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II 安心・信頼の医療の確保と予防の重視

II 安心・信頼の医療の確保と予防の重視

1. 基本的枠組み

  大綱のIIの1.安心・信頼の医療の確保

 → (1) 患者の視点に立った、安全・安心で質の高い 医療が受けられる体制の構築

大綱のIIの2.予防の重視

 → (2) 生活習慣病対策の推進体制の構築




(1)患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築

患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築の図



(2)生活習慣病対策の推進体制の構築

生活習慣病対策の推進体制の構築の図



2.安心・信頼の医療の確保

 「患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築」の実現に向けて、「医療機能の分化・連携の推進による切れ目のない医療の提供」そして、「在宅医療の充実による患者の生活の質(QOL)の向上」を図ることとしており、具体的には、都道府県の策定する医療計画制度を見直すことにしています。

(1) 患者の立場からみて医療がどのように変わるのか
 患者本位の医療を住み慣れた家庭・地域で実現するための「新しい医療計画」により、患者の立場からみて医療がどのように変わるのか、「医療にまつわる心配なこと」をもとに、以下に示します。



医療にまつわる心配なことは?

医療にまつわる心配なことは?の図



患者、住民の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制をつくります。

(1)   〔医療及び医療機関に関する情報の不足〕
 自分が住んでいる地域の医療機関で現在どのような医療が行われており、自分が病気になったときにどのような治療が受けられ、そしてどのように日常生活に復帰できるのか、などを住民・患者の視点にたってわかりやすく示せるよう、医療計画制度を見直し、各県、各地域ごとに、その情報を公開します。

(2)   〔受けられる医療の流れがわからないことの不安〕
 具体的には、その地域の医療機関相互の連携の下で、脳卒中、急性心筋梗塞等ごとに、急性期から回復期を経て在宅療養に至るまでの適切なサービスが切れ目なく提供されるような連携体制を構築します。このため、地域連携クリティカルパスの普及を図るとともに、数値目標の設定などによって切れ目のない体制づくりを推進します。

(3)   〔在宅での療養生活の不安〕
 また、患者・家族が希望する場合の選択肢となり得る在宅医療の体制を、地域において整備することも重要であり、中心となる医師が機能を発揮し、多職種が協働し、連携して地域で支える体制を作ります。

(4)   〔同居者のいない人の在宅での不安〕
 一人暮らしなど自宅で最後まで過ごせない可能性がある方については、多様な居住の場を整備し、そこに在宅医療の体制が及ぶようにします。



(1)   医療及び医療機関に関する情報の公表

各地域の医療機関の機能連携を具体的に明らかにした医療計画を十分住民に周知します。
それぞれの医療機関の機能を都道府県が整理し、住民にわかりやすく公表するようにします。

図



(2)−1   急性期から在宅療養に到るまでの切れ目のない医療サービス

脳卒中を例にとると、病状に応じ、下記のような流れで医療を受けることが必要です。

   まず、地域の救急医療の機能を有する医療機関において、手術など集中的な治療及び急性期のリハビリを行います。
 次に、回復期リハビリの機能を有する医療機関において、集中的なリハビリによる機能回復を図ります。
 その後、在宅あるいは多様な居住の場において、生活目標型の断続的なリハビリを継続し、機能の維持を図ります。

  これらを地域において具体的に進めるに当たり、
 各病院において、患者を退院させる前に、必要に応じ、退院前に要介護認定を受けておくことが必要であり、また、退院後も適切な医療を受けられるような調整(退院調整、退院時ケアカンファレンス)を行うこと、その際には主治医及びケアマネジャーが参加することが必要です。
 また、こうした流れを円滑に進めるため、地域連携クリティカルパス((2)−2参照)の活用が有効と考えられます。
図



脳卒中の場合の医療連携体制のイメージ

脳卒中の場合の医療連携体制のイメージ
※ 急性期、回復期、療養期等各機能を担う医療機関それぞれにかかりつけ医がいることも考えられるが、ここでは、身近な地域で日常的な医療を受けたり、あるいは健康の相談等ができる医師として、患者の病状に応じた適切な医療機関を紹介することをはじめ、常に患者の立場に立った重要な役割を担う医師をイメージしている。



