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美容業の振興指針

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厚生労働省健康局生活衛生課


(平成26年3月13日)
(厚生労働省告示第74号)

生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号)第56条の2第1項の規定に基づき、美容業の振興指針(平成21年厚生労働省告示第38号)の全部を次のように改正し、平成26年4月1日から適用する。

美容業の営業者が、美容師法(昭和32年法律第163号)等の衛生規制に的確に対応しつつ、現下の諸課題にも適切に対応し、経営の安定及び改善を図ることは、国民生活の向上に資するものである。
 このため、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「生衛法」という。)第56条の2第1項に基づき、美容業の振興指針を定めてきたところであるが、今般、営業者、生活衛生同業組合(生活衛生同業小組合を含む。以下「組合」という。)等の事業の実施状況等を踏まえ、営業者、組合等の具体的活用に資するよう、実践的かつ戦略的な指針として全部改正を行った。
 今後、営業者、組合等において本指針が十分に活用されることを期待するとともに、新たな衛生上の課題や経済社会情勢の変化、営業者及び消費者等のニーズを反映して、適時かつ適切に指針を改定するものとする。

第一 美容業を取り巻く状況
美容業の事業者の動向
  美容業は、衛生的で、かつ、容姿を美しくしたいという国民の文化的欲求に応えるサービスを提供することで、国民生活の充実に大いに寄与してきたところである。
  美容所の施設数は231,134施設(平成24年度末)であり、10年前と比較して22,823施設の増となっている。平成16年から平成17年頃に美容師免許取得者数が約3万人となる高い水準となっていたことから、今後数年間で美容店の新規開設希望者が増大することが予想される。従業美容師数は479,509人であり、10年前と比較して96,295人の増となっている(厚生労働省『衛生行政報告例』による)。従業者数5人未満の事業者は69.2%で、経営者の年齢については、60歳から69歳の者の割合が25.0%、70歳以上の者の割合が10.8%となっている(厚生労働省『生活衛生関係営業経営実態調査』による)。
  住宅地に立地し、中高年の経営者による小規模個人経営の店と、商業地や交通至便の場所に立地する比較的新しい店や法人経営の中規模・大規模店が見られるなど、二層分化の傾向も見られる。
  経営上の課題としては(複数回答)、「客数の減少」を最も多くあげており、次に多い問題点としては、「客単価の減少」、「競合店舗の新規出店」、「施設・設備の老朽化」、「人手不足・求人難」等となっている(厚生労働省『生活衛生関係営業経営実態調査』による)。
消費動向
  平成24年の1世帯(2人以上の世帯)のパーマネント代の支出額は5,153円で前年比16円の減、カット代の支出額は5,930円で前年比75円の減で、平成14年の支出額を100とした場合、平成24年のパーマネント代の支出額は62.7、カット代の支出額は99.4となっている(総務省『家計調査報告』による)。
  また、美容店1回あたりの費用(商品の購入費用は除く)は、「3,000〜3,999円」が20.4%と最も多く、「4,000〜4,999円」が15.7%、「10,000円以上」が14.8%となっている。1回あたりの費用については、「より満足度が高まるのであれば費用を増やしてもいい」と考える利用者が36.2%となっており、その条件としては(複数回答)、「気に入った、理想のヘアスタイルになる」が76.2%、「ヘア関連以外の充実したサービスが受けられる」が41.4%、「癒やされる・疲れがとれる」が36.2%、「悩みに的確に対応してくれる」が31.3%となっている(株式会社日本政策金融公庫『美容店に関する消費者意識と経営実態調査』による)。
営業者の考える今後の経営方針
  営業者の考える今後の経営方針としては(複数回答)、「接客サービスの充実」44.6%、「広告・宣伝等の強化」22.6%、「廃業」11.3%、「施設・設備の改装」10.4%、「価格の見直し」10.3%となっている(厚生労働省『生活衛生関係営業経営実態調査』による)。
第二 前期の振興計画の実施状況
  都道府県別に設立された美容業の組合(平成25年12月末現在で47都道府県で設立)においては、前期の美容業の振興指針(平成21年厚生労働省告示第38号)を踏まえ、振興計画を策定、実施しているところであるが、当該振興計画について、全5ヵ年のうち4ヵ年終了時である平成24年度末に実施した自己評価は次表のとおりである。
