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建設雇用改善計画(第八次)の概要

建設雇用改善計画(第八次)の概要


I 計画の基本的考え方
  計画の背景と課題
(1)背景
 我が国経済は持ち直しの動きが広がりつつあるが、雇用情勢は依然として厳しい状況。他方、人口減少や少子高齢化が労働力に与える影響が指摘。
 建設投資、特に公共投資は著しく減少しており、今後も厳しい環境。建設業は、その過剰供給構造を背景として価格競争が激化し、かつてないほど厳しい状況にあり、雇用の現状を見ると雇用過剰感が見られる状況。
 他方、他産業に比べ高齢化が進んでおり、高年齢層の労働者が大量に離職するとともに、若年者等の入職が進まなければ、将来的に技能労働者が不足することが懸念。若年労働者等の確保・育成、新分野進出の支援、余剰労働力の円滑な労働移動等を図ることが必要。
 また、我が国の建設業においては、重層的下請構造等の特徴が存在するほか、近年の競争激化に伴うダンピング受注やその就業形態への影響等が指摘。これらの対応に万全を期す必要。
(2)課題
 高い意欲と能力を持つ建設労働者が安心して生活できる労働環境のための建設雇用改善を推進するとともに建設産業の将来を担う若年労働者の確保を図る。
(重点事項)
(1) 建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図りつつ、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」等に基づき、建設労働者の雇用の一層の近代化を進め、魅力ある労働環境づくりを図ること。
(2) 建設労働を取り巻く環境の変化も踏まえ、事業主等が行う職業能力開発を引き続き促進する中で、教育訓練の共同的かつ広域的な実施を推進しながら、建設労働者自らがその能力の開発を行うことができるようにし、その職業能力を高めるとともに、技能の継承を図ること。
(3) 若年労働者の減少が今後深刻な問題となりうるとの懸念があることを踏まえ、これまで以上に若年者の建設業への入職促進及び定着を図るとともに、高年齢者や女性が活躍できるような労働環境の整備を図ること。
(4) 建設事業主が建設業内外の新たな分野に進出することを支援するととともに、建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営を確保することにより、現に雇用されている建設労働者の雇用の安定を図ること。

  計画の期間:平成23年度〜平成27年度。ただし、今後の建設業や建設業に係る施策の動向等を踏まえ、必要な場合は計画を改正。

II 建設雇用の動向
  建設経済の動向
 建設投資は減少傾向が続いており、平成22年度投資額(実質)はピークの平成2年度から約54%の減少の見込み。建設産業を取り巻く環境は、かつてないほど厳しい状況。

  雇用者の動向
 建設業の就業者数は、平成21年には517万人(全産業に占める割合は8.2%)となり、ピークの平成9年と比較して約25%の減少。雇用者数は、平成9年の563万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、平成21年には422万人(全産業に占める割合は7.7%)。
 建設業における若年層(15〜29歳)の割合は、平成21年には12.8%(全産業の17.8%に比べやや低い)。他方、高年齢層(55歳以上)の割合は平成21年には32.5%(全産業の28.4%に比べやや高い)。また、平成21年における建設労働者の平均年齢は43.7歳(全産業の41.1歳に比べやや高齢化)。

  建設技能労働者の需給動向
 建設技能労働者の過不足状況については、全体的には平成17年から平成20年にかけて不足の状況となったが、平成21年以降は再び過剰とする企業が多数。
 建設技能労働者については、高齢化が進む一方、若年労働者が減少していることから、今後、不足することが懸念。

  労働条件の動向
 建設業における1人当たりの年間総実労働時間(規模5人以上の事業所)は、平成21年には2,028時間(全産業の1,733時間と比べかなり長い)。
 建設業において完全週休2日制を導入している企業の割合(規模30人以上の企業)は、平成21年では28.1%(全産業の39.1%に比して普及が遅れている)。
 賃金制度の状況を建設業の常用労働者について見ると、月給制(完全月給制)を採用している企業の割合は、平成22年度の調査で29.0%(平成16年度の29.1%からほぼ横ばい)。
 建設業における賃金水準については、生産労働者(男性)の年間の給与額(企業規模10人以上の事業所)を試算すると、平成21年で401万円(平成16年の401万円からほぼ横ばい)。
 建設業における労働災害の状況については、死亡災害は平成21年には371人。全産業に占める割合は、死傷者数で19.8%、死亡者数で34.5%。

  職業能力開発の動向
 OFF−JTを実施した企業は、平成21年度には78.7%(全産業の67.1%、製造業の67.4%より高い)。
 計画的なOJTを実施した企業は、平成21年度には55.6%(全産業の57.8%、製造業の61.0%より低い)。
 人材育成の問題点については、「指導する人材が不足している」が最も多く51.2%、「人材を育成しても辞めてしまう」が37.7%(複数回答)。

III 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項
 建設労働者の職業生活の安定にも十分に配慮した上で、建設雇用等の動向を踏まえ、建設労働者の雇用状態の改善、職業能力の開発及び向上、福祉の増進等雇用の改善を一層促進することにより、建設業の魅力ある産業としての発展に資するため、次の施策を積極的に推進する。
  魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備
(1)建設雇用改善の基礎的事項の達成
 雇用関係の明確化のため、雇入通知書の交付等による労働条件の明示について指導監督・周知。
 いわゆる一人親方について現状把握を行った上で、労働者への労働関係法令の適用について周知啓発、現状把握に基づいた効果的な対応。
 労働者募集及び請負が適正に行われるよう適切に指導監督。また、偽装請負に対して厳正に指導監督。
 長時間労働の実態の改善について、健康の保持、ワーク・ライフ・バランスの推進、若年者等の入職及び定着の観点から労使が自主的に取り組むべき事項として重点的な指導。
 墜落や建設機械等による災害、アスベスト対策、熱中症予防対策等の労働災害防止に向けた事業主の自主的な取組の一層の促進のため、総合的な労働災害防止対策の推進。
 労働保険及び社会保険の適用促進を図るため、啓発指導の推進。
 建設業退職金共済制度の適正運営及び加入促進。
(2)労働環境の整備
 作業員宿舎等の現場福利施設の整備に対する支援や、清潔、安全かつ快適な職場環境形成のための指導等。

