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2018年3月16日 第77回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局
○日時
平成30年3月16日 10時00分~12時00分
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
○出席者
菊池部会長、佐々木部会長代理、浅野委員、翁委員、駒村委員、田中委員 |
○議題
(1)公的年金財政状況報告-平成28年度-について
(2)その他
○議事
○真鍋首席年金数理官 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第77回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
初めに、お手元の資料の確認ですが、議事次第、座席図のほか、資料1「公的年金財政状況報告-平成28年度-(案)」は5つの資料に分かれておりまして、
資料1-1が「表紙、はじめに、委員名簿、目次」、
資料1-2が「第1章」、
資料1-3が「第2章」、
資料1-4が「第3章」、
資料1-5が「付属資料」、
資料2は、同報告書の要旨(案)でございます。
配付資料は以上です。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、猪熊委員、関委員、野上委員が御都合により御欠席との連絡を受けております。浅野委員は少し遅れての御参加という連絡を受けております。御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
それでは、以後の進行につきましては菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 委員の皆様におかれましては、御多忙の折お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
本日は、公的年金財政状況報告-平成28年度-について審議を行いたいと存じます。
平成28年度の報告書の作成に当たっては、ここまで委員の皆様に大変御尽力、御協力いただきまして、検討作業班と技術作業班の合同作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成していただきました。
それでは、事務局から、本年度の報告案について、そのポイントとなる点の御説明をお願い申し上げます。
○真鍋首席年金数理官 それでは、まず、資料1-1でございます。資料1-1につきましては、「はじめに」として部会長の御挨拶があり、その後、委員名簿、目次という構成になっています。
次に、資料1-2は第1章です。第1章につきましては、当報告書全体を通じて必要となる公的年金制度を理解する上で基本となる事項について概説している章でございます。
まず、9ページをお開きいただきまして、図表1-2-1として年金制度の体系図が出ております。日本の年金制度は、現在、公的年金としては2階建ての制度になっておりまして、1階部分が全国民共通の基礎年金、そのうち自営業者が国民年金第1号被保険者、被用者が国民年金第2号被保険者、国民年金第2号被保険者の被扶養配偶者が国民年金第3号被保険者となります。
2階部分につきましては、全被用者共通の厚生年金保険となっておりまして、民間被用者は第1号厚生年金被保険者、国家公務員は第2号厚生年金被保険者、地方公務員は第3号厚生年金被保険者、私立学校教職員は第4号厚生年金被保険者と位置付けられています。これ以外に、任意加入であります国民年金基金、個人型確定拠出年金、通称iDeCoですとか任意設立の各種企業年金がある体系になっています。
8ページに戻っていただきまして、これらのことを記述した上で、1-2-4に、平成28年10月から一定の要件を満たす短時間労働者の厚生年金への適用拡大が実施されたという平成28年度のトピックスの記述があります。一定の要件とは、従業員501人以上の適用事業所で働いていること、週の所定労働時間が20時間以上であること、月の所定内賃金が8万8,000円以上であること、雇用期間の見込みが1年以上であること、学生でないこと、これらを全て満たすことです。
10ページ以降は財政の仕組みということで、各勘定あるいは各制度の財政の仕組みを解説した部分でございます。まず、11ページの図表1-2-2をご覧いただきますと、これは基礎年金の収支の構造です。基礎年金は、右上のブルーで示されている基礎年金制度が始まりました昭和61年度から新法基礎年金として受給者に給付されるものに加え、名称は旧法ですが、基礎年金に相当する給付として各制度あるいは各勘定から支払われるものに対しても、基礎年金交付金という形で基礎年金勘定から支出がされます。それらに対しては、各制度あるいは各勘定が、基本的には頭割りで基礎年金拠出金として負担している構造です。
12ページからは、厚生年金財政の仕組みでございます。
13ページの図表1-2-3は、厚生年金の収支の構造を示したものです。ここでの厚生年金とは、全被用者共通の厚生年金という意味です。平成27年10月から被用者年金は一元化されましたけれども、効率的な事務処理を行うという観点から、従来分かれておりました共済組合等を実施機関として活用することとされましたので、第1号厚生年金被保険者である民間被用者は厚生年金勘定に保険料を払いますけれども、従来同様、国家公務員は国共済に、地方公務員は地共済に、私立学校教職員は私学共済に保険料を払います。そこから厚生年金拠出金という形で、厚生年金勘定に支出されます。
一方、厚生年金給付は、基本的に加入期間に応じて各実施機関から行われますので、厚生年金第1号被保険者分は厚生年金勘定から直接受給者に支払われ、また国共済、地共済、私学共済の期間分あるいは旧法共済分につきましては、それぞれの勘定から支払われますが、そこに対しては厚生年金交付金という形で厚生年金勘定から支出され、財政的には一元化されていることを示した図表です。
このように被用者年金につきましては、厚生年金拠出金及び同交付金を通じて、財政的に一元化されているわけですけれども、14ページに行っていただきまして、厚生年金拠出金につきましては、標準報酬案分と積立金案分半々で算定されるのが原則でございます。ただし、現在は激変緩和措置が実施されている間で、図表1-2-5のように、半分が原則で、半分が支出費案分で算定されています。
15ページは、保険料率統一のスケジュールを図表で示しています。
続きまして、16ページからは、厚生年金勘定に焦点をあてたもので、17ページの図表1-2-7をみていただきますと、厚生年金勘定としては、収入として、民間被用者からの保険料負担、共済組合等の厚生年金保険経理からの厚生年金拠出金、それから国庫負担がございます。支出としては、厚生年金第1号被保険者分の2階部分相当給付が受給者に支払われ、各共済組合等から受給者に支払われる厚生年金相当給付に対しては共済組合等の厚生年金保険経理に厚生年金交付金が支出されることになります。また、先ほどの図表1-2-3では捨象しておりましたけれども、基礎年金拠出金、同交付金を通じて、基礎年金勘定ともつながっていることを示した図表です。
18ページ、19ページが、厚生年金の実施機関たる共済組合等の厚生年金保険経理の収支の構造です。共済組合等では、従来の旧3階部分までを含んだ長期経理が、平成27年10月から2階相当部分までが厚生年金保険経理として経理が分かれたわけですけれども、この共済組合等の厚生年金保険経理に焦点をあてたものです。収入としては加入者の保険料負担と国庫・公経済負担になります。支出につきましては、2階相当部分までの厚生年金等給付等があります。先ほど御説明申し上げましたように、厚生年金勘定とは、厚生年金拠出金、同交付金を通じて財政的に一元化されています。それ以外に、基礎年金勘定とは基礎年金拠出金、同交付金を通じてつながっていることが図示されております。
20ページが国民年金勘定の収支の構造です。国民年金勘定は国民年金第1号被保険者に係る経理でございまして、国民年金第1号被保険者からの保険料負担、国庫負担が収入となります。支出としましては、基礎年金勘定への基礎年金拠出金、それから旧法の給付及び独自給付があります。ただ、ここでみていただきますと分かりますように、規模感といたしましては、支出のほとんどは基礎年金拠出金であり、独自給付あるいは基礎年金相当給付費は非常に小さいものです。
22ページからは年金改定の仕組みを詳細に記述しており、基本的には23ページ、図表1-2-10をご覧いただければと思います。四角の枠中に記述されておりますように、改定ルールは、基本的には新規裁定者は賃金変動、既裁定者は物価変動をベースに改定されますが、賃金変動を物価変動が上回った場合は、既裁定者も賃金変動をベースに改定されます。プラス・マイナスいろいろな場合がありますので、6つに場合分けしております。平成28年の改正で、平成33年度以降、赤く塗られているマル4とマル5について変更が行われたところです。このルールの下、平成28年度の改定率につきましては、この図表では右下のマル5に該当します。すなわち、平成28年度の指標は、物価は0.8%のプラス、賃金が0.2%のマイナスでしたので、スライドは行われませんでした。
