資格審査の決定

(1)改正法(第24条の2第5項)で資格審査の決定は審査委員に行わせることができないことが法律上明記されたことを踏まえ、資格審査の決定は公益委員会議又は部会が行うことを明確にしたこと(第25条第1項)。

(2)資格審査決定書には、会長(資格審査を部会で行うときは、部会長)が署名又は記名押印するとともに、委員会名(資格審査を部会で行ったときは、委員会名及び部会名)及び決定に関与した委員の氏名を記載しなければならないものとしたこと(第25条第1項)。
 部会制の導入に伴い、資格審査の決定や救済命令等の処分について、当該処分を行った合議体の責任の所在を明らかにするために、合議体の長が署名又は記名押印するとともに、決定又は判定に関与した委員の氏名を記載することとしたものであること。

四 審査手続全般関係

1 初審の構成
 改正法の審査等手続の規定に則し、初審の手続(第5章第2節)について、審査の手続に沿って、「救済の申立て」、「審査の開始」、「調査の手続」、「審問の手続」、「証拠」、「合議及び救済命令等」、「和解」、「訴訟」、「雑則」の各「款」に区切って再構成するものとしたこと。

2 手続の主体
 改正法の審査等手続について、その手続の主体が公益委員会議又は部会であるのか、会長、部会長又は審査委員であるのかについて、旧規則と同様に明確にすることとしたこと(第32条第4項及び第5項並びに第35条第1項及び第37条)。

(1)公益委員会議又は部会が行う手続

イ 次の手続について、公益委員会議又は部会が行うことを明らかにするものとしたこと。

(イ)改正法(第24条の2第5項)で、審査委員に行わせることができないとされている手続

[1] 資格審査に係る決定(規則第25条第1項)

[2] 除斥又は忌避の申立てに対する決定(規則第38条第3項)

[3] 証人等出頭命令等(規則第41条の14第1項、第41条の19第1項)

[4] 証人等出頭命令等についての審査又は異議の申立てに関する決定(規則第41条の22第1項、第41条の24第2項)

[5] 救済命令等の発出(規則第42条第1項、第43条第1項)

[6] 緊急命令の申立て(規則第47条第1項)

(ロ)(イ)の外、改正法で新たに設けられた手続、又は当該手続に関連して規則で新たに設けた手続

[1] 証人等出頭命令等の参与委員の意見聴取(第41条の14第2項、第41条の19第6項)

[2] 証人等出頭命令等についての審査又は異議の申立ての却下(第41条の20第5項、第41条の23第3項)

[3] 審査の目標期間の設定(第50条の2第1項)

(ハ)旧規則で、公益委員会議が行うとされている手続

ロ 不当労働行為事件の審査等を部会で行うときに、部会が行うこととなる手続を定めるものとしたこと。

(イ)不当労働行為事件の審査等を部会で行うときは、公益委員会議の文言を部会と読み替えて審査等の手続を行うこととしたこと(第32条第4項)。

(ロ)部会が行うことができず公益委員会議が行うこととなる手続として、第32条第4項及び第5項では、改正法第24条の2第2項第4号に基づき、「証人等出頭命令等についての異議の申立ての却下及び決定(第41条の23第3項、第41条の24第2項で準用する第41条の22第1項)」を明記したこと。

(ハ)(ロ)の外、次の[1]から[3]までの手続については、その規定の趣旨等から、公益委員会議が行うこととなること。

[1] 管轄に係る手続等
 ・ 移送の決定(第30条第1項)
 ・ 管轄の指定請求(第31条第1項)
 ・ 管轄の指定(第31条第3項)
 ・ 確定命令違反等についての地裁又は検察官への通知(第50条第2項)
 ・ 職権による再審査の開始(第52条第1項)

[2] 審査の目標期間の設定(第50条の2第1項)
 審査の目標期間は、委員会全体における審査の実施に関する目標であることから、公益委員会議が行うこととなること。

[3] 労調法第42条の規定による事件の処理
 労調法第42条の規定による事件の処理は、不当労働行為事件の審査等に当たらない(改正法第24条第1項)ことから、部会制は採られておらず、公益委員会議が行うこととなること(改正法第24条第1項、第24条の2第1項、第2項及び第4項)。
 ・ 労調法第37条違反の審査の開始(第58条第1項)
 ・ 労調法第37条違反の疑いがある者に対する警告の発出(第59条)

(2)会長(部会長)が行う手続

イ 規則では従前から、審査手続は公益委員会議が行うものとしつつ、会長に包括的な審査指揮権を付与した上で(旧第33条第3項)、会長が(公益委員会議を代表して)その審査の指揮として行うとする手続が明確にされている。
 これを踏まえ、審査等の手続について、従前同様、公益委員会議(部会)が行うものとしつつ、会長(審査等を部会で行うときは、部会長。以下「会長(部会長)」という。)に包括的な審査指揮権を付与した上で(第35条第2項。旧第33条第3項)、会長(部会長)が(公益委員会議又は部会を代表して)その審査の指揮として行うとする手続を明確にするものとしたこと。
 手続の明確化に当たっては、改正法で新たに設けられた手続又は当該手続に関連して規則で新たに設けた手続については、現行の取扱いも十分考慮して定めることとし、また、旧規則で会長が審査の指揮として行うと定められていた審査等の手続については、引き続き会長(部会長)が審査の指揮として行うこととしたこと。

ロ 審査等を部会で行う場合にも「会長」を「部会長」と読み替えず会長がその審査の指揮として行うこととなる手続として、第35条第1項では、次の[1]から[5]までの手続を明記していること。

[1] 担当職員の指名(第35条第3項)
 担当職員の指名は会長が行うものとしているが、審査等を部会で行うときは、会長は、当該指名を当該部会の部会長に行わせることができるものとしたこと。

[2] 事件の分配等(第36条)
 申立てがあった不当労働行為事件を部会に分配等する手続であるため、会長が行うものとしたこと。

[3] 和解調書の正本の認証(第45条の3第3項)

[4] 執行文の付与に関する手続
 改正法第27条の14第6項に「執行文の付与は、労働委員会の会長が行う。」と規定されていることから、これに関わる手続は会長が行うものとしたこと。
 ・ 執行文への記名押印等(第45条の5第2項及び第4項)
 ・ 執行文付与についての債務名義たる和解調書の原本への記入(第45条の6)
 ・ 執行文の再度付与等の通知(第45条の7)

[5] 都道府県労委会長から中労委会長への通知等
 ・ 都道府県労委会長から中労委会長への通知等(第50条第1項から第3項)
 ・ 中労委会長から都道府県労委会長への通知(第56条第4項)

ハ ロの外、次の[1]から[3]までの手続については、改正法(第24条の2第2項第4号)で証人等出頭命令等についての異議の申立てを審理する場合は公益委員会議が行うとされていることから、会長がその指揮として行うこととなるものであること。

[1] 証人等出頭命令等を部会が行ったときの、異議の申立てに係る意見書及び反論書の提出要請(第41条の24第1項)

[2] 異議の申立ての審理(第41条の24第2項で準用する第41条の21第1項及び第5項)

[3] 異議の決定書への署名又は記名押印(第41条の24第2項で準用する第41条の22第2項)

(3)審査委員に行わせることができる手続

イ 改正法(第24条の2第5項)において、労働委員会が1人又は数人の公益委員に審査等の手続の全部又は一部を行わせることができる旨が法律上明記された。
 これをうけ、担当審査委員制を維持することとして、公益委員の全員による審査に代えて、会長は、公益委員のうちから1人又は数人の審査委員を選び審査を担当させることができるものとしたこと(第37条第1項)。

