その他の中毒(平成18年)
発生月 | 業種 | 被災状況 | 要因分類 | 原因物質 | 発生状況 | 発生原因 |
1月 | (9416)前各項に該当しない事業 | 大量漏洩 | その他 | 蓄熱材 | 冷暖房所の蓄熱システムにおいて、システムの点検作業で制御盤により電源を「切」としたところ、弁が誤作動で開き、蓄熱槽とオーバーフロー配管の水頭圧の差により、オーバーフロー配管側に蓄熱材が流れ、さらにオーバーフロー配管の手動弁が開放状態となっていたため蓄熱材が流出し、一部が排水溝を伝わり川に流れこんだ。 | 蓄熱システムの動作不良 非定常作業における作業手順不適切 |
1月 | (9414)医療保健、法務、教育、宗教、研究又は調査の事業 | 薬傷3名 | その他 | 過酸化水素 | 滅菌器で医療用具の滅菌作業を行っていたところ、表示上では正常に終了したが、通常の終了時には残っていないはずの水滴が残っていたので、素手にて医療用具を入れた滅菌袋を出していたところ、残留して滅菌袋に付着していた過酸化水素水により薬傷を負った。 | 機械特性の周知不十分 作業手順不徹底(滅菌器使用前に水を取りきらなかったこと) 保護手袋不着用 |
1月 | (3801)既存建設物の内部において主として行われる給水、給湯等の設備工事業 | 中毒3名 | その他 | 二酸化塩素 | パルプ製造設備でシール水用の配管を新設する工事を行っていたところ、移動のため複数の配管を乗り越える際に硬質塩化ビニル製の二酸化塩素水が流れている配管(塩ビ管)に足をかけたところ、体重の重みで当該塩ビ管がフランジ付近より折損し、漏出した二酸化塩素ガスを吸い込んだ。 | 安全通路確保せず 安全衛生教育不十分 |
2月 | (9425)教育業 | 中毒1名 | その他 | オゾン | 化学実験室において、オゾン発生機(無声放電式小型オゾン発生機)により発生させたオゾンと溶剤を反応させようとしている際、供給酸素中の水分の凝固によりオゾンの供給が止まったため、オゾン発生機を停止させ、オゾン注入用のビニール管を外して酸素の供給状況等を確認していたところ、ビニール管から噴出したオゾンを吸入した。 | 作業手順不徹底(酸素の脱水不足) オゾン発生機の点検不足(酸素流量計なし) オゾンに係る有害性情報の掲示なし 非定常作業時の作業標準なし 呼吸用保護具不適切(簡易マスク使用) |
2月 | (4707)医薬品製造業 | 中毒1名 | その他 | 医薬品原体 | 造粒装置で医薬品製剤の顆粒試作を行っていた室で、顆粒の状態を確認しようと造粒装置に覗き込むように数回顔を近づけた際、マスク等の呼吸用保護具を着用していなかったため、医薬品原体を吸入したもの。 | 換気不十分 呼吸用保護具不使用 |
3月 | (9414)医療保健、法務、教育、宗教、研究又は調査の事業 | 中毒1名 | その他 | クロルピクリン | 使用済みの農家用ビニールトンネルを撤去する作業にとりかかった時、別の作業者らが土壌くん蒸作業で使っていたクロルピクリンを吸入したもの。 | 作業標準なし 関係労働者以外の立入(連絡調整不十分) 安全衛生教育不十分 |
3月 | (4205)染色整理業 | 薬傷1名 | その他 | しゅう酸 | 染色ミスをした製品を脱色するための補助剤であるしゅう酸水溶液の作製に当たり、温水を入れたポリバケツに針状結晶のしゅう酸を一気に投入したところ、しゅう酸が飛び散り、それを吸入したもの。 | 非定常作業における作業標準未作成 呼吸用保護具不使用 安全衛生管理体制不備 |
3月 | (2054)塗料製造業、(9416)労働者派遣業 | 薬傷3名 | その他 | ぎ酸 | 金属表面処理剤の製造工場内で、原料仕込み作業の際、ぎ酸の容器(ポリエチレン製)へ誤って硝酸を入れ、この容器を保管場所である劇物置場へ置いていたところ、ぎ酸と硝酸が反応して生成した炭酸ガスにより約1時間後に容器が破裂し、ばく露したもの。 | 単独作業 蟻酸と硝酸の混触 容器の区別不明瞭 単独作業による原料投入 |