24ページ、25ページは、マクロ経済スライドの仕組みについての記述です。1-2-42は、マクロ経済スライドのスライド調整率の計算式です。マクロ経済スライドは被保険者数の減少と平均余命の延びで決まりますので、人口要素によってこのスライド調整率が決まります。ただし、25ページに行っていただきまして、図表1-2-12にありますように、給付水準調整の名目下限措置があり、すなわち年金の名目額は引き下げないこととされていますので、このマクロ経済スライドが発動するかどうかは経済要素によって決まります。ここの部分は第3章で関係してきますので、改めてコメントさせていただきます。
1-2-45も平成28年の改正の説明であり、年金の名目額は引き下げないこととされていますが、早期に給付額を調整することが必要ということで、未調整分をキャリーオーバーする仕組みが導入されたことの記述があります。
26、27ページは、今となっては過去の話ですが、物価スライド特例についての記述でして、ここを認識しておかないと、なぜマクロ経済スライドがなかなか発動しなかったかということが分からなくなってしまうので、記述が残されています。
28ページからは第3節で、一元化の経緯等について記述されています。ちょっととんで32ページに行っていただきますと、平成27年10月の被用者年金一元化における積立金の取扱い等というところでございます。図表1-3-1は、平成27年10月1日に実施されました積立金の概算仕分けについての図表です。この平成27年10月1日の段階では概算として仕分けられ、33ページの図表1-3-2に行っていただきますと、平成28年12月1日に仕分けられた積立金についての精算が行われました。具体的には、この図表をご覧いただきますと、国共済については概算額より確定額が少なかったので精算額が597億円で、これについては厚生年金保険経理から旧3階部分を経理する経過的長期経理に移管されました。私学共済も精算の方向は同様です。一方で、地共済につきましては、確定額が概算額を上回りましたので、経過的長期経理から厚生年金保険経理に精算額2,601億が移管されています。
その他、ポートフォリオ等と資産の配分についてヒアリング等で伺いました詳細な内容についての記述がされております。
資料1-3は第2章です。第2章は実績等について詳細に分析した章になります。
お開きいただきまして、第1節は、被保険者の現状及び推移です。
39ページの図表2-1-1の被保険者数の推移をご覧いただければと思います。第1章で御説明申し上げましたように、平成28年10月から短時間労働者に適用拡大が行われました。この表頭をご覧いただきますと、厚生年金の計と第1号被保険者、第4号被保険者については、短時間労働者と、短時間労働者を除くという形で分けて表象しております。では、第2号被保険者と第3号被保険者には短時間労働者が何故いないのかという御疑問が出るかもしれませんが、それにつきましては、2-1-2の最後の5行で、国共済と地共済については、共済組合の組合員は常時勤務に服することを要する公務員とされているため、第2号被保険者及び第3号被保険者には短時間労働者はおらず、国及び地方公共団体等において短時間労働者に該当する職員が雇用されている場合は、第1号厚生年金被保険者として適用されているということが記述されています。
図表2-1-1に戻っていただきますと、厚生年金全体の被保険者数が4,266万人、右の方の列をご覧いただきますと、国民年金の第1号被保険者数が1,575万人、第3号被保険者数が889万人で、公的年金制度全体の被保険者数は6,731万人になっています。
下の方に対前年度増減率がありまして、厚生年金については3.3%の増となっています。短時間労働者を除きますと2.6%の増でして、短時間労働者の適用拡大による増分が0.7%でした。厚生年金は実施機関別にみましても、全実施機関で増えている状況です。
一方で、国民年金については、第1号被保険者も第3号被保険者も減っていまして、これらは長期的に減少傾向にあります。それは生産年齢人口が減少する中で、被用者化が進んでいる影響と、平成28年10月からの短時間労働者の適用拡大も大きくはありませんが、影響があったということです。
ここで、公的年金制度全体の伸び率をご覧いただきますと、公的年金制度全体の被保険者数は、現時点で見ますと平成11年度末が一番多く、その後増減した後、平成18年度以降は一貫して減少しておりましたが、平成28年度末は0.3%の増になっております。
40ページに行っていただきまして、申し訳ございませんが、40ページは差し込んだ方をご覧いただければと思います。図表2-1-2は男女構成を見たものです。厚生年金計では女性の割合は約37%、第1号被保険者では37%、第2号被保険者では約25%、第3号被保険者では4割弱、第4号被保険者では57%で、第4号被保険者における女性の割合が一番大きいのは従来からでございます。ここで短時間労働者分をみますと、第1号被保険者では70.4%、第4号被保険者では81.8%で、短時間労働者は女性の割合が非常に大きいことがみてとれます。
被保険者の年齢分布につきましては、42ページにあり、ほとんどの制度では40~44歳が最も多くなっています。これは、団塊ジュニア世代がこの年齢階級に存在しているためです。その他、特徴的なところでは、真ん中の段の一番左の列ですけれども、地方公務員につきましては、55~59歳が一番多く、若くなるほど被保険者数が減るという年齢分布です。それから、その右の私立学校教職員については、一番多いのは25~29歳で、特に若い女性が多く、加入者に幼稚園の先生等も多いので、このような年齢分布になっています。
その右側が短時間労働者の年齢分布を示したものです。青が男性で、赤が女性です。男性は60歳代に集中していることがみていただけると思います。女性については、40歳代から64歳ぐらいまでが多くなっています。
下の段の国民年金の第1号被保険者については、20~24歳が一番多くなっています。
43ページから、図表では44ページからが、被保険者の年齢分布の変化です。10年前、5年前と直近の平成28年度末の比較になります。図表2-1-5の上のグラフが厚生年金計の年齢分布の変化です。青が男性、赤が女性で、薄いのが10年前、中間の濃さが5年前、一番濃いのが直近です。
男性で最も被保険者数が多いのは、団塊ジュニア世代のいる、10年前は30~34歳、5年前は35~39歳、現在は40~44歳のところで、ピークがシフトしているのが分かります。また、薄い青をご覧いただきますと、10年前は55~59歳のところにも第二の山がありまして、ここは団塊世代がいたわけですが、現役引退に伴って現在は第二の山はなくなっています。それから、65歳以上を見ていただき、5年前と現在を比べますと、人数が増加しています。現在ちょうど団塊世代がここにいますので、もともとの人口も多いのですが、人口比でみましても増えており、65歳以上の雇用が進んでいることがみてとれます。
女性につきましては、この10年、40歳代から50歳代前半のところが増加しているということと、65歳以上については、人口比でみても、この5年間で増加していることがみてとれます。
その下の図表は民間被用者ですけれども、厚生年金のうち9割ぐらいが民間被用者ですから、分布の形は厚生年金計とほとんど同じです。
45ページの上の図表が国家公務員、下の図表が地方公務員です。国家公務員につきましては、若い世代といいますか、39歳以下のところで男性がかなり減っている一方、女性につきましては、40歳代で増えていることがみていただけると思います。地方公務員につきましては、男性では中高年齢層がどんどん減っていて、ただ、男性も女性も25~29歳の若い年齢階級では若干増加しています。また、国家公務員、地方公務員ともに共通して、65歳以上の被保険者数についてはほぼ変化がありません。
46ページに行きますと、上の図表が私立学校教職員の変化で、男性は特段大きな変化はございませんが、女性につきましては、30歳代、40歳代のところで被保険者数が相当増えています。
国民年金第1号被保険者につきましては、その下の図表で、年々減っていることがみていただけます。
48ページからが標準報酬になります。49ページの図表2-1-6をご覧いただきますと、まず、厚生年金計の平成28年度の1人当たり標準報酬額、これは総報酬を12で割って月額換算したものですが、38万2,586円です。民間被用者が36万5千円ぐらい、国家公務員、地方公務員が54万円台、私立学校教職員が46万円台という水準です。ここで、短時間労働者の1人当たり標準報酬額ですけれども、第1号被保険者は13万円強、第4号被保険者の私立学校教職員は16万8千円と、かなり差があります。
図表の下の伸び率をご覧いただきますと、第1号被保険者、民間被用者の伸び率は、全体でみますとマイナス0.1%と減っていますが、短時間労働者を除くとプラス0.1%となり、僅かですが増えています。ただ、短時間労働者も加えますと、短時間労働者は相対的に標準報酬が低いため、第1号被保険者全体でみると減っている状況です。
一方で、私立学校教職員につきましては、全体で0.5%減っておりますが、短時間労働者を除いても0.4%減っておりまして、ここは短時間労働者の適用拡大の影響だけではないということになります。
51ページは、1人当たり標準報酬月額の推移ということで、毎月の標準報酬月額をみたものですが、伸び率としては同様の状況です。
52ページの図表2-1-8が総報酬ベースの月額の男女比を見たものでございます。一番下の行、男性を100とした女性の水準ですが、厚生年金計では68ぐらいですが、短時間労働者では83となっており、短時間労働者の方が差が小さいということになります。
ここで、第1号被保険者の短時間労働者については83.5ですが、第4号被保険者の短時間労働者では64.4で、短時間労働者についてみると、第1号被保険者より第4号被保険者の方が差が大きいことがみていただけます。なお、第2号被保険者、第3号被保険者では、従来から80%台で、余り男女差がありません。
