通知

中労委文発第855号
昭和40年8月26日
各地方労働委員会会長 あて
中央労働委員会会長

地方公営企業労働関係法の改正に伴う労働委員会規則の改正について

地方公営企業労働関係法(昭和二十七年法律第二八九号。以下「地方公労法」という。)は、去る五月十八日公布された 地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律(昭和四十年法律第七〇号)により、職員の団結権に関する規定を中心とした改正が行なわれ (附則第四項は、地方公務員法の一部を改正する法律[昭和四十年法律第七一号]によつてさらに改正された。)、この改正法律は、在籍専従に関する 規定の改正に係る部分を除き、昭和四十年八月十五日から施行された。また、新たに地方公営企業労働関係法施行令(昭和四十年政令第二七七号。 以下「施行令」という。)が制定され、改正法律の施行と同時に施行された。これらの法令の施行に伴い、当委員会においては、労働委員会規則の一部を 改正する規則(昭和四十年中央労働委員会規則第一号)を定め、この規則は、昭和四十年八月十四日公布、翌十五日から施行された。

今回の規則改正は、前記のごとき地方公労法の改正に伴い、当然手直しを要する箇所を改めたほか、新たに労働委員会が行なうことと なつた地方公労法第五条第二項の事務に関し、必要な規定を設けたものであるが、その改正の要点及び運用にあたつての考え方は下記のとおりであるので、 御留意の上、業務の円滑な運営につき御配慮を願いたい。