3月 | (7202)特定貨物自動車運送業 | 中毒1名 | その他 | 二酸化炭素 | 配送センター屋外のプラットホームにて、保冷箱に入れていた使用済みの保冷剤を水洗いするため、保冷箱からコンテナに保冷剤を移し替えて、コンテナ内にホースで水を注いだところ、コンテナの中に混入していたドライアイスの気体を吸入したもの。 | 作業標準なし 保冷剤とドライアイスの分別状況の確認不足 |
4月 | (5704)通信機械器具又は同関連機械器具製造業 | 化学熱傷4名 | その他 | 水酸化カリウム、ジメチルスルホキシド混合溶液 | 液晶製造工程において、前日に交換した洗浄機の配管が、材質変更等により機械の振動に耐えられず配管継ぎ手部分で亀裂したため、水酸化カリウム、ジメチルスルホキシド混合液が階下に流出し、その回収作業中にばく露したもの。 | 配管交換における強度検討不足 流出防止措置不十分 保護具備付不足 非定常作業における作業不適切 薬液に係る情報提供不十分(MSDS上使用物質不明) |
5月 | (1721)無機化学製品製造業 | 大量漏洩 | その他 | 一塩化硫黄 | 一塩化硫黄の製造工程において、反応槽で製造された塩化硫黄(液体)を冷却、製品分析後、待受槽へ移液し、さらに製品貯槽への移液作業中、製品貯槽下部の移液用配管に亀裂が発生し、当該箇所から一塩化硫黄が大量漏洩した。 | 定期点検時の配管内の点検漏れ(思いこみ) 異常事態把握遅れ |
5月 | (4717)タイヤ又はチューブ製造業 | 中毒54名 | その他 | 臭素 | 臭素貯蔵ドラムの配管点検工事において、臭素供給システムの計装空気のドラムへの送気開始時に、ドラムの後流にあった緊急逃がし弁が復電により自動的に開いており、さらに仕切板がなく、緊急逃がし弁から除害塔への配管を外していたため計装空気が漏えいし、付近にいた被災者らが避難できずに計装空気中の臭素を吸入したもの。 | 関係事業者間の連絡調整不備 作業手順確認不備(緊急逃がし弁の挙動把握漏れ) 緊急時の避難体制不備 |
5月 | (4702)無機・有機化学工業製品製造業 | 中毒1名 | その他 | アセトニトリル | 医薬品中間体の製造工程で、遠心分離機内のろ布面に付着したアセトニトリルを含んだ結晶物の掻き落し作業及びアセトニトリルの仕込み作業に行っていたところ、直結式小型防毒マスクを外しながら、ラバー製の短手袋で作業を行っていたため、アセトニトリル中毒になった。 | 当該作業に係るアセトニトリル濃度測定せず 保護具選択不適切 安全衛生教育不十分 |
5月 | (4708)火薬、煙火又はマッチ製造業 | 中毒1名 | その他 | パラコート | 事業所周辺で、同伴者の指示により、「ミスト機での散布は絶対に行わないこと」との記載がなされていた除草剤を噴霧する作業を、呼吸用保護具、保護メガネを着用せずに行ったところ、パラコート中毒になった。 | 作業標準なし 呼吸用保護具、保護眼鏡不着用 安全衛生教育不十分 |
5月 | (5701)発電用、送電用、配電用電気機械器具製造業 | 中毒1名 | 鉛 | 酸化鉛 | 工場焼成室にて、抵抗器にホーローの粉末(酸化鉛含有率40%以上)を使用し、1月初旬からふるいにてふりかけ作業を行っていたところ、鉛中毒になった。 | 鉛濃度測定未実施 換気不十分 呼吸用保護具不着用 鉛健康診断未実施 |
6月 | (3718)その他の各種建設事業 | 中毒2名 | その他 | 二酸化炭素 | 温泉保養施設において、同施設の1階倉庫で床面の穴あけ作業を行なっていた労働者が、床面に埋め込まれていた二酸化炭素消火設備用配線があることを知らず、そのまま床面の穴あけ作業を行い、消火設備の配線を切断した事により、同設備が稼働し、同施設の地下1階機械室に二酸化炭素が放出された。この時、地下1階機械室の隣の地下1階内部階段付近にいた労働者が大量の二酸化炭素を吸入し中毒となった。 | 注文者から請負人への連絡不備(二酸化炭素消火設備の導線について) |
6月 | (9603)消毒又は害虫駆除の事業 | 死亡1名 | その他 | フッ化スルフリル | 博物館の地下収蔵庫内の害虫駆除作業後の換気作業(排気ファンに排気ダクトをつなぎ、屋外に換気する。)に、呼吸用保護具を着用せずに従事していた労働者が倒れ、搬送先の病院で肺水腫での死亡した。 | 排気ダクトの接続不良 呼吸用保護具不使用 |
