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1 有機溶剤による中毒等(平成30年)

発生月 業種 被災状況 原因物質 発生状況 発生原因
1月 その他の建設事業 爆発2名 (休業) 有機溶剤 防火水槽改修工事現場において、被災者2名が防火水槽内部で壁面に防水塗料の塗布作業をおこなっていたが防火水槽内部の壁面が一部湿潤していたため、作業者が小型のガスバーナーで壁面を炙って乾燥させていたところ、防火水槽内で爆発が生じ、作業者2名が火傷を負ったもの。
防水塗料には、第2種有機溶剤、引火性物質である酢酸エチルが約80%含有されており、塗料から揮発した引火性の蒸気に引火したと思われる。
安全衛生教育未実施
作業者の危険有害性認識不足
作業主任者・管理責任者等の未選任
5月 化学工業 中毒2名(休業) アニリン ジアミノジフェニルメタンを製造するプラントにおいて、アニリン等を取扱う塩水タンクの蒸気洗浄を実施していた。当該塩水タンクは石綿含有保温材の撤去作業のためにビニールシートで覆われており、被災者2名が蒸気洗浄の排気が立ち込めるビニールシート養生内部で、当該タンク周辺のフランジのボルト差替作業を約1時間実施したところ、アニリン中毒となったもの。
被災者は有機ガスに対応可能なホルムアルデヒド用の吸収缶を取り付けた防毒マスクを使用していたが、純粋な有機ガス用の吸収缶と比べると破過時間は劣るものだった。通常の作業着、保護めがね、化学防護用手袋は着用していたが、肌の露出がない不浸透性の保護衣や全面形の防毒マスク、アニリン取扱い作業に適した手袋は着用していなかった。
適切な保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
安全衛生教育不足
換気・排気装置未設置
作業開始前の濃度測定未実施
作業中の濃度測定未実施
1月 可塑物製品製造業 中毒の疑い1名 (休業) シンナー 被災者は、第二種有機溶剤等及び専用用具を用いてカメラ部品の文字部にインクを入れる作業に従事していた。また、インクが文字部からはみ出た際には、布に塗料用シンナーをしみこませて払拭していた。 上記作業を9日間程行った後、病院を受診し、シンナー中毒の診断を受けたもの。
当該作業場に換気設備は設けられておらず、防毒用の呼吸用保護具も使用していなかった。
SDSの未入手
適切な呼吸用保護具未着用
呼吸用保護具管理不足・点検不備
リスクアセスメント未実施
安全衛生教育未実施
換気・排気装置未設置
作業主任者・管理責任者等の未選定
4月 電気機械器具製造業 中毒1名(休業) エポキシ樹脂塗料 船舶の塗装工事において、塗装作業場であった船首倉庫内で、制御盤の調整作業を行っていた被災者が、意識を失って倒れていたところを発見されたもの。発生原因は、有機溶剤塗装作業が行われていた船首倉庫内に、有機ガス用防毒マスクを使用させずに被災者を立ち入らせたこと、全体換気装置として設置していた送風機を稼動させていなかったことである。有機溶剤塗装作業には、エポキシ樹脂塗料、硬化剤、シンナーが使用されており、被災者は勇気ガス用防毒マスクを使用せず、全体換気装置として設置していた送風機も稼働させていなかった。 適切な呼吸用保護具未設置
安全衛生教育未実施
換気・排気装置の未稼働
作業員への指示不備
作業者の危険有害性認識不足、作業手順・指示等の不履行
作業主任者・管理責任者等の職務不履行、危険有害性認識不足
作業開始前の濃度測定未実施
2月 プラスチック製品製造業 火災1名(死亡) 溶剤 就業時間前の午前6時頃に工場建屋2階が燃えているのを工場建屋隣の自宅にいた事業主の妻が通行人の通報により気づき、事業主が中途まで消火器により消火作業を行い、その後消防により消火が行われた。
約2時間後に建屋2階中央付近から被災者の遺体が発見された。出火元など詳細は不明であるが、FRP(繊維強化プラスチック)製品製造の際の溶剤混合時における発熱反応により発火した火が周囲の可燃物に引火し、一瞬で激しく燃え広がったものと推定される。使用していた溶剤は、スチレン溶液、硬化剤(メチルエチルケトンパーオキサイド、ジメチルフタレート含有)、アセトンである。
作業標準書・マニュアル未作成
安全衛生教育不足
装置・設備の管理不足・点検不備
装置・設備の点検・管理体制不備
作業者の危険有害性認識不足、作業手順・指示等の不履行
作業主任者・管理責任者等の未選任、指示内容の不備
1月 化学肥料製造業 爆発 (被災者なし) メタンスルホン酸2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル 合成工場において、医薬品の中間原料メタンスルホン酸2-[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル
紛体を真空乾燥するため、2階乾燥機投入室の投入ホッパー(金属製で漏斗状をしており、シュートを介して真空乾燥機に入る。)に、作業者2名がポリプロピレン製のスコップで投入作業を行っていたところ、突然爆発した。
事故発生時に投入していた白色粉状の粉体は、残留有機溶剤のヘプタンを約5%含んだものであった。
