Ministry of Health, Labour and Welfare

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肝炎

B型肝炎について(一般的なQ&A)

【簡易版】

簡Q1 :B型肝炎とは?
 B型肝炎は肝臓の病気です。
 肝炎になると、肝臓の細胞が壊れて、肝臓の働きが悪くなります。
 肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、重症化するまでは自覚症状が現れない場合が多くあります。これは本来肝臓がもっている予備能の高さに由来しています。このことを正しく認識し、症状がなくてもきちんと検査をして病気を早く発見することが大切です。
 肝臓の働きには、
 ・栄養分(糖質、たん白質、脂肪、ビタミン)の生成、貯蔵、代謝
 ・血液中のホルモン、薬物、毒物などの代謝、解毒
 ・出血を止める因子の生成
 ・胆汁の産生と胆汁酸の合成
 ・身体の中に侵入したウイルスや細菌の感染を防御する
 などがあり、我々が生きていくためには肝臓が健康であることがとても大切です。


簡Q2 :B型肝炎の原因は?
 肝炎を起こす原因にはいろいろありますが、わが国ではそのほとんどが肝炎ウイルスの感染によるものであることが明らかにされています。このようにウイルスに感染して発症する肝炎をウイルス肝炎と呼んでいます。
 ウイルス肝炎のうち、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染によるものをB型肝炎と呼びます。


簡Q3 :B型肝炎ウイルス(HBV)はどのようにして感染しますか?
 B型肝炎ウイルス(HBV)はHBVに感染している人の血液を介して感染します。また、感染している人の血液中のHBV 量が多い場合はその人の体液などを介して感染することもあります。例えば、以下のようなことがあった場合には感染する危険性があります。
 ・他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合
 ・HBV陽性者が使った注射器・注射針を適切な消毒などをしないでくり返して使用した場合
 ・HBV陽性者からの輸血、臓器移植等を受けた場合

 また、以下の場合にも感染する可能性があります。

 ・頻繁に血液に触れる機会の多い保健医療従事者の場合(特に針刺し事故など)
 ・HBVに感染している人と性交渉があった場合
 ・HBV陽性者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを使用した場合
 ・HBVに感染している母親から生まれた子供の場合
(高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)とB型肝炎ワクチン(HBワクチン)を正しく用いて母子感染予防を行えば感染することはほとんどありません。詳しくは詳Q37をご覧下さい。)

 以下のような場合にはB型肝炎ウイルス(HBV)は感染しません。

 ・HBVに感染している人と握手した場合
 ・HBVに感染している人と抱き合った場合
 ・HBVに感染している人と軽くキスした場合
 ・HBVに感染している人の隣に座った場合
 ・HBVに感染している人と食器を共用した場合
 ・HBVに感染している人と一緒に入浴した場合
 等


簡Q4 :B型肝炎ウイルス(HBV)の感染の特徴(一過性感染と持続性感染)は?
 B型肝炎ウイルス(HBV)の感染には、感染してから数ヶ月の後に身体からウイルスが排除され、その後に免疫ができる「一過性感染」と、長期にわたってウイルスが肝臓に住みついてしまう「持続感染」(HBVキャリア状態)の2つの感染様式があります。
 献血時や検診などの検査で初めてHBs抗原が陽性と判定された人(B型肝炎ウイルスに感染していることが初めてわかった人)のほとんどは、HBVキャリアであることがわかっています。HBVキャリアは、HBe抗原陽性者とHBe抗体陽性者とに大別されます。詳しくは詳Q8をご覧下さい。


簡Q5:B型肝炎ウイルス(HBV)は輸血(血液分画製剤)で感染しますか?
 従来より、わが国では全国の日赤血液センターにおいてB型肝炎ウイルス(HBV)感染予防のためのスクリーニング検査(HBs抗原検査、HBc抗体検査)が徹底され、血液製材の安全性が確保されています。
 さらに、1999年10月からは、核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:NAT)が全面的に導入され、血液製材の安全性は一段と向上しています。
 これらの努力にもかかわらず、わが国では輸血によるHBVの感染は、残念ながらごく稀(年間6〜8例前後)ではあるもののまだ発生し続けている現状にあります。
 なお、血液分画製剤については、原料血漿のスクリーニング検査に加えて、原料血漿の6ヶ月間貯留保管による安全対策や、製造工程でウイルスの不活化、除去が行われていることからHBV感染の心配はないと言ってもさしつかえはないでしょう。
 どのような検査によっても、HBV感染のごく初期の人の血液中に存在するごく微量のHBVは検出できない場合があることをよく認識して、検査目的での献血は絶対に「しない」または「させない」ということを周知徹底することが大切です。
 詳しくは詳Q27、詳Q28、詳Q29をご覧下さい。


簡Q6 :B型肝炎になると、どのような症状がでますか?
 急性B型肝炎を発症した場合や、B型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染者(HBVキャリア)が肝炎を発症した場合、全身の倦怠(けんたい)感に引き続き食欲不振・悪心(おしん)・嘔吐(おうと)などの症状が現われ、これに引き続いて黄疸(おうだん)が出ることもあります。しかし、HBVキャリアではこれらの症状が出なくても慢性肝炎が潜んでいて治療が必要な場合がありますので、定期的に検査を受け、必要に応じて適切な治療を受けるなど健康管理を行うことが大切です。