  なお、国による予算措置(補助金)については、政策目的の達成状況の検証及び事業の適切かつ効果的な実施の観点から、「生活衛生関係営業の振興に関する検討会」の下に設けられた「生活衛生関係営業対策事業費補助金審査・評価会」において、審査から評価まで一貫して行う等、必要な見直し措置を講じている。
  このため、組合及び生活衛生同業組合連合会(以下「連合会」という。)等においても、振興計画に基づき事業を実施する際は、成果目標及び事業目標を可能な限り明確化した上で、達成状況についても評価を行う必要がある。
  当該振興計画等の実現に向けて、組合及び連合会においては、振興指針、振興計画の内容について広く広報を図り、組合未加入営業者への加入勧誘を図ることが期待されている。
  組合への加入、非加入は営業者の任意であるが、生衛法の趣旨、組合の活動内容等を詳しく知らない新規開設者等の営業者がいることも考えられるため、都道府県、保健所設置市への営業の許可申請、届出等の際に、営業者に対して、生衛法の趣旨、関係する組合の内容、所在地、連絡先等について情報提供等の取組の実施が求められる。
表 振興計画の実施状況についての各組合による自己評価 (単位:%)
  事業名 達成 概ね達成 主な事業
1 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事業 38% 51% ・衛生管理等に関する講習会の開催
・自主点検の実施
・ホームページ・情報誌による情報提供
2 施設及び設備の改善に関する事業 15% 49% ・店舗特性を踏まえた改装や省エネ・バリアフリー対応の設備の導入投資が見られる
3 利用者の利益の増進に関する事業 24% 72% ・小冊子・ポスター配布
・賠償責任保険への加入促進
・講習会の開催
4 経営管理の合理化及び効率化に関する事業 26% 51% ・経営講習会、各種研修会の開催
・税務相談会・融資相談会の開催
5 営業者及び従業員の技能の改善向上に関する事業 51% 41% ・技術講習会の開催
・技能コンテストの開催
6 事業の共同化及び協業化に関する事業 24% 39% ・共同購入の実施
・講習会の開催
7 取引関係の改善に関する事業 28% 42% ・関連業界との定期的協議会の開催
8 従業者の福祉の充実に関する事業 35% 52% ・共済制度の加入促進
・研修会・講習会の開催
9 事業の承継及び後継者支援に関する事業 35% 30% ・後継者育成支援のための研修会等の開催
・若手経営者組織の育成
10 環境の保全及び省エネルギーの強化に関する事業 13% 39% ・研修会・講習会の開催
・ホームページ・情報誌による情報提供
11 少子・高齢化社会への対応に関する事業 17% 37% ・福祉ボランティアの実施
12 地域との共生に関する事業 13% 39% ・地域行事への参加
・ボランティアの実施
第三 美容業の振興の目標に関する事項
営業者の直面する課題と地域社会から期待される役割
  美容業は、衛生的で、かつ、容姿を美しくしたいという国民の文化的欲求に応えるサービスを提供することで、国民生活の充実に大いに寄与してきた。こうした重要な役割を美容業が引き続き担い、国民生活の向上に貢献できるよう、経営環境や国民のニーズ、衛生課題に適切に対応しつつ、各々の営業者の経営戦略に基づき、その特性を活かし、事業の安定と活力ある発展を図ることが求められる。
  また、国民の「美と健康(ビューティーアンドヘルシー)」に対する需要はますます高まってきており、その需要に応えて質の高いサービスを提供できるよう、業界全体が変わっていくことが必要である。
  さらに、高齢者や障害者等のニーズに的確に即応することで、美容業の営業者の地域住民が日常生活を送るために必要なセーフティーネットとしての役割や地域における重要な構成員としての位置づけが強化され、生活者の安心を支える役割を担うことが期待される。
  一方で、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、化粧品等の安全性やアレルギー等への影響に対する消費者の関心も高く、公衆衛生の見地から感染症対策等の充実を図り、利用者に対して衛生管理についての納得と安心感を提供していくことが求められる。
  また、近年、まつ毛エクステンションが急速に普及してきているが、こうした新たな技術やサービスへの対応については、美容師の養成段階はもとより、美容師免許取得後も新たな技術への対応のための取組が求められる。
  さらに、社会全体の少子高齢化の中で、営業者自身の高齢化による後継者問題に加え、従業者等への育児支援等も課題となっている。
  各営業者は、これらを十分に認識し、利用者の安全衛生の確保、技術及びサービスの向上、利用者に対する情報提供等に積極的に取り組むことにより、美容業に対する利用者の理解と信頼の向上を図ることを目標とすべきである。
