通知

中労委総発第0324001号
平成15年3月24日
各地方労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

労働委員会規則の一部を改正する規則の施行について

当委員会は、今般、労働委員会規則の一部を改正する規則(平成15年労働委員会規則第1号)を定めた。同規則は、本日公布されたところであり、下記一及び二については本日から、下記三及び四については平成15年4月1日から施行される。

今回の改正規則は、(1)全国労働委員会連絡協議会(以下「全労委」という。)の第57回総会において了承された労働委員会規則検討特別委員会(以下「規則特別委」という。)の報告書(以下「規則特別委報告書」という。)を踏まえ規定を整備したこと、(2)行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成14年法律第151号。以下「情報通信技術利用法」という。)の施行に伴い規定を整備したこと、(3)日本郵政公社の設立等に伴う国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律等の改正を踏まえて規定を整備したこと、(4)民間事業者による信書の送達に関する法律(平成14年法律第99号。以下「信書便法」という。)の施行に伴い規定を整備したこと等を主な内容としたものであり、その要旨は下記のとおりであるので、御留意の上、その円滑な施行につき御配慮を願いたい。

一 規則特別委報告書の趣旨を踏まえた規定の整備
 本改正は、平成12年11月に開催された第55回全労委総会において同総会の特別委員会として規則特別委が設置され、平成14年11月に開催された第57回全労委総会に規則特別委報告書が報告されたことを踏まえ、不当労働行為事件の迅速な処理を促進するために審査手続の充実を行うとともに、併せて地方労働委員会事務の自治事務化の趣旨を踏まえた規定の整備を行ったものである。

1 不当労働行為事件の審査手続の充実について
 規則特別委報告書の記の第1に対応するものであり、全労委運営委員会の小委員会として設置された「労働委員会制度のあり方に関する検討委員会」の報告書(平成12年7月)において、労働委員会規則の改正を図ることが適切であるとされた事項について、規則改正を行ったものである。

(1)準備書面、書証等の提出期間の設定について(第33条第6項及び第7項の新設)
 審査の円滑な進行を図るため、会長(審査委員)は、書証等の証拠の取調べに当たっては当該証拠について(第6項)、事実の認定のためにいわゆる準備書面等の書面の提出を求めるときは当該書面について(第7項)、その提出すべき期間を定めることができることとした。
 なお、第7項の「事実の認定のために書面の提出を求めるとき」の「書面」には、準備書面、最後陳述書等当事者から主張・陳述のために提出される書面が広く含まれる。

(2)団体交渉拒否事件の口頭による答弁について(第37条第3項の新設)
 答弁書の提出遅延による審査の遅延の防止については、これまでも第37条第2項ただし書により被申立人が申立てに対する答弁を口頭で行い得る途を開いていたところであるが、団体交渉拒否事件については、時宜を失した救済命令は特に実益に乏しいことから、今般、会長(審査委員)は、調査を開始した後速やかに期日を指定し、被申立人に対して、当該期日に出頭して口頭により答弁することを求めることができることとした。
 期日の指定、調書の作成等口頭による答弁の手続については、昭和52年4月11日付け中労委文第360号の記の四に準じて行われたい。

(3)書面の直送について(第37条の2の新設)
 審査の円滑な進行を図るため、会長(審査委員)は、必要があると認めるときは、当事者に対し、答弁書その他の労働委員会に提出される書面(申立書及び申立取下書を除く。)について、その写しを相手方に対して直接送付すること(以下「直送」という。)を求めることができることとした(第1項)。
 書面の直送を受けた相手方は、受領した旨を記載した書面について、直送するとともに、労働委員会に提出しなければならない(第2項)。
 なお、上記のとおり、「直送」とは「写しを相手方に対して直接送付すること」をいうので、ファックシミリを利用しての相手方への書面の直接の送信は「直送」に当たるものとして取り扱って差し支えないものである。

2 地方労働委員会事務の自治事務化の趣旨を踏まえた規定の整備について
 規則特別委報告書の記の第2に対応するものであり、全労委運営委員会の小委員会として平成12年11月に設置された「制度基本問題検討ワーキンググループ」の報告書(平成14年5月)において、労働委員会規則の改正が適当であるとされた事項について、規則改正を行ったものである。
 内容としては、平成12年4月の地方分権推進一括法の施行に伴い、地方自治法の機関委任事務の制度が廃止され、地方労働委員会事務については自治事務とされたことを踏まえ、次のとおり規定の整備を行ったものである。

