ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 安全・衛生 > 労働者の安全と健康の確保:職場における労働衛生対策 > 平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について(基安発0531第1号)

平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について(基安発0531第1号)

平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

基安発0531第1号
平成23年5月31日

都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局安全衛生部長
(  公  印  省  略  )

 

平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

 

 職場における熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」(以下、「基本対策」という。)により示しているところであるが、平成22年は記録的な猛暑により、職場における熱中症による死亡者数が熱中症と分類して統計を取り始めた平成9年以降最も多い47人となった。
 一方、平成23年については、5月25日の「全般3か月予報」(気象庁)によれば、6月から8月までの平均気温について、「東・西日本で平年並みまたは高い確率ともに40%、沖縄・奄美で高い確率50%」とされたほか、東日本大震災に起因する夏期電力需給対策において、事業所等における節電が求められている。
これらのことを踏まえ、平成23年の職場における熱中症予防対策については、熱中症多発業種である建設業等及び製造業において、基本対策のうち、特に下記の事項を重点的に実施することとするので、関係事業場等に対する的確な指導等に遺漏なきを期されたい。
 なお、平成22年の職場における熱中症による死亡災害の発生状況について、別紙1のとおり取りまとめたので、業務の参考とされたい。
 おって、関係団体に対しては別添のとおり要請を行ったので、了知されたい。

1 建設業等における熱中症予防対策について

(1)建設業等における熱中症発生状況等

 建設業や、建設現場に付随して行う警備業(以下、「建設業等」という。)は、業態として日中、炎天下の高温多湿場所で作業することが避けられず、WBGT値(暑さ指数)の低減対策が困難であることが多い。
 また、平成22年には、建設業において17名、警備業において2名の死亡災害が発生したところであるが、熱への順化期間が設定されていなかった事案及び自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取させていなかった事案がそれぞれ約8割に及んでいること等を踏まえ、建設業等における熱中症予防対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。

(2)建設業等における熱中症予防対策の重点事項

 次の3項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。

  • (1) 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させること。
  • (2) WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化している作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。
  • (3) 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間)を設ける等配慮すること。

(3)建設業等におけるその他の具体的な実施事項

(1) 作業環境管理

  • ア 直射日光や照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化を図ること。
  • イ 作業場所又はその近隣に、臥床することができる日陰等の涼しい休憩場所を確保すること。

(2) 作業管理

  • ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり熱中症の発症が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境から受ける負担を軽減すること。
  • イ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。また、直射日光下では通気性の良い帽子やヘルメット(クールヘルメット等)を着用させるほか、後部に日避けのたれ布を取り付けて輻射熱を遮ること。
  • ウ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。

(3) 健康管理

  • ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。

(4) 労働衛生教育

作業を管理する者や作業者に対して、熱中症の症状や熱中症の予防方法、緊急時の救急処置等について、労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々の注意喚起を図ること。

2 製造業における熱中症予防対策について

(1)製造業における熱中症発生状況等

 製造業は、工場等屋内作業場での作業が多く、輻射に曝されることは少ないが、今夏の節電の影響により、WBGT値の低減対策が困難となる場合があることが予想される。
 また、平成22年には、製造業において9名の死亡災害が発生したところであるが、その全ての事案で自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取させていないこと、この点に関する教育が必要であること等を踏まえ、製造業における熱中症予防対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。

(2)製造業における熱中症予防対策の重点事項

 次の4項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。

(1) 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させること。

(2) 製造業が熱中症多発業種であることを念頭に置いて、作業を管理する者や作業者に対して、特に次の点を重点とした労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々の注意喚起を図ること。

  • ・ 熱中症が疑われる症状
  • ・ 自覚症状に関わらず水分・塩分を摂取すること
  • ・ 日常の健康管理
  • ・ 救急処置の方法及び連絡方法

(3) WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化している作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。

(4) 作業場所又はその近隣に、臥床することができる風通しの良い等の涼しい休憩場所を確保すること。

(3)製造業におけるその他の具体的な実施事項

(1) 作業環境管理

熱源がある場合には熱を遮る遮蔽物を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化を図ること。

(2) 作業管理

  • ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり、熱中症の発症が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境から受ける負担を軽減すること。
  • イ 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間)を設ける等配慮すること。
  • ウ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。
  • エ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。

