Ministry of Health, Labour and Welfare

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新型インフルエンザ

新型インフルエンザ対策関連情報(英語版はこちら

参考資料



新型インフルエンザ対策の推進体制

新型インフルエンザ対策の推進体制



WHOにおけるインフルエンザパンデミックフェーズ


WHOの2005年版分類による
パンデミックフェーズ
パンデミック対策の
各フェーズにおける目標
状況別の
追加小項目
フェーズ1 (前パンデミック期)
 ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトへ感染する可能性を持つ型のウイルスを動物に検出
世界、国家、都道府県、市区町村のそれぞれのレベルで、パンデミック対策を強化する  

フェーズ2 (前パンデミック期)
 ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、動物からヒトへ感染するリスクが高いウイルスが検出
ヒトの感染拡大のリスクを減少させ、仮にヒト感染が起きたとしたら、迅速な検知、報告が行われる体制を整備する 感染が見られている地域であるか、そのような地域との人的交流、貿易があるか否か、まったく影響が無いかに基づき、対策の細部を適宜改良する

フェーズ3 (パンデミックアラート期)
 ヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、ヒトからヒトへの感染は基本的に無い
新型ウイルスを迅速に検査診断し、報告し、次の患者発生に備える

フェーズ4 (パンデミックアラート期)
 ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている
隔離をはじめとした物理的な封じ込め対策を積極的に導入し、ワクチンの開発と接種などの、事前に計画し、準備した感染症対策の実施に必要な時間的猶予を確保するために、最大限努める

フェーズ5 (パンデミックアラート期)
 ヒトからヒトへの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認され、パンデミック発生のリスクが大きな、より大きな集団発生がみられる

フェーズ6  (パンデミック期)
 パンデミックが発生し、一般社会で急速に感染が拡大している
パンデミックの影響を最小限にとどめるためのあらゆる対策をとる 上記以外に、パンデミックの小康状態と第2波への対策

後パンデミック期
 パンデミックが発生する前の状態へ、急速に回復している
パンデミックによる多方面への影響を評価し、計画的復興と対策の改善を実施する  




鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係



【用語解説】


インフルエンザ
 インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A型、B型、C型に大きく分類される。A型はさらに、ウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型に分類される。(いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことをいう。)

高病原性鳥インフルエンザ
 鳥類のインフルエンザは「鳥インフルエンザ」と呼ばれる、ヒトのインフルエンザウイルスとは別のA型インフルエンザウイルスの感染症のこと。
 このうち感染した鳥が死亡したり、全身症状を発症したりと、特に強い病原性を示すものを「高病原性鳥インフルエンザ」という。一方、時に毛並みが乱れたり、産卵数が減ったりするような軽い症状にとどまる感染を引き起こすものは、「低病原性鳥インフルエンザ」という。
 ヒトが鳥インフルエンザウイルスの感染を受けるのは、一般的に、病鳥と近距離で接触した場合、又はそれらの内臓や排泄物に接触するなどした場合が多いと考えられており、鶏肉や鶏卵からの感染の報告はない。

パンデミック
 新型インフルエンザウイルスがヒトの集団に広範かつ急速に広がり、世界的大流行を呈する状況。

家きん
 鶏、あひる、七面鳥及びうずらのこと。

サーベイランス
 見張り、監視制度という意味。
 特に感染症に関しては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づき、定時的な感染症の発生状況(患者及び病原体)やその状況からの動向予測(感染症サーベイランス)が行われている。

病原体サーベイランス
 感染症サーベイランスの内、特に、感染の原因となった病原体についての発生数や詳細な種類などについて報告してもらい、状況を監視するシステム。

クラスターサーベイランス
 感染のみられた集団(クラスター)を早期に発見するため、一定の大きさの集団を対象に、その集団内における患者の発生動向の報告を行ってもらい、状況を監視するシステム。

症候群サーベイランス
 あらかじめ指定する医療機関において、一定の症候を有する患者が診察された場合に、即時的に報告を行ってもらい、疾患発生の現状を把握するシステム。

トリアージ
 災害発生時などに多数の傷病者が発生した場合に、適切な搬送、治療等を行うために、傷病の緊急度や程度に応じて優先順位をつけること。

レスピレーター
 人工呼吸器のこと。人工呼吸器とは、救急時・麻酔使用時等に、患者の肺に空気又は酸素を送って呼吸を助けるための装置。

PPE (personal protective equipment)
 個人保護具のことであり、防護服や、ゴーグル、マスクなどのように、病原体、化学物質、その他の危険有害要因との接触による、重大な傷害、疾病から身を守るために作られた用具及び衣類のこと。

感染症指定医療機関
 特定感染症指定医療機関、第1種感染症指定医療機関及び第2種感染症指定医療機関のことであり、新感染症、一類感染症、二類感染症の患者の入院を担当する。
  *特定感染症指定医療機関:新感染症の所見がある者又は一類感染症若しくは二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として厚生労働大臣が指定した病院。
  *第1種感染症指定医療機関:一類感染症又は二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院。
  *第2種感染症指定医療機関:二類感染症の患者の入院を担当させる医療機関として都道府県知事が指定した病院。