6月 | (3501)鉄骨造り又は鉄筋コンクリート造りの家屋の建設事業 | 中毒21名 | その他 | 撥水剤(炭化水素系溶剤80〜90%含有) | 幼稚園新築工事において、撥水剤の吹付け作業による塗布を行っていたところ、同作業現場からいくらか離れたところにいた労働者が撥水剤の噴霧粒子にばく露したもの。 | MSDS記載の内容(吹付禁止)を踏まえた作業計画を策定しなかったこと 災害が発生しているにもかかわらず作業を続行したこと |
7月 | (9603)消毒又は害虫駆除の事業 | 薬傷1名 | その他 | 有機リン(フェニトロチオン) | 害虫駆除作業において、殺虫剤の散布を行っていた被災者が作業を終え、洗身もせずに自宅に帰宅したところ、その過程において薬傷をおったもの。 | 臀部の保護具が不浸透性の材料でなかったため、容易に大腿部にまで殺虫剤が浸透したこと。 有害性情報未把握 洗身等設備未措置 |
7月 | (9416)その他の各種事業 (3703)道路の改修、復旧又は維持の事業 | 中毒7名 | その他 | クロルピクリン | 災害復旧工事において、線路上に堆積した土砂をドラグショベルを用いて取り除いていたところ、クロロピクリン含有のくん蒸用農薬缶が破損し、発散した蒸気にばく露したもの。 | 埋設物不明の状態での重機作業による容器破損でのクロロピクリンの発散 |
7月 | (5901)鋼船製造又は修理業 | 死亡1名 | その他 | 二酸化炭素 | 建造中の船の舵機室下、ラダートランク内において、舵の軸受け穴へ同径のスリーブ(金属製の筒)を挿入するため、冷やし嵌め(メタノールとドライアイスの入ったドラム缶にスリーブを浸け、収縮させる。)作業を行っていたところ、二酸化炭素中毒で死亡した。 | 作業標準なし 換気不十分 呼吸用保護具不使用 |
7月 | (5706)電子応用装置製造業 | 中毒2名 | その他 | 二酸化塩素 | 内層酸化処理ラインの処理液の入った各槽に、指示書に基づき薬液の補充を行う作業を行った際に、硫酸槽に入れるべき硫酸(63%)を、誤って酸化処理槽(亜塩素酸ナトリウム・リン酸三ナトリウム・水酸化ナトリウム)に入れたことにより発生した二酸化塩素ガスを吸入したもの。 | 作業主任者選任せず 作業標準作成せず 呼吸用保護具未整備 |
7月 | (4703)有機工業製品製造業 | 中毒1名 | その他 | アジ化ナトリウム | プラントの反応缶にアジ化ナトリウムを投入する作業を行っていたところ、持っていたアジ化ナトリウム入りの袋が破れアジ化ナトリウムがこぼれたため、ポリエチレン製の手袋の上に軍手を着用していた手ですくい回収したところ、アジ化ナトリウムにばく露したもの。 | 非定常作業における作業標準不備 保護具着用不適切 MSDS未周知(別の処理方法が記載) |
8月 | (9416)その他の各種事業(手作業による絵付業) | 中毒1名 | 鉛 | 鉛 | 社寺建築物等の彩色製作作業において、その原因として、鉛成分を含む絵の具が付着した筆を整えるために筆先を直接口に含むことや絵の具を素手で調合すること等をしていたため、鉛中毒になった。 | MSDS非通知 保護具なし 鉛健康診断未実施 |
8月 | (6501)たばこ製造業 | 中毒5名 | その他 | 塩化亜鉛 | 倉庫棟の燻蒸作業において、燻蒸前に実施する倉庫棟の気密試験のため、発煙筒を着火し1時間程度たった後に、被災者が呼吸用保護具(有機ガス用吸収缶)を装着し、倉庫内に入ってシャッターを開ける等の排気作業をしていたところ、粉じん用フィルターのついていない有機ガス用吸収缶を使用していた労働者が発煙筒燃焼時に発生した塩化亜鉛を吸入したもの。 | 発煙筒着火時に発生する化学物質の検討不足 呼吸用保護具不適切 |
8月 | (9424)医療保健業 | 中毒4名 | 不明 | 不明 | 臨床研究棟において、前日に洗浄、滅菌していた、実験用サンプリングチューブ類を乾燥させるため、下段の乾燥機(低温専用、常時運転用)で乾燥するところを誤って、上段の乾燥機(高温専用)で運転を行ったため、実験用サンプリングチューブが融け出して、発煙、異臭が発生し、ばく露したもの。 | 単独作業 作業標準なし |