ロ 部会制の導入に伴い、審査等を部会で行うときは、部会長が審査委員を選任することとしたこと(第35条第1項で読み替えることとする第37条第1項)。
 これは、改正法第24条の2第5項で、合議体の委員に審査等の全部又は一部を行わせることができることとされていることから、審査等を行わせるとすることは合議体の運営の権限に含まれるものといえ、当該合議体の運営の指揮を行う者、すなわち部会の場合は部会長が審査委員の選任を行うことが適当であるからである。

ハ 会長又は部会長がその指揮として行うとすることが明確にされている審査等の手続のうち、審査委員に行わせることができる審査等の手続を、整備し明示したこと(第37条第2項)。

(イ)改正法で新たに設けられた審査等の手続のうち、次の[1]、[6]及び[7]の手続は、四の2の(2)のロに示したとおり会長のみが行うとすることから、また、[2]から[5]までの手続は、審査等を行う合議体の長が行うとすることが適当であることから、審査委員に審査等を行わせることができないこととしたこと。

[1] 事件の分配等(第36条)

[2] 公益委員の回避の許可(第39条)

[3] 証人等出頭命令又は物件提出命令の通知書への署名又は記名押印(第41条の14第4項、第41条の19第5項)

[4] 証人等出頭命令等についての審査又は異議の決定書への署名又は記名押印(第41条の22第2項、第41条の24第2項)

[5] 和解の勧奨への参与の申出の受諾(第45条の2第2項)

[6] 和解調書の正本の認証(第45条の3第3項)

[7] 執行文の付与に関する手続
 ・ 執行文への記名押印等(第45条の5第2項及び第4項)
 ・ 執行文付与についての債務名義たる和解調書の原本への記入(第45条の6)
 ・ 執行文の再度付与等の通知(第45条の7)

(ロ)旧規則で定められていた審査等の手続については、審査委員に審査等を行わせることができるか否かの扱いは、旧規則と同様としたこと。

3 参与委員の参与
 改正法で、労使委員は、審問を行う手続に加え、調査を行う手続(公益委員の求めがあった場合に限る。)及び和解を勧める手続にも参与することができることのほか、一定の行為をすることができることが規定されたこと(改正法第24条第1項ただし書)から、労使委員の参与に関する規定等を整備するものとしたこと。

(1)手続への参与

イ 調査手続への参与
 会長は、調査を行うに当たり、必要があると認めるときは、使用者委員及び労働者委員の参与を求めることができるとしたこと(第41条の2第5項)。
 改正法の規定に則して、従前の「協力を求めることができる」を「参与を求めることができる」と改めたものであること。

ロ 審問手続への参与
 審問を行う手続に参与する委員は、あらかじめ会長に申し出るものとするとしたこと(第41条の6第4項)。
 改正法の規定に則して、従前の「審問に参与する委員」を「審問を行う手続に参与する委員」と改めたものであること。

ハ 和解を勧める手続への参与
 改正法で新たに和解を勧める手続への参与の規定が設けられたことを踏まえ、調査又は審問を行う手続に参与する委員は和解を勧める手続に参与することができること、及び和解を勧める手続に参与することを会長に申し出た委員についても同様とすることを、新たに規定したこと(第45条の2第2項)。

(2)することができる行為

イ 証人等出頭命令等に際しての意見陳述
 改正法で、証人等出頭命令等の決定に先立ち、労使参与委員に意見を述べる機会を与えなければならないとされたこと(改正法第27条の7第4項。本省通達第3の3の(2)のニ及び(3)のホを参照)に基づき、公益委員会議又は部会が証人等出頭命令等をしようとする場合には、調査又は審問を行う手続に参与する委員の意見を求めることとしたこと(第41条の14第2項及び第41条の19第6項)。
 この意見陳述については、公益委員会議又は部会による決定の前に参与委員の出席を求めて行う方法等が考えられるが、参与委員の申出により、出席しての意見陳述に代え、意見書の提出によって行うこととしても差し支えないものであること。

ロ 救済命令等の合議に先立つ意見陳述
 改正法第27条の12第2項の規定に基づき、公益委員会議又は部会が救済命令等を発しようとする場合は、調査又は審問を行う手続に参与した委員の意見を求めることとしたこと(第42条第2項)。
 なお、参与委員の意見陳述は、合議に先立って参与委員の出席を求めて行う方法のほか、参与委員の申出により、出席しての意見陳述に代え、意見書の提出によって行うこととしても差し支えないこととしたこと。
 これは、全労委の審査促進等実行委員会の「審査促進等実行委員会中間報告」(平成16年9月)を踏まえ、従来の運用上の疑義を解消するものとしたものであること。

五 初審の手続関係

1 救済の申立て(第1款関係)

(1)第1款「救済の申立て」として、救済の申立てに係る旧規則第32条、当事者の追加に係る旧規則第32条の2、申立ての却下に係る旧規則第34条及び申立ての取下げに係る旧規則第35条を置き、第32条から第34条までとしたこと。

(2)当事者の追加に係る意見聴取について、審問に参与する委員のほか調査に参与する委員の意見も聴くものとしたこと(第32条の2第2項)。

2 審査の開始(第2款関係)

(1)審査の指揮等

イ 審査は会長(部会長)が指揮して行うこととしたが、この詳細は四の2の(2)のとおりであること(第35条第1項及び第2項)。

ロ 申立てに係る事務を処理する担当職員の指名については、四の2の(2)のロの[1]のとおりであること(第35条第3項)。

(2)事件の分配等

イ 会長は、申立てがあった場合に、当該不当労働行為事件の審査等を部会で行うときは、当該部会を決定するものとしたこと(第36条第1項)。
 委員会が部会制を採るときは各部会において審査等を行うことを原則とするものであり、委員会に不当労働行為事件の申立てがあったときは、会長は部会に事件を分配することとしたものであること。

ロ 会長は、必要があると認めるときは、関係部会の部会長の意見を聴いて、当該不当労働行為事件の審査等を行う部会を変更することができることとしたこと(同条第2項)。
 担当委員の交替に伴う事件の移動、関連事件の大量係属や一括処理に伴う係属事件の見直し等諸般の事情がある場合に、審査等を行う部会を変更することができる手続を定めたものである。
 なお、部会に係属している事件を公益委員会議へ移行させることが必要となる場合は、中労委にあっては改正法第24条の2第2項各号に掲げる場合であり、都道府県労委にあっては同項第2号及び第3号の場合であるので、これに基づき事件の移行の処理を行うことになること。

ハ 部会長は、当該部会で審査等を行っている事件について、改正法第24条の2第2項第1号から第3号まで(都道府県労委にあっては、同項第2号及び第3号)に掲げる場合に該当すると認めるときは、直ちに、会長にその旨を報告しなければならないこととしたこと(同条第3項)。

(3)審査委員(長)の選任
 審査委員(長)の選任については、四の2の(3)のとおりであること(第37条)。

(4)公益委員の除斥及び忌避等
 改正法で新たに設けられた公益委員の除斥及び忌避の制度について、改正法(第27条の2から第27条の5)に定められた基本的な手続を踏まえ、細部の手続を定めたこと(第38条)。
 なお、除斥及び忌避の濫用防止については改正法に特に規定はないことから、規則上特に規定は置いていないが、専ら審査を遅延させることを目的とする申立については、本省通達第3の1の(4)のロのただし書の運用があること。

イ 除斥又は忌避の申立ての方式等

(イ)申立て
 除斥又は忌避の申立ては、委員会に対し、その原因を記載した書面を提出してしなければならないこととしたこと(同条第1項)。

(ロ)除斥又は忌避の原因の疎明
 除斥又は忌避の原因は、申立てをした日から3日以内に疎明しなければならないこととしたこと。改正法第27条の3第2項ただし書の事実の疎明、すなわち忌避の原因があることを知らなかったこと、及び忌避の原因が陳述をした後に生じたことについての疎明も同様としたこと(同条第2項)。