今後5年間(平成26年度から平成30年度末まで)における営業の振興の目標
  衛生問題への対応
    美容業は、人の身体の一部である毛髪及び皮ふに化粧品などを使用して容姿を美しくする営業であり、衛生上の問題に対して、特に注意が必要な業態である。衛生上の危険を防止し、利用者に対して安全で良質なサービスを提供することは営業者の責務である。
    衛生課題は、営業者の地道な取組が中心となる課題と、新型インフルエンザへの対応のように、営業者にとどまらず、保健所等衛生関係機関や都道府県生活衛生営業指導センター(以下「都道府県指導センター」という。)等との連携を密にして対応すべき課題とに大別される。
    衛生問題は、営業者が一定水準の衛生管理を行っている場合、通常、発生するものではないため、発生防止に必要な費用及び手間について判断しにくい特質がある。しかし、一旦、衛生上の問題が発生した場合には、多くの消費者に被害が及ぶことはもとより、営業自体の存続が困難になる可能性があることから、日頃からの地道な衛生管理の取組が重要である。
    また、こうした衛生問題は、個々の営業者の問題にとどまらず、業界全体に対する信頼を損ねることにもつながることから、組合及び連合会には、組合員、非組合員双方の営業者が自覚と責任感を持ち、衛生水準の向上が図られるよう、継続的に知識及び意識向上に資する普及啓発や適切な指導及び支援に努めることが求められる。
    とりわけ、零細な営業者は重要な公衆衛生情報の把握が困難となる場合が考えられるため、これら営業者に対する組合加入の促進や公衆衛生情報の提供が円滑に行われることが期待される。
    さらに、管理美容師資格認定講習会については、店舗の管理者にふさわしい衛生管理に係る知識や意識の点検を図り、その徹底を図るために重要な制度であり、新規受講対象者を中心に管理美容師の資格取得を促していく必要がある。
  経営方針の決定と消費者・地域社会への貢献
    美容店の施設数が増加する中で、チェーン店の増加や個人所得の伸び悩み、利用頻度の低下もあいまって、経営環境は厳しいものとなっている。
    こうした中で、営業者は、消費者のニーズや世帯動向等を的確に把握し、専門性や技術力、地域密着、対面接客等の特性を活かし、競争軸となる強みを見出し、独自性を十分に発揮し、経営展開を行っていくことが求められる。
    生活水準の向上に伴い、国民が生活の質的充実を志向し、美容業に対する要望の多様化、高度化、ファッション化及び個性化の傾向が強まっているとともに、精神的な癒し(リラクゼーション)及び健康が重視される中で、消費者は、技術の質、料金、施設及び設備、接客態度等を合理的に選好することにより、美容所の選択を行っている。このため、へアスタイル等の流行に合った施術内容の見直しと、その技術の研さん向上を図るとともに、顧客に総合的な美(トータルビューティ)を提供するという観点から、サービスの総合化を推進し、個々の店の経営方針に沿って、美と健康を求める利用者の需要に対応して、激化する競争の中で安定した経営を確保するための付加価値を提供することを経営の目標とする必要がある。
    他方、人口減少・少子高齢化及び過疎化の進展は、営業者の経営環境を厳しくする一方、買い物の場所や移動手段など日常生活に不可欠な生活インフラそのものを弱体化させる側面があることから、高齢者や障害者、子育て・共働き世帯等が身近な買い物に不便・不安を感じさせる、いわゆる「買い物弱者」の問題を顕在化させる。地域に身近な営業者の存在は、買い物弱者になりがちな高齢者等から頼られる位置づけを確立し、中長期的な経営基盤の強化につながることが期待される。
    特に、高齢化が進展する中で、在宅や老人福祉施設等で美容店に来店することが困難な高齢者が増加していくことが予想されることから、これらの者に対する訪問美容サービスや送迎を推進していくことが期待される。美容サービスによって身だしなみを整えることは高齢者の気持ちを若返らせ、心身をリフレッシュさせる上でも重要である。
    こうしたシニア層向けのサービスの提供は、単に売上げを伸ばすだけでなく、地域社会が抱える問題の課題解決や地域経済の活性化にも貢献するものであり、これら取組を通じた経営基盤の強化により、大手資本によるチェーン店との差別化にもつながるものと期待できる。
  税制及び融資の支援措置
    美容業の組合又は組合員には、税制優遇措置及び日本政策金融公庫を通した低利融資を受ける仕組みがある。
    税制措置については、組合が共同利用施設を取得した場合の特別償却制度が設けられており、組合において共同配送用車輌及び共同蓄電設備の購入時や組合の会館を建て替える際などに活用することができる。