53ページからは、標準報酬月額別被保険者数の分布です。
54ページの図表2-1-10につきましては、厚生年金計の分布ですが、地共済が被用者年金の一元化前は給料月額制で標準報酬制ではなかったために、地共済については10年前、5年前のデータがなく、厚生年金計についても同様でございます。
そこで、55ページの上の図表をご覧いただき、民間被用者について、この10年間の変化をみますと、男性につきましても、女性につきましても、被保険者数が増加している中で、5年前から現在に至って全体的にどの標準報酬月額でも被保険者数が増えています。
下の図表が民間被用者のうち短時間労働者の標準報酬月額の分布です。緑が男性、黄色が女性ですが、9.8万円あるいは11万円あたりの比較的低い方に集中しています。
56ページに行って、特徴だけ申し上げますと、下の図表の地方公務員につきましては現在の分布だけですが、ほかの制度に比べると、男性と女性の分布が非常に相似した形をしています。
57ページの上の図表が私立学校教職員で、私立学校教職員につきましては、特に女性ですが、被保険者数が増えている中で、全体的にどの標準報酬月額でも増えています。下の図表が、私立学校教職員のうち短時間労働者の分布で、女性は比較的低いところに集中していますが、男性は26万円が一番多く、次いで30万円が多くなっており、比較的標準報酬月額の高いところが多くなっておりまして、非常勤講師等で比較的高い標準報酬月額の方々がいらっしゃると伺っております。先ほど第4号被保険者の短時間労働者の1人当たり標準報酬額が、第1号被保険者の短時間労働者に比べてかなり高いと申し上げましたけれども、こういったことが影響しています。
58ページが標準報酬総額です。図表2-1-11をご覧いただきますと、伸び率では一番下の行になりますが、平成28年度の標準報酬総額は厚生年金計で2.6%の増でした。基本的には被保険者数が増加している影響です。
61ページ、図表2-1-12です。これは標準報酬総額をコーホートでみて、その増減の要因分析をしたものです。人数の変化分と年齢上昇に伴う賃金の変化分、マクロベースの賃金の変化分に分けたものです。ここも短時間労働者分を分けておりますが、短時間労働者は新たに適用されましたので、人数の変化分だけの効果としております。
特徴的なところだけ申し上げます。人数の変化分をみていただきますと、50歳代後半になりますと退職していくのでマイナスになりますが、第4号被保険者の私立学校教職員では、右から3列目の25~34歳のあたりですけれども、若い年齢でも退職していることがみてとれます。
62ページからが受給権者の状況になります。ここでまず図表2-2-1をご覧いただきますと、共済組合等の年金給付について図示したもので、この歴史を申し上げます。昭和61年3月までの、基礎年金制度ができる前については、退職年金として算定式も含めて一つであり、定額部分や報酬比例部分、職域加算部分に分かれていなかったものが、昭和61年4月から全国民共通の基礎年金ができたので、そこの部分は分かれて、退職共済年金も、それ自体はまとめて裁定・給付されているものの、算定式上は職域加算部分は別になっています。平成27年10月に被用者年金は一元化され、2階相当までの部分は厚生年金という形で整理をされて、ただ、平成27年10月前といいますか、9月までの期間がある方は、経過的職域加算というのが経過的に残っており、この部分は退職共済年金として別途裁定・給付されます。
ここから後の年金総額等の分析において、共済年金のどの部分が対象になっているかということでは、基礎年金を含む、含まないというのは別途ありますが、基礎年金以外のところで言いますと、この濃い青のところと緑色の厚生年金のところです。濃い青のところは一体で裁定されており、統計上分けることができないので、全体が対象になっています。
受給権者数の推移ということで、図表2-2-2、63ページをご覧いただきますと、平成28年度末の受給権者数は、旧厚生年金では0.7%の増、国共済では0.1%の減、地共済では0.3%の増、私学共済では4.1%の増となっており、前年度や前々年度に比べて比較的低い伸び率になっています。平成28年度につきましては、男性及び共済組合等の女性において報酬比例部分の支給開始年齢が61歳から62歳に引き上げられ、新規裁定者が少なくなったので、受給権者数の伸び率が低くなっています。
同様のことは、3年前の平成25年度にもおきておりまして、このときは報酬比例部分の支給開始年齢が60歳から61歳に引き上げられたので、その前後に比べますと、低い伸び率になっています。
64ページは受給者数の推移ですが、受給権者数と同様の傾向です。
65ページは受給権者数の年金種別別構成です。ここでは、原則加入期間25年以上の老齢・退年相当の老齢・退職年金、加入期間の短い通老・通退相当の老齢・退職年金、それから障害年金、遺族年金に分け、図表2-2-4では色分けして図示しています。特徴的なところでは、私学共済が他の制度に比べて通老・通退相当の割合が非常に大きいことと、国民年金は遺族年金のあり愛が小さいことが挙げられます。国民年金の遺族年金は、18歳未満の子供がいることが受給要件ですので、その影響で割合が小さくなっています。
ちょっととびますが、69ページの図表2-2-6が、受給権者の年金総額の推移です。まず、平成28年度の対前年度増減率をみますと、旧厚生年金は0.9%の減、国共済は2.8%の減、地共済は2.3%の減、私学は0.2%の増となっており、やはり前年度あるいは前々年度に比べて低い伸び率ですが、先ほど申し上げた支給開始年齢の引上げの影響です。ただ、右から2番目の国民年金につきましては2.4%の増となっており、そのような要因がなければ、高齢化に伴って増えていきます。
それから、72ページからが老齢・退年相当の受給権者についてです。この老齢・退年相当の受給権者は、退職年金の中でも加入期間が原則25年以上の比較的長く加入した方です。これまでみたきた受給権者数等については、複数の制度から給付を受ける方がいらっしゃるために、基本的に合計を表章していませんが、原則25年以上の被保険者期間を有する方が複数の制度から給付を受けるのは極めて限定的ですから、この老齢・退年相当については、被用者年金計という形で合計を表章しています。
図表2-2-9の老齢・退年相当の受給権者数の推移は、平成28年度は被用者年金計で0.2%の減となっており、これは先ほど来申し上げております支給開始年齢引上げの影響が出ています。
73ページの図表2-2-10が老齢・退年相当の受給権者の平均年齢と女性の割合を示したものです。特徴的なところでは、真ん中の老齢・退年相当の受給権者に占める女性の割合について、国共済が16.6%と非常に小さいこと、それから、平均年齢について、これも国共済をご覧いただきますと、男性も女性も他の制度に比べて2歳から3歳程度高くなっていることがみていただけます。
老齢・退年相当の受給権者の年齢分布につきましては、75ページに図表で示しています。赤が老齢厚生年金で、青が退職共済年金でして、共済組合等については老齢厚生年金の受給権者が発生するのが平成27年10月以降ですから、高齢の方は青だけで、69歳以下で赤が出てきます。ほとんどの制度で65~69歳の受給権者が一番多いですけれども、国共済の女性についてはどの年齢階級でも同じぐらいの人数になっていることが特徴的です。
老齢・退年相当の受給権者にかかる平均年金月額をみたものが77ページの図表2-2-12です。旧厚生年金で14.6万円、国共済で18.7万円、地共済と私学共済は19万円台です。男性と女性の格差も、男を100とした女の数値ということで出しています。ただ、この数値は共済年金の職域加算部分を含んだ数値ですので、それを除くとどうなるかというのが次の79ページの図表2-2-13です。そういたしますと、旧厚生年金は職域加算部分がありませんので同じ14万5千円くらいですけれども、国共済、地共済、私学共済ともに17万円台になり、厚生年金計の平均年金月額は約15万円になります。
ただ、それでもまだ、職域加算部分を含むものより1割ほど少なくなったものの、旧厚生年金より2割ほど高くなっています。これは、例えば国共済では、男性と女性で女性の平均年金月額に、旧厚生年金ほど差がないことが要因の一つです。その背景として女性の加入期間を比べますと、旧厚生年金が328月なのに対して国共済が410月ということで25%も多いことが影響しています。平均年金月額は、年齢分布ですとか男女構成、あるいは平均加入期間などの影響を受けますので、このような差が生じています。
82ページに行っていただきまして、図表2-2-15は平均年金月額の推移です。ここでは対前年度増減率をざっとみていただければと思いますが、近年低下傾向にあります。これは、年金改定率の影響や定額部分の支給開始年齢の引上げの影響等があります。この要因につきましては、後で分析をしております。
それが86ページで、近年平均年金月額が低下傾向にある要因がまとめられています。1つめが報酬比例部分の給付乗率の引下げで、昭和60年改正で給付乗率が生年月日に応じて引き下げられましたので、その影響があります。それから、2つめで定額部分の支給開始年齢の引上げ、3つめで物価スライドがマイナスの時もあったこと、4つめで特例水準の解消があったこと、それから、5つめで被用者年金一元化法による追加費用削減のための恩給期間に係る給付の引下げがあったこと、次のページに行っていただきまして、6つめで一元化に伴う共済組合等の職域加算部分の廃止があり、こういった要因で平均年金月額は低下傾向にあります。