(ハ)決定
 除斥又は忌避の申立てについては、公益委員会議(審査等を部会で行うときは、部会。以下「公益委員会議(部会)」という。)が決定するものとしたこと(同条第3項)。
 これは、改正法では除斥又は忌避の決定は審査委員に行わせることができないとされている(改正法第24条の2第5項)ことから、公益委員会議(部会)の決定によるべきことを確認的に規定したものである(本省通達第3の1の(4)のロを参照)。
 なお、本省通達の第3の1の(4)のハにあるとおり、公益委員が除斥又は忌避された場合であっても他の公益委員を審査委員に選任する等の対応を図ることが可能であり、また、第36条第2項の規定により事件の審査等を行う部会の変更をすることも可能であるので、部会の委員の補充に関する規定は特に置いていないこと。

ロ 公益委員の回避
 公益委員は、除斥又は忌避の事由があるときは、会長(部会長)の許可を得て、自ら審査に係る職務の執行を回避することができることとしたこと(第39条)。
 法定の除斥又は忌避の事由があるときには、当事者からの申立てをまつことなくあらかじめ審査委員自らの判断により審査に係る職務の執行を行わないこととすることが合理的であることから、民事訴訟規則第12条の規定にならって回避の規定を置くこととしたものである。また、回避は、会長(部会長)の許可を得て行うものとしている。
 なお、この規定は、除斥又は忌避の事由があるときに公益委員がその職務から退くことができる権能を認めたものであり、公益委員に回避すべき義務を課したものではないこと。また、回避が除斥原因や忌避原因の存在を確定する効果を有するものでもないこと。

3 調査の手続(第3款関係)

(1)調査の手続
 改正法では、調査手続において証拠調べの方法が制限され、当事者又は証人の出頭を求めてその陳述を聴くことによる証拠調べはできないとされたこと(改正法第27条の7第1項)等を踏まえ、改正法に則した調査手続の整備を行うものとしたこと(第41条の2)。

イ 調査の実施
 会長(審査等を部会で行うときは、部会長。審査委員が選任されているときは、審査委員。以下「会長(部会長、審査委員)」という。)は、必要と認めるときは、当事者又は関係人の出頭を求めてその陳述を聴き、その他適当な方法により、争点及び証拠の整理、改正法第27条の6第1項に規定する審査の計画を定めるための調査等必要な調査を行うことができるものとしたこと(第41条の2第4項)。
 これは、調査において、争点及び証拠の整理、審査の計画の策定のための調査等必要な調査を行うこととして、審問の計画的、効率的な実施の確保を図ることとし、また、証人等の呼出しによる証拠調べはできないとされたことから、「証人」を「関係人」に、「事実の取調べをする」を「必要な調査を行う」に改めたものであること。
 なお、ここで「関係人」とは、代理人のほか、補佐人や将来証人となりうる者等が考えられること。

ロ 調査調書の作成
 調査調書について、期日ごとに作成することを明確にしたこと(同条第7項)。
 また、調査調書の作成方法及び当事者等の閲覧については、従前と同様審問調書の規定(第41条の7第8項前段及び第9項)を準用することとしているが、調査における証拠調べの方法が改められたことに鑑み、作成方法については第41条の7第8項前段のみを準用して、当事者等の陳述を逐語的に記録する等は要しないものとしたこと(同条第8項)。

ハ その他
 改正法施行後においても、調査では、当事者又は将来証人となりうる者の出頭を求めてその陳述を聴くことは、証拠調べとして行うものでない限り可能であること。したがって、争点及び証拠の整理等のために陳述を活用することは今後とも可能であること。
 なお、調査における陳述を事実認定の基礎として用いるためには、改めて陳述の内容を書証として提出させること、陳述の結果を記録した調書を審問において提出し陳述させること等の手続が必要となると考えられること。

(2)書面の提出等及び直送
 不当労働行為の審査実務において準備書面の提出が実態として行われていることを踏まえ、審査の迅速化及び的確化の観点から、陳述のために書面を提出する当事者は、当該書面に記載した事項について相手方が準備をするのに必要な期間をおいて提出しなければならないこととしたこと(第41条の3第1項)。
 なお、事実の認定のために必要な書面の提出をすべき期間を定めることができる旨の規定(同条第2項。旧第33条第7項)及び書面の直送の規定(第41条の4。旧第37条の2)を第3款に置いたこと。

(3)審査の計画の策定等

イ 改正法(第27条の6)で新たに設けられた審査の計画の策定及び変更(以下「審査計画の策定等」という。)は、会長(部会長、審査委員)が行うものとしたこと(第41条の5)。
 審査計画の策定等については全労委でもその運用について検討が進められているところであり、その検討結果についても参照することが望ましいが、運用は各委員会の実情に応じて行っていくことが適当であると考えられることから、規則では審査計画の策定等の主体(会長(部会長、審査委員))のみを示すこととしたものである。

ロ 改正法(第27条の6第4項)で当事者は審査の計画に基づいて審査が行われるよう努めなければならないとされたことから、実務においては策定した審査の計画の主要な内容については当事者が知っておくようにしておくことが考えられること。

ハ なお、改正法、改正令及び改正規則の施行日前に審問の期日を設定している事件については、施行日以降に審査の計画の策定をすることは要しないものとして取り扱うこととして差し支えないこと。

4 審問の手続(第4款関係)

(1)審問の集中実施
 審問は、できる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行わなければならないものとしたこと(第41条の7第5項)。
 全労委の審査業務改善等フォローアップ小委員会報告書(平成15年9月)が「今後重点的に取り組むべき改善策」として「審問における積極的な審査指揮」や「期日設定の工夫」を指摘している(同報告書の第3の[審査手続の改善]の1の(2)の[4]及び[5])ことを踏まえ、審査迅速化の観点から、従前規定していた審問の継続実施(旧第40条第5項)について、期日の係属設定、期日の間隔を短くしての期日設定の頻度をより高めて行うべきことを明確にしたものである。
 なお、審問期日の設定に当たっては、この集中実施の原則に則りつつも、代理人に弁護士がついていない場合等の当事者の負担等について配慮することも必要であること。

(2)審問廷の秩序維持
 会長(部会長、審査委員)は、改正法第27条の11の規定に基づき、審問廷の秩序を維持するために必要な措置を執ることができるものとしたこと(第41条の7第7項)。
 審問の指揮を行う会長(部会長、審査委員)が、審問廷の秩序維持権を有することを明確にしたものである。
 このための必要な措置については、本省通達第3の6の(2)を勘案して、各都道府県労委の実情に応じ、執られるものであること。

5 証拠(第5款関係)
 改正法で証拠調べに関する規定が整備されたことを踏まえ、証拠について一括して規定するものとしたこと(第41条の9から第41条の24まで)。

(1)証拠の総則的規定等
 証人等出頭命令等の強制的な証拠調べ及び任意的な証拠調べに共通の総則的な規定等を整備するものとしたこと。

イ 旧規則第33条第5項(必要な証拠の取調べ)及び第6項(証拠の提出期間の設定)と同様の規定を置いたこと(第41条の9第1項及び第2項)。
 したがって、改正法第27条の7第1項の規定と相まって、従前同様、当事者の申立てにより又は職権で、証人等の呼出しや物件の提出要請を行って証拠調べをすることができるものであること。また、このことを前提として、証人等の尋問の申出・呼出(五の5の(2)及び(3))や書証等の申出(五の5の(7))などについて、具体的手続を特に置くこととしたこと。

ロ 申し出た証拠で必要でないと認めるものは取り調べることを要しないことを明確にしたこと(第41条の9第3項)。
 第41条の9第1項において会長(部会長、審査委員)は必要な証拠調べをすることができるとされていることから、会長(部会長、審査委員)が必要でないと判断した証拠は取り調べることを要しないこととなるものであるが、労組法の改正により、証拠調べに関する規定が整備され、証明すべき事実と証拠(方法)との関係を勘案して証人等出頭命令等を行うこと(改正法第27条の7第1項から第3項まで)等が明確にされたことを踏まえ、証拠調べの原則として当然のことを民事訴訟法第181条第1項と同様に規定することとしたものである。