    融資については、対象設備及び運転資金について、振興計画を策定している組合の組合員(営業者)が借りた場合に、対象設備については、日本政策金融公庫の基準金利よりも低率の融資を受けることができる。また、各都道府県の組合が作成した振興計画に基づき、一定の会計書類を備えている営業者が所定の事業計画を作成して設備資金及び運転資金を借りた場合、より低い低利融資の仕組み(振興事業促進支援融資制度)が設けられており、特に設備投資を検討する営業者には、積極的な活用が期待される。
関係機関に期待される役割
  組合及び連合会に期待される役割
    組合及び連合会には、独自の財源や国から受ける生活衛生関係営業対策事業費補助金を活用して、営業者の直面する衛生問題及び経営課題に対する適切な支援事業を実施することが期待される。
    事業の実施に際しては、有効性及び効率性(費用対効果)の観点から、計画期間に得られる成果目標を明確にしながら事業の企画立案・実施を行い、得られた成果については適切に効果測定する等、事業の適切かつ効果的な実施に努めることが求められる。
    また、事業効果を最大限発揮し事業成果を広く国民や社会に還元できるよう、都道府県指導センター、保健所等衛生関係機関、日本政策金融公庫支店等との連携及び調整を行うことが期待される。
  都道府県指導センター及び日本政策金融公庫に期待される役割
    多くの営業者が経営基盤が脆弱な中小零細事業者であることに鑑み、都道府県指導センター及び日本政策金融公庫において、営業者へのきめ細かな相談・指導その他必要な支援を行うなどし、予算措置(補助金)、金融措置(融資)、税制措置等の有効的な活用を図ることが期待される。
    とりわけ、金融措置(融資)については、審査・決定を行う日本政策金融公庫において営業者が利用しやすい融資の実施、生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握及び分析に努め、関係団体に情報提供するとともに、日本政策金融公庫と都道府県指導センターが協力して、手続きや計画作成に不慣れな営業者への支援の観点から、融資に係るきめ細かな相談及び融資手続きの簡素化を行うことが期待される。低利融資制度については、各営業者の事業計画作成が前提とされることから、本指針の内容を踏まえ、営業者の戦略性を引き出す形での指導を行うことが求められる。
  国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センターに期待される役割
    国及び公益財団法人全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)は、公衆衛生の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、都道府県及び連合会と適切に連携を図り、信頼性の高い情報の発信、的確な政策ニーズの把握等を行う必要がある。また、予算措置(補助金)、金融措置(融資)、税制措置を中心とする政策支援措置については、営業者の衛生水準の確保、経営の安定に最大限の効果が発揮できるよう、安定的に所要の措置を講じるとともに、制度の活性化に向けた不断の改革の取組が必要である。
    また、全国指導センターにおいては、地域で孤立する小規模営業者のほか、大規模チェーン店に対しても、組合加入の働きかけや公衆衛生情報の提供機能の強化を行うため、関係の組合及び連合会との連携を促すための取組が求められる。
第四 美容業の振興の目標を達成するために必要な事項
  美容業の目標を達成するために必要な事項としては、次に掲げるように多岐にわたるが、営業者においては、衛生水準の向上等のために必須で取り組むべき事項と、戦略的経営を推進するために選択的に取り組むべき事項の区別を行うことで、課題解決と継続的な成長を可能にし、国民生活の向上に貢献することが期待される。
  また、組合及び連合会においては、組合員である営業者等に対する指導・支援、消費者の美容業への信頼向上に資する事業の計画的な推進が求められる。
  このために必要となる具体的取組としては、次に掲げるとおりである。
営業者の取組
  衛生水準の向上に関する事項
    (1) 日常の衛生管理に関する事項
      美容業は、人の体の一部である毛髪及び皮ふを対象として、パーマネントウェーブ用剤、化粧品等を使用して容姿を美しくする営業であり、人の身体の安全及び衛生に直接関わる営業である。このため、営業者及び従業員は、美容師法等の関係法令を遵守することは当然のことであり、衛生上の問題発生の防止及び衛生水準の一層の向上を図るため、衛生に関する専門的な知識を深め、常時、施設及び設備、器具等の衛生管理に努めるとともに、各種器具、薬品、化粧品等の適正な取扱い、毛髪など廃棄物の適切な処理にも十分留意し、衛生管理の改善に取り組むことが必要であり、感染症、皮膚障害等の発生を防止するものとする。