1つめの報酬比例部分の給付乗率の引下げの影響を明らかにするために、年齢階級別平均年金月額をお示ししたのが図表2-2-10で、これは旧厚生年金だけのデータですけれども、老齢相当の受給権者の年齢階級別平均年金月額で、基本的には、高齢になるほど年金額が高いことがみてとれます。
第3節が、財政収支の現状及び推移でございます。89ページは、先ほどちょっと申し上げました平成27年10月から共済の長期経理が厚生年金保険経理と経過的長期経理に分割されたという記述です。
次に、94ページ、95ページについては、各制度からヒアリングで伺った決算を基に、収支状況について制度横断的に比較分析をしたものです。公的年金制度内ではいろいろな財政調整がありまして、個々の勘定から見れば支出であったり収入であったりしますけれども、公的年金制度全体でみますと、それらは相殺されますので、相殺後でみた公的年金制度全体の収支状況が表の一番右側にあります。
収入で言いますと、総額が53兆5,019億で、そのうち、保険料収入が35兆7,927億円、国庫・公経済負担が12兆3,811億円、追加費用が6,130億円、その他大きい額では解散厚生年金基金等徴収金が4兆3,844億円となっています。
支出につきましては総額51兆6,626億円で、そのうちほとんどは給付費で51兆3,481億円です。これらの結果、運用損益を除いた単年度収支残は1兆8,392億円のプラスです。これとは別に運用損益があり、平成28年度は9兆1,819億円のプラスでございます。これ以外に、収支を経ないお金の動きが870億円あり、年度末積立金は平成27年度末に比べて11兆1,080億円増加して、平成28年度末では185兆8,241億円になっています。
ここで、各制度別に運用損益を除いた単年度収支残をみていただきますと、下から5行目のところですが、厚生年金勘定と私学共済以外はマイナスとなっています。厚生年金勘定については、解散厚生年金基金等徴収金が近年多額になっていますが、それを除きますと1兆2,889億円のマイナスになります。それから、その他については、先ほど収支を経ないお金と申し上げましたが、厚生年金勘定と国民年金勘定では業務勘定から積立金への繰入れであり、国共済、地共済、私学共済については、第1章で御説明申し上げた12月1日に行われた仕分けされた積立金の精算分です。国共済と私学共済では厚生年金保険経理から経過的長期経理に移管されたもの、地共済は逆ですけれども、その精算額が計上されています。
98ページ以降で、これら収支項目について個々に分析しています。まず、保険料収入ですが、図表2-3-5で伸び率をご覧いただきますと、厚生年金全体では6.2%保険料収入が増え、国民年金勘定では0.5%減っています。
保険料収入につきましては詳細に分析しておりますので、次の100ページに行っていただきまして、図表2-3-6は厚生年金の保険料収入の増減要因の分析です。例えば厚生年金勘定では保険料収入が5.9%伸びており、そのうち被保険者数の伸びの寄与が3.1%です。被保険者数が特に増えている厚生年金勘定、私学共済では、被保険者数の伸びの寄与が大きくなっています。1人当たり標準報酬額の寄与については、先ほどみていただきました標準報酬額の伸びが反映されています。
それから、平成28年度は保険料率がまだ引き上がっていましたので、その影響が厚生年金勘定で2.6%、私学共済で2.0%あります。同様の、保険料率の引上げの寄与が、国共済、地共済では、7.2%あるいは7.9%と大きくなっています。共済組合等につきましては、平成27年10月の一元化前までは、3階部分、職域加算部分がありましたが、平成27年10月以降、職域加算部分は廃止されました。一方で、保険料率はその前後で同じ保険料率とされたため、2階部分相当までの保険料率としては大きく引き上がったことになり、このような結果になっています。私学共済もその事情は同様ですが、私学共済につきましては、職域年金経理の積立金を保険料の軽減に充てることが可能となっており、その結果保険料率は実質的には大きく上がっていないため、厚生年金勘定と同程度の寄与にとどまっています。
それから、101ページです。国民年金の保険料収入の増減要因の分析をするには、国民年金の保険料収入には、現年度保険料と、過去の保険料を2年分払えるため、その分の過年度保険料がありまして、まずはそれらを分けることが必要になります。そうしますと、平成28年度の保険料収入は全体では0.5%減少しましたが、現年度保険料は1.7%増加しており、過年度保険料が28.3%減っている結果、全体の保険料収入が減っています。
過年度保険料が大きく減っているのは、国民年金保険料の後納制度の変更の影響です。保険料の後納制度は、平成24年10月から3年間の時限措置で設けられ、時効になった保険料、その時は過去10年分の保険料を遡って納めることができる制度ができました。3年の時限措置終了時期が来て、平成27年10月からは、また新たに3年間の時限措置として同措置が延長されましたが、その時納めることができる期間が10年ではなく5年に短縮されたことが、過年度保険料が減ったことに影響しています。もう一つ、図表の右側に載せている納付率をご覧いただきますと、近年、納付率は上昇しており、納付率が上がりますと後納できる部分も必然的に減るので、過年度保険料が減っている面もあります。
この現年度保険料が1.7%増加していることの分析が、102ページの図表2-3-9です。国民年金の保険料の分析は、今年度新たにいたしましたので、平成26年度から3年分載せております。平成28年度の1.7%のうち、これは国民年金勘定の話ですから国民年金第1号被保険者に係る部分でありが、国民年金第1号被保険者数自体は減っているので、それはマイナスの要因となっています。それから、保険料免除被保険者割合、これは国民年金には保険料免除制度がありますので、その免除者の割合が保険料収入に影響しますので、その寄与ですが、平成28年7月から納付猶予対象者が従来30歳未満だったのが50歳未満に拡大されて、納付猶予対象者が増えたので、この部分もマイナスの要因になっています。一方、保険料の引上げで4.1%の増、それから、納付率が上がったことで2.6%の増になっています。その他につきましては、その他なので雑多な要因が含まれますが、特に平成27年度はマイナス5.0%で大きく減っています。これは昨年度の報告書に記述していますけれども、保険料の2年前納制度の影響でして、平成26年4月から保険料の2年前納制度が出来たため、平成26年度に2年分払った方の分は、平成27年度に保険料収入として入らないので、その部分の影響がその他に出ています。
104ページが国庫・公経済負担でして、図表2-3-11は平成27年の一元化後のものとして整理し、別途、図表2-3-12で共済組合等の職域加算部分等を含む時系列推移も載せています。図表2-3-11で伸び率をご覧いただきますと、基本的に国庫・公経済負担は基礎年金拠出金に連動いたしますので、基礎年金拠出金が増えるに従って増加します。その中で、地共済についてはマイナス6.0%と、マイナス、かつその幅が大きくなっています。これについては、6行目から記述があり、地共済については公経済負担が標準報酬に応じて徴収され、標準報酬の見込みと実績との乖離が生じると2年後に精算をするわけですが、これに係るマイナスの精算が大きかったことと、当年度の当該見込みと実績の乖離も受けるので、平成28年度の国庫・公経済負担が大きく減っています。
少しとびまして、109ページが運用損益です。平成28年度は運用環境が良かったため、公的年金制度全体で9兆1,819億円のプラスになっています。
110ページの図表2-3-18がその運用利回りです。厚生年金勘定は5.47%、国共済は3.71%、地共済は4.75%、私学共済は5.76%となっており、厚生年金計では5.30%になっています。一方、国民年金勘定は5.63%でした。
112ページからは支出の推移ということで、図表2-3-20は給付費の推移です。特に国民年金勘定はマイナス12.5%と大きく減っておりますが、国民年金勘定から支払われる給付費の多くは昭和60年改正前の旧法分ですから、年々減っていくという構造です。
114ページ、115ページが運用損益分を除いた単年度収支残です。少し長い期間みていただくために、115ページをご覧ください。長い期間みるためには、共済組合等の職域加算部分も含むものになります。例えば真ん中の被用者年金計、あるいは一番左の厚生年金勘定をご覧いただくと、厚生年金勘定は旧厚生年金の分になりますが、かぎ括弧の外はいわゆる単純な収支残ですが、かぎ括弧の中は解散厚生年金基金等徴収金を除いたものです。この2年ぐらい厚生年金勘定の運用損益を除いた単年度収支残がプラスになっているのは、解散厚生年金基金等徴収金の影響が大きいと申し上げました。そこで解散厚生年金基金等徴収金を除いた単年度収支残をみますと、平成22年度頃は6兆円ぐらいのマイナスでしたが、近年どんどんマイナスの程度が縮小しています。被保険者数が増えて保険料収入が増加した影響もあって、このマイナスの程度は年々縮小しています。
それから、116ページの図表2-3-24、これは積立金です。対前年度増減率をご覧いただきますと、運用環境が良かったにもかかわらず、国共済と私学共済は減っています。これは2階相当部分までの積立金としては減っているということでして、先ほど来申し上げておりますように、仕分けられた積立金の精算で国共済と私学共済は厚生年金保険経理から3階部分の経過的長期経理に精算額の移管が行われましたので、その影響です。
当然のことながら、117ページの共済組合等の職域加算部分等の積立金を含む積立金でみますと、国共済も私学共済も増えています。