ハ 改正法(第27条の7第5項)で新たに設けられた職権証拠調べの結果についての当事者からの意見聴取は、会長(部会長、審査委員)が行うこととしたこと(第41条の9第4項)。

(イ)「結果」とは委員会が職権証拠調べの結果得た証拠そのものであること

(ロ)審問廷で職権証拠調べを行ったとき又は審問廷で職権証拠調べの結果を示したときは、職権証拠調べの結果について意見を聴いたことになるので、別途当事者の意見を聴く必要はないこと。
 もっとも、職権証拠調べの結果については、当事者から意見を聴取すればよいのであって、その意見聴取を必ず審問廷で行わなければならないものでないことはもちろんであること。

(2)証人尋問
 改正法で証人の出頭等に関して罰則規定が設けられたこと等を踏まえ、証人の申出及び呼出の手続について整備し、併せて証人の出頭の確保等について新たに規定を置いたこと。

イ 証人尋問の申出

(イ)証人尋問の申出は、証人の氏名及び住所、尋問に要する見込みの時間並びに証明すべき事実を明らかにしてしなければならないとしたこと(第41条の10第1項)。

(ロ)証人尋問の申出をするときは、同時に、尋問事項書を提出しなければならないとしたこと。また、尋問事項書は、できる限り個別的かつ具体的に記載しなければならないとしたこと(第41条の10第2項及び第3項)。

ロ 呼出状の記載事項
 証人尋問の申出に際し尋問事項書が提出されることから、呼出状には尋問事項書を添付することとし、併せて呼出状の記載事項を整備することとしたこと(第41条の11。旧第40条第8項の改正)。
 具体的には、証人の呼出状には、[1]事件の表示、[2]証人の氏名及び住所、[3]出頭すべき日時及び場所を記載し、尋問事項書を添付しなければならないこととしたこと。

ハ 証人の出頭
 証人を尋問する旨の決定があったときは、尋問の申出をした当事者は、証人を期日に出頭させるように努めなければならないこととしたこと(第41条の12第1項)。
 また、証人は、期日に出頭できない事由が生じたときは、直ちに、その事由を明らかにして届け出なければならないこととしたこと(第41条の12第2項)。

(3)当事者尋問
 改正法で証人尋問と当事者尋問とが明確に区分された(改正法第27条の7第1項第1号)ことから、当事者尋問について、証人尋問の手続に準じて所要の整備を行うこととしたこと(第41条の13及び第41条の15)。

イ 当事者尋問について、証人尋問手続の規定(第41条の10(証人の尋問の申出)、第41条の11(呼出状の記載事項)及び第41条の12(証人の出頭))を準用することとしたこと。

ロ 当事者に対しても尋問又は反対尋問をすることができることを明確にしたこと(第41条の15第2項。旧第40条第10項の改正)。

(4)証人等出頭命令

イ 端緒
 証人等出頭命令は、当事者から申立てがあったとき、又は会長(部会長、審査委員)が必要と認めたときに行うものとしたこと(第41条の14第1項)。改正法で「当事者の申立てにより又は職権で」証拠調べを行う(改正法第27条の7第1項柱書き)とされたことを受けたものである。
 また、当事者からの申立手続は、証人尋問の手続に準じたものとしたこと(同条第6項で準用する第41条の10)。

ロ 手続の主体

(イ)改正法第24条の2第5項で証人等出頭命令の決定は審査委員に行わせることができないとされていること等を踏まえ、改正法第27条の7第1項の証人等出頭命令の手続の主体は、証人等出頭命令の処分を行う場合にあっては公益委員会議(部会)とし、その処分を受けて具体的な証拠調べを行う場合にあっては会長(部会長、審査委員)とすることとしたこと。

(ロ)(イ)の考え方に基づき、次のとおり具体的な手続の主体を定めたこと。

[1] 公益委員会議(部会)とする手続
 ・ 証人等出頭命令の決定(第41条の14第1項)
 ・ 参与委員の意見聴取(第41条の14第2項)

[2] 会長(部会長、審査委員)とする手続
 ・ 職権申立て(第41条の14第1項)
 ・ 証人尋問
 ・ その他事務手続

[3] 委員会とする手続
 ・ 証人等出頭命令の通知(第41条の14第3項)

(ハ)(ロ)の具体的な手続の主体を基に、標準的な事務の流れを示すと、次のとおりであること。

[1] 当事者から申立てがあったとき又は会長(部会長、審査委員)が必要と認めたときに、審理を開始する。

[2] 会長(部会長、審査委員)が審理を開始する。

[3] (証人等出頭命令の必要性を認めたときに)公益委員会議(部会)に証人等出頭命令の決定についての審理を申し出る。

[4] 参与委員の意見聴取を経て、公益委員会議(部会)で決定する。

[5] 証人等出頭命令の通知を行う。

ハ 参与委員の意見聴取
 公益委員会議(部会)は、証人等出頭命令をしようとする場合には、参与委員の意見を求めるものとしたこと(同条第2項)。
 したがって、証人等出頭命令の申立てがあっても、証人等出頭命令をする必要がないと判断されるときは、公益委員会議(部会)の審理を求める必要はなく、また、参与委員の意見を求める必要もないこと。

ニ 証人等出頭命令通知書

(イ)証人等出頭命令は、出頭しない場合における法律上の制裁を明らかにした通知書により行うこととしたこと(同条第3項)。

(ロ)証人等出頭命令通知書には、委員会名(決定を部会で行ったときは、委員会名及び部会名)を記載し、会長(決定を部会で行ったときは、部会長)が署名又は記名押印しなければならないこととしたこと(同条第4項)。

(ハ)通知書の記載事項は、証人の呼出状に準じたものとしたこと(同条第6項で準用する第41条の11)。

(ニ)委員会が証人等出頭命令を通知するときは、改正法第27条の10第1項又は第3項の規定により、中労委に審査又は異議の申立てができることを教示しなければならないこととしたこと(同条第5項)。
 なお、証人等出頭命令は取消訴訟を提起することができる処分であることから、改正行政事件訴訟法(平成16年法律第84号)の施行日(平成17年4月1日)以降は、同法第46条に基づき、証人等出頭命令の相手方に対し取消訴訟の被告とすべき者及び出訴期間についても、書面により教示することが必要となること。

ホ 審理の非公開
 証人等出頭命令の審理は、非公開とするものであること。

(5)証人等の尋問の手続
 証人等の尋問の手続は、当事者尋問、宣誓の方式について規定を整備等したほかは、基本的に従前と同様としたこと(第41条の15。旧第40条第9項から第11項まで)。

(6)宣誓の方式
 宣誓に関する具体的な手続を定めるものとしたこと(第41条の16)。
 改正法は、証人及び必要と認めた当事者(証人等出頭命令等による証人又は当事者のほか、任意で出頭した証人又は当事者も含む。)に対して、陳述に際し宣誓をさせるべきことを委員会に義務付けている(改正法第27条の8)ことから、他の行政委員会の例にならって宣誓の方式について整備したものである。

イ 宣誓は、尋問の前にさせなければならないこと(同条第1項)。

ロ 宣誓は、起立して厳粛に行わなければならないこと(同条第2項)。

(イ)車椅子の利用者等起立することが物理的に不可能な者等については、会長(部会長、審査委員)の判断で、運用上配慮することが考えられること。

(ロ)起立させる者の範囲は、最低限陳述をさせる証人等のみとすることのほか、当事者及び証人等のみとすること、傍聴人を除く審問廷にいる者全員とすること、傍聴人を含む審問廷にいる者全員とすること等が考えられ、具体的な対応は各委員会の運用によるものであること。