      利用者の関心は、特に、器具の消毒、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、化粧品等の肌への健康被害並びに肝炎、エイズ及び新型インフルエンザの発生状況及び発生の可能性を踏まえた予防策等の衛生上の問題にある。また、最近、小学校低学年以下の児童を中心にアタマジラミ等の流行の兆しがあることに留意することが必要である。したがって、営業者は、皮ふに触れる物の消毒の徹底、化粧品等と顧客の体質等の関係についての従業員の教育、汚れの目立ちやすい清潔な外衣の着用、顧客一人ごとの作業前後のうがい、手指の洗浄や消毒、つめの手入れ、風邪等の流行時のマスクの着用等自ら衛生管理を徹底し、従業員の健康管理に十分留意し、従業員に対する衛生教育及び指導監督に当たることが必要である。
      特に、新しい施術の実施に際しては、従業員に、その施術のやり方及びリスクを認識させ、利用者に対してもより詳細な説明を行い、健康被害等の発生防止及び発生した場合の対応に配慮しなければならない。そして、これらの取組を利用者に分かりやすく伝えることが、利用者に納得と安心感を提供するために最も重要である。
    (2) 衛生面における施設及び設備の改善に関する事項
      営業者は、日常の衛生的管理の取組に加えて、店舗を衛生的に保つとともに、設備及び消毒器材について定期的かつ積極的にその改善に取り組むことが重要である。
      また、利用者にとって安全及び衛生は最大の関心事項であるため、衛生管理を徹底した店舗であるとの印象を利用者に与えることが必要である。
  経営課題への対処に関する事項
    個別の経営課題への対処については、営業者の自立的な取組が前提であるが、多様な消費者の要望に対応する良質なサービスを提供し、国民生活の向上に貢献する観点から、営業者においては、次に掲げる事項を念頭に置き、経営改革に積極的に取り組むことが期待される。特に、家族経営等の小規模店は、営業者や従業員が変わることはほとんどないため、経営手法が固定的になりやすい面があるが、経営意識の改革を図り、以下の事項を選択的に取り組んでいくことが期待される。
    (1) 経営方針の明確化及び独自性の発揮に関する事項
      現在置かれている経営環境や市場を十分に把握、分析し、専門性や技術力、立地条件等の特性を踏まえ、強みを見出し、経営方針を明確化し、自店の付加価値や独自性を高めていくとともに、経営管理の合理化及び効率化を図ることが必要である。
      自店の立地条件、顧客層、サービスメニュー、資本力、経営能力、技術力等の経営上の特質の把握
      周辺競合店に関する情報収集と比較
      ターゲットとする顧客層の特定
      重点サービスの明確化
      店のコンセプトの明確化
      経営手法、熟練技能、専門的知識の習得・伝承や後継者の育成
      若手人材の活用による経営手法の開拓
      共同仕入れ等の共同事業の推進
      都道府県指導センター等の経営指導機関による経営診断の積極的活用
    (2) サービスの見直し及び向上に関する事項
      消費者のニーズやライフスタイル、世帯構造の変化等に的確に対応し、消費者が安心して利用できるよう、サービスや店づくりの充実や情報提供の推進に努め、消費者の満足度を向上させることが重要であることから、以下の事項を選択的に取り組むことが期待される。
      サービスの充実
        [1]ヘアスタイル等の流行に合わせたメニューの見直し
        [2]若者等ファッションに関心の高い顧客向けの新しいヘアスタイルの提案、総合的な美のためのコーディネイト
        [3]傷んだ髪等のトリートメント、ヘアカラー、ヘアマニキュア
        [4]ネイルケアやネイルアート
        [5]新しい手法を採りこんだメイクコース
        [6]まつ毛エクステンション
        [7]フェイシャルエステ、エステティックサービス
        [8]結髪及び着付けの伝統的技術
        [9]ウエディングドレス着付け
        [10]若い男性を対象としたメニュー、中高年齢者を対象としたリラクゼーションに配慮したメニュー
        [11]毛髪や化粧等の知識の提供、顧客層に合った化粧品等の提供
        [12]在宅や施設の高齢者等への訪問美容
        [13]高齢者等の来店が困難な顧客の送迎
        [14]マニュアルを超えた「おもてなしの心(気配り・目配り・心配り)」による温もりのあるサービスの提供
      消費者のニーズやライフスタイルの変化等に対応した店づくり
        [1]地域の顧客や高齢者等を対象とした地域に根ざした店づくり、ファッションの最先端のサービスの拡充に取り組む店づくり、などの店のコンセプトを踏まえた店づくり