(2)−2   地域連携クリティカルパスとは

  クリティカルパスとは
 >  クリティカルパスとは、良質な医療を効率的、かつ安全、適正に提供するための手段として開発された診療計画表
 >  もともとは、1950年代に米国の工業界で導入されはじめ、1980年代に米国の医療界で使われ出した後、1990年代に日本の医療機関においても一部導入された考え方。
 >  診療の標準化、根拠に基づく医療の実施(EBM)、インフォームドコンセントの充実、業務の改善、チーム医療の向上などの効果が期待されている。

  地域連携クリティカルパスとは
 >  急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受ける全ての医療機関で共有して用いるもの。
 >  診療にあたる複数の医療機関が、役割分担を含め、あらかじめ診療内容を患者に提示・説明することにより、患者が安心して医療を受けることができるようにするもの。
 >  内容としては、施設ごとの治療経過に従って、診療ガイドライン等に基づき、診療内容や達成目標等を診療計画として明示する。
 >  回復期病院では、患者がどのような状態で転院してくるかをあらかじめ把握できるため、重複した検査をせずにすむなど、転院早々から効果的なリハビリを開始できる。
 >  これにより、医療連携体制に基づく地域完結型医療を具体的に実現する。



  地域連携クリティカルパスのイメージ
地域連携クリティカルパスのイメージ

熊本市での取組実績
(1) 急性期病院における平均在院日数の変化

  事例数 平均在院
日数
(A)に対す
る減少率
連携パス導入前
(H11.1〜12)
72例 28.5日
(A)
連携パス導入後
(H13.1〜8)
77例 19.6日 約31%減
連携パス導入後
(H15.1〜H17.1)
423例 15.4日 約46%減
(2) 連携先病院(ある回復期リハビリテーション施設)における平均在院日数の変化

  事例数 平均在院
日数
(B)に対す
る減少率
連携パス導
入前(H15)
55例 90.8日
(B)
連携パス導
入後(H16)
53例 67.0日 約26%減



【医療者用の大腿骨頸部骨折の場合の地域連携クリティカルパスの例】
 左欄に、転院前(最初の)病院で行った治療の経過を記載し、右欄に、転院先病院に依頼する目標を記載して引き継ぎます。
医療者用の大腿骨頸部骨折の場合の地域連携クリティカルパスの例の図



(3)   在宅医療の推進
(3)−1   在宅での療養を選択しにくい理由(イメージ)
在宅での療養を選択しにくい理由(イメージ)



(3)−2   在宅医療を安心して受けられるようになるには

   在宅医療については、前述のとおり、まず、急性期等の機能を持つ医療機関から在宅あるいは多様な居住の場へのつなぎを円滑に進める必要があります。(退院後の在宅医療への連携)

   在宅医療を地域で連携して行う体制として、次頁の図のように、

(1) 介護を含めた多職種での連携体制
在宅医療を担う医師の取組の支援
訪問看護サービスの充実
在宅における医薬品等の提供体制
 ( 適切な薬物療法や服薬指導、医療材料等の提供など)
ケアマネジャーや各種在宅サービスとの連携
(2) 急性増悪の際の緊急入院体制(緊急入院先の確保)
(3) 医師による看取りの体制(複数の医師の連携等)
(4) 自宅以外の多様な居住の場の確保及びその場に対する在宅医療の提供

を含めた連携体制を、地域ごとに構築する必要があります。



在宅医療(終末期ケアを含む)の連携のイメージ

在宅医療(終末期ケアを含む)の連携のイメージ



(4)   多様な居住の場の確保及びそこへの在宅医療の提供

介護施設や居住系サービスにおいて安心して医療が受けられる体制作り

一人暮らしなど、自宅で過ごせない要介護状態の方が生活する場である介護施設や居住系サービスにおいて、医療との連携を充実させ、必要な時に必要な医療が安心して受けられるようにします。

例:
特別養護老人ホーム 夜間におけるオンコール体制や看取りに関する体制の整備
ケアハウス 訪問診療や訪問看護の体制の整備



(参考1)
医療機関における死亡割合の年次推移

医療機関において死亡する者の割合は年々増加しており、昭和51年に自宅で死亡する者の割合を上回り、更に近年では8割を超える水準となっている。

医療機関における死亡割合の年次推移のグラフ
資料: 「人口動態統計」(厚生労働省大臣官房統計情報部)



(参考2)   高齢者の在宅療養を支える新たな取組の推進
 ※ 肺ガンにより入院。手術等の治療後に退院し、在宅での抗癌剤治療、酸素療法等を継続しつつ、在宅での看取りを希望する例