ハ 会長(部会長、審査委員)は、証人又は宣誓が必要と認めた当事者に宣誓書を朗読させ、かつ、これに署名押印させなければならないこと。当事者又は証人が宣誓書を朗読することができないときは、会長(部会長、審査委員)は、担当職員にこれを朗読させなければならないこと(同条第3項)。
 宣誓書には署名押印が必要とさせることから、この実効を期すためには、証人及び当事者に対して印鑑の所持・携帯をするよう徹底を図る必要があること。ただし、現に印鑑を所持・携帯していない場合には、担当職員がその旨を調書に記載することとする等証人の特定性、宣誓の内容の真正性の担保に配慮しつつ、審査委員の判断により対応すること。

ニ 宣誓書には、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、また、何事も付け加えないことを誓う旨を記載しなければならないこととしたこと(同条第4項)。

ホ 会長(部会長、審査委員)は、宣誓の前に、宣誓の趣旨を説明し、かつ、虚偽の陳述に対する罰を告げなければならないこととしたこと(同条第5項)。

(7)書証等

イ 書証の申出
 書証の申出は、文書を提出し、又は物件提出命令の申立てによりしなければならないこと(第41条の17第1項)。
 また、当事者は、文書を提出して書証の申出をするときは、当該文書を提出するときまでに、[1]文書の表示、[2]文書の作成者、[3]立証の趣旨を記載した証拠説明書を提出しなければならないこと(同条第2項)。

ロ 文書に準ずる物件への準用
 図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件であって、文書でないものについて、書証の申出に関する規定を準用することとしたこと(第41条の18)

(8)物件提出命令

イ 端緒
 物件提出命令は、当事者から申立てがあったとき、又は会長(部会長、審査委員)が必要と認めたときに行うものとしたこと(第41条の19第1項)。
 また、当事者からの物件提出命令の申立ては、改正法第27条の7第6項各号に掲げる事項、すなわち、[1]物件の表示、[2]物件の趣旨、[3]物件の所持者、[4]証明すべき事実、を記載した書面を提出してしなければならないこととしたこと(同条第2項)。

ロ 手続の主体

(イ)改正法第24条の2第5項で物件提出命令の決定は審査委員に行わせることができないとされていること等を踏まえ、改正法第27条の7第1項の物件提出命令の手続の主体は、物件提出命令の処分を行う場合にあっては公益委員会議(部会)とし、その処分を受けて具体的な証拠調べを行う場合にあっては会長(部会長、審査委員)とすることとしたこと。

(ロ)(イ)の考え方に基づき、次のとおり具体的な手続の主体を定めたこと。

[1] 公益委員会議(部会)とする手続
 ・ 物件提出命令の決定(第41条の19第1項)
 ・ 参与委員の意見聴取(第41条の19第6項)

[2] 会長(部会長、審査委員)とする手続
 ・ 職権申立て(第41条の19第1項)
 ・ 物件所持者の審尋(第41条の19第3項)
 ・ 物件の取調べ
 ・ その他事務手続

[3] 委員会とする手続
 ・ 物件提出命令の通知(第41条の19第4項)

(ハ)(ロ)の具体的な手続の主体を基に、標準的な事務の流れを示すと、次のとおりであること。

[1] 当事者から申立てがあったとき又は会長(部会長、審査委員)が必要と認めたときに、審理を開始する。

[2] 会長(部会長、審査委員)が審理を進める。

[3] (物件提出命令の必要性を認めたときに)物件所持者の審尋を行い、公益委員会議(部会)に物件提出命令の決定についての審理を申し出る。

[4] 参与委員の意見聴取を経て、公益委員会議(部会)で決定する。

[5] 物件提出命令の通知を行う。

ハ 物件所持者の審尋
 改正法第27条の7第7項に規定する物件所持者の審尋は、会長(部会長、審査委員)が行うものとしたこと(同条第3項)。

(イ)審尋手続は、委員会が物件提出命令をしようとする場合の物件所持者に対する手続保障のためのものであることから、物件提出命令の申立てがなされた場合であっても物件提出命令を行わないときには、行う必要がないものであること。

(ロ)審尋手続では物件所持者の率直な意見陳述がなされる必要があることから、審尋手続において物件所持者以外の者(物件所持者ではない当事者、当事者の代理人を含む。)の意見を聴くことや立会いを求めることは、適当ではないこと(本省通達第3の3の(2)のトを参照)。

ニ 参与委員の意見聴取
 証人等出頭命令についての(4)のハと同様であること(同条第6項で準用する第41条の14第2項)。

ホ 物件提出命令通知書

(イ)物件提出命令は、[1]事件の表示、[2]提出を求める物件の表示及び趣旨、[3]物件所持者の氏名又は名称及び住所又は所在地、[4]提出すべき期限及び場所、[5]証明すべき事実、[6]提出しない場合における法律上の制裁、[7]委員会名(決定を部会で行ったときは、委員会名及び部会名)を記載した通知書により行うこととしたこと(同条第4項)。

(ロ)物件提出命令通知書には、会長(決定を部会で行ったときは、部会長)が署名又は記名押印しなければならないこととしたこと(同条第5項)。

(ハ)委員会が物件提出命令を通知するときは、改正法第27条の10第1項又は第3項の規定により、中労委に審査又は異議の申立てができることを教示しなければならないこととしたこと(第41条の19第6項で準用する第41条の14第5項)。 なお、物件提出命令は取消訴訟を提起することができる処分であることから、改正行政事件訴訟法(平成16年法律第84号)の施行日(平成17年4月1日)以降は、同法第46条に基づき、物件提出命令の相手方に対し取消訴訟の被告とすべき者及び出訴期間についても、書面により教示することが必要となること。

ヘ 審理の非公開
 物件提出命令の審理は、非公開とするものであること。

(9)証人等出頭命令等についての中労委への審査の申立て

イ 審査の申立て
 証人等出頭命令等について中労委へ審査を申し立てる手続については、資格審査の決定又は救済命令等に対する再審査の手続に準じて整備することとしたこと。

(イ)審査申立ての方式等
 審査の申立ては、当該証人等出頭命令等をした都道府県労委(以下「原処分労委」という。)若しくは地方事務所を経由し、又は直接中労委に、証人等出頭命令等審査申立書(以下「審査申立書」という。)を提出してしなければならないこと(第41条の20第1項)。

(ロ)審査申立書の記載事項等
 審査申立書には、次の[1]から[5]までに掲げる事項を記載し、原処分労委の証人等出頭命令等の通知書の写しを添付して、申立人が署名又は記名押印しなければならないこと(同条第2項)。

[1] 申立人の氏名又は名称及び住所又は所在地

[2] 原処分労委の名称及び審査の申立てに係る不当労働行為事件の表示

[3] 審査を申し立てた証人等出頭命令等の通知書の交付を受けた日付及びその具体的内容

[4] 審査の申立ての要点及び理由

[5] 審査の申立ての日付

(ハ)審査申立書の回付等

[1] 原処分労委は、審査申立書が提出されたときは、直ちにこれを中労委に送付しなければならないこと。中労委は、審査が直接中労委に申し立てられたときは、直ちにその旨を原処分労委に通知しなければならないこと(同条第3項)。

[2] 原処分労委を経由して審査申立書が提出されたときは、原処分労委に提出された日をもって、審査を申し立てた日とみなすこと(同条第4項)。

(ニ)審査申立ての却下
 中労委は、審査の申立てが、改正法第27条の10第1項に規定する期間経過後になされたとき、又は上記(ロ)に示す要件を欠き補正されないときは、公益委員会議(部会)の決定により、これを却下することができること(同条第5項)。