        [2]リラクゼーションを重視した店の雰囲気づくり
        [3]高齢者や障害者にやさしい店づくり
        [4]地域住民が集えるサロンの提供
        [5]立地条件及び経営方針に照らした営業日及び営業時間の見直し
    (3) 施設及び設備の改善に関する事項
      営業者は、施設及び設備の改善のため、以下の事項に取り組むことが期待される。
      定期的な内外装の改装
      各店舗の特性を踏まえた清潔な雰囲気の醸成
      サービスの内容やメニューに合った椅子等調度品、洗髪設備
      訪問美容のための車両、携帯器具
      高齢者、障害者等に配慮したバリアフリー対策の実施
      節電・省エネルギーの推進
      経営の合理化・効率化のための改善
    (4) 情報通信技術を利用した新規顧客の獲得及び顧客の確保に関する事項
      営業者は、情報セキュリティの管理に留意しつつ、インターネット等の情報通信技術を効果的に活用する等、以下の事項に選択的に取り組むことが期待される。
      インターネット等の活用による予約の受付、割引サービスの実施、異業種との提携
      ホームページの開設等、積極的な情報発信によるプロモーションの促進
      顧客情報のデータベース化等による適切な管理
      ダイレクトメールの郵送や広報チラシの配布
      クレジットカード決済、電子決済の導入・普及
    (5) 表示の適正化と苦情の適切な処理に関する事項
      営業者は、店外など利用者の見やすい場所にメニューとサービスごとの料金を明示すべきであり、顧客にとって初めてとなるメニューの施術に際しては、十分な事前の説明を行うべきである。
      このため、営業者は、全国指導センターが定めるサービスの内容並びに施設及び設備の表示の適正化に関する事項等を内容とする美容業の標準営業約款に従って営業を行う旨の登録をし、標識及び当該登録に係る約款の要旨を掲示するよう努めるものとする。
      さらに、営業者は、事故が生じた場合には、適切かつ誠実な苦情処理と賠償責任保険等を活用した損害の補填を行い、顧客との信頼関係の維持向上に努めるものとする。
    (6) 人材育成及び自己啓発の推進に関する事項
      美容業は、対人サービスであり、従業者の資質がサービスの質を左右することから、優秀な人材の獲得及び育成を図ることが極めて重要な課題である。特に、若手従業員の育成及び指導を図るとともに、若者に魅力ある職場作りに努めることが必要である。
      したがって、営業者は、従業員が新しいヘアスタイルやネイルケア、エステティック等の新しいメニューやサービス内容の拡充に対応できるよう、技術面を向上させるとともに、接客技術、顧客への知識提供等の面での技能向上にも努める必要がある。また、安全衛生履行の観点も含め、従業員に対する適正な労働条件の確保に努めるものとする。
      さらに、営業者は、後継者及び独立を希望する従業員が、経営、顧客管理、従業員管理等の技能を取得できるよう、自己啓発を促すとともに、後継者及び従業員の人材育成に努めるものとする。
営業者に対する支援に関する事項
  組合及び連合会による営業者の支援
    組合及び連合会においては、営業者の自立的な経営改革を支援する都道府県指導センター等の関係機関との連携を密にし、次に掲げる事項を中心に積極的な支援に努めることが期待される。
    (1) 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事項
      営業者に対して衛生管理を徹底するための研修会及び講習会の開催、衛生管理の手引の作成等による普及啓発、毛髪及び肌の健康管理等に関する新技術の開発、衛生管理体制の整備充実、化粧品の組合せによる事故防止並びに各種感染症対策等の情報提供に努めること。
    (2) 施設及び設備の改善に関する事項
      衛生水準の向上、経営マネジメントの合理化及び効率化、消費者の利益の増進等に資するための、施設及び設備の改善に関する指導、助言、情報提供等、必要な支援に努めること。また、高齢者等の利便性を考慮したバリアフリーの店舗構造や高齢者向けサロン経営のあり方等の研究を行うことにより、営業者の取組を支援することに努めること。
    (3) 消費者利益の増進に関する事項
      サービスの適正表示、営業者が自店の特質に応じ作成する接客手引の基本となるマニュアルの作成、利用者意識調査、利用者を対象とした美容啓発講座の実施及び利用者の美容施術に対する正しい知識の啓発のためのパンフレットの作成に努めること。
    (4) 経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事項