SDSの記載内容不十分
作業標準書・マニュアルの不備
安全衛生教育不足
作業主任者・管理責任者等の指示内容の検討不足、指示内容の検討不足
作業開始前の濃度測定未実施
作業中の濃度測定未実施
4月 その他の各種建設事業 急性薬物中毒の疑い1名、急性薬物中毒1名(休業) 不凍液(エチレングリコール) 病院屋上に設置されている空調用設備を更新する工事現場において、解体撤去予定の氷蓄熱槽の内部で不凍液(エチレングリコール72〜77%含有)の入った製氷コイル配管を切断し槽の外に搬出する作業を2名で行っていたところ、気分が悪くなったため槽の外に出て屋上で体を横たえしばらく休んでいたが、吐き気や体のふらつき症状及び会話困難状態や興奮状態となったため救急搬送された。
自然換気のみで排風機などは設置されていなかった。また作業員らは不織布性のマスクを着用していたが、送気マスクや有機ガス用防毒マスクは使用していなかった。
SDSの内容未確認
適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント未実施
換気・排気装置未設置
作業主任者・管理責任者等の職務不履行、指示内容の不備、危険有害性認識不足
9月 その他の各種製造業 咽頭炎、咳、頭痛等4名(休業) 第2種有機溶剤含有インク{アセトン(含有率80-95%)、エチルアルコール(10-20%)} インクジェットプリンター(第2種有機溶剤含有インク使用)を用い、製品の製造番号を印刷していたところ、インクジェットプリンター付近で作業を行っていた労働者13名が体調不良を訴え、4名が休業した。プリンターのインクには、アセトン(含有率80〜95%)、エチルアルコール(10〜20%)が含まれていた。局所排気装置は設置されていなかった。 SDSの未入手
適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
緊急時マニュアル未作成
安全衛生教育未実施
換気・排気装置未設置
作業主任者・管理責任者等の未選任
5月 電気機械器具製造業 中毒の疑い1名(休業) アセトン 被災者は、派遣先の工場のブラスト室内において、製品の洗浄払拭作業の方法を指導者が実演して教示しているのを見学していたところ、当該実演で使用していた溶剤(1-ブロモプロパン濃度99%:約50ml使用)により体調不良を訴え、休養室にて休み、同日午後復帰した。翌日被災者は同工場のクリーンルーム内の一画にある積層工程にて、製品の高さ調節用の治具をアセトン(濃度98%:約50ml使用)を使用した払拭による洗浄作業をしていた際に、再び体調不良を訴えたことから、病院で診察を受けたところ、急性薬物中毒の疑いと診断された。ブラスト室内では溶剤蒸気の排気が不十分であり、クリーンルームにおいてもアセトン蒸気を直接排気する設備はなかった。被災者は、有機ガス用防毒マスクは使用しておらず、一般的な使い捨てマスクを着用していた。 適切な呼吸用保護具未着用
安全衛生教育不足
換気不足
装置・設備の管理不足・点検不備
作業主任者・管理責任者等の未選任
作業開始前の濃度測定未実施
作業中の濃度測定未実施
7月 建築物の新設に伴う設備工事業 化学物質による肺の炎症2名(休業) フッ素系ポリマー 自社作業場(倉庫)内において、被災者2名が建材見本を作成するため、養生フィルムを使って簡易的な塗装ブースを作り、スプレーガンを用いて吹きつけ塗装を行っていた。塗料はフッ素系ポリマーを含むものであった。両名とも徐々に動悸が起こる、喉に違和感を覚え咳が出始める等の症状が発生していたが、作業を継続したところ、後に肺が炎症を起こしていることが判明したもの。防毒マスクは使用していなかった。 SDSの内容未確認
適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業標準書・マニュアル未作成
作業標準書・マニュアルの不備
安全衛生教育未実施
換気・排気装置未設置
作業者の危険有害性認識不足
作業主任者・管理責任者等の危険有害性認識不足
8月 紙製造業、手すき和紙製造業を除く。 中毒1名(休業) トルエン 職長が被災者から「トルエンを飲んでしまった」との報告を受け、被災者は病院へ救急搬送された。病院での診断はトルエン中毒であった。災害発生時、被災者は塗料室にて、塗料調合のため、トルエンをドラム缶から手持ち式の缶へ、電動ポンプにて計量作業中であったが、目がしょぼしょぼしていたため、計量器の表示をよく見ようと、顔を近づけていた。トルエンのホースノズルを引き上げた際、レバーを握ったままであったため、ノズルから吐出したトルエンを誤飲したもの。災害発生時、被災者は防毒マスクを着用していなかった。 適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント未実施
作業者の作業手順・指示等の不履行
作業主任者・管理責任者等の職務不履行
8月 橋りょう建設事業 中毒1名(休業) ベンジルアルコール 上記日時、災害発生地にて、橋梁の塗替塗装のため吊り足場上において電動ファン付き呼吸用保護具(防じん機能付き防毒マスク)を着用して剥離剤(ベンジルアルコール 30〜40%含有)の吹付作業を行っていた被災者が倒れているところを発見されたもの。