感染症の定義及び類型
 [一類感染症]:感染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点から極めて危険性が高い感染症。(例:エボラ出血熱、ペスト等)
 [二類感染症]:感染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点から危険性が高い感染症。(例:急性灰白髄炎、ジフテリア等)
 [三類感染症]:感染力及び罹患した場合の重篤性等に基づいて総合的な観点からみた危険性は高くはないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうる感染症。(例:腸管出血性大腸菌感染症(O157))
 [四類感染症]:人から人への感染はほとんどないが、動物や物件から感染する可能性があり、消毒等の措置が必要となる感染症。(例:A型肝炎、狂犬病等)
 [五類感染症]:国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症。(例:麻しん、梅毒等)
 [指定感染症]:既知の感染症の中で一類から三類に分類されない感染症において一類から三類に準じた対応の必要が生じた感染症。

感染症病床、結核病床
 病床は、医療法によって、一般病床、療養病床、精神病床、感染症病床、結核病床に区別されている。感染症病床とは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する一類感染症、二類感染症及び新感染症の患者を入院させるための病床であり、結核病床とは、結核の患者を入院させるための病床である。

陰圧病床とは
 院内感染を防ぐために、病室の内部の気圧をその外部の気圧より低くすることによって、外部に感染症の病原体を拡散させないようにしている病床。

指定届出機関とは
 五類感染症の患者を診断し、又は死亡した者の死体を検案したときに、患者又は死亡した者の年齢、性別等を届け出る病院又は診療所。

PCR(polymerase chain reaction)検査
 微量のDNAを、その複製に関与する酵素であるポリメラーゼを用いて、大量に増やす方法。合成酵素連鎖反応法。

ノイラミニダーゼ阻害剤
 インフルエンザウイルスの表面には、2つのスパイク(突起物)があり、感受性細胞と結合する働きのある赤血球凝集素(ヘマグルチニン:hemagglutinin:HA)と細胞表面などから遊離する働きがあるノイラミニダーゼ:Neuraminidaseがあります。現在、9種類のノイラミニダーゼが報告されており、ヒトではN1、N2の2種類だけがわかっていますが、トリは9種類すべてが確認されています。
 このノイラミニダーゼの働きを阻害する役割のある薬がノイラミニダーゼ阻害剤といわれ、抗インフルエンザ薬として使われています。

モックアップ(プロトタイプ)ワクチン
 対象とするウイルス株が特定されていない場合に、モデルウイルスを用いて作成されたワクチン。主として、治験等の薬事承認を得るための申請データの作成に用いる。

パンデミックワクチン
 流行しているウイルス株を用いて、作成されたワクチン。

行刑施設:
 刑務所,少年刑務所及び拘置所の総称。
 このうち,刑務所及び少年刑務所は,主として受刑者を収容し処遇を行う施設であり,拘置所は,主として刑事裁判が確定していない未決拘禁者を収容する施設のこと。(これらの行刑施設は,法務省が所管し,内部部局である矯正局及び全国8箇所に設置されている地方支分部局である矯正管区が指導監督に当たっている。)

リスクコミュニケーション
 関係者相互間において、情報及び意見の交換を行うこと。リスク分析の三要素の一つ。
  *リスク分析:健康への悪影響を防止・抑制する科学的手法であり、「リスク評価(健康影響評価)」、「リスク管理(行政的対応)」、「リスクコミュニケーション(社会的合意形成)」から構成される。



「新型インフルエンザ対策行動計画」の概要について

平成17年11月
厚生労働省

 「新型インフルエンザ対策行動計画」は、政府の新型インフルエンザ対策について、関係省庁が連携し、情報の共有を図りながら、厚生労働省が中心となって取りまとめたものである。

<背景>
 新型インフルエンザは、10年から40年の周期で出現し、世界的に大きな流行(パンデミック)を引き起こしてきている。
 近年では、東南アジア等において、高病原性鳥インフルエンザがヒトに感染し、死亡例が報告されている。また昨今では、ヨーロッパで高病原性鳥インフルエンザの発生が報告されるなど、その拡大が見られる状況であり、突然変異による、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザの発生の危険性が高まっている。
 このため、WHO世界インフルエンザ事前対策計画(2005年5月)に準じて、我が国の「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定し、迅速かつ確実な対策を講ずるものとする。

<概要>
 流行規模の推計
 米国疾病管理センターの推計モデル(FluAid 2.0)に、わが国の状況を当てはめて推計した。その結果、我が国の場合は、全人口の25%が新型インフルエンザに罹患すると想定した場合に医療機関を受診する患者数は、約1,300万人〜約2,500万人(中間値約1,700万人)と推計される。