      先駆的な経営事例等経営管理の合理化及び効率化に必要な情報、地域的な経営環境条件に関する情報並びに美容業の将来の展望に関する情報の収集及び整理並びに営業者に対するこれらの情報提供に努めること。さらに、新規開業希望者の増加を踏まえ、関係機関との連携の下に、創業や事業承継における助言・相談の取組の推進が期待される。
    (5) 営業者及び従業員の技能の向上に関する事項
      新しいヘアスタイル、メイク、まつ毛エクステンション、ネイルケア、エステティック、訪問美容等多様化する需要に対応した講習会、技能コンテストの開催、連合会がすすめるハートフル美容師、着付社内検定等の独自の技能資格制度及びエステティック、ネイル、メイクの評価認定制度の推進等による、新しい顧客需要に対応した美容技術の向上及び普及啓発に努めること。
    (6) 事業の共同化及び協業化に関する事項
      事業の共同化及び協業化の企画立案並びに実施に係る指導に努めること。
    (7) 取引関係の改善に関する事項
      共同購入等取引面の共同化の推進、美容用品業界の協力を得ながらの取引条件の合理的改善及び組合員等の経済的地位の向上に努めること。
      また、関連業界と連携を深め、情報の収集及び交換会の機会の確保に努めること。
    (8) 従業員の福祉の充実に関する事項
      従業者の労働条件整備、作業環境の改善及び健康管理充実のための支援、医療保険(国民健康保険又は健康保険)、年金保険(国民年金又は厚生年金保険)及び労働保険(雇用保険及び労働者災害補償保険)の加入等に係る啓発、組合員等の大多数の利用に資する福利厚生の充実並びに共済制度(退職金、生命保険等)の整備及び強化に努めること。
      さらに、男女共同参画社会の推進及び少子・高齢化社会への適切な対応に配慮した従業者の福祉の充実に努めること。
    (9) 事業の承継及び後継者支援に関する事項
      事業の円滑な承継に関するケーススタディ及び成功事例等の経営知識の情報提供の促進を図るために必要な支援に努めること。
  行政施策及び政策金融による営業者の支援及び消費者の信頼の向上
    (1) 都道府県指導センター
      組合との連携を密にして、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。
      営業者に対する経営改善の具体的指導、助言等の支援
      消費者からの苦情及び要望の営業者への伝達
      消費者の信頼の向上に向けた積極的な取組
      都道府県(保健所)と連携した組合加入促進に向けた取組
    (2) 全国指導センター
      都道府県指導センターの取組を推進するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。
      営業者の経営改革の取り組みに役立つ情報の収集・整理・情報提供
      危機管理マニュアルの作成
      苦情処理マニュアルの作成
      標準営業約款の登録の促進
      効果測定の支援及び政策提言機能の強化
      公衆衛生情報の提供機能の強化
    (3) 国及び都道府県
      美容業に対する消費者の信頼の向上及び営業の健全な振興を図る観点から、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めること。
      美容師法等関係法令の施行業務等を通じた指導監督
      安全衛生、苦情対応に関する情報提供その他必要な支援
    (4) 日本政策金融公庫
      営業者の円滑な事業実施に資するため、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが期待される。
      営業者が利用しやすい融資の実施
      生活衛生関係営業に係る経済金融事情等の把握、分析及び情報提供
      災害時等における速やかな相談窓口の設置
第五 営業の振興に際し配慮すべき事項
  美容業においては、他の生活衛生関係営業と同様に、衛生水準の確保と経営の安定のみならず、営業者の社会的責任として環境の保全や省エネルギーの強化に努めるとともに、時代の要請である少子・高齢化社会等への対応、地域との共生、東日本大震災への対応といった課題に応えていくことが要請される。個々の営業者の取組が中心となる課題と、関係者が営業者を支援することで推進が図られる課題とがある。こうした課題に適切に対応することを通じて、地域社会に確固たる位置づけを確保することが期待される。
少子・高齢化社会等への対応
  営業者に期待される役割