  職業能力開発の推進
(1)事業主等の行う職業能力開発の促進
 認定職業訓練、技能実習、広域訓練、共同訓練及び成長分野等への進出に必要な教育訓練の支援。
 建設技能労働者のキャリア形成に向けた適切な資格の取得、それに向けての教育訓練と、取得した技能に見合った処遇等とを関連づけた望ましいキャリアパスについての検討等の取組への支援等。
 若年者の確保の観点から、若年者の建設業への関心を喚起するため、関係機関と連携し、現場見学会等のキャリア教育等への取組。
(2)労働者の自発的な職業能力開発の促進
労働者の自発的な職業能力開発に対する支援体制の整備等。
(3)熟練技能の維持・継承及び活用
 各種技能競技大会の実施等による技能の魅力や重要性の啓発。
 熟練技能者の派遣等による技能講習の実施を通じた技能者との交流等。
 児童・生徒やその親に対して技能やものづくりの魅力に触れる機会の提供。

  若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進
(1)若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進
 若年者の建設業への関心を喚起するため、関係機関と連携し、現場見学会等のキャリア教育や進路指導、職業指導等の実施。
 建設技能労働者の望ましいキャリアパスについての検討等の取組への支援。
 建設業のイメージアップにつながるよう国民一般の建設労働に対する正しい理解を促進するための取組への支援。
(2)高年齢労働者の活躍の促進
 定年の引上げ、継続雇用制度導入等の措置義務について周知・指導。
 高年齢労働者の特性に対応した労働環境の整備及び高年齢労働者が有する高度な熟練技能の継承を図るための取組に対する支援。
(3)女性労働者の活躍の促進
 男女雇用機会均等法の周知・是正指導等による男女均等な雇用機会確保及び建設職場への受入体制の整備の促進。
 女性労働者の活躍の促進や、職場環境の改善に対する支援。
 女性労働者が活躍する業務についての好事例集の作成普及を通じた女性の入職促進の取組の支援。

  円滑な労働力需給の調整等による建設労働者の雇用の安定等
(1)円滑な労働移動及び新分野進出の支援
 事務職、管理職等の余剰となっている労働者について、公共職業安定機関、公共職業能力開発施設等が連携した円滑な労働移動の支援。
 建設業における成長分野や、建設業以外の分野等の事業に新たに対応するために必要な教育訓練への支援などによる建設事業主の新分野進出の支援。
(2)建設業務有料職業紹介事業及び建設業務労働者就業機会確保事業の適正な運営の確保等
 両制度の趣旨に沿った適正かつ効果的な事業運営の確保。
 実施計画認定及び事業許可に際し、申請内容の確認及び審査を厳格に実施。
 実施計画の認定を受けた事業主団体において関係者への制度の周知啓発、送出・受入事業主に対する指導監督・相談援助等の措置が講じられるよう指導。
 事業の実施状況の把握、適切な指導監督の実施。建設事業主等に対する制度の趣旨等についての周知啓発。

  雇用改善推進体制の整備
(1)建設事業主における雇用管理体制等の整備
 建設労働者の雇用管理に関する事項についての下請事業主に対する指導等の元請事業主の役割の適切な遂行及び建設事業主における雇用管理体制の充実。
(2)事業主団体等における効果的な雇用改善の推進
 専門工事業者団体等中小建設事業主団体等による自主的な雇用改善の取組の推進について啓発・指導。
(3)地域の実情を踏まえたきめ細かな雇用改善の推進
 地域における雇用改善推進のための目標設定や具体的取組の共同実施に対する指導・援助。
(4)雇用改善の気運の醸成
 優良事業所の表彰制度等を活用した事業主による雇用改善の気運の醸成。
(5)建設雇用改善助成金制度の活用及び建設業の動向を踏まえた検討
 建設業におけるニーズを踏まえた助成金制度の見直し、効率的・効果的な運用、制度の周知徹底、申請手続の簡素化等。
 建設業行政を所管する国土交通省等と連携し、建設業の動向等を踏まえつつ、抜本的な検討。
(6)関係行政機関相互の連携の確保等
 都道府県と都道府県労働局の連絡協議の場等における情報・意見交換等。
 公共職業安定機関、建設関係行政機関等で構成する「建設雇用改善推進会議」の一層の活用等。
(7)雇用改善を図るための諸条件の整備
 建設業における雇用改善を図るためには、重層的下請構造やダンピング受注など建設業における生産の仕組みに関わる事項について建設業行政等を始めとする関係行政機関による指導等を行うとともに、関係事業主等における理解と適切な対応が必要。
 労務関係諸経費の確保、適正な工期の設定等について建設業行政等を始めとする関係行政機関の指導等による関係事業主等における適切な対応の推進。
 ダンピング対策の充実、工事量の平準化など、建設労働者の適正な労働条件の確保に資する公共工事の発注を推進するための方策について、各発注者の理解と協力を得て推進。

  外国人労働者問題への対応
 専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れについては、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、積極的に推進。
 いわゆる単純労働者の受入れについては、我が国の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすため、十分慎重な対応が不可欠。

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