(ホ)審査申立ての取下げ
 申立人は、決定書の写しが交付されるまでの間は、いつでも、書面により審査の申立てを取り下げることができること(同条第6項)。

ロ 審査の申立ての審理
 審査の申立ての審理は、改正法第27条の10第5項により書面によることとされていること等を踏まえ、行政不服審査法等の規定を勘案して規定を整備するものとしたこと。

(イ)手続の主体
 改正法第24条の2第5項に基づき、審査の申立てに関する決定は公益委員会議(部会)が行うものであるが、その審理は中労委会長(部会長、審査委員)が指揮して行うものとしたこと(第41条の21第1項)。
 意見書の提出要請等の事務の円滑な遂行が必要であることから、審査委員が指揮して行うことも可能としたものである。
 なお、審査委員を選任して行わせることが適当でない場合は、公益委員会議(部会)で審理を行うこととなるものであること。

(ロ)意見書の提出等

[1] 意見書の提出
 審査の申立てがあったときは、中労委会長(部会長、審査委員)は、審査申立書の写しを原処分労委に送付し、相当の期間を定めて、意見書の提出を求めるものとしたこと。ただし、手続の迅速化を図る観点から、審査申立書が原処分労委を経由して中労委に提出された場合に、当該審査申立書に併せて原処分労委から意見書が提出されたときは、この限りでないこととしたこと(同条第2項)。

[2] 関係資料の写しの提出
 中労委会長(部会長、審査委員)は、必要があると認めるときは、原処分労委に対し、関係資料の写しの提出を求めることができることとしたこと(同条第3項)。
 証人等出頭命令等の審理は提出された意見書等の書面の審理を基本とするものであり、再審査のように中労委が当該事件の記録の提出を求めることができる(第53条)こととはしていないが、審理の過程で必要と認められる資料については、原処分労委にその写しの提出を求めることができることとしたものである。
 どの範囲の資料が必要であるかは個別の事件の内容に応じて決定していくものであるが、初審手続の続行にできるだけ支障のないよう配慮がなされることが必要である。また、必要と思われる資料(写し)については、中労委の要請をまつまでもなく意見書の送付に併せて提出することが望ましいこと。

[3] 反論書の提出
 原処分労委から意見書の提出があったときは、中労委会長(部会長、審査委員)は、その写しを申立人に送付し、相当の期間を定めて反論書の提出を求めるものとしたこと(同条第4項)。

(ハ)申立人の審尋
 中労委会長(部会長、審査委員)は、改正法第27条の10第6項の規定による職権での申立人の審尋をすることができることとしたこと(同条第5項)。

(ニ)その他留意事項

[1] 中労委における審理中であっても、原処分労委では審査申立てに係る事件に関する審査手続は進めていくことができるものであること。

[2] 審理は原則として書面審理によるものであるが、必要に応じ、書面による以外の任意の調査を行うことができるものであること。

ハ 審査の申立てに関する決定

(イ)中労委は、公益委員会議(部会)の決定により、書面をもって、審査の申立てが理由があると認めるときは証人等出頭命令等の全部又は一部を取り消し、理由がないと認めるときは審査の申立てを棄却するものであること(第41条の22第1項)。

(ロ)決定書には理由を付すとともに、委員会名(部会が決定したときは、委員会名及び部会名)を記載し、中労委会長(部会が決定したときは、部会長)が署名又は記名押印しなければならないこと(同条第2項)。

(ハ)中労委は、決定書の写しを、申立人に交付するとともに、原処分労委に送付しなければならないこと(同条第3項)。
 また、中労委は、決定書の写しの交付に代えて、決定書の写しを配達証明郵便又は配達証明郵便に準ずる役務により、申立人に送付することができること。この場合には、その配達のあった日を交付の日とみなすこと(同条第4項)。

(10)証人等出頭命令等についての中労委への異議の申立て
 中労委のした証人等出頭命令等について異議を申し立てる手続、その審理等については、おおむね中労委への審査の申立手続に準じたものとしたこと(第41条の23及び第41条の24)

イ 異議の申立て

(イ)異議の申立ては、証人等出頭命令等異議申立書(以下「異議申立書」という。)を中労委に提出してしなければならないこと(第41条の23第1項)。

(ロ)異議申立書の記載事項等
 異議申立書には、次の[1]から[5]までに掲げる事項を記載し、中労委の証人等出頭命令等の通知書の写しを添付し、申立人が署名又は記名押印しなければならないこと(同条第2項)。

[1] 申立人の氏名又は名称及び住所又は所在地

[2] 異議の申立てに係る不当労働行為事件の表示

[3] 異議を申し立てた証人等出頭命令等の通知書の交付を受けた日付及びその具体的内容

[4] 異議の申立ての要点及び理由

[5] 異議の申立ての日付

(ハ)異議申立ての却下
 中労委は、異議の申立てが、改正法第27条の10第3項に規定する期間経過後になされたとき、又は上記(ロ)に示す要件を欠き補正されないときは、公益委員会議の決定により、これを却下することができること(同条第3項)。

(ニ)異議申立ての取下げ
 申立人は、決定書の写しが交付されるまでの間は、いつでも、書面により異議の申立てを取り下げることができること(第41条の24第2項で準用する第41条の20第6項)。

ロ 異議の申立ての審理

(イ)手続の主体
 改正法第24条の2第2項第4号の規定に基づき、異議の申立てに関する決定は公益委員会議が行うものであるが、その審理は中労委会長(審査委員)が指揮して行うものとしたこと(第41条の24第2項で準用する第41条の21第1項)

(ロ)意見書の提出等
 異議の申立てがあったときは、中労委会長(審査委員)は、当該異議の申立てに係る証人等出頭命令等をした部会に意見書の提出を求め、当該部会から意見書の提出があったときは、その写しを申立人に送付し、相当の期間を定めて反論書の提出を求めるものとしたこと(同条第1項)。
 中労委が行った処分についての中労委への異議申立てに関する審理ではあるが、当該処分が部会で行われたものであるときは、当該部会からの意見書の提出及び申立人からの反論書の提出を求める手続を設けることとし、手続の適正性の確保及び適正な判断の形成に資することとしたものである。

(ハ)申立人の審尋
 中労委会長(審査委員)は、改正法第27条の10第6項の規定による職権での申立人の審尋をすることができることとしたこと(同条第2項で準用する第41条の21第5項)。

(ニ)その他留意事項

[1] 異議の申立ての審理中であっても、異議申立てに係る事件に関する審査手続は進めていくことができるものであること。

[2] 審理は原則として書面審理によるものであるが、必要に応じ、書面による以外の任意の調査を行うことができるものであること。

ハ 異議の申立てに関する決定

(イ)中労委は、公益委員会議の決定により、書面でもって、異議の申立てが理由があると認めるときは証人等出頭命令等の全部又は一部を取り消し、又は変更し、理由がないと認めるときは異議の申立てを棄却すること(第41条の24第2項で準用する第41条の22第1項(一部読替))。

(ロ)決定書には理由を付すとともに、中央労働委員会名を記載し、中労委会長が署名又は記名押印しなければならないこと(同条第2項で準用する第41条の22第2項)。

(ハ)中労委は、決定書の写しを、申立人に交付しなければならないこと(同条第2項で準用する第41条の22第3項)(一部読替))。
 また、中労委は、決定書の写しの交付に代えて、決定書の写しを配達証明郵便又は配達証明郵便に準ずる役務により、申立人に送付することができること。この場合には、その配達のあった日を交付の日とみなすこと(同条第2項で準用する第41条の22第4項)。

6 合議、救済命令等(第6款関係)

(1)合議

イ 合議
 事件が命令を発するのに熟したときは、会長(部会長)は、公益委員会議(部会)を開き合議を行うこととしたこと(第42条第1項)。
 これは、改正法第27条の12第1項の規定に則したものである。