簡Q7:B型肝炎の検査法は?
 B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しているかどうかは、採血して検査します。
 血液の中にHBs抗原が検出された(HBs抗原陽性の)人の中にはB型肝炎ウイルスに初めて感染した(HBVに急性感染した)人とHBVに持続感染している人(HBVキャリア)とがいます。両者を区別するための検査法については、詳しくは詳Q8をご覧下さい。


簡Q8 :B型肝炎の治療法は?
 急性B型肝炎の場合は、一般に急性期の対症療法によりほとんどの人では完全に治癒します。しかし、急性B型肝炎を発症した場合、稀に劇症化する場合もあることから注意が必要です。
 B型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染者(HBVキャリア)がB型肝炎を発症した場合には、ごく初期の軽い慢性肝炎か、ある程度以上進んだ慢性肝炎か、肝硬変あるいは肝がんにまで進展してしまった状態か、などの「病期」によって、また肝細胞の破壊の度合(肝炎の活動度)や、残されている肝臓の機能の程度(残存肝機能)などによって、B型肝炎の治療方針は全く異なります。詳しくは詳Q51をご覧下さい。また、主治医にご相談下さい。


簡Q9:抗ウイルス療法とは、どのようなものですか?
 原因であるB型肝炎ウイルス(HBV)を肝臓から追い出してしまうことを目ざす(完全治癒を目ざす)治療法です。抗ウイルス療法には、インターフェロン療法、インターフェロンと副腎皮質ステロイドホルモンの併用療法、ラミブジン内服などがあります。
 抗ウイルス療法は慢性肝炎の「病期」や「活動度」あるいは「残存肝機能」や全身状態などを的確に把握した上で、副作用などにも注意して経過をみながら、慎重に治療を行う必要があるため、治療法の選択、治療の実施にあたっては、専門医と相談して決めることが大切です。


簡Q10:肝庇護療法とは、どのようなものですか?
 肝炎の活動度を抑える、すなわち検査データでいえばALT(GPT)値を下げる治療法です。グリチルリチン製剤の静注、ウルソデスオキシコール酸の内服などが用いられています。
 これらの治療法は肝炎ウイルスに対する直接の効果はありませんが、ほとんどの人について肝炎を沈静化させ、肝臓の線維化の進行を抑える(慢性肝炎から肝硬変への進展を押え、遅らせる)効果があります。継続して行うことが大切です。主治医とよく相談して下さい。


簡Q11:B型肝炎ウイルス(HBV)感染の予防法は?
 B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することを避けるためには、感染している人の血液になるべく触れないことが大切です。具体的には、以下のようなことに気をつけてください。
 ・歯ブラシ、カミソリなど他人の血液が付いている可能性のあるものを共用しない。
 ・他の人の血液に触るときは、ゴム手袋を着ける。
 ・注射器や注射針を共用して、非合法の薬物(覚せい剤、麻薬等)の注射をしない
 ・入れ墨やピアスをするときは、清潔な器具であることを必ず確かめる。
 ・よく知らない相手との性行為にはコンドームを使用する。

 上記の行為の中には、そもそも違法なものも含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法な行為は行わないようにすることが基本です。
 なお、現在、献血された血液は高い精度でHBVのチェックが行われており、ウイルスが含まれる場合は使用されていません。
 しかし、HBVに感染している人が献血した場合、あるいは感染の危険行為をした後に検査を目的として献血した場合には、精度の高い検査を行っても輸血による感染を完全に防止することができない場合があることがわかっています。
 検査目的での献血は決して「しない」、または「させない」ことの徹底が大切です。ご協力をお願いします。
 なお、医療関係者等、他人の血液に触れる機会が多い人での感染予防には高力価HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)やB型肝炎ワクチン(HBワクチン)による予防が有効です。詳しくは、詳Q41、詳Q42をご覧下さい。



簡Q12 :B型肝炎になると肝硬変や肝がんになりますか?
 B型肝炎ウイルスの持続感染者(HBVキャリア)のうち、約10%から15%の人が慢性肝炎を発症し、治療が必要になるとされています。
 慢性肝炎を発症した場合、適切な健康管理や必要に応じた治療をせずに放置すると、自覚症状がないまま肝硬変へと進展し、肝がんになることもあります。しかし、適切な治療を行なうことで病気の進展を止めたり、遅らせることができますので、HBVに感染していることが分かった人は、必ず定期的に医療機関を受診して、その時、その時の肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を正しく知り、適切に対処するための診断を受けて下さい。(HBVキャリアの自然経過については詳Q48をご覧下さい。)


簡Q13:B型肝炎について国が講じている施策を教えて下さい。
 ウイルス性肝炎への対応は、国民の健康に関わる重要な課題であることから、厚生労働省(旧厚生省)では、平成12年11月に「肝炎対策に関する有識者会議」を設置し、これまで行政や学術団体関係機関によって実施されてきた肝炎対策を総点検しながら、今後の方向性や充実の方策について検討してきました。
 この有識者会議の報告書を踏まえ、厚生労働省では、平成14年度から「C型肝炎等緊急総合対策」を実施してきましたが、この緊急総合対策においてはC型肝炎と共にB型肝炎についても、
 (1)広報の実施や継続的な情報提供などの普及啓発
 (2)現行の健康診査体制を活用したウイルス検査の実施
 (3)「肝炎等克服緊急対策研究事業」の創設など、治療方法等の研究開発の推進
 (4)標準的治療法の開発及び普及など治療体制の整備
 等の施策に取り組んでいます。
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