作業場所はPCB及び鉛の飛散防止のため隔離措置がされ、通風はなく、剥離剤を吹き付けると有機ガスの濃度が上がり続ける状態であったが、集じん排気装置等を稼動させていなかった。
作業開始前の濃度測定未実施
作業中の濃度測定未実施
換気・排気装置の未稼働
7月 化学工業 爆発 火傷等4名(休業1名) tert−ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 事業場内トナー工場のアクリルパウダー製造設備にて、重合工程で使用する重合開始剤tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(以下「PB-O」という。)を貯蔵していたタンクが破裂及び爆発し、その後火災に至ったものである。付近にいた4名が火傷等により負傷した。PB-Oは自己反応性物質であり、上限保存温度が20℃以下とされているが、外気温の高いときにタンクの冷却能力を超える量を投入したことやタンクが攪拌機能を備えていなかったことから、タンク内で自己発熱分解が進み、タンク内の圧力が急激に上昇して破裂し、爆発したものと推測される。 作業標準書・マニュアル未作成
緊急時マニュアル未作成
作業主任者・管理責任者等の指示内容の検討不足
タンクの性能不足(攪拌機能なし)
4月 清掃業 爆発 負傷1名(休業) イソプロピルアルコール 購入した中古の変圧器(全体の大きさ:長尺 267.5cm×短尺 180cm×天井面の高さ 280cm)を輸出するために分解する前段階で、被災者が天井面に乗り、天井面の開口部付近でライターに火を点け、これで開口部から内部を照らそうとしたところ、爆発が発生し、被災者は爆発による気流で地面に墜落して負傷を負った。変圧器はポリ塩化ビフェニルを処理後に廃棄されたものであったが、その洗浄処理に用いたイソプロピルアルコールが変圧器内部に残留していたものと推定される。 リスクアセスメント未実施
作業者の危険有害性認識不足
作業者の作業手順・指示等の不履行
作業主任者・管理責任者等の指示内容の不備
平成28年7月 塗装工事業 中毒1名(休業) メチルエチルケトン 被災者1名のみで、深さ1550mmのエレベーターピットの防水塗装のために、第2種有機溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル)が含まれたプライマー(防水下地処理剤)を専用ローラでピット全体に薄く塗っていた。被災者は防毒マスクを着用せず、また送風機等の換気装置を使用しなかったところ、作業開始から約40分たち、塗装面積の約9割を塗り、残った床面を塗装していた際に突如意識を失い、倒れたもの。 SDSの内容未確認
適切な呼吸用保護具未着用
リスクアセスメント未実施
安全衛生教育不足
換気・排気装置の未稼働
作業者の危険有害性認識不足、作業手順・指示等の不履行
作業主任者・管理責任者等の職務不履行、指示内容の検討不足、危険有害性認識不足
平成28年4月 船舶製造又は修理業 心不全1名(死亡) イソブチルアルコールほか 建造中の船舶の船底内部において、吹付塗装作業を行っていた被災者が倒れているところを、被災者の同僚が発見したもの。使用していた塗料はイソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、キシレン及びトルエンの有機溶剤等を含有する第二種有機溶剤等、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを1%を超えて含有する特別有機溶剤等に該当する。被災者は半面形の有機ガス用防毒マスクを着用していたが、送気マスクおよび全面形の有機ガス用防毒マスクは使用していなかった。送気装置及び排気装置が設けられていたが、全体換気装置としての能力が十分ではなかった。 適切な呼吸用保護具未着用
作業標準書・マニュアル未作成
換気・排気装置未設置
検知・警報装置未設置
作業者の危険有害性認識不足
平成28年8月 各種機械装置の組立て又はすえ付けの事業 中毒(死亡1名、休業1名) トルエン 被災者2名は、事業所の敷地内の純水室において、水を濾過するためのタンクの点検、補修作業を行っていた。空の状態のタンク(本体高さ2.51メートル、直径1.01メートルの円筒形)の中に、被災者2名が交互に入り、点検を行った後、トルエン等を用いて同タンクの内側のゴムの補修作業を行っていたところ、有機溶剤中毒となった。他の事業場の労働者が、同タンクの中に被災者2名が倒れているところを発見した。搬送先の病院で、被災者1名の死亡が確認され、もう1名は休業見込8か月と診断された。被災者らは有機ガス用呼吸用保護具や送気マスクは着用しておらず、タンク内の換気は全く行われていなかった。 適切な呼吸用保護具未着用
緊急時マニュアル未作成
安全衛生教育不足
換気・排気装置未設置
関係者間の連携・連絡体制不備

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