(3) 健康管理

  • ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。

3 その他

(1)事務所における熱中症予防対策について

事務所においては、平成23年5月20日付け基発0520第6号「夏期の電力需給対策を受けた事務所の室内温度等の取扱いについて」の記の2に留意して、基本対策を講ずること。

(2)WBGT値の予測値・実況値等について

環境省において、平成23年6月1日から9月30日までの間、次のウェブサイト上にてWBGT値の予測値や実況値等について掲載することとしているので、これらの予測値・実況値等を活用すること。
PCサイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/index.html
携帯サイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/kt/index.html
また、WBGT値については、別紙2の「WBGT値と気温、相対湿度との関係」(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.1 2008.4)も参考とすること。

(3)順化期間については、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることを目安とすること。

(4)水分・塩分の摂取量と頻度は、0.1%〜0.2%の食塩水又はナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク等を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯を目安とすること。

職場における熱中症による死亡災害の発生状況(平成22年)

別紙1

1 熱中症による死亡者数の推移(平成13年〜平成22年分)

 職場における熱中症による死亡者数は47人(前年比39人増)となり、大幅に増加した。なお、これは、熱中症と分類して統計を取り始めた平成9年以降、最多の人数である。
 過去10年間(平成13年〜22年)の熱中症による死亡者の合計は210人であり、平成22年の死亡者数は、おおむね20人前後で推移してきた死亡者数からみて2倍以上の人数となっている。

熱中症による死亡災害発生件数の推移(平成13年〜22年)

年(平成) 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年
24 22 17 17 23 17 18 17 8 47 210

2 業種別発生状況(平成20〜22年)

 過去3年間(平成20〜22年)の業種別の発生状況をみると、建設業が多く全体の約4割を占め、次いで製造業が全体の約2割を占めている。

熱中症による死亡災害の業種別発生状況(平成20〜22年)

業種建設業製造業農業運送業警備業林業その他計(人)
平成20年         17
平成21年      
平成22年 17 10 47
計(人) 31 15 13 72

3 月・時間帯別発生状況

(1)月別発生状況(平成20〜22年)

  過去3年間(平成20〜22年)の月別発生状況をみると、7月及び8月に全体の約9割が発生している。

熱中症による死亡災害の月別発生状況(平成20〜22年)

 6月7月8月9月計(人)
平成20年 12   17
平成21年    
平成22年 25 19 47
計(人) 38 29 72

(参考)熱中症による死亡災害の月別・業種別発生状況(平成22年)

 6月7月8月9月計(人)
建設業   17
製造業  
農業    
運送業    
警備業      
林業      
その他     10
計(人) 25 19 47

(2)時間帯別発生状況(平成20〜22年)

 過去3年間(平成20〜22年)の時間帯別発生状況をみると、午後1時台から午後5時台の間に約8割が発生し、特に午後3時台から午後4時台に多発し、全体の約4割が発生している。
 また、猛暑であった平成22年については、他の時間帯においても多くの発生があった。

熱中症による死亡災害の時間帯別発生状況(平成20〜22年)

時間帯午前9時以前午前10時台午前11時台午後0時台午後1時台午後2時台午後3時台午後4時台午後5時台午後6時以降計(人)
平成20年     1 1 2 3 4 3 3   17
平成21年       1 2 1   4     8
平成22年 2 3 1 4 4 5 9 11 4 4 47
計(人) 2 3 2 6 8 9 13 18 7 4 72

※ 午前9時以前は午前0時台から午前9時台まで、午後6時以降は午後6時台から午後11時台までを指す。

4 作業開始からの日数別発生状況(平成20〜22年)

 過去3年間(平成20〜22年)の作業開始からの日数別発生状況をみると、全体の約4割が作業開始から7日以内に発生している。

作業日数別被災状況(平成20〜22年)

作業日数初日2日目3日目4日目5日目6日目7日目8日目9日目10日目以降計(人)
平成20年     17
平成21年          
平成22年   24 47
計(人) 13 10   29 72