 新型インフルエンザ対策の推進体制
 政府一体となった取組を推進するために「鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」を設置するとともに、厚生労働省では、大臣を本部長とする対策推進本部を設置したところであり、こうした推進体制の下で、地方自治体、関係機関(医療機関等)、国民の協力の下に総合的な対策を推進する。

 行動計画
 WHO世界インフルエンザ事前対策計画において定められている6フェーズ(段階)を、さらに、「国内非発生」と「国内発生」に分類し、それぞれについて「計画と連携」、「サーベイランス」、「予防と封じ込め」、「医療」、「情報提供・共有」の5分野にわたって講ずべき具体的な対策を策定した。

  *フェーズ1、フェーズ2(トリートリ)
トリインフルエンザウイルスのヒトへの感染が見られない。
  *フェーズ3(トリーヒト)
トリインフルエンザウイルスのヒトへの感染が見られるが、ヒトーヒト感染による拡大は見られない、あるいは、非常にまれな感染が見られる(家族内など密接な接触者)。
  *フェーズ4、フェーズ5(ヒトーヒト)
ヒトーヒト感染が見られるが、限定された集団(クラスター)内の発生にとどまっている。
  *フェーズ6(パンデミック)
一般のヒト社会の中で感染が増加し、持続している。

 行動計画の主な内容
 フェーズ3A(国内非発生)
  ・ 政府の新型インフルエンザ対策行動計画を策定する。
  ・ 海外渡航者に対する注意喚起を行う。
  ・ 国内飼育家きんの高病原性鳥インフルエンザの発生防止対策の徹底、農場の従事者等に対する感染防御への支援、要請を行う。
  ・ 緊急的なワクチン接種を想定し、プロトタイプワクチン原液の製造、貯留を行うとともに、フェーズ4を想定し、パンデミックワクチン製造用の鶏卵の確保等生産に係る対応計画の検討を行う。
  ・ リン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)の確保すべき量を決定し、備蓄を開始する。
  ・ 新型インフルエンザ患者の診療・治療にあたる指定医療機関等の整備、必要な医療器材等の確保を進めるよう要請する。
  ・ 高病原性鳥インフルエンザについて、発生国の在留邦人、国民向けに情報提供する。

 フェーズ4A(国内非発生)
  ・ ウイルスが確定次第速やかに、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)に基づく指定感染症への政令指定を行う。
  ・ 感染がみられた集団(クラスター)を早期発見するために、学校や職場などを対象としたクラスターサーベイランスを開始する。
  ・ 検疫所は、発生地域からの入国者に対し、新型インフルエンザ患者の疑いがある場合には、検疫法に基づく停留を行うなど検疫を強化する。
  ・ 新型インフルエンザウイルス株の特定後、鶏卵等の確保ができ次第、パンデミックワクチンの生産を開始する。通常期インフルエンザワクチン生産時期の場合には、製造ラインを直ちに中断して新型に切り替えることを含め、適切に対応する。
  ・ 各医療機関に対して、通常のインフルエンザ患者には、原則として抗インフルエンザウイルス薬の使用を控えるよう指導する。
  ・ メディア等に対し、適宜、広報担当官(スポークスパーソン)から海外の発生・対応状況について情報提供する。

 フェーズ4B(国内発生)
  ・ 対策推進本部長(厚生労働大臣)が国内でのヒトーヒト感染発生について宣言し、国としての対策強化を表明する。
  ・ 新型インフルエンザの疑いがある患者には、感染症法に基づき、入院勧告を行い、確定診断を行う。
  ・ 新型インフルエンザの疑いがある患者の家族等の接触者に対しては、経過観察期間を定め、外出自粛要請、健康管理の実施及び有症時の対応を指導する。
  ・ 発生地域における不要不急の大規模集会や、不特定多数の者が集まる活動について、自粛を勧告する。
  ・ 医療機関等で患者を診療した従事者、患者との濃厚接触があり、社会機能維持に必要な者への抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を指示する。
  ・ 各医療機関に対して、新型インフルエンザ患者及び疑い患者以外において、原則、抗インフルエンザウイルス薬を使用しないよう指導する。
  ・ プロトタイプワクチンについて、緊急的に、医療従事者及び社会機能維持者等を対象にワクチン接種場所に配分し、状況に応じ、接種を行う。
  ・ パンデミックワクチンが製造され次第、希望者への接種を開始する。

 フェーズ6B(国内発生)
  ・ 厚生労働大臣が非常事態宣言(国内対策強化宣言)を行う。
  ・ 新型インフルエンザ患者の入院措置を緩和し、全医療機関において診断・治療を行うとともに、入院治療は重症患者に行うこととする。
  ・ 新型インフルエンザ患者の疑いがあると診断された者に対して、発症48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬により治療を行う。
  ・ 抗インフルエンザウイルス薬による治療の優先順位を、次のとおりとする。
 (1)新型インフルエンザ入院患者の治療
 (2)罹患している医療従事者及び社会機能維持者の治療
 (3)罹患している医学的にハイリスク群(心疾患を有する者など)の治療
 (4)児童、高齢者
 (5)一般の外来患者
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