8月 | (3801)既設建築物設備工事業 | 薬傷3名 | その他 | 添加剤 | ブタジエンを製造する装置における添加剤の注入設備の定期修理工事の事前準備工事として、配管に閉止板を挿入する作業を行っていたが、 口頭により申し送りしたため、水洗されていない下流側の配管があることが引き継がれないまま、次工程の閉止板の挿入作業に取り掛かった下請作業者が添加剤にばく露したもの。 | 注文者側担当者間の作業交替時の連絡不十分(口頭のみ、文書の不活用) 保護具不着用 |
8月 | (3801)既設建築物設備工事業 | 薬傷6名 | その他 | 酸化防止剤 | 酸化防止剤を注入する設備修理工事において、配管に閉止版を挿入する作業を行っていた過程で、床にこぼれ落ちていた酸化防止剤が洗浄しきれずに残っていたにもかかわらず、配管内には酸化防止剤がないものとして保護具の指示がなされて作業が行われたところ、酸化防止剤にばく露したもの。 | 注文者から工事請負業者への酸化防止剤の危険有害性に係る事前の情報提供不十分 保護具不適切 |
9月 | (3801)既設建築物設備工事業 | 中毒1名 | その他 | 亜硝酸メチル、窒素酸化物 | 炭酸ジメチル製造設備改修工事において、足場解体撤去工事中にメタノール用の有機ガス用防毒マスクを使用していたところ、放出されていたガス(亜硝酸メチル、窒素酸化物等)を吸い込んだもの。 | 注文者からの労働災害防止のための情報提供不十分 呼吸用保護具不適切 |
9月 | (5805)その他の輸送用機械器具製造業 | 中毒10名 | その他 | HCFC-225ca/HCFC-225cb | 車両用エンジン等のターボ部品加工ラインにおいて、密閉できない構造で、外部冷却機(逆流凝縮機)を設置したものの蒸気の漏れを抑えることができない自動洗浄装置から漏洩したガスに、近くで作業を行っていた労働者がばく露したもの。 | 外部冷却機の性能評価を事前に行わなかったこと 換気不十分 呼吸用保護具不着用 |
9月 | (5702)電子機器用・通信機器用部品製造業 | 中毒等3名 | その他 | 水酸化カリウム | 洗浄槽にアルカリ洗浄液を作っている途中、バケツに入れた薬品(水酸化カリウム含有)を投入後、バケツの底に残った薬品を残らず槽内に入れるため、バケツに槽内の水を汲み入れたところ、水と水酸化カリウムが反応してアルカリ性の蒸気が上がり、発生した蒸気にばく露したもの。 | 単独作業 作業手順不徹底 退避措置不十分 |
11月 | (9416)労働者派遣業 | 中毒1名 | その他 | 鉛化合物 | ペレット状の塩化ビニルコンパウンドを製造する工程において、作業場所、作業内容によっては、鉛を含有する粉じんが激しく舞い、建屋内に粉じんが堆積し、また2次発じん対策も洗身設備がないなど日頃から化学物質による健康障害防止対策が十分でなく、保護具を着用していたのが、鉛化合物(紙袋)の投入時、機器の清掃時のみであったことから、反復的かつ継続的に鉛化合物を吸入して鉛中毒となった。 | 換気不十分 二次ばく露防止対策(休憩室、洗身設備、作業衣汚染除去)不十分 呼吸用保護具使用不適切 健康診断事後措置不適切 |
11月 | (3716)工作物の破壊事業 | 中毒4名 | その他 | 鉛化合物(一酸化鉛の疑い) | 鉛プラント(鉛焼成機械設備)解体工事現場において、防じん機能を有していない吸収缶を使用していたことや、建屋の所有主が既に電気の供給を停止していたため、換気装置が使用できなかったこと等のため、二次下請業者の作業員4名が鉛中毒症状を発症した。 | 作業主任者選任せず 呼吸用保護具不適切 換気装置使用不能 |
12月 | (4709)その他の化学製品製造業 | 中毒1名 | その他 | 農薬原体 | 農薬工場において製品である農薬(殺虫剤、除草剤)の包装作業に従事していたが、社内規程によらない自分のガーゼマスクを着用して作業をし、さらに除じん設備のフードの位置が不適切で、農薬原体が被災者の顔面付近を通過するような職場環境での作業を約1か月にわたって続けていたため、中毒になった。 | 呼吸用保護具不適切 除じん設備位置不適切 |