平成20年12月18日

中央労働委員会事務局

第一部会担当審査総括室

室長西野幸雄

Tel03−5403−2157

Fax03−5403−2250

綿屋田島酉二郎商店不当労働行為再審査事件
(平成19年(不再)第69号)命令書交付について

中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成20年12月17日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

−命令のポイント−

Aの雇止めは、Aが非違行為に及んだことを奇貨として、同人の排除により、組合支部の組織及び活動等に相当の支障が生ずることを認識しつつ行われたものと認められ、これが労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するとした初審命令の判断は相当である。

ただし、救済方法については、Aが非違行為に及んだことを自認しており、当該行為自体は許されるものではないから、初審命令交付日までの期間については、賃金相当額の半額に限ってバックペイを命じることが相当である。

I当事者

再審査申立人有限会社綿屋田島酉二郎商店(以下「会社」)

再審査被申立人全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合(以下「組合」)

全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合たじま支部(以下「支部」)

II事案の概要

本件は、会社が支部組合員Aを雇止めにしたこと(以下「本件雇止め」)が不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。

初審東京都労委は、会社に対し、[1]Aを原職又は原職相当職に復帰させること、[2]復帰する日までの間の賃金相当額を支払うこと、[3]文書交付等を命じたところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。

III命令の概要

主文の要旨

初審命令主文(II2[2])を次のとおり変更し、その余の再審査申立てを棄却する。

初審命令交付日までは賃金相当額の半額を、その翌日から復帰までは賃金相当額をそれぞれ支払うこと。

判断の要旨

(1)本件雇止めの合理性の有無について

非違行為の内容について

会社はAが長期の商品持出し行為に及んでいたと主張するが、証拠上、Aが加担したとされる非違行為で明確に認められるものは、自認した2件のサケ持出し加担行為にとどまる。

Aの態度について

事情聴取時のAの言動については、会社から十分な事実確認を受けることなく、自主退職を促されたことから、不公平で納得できないとの感情に基づくものであったと認められ、これをことさら重視することは相当でない。

他の処分例との均衡について

会社では、これまで従業員の商品持出しについて本部に報告された事例はなく、各店舗において内々に処理され、店長が売上金を横領した場合でも、降格処分にとどまっていたことに照らすと、本件雇止めは他の処分例との均衡を欠いている。

以上に照らすと、本件雇止めの合理性について疑問を感じざるを得ない。

(2)本件雇止めはAが組合員であることを理由とするものか

本件雇止め時の労使事情

本件雇止め当時、支部の組合活動は活発であり、労使対立も厳しかったと認められる。

Aの組合活動

Aは、支部で唯一の女性かつパート社員であり、当該店舗における唯一の組合員として、自己の労働条件に関する団交で、会社側の提案を撤回させたり、労働者過半数代表選挙に立候補したり、正社員やパート社員からサービス残業問題についての相談を受け、それを支部に報告するなどしていた。そのようなAの言動が、会社にとって相当目障りであったことは想像に難くない。

組合が本件雇止めにより受ける影響の程度

Aは、唯一のパート社員として、パート社員のサービス残業問題を提起するなど、その組合活動における存在感は大きかった。また、当該店舗で唯一の組合員であるなど、Aの存在は重要であったと認められる。よって、本件雇止めが、支部の組織及び組合活動等に与える影響は相当大きいものといえる。

本件雇止めに至る会社の一連の対応について

本件雇止めに至る会社の一連の対応をみると、会社は、本件雇止めに際し、Aの非違行為を確認するための必要な調査を行っているとはいいがたく、また、会社が行った調査の内容もAを重く処分するための調査に偏っていたと評価せざるを得ず、明らかに異例な対応であり、 会社が当初から本件非違行為を奇貨としてAを排除する意図を有していたことを窺わせるものといえる。

以上によれば、本件雇止めは、Aが組合員であることを理由とした不利益取扱いであると認められ、また、Aを会社から排除することによって、支部の組織及び活動を弱体化するものと認められることから、これが労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当する旨の初審命令の判断は相当である。

(3)救済方法の相当性について

Aが本件雇止めにより受けた負担、精神的苦痛等に加えて、組合の受けた侵害の回復という観点を併せ考慮すれば、初審命令が中間収入を控除することなくバックペイを命じたことをもって、不当ということはできない。

ただし、A自身が、2度のサケ持出し加担行為に及んだことは自認していることから、初審命令交付日までの期間については、賃金相当額の半額に限ってバックペイを命じることが相当である。

【参考】

初審救済申立日平成17年11月9日(東京都労委平成17年(不)第83号)

初審命令交付日平成19年12月12日

再審査申立日平成19年12月18日(使)


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