平成20年7月17日
中央労働委員会事務局 第二部会担当審査総括室長 榎 本 重 雄 Tel 03−5403−2176 |
モービル石油(研修)不当労働行為再審査事件(平成10年(不再)第49号)命令書交付について
中央労働委員会第二部会(部会長 菅野和夫)は、平成20年7月17日(以下、平成の元号を省略。)、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。
【命令のポイント】 社内研修における支店管理職の発言に対する会社の対応が、支配介入には当たらないとされた。 |
I 当事者
再審査申立人 |
スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合大阪支部連合会 (大阪府豊中) (以下「支部連」) 申立外スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(以下「組合」)の下部組織で、初審結審当時(10年6月)の組合員数は8名。 |
再審査被申立人 |
エクソンモービル有限会社(東京都港区) 初審申立て当時はモービル石油株式会社(以下「会社」)と称していたが、エッソ石油(有)外4社との業務統合(10年7月)を経て、エッソ石油(有)外3社と合併(14年6月)、現在の名称となった。 |
II 事案の概要
6年3月16日に、大阪支店で開催された社内研修(以下「本件研修」)において、支店管理職A(以下「A」)による同和地区等に関する発言に対し、研修リーダーのB(以下「Bリーダー」)が同発言を正さずに本件研修を終了させたことが会社及び大阪支店による支部連に対する支配介入に当たるとして、支部連より救済申立てがあった事件である。
10年12月21日に、初審大阪府労委は、大阪支店に対する申立てを却下し、会社に対する申立てを棄却したところ、支部連はこれを不服として再審査を申し立てた。
III 命令の概要
1 主文の要旨
本件再審査申立てを棄却
2 判断の要旨
(1) 大阪支店の被申立人適格について
大阪支店は法人たる会社の部分的な組織に過ぎないから、不当労働行為の責任主体たる使用者には当たらず、その救済手続における被申立人として認めることはできない。
(2) 本件研修における会社の対応について
ア 本件研修におけるAの発言は、Bリーダーの研修の冒頭で「勉強の場だから、どんなことを言っても構いません。」等との発言を受けて、同和問題に関する自らの過去の経験や考えを述べたものであること、Aはいわゆるラインの管理職ではなく、当日は研修を受ける立場で参加し、当該発言が会社の意を体して行ったことを窺わせる事情は認められなかったことから、一従業員としての立場で自己の経験や考えを述べたものとみるのが相当である。
また、Aの発言は、質問者が支部連組合員であることを理由に無視したものとは認められず、また、言辞自体に支部連など組合に対する敵対的なニュアンスが含まれていたとは認めがたい。
したがって、Aの言動自体は、支部連など組合への敵対的な行為であったとは認められない。
イ Bリーダーは、研修のリーダーであったから、本件研修において会社を代表する立場にあったことが認められるが、上記アのとおり、そもそもAの発言自体が支部連など組合への敵対的な行為であったとは認められないことから、仮にBリーダーがAの発言に対する適切な指導をせず、これを放置したとしても、Bリーダーの行為が支部連に対する支配介入に当たると解することはできない。
また、Bリーダーは本件研修以降にAに対し補講を行ったが、支部連団交で、その具体的内容等を十分に説明していないことが認められ、BリーダーがAに対して的確な指導を行ったか否かは明らかではないが、仮にそれがなされていなかったとしても、Aの発言が支部連など組合への敵対的な行為であったとは認められないので、補講におけるBリーダーのAに対する対応いかんによって、Bリーダーの行為が支部連に対する支配介入に当たると解することができないとの判断が左右されることはない。
ウ 本件研修におけるA及びBリーダーの言動については、支部連組合員の組合活動を阻害し、又は組合の団結を破壊するような態様のものであったとは認められないから、会社の社内研修が、支部連組合員を屈服させ、組合の団結を破壊しようとする労務対策の場とされているとの支部連の主張は採用できない。
【参 考】 本件審査の経過
1 本件審査の概要
初審救済申立日 平成 7年 3月10日 (大阪地労委平成7年(不)第20号)
初審命令交付日 平成10年12月21日
再審査申立て 平成10年12月28日
2 初審命令主文要旨
(1) 大阪支店に対する申立ては却下
(2) 会社に対する申立ては棄却