筆の都の仕事人・わっしょい!元気事業
(1)地域 :広島県安芸郡熊野町
(2)地域の現状
熊野町は広島市、呉市、東広島市の3都市に囲まれており、高原盆地となっている。江戸時代後期から伝わる筆の製造を中心として栄えてきた町で、日本で生産される筆の約8割にあたる8,000万本を生産している。筆製品は主に書筆・画筆・化粧筆がある。
しかし、中国筆の輸入増加、少子化、学校での毛筆書写教育、生活様式等の変化に伴い、化粧筆は売上げが上昇傾向にあるものの、小・中学生をターゲットにした筆産業の市場は全体として年々縮小しており、景気の低迷や事業主の高齢化などによる廃業も見られるところである。また、その他の産業を含めた全体でみても、雇用情勢が広島県内の有効求人倍率平均を大きく下回るなど非常に厳しい状況が続いている。
(3)地域で行っている取組
[1]需要開拓推進事業
「全国書画展覧会」等の作品展を開催し、全国から作品募集を行い、広く筆愛好家の発掘に努めている。
[2]伝統産業啓発事業
伝統的工芸品に対する理解を広く普及させるため、筆の製作工程の説明・実演を行っている。また、小学生の総合学習に対応し、熊野筆についての写真展示などによる社会見学対応型の筆づくり実演事業や筆祭りの支援等を行っている。
[3]地場産業支援事業
オリジナル商品の開発、販売促進イベント、筆の里スプリングフェスタの開催等を実施している。
[4]地域産業活性化事業
全国で唯一の「筆の里工房」の維持管理の委託をはじめ、自主事業や各種イベントへの支援を行っている。
[5]筆関連イベント事業
「筆まつり」など筆産業の振興に関するイベント事業の支援を実施している。
[6]優良従業者表彰事業
産業の振興に寄与した人物を表彰し、町産業を奨励している。
[7]観光推進事業
観光パンフレットを作成し、県内でのイベント開催時に配布したり、公共施設などに配置したりすることで広く町の魅力をPRしている。
[8]熊野筆産業情報センター事業
商工団体等の事業者間相互の連携を図るため熊野筆産業情報センターを開設し、意見集約や共同戦略の意識的・組織的な基盤整備を行っている。
(4)課題
[1]筆職人の後継者不足
中国から安価な筆が大量に流入していることから仕事量が減少し、事業所内で給与を支払いながら職人を養成することが困難になりつつある。技能の伝承に大きな影響が出ると危惧されるため、早急な対応が求められている。
[2]産地崩壊の危機
安価な筆について、従来のままでは経営が成り立たなくなり、中国産の部品・製品を取り入れている事業者もいる。また職人の高齢化が進み、将来的な生産機能の維持に対する不安や、完成品の仕入れ販売のみで成り立つ産地になるとの懸念もされている。このため、新たな筆の製造及び経営・販売戦略知識、技術の習得が求められている。
[3]雇用創出・創業者支援
新たな雇用を確保・創出するため、筆産業及び観光産業の情報提供、職場見学、創業者支援等を充実させる必要がある。
[4]観光振興
観光資源を十分に活用できていないことから、主に退職後の高年齢者を対象として観光ガイドを養成し、地域の活性化と高年齢者の雇用を確保する必要がある。
(5)パッケージ事業での取組
[1]筆職人後継者育成事業
筆の製造工程を穂首づくり、軸づくり、仕上げの3つに細分化し、コースを設け職人を育成する。
[2]経営・販路開拓者育成事業
筆に関する知識教養講座及び各種経営・販路開拓講座を開講し、今後の経営戦略や販路の開拓などを身につけさせることにより、雇用の創出に結びつける。
[3]求職者・創業者支援事業
「筆の都働く元気部屋」を設置し、筆産業及び観光産業に関しての求人情報の提供や、合同事業所面接会、職場見学や創業者支援等を行い、雇用を促進する。
[4]観光推進関連事業
観光ガイドを養成する。
(6)パッケージ事業実施による将来像
後継者不足や産地崩壊の危機に対し、パッケージ事業が実施されることよって、筆職人の人材育成が進められ、地域の活性化につながると期待される。また、熊野筆等の豊かな観光資源を活かした観光事業や創業者支援によって、地域の特性を活かした雇用の促進が見込まれる。