(1)総会の開催回数について(第4条第1項の改正)
 定例総会の開催回数について、「毎月2回」から「毎月1回以上」に改めた。
 非常勤の委員で構成される労働委員会としては、定期的に総会を開催することでその機能を保持することが考慮されなければならないことを踏まえつつ、各労働委員会が事件の係属数その他の実情に応じて総会の開催回数を定めることができるよう、労働委員会規則では月間の開催回数の下限のみを定めることとしたものである。

(2)公益委員会議の付議事項について(第9条第1項第5号の新設)
 第9条第1項第1号から第4号までに定める事項以外の事項について公益委員会議に付議することができることを明確にするため、公益委員会議の付議事項として「その他会長が必要と認める事項」を追加した。

(3)記録の整理について(第28条、第28条の5及び第57条の削除並びに第61条の2の改正)
 不当労働行為事件の審査等について、担当職員は、一件記録を整理し、会長の確認を受けるものとしているが、これらは事務遂行の中で各労働委員会の判断と責任において当然行われるべきものであることから、労働委員会規則中からこれらに係る部分を削除した。

(4)地方労働委員会から都道府県知事に対する報告について(第84条の改正)
 地方労働委員会から都道府県知事に対する報告は地方労働委員会の判断と責任において行われるべきものであることから、労働委員会規則中から当該報告に係る部分を削除した。

(5)地方労働委員会から中央労働委員会に対する報告について(第85条の改正)
 地方労働委員会会長から中央労働委員会会長に対する報告の簡素化を図った。
 具体的には、総会の経過概要及び地方公営企業労働関係法第5条第2項関係取扱状況の報告を廃止し、委員会月別概況及び労働組合資格審査月別状況の報告頻度を「月ごと」から「四半期ごと」に改めた。

二 情報通信技術利用法の施行に伴う規定の整備(第10章の2の新設)
 情報通信技術利用法が平成14年12月13日に公布され、平成15年2月3日に施行された。この法律は、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化及び効率化に資することを目的とし、行政機関等に係る申請、届出その他の手続等に関し、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により行うことができるようにするための共通する事項を定めており、主務省令等で定めるところにより、現在、法令上書面等により行うこととしている行政手続等について電子情報処理組織を使用して行わせることができることを規定している。
 このため、労働委員会規則について、第10章の2を新設して、労働委員会への申請、労働委員会からの処分通知等について、オンラインで行うことを可能とする根拠規定を置くとともに、情報通信技術利用法の施行に当たり労働委員会規則において必要な事項を定めたものである。定義規定(第85条の2の新設)を除く個別の規定における趣旨は以下に掲げるとおりである。
 なお、情報通信技術利用法及びそれに基づく今般の労働委員会規則の改正は、法令上各労働委員会に行政手続等のオンライン化の義務を負わせる趣旨ではなく、各労働委員会において体制が整備された場合においてオンラインで申請等を行うことを法的に許容する趣旨である。
 また、具体的にどの手続をオンライン化の対象とするかは、各労働委員会の判断に委ねられているが、情報通信技術利用法第10条又は第11条により、情報通信の技術の利用に関する状況については、インターネットの利用その他の方法により公表されるものとされている。

1 対象となる手続の指定(第85条の3及び第85条の7の新設)
 概括的にオンライン化の対象となる手続を掲げている規定である。オンライン化の対象となる手続規定について労働委員会規則等で具体的に列挙することとはしていないので、対象となる手続については各労働委員会のシステム上等において明示すれば足りる。
 なお、労働委員会間で行われる報告その他の通知については、第85条の3の申請等には含まれず、第85条の7の処分通知等に含まれることとしている。

2 申請等の入力事項等(第85条の4の新設)
 電子情報処理組織を使用して申請等を行わせる場合の入力事項等について規定したものである。
 第1項の「委員会が入力を求める事項」は、申請等の内容そのもののほか、申請者のメールアドレスや連絡先等を想定している。また、「委員会が定める技術的基準」とは、申請等に当たり申請者の入力事項が労働委員会で認識できるようなオペレーションシステム(OS)を申請者の入力装置が備えていることを要求するものであり、具体的にはシステム上等で表示することを想定している。
 第2項は、申請等に当たり必要な添付書類があればオンラインにより添付できるものとしたものであり、対象手続等について具体的にはシステム上等で示すこととなる。
 第3項は、申請等に当たり、労働委員会が様式等のプログラムを申請者に対し付与する場合を想定して規定したものである。