118ページ、119ページは、各制度の積立金の資産構成です。119ページの図表2-3-27ですが、長期的にはポートフォリオは揃えていくということですが、現時点では経過的な段階にあり、各制度、資産構成が異なっています。特徴的なところでは、国共済について預託金が46%と非常に多くを占め、預託金と国内債券で半分以上を占めています。
120ページから基礎年金制度の実績です。121ページをご覧いただきますと、基礎年金拠出金算定対象者数の推移ですが、これは20歳以上60歳未満の被保険者数に連動しますので、特に一番右の国民年金勘定は、国民年金第1号被保険者数が減っていることで大きく減っています。その結果として、図表の3段のうちの一番下に構成比があり、各勘定が負担する割合ですが、国民年金勘定の構成割合が年々減っています。
それが結果的に123ページの例えば図表2-3-30の確定値ベースの基礎年金拠出金の推移となっており、被用者は年々増えていますけれども、国民年金勘定、右から2列目については近年減っており、特に平成28年度はマイナス4.9%と大きく減っています。
124ページからは厚生年金制度の実績で、厚生年金拠出金及び同交付金です。平成27年度は一元化が10月からだったので半年分の額だったわけですが、平成28年度は満年度化していますので、どこをみていただいてもほぼ倍の数値になっています。
時間の都合もありますので、駆け足で申し訳ありません。126ページからは財政指標の現状と推移です。
127ページの図表2-4-1が年金扶養比率です。上から3行目になりますが、厚生年金計の年金扶養比率は2.30で、実施機関別では私学共済の4.07が最も高くなっています。一番右が基礎年金ですが、基礎年金は1.99となっています。
128ページの図表2-4-2がこれを時系列で見たものです。年金扶養比率は高い方が、財政的にみて良いのですけれども、厚生年金計では近年高くなっていて、特に平成28年度は0.08ポイント高くなっています。これは被保険者数が増えている影響が大きくなっています。
130ページ、131ページは総合費用率でございます。総合費用率は低い方が財政的にみて良いのですけれども、平成28年度は19.4ということで、平成27年度に比べて0.4ポイント低くなり、改善しています。
132、133、134ページが保険料比率及び収支比率です。保険料比率は高い方が財政的に良いのですけれども、厚生年金計で見ますと平成28年度は91.2で、前年度より高くなって、改善しています。収支比率につきましては、これは低い方が財政的に良いのですけれども、厚生年金、国民年金勘定ともに前年度より低下して、改善しています。
最後に、136ページが積立比率でして、図表2-4-7をみていただきますと、厚生年金では4.9、国民年金勘定は6.6となっており、これは前年度より低下しています。この積立比率は前年度末積立金を基にした指標で、平成28年度の積立比率は平成27年度末積立金が分子になりますので、平成27年度は運用環境が良くなかったため、平成28年度の積立比率が前年度より下がっています。
続きまして、資料1-4は、財政検証・財政再計算結果との比較、あるいは積立金等の乖離分析です。
140ページから人口要素です。まず、合計特殊出生率については、中位推計と高位推計の間の水準になっています。
142ページが65歳平均余命、グラフでご覧いただきますと、男性については死亡中位とほぼ同じぐらいで、女性については死亡中位よりやや低いぐらいで推移しています。
144ページからが経済要素です。まず、物価上昇率については、平成28年度の実績が0.1%の低下で、将来見通しにおける前提は経済再生ケースで2.7%、参考ケースで2.0%ですので、グラフをご覧いただくと良く分かりますけれども、大きく下回っています。
146ページから賃金上昇率です。厚生年金計について図表3-2-9をご覧いただきますと、名目ベースでは、平成28年の実績は0.05%の低下ということで、将来見通しにおける前提と比べますとかなり低い水準です。ただ、実質賃金上昇率では、これは対物価でみたものですが、物価も上がっていませんので、実績がプラス0.05%となっており、将来見通しにおける前提と比べますと、経済再生ケースと参考ケースの中間になります。
150ページからが運用利回りですが、運用利回りについては、3つの指標がありまして、図表3-2-12でご覧いただきますと、名目運用利回り、実質的な運用利回り、実質的な運用利回りとは対賃金でみた運用利回りで、それから、実質運用利回り、これは対物価でみた運用利回りです。152ページからは実質的な運用利回りのグラフを用意しておりますが、でこぼこはありますけれども、将来見通しにおける前提を実績がかなり上回っています。
156ページから被保険者数等で、まず、前提となります労働力率です。158ページの図表3-2-16のグラフをご覧いただきますと、実績については、女性しか表示されないですけれども、薄いグレーが2012年の実績、黒が2016年の実績、それから将来見通しは、一番近いのが2020年しかありませんので、経済再生ケースも参考ケースも2020年をプロットしております。ですから、黒い実績と比べていただくといたしましても、将来見通しは4年も先のものであることを踏まえていただきたく存じます。男性につきましては大きな差はなく、高齢のところでは経済再生ケースと参考ケースの中間です。女性も全体的には経済再生ケースと参考ケースの中間になっています。また、2012年の実績と2016年の実績を比べていただきますと、この4年間、労働力率が上がっていることがみていただけます。
160ページは就業率を同様に図示したものですが、これは労働力率とほぼ同じ結果になっています。
162ページが被保険者数について実績と将来見通しを比べたものです。将来見通しは棒グラフで、実績は黒い丸ポチです。見ていただきますと、厚生年金計、特に民間被用者は実績が将来見通しを大きく上回っています。一方で、裏腹になりますが、国民年金の第1号被保険者は、実績が将来見通しより少なくなっています。
163ページが標準報酬総額と1人当たり標準報酬額で、図表3-2-21の乖離だけご覧いただきますと、一番右の割合というところで、平成28年度では、標準報酬総額では経済再生ケースで4.7%、参考ケースで8.0%、実績が将来見通しを上回っています。被保険者数の増もあり、そういう状況となっています。
一方で、1人当たり標準報酬額をご覧いただきますと、平成28年度は経済再生ケースで2.6%、参考ケースで2.2%、実績が将来見通しを下回っています。これは賃金が伸びていない影響です。
受給者数については、グラフでは166ページになります。受給者数の実績は、厚生年金計や旧厚生年金、国共済プラス地共済ではほぼ将来見通しどおりで、私学共済では実績が将来見通しより少なくなっています。基礎年金も微妙に実績が将来見通しより少ないですけれども、ほぼ将来見通しに近くなっています。
167ページからは収入です。
169ページの図表3-2-24は、保険料収入の乖離をみたものですが、一番上の厚生年金計で申し上げますと、実績が将来見通しを経済再生ケースで3.7%上回っています。ただ、実施機関別では、国共済、地共済では実績が将来見通しを下回っていますし、国民年金勘定も被保険者数の実績が将来見通しより少ないため、保険料収入の実績も将来見通しを下回っています。
171ページが国庫・公経済負担の将来見通しです。国庫・公経済負担は基礎年金拠出金に連動しますから、基礎年金拠出金の将来見通しと実績の乖離に依存します。それについては、172ページにありまして、被用者年金では実績が将来見通しを上回り、国民年金勘定では実績が将来見通しを下回っています。これは第1号被保険者数の実績が将来見通しより少ない結果であり、それに連動して、171ページに戻っていただきますと、国庫・公経済負担がこのような結果になっています。旧厚生年金と私学と国民年金勘定はそうなっています。ただし、国共済と地共済につきましては、基礎年金拠出金は実績が将来見通しより多かったにもかかわらず、国庫・公経済負担は実績が将来見通しより少なくなっていますが、これは第2章で御説明申し上げました、地共済において、2年前の精算が多かったため平成28年度の公経済負担が少なかったことによる影響です。
173ページは運用損益ですが、これは運用環境が良かったので、実績が将来見通しを大きく上回っています。
174ページから支出です。支出はそのほとんどを給付費が占めますけれども、給付費については実績が将来見通しを下回っています。
基礎年金拠出金、厚生年金拠出金等の記述がありますが、時間の関係上御説明は省略させていただき、積立金の乖離分析も後で出てきますので、ここでは省略します。
183ページから財政指標です。財政指標について将来見通しと実績を比べますと、年金財政的には良い方に乖離しています。
190ページから積立金の乖離分析です。これはその結果、195ページをご覧ください。申し訳ありませんが、印刷が終わった後に誤植に気づいたので差し込みの方を見ていただければと存じます。
この乖離分析は、まず実績と将来見通しの乖離が幾らかについて、上は絶対額で、下は指数で出しています。上の絶対額では、まず、平成28年度末積立金の将来見通しからの乖離について、厚生年金計では21兆円強でした。そのうち平成26年度末積立金で22.28兆円の乖離があり、その後、平成27年度に発生した乖離、平成28年度に発生した乖離がありますが、それを分けると、平成27年度はマイナス7.78兆円、平成28年度はプラス6.64兆円の乖離が発生しています。