一、公益委員会議について
  1. (一)改正後の地方公労法第五条第二項の規定による事務の処理には、同法第十六条の二の規定により、公益を代表する委員のみが 参与することとされたので、この事務に関する公益委員の会議も、規則にいう公益委員会議であることを明らかにした(第三条第一項第二号)。
  2. (二)前記(一)と同様の趣旨から、「地方公労法第五条第二項の規定による認定及び告示に関する事項」を 公益委員会議の付議事項として追加した(第九条第一項第四号)。
二、認定及び告示の事務処理について
改正後の地方公労法第五条第二項の規定により、地方公営企業の職員が結成し、又は加入する組合について、職員のうち、 労組法第二条第一号に規定する者の範囲を労働委員会が認定して告示することとなつたので、この事務に関し、第四章の二として新たに一章を設け、 その手続きを定めることとした。
改正前の地方公労法第五条においては、地方公営企業の職員以外の者は、職員の組合の組合員又は役員になることができないこと とし、また職員のうち、管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取り扱う者は、組合を結成し、又はこれに加入することができないこととされて いたが、改正法律により、職員の団結権に関するこれらの制限規定が削除され、地方公営企業の職員は、労組法の定めるところにより、自由に組合を 結成し、又はこれに加入することができることとなつた。またこの改正に伴い、前記管理又は監督の地位にある者等の範囲は、政令で定める基準に従い 条例で定めることとしていた同条第二項の規定も削除され、同項に基づく政令も、施行令の附則により廃止された。したがつて、地方公営企業の職員が 結成し、又は加入する組合については、もつぱら労組法第二条によることとなつたわけであるが、改正法律は、この労組法第二条第一号に規定する いわゆる使用者の利益代表者の範囲を、労働委員会が認定して告示することとしたものである。
この事務を行なう労働委員会は、施行令第一条第一項の規定により、当該職員が勤務する地方公営企業の主たる事務所の所在地を 管轄する地方労働委員会又は船員地方労働委員会である。なお、この認定及び告示の事務は、労組法第二十五条第二項の規定による再審査又は 行政不服審査法の規定による不服申立ての対象にはならない。
(一)認定手続の開始(第二十八条の二)
  1. (イ)認定の手続は、当該職員が勤務する地方公営企業又は当該職員が結成し、若しくは加入する組合からの 申出その他の事由に基づき、「公益委員会議において必要と認めた場合」に開始することとした(第一項)。 地方公労法は、労組法第二条第一号のいわゆる使用者の利益代表者の範囲について、労働委員会が職権をもつて認定の手続を 行なうことを建前としており、改正規則はその端緒として「申出」又は「その他の事由」の二つの場合を規定したのであるが、 地方公営企業の労使関係の実情に即するという見地から、本規定の運用にあたつては、認定手続は、労使からの申出をまつてこれを 開始することを原則とされたい。 また、「申出」をするものは、地方公営企業又は組合であるが、当該企業の管理者、管理者が置かれていない場合は、 当該企業を経営する地方公共団体の長及び当該企業の職員が直接加入する組合の代表者から申出がなされることが実情に添うものと 考えられる。
  2. (ロ)前記の申出は、理由を明示した書面で行なわなければならないこととした(第二項)。 「理由」の記載は、公益委員会議が認定手続を開始するか否かの判断をするに必要な具体的事情例えば地方公労法第五条第二項の 規定に係る組合があり、これについて未だ告示がなされていない旨、あるいは特定の職が労組法第二条第一号に規定する如き職務権限を 有しており又は有していないため、すでになされている告示(改正法律附則第二条の経過措置に係る告示を含む。)に記載されている 者の範囲に追加し、又はこれから削除すべきである旨等を明らかにして行なうことを要するものとする。
  3. (ハ)認定の手続を開始することを決定したときは、地方公営企業及び組合にその旨を通知することとした(第三項)。 これは、認定・告示に関係ある労使から資料を提出させ、又は関係者の出頭を求めることのあることを考慮したものである。したがつて、一企業の職員が加入する単位組合が二以上あるような場合には、これらの組合のすべてに通知すべきものである。 また、申出はあつたが、認定の手続を開始しないことを決定したときは、当該申出を行なつたものに、適宜な方法によりその旨を通知されたい。
(二)認定手続(第二十八条の三)
認定を行なうための手続として、調査の方法(第一項)、調査の担当者(第二項)、公益委員会議の認定(第三項)に関し規定を設けた。
第一項にいう「関係者」とは、当該地方公営企業及び組合はもちろんその他労働委員会が認定にあたつて事実関係を明らかにするため必要と認めた者を含む趣旨と解されたい。
なお、調査は、労使から必要な資料を提出させ、関係者の出頭を求め、その他適宜の方法によりなしうるわけであるが、 特に地方公営企業及び組合の代表者の出頭を求めて直接事情を聴取することが望ましい。この場合、組合について、前記二(一)(ハ)と同様の 事情がある場合には、これらの組合のすべてから事情を聴取するよう配慮されたい。
(三)告示(第二十八条の四)
  1. (イ)委員会は、認定をしたときは、遅滞なく告示しなければならないこととした(第一項)。 なお告示の方式については、施行令第一条第二項の規定により、当該都道府県の規則の公布の例によることとされている。
  2. (ロ)告示に記載すべき事項を定めた(第二項)。 第二号は、労働組合の固有の名称又は労働組合の包括的表示を記載することとしたが、そのいづれを用うべきかは、実情に応じて措置されたい。 第三号については、勤務箇所、職名を明らかにして記載することとしたが、その記載については、当該企業の職員について労組法第二条第一号に規定する者の範囲が具体的に明らかとなる程度の表示であることを要する。
  3. (ハ)認定の結果、公益委員会議において、前告示に示した労組法第二条第一号に規定する者の範囲につき変更を必要としないと 決定した場合は、その時点において前の告示の内容のとおり認定したものであるから、改めて告示することとされたい。 告示の内容については、前告示に記載した労組法第二条第一号に規定する者の範囲を改めて表示する必要はなく、 ○月○日告示した内容のとおりとする趣旨の記載で足りる。
(四)改正前の地方公労法第五条第二項の規定に係る条例の取扱いについて
改正法律附則第二条に係る条例がある場合は、改めて認定することなく告示するが、告示においてそれが 改正法律附則第二条の経過措置に係るものであることを示すほか、規則第二十八条の四第二項によること。 ただし、条例の内容が具体的職名を明確にしていないため告示に適さないと認められるものについては、経過措置に係る告示は行なわないこと とするが、当該労使に対しては、適宜の方法により、その旨を通知することとし、認定手続の開始は、前記二(一) (イ)に示したところにより労使からの申出をまつてこれを行なうこととされたい。
なお、条例があつても、地方公労法の施行の際、組合が現に存しない場合は、改正法律の附則第二条の適用はないから、告示する必要はない。
(五)記録の整理(第二十八条の五)
規則第二十八条、同五十七条、同第六十二条と同様、認定及び告示の事務に関しても、記録の整理について規定を設けた。
三、地方公労法第十二条の規定による解雇に係る不当労働行為の申立ての取扱いについて(第三十四条第一項、第三号、第四号)
地方公労法第十一条の規定に違反する行為をした職員は、地方公労法、労組法、労調法の手続に参与し、又は救済を受けることができないこととして いた改正前の地方公労法第十二条第二項の規定が、今回の改正により削除され、また新設された第十六条の三第一項の規定により、第十二条の規定による 解雇に係る不当労働行為の申立てについては、申立期間が二月以内とされた。これに伴い、規則第三十四条第一項第四号を削除し、また、上記の申立が 解雇の日から二月を経過した後になされたものであるときは、これを却下する趣旨の規定を新たに第四号として設けるとともに、これに関連して同項第三号に所要の改正を行なつた。
四、報告(第八十五条第一項第四号)
地方公労法第五条第二項の認定及び告示の事務に関しても、告示の都度、中労委に報告することとした。
なお、中労委としては、報告のあつた告示について適宜の方法により全国的に周知をはかる方針である。

以上

トップへ