川崎ものづくり産業の高度人材育成による産業振興・雇用創造
=エンベデット(組み込み)システム人材を中心として=
(1)地域 :神奈川県川崎市
(2)地域の現状
川崎市はこれまで「工業都市・川崎」と呼ばれ、製造業を中心として発達してきた。しかし、製造業において生産拠点の海外移転が進んだことから、事業所数、就業者数ともに減少しており、有効求人倍率をみても神奈川県内で最も低い水準となっている。
その反面、200を超える研究機関が集積し「専門・技術的職業」に従事する市民が増加している。また、日本最初のビジネスインキュベーション施設を始め、マイコン関連研究開発型企業、コンピューターメーカー、IT機器メーカーが集積するなど、情報通信・電子機器産業分野の集積が新しい産業の基幹を形成しつつあり、新しい「ものづくり産業」として世界の製造業をリードしていく「大きな芽」となることが期待されている。特に、エンベデットシステム分野は今後の急成長分野として期待されていることから、川崎市としてもこの分野での国際的比較優位を確保する手立てを講じることが求められている。
(3)地域で行っている取組
[1]創業を促進する事業
起業・創業を支援するため、起業家の育成のための相談や講習会を始め、資金融資、創業及び経営刷新計画の承認の支援等を行っている。
[2]新分野進出を促進する事業
新たな事業分野への進出を計画している企業や創業を目指す個人に対し、インキュベーション施設のスペースを提供し、インキュベートマネージメントにより会社設立・販路拡大等の支援を行っている。
[3]新技術・新商品開発に係る事業
ものづくり産業の高度化・複合化を図るため、基盤技術の高度化、製品の複合化、情報技術の融合化の推進、中小企業が単独又は大学等との共同で行う新製品・新技術開発等への助成を行っている。また、起業OB人材の知識・ノウハウを中小企業の技術開発、商品開発に適用して事業支援を行っている。
[4]販路拡大・誘客の支援に係る事業
高度なものづくり機能を象徴する製品や企業を発掘し、川崎ものづくりブランドとして情報発信を行う。また、市内企業等の新技術・新製品の展示紹介を行う先端技術見本市の開催、市内の中小企業者が開発した商品のホームページ「かわさき製品見本市」での展示等を行っている。
[5]企業間連携等の促進に係る事業
マイクロエレクトロニクス関連、情報通信関連の研究開発型企業の誘致、新しい産業基盤、雇用の場を創造するマイコンシティ事業、製造業等のグループが主体的に行う企業交流イベントの開催や国内外で開催される見本市・商談等の出展に対して助成を行う中小企業ネットワーク交流活動支援事業を行っている。
[6]人材活用に係る事業
企業優待者などの優れた技術・知識を持った地域人材の活用の研究や、人材と企業のネットワークを構築等を行い地域人材の活用を図っている。
[7]地域雇用創造バックアップ事業の活用
地域雇用創造調査研究事業を活用し、人材育成の方策等の調査研究を実施した上でパッケージ事業の事業構想を構築した。
(4)課題
[1]エンベデット(組込み)システム技術者の育成
高度なものづくりに関する業務が行われているにもかかわらず、エンベデット系技術を有する人材が不足しており、特に中小企業において人材確保が大きな課題となっている。
[2]ソフトウエア系技術者の育成
ものづくり産業の開発・生産工程における急激な変化のスピードと高度化に対応して、ソフトウエア開発においても高度化へ対応することが必要となっている。
[3]ハードウエア系技術者の育成
情報通信・電子機器ものづくり分野において、製品の複合化、情報技術との融合化を図り高度化を目指していくため、電子回路設計等ハードウエア開発の高度化・スピード化が求められている。また、ハードウエア開発の基本となる3次元CAD技術等を修得した人材が必要となっている。
[4]ものづくり産業を支える人材の育成
上記の技術的視点だけではものづくり産業の高度化は成り立たないことから、特に中小企業においては、法務・労務・知財・財務の知識、新たな事業創業のサポート、セキュリティ管理、知的財産管理を担うことのできる人材が必要となっている。また、海外進出や取引の国際化が進むなかで国際的人材が必要となっている。
(5)パッケージ事業での取組
[1]エンベデット(組込み)システム人材育成
エンベデットシステムシステムの基本を学ぶ研修を行う。実際の企業実習を盛り込むことでより効果的なものとし、エンベデットのソフトウエア開発に従事する技術者、技術をもとに製品開発やマーケティング戦略を立案・実行できる技術リーダー等の育成を目指す。
[2]ソフトウエア系人材育成
エンタプライズ(業務)系ソフトウエア開発やネットワーク構築等を職種とするIT人材育成のための研修を行う。
[3]ハードウエア系人材育成
情報通信・電子機器分野のものづくりに関わる人材育成を目的として、高度な製品開発を支える各種機器等の設計・開発の研修を行う。
[4]情報通信・電子機器分野の高度化を支える人材の育成
販路開拓支援、マッチング支援等を行うことでベンチャー企業を始めとする各企業を支援する人材の育成研修を行う。また、海外企業とのビジネスに必要とされる知識を身につけた人材、情報資産を守るためのセキュリティ対策や知的所有権等新しいマネジメント手法を持った人材の育成を行う。
[5]人材育成事業を推進するための情報提供・交流事業
人材募集や事業PRのための公報・広告、企業合同就職説明会、キャリアカウンセリング等を行う。
(6)パッケージ事業実施による将来像
パッケージ事業の実施によって、ものづくり産業の再生と高度化に必要な人材が育成される。こうした人材育成を通じて、川崎市全体の産業振興・雇用創出につながることが期待される。
*注:エンベデット(組込み)システム
産業機器や家電製品などに内蔵される、特定の機能を実現するためのコンピューターシステム。近年では、電気・電子機器の高度化・複雑化と、マイクロプロセッサやメモリの性能単価の下落が進んだ結果、より広範な分野で組み込みシステムが採用されるようになっている。洗濯機、炊飯器、テレビ、ビデオ、デジタルカメラ、プリンタ、コピー機、携帯電話、自動車、自動販売機、券売機等、身の回りにあるほとんどの機会には何らかの組み込みシステムが搭載されている。

