Ministry of Health, Labour and Welfare

English
SARS

重症急性呼吸器症候群(SARS)関連情報

事務連絡
平成15年6月6日



都道府県
政令市
特別区



衛生主管部(局)担当課 御中
厚生労働省健康局結核感染症課



「SARSコロナウイルスの行政検査要領(SARS対策第13報関係)」
の一部改正について



 「SARSコロナウイルスの行政検査要領」については、平成15年5月16日付け事務連絡において既に通知済みであるが、今般、当該検査要領の(参考1)SARSコロナウイルスに関する検査対応について中「2.病原体検査のための検体採取方針」を別添のとおり改正したので通知します。
 なお、今回の改正は、SARSに関する新たな科学的知見に応じた改訂であり、本事務連絡のほか、国立感染症研究所感染症情報センターホームページにおいても情報を提供中であることを申し添える。



(主な改正の理由)
 現在、送付されている検体については、発熱1日目に採取した検体について検査依頼があるが、当該ウイルス感染症の場合、他のウイルス感染症と少し様相を異にし、病初期のウイルス検出は感度が低い。また、発症10日頃がもっともウイルスの検出率が高く、この時期に採取した検体を検査した方が検出率が高いことから、検査要領の一部を改正するものである。



別添

2. 病原体検査のための検体採取方針

 現行のSARSコロナウイルス特異的病原体検査はこれまでの研究成果から得られた方法を用いて、現在日本で実施可能である検体検査です。研究途上の検査方法ですので、今後の研究の進展により、方法あるいは検体採取方法が変更になる場合がありますので、ご留意下さい。
 そのため、現在のところ医療上の診断目的としては認可されておらず、また感度が十分とは言えない場合があります。
 陰性であっても疾患としてのSARSを否定するものではありませんのでご注意下さいますようお願い申し上げます。
 また、多くの検体依頼が寄せられているため検査結果を迅速に還元できない場合があります。
 以上のことをご考慮の上、SARS検査(行政上及び研究目的)への協力を被験者、被験者が小児の場合はその保護者に十分説明の上、インフォームド・コンセントを頂いた上でお送り下さいますようお願い申し上げます。
 頂いた検体についてはSARSコロナウイルス感染の検査及び研究目的以外には使用しないことをあらかじめお断りいたします。

1) SARSの診断検査のための検体採取について(Peiris JSM et al.:Clinical progression and viral load in a community outbreak of coronavirus-associated SARS pneumonia: a prospective study. Lancet 361, 1767-1772, 2003 1)、WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)多国同時集団発生の報告(6月2日、更新第71報) 診断検査の現状と中国での研修コースhttp://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update71.html)を参照のこと。

検体の採取時期:
 ウイルス量は発症10日頃をピークとしているため、発症10日後の便、気道からの検体(鼻咽頭ぬぐい液、喀痰等)は必ず採取することが診断上望ましい。
 また、抗体価測定のための血清は(1)発症10日以内(通常初診時)と(2)発症20日以降(陽性率約65%1))のペアが望ましい。
 ただし、発症20-29日の検体で抗体陰性であった場合は、発症30日以降(陽性率約95%1))の検体を必ず採取することが診断上望ましい。

検体採取スケジュール


(ア) 気道からの検体(鼻咽頭拭い液、喀痰等)は、特に発症10日頃の検体が有用である(Peiris et al. Lancet 361, 1767-1772, 2003)。

(イ) 尿はRT-PCR法を用いても発症早期の場合ウイルスが検出されないため、少なくとも発症4日以降の検体を用いる。発症10日頃が最も検出率が高いがその場合の検出率も50%との報告あり(Peiris et al. Lancet 361, 1767-1772, 2003)。

(ウ) 便については、RT-PCR法を用いると発症早期より検出が可能であり、発症10日頃をピーク(ほぼ100%検出可能)として、発症1カ月頃まで検出が可能である。尚、発症1カ月後の便の感染性については不明である。

(エ) 血清はできれば1週間毎に1-2mlを冷凍保存し、可能な限り多くの病日で経時的に抗体価を測定する。上記に記載した通り抗体価測定のための血清は(1)発症10日以内(通常初診時)と(2)発症20日以降(陽性率約65%1))のペアで必ず採取することが望ましい。ただし、発症20-29日の検体で抗体陰性であった場合は、発症30日以降(陽性率約95%1))の検体を必ず採取することが望ましい。
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