これらを発生要因別に分解しておりまして、名目運用利回り分と運用損益を除いた収支残分に分けますと、平成28年度の発生要因の計は6.64兆円ですけれども、名目運用利回りによる乖離分は5.1兆、その3行下の運用損益を除いた収支残分は、プラス1.54兆円で、どちらも積立金が増える方向になっています。
運用損益を除いた収支残分を更に分解しておりまして、まず1つ目が、賃金上昇率の乖離による保険料収入の変動で、これは賃金上昇率の実績が前提よりが低かったため保険料収入が減り、積立金が減ったわけですが、厚生年金計では0.89兆円、積立金を減らす方向に働いたということです。
その次の行は賃金上昇率・物価上昇率の乖離による給付費等の変動ということで、年金改定率は、見込みでは1.8%なり1.4%でしたが、実際には平成28年度は年金改定率がゼロだったので、それは積立金を増やす方向に働き、その効果は0.7兆円になります。
次に、人口要素です。人口要素は計では2.00で、1つは被保険者数が将来見通しと乖離したことの影響で、それが影響するものには2つあります。例えば、被保険者数が増えると、保険料収入が増えるという面もありますが、一方で、被保険者数が増えますと基礎年金拠出金が増えるという面もあり、影響はその相殺になり、厚生年金計では2.03兆円のプラスとなっています。一方で受給者数の乖離の影響についてはマイナス0.03兆円となっており、計2.00兆円です。
その次の行がスライド調整率でございまして、これはマクロ経済スライドの乖離分で、発動されて1.1%なり1.2%という見込みでしたが、実際には発動されなかったということで、その分は積立金を減らす方向に働いて、マイナス0.43兆円です。
ここで、昨年度の報告書では、スライド調整率は人口要素の一部にしていました。と言いますのは、マクロ経済スライド自体は、第1章で御説明申し上げましたように、発動するかどうかは経済要素に依存し、発動した場合の率は人口要素で決まるものであり、平成27年度は発動しましたので、乖離分は人口要素の乖離によるものだったからです。ただ、今年度のように発動しなかった場合は、発動するかどうかは経済要素で決まりますので、どちらからも独立させて、スライド調整率というのを別建てにしました。
あとはその他で、みていただきますと、被用者の中では、国共済プラス地共済、あるいは私学共済が多くなっています。これは先ほど来御説明申し上げている、仕分けされた積立金の精算分の影響で、国共済では厚生年金保険経理から経過的長期経理に、地共済では経過的長期経理から厚生年金保険経理に、向きは逆ですが、足したものでは地共済の影響のほうが大きいですから、結果的には経過的長期経理から厚生年金保険経理に移管されたことでプラスになっています。私学共済については、厚生年金保険経理から経過的長期経理に移管されたたのでマイナスになっています。この影響がほとんどです。
それから、一番右に国民年金勘定があり、これは今年度はじめて、国民年金勘定についても分析を行いました。この中で1つだけ御説明申し上げますと、下から4行目の人口要素のうちの被保険者数です。先程から国民年金第1号被保険者数が減っており、また実績は将来見通しより下回っていると説明申し上げましたのに、ここが何故プラス、すなわち積立金を増やす方向に働いているのかについてです。被保険者数が将来見通しより少なかったということは、将来見通しより保険料収入が少なくはなりますが、一方で、将来見通しより基礎年金拠出金が少なくてすむという影響もありまして、それらの相殺の結果としてプラス0.03円になっています。
これはケースCについての分析ですけれども、ケースE、Gについても同様の分析です。
198ページが第5節、財政状況の評価でございます。201ページの表を見ながらこの内容について御説明いたしますと、まず、将来見通しでは平成28年度の積立金は、例えばケースCでは厚生年金計で167兆円強です。今、実績が判明している平成27年度、28年度については、既に物価上昇率や賃金上昇率が将来見通しにおける前提と乖離していますので、その分を評価し直直しますと、4行目の評価の基準となる積立金額160兆円になります。
その下の行ですけれども、実績では積立金額は188.9兆円ありますので、割合で言うと17.8%ほど、実績が評価の基準となる積立金額を上回る結果になっています。
これについて、3-5-9あるいは3-5-10ですが、平成28年度末時点では厚生年金全体で実質的には2割近く財政検証等で見込まれた以上に積立金を保有している結果になっています。
ただ、3-5-11で「ただしこれは」というところですが、これは平成27年度、平成28年度に乖離した影響を将来分も含めて評価したものであって、平成29年度以降の物価上昇率、賃金上昇率及び運用利回りにおける前提との乖離については、注視する必要があります。また、3-5-12ですけれども、そもそも積立金がどの程度の役割を果たしているかということについては、公的年金制度は世代間扶養を基本として運営されている中で積立金を保有しており、4行目の「具体的には」の後ですが、年金給付の財源は、その年の保険料収入と国庫負担で9割程度が賄われており、積立金から得られる財源は1割程度です。
そういったことを踏まえますと、3-5-13ですけれども、いずれにしても、年金財政の観点からは、短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであるという結論を記述していただいています。
最後に、資料1-5が付属資料で、過去からのいろいろな時系列推移等について図表にまとめたものです。
資料2につきましては、今、御説明申し上げたことの簡略版ということで、要旨として用意させていただいております。
途中から駆け足になって、大変申し訳ございませんでした。
説明は以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの報告書の案に関しまして、何か御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。
翁委員、お願いします。
○翁委員 報告書については、これで私はもちろん結構でございますし、非常に分析がいろいろあって、示唆がいろいろあるなと思います。
幾つかだけコメントしたいのですけれども、1つは、やはり厚生年金の被保険者数がふえていて、年金扶養比率とかも高くなってきているなと思います。特に、この間、景気も割とよくて、短時間労働者も今回ふえましたので、女性や高齢者の方も入ってきているということで、賃金の上昇は余り伸びていないわけですけれども、今回これで随分実態が分析されていて、短時間労働者の実態とかも少しわかってきているなという感じがいたします。
2つ目は、年金総額は比較的抑制されているのですが、28年に関しては、開始年齢の引き上げがちょっと寄与しているかなと思っております。ただ、そうはいっても高齢化は進んでおりますし、こういった中で開始年齢を引き上げしていくということであれば、これはエコノミスト的な視点ですけれども、やはり高齢者の雇用とかそういったことも全体として考えていくことが本当に大事になっているなと思っております。
あと2つ申し上げたいのですが、3つ目は、やはり納付率が上がってきているというのは朗報であると思っております。これも今回確認できているのですが、引き続き、重要なので、取り組みを進めていく必要があると思います。
この中にも記述がありますけれども、平成26年に2年前納制度というのが入れられて、かなりこれはインセンティブをつけていますので、こういったものが周知されていくといいかなと思いますし、そういう制度をもっと活用すべきだと思っております。
最後になりますけれども、最後に御説明がございましたが、今回よいというのは、やはり運用収益によるところが非常に大きくて、ここでは特に積立金の財源が1割にしかすぎないということで、長期的にみていくことが重要だと指摘しておりますけれども、それ以外にも個人的には、やはりボラティリティーがすごく運用面はポートフォリオの多様化によって出てきていますので、そういったことを十分踏まえるべきだと、長期的な視点で考えるべきだということに加えて、特に株式、株価については、ETFを日本銀行が買っていることがかなり底上げにきいているということはきちんと把握しておく必要があるかと思っておりまして、出口の議論がどうなるかはわかりませんけれども、やはりそういった支えられている相場であるということを十分に認識して、長期的な年金財政を考えていっていただきたいなと思っております。
以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
御意見ということで承っておきたいと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 事前に検討班で議論もされていますので、内容についてはこれで結構だと思うのですけれども、少しこの表現というのでしょうか、気になる部分が1カ所だけあるので、これをどうするか御相談したいと思います。
37ページにぽんと注が入ってきているのが、本文の連続の中にある注なのか、脚注なのか、何の注なのかよくわからないです。各被保険者の運用主体で移管したポートフォリオに違いがあるという説明の部分なのですけれども、この注というのは脚注なのかどうなのかというところが気になる。
それから、119ページの2-3-43の記述を理解するためには37ページを見ろということになるのだろうと思うのですけれども、注というか、ここも気になるところではあるのですけれども、37ページを参照しろとかいう感じに2-3-43に入れたほうがいいのではないかと思いました。