高齢者の在宅療養を支える新たな取組の推進の図



(参考3)  
尾道市で行われている在宅での医療と介護の機能分担・連携の例
《ポイント》   高齢要介護者の長期フォローアップとケアカンファレンスの継続
主治医とケアマネジャーがケアカンファレンスに参加

尾道市で行われている在宅での医療と介護の機能分担・連携の例の図
(注)   尾道市医師会作成資料を基に厚生労働省にて作成



(参考4)  
静岡市静岡医師会と市内の病院で行われている在宅医療の地域連携の例

在宅患者相互連携システム(イエローカード・システム)

制度の概要
 ア   在宅の寝たきり患者が、病状の悪化に備えて、自分が診療を希望する病院を選択し、かかりつけ医は、当該患者の病状をあらかじめ病院に登録する。
  →   患者にイエローカードを配付
 イ   家で寝たきりの患者の容態が急に悪くなったときは、まず、かかりつけ医に連絡するが、万一連絡がとれない場合は、イエローカードに登録してある病院に連絡し、当該病院で診療を受け、必要ならば入院もできる。

在宅医療支援看取りシステム(グリーンカード・システム)

制度の概要
 ア  家族とともに在宅で最後を全うしたいと希望する患者について、かかりつけ医は患者の希望を受けて、あらかじめ病状を医師会に登録しておく。
  患者にグリーンカードを配付
 イ  在宅で看取りを希望される患者の容態が急変したときには、まず、かかりつけ医に連絡する。万一連絡がとれない場合は、救急隊に電話をし、グリーンカードを持っていることを伝えると、救急隊が当番の医師に連絡し、当該医師が駆けつけ、在宅患者の看取りを行う。



(2) 新しい医療計画

新しい医療計画では、脳卒中、がん、小児救急など事業別に、分かりやすい指標と数値目標を住民・患者に示し、計画の実施状況を事後評価できる仕組み(=政策の循環(計画の作成・実施・政策評価・計画の見直し))を導入します。

図



予防の重視

 近年、我が国では、中高年の男性を中心に、肥満者の割合が増加傾向。肥満者の多くが、糖尿病、高血圧症、高脂血症等の危険因子を複数併せ持ち、危険因子が重なるほど心疾患や脳血管疾患を発症する危険が増大。

 こうした内臓脂肪肥満に着目した「内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)」の概念を導入し、国民の運動、食生活、喫煙面での健全な生活習慣の形成に向け、国民や関係者の「予防」の重要性に対する理解の促進を図る国民運動を展開。

 また、生活習慣病の予防についての保険者の役割を明確化し、被保険者・被扶養者に  対する効果的・効率的な健診・保健指導を義務づけるなど、本格的な取組を展開。

 都道府県健康増進計画の内容を充実し、運動、食生活、喫煙等に関する目標を設定し、国民の生活習慣改善に向けた普及啓発を積極的に進めるとともに、健診・保健指導実施率等の目標を設定し、その達成に向けた取組を促進。

 保健指導の効果的な実施を図るため、国において保健指導プログラムの標準化。



(1)生活習慣病について

生活習慣病の現状
肥満者の生活習慣病の重複の状況(粗い推計)
生活習慣病の現状の図 肥満に加え、糖尿病、高血圧症、高脂血症が・・・
肥満者の生活習慣病の重複の状況(粗い推計)の図
(H14糖尿病実態調査を再集計)
生活習慣病対策実施による老人医療費の適正化(イメージ)のグラフ



図
  「不健康な生活習慣」の継続により、「予備群(境界領域期)」→「内臓脂肪症候群としての生活習慣病」→「重症化・合併症」→「生活機能の低下・要介護状態」へと段階的に進行していく。
  どの段階でも、生活習慣を改善することで進行を抑えることができる。
  とりわけ、境界領域期での生活習慣の改善が、生涯にわたって生活の質(QOL)を維持する上で重要である。



生活習慣病の発症・重症化予防
生活習慣病の発症・重症化予防
の図



(参考1)
脳・心臓疾患に至る経過

血管障害を起している職員ほとんどがこのような経過を辿っている

A氏 54歳 脳梗塞
A氏 54歳 脳梗塞のグラフ

B氏 57歳 心筋梗塞
B氏 57歳 心筋梗塞のグラフ
生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会 尼崎市野口緑氏提出資料より)