ロ 参与委員の意見陳述
 四の3の(2)のロのとおりであること(第42条第2項)。

(2)救済命令等の命令書
 救済命令等の命令書には、会長(審査等を部会で行うときは、部会長)が署名及び記名押印するとともに、委員会名(部会が救済命令等を発する場合には、委員会名又は部会名)及び判定に関与した委員の氏名を記載しなければならないものとしたこと(第43条第2項)。
 部会制の導入に伴い、資格審査の決定や救済命令等の処分について、当該処分を行った合議体の責任の所在を明らかにするために、合議体の長が署名又は記名押印するとともに、決定又は判定に関与した委員の氏名を記載することとしたものであること。

(3)なお、救済命令等は取消訴訟を提起することができる処分であることから、改正行政事件訴訟法(平成16年法律第84号)の施行日(平成17年4月1日)以降は、同法第46条に基づき、救済命令等の相手方に対し取消訴訟の被告とすべき者及び出訴期間について、書面により教示することが必要となること。

7 和解(第7款関係)
 改正法で、新たに和解が法律上位置づけられ規定が設けられたことを踏まえ、和解について規定の整備を行ったものであること。

(1)和解の勧奨

イ 和解の勧奨の主体
 会長(部会長、審査委員)は、審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができることとしたこと(第45条の2第1項)。

ロ 和解の勧奨への参与
 四の3の(1)のハのとおりであること(第45条の2第2項)。

(2)和解の認定

イ 和解の認定の主体
 改正法第27条の14第2項に規定する和解の認定は、当事者双方から書面による申立てがあった場合において、会長(部会長、審査委員)が行うものとしたこと(第45条の2第3項)。
 これは、現行の和解の実務を勘案すると、公益委員会議(部会)による認定では事案の迅速かつ的確な処理に支障を来すと考えられ、また、担当審査委員は当該事件の実情に知悉していて認定を行うにふさわしいことから、審査委員が行うことも可能としたものであること。

ロ 和解の認定の通知
 和解の認定があったときは、委員会は、その旨及びこれにより審査の手続が終了した旨を、書面により遅滞なく当事者に通知しなければならないこととしたこと(第45条の2第4項)。

ハ 勧告和解との関係
 旧規則第38条第1項に規定する「和解を勧告すること」は、改正法第27条の14第1項に規定する「和解を勧めること」に含まれるものであり、また、和解に伴って改正法第27条の14第2項による和解の認定があったときに審査の手続が終了することとなることから、従前の規則第38条の規定は廃止することとしたこと。
 ただし、実務上は、和解の勧告は改正法第27条の14第1項の「和解の勧奨」の一つとして今後も行うことができるものであり、その場合事件の終了については、規則第45条の2第3項による和解の認定の手続又は規則第34条第1項による申立ての取下げの手続によるものであること。
 したがって、勧告和解の実務としては、手続の簡素化が図られるよう配慮することが望ましく、例えば、事件の終了が和解の認定の手続によるときは、和解勧告及び勧告の受諾並びに和解の認定の申立て及び認定(並びに和解調書の作成)が同一日になされるよう様式を工夫する等の配慮がなされるべきこと。

(3)和解調書の作成
 改正法第27条の14第4項の規定による和解調書の扱いについては、次のとおりとしたこと。
 なお、和解の合意は任意に履行されることが望ましいことはいうまでもないことであり、和解の認定があれば必ず債務名義を得るために和解調書の作成の申立てが行われるようにする必要はないものであること。

イ 和解調書の作成の主体
 和解調書の作成は、会長(部会長、審査委員)が行うものとしたこと(第45条の3)。

ロ 和解調書の記載事項等

(イ)記載事項

i)和解調書には、次の[1]から[5]までの事項を記載しなければならないこと(第45条の3第1項)。

[1] 事件の表示

[2] 委員会の表示

[3] 当事者及び利害関係者(当事者以外の者であって、労組法第27条の14第4項に規定する合意をした者をいう。)の氏名又は名称及び住所

[4] 和解の成立した日

[5] 金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付に関する事項

 なお、[5]「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付」の内容には、支払又は給付の額・対象のほか、その期限・方法、遅延損害金の定め等が含まれるものであること。

ii)「和解調書」は強制執行に関して債務名義とみなされるものであり、その要件の確実な充足やその範囲の画定等の必要があること等から、その作成に当たっては、次の点に留意すること。

[1] 和解調書には、債務名義となる「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付に関する事項」以外の、事件に関して合意された和解条項も併せて記載しても差し支えないこと。
 ただし、和解調書の作成名義等の混乱を避けるため、債務名義となる「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付に関する事項」を記載する方法として、事件に関して合意された和解協定書等そのものを和解調書に添付することは適当でないこと。

[2] 和解調書においては、債務名義たる和解調書に基づき、支払又は給付の債権又は債務を有することとなる者(組合、組合員、会社等)、支払又は給付の額・対象・期限・方法、遅延損害金の定め等所要の事項について明確にしておくことが必要であること。
 特に、強制執行に当たっては債務者の支払意思が明確となっていることが求められることから、「○○円を支払う」、「○○を給付する」等の表現を用いることとし、「○○円を支払わなければならない」、「○○を給付しなければならない」との表現は用いないこと。

(ロ)署名又は記名押印
 和解調書には、会長(部会長、審査委員)が署名又は記名押印するとともに、和解を勧める手続に参与した労使委員の氏名を記載しなければならないこと(第45条の3第2項)。

(ハ)和解調書の正本の認証
 和解調書の正本には、正本であることを記載し、会長が記名押印しなければならないこと(第45条の3第3項)。この場合、裁判所での執行の実務に鑑み、押印は職印を用いて行うべきものであること。

(4)執行文の付与

イ 執行文の付与の主体
 改正法に「執行文の付与は、労働委員会の会長が行う。」と規定されている(改正法第27条の14第6項)ことから、「執行文の付与」を行う主体は会長であり、これを部会長又は審査委員に行わせることはできないこと。

ロ 執行文の付与に関する手続

(イ)執行文付与の申立ての方式等
 執行文の付与の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないこと(第45条の4)。

[1] 債権者及び債務者の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名及び住所

[2] 和解調書の表示

[3] 民事執行法(昭和54年法律第4号)第27条第1項(請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合)若しくは第2項(債務名義たる和解調書に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする場合)又は同法第28条第1項(執行文を再度付与する場合)の規定による執行文の付与を求めるときは、その旨及びその事由

 また、執行文の付与の申立ては、執行文を付与すべき部分を特定して行うことが必要であること。

(ロ)執行文の記載事項
 執行文には、債務名義となる「金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付に関する事項」のうち、当該執行文の付与の申立てに基づき執行文を付与する部分を特定しなければならないこと。
 このほか、執行文の記載事項は、次のとおりとすること。

i)請求権の一部について執行文を付与する場合
 債務名義たる和解調書に係る請求権の一部について執行文を付与するときは、強制執行をすることができる範囲を執行文に記載しなければならないこと(第45条の5第1項)。

ii)当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文を付与する場合
 民事執行法第27条第2項により債務名義たる和解調書に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文を付与する場合において、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが会長に明白であるときは、その旨を執行文に記載しなければならないこと(同条第2項)。

iii)執行文を再度付与する場合
 民事執行法第28条第1項の規定により執行文を再度付与するときは、その旨を執行文に記載しなければならないこと(同条第3項)。

iv)執行文には、付与の年月日を記載して会長が記名押印しなければならないこと(同条第4項)。この場合、裁判所での執行の実務に鑑み、押印は職印を用いて行うべきものであること。

(ハ)債務名義たる和解調書の原本への記入
 会長は、執行文を付与したときは、債務名義たる和解調書の原本にその旨、付与の年月日及び執行文の通数を記載し、並びに次の[1]、[2]に掲げる場合に応じ、それぞれに定める事項を記載しなければならないこと(第45条の6)。