3 電子署名等(第85条の5の新設)
 申請等について、労働委員会が電子署名等を要することとする場合の規定を定めたものである。電子署名の要否についても、具体的にはシステム上等で示すことになる。
 なお、第1項第3号の電子証明書は、政府認証基盤と相互認証を行っている民間認証局によって個人又は法人に発行される電子証明書を想定しており、「委員会が定める技術的基準」によち労働委員会の使用するシステムで当該申請等に係る電子署名の有効性等について認証ができるものに限るものとする。
 第2項から第4項までは、IDパスワードを使用して申請を行う場合の規定である。なお、申請等について電子署名方式又はIDパスワード方式のいずれかを利用するか、両方とするか、不要とするかは、各労働委員会の裁量となるものであり、具体的にはシステム上等で示すこととなる。
 第5項については、IDパスワードを取得した後に登録事項に変更がある場合の手続を定めた規定である。

4 署名等に代わる措置(第85条の6の新設)
 情報通信技術利用法第3条第4項の規定に基づき、法令上署名等をすることとしている申請等について、当該署名等に代える措置を規定したものである。内容としては前条とほぼ同様のものとなっている。

5 処分通知等の入力事項等(第85条の8の新設)
 電子情報処理組織を使用して労働委員会が行うことのできる処分通知等について規定したものである。
 第1項は、労働委員会における処分の相手方が、申請者以外の者に及ぶことがあることを考慮し、オンラインで申請が行われた場合であっても処分通知等の相手方の事前の承諾が必要としたものである。
 第2項は、労働委員会からの処分通知等については、単にメールで労働委員会から送信する場合だけでなく、処分通知等を受ける者が労働委員会の使用に係るファイルに記載された事項をダウンロードする場合があることを想定し、ファイルに記録することを規定上求めている。
 なお、各労働委員会の電子署名及び電子証明書については、具体的な様式は各労働委員会において定めることとなる。

6 縦覧等の方法(第85条の9の新設)
 電磁的記録による縦覧等についての方法を定めた規定である。具体的には、あっせん員候補者名簿の閲覧について適用されることとなるが、どの方法により公表するかについては各労働委員会において決することとなる。

7 情報通信技術利用法の適用を受けない申請等の取扱い(第85条の10の新設)
 情報通信技術利用法は、法令上書面によるものとされている手続についてオンライン化を可能とする趣旨の法律であるため、法令上書面によるとされていない手続であってもオンラインによる申請等を行うことができるように規定上の整備を行ったものである。

三 日本郵政公社法施行法による国労法等の改正に伴う規定の整備等
 日本郵政公社法施行法(平成14年法律第98号)において、「国営企業及び特定独立行政法人の労働関係に関する法律(国労法)」が「特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(特労法)」に、「国営企業等担当委員」が「特定独立行政法人等担当委員」に名称変更されたこと等に伴い、労働委員会規則においても下記1及び2により、所要の規定の整備を行った。

1 法令の名称について「国労法」を「特労法」に、「国労法施行令」を「特労法施行令」に改めること(第2条第1号等の改正)

2 「国営企業等」を「特定独立行政法人等」に、「国営企業等担当委員」を「特定独立行政法人等担当委員」に、「国営企業等担当委員会議」を「特定独立行政法人等担当委員会議」に改めること等(目次の第5章第3節の2、第3条第3項第2号等の改正)
 併せて、一般企業における不当労働行為事件の審査手続との整合を図るため、特定独立行政法人等における不当労働行為事件の審査手続に係る規定について所要の整備を行った(第56条の2第2項及び第56条の3第11項の表の改正)。

四 信書便法の施行に伴う規定の整備
 信書便法の施行に伴い、従来配達証明郵便により当事者に送付することができるとされていた命令書の写し等又は特定独立行政法人等事件に関する仲裁裁定書の写しについて、民間事業者の行う配達証明郵便に相当する信書便役務も利用できることとしたものである(第44条第2項及び第81条の23第3項の改正)。



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