    営業者は、高齢者や障害者、子育て・共働き世帯が住み慣れた地域社会で安心かつ充実した日常生活を営むことができるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めること。
    (1) バリアフリー対策の積極的な取組
    (2) 在宅や施設への訪問美容
    (3) 高齢者や障害者に配慮した美容施術の開発
    (4) 子供連れの顧客に対応した店内設備等の改善
    (5) 身体障害者補助犬を同伴する身体障害者等への適切な対応
    (6) 高齢者、障害者、妊産婦等にやさしい環境の整備
    (7) 従業員に対する教育及び研修の充実・強化
    (8) 従業者の育児支援
    (9) 地域社会とのつながりを強化する観点も含めた地域の高齢者・障害者等の積極的雇用の推進
    (10)受動喫煙の防止
  組合及び連合会に期待される役割
    高齢者、障害者等の利便性を考慮した店舗設計やサービス提供に係る研究の実施
  日本政策金融公庫に期待される役割
    融資の実施等による営業者の支援
環境の保全及び省エネルギーの強化
  営業者に期待される役割
    (1) 省エネルギー対応の空調設備、太陽光発電設備等の導入
    (2) 節電に資するLED照明、蓄電設備等の導入
    (3) 廃棄物の最小化、分別回収の実施
    (4) 薬品、化粧品等の各種容器や廃液、毛髪等の廃棄物の適切な処置
    (5) 温室効果ガス排出の抑制
  組合及び連合会に期待される役割
    (1) 廃棄物の最小化、分別回収の普及啓発
    (2) 業種を超えた組合間で相互に協力
  日本政策金融公庫に期待される役割
    融資の実施等による営業者の支援
地域との共生(地域コミュニティの再生及び強化(商店街の活性化))
  営業者に期待される役割
    営業者は、地域住民に対して美容業の店舗の存在、提供するサービスの内容及び営業の社会的役割・意義をアピールするとともに、地域で増加する生活弱者(高齢者、障害者、子育て・共働き世帯)の新たなニーズに対応し、地域のセーフティーネットとしての役割や地域コミュニティの基盤である商店街における重要な構成員としての位置づけが強化されるよう、以下に掲げる事項を中心に積極的に取り組むことで、地域コミュニティの再生・強化や商店街の活性化につなげること。
    (1) 地域の街づくりへの積極的な参加
      祭りや商店街による手作りイベント等共同事業の立案及び参加
      商店街の活性化を通じた地域生活者の「ふれあい」、「憩い」、「賑わい」の創出
    (2) 「賑わい」、「つながり」を通じた豊かな人間関係(ソーシャル・キャピタル)の形成
    (3) 福祉施設における訪問美容の実施
    (4) 共同ポイントサービス事業、スタンプ事業の実施
    (5) 地域の防犯、消防、防災、自殺防止、交通安全、環境保護活動の推進に対する協力
    (6) 災害対応能力及び危機管理能力の維持向上
  組合及び連合会に期待される役割
    (1) 地域の自治体等と連携し、社会活動の企画、指導・援助ができる指導者を育成
    (2) 業種を超えた相互協力の推進
    (3) 地域における特色ある取組の支援
    (4) 講習会の開催
    (5) 商店街役員への美容業の若手経営者の登用
東日本大震災への対応
  東日本大震災は未曾有の国難であり、被災地域における営業再開及び被災営業者の生活の再建と活力ある地域の再生のため、総力を挙げて、東日本大震災からの復旧、将来を見据えた復興への取組を進めていくこと。
  営業者に期待される役割
    (1) 被災営業者のみならず営業者全体による相互扶助と連携の下での役割発揮
    (2) 被災営業者の営業再開を通じた被災者へのサービスの充実や地域コミュニティの復元
    (3) 節電・省エネへの適切な対応
  組合及び連合会に期待される役割
    (1) 同業者による支え合い(太い「絆」で再強化)
    (2) 節電啓発や節電行動に対する支援
    (3) 節電に資する共同利用施設(共同蓄電設備等)の設置
  国及び都道府県
    東日本大震災を乗り越えて復興を実現し、被災地域のコミュニティの維持回復を図るため、被災営業者及び被災組合の意向等を踏まえつつ、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めること。
    (1) 被災営業者の営業再開のための施策
    (2) 東日本大震災を教訓とした緊急に実施する必要性が高く、即効性の高い防災、減災等の施策
  日本政策金融公庫に期待される役割
    被災営業者に対するきめ細やかな相談・支援を通じた低利融資等の実施

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