(参考2)
年齢階級別受療率(主として生活習慣病に分類される疾患について)

外来のグラフ
入院のグラフ
 (注)「患者調査」(平成14年)により作成



(参考3)
健診の未受診者と受診者の医療費推移
(熊本県A町国保加入者の年齢階級別年間医療費)

健診の未受診者と受診者の医療費推移(熊本県A町国保加入者の年齢階級別年間医療費)のグラフ
日本赤十字社熊本健康管理センター 小山和作名誉所長 資料より)



(参考4)   糖尿病に関する現状

糖尿病有病者は平成9年の690万人から平成14年の740万人と、5年間で50万人(約7%)増加、糖尿病の可能性が否定できない人を加えると5年間で250万人(約18%)増加している。

<糖尿病有病者数>
糖尿病有病者数のグラフ

慢性腎不全患者は約7万人(H14)。医療費(推計)は、
年間4千億円規模。(血液透析にかかる医療費:約550万円/年)

慢性透析患者は平成9年から平成14年の
5年間で約5.4万人(約30%)増加している。

<慢性透析患者数>
慢性透析患者数のグラフ
糖尿病に係る医療費は平成9年から平成14年の
5年間で約1,130億円(約11%)増加している。

<糖尿病医療費>
糖尿病医療費のグラフ



〈参考5〉   喫煙に関する現状

我が国の喫煙率の推移
我が国の喫煙率の推移のグラフ
出典:国民栄養調査
諸外国の喫煙率
諸外国の喫煙率の表
 出典: 世界保健機関(WHO) Tobacco ATLAS(2002)
(日本は国民栄養調査)



(2)新しい健康増進計画

都道府県

都道府県健康増進計画について、地域の実情を踏まえ、具体的な数値目標を設定し、関係者の具体的な役割分担と連携方策を明記するなど、その内容を充実させ、総合的な生活習慣病対策の推進を図る。

目標項目の
設定とその
達成に向けた
施策の整理
地域の実態
の把握
(調査の実施)
地域の実情
を踏まえた
目標値の設定
(※)
関係者の
役割分担と
連携促進に
向けた協議
医療保険者、
市町村等の
各主体における
取組
実績の評価
を踏まえた
次期計画の
策定
└──────────────────────────────┘

(※)   都道府県健康増進計画には、糖尿病等の有病者・予備群の減少率や、その達成に向けた健診・保健指導の実施率の目標、その他、運動、食生活、喫煙等に関する目標を設定する。
↑
国の支援
都道府県健康・栄養調査マニュアルの策定
都道府県健康増進計画改定ガイドラインの策定
(1)目標項目の選定、(2)関係者の具体的な役割分担と連携促進、(3)取組の進捗状況や目標の達成度の評価等に関する基本的な考え方を提示
地域・職域連携推進協議会の設置支援



(参考1)
健やか生活習慣国民運動推進会議(仮称)の設置について

  趣旨
   生活習慣病は、今や健康長寿の最大の阻害要因となるだけでなく、国民医療費にも大きな影響を与えている。
 その多くは、不健全な生活の積み重ねによって内臓脂肪型肥満となり、これが原因となって引き起こされるものであるが、これは、個人が日常生活の中での適度な運動、バランスのとれた食生活、禁煙を実践することによって、予防をすることができるものである。
 また、こうしたよい生活習慣の積み重ねは高齢期においても、できる限り元気に過ごすという「介護予防」にもつながるものであり、運動器の機能向上や低栄養状態の改善などを通じた生活機能の維持・向上にも資するものである。
 このため、今後は運動習慣の定着、食生活の改善、そして禁煙を柱とする「生活習慣病予防」及び「介護予防」の取組が、食育とも連携しながら地域及び職域等において活発に展開されることにより、健やかな生活習慣は気持ちがいいことを一人一人が実感し、国民の生活文化として定着することを目指す国民運動を展開していく必要がある。
 そこで、各界各層の幅広い理解と協力を得ながら、“健やか生活習慣国民運動”を展開していくための方策を検討するため、広く関係者の参画を得て、健やか生活習慣国民運動推進会議(仮称)を設置する。
 そのため、まず、所要の準備会議を設置する。

  今後の進め方(案)
今後の進め方(案)の図



(参考2) 保険者による健診及び事後指導サービス体系のイメージ

保険者による健診及び事後指導サービス体系のイメージ

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