この説明し切れているのかどうかなのですけれども、2-3-43で各制度の資産構成が違うの点です。これはそのとおりなのですが、ここでこのように分類すると、私学共済の短期資産の10.7というのは、ほかに比べるとちょっと突出しているのかなと。ただ、これはもちろん基本ポートの乖離幅の中に入っているので、問題であるというわけではないのですけれども、短期資産が私学共済は非常に突出している。37ページで既に預託金と貸付金がなぜ保険によって違うのかは説明し切れているのですけれども、私学共済の短期のウエートの高さは、37ページで説明し切れているのかどうなのかというところで、どこがそれに相当するのかよくわからないですけれども、参照できるような形につなげておくことが必要ではないか。それから、37ページの注は脚注なのか、本文にくっついているものなのか。ページが飛んでいるのでよくわからないという点です。
それから、非常に細かいところで申しわけないですけれども、下から3行目で「旧3階経理の積立金の一部から保険料に補填ができるような仕組みがあり」と、「が」を入れないといけないのかなと思います。「仕組みあり」は「仕組みがあり」だと思いますので、そこだけお願いします。
以上です。もし事務局から、この注の置き場が一体どこなのかということと、119ページのところで参照できるようにしたほうがいいのではないかと思いますけれども、御回答いただきたいと思います。
○真鍋首席年金数理官 これは平成28年5月のヒアリングで共済所管省から仕分けについての御報告を受けた際、駒村委員から、仕分けの考え方について御質問があり、それに対する回答を記述したものです。上の表で詳細な資産構成が示されていて、例えば不動産は旧3階経理で保有されていること等が分かりますが、ヒアリングでお答えいただいた、そのように仕分けた考え方を書き込んでおり、まさしく36、37ページの表の参考です。これは経緯的な話ではあるのですけれども、このように仕分けた理由について御疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれないので記述しておりまして、本文の注ではなく、この表の注という位置付けです。
○駒村委員 その部分が119ページの2-3-43の記述にもつながってくるというところですね。
○真鍋首席年金数理官 つながってくるといえばつながってきます。ただ、図表2-3-27は平成28年度末の時点で、御指摘の36、37ページは、平成27年10月1日に仕分けられた結果です。もともと34ページから35ページにポートフォリオがありますけれども、36、37ページはその参考として、ご報告いただいた仕分けた時点の資産構成と、注という形でその考え方を記述しており、参考の表に対する注ということです。
それから時間が経って、平成28年度末の資産構成が、御指摘の119ページの図表2-3-27ですので、2-3-43のところで36ページ参照とするものでもない気がいたします。
○菊池部会長 36、37ページは参考であって、本文ではないのですね。
○真鍋首席年金数理官 はい。
○菊池部会長 本文ではないという扱いの中での、少なくとも注という表記を入れる必要があるかという、その御指摘は一つあると思うのですけれども、そもそもこの参考は本文とは違う扱いですね。
○真鍋首席年金数理官 そうです。おまけと言うとちょっと言い過ぎですけれども、まさしく参考としての記述です。注という表現が適切ではないということであれば、修正いたします。
○駒村委員 35ページから入っていくと、これがどこに続いているのか。もしかしたら本文に続いた注なのか、それとも参考資料のこのグループの注なのかというのがよくわからなかったので、唐突に注と入ってきたので、だったら項目を立てるか、それとも脚注に回すかしたほうがいいのではないかということ。
今の御説明のところは、確かに切り分けた時点の話と今の時点の話は違うのでしょうけれども、切り分けてすぐの話ですから、やはりここに書いてあるように「例えば国共済では預託金と国内債券で過半を占める等、制度により違いが見られる」と。何でそうなのかというのは経過の話なので、やはりそれは37ページを見ないとわからないということかと思いますので、37ページの影響を受けて、2-3-43がそういう状態になっているというのが、前から読んでいけばわかるのですけれども、より親切に読者にというか、関係者にわかりやすくするためには、相互引用をしておいたほうがいいのではないかという趣旨です。
○真鍋首席年金数理官 それでは、119ページの2-3-43の3行目の「短期的な運用状況の相違」のところに脚注で、ここを参照みたいな形で入れるということでよろしいでしょうか。
あと、37ページの注については、これが注に見えないのは、字が大きいのもあるかと思います。ただ、字は小さくすると読みにくくなります。注という表現を修正するか、あるいは字を小さくするということも考えられます。
○駒村委員 説明とか、解説でもいいですね。
○真鍋首席年金数理官 それでは、積立金概算仕分けの考え方とか、少し表現を工夫してはいかがでしょうか。
○菊池部会長 では、基本的な方向性としては今のように修正していただくとして、細かい注の文言については、お任せいただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それ以外に。
浅野委員、お願いします。
○浅野委員 3点ほどコメントさせていただきます。
1点目が、まずこの報告書について、新しい分析等も導入されて、より財政状況についてわかりやすくなったのではないかと思いますので、そういう意味では非常にいいレポートができたかなと思います。
2点目でありますが、200ページのところですが、最後の評価結果というところで、3-5-12で積立金から得られる財源は100年平均で1割程度だということですが、今、財政検証で見込まれた以上の積立金を上回る部分が2割ということなので、100年平均ということで考えると、これは全体からみると2%という状況なので、2割だと割合大きく見えるのですけれども、やはり2%と考えると非常に微々たる金額だということなので、だからすぐどうだということではないのですけれども、安心せずに長期的な観点から引き続き財政検証をしっかり行っていくことが大切ではないかと考えます。
3点目は、少し実務的な話ではありますが、今回取りまとめるに当たって、特に各制度の財政状況を集計するに当たって、昨年度からの持ち越しの宿題でありますとか、今年度も幾つか実務的な課題があったと思いますので、このあたりは実務面の体制の強化というのも引き続き検討をされたらいいのではないかと考えます。
以上、3点です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
田中委員、お願いします。
○田中委員 簡単な質問を2つと、あとコメントを申し上げます。
質問の1点目は、41ページ、2-1-6の上から3行目に国民年金の1号被保険者について記述があるのです。20~24歳の年齢階級の割合が最も大きく2割強を占めています。、この理由を教えていただきたいということです。
○真鍋首席年金数理官 ここには学生が入っておりますので。
○田中委員 主に学生が原因ということでよろしいでしょうか。
○真鍋首席年金数理官 そうです。
○田中委員 わかりました。
2点目は、これもまた被保険者の年齢の分布ですが、46ページの図表2-1-5をみると、特に女性が平成18、23、28年と、30歳から60歳ぐらいまでかなり増加しているのですけれども、これはどういう方たちなのでしょうか。
○真鍋首席年金数理官 私学共済のヒアリングの時にそのお話がちょっと出たと思いますが、私学共済には私立大学付属病院も加入していますので、看護師さんなどが増えているのではないかというお話があったと思います。
また、例えば45ページの国共済でも、40歳代の女性が増えています。これは職業まではわからないのですけれども、個別の共済組合ごとに見ますと、厚生労働省第二共済、それから文科省共済、つまり国立病院ですとか国立大学付属病院が加入している共済組合で被保険者数が増えていて、どちらも看護師さんが増えているのが要因ではないかと推測できます。
○田中委員 ありがとうございました。
最後にコメントですけれども、技術検討部会でもちょっと議論があったと思うのですが、この報告書はこれで一つの形式なのですけれども、来年度以降、特に運用のリスク等についていろいろな御意見があったと思います。できれば最後のところに運用評価ということで、以前、確率論的経済見通しみたいな話もあったのですが、現在、そういう記述も消えております。せめて、もう1節設けて、ストレステストによるシナリオ分析のようなもの。すなわち、シナリオを変えるとどれぐらい影響があるかということがわかりやすく説明されるような何らかの分析を工夫したほうが良いと思っておりまして、来年度以降の課題ということですが、ちょっとコメントさせていただきました。
○菊池部会長 最後の点につきましては、来年度以降の課題ということで受けとめさせていただきたいと存じます。ありがとうございます。
佐々木部会長代理、お願いいたします。
○佐々木部会長代理 報告書につきましては、いろいろ工夫いただいて、大変わかりやすくなったと思います。
1点だけコメントをさせていただきたいのですが、第3章の200ページの3-5-13で「いずれにせよ、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきである」と。まさにこのとおりだと思うのですが、1点、付属資料の222ページ、賃金上昇率の推移についてをご覧いただきたいと思うのですが、平成10年から28年ですから、約20年間の推移がまとめられているのです。21年はリーマンショックの影響で大きくなっていると思うのですが、それを除きましても、賃金上昇がほぼここ20年間累計しても伸び率がゼロになっているわけですね。賃金上昇率としては、これまで年金数理部会でも伸び率が高いのではないかという指摘をしている部分なのですが、その後の検証で足下は大分高さを修正されてきたわけですね。