[1] 債務名義たる和解調書に係る請求権の一部について付与したとき。
 強制執行をすることができる範囲

[2] 民事執行法第27条第2項に規定する債務名義たる和解調書に表示された当事者以外の者が債権者又は債務者であるとき。
   その旨及びその者の氏名又は名称

ニ)執行文の再度付与等の通知
 会長は、民事執行法第28条第1項の規定により執行文を付与したときは、債務者に対し、その旨、その事由及び執行文の通数を通知しなければならないこと(第45条の7)。

8 訴訟(第8款関係)

1)訴訟の指定代理人の指定等
 訴訟の指定代理人の指定に関する規則第46条及び緊急命令の申立てに関する規則第47条第2項を中労委についての規定とすることとしたこと。また、行政事件訴訟法の改正(平成16年法律第84号)により、抗告訴訟の被告適格の簡明化が図られ、処分の取消訴訟については、処分をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合は、被告を行政庁から国又は公共団体とすると改められることに伴い、裁判上国が被告となる場合の取扱い等について所要の整備を行うものとしたこと(第46条から第48条まで)。
 なお、都道府県労委の指定代理人の指定については改正法第27条の23の規定によるものであること。

(2)部会制をとる場合の訴訟への対応
 部会制をとる場合の訴訟への対応については、付議事項についての規定を整備した(第10条の3)ほかは、どのような事件を部会で扱うべきか等について特に規定を置いていないが、これは、委員会における法曹資格者の配置状況等を勘案して、弾力的な対応を図ることができるようにしたものであること。具体的な対応は運用によるものであるが、部会で救済命令等を発した事件は原則として部会が訴訟への対応を行うとすること等も考えられること。

(3)過料事件等についての裁判所又は検察官への通知
 過料事件等についての裁判所又は検察官への通知については、旧規則でも過料又は刑事罰のある事項のすべてについて裁判所又は検察官への通知に関する規定が置かれているというわけではなく、特に重要な場合(緊急命令又は確定命令違反、確定判決により支持された命令違反)に限って規定が置かれている(旧規則第50条)ことに鑑み、改正法により新たに過料又は刑事罰が規定された事項の違反については、通知の規定を特に置くこととしていないこと。

9 雑則(第9款関係)

(1)公示による通知等
 当事者に通知又は文書を交付する場合に、当事者の所在が知れないとき、その他通知又は交付をすることができないときに、公示の方法によることができる通知等として、改正法で新たに設けられた次の[1]から[5]までの通知等を追加したものであること(第49条第1項)。

[1] 証人等出頭命令の通知(第41条の14第3項)

[2] 物件提出命令の通知(第41条の19第4項)

[3] 証人等出頭命令等の審査の決定書の写しの交付(第41条の22第3項)

[4] 証人等出頭命令等の異議の決定書の写しの交付(第41条の24第2項)

[5] 和解の認定による認定及び審査手続終了の通知(第45条の2第4項)

(2)審査の目標期間の設定等

イ 審査の目標期間の設定

(イ)委員会は、改正法第27条の18の規定に基づき、公益委員会議の決定により、審査の目標期間を定めるものとしたこと(第50条の2第1項)。
 改正法では、審査の目標期間については、その決定をどこで行うかは、労働委員会の裁量によるものとして規則に委ねられていることから、全労委総会での議論等を踏まえ、規則では、審査手続の一環として公益委員会議で決定すべきものとしたものである。
 このように、労働委員会では、事件の総体的な目標期間は公益委員会議で決定することが適当であるとしたものであることから、部会で決定するものとはしていないこと。

(ロ)なお、審査の目標期間の設定については、改正法及び改正令により、都道府県労委規則で定めることができる事項の一つとされており、規則の別段の定めとして「総会において決定する」旨定めること、又は都道府県労委規則に審査の目標期間自体を直接定めることは可能であること。
 ただし、審査の目標期間が都道府県労委規則で定められていないときは、労働委員会規則により公益委員会議の決定により定めるものとなること。

(ハ)審査の期間の目標の具体的な規定方法については規定していないことから、審査期間全体の目標を設定する外は、各委員会の自主的な運用によること。
 なお、審査期間全体の目標を設定する方法としては、例えば「現行の平均的な事件の処理期間を○割短縮する」というようなものでも差し支えないこと。
 また、命令事案を特に取り出してその目標期間を定めなければならないというものではなく、命令事案、取下事案、和解事案を含めた各委員会の事件全体についての目標期間の定めとしても差し支えないこと。

ロ 審査の実施状況の公表

(イ)委員会は、毎年少なくとも一回、年報、インターネットの利用その他の方法により、審査の期間の目標の達成状況その他の審査の実施状況を公表するものとしたこと(第50条の2第2項)。

(ロ)「その他の方法」としては、都道府県定期刊行物への掲載、記者クラブ発表資料の配布等が考えられること。

六 再審査関係
 旧規則の枠組みを基本的に維持した上で、改正法等に基づく所要の整備を行ったものであること(第51条から第56条まで)。
 なお、再審査の申立てが、証人等出頭命令等の当否を不服の理由とするものであるときは、却下することができることとしたこと(第51条第5項)に留意すること。

七 特定独立行政法人等に係る不当労働行為事件の処理
 特定独立行政法人等に係る不当労働行為事件の処理については、特定独立行政法人等担当委員が事件の審査を行うこと、地方調整公益委員が審問開始前調査、審問等を行うことができること、中労委の一審制であること等、一般事件と異なる点があること等を踏まえ、一般事件の初審手続の規定によることとしつつ所要の読替規定を置いているところであるが、今回の一般事件に係る規定の見直しに伴い所要の整備を行ったものであること。また、審査の実効確保の措置の勧告について、二の4のとおり一般事件との整合を図るための規定の整備を行ったものであること。
 なお、地方調整公益委員は、審問開始前調査、審問等を行うことができることから、審査の公正さの担保の必要性に鑑み、公益委員の場合と同様、除斥、忌避及び回避を認めることとしたこと。

八 労調法第42条の請求
 労調法第42条の規定による事件の処理手続について、改正法等に基づく所要の整備を行ったものであること。

1 手続の主体
 労調法第42条の規定による事件の処理は、不当労働行為事件の審査等に当たらない(改正法第24条第1項)ことから、部会制は採られておらず、公益委員会議が行うこととなること(改正法第24条第1項、第24条の2第1項、第2項及び第4項)。

2 事務処理手続
 労調法第42条の規定による事件の処理手続に関する管轄、審査及び合議については、改正法の規定を踏まえつつ、従前と同様初審の手続を準用することとしたこと(第61条の2)
 すなわち、旧規則において準用している手続については引き続き準用することとした上で、改正法で新たに設けられた手続について必要な規定は準用することとしたこと。例えば、労調法第42条の請求に係る手続が職権による手続であることから陳述のための書面の提出期間(第41条の3第1項)等の手続は準用せず、また、改正法で特に不当労働行為事件の審査等について取り入れられたと考えられる手続(審査の計画の策定及び変更(第41条の5)等)についても準用しないこととしたこと。
 また、労調法第42条の請求は、改正法(第24条第1項)で労使委員の参与について規定されていないことから、不当労働行為の初審の手続中労使委員の参与に係る規定は適用されないこと。

九 あっせん員候補者名簿の記載事項
 個人情報の保護の重要性に鑑み、あっせん員候補者名簿の記載事項のうち、「生年月日」、「住所」及び「電話番号(又は連絡方法)」を削除したこと(第67条第1項第1号)。

十 その他
 その他所要の整備を行ったものであること。

十一 附則
 改正規則は、平成17年1月1日から施行するものとしたこと。ただし、五の8の(1)本文については、行政事件訴訟法の改正の施行に合わせ、平成17年4月1日から施行するものとしたこと(改正規則附則)。



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