5 平成22年の熱中症による死亡災害発生状況の詳細

番号業種年代事案の概要
その他30歳代被災者は、事業場の工場内において、家電製品の解体作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
製造業30歳代被災者は、事業場の建屋内において、コンクリート型枠の組立作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れ、その後死亡した。
建設業50歳代被災者は、商業用ビルの新装工事現場において、足場組立作業に従事していたが、午後3時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
建設業50歳代被災者は、事業場の資材置き場において、資材等の荷下ろし作業に従事していたが、午前10時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
製造業30歳代被災者は、事業場のクリーニング工場内において、洗濯物の投入作業に従事していたが、午後0時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
農業60歳代被災者は、ビニールハウス内において、野菜のつる落とし作業に従事していたが、午後1時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
その他70歳代被災者は、事業場の屋外において、除草作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
建設業30歳代被災者は、道路拡張工事現場において、型枠組立作業に従事していたが、午後5時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
警備業40歳代被災者は、ガス管埋設工事現場において、交通誘導作業に従事していたが、午後5時過ぎに倒れ、その後死亡した。
10運送業40歳代被災者は、トラックヤードにおいて、荷下ろし作業に従事していたが、午前10時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
11建設業20歳代被災者は、緑地整備等工事現場において、木の伐採作業に従事していたが、午後2時過ぎに倒れ、その後死亡した。
12製造業40歳代被災者は、事業場の工場内において、治具の片付け作業に従事していたが、午後3時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
13その他30歳代被災者は、トラック運転配送業務に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
14農業30歳代被災者は、ビニールハウス内において、農薬の散布作業に従事していが、午後3時過ぎに倒れているところ発見され、その後死亡した。
15その他60歳代被災者は、事業場の工場内において、再生資源の選別作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
16警備業30歳代被災者は、道路工事現場において、工事車両の誘導業務に従事していたが、午後5時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
17その他40歳代被災者は、事業場の資材置き場において、資材の分別作業に従事していたが、午後5時過ぎに体調不調を起こし、その後死亡した。
18建設業30歳代被災者は、工場の増築工事現場において、金具取付作業に従事していたが、午後2時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
19建設業50歳代被災者は、工場の敷地内において、ポンプモーターの設置作業に従事していたが、午前10時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
20その他50歳代被災者は、ゴルフ場において、コースの整備作業に従事していたが、午後3時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
21その他60歳代被災者は、養鶏場において、採卵作業に従事していたが、午後2時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
22その他30歳代被災者は、自転車で新聞配達を行っていたが、午前4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
23農業40歳代被災者は、住宅の造園工事現場において、資材の運搬作業に従事していたが、午後6時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
24建設業60歳代被災者は、小学校の体育館改修工事において、廃棄物の運搬作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
25建設業50歳代被災者は、橋脚修繕工事現場において、材料の運搬作業に従事していたが、午後3時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
26その他50歳代被災者は、事業場の敷地内において、ごみ回収作業に従事していたが、午後2時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
27その他50歳代被災者は、事業場の自動車整備工場内において、車両の修理作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
28運送業60歳代被災者は、事業場内の屋外において、ミキサー車の修理作業に従事していたが、午後1時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
29林業50歳代被災者は、森林内で、下草刈り作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
30農業50歳代被災者は、畑において、害虫の防除作業に従事していたが、午後7時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
31建設業60歳代被災者は、住宅リフォーム工事現場において、天井の張替作業に従事していたが、午後3時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
32製造業40歳代被災者は、事業場の工場内において、機械設備の調整作業に従事していたが、午後7時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
33製造業50歳代被災者は、事業場の工場内において、マスキング作業に従事していたが、午後0時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
34製造業50歳代被災者は、事業場の工場内において、清掃作業に従事していたが、午後7時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
35建設業40歳代被災者は、給水管工事現場において、資材運搬作業に従事していたが、午後0時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
36建設業30歳代被災者は、パイプライン修繕工事において、廃材運搬作業に従事していたが、午後3時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
37製造業40歳代被災者は、事業場の工場内において、射出成形機取扱作業に従事していたが、午前0時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
38農業50歳代被災者は、河川の土手において、除草作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れ、その後死亡した。
39建設業30歳代被災者は、マンション建設工事において、コンクリート打設作業に従事していたが、午後3時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
40製造業40歳代被災者は、事業場の工場内において、金属製品の研磨作業に従事していたが、午後4時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
41建設業50歳代被災者は、個人住宅建築工事において、水道設備工事作業に従事していたが、午前11時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
42農業30歳代被災者は、個人住宅の樹木伐採作業において、枝葉をトラックに積み込む作業に従事していたが、午後3時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
43建設業50歳代被災者は、道路修繕工事において、コンクリート運搬作業に従事していたが、午後4時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。
44建設業40歳代被災者は、ゴルフ場において、給水設備の清掃作業に従事していたが、午後0時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
45建設業50歳代被災者は、商業施設改築工事現場において、工具運搬作業に従事していたが、午後1時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
46製造業40歳代被災者は、事業場の工場内において、手押し車の製造作業に従事していたが、午後2時過ぎに体調不良を起こし、その後死亡した。
47建設業60歳代被災者は、個人住宅において、電気配線作業に従事していたが、午後1時過ぎに倒れているところを発見され、その後死亡した。