賃金上昇率というのは、改めて言うまでもなく、年金財政運営の大きな要素。加えて、現役とか年金受給者の生活の豊かさの大きな指標になるわけです。平成26年に年金財政の検証、財政再計算が行われまして、次回までちょうど折り返し地点に来ているわけですけれども、ぜひこの辺については、より分析を深めて次回の検証再計算に臨んでいただきたいというのが1点、依頼とコメントです。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
ただいまの御意見も、今後に向けた検討課題とさせていただきたいと存じます。
それ以外に何か。
駒村委員、どうぞ。
○駒村委員 次の財政検証にも今、入っているわけですので、この財政状況報告というのは毎年行っている健康診断みたいなもので、今のところは差し迫った問題はないということですけれども、年金財政検証をやっている委員会のほうにもこの結果を共有していただくというのと、それから、おそらく今後の課題としては、今年のものにはどのぐらい書いてあったか、今、チェックし直すことはできないのですけれども、厚生年金基金の解散が今後ふえてきて、その積立金代行返上部分が勘定のほうにまた戻ってくるということをフォーカスした部分はどこから読み取ることができるのか。今後、それがふえてきた場合には、少しそこも記述を充実しなければいけないと思いますけれども、その辺はどこにあったか確認をしてほしい。
○真鍋首席年金数理官 そういう意味で申し上げますならば、第2章の114ページ、115ページに運用損益分を除いた単年度収支残の推移が示されています。厚生年金勘定をご覧いただきますと、かぎ括弧の外が単純なもので、かぎ括弧の中が解散厚生年金基金等徴収金を除いたものです。実際、平成27年度、平成28年度は、解散厚生年金基金等徴収金は4兆円台で非常に多かったです。これからどんどん増えるというよりは、この数年多かったけれども、厚生年金基金が少なくなっていますから当該徴収金も減っていくという状況だと思われます。例えば、115ページの図表2-3-23でも、過去から当該徴収金を除いた収支残もみていて、厚生年金勘定のかぎ括弧の中と外をご覧いただきますと、平成22年度ぐらいから微妙に差があり、ここ数年は差が大きいですが、それを除いたらどういう収支残であったかというのをみております。
つまり、これからの話というよりは、今、現に解散厚生年金基金等徴収金が多い状況にある中で、その一時的な要因を除いてみたら収支残はどうかということで、見かけはプラスなのがマイナスにはなるけれども、先ほど申し上げましたように、被保険者数の増加に伴い保険料収入が増えていることもあり、このマイナスの程度は小さくなっていると2-3-38に記述しています。
○駒村委員 わかりました。その辺のお金のフローの概念図はどの辺にありますか。厚生年金基金からの代行返上分のお金が入ってきているフローチャートみたいなイメージです。お金の流れというのは幾つかフローチャートをつくっていたと思うのですけれども、厚生年金基金の代行分でお金がたまっているのを示す部分というのは、図表の中では、例えば図表1-2-2などはお金の流れのフローチャートをみているわけです。これが該当するわけではないと思いますけれども、どのフローチャートで入っていますか。ちょっと教えてください。
○真鍋首席年金数理官 フロー図という意味では、厚生年金勘定で言うと17ページの図表1-2-7になりますけれども、厚生年金基金の解散等における徴収金のことは、永続的なものでないので書いていません。そういう意味で、フロー図という形では出てきません。ただ、もちろん決算上には収入として出てくるわけでして、94ページ、95ページの図表2-3-2の中の収入項目には解散厚生年金基金等徴収金という名称で出てくることになります。
○駒村委員 毎年の報告で、この年金制度の概要が多分一番詳しく説明してある資料なので、厚生年金基金の解散のお金がフローとして今どのくらい入ってきているのか。厚年基金勘定から一回、厚労省に入り、それがGPIFに行くのか。そこがまた返ってきているというお金の流れの概念図が、どこかに1カ所説明図があるととてもいいのかなと思ったのです。これは会計の流れだけですから、そこに入れるのは望ましくないということなのかなと思いましたけれども、厚年基金の解散したお金はこのフローの中には出てきていないというか、含まれてしまっているので、あえて独立したラベルを張らないということなのですね。
○真鍋首席年金数理官 第1章ではそれは書き込んではいないということです。
○駒村委員 どこかの資料にそういうのはあるのですか。この報告書の中にはないですけれども、厚生労働省全体の報告書の中に、厚年基金からのお金がこう入ってきて、GPIFの勘定にこう渡して、そこからこう返ってきて、取り崩していくというか支払っていくというお金の流れを説明する資料というのは、この中には入っていないけれども、厚生労働省のどこかの資料の中にはそれはちゃんと出ているという理解でいいのですね。だったら必要ないと思います。
○真鍋首席年金数理官 特にそういうフロー図という形でお示ししているものはないと承知しております。
ただ、それを言いますなら、保険料収入についても最終的にGPIFに行って運用されることになりますが、そこまでのフロー図はないわけで、解散厚生年金基金等徴収金についてもそういったフロー図はないということです。
○駒村委員 この報告書に必要でなければ、それはそれでいいと思います。年金を巡るお金の流れを、もしかしたら特会の帳簿をちゃんと見れば自分で追えるのかもしれませんけれども、概念図としてこの中に入れる性格のものでなければいいですが、これは年金局のどこかの資料の中に、やはり積立金にこういうルートでお金が入ってきて、GPIFにこういいう形でお金が行って、こういう形でまた戻ってきていて、一時金、短期資産や支払いのための勘定はこうなっているというような流れがあったほうが、より親切かなと思います。それをこれに入れるのはふさわしくないということであればいいですけれども、国民に対する説明としては必要なのではないかと思いましたので、あえて御質問させていただきました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
基金の廃止はもうピークを過ぎて、ほぼ限られた基金しか残っていない状況の中で、もちろん廃止というイベントについてこの部会としてもウオッチをして、何らかのものを入れ込んでいるというのはありだとは思うのですけれども、タイミング的にもちょっと遅かったなという気がしないでもないです。
ただ、駒村委員からお話がありましたように、資金運用部会なのか、企業年金部会なのかわかりませんが、我々研究者も含めて、一般国民がそういったデータをどうなっているのかという場合に、どこかにそれがあるという状況をつくってほしいという駒村委員からのお話だと思いますので、御検討いただければと思います。
それ以外にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
御参集いただいた聴講の皆様には、何も大した議論をしていないではないかと言われるかもしれませんが、我々としてはここまで作業班でかなり回数を重ねて議論してまいりまして、その一端がきょう各委員の皆様から、特定の部分、かなり御意見が出て、そういったところでとりわけ議論がなされたということでお受け取りいただければと思います。また、浅野委員からございましたけれども、実務面での体制強化ということは委員の皆様もお感じになっておられると思いますし、私からも、来年度に向けて引き続き御尽力いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日、駒村委員から御指摘があった修正の点につきましては、脚注でリファーを入れるというような形式的な部分かと思いますので、よろしければ事務局と私のほうで調整をさせていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、内容的には、これをもちまして、その修正以外の部分につきましては、本部会の平成28年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、字句の修正を行いまして、本部会の平成28年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思います。
ということで、報告についての審議は以上で終了いたしました。
ほかに何か御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、最後に、事務局から今後の日程等について、お願いいたします。
○真鍋首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整して改めて御連絡申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○菊池部会長 それでは、本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
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