 上記47人の死亡者のうち、
(1)45人については、WBGT値の測定を行っていなかった。(うち、建設業等18人、製造業8人)
(2)33人については、計画的な熱への順化期間が設定されていなかった。(うち、建設業等15人、製造業5人)
(3)39人については、自覚症状の有無に関わらない定期的な水分・塩分の摂取を行っていなかった。(うち、建設業等15人、製造業9人)
(4)17人については、糖尿病等の熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病を有していた(疾病の影響の程度は不明)。(うち、建設業等6人、製造業4人)
(5)4人については、体調不良、食事の未摂取又は前日の飲酒があった。(うち、建設業等2人、製造業2人)

WBGT値と気温、相対湿度との関係

別紙2

WBGT値と気温、相対湿度との関係
(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.1 2008.4から)

(注)危険、厳重警戒等の分類は、日常生活の上での基準であって、労働の場における熱中症予防の基準には当てはまらないことに注意が必要であること。

平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

別添

基安発0531第2号
平成23年5月31日

別紙の42関係団体の長 殿

厚生労働省労働基準局安全衛生部長

 

平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について

 

 職場における熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」(以下、「基本対策」といいます。)により示しているところですが、平成22年は記録的な猛暑により、職場における熱中症による死亡者数が熱中症と分類して統計を取り始めた平成9年以降最も多い47人となりました。
 一方、平成23については、年5月25日の「全般3か月予報」(気象庁)によれば、「6月から8月までの平均気温について、東・西日本で平年並みまたは高い確率ともに40%、沖縄・奄美で高い確率50%」とされたほか、東日本大震災に起因する夏期電力需給対策において、事業所等における節電が求められています。
 これらのことを踏まえ、平成23年の職場における熱中症予防対策については、熱中症多発業種である建設業等及び製造業において、基本対策のうち、特に下記の事項を重点的に実施することとしましたので、貴職におかれましては、職場における熱中症予防対策に一層の取組みを頂くとともに、会員事業場への周知等について、特段の御理解と御協力をお願いします。
 なお、平成22年の職場における熱中症による死亡災害の発生状況については、別紙1のとおり取りまとめております。

 

1 建設業等における熱中症予防対策について

(1)建設業等における熱中症発生状況等

 建設業や、建設現場に付随して行う警備業(以下、「建設業等」という。)は、業態として日中、炎天下の高温多湿場所で作業することが避けられず、WBGT値(暑さ指数)の低減対策が困難であることが多い。
 また、平成22年には、建設業において17名、警備業において2名の死亡災害が発生したところであるが、熱への順化期間が設定されていなかった事案及び自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取させていなかった事案がそれぞれ約8割に及んでいること等を踏まえ、建設業等における熱中症予防対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。

(2)建設業等における熱中症予防対策の重点事項

 次の3項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。

  • (1) 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させること。
  • (2) WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化している作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。
  • (3) 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間)を設ける等配慮すること。

(3)建設業等におけるその他の具体的な実施事項

(1) 作業環境管理

  • ア 直射日光や照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化を図ること。
  • イ 作業場所又はその近隣に、臥床することができる日陰等の涼しい休憩場所を確保すること。

(2) 作業管理

  • ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり熱中症の発症が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境から受ける負担を軽減すること。
  • イ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。また、直射日光下では通気性の良い帽子やヘルメット(クールヘルメット等)を着用させるほか、後部に日避けのたれ布を取り付けて輻射熱を遮ること。
  • ウ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。

(3) 健康管理

  • ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。

(4) 労働衛生教育

 作業を管理する者や作業者に対して、熱中症の症状や熱中症の予防方法、緊急時の救急処置等について、労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々の注意喚起を図ること。

2 製造業における熱中症予防対策について

(1)製造業における熱中症発生状況等

 製造業は、工場等屋内作業場での作業が多く、輻射に曝されることは少ないが、今夏の節電の影響により、WBGT値の低減対策が困難となる場合があることが予想される。
 また、平成22年には、製造業において9名の死亡災害が発生したところであるが、その全ての事案で自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取させていないこと、この点に関する教育が必要であること等を踏まえ、製造業における熱中症予防対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。

(2)製造業における熱中症予防対策の重点事項

 次の4項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。

(1) 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させること。

(2) 製造業が熱中症多発業種であることを念頭に置いて、作業を管理する者や作業者に対して、特に次の点を重点とした労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々の注意喚起を図ること。

  • ・ 熱中症が疑われる症状
  • ・ 自覚症状に関わらず水分・塩分を摂取すること
  • ・ 日常の健康管理
  • ・ 救急処置の方法及び連絡方法

(3) WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化している作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。

(4) 作業場所又はその近隣に、臥床することができる風通しの良い等の涼しい休憩場所を確保すること。

(3)製造業におけるその他の具体的な実施事項

(1) 作業環境管理

熱源がある場合には熱を遮る遮蔽物を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化を図ること。

(2) 作業管理

  • ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり、熱中症の発症が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境から受ける負担を軽減すること。
  • イ 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間)を設ける等配慮すること。
  • ウ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。
  • エ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。

(3) 健康管理

  • ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
  • ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。

3 その他

(1)事務所における熱中症予防対策について

事務所においては、平成23年5月20日付け基発0520第6号「夏期の電力需給対策を受けた事務所の室内温度等の取扱いについて」の記の2に留意して、基本対策を講ずること。

(2)WBGT値の予測値・実況値等について

環境省において、平成23年6月1日から9月30日までの間、次のウェブサイト上にてWBGT値の予測値や実況値等について掲載することとしているので、これらの予測値・実況値等を活用すること。
PCサイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/index.html
携帯サイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/kt/index.html
また、WBGT値については、別紙2の「WBGT値と気温、相対湿度との関係」(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.1 2008.4)も参考とすること。

(3)順化期間については、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることを目安とすること。

(4)水分・塩分の摂取量と頻度は、0.1%〜0.2%の食塩水又はナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリンク等を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯を目安とすること。

 

(別紙1及び別紙2省略)

別紙

中央労働災害防止協会
建設業労働災害防止協会
鉱業労働災害防止協会
林業・木材製造業労働災害防止協会
陸上貨物運送事業労働災害防止協会
港湾貨物運送事業労働災害防止協会
独立行政法人労働者健康福祉機構
社団法人日本保安用品協会
社団法人全国労働基準関係団体連合会
社団法人日本作業環境測定協会
財団法人産業医学振興財団
社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会
社団法人日本鉄鋼連盟
普通鋼電炉工業会
社団法人日本鋳造協会
社団法人日本ダイカスト協会
日本鋳鍛鋼会
社団法人日本非鉄金属鋳物協会
社団法人全国鐵構工業協会 
日本鉱業協会
社団法人日本砕石協会
日本石材産業協会
石灰石鉱業協会
社団法人日本砂利協会
社団法人日本基礎建設協会
全国基礎工事業協同組合連合会
社団法人全国建設業協会
社団法人日本建設業団体連合会
社団法人日本土木工業協会
社団法人建築業協会
社団法人全国中小建設業協会
社団法人建設産業専門団体連合会
社団法人鉄骨建設業協会
社団法人日本橋梁建設協会
社団法人日本下水道管渠推進技術協会
社団法人日本道路建設業協会
社団法人日本鉄道建設業協会
社団法人全国中小建設業協会
社団法人日本ゴルフ場事業協会
社団法人全国警備業協会
社団法人日本測量協会
社団法人日本造船工業会

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 労働基準 > 安全・衛生 > 労働者の安全と健康の確保:職場における労働衛生対策 > 平成23年の職場における熱中症予防対策の重点的な実施について(基安発0531第1号)

ページの先頭へ戻る