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2018年6月6日 第18回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録

健康局健康課予防接種室

○日時

平成30年6月6日(水)17:00~

 

○場所

厚生労働省専用22会議室
 

○議事

 

 

○事務局 定刻になりました。ただいまより、第18回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席を頂き、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですけれども、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告を申し上げます。本日は、今現在7名の委員に御出席いただいております。森委員、野口委員からは御欠席の旨の御連絡を頂いております。釜萢委員からは少し遅れていらっしゃる旨の御連絡を頂いておりましたが、今、いらっしゃいました。現時点で厚生科学審議会の規定による定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告申し上げます。

 また、前回の部会から委員の変更がありました。国立感染症研究所、加藤委員が辞任されまして、新たに国立感染症研究所品質保証・管理部部長の石井孝司委員が任命されておりますので、御紹介を申し上げます。

○石井委員 国立感染症研究所品質保証・管理部長の石井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 ありがとうございました。また、本日は参考人として、お三方、お呼びしておりますので御紹介を申し上げます。福島県保健福祉部健康増進課保健技師の伊藤真衣参考人です。

○伊藤参考人 よろしくお願いします。

○事務局 兵庫県健康福祉部健康局疾病対策課副課長の大岡徹彦参考人です。

○大岡参考人 大岡でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 熊本県健康福祉部健康危機管理課課長補佐、小山宏美参考人です。

○小山参考人 小山と申します。よろしくお願いいたします。

○事務局 では、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので、御留意いただければと思います。

 それでは議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、参考人名簿、資料1、資料2、資料3-13-2、それから資料4から6を御用意しております。配布資料一覧と照らしまして、不足しております資料がありましたら、事務局におっしゃっていただければと思います。

 次に、審議参加に関する御報告を申し上げます。本日の議事内容におきまして、個別に調査審議される品目はありませんので、本日の議事への不参加委員はおりません。

 それでは、ここからの進行は伊藤部会長にお願い申し上げます。

○伊藤部会長 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、「2018/19シーズンのインフルエンザワクチンについて」、「ワクチンの生産・流通に関する事例等について」、「その他」となっております。まず最初に、1つ目の議題で説明を頂こうと思います。事務局から資料1についての説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、事務局より御説明をいたします。資料1を御覧ください。今年度シーズン、すなわち、2018/19シーズン向けのインフルエンザワクチン製造株については、419日に発出された健康局長通知をもって決定がされたところですが、その流れの概要について御説明します。昨年度シーズン、2017/18シーズン向けのインフルエンザワクチンについては、昨年8月に開催された本部会においても御議論を頂き、種々の安定供給対策法を行ったところです。今年度シーズンに向けては、昨年度シーズンの経験も踏まえ、株選定プロセスの見直しを行ったので、まずはその点から御説明いたします。

 2ページ、これまでのインフルエンザワクチン製造株決定プロセスは、上側の図ですが、健康局長から国立感染症研究所の所長に、次のシーズンのワクチン製造株の検討等の依頼をし、感染研内で製造株を選定して、選定した製造株を健康局長に回答し、そして健康局長は感染研の所長からの回答を踏まえて、ワクチンの製造株を決定するという旨の局長通知を発出することとなっておりました。

 2018/19シーズン向けからは、その流れを改め、感染研において製造株の特性を検討し、場合によっては複数の推奨する株を新たに設置した「季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会」に提案を頂く。感染研の御提案を基に、各候補株について、有効性及び生産可能性の観点から小委員会で御議論を頂き、小委員会として製造株として選定することが適当と考える株について、意見集約を行って頂く。そして、健康局長は、小委員会の意見を踏まえ、ワクチン製造株を決定する旨の健康局長通知を発出する、という流れで、見直しを行ったところです。

 次のページの上を御覧ください。審議会の構成ですが、新たに設置した小委員会は、この本部会の下に設けられたものということです。

 続いて、実際に開催された小委員会の概要について御説明を申し上げます。4ページでございます。小委員会は411日に開催されました。小委員会の流れについては、その下にお示ししましたが、まず初めに小委員会の設置要項等について御説明があり、本題のインフルエンザワクチンについては、2017/18シーズンの経緯の説明、それから埼玉株と香港株を用いたインフルエンザワクチンの免疫原性に関する比較検討についての報告。製造株決定の流れを変更することについての説明、製造候補株の増殖性と生産性評価法についての報告、2018/19シーズン向け季節性インフルエンザワクチン製造候補株の検討についての報告、平成30年度製造候補株の検討成績についての報告と、順次、説明や報告が行われました。

 その後、2018/19シーズン向けのワクチンの製造候補株について論点を整理して、参考人に対する質疑の後、委員により議論を頂き、最終的に小委員会としての意見の取りまとめがなされたというところです。

 小委員会の議論の要点について簡単にご説明いたします。資料の5ページ目から、スライド番号では911、埼玉株と香港株を用いたインフルエンザワクチンの免疫原性に関する比較検討ということで、参考人から御説明いただいた資料の一部です。昨年8月の本部会において、比較対象として話題になりましたH3N2の亜型株である埼玉株と香港株について、ヒトによる臨床研究を行った結果となっておりますが、抗原性解析により抗原相同性が低かった香港株の方が、埼玉株に比べて、市中流行株のA/大阪という株に対し良好な免疫原性を示したとの結果が得られました。

 これらの結果を受け、流行予測株とワクチン株との抗原性の合致度は、必ずしもワクチン有効性と相関する指標ではない、それから一般薬剤と同様に、ワクチンの有効性や安全性はヒトに基づいて判断しなければならない、といった考察が得られたところです。

 次に、資料の68ページ、製造候補株の増殖性と生産性評価法についてとありますが、メーカー側の参考人から説明を頂いた資料の一部です。季節性インフルエンザワクチンの一般的な製造方法の流れは、7ページの上の左側に記載したような流れになっております。これまで製造候補株の増殖性を評価する方法として用いてきたショ糖クッション法というものがありますが、こちらは工程の途中である精製ウイルス液までのシミュレーションとなっておりました。今般の事案を踏まえ、今回新たにスプリット工程までのシミュレーションが可能な生産性評価法が開発されました。

8ページ、生産性評価法は、要する時間等から全ての株について実施することが現実的ではないということで、A型の野性株又は低増殖の製造候補株について実施するとされております。このような報告がなされた上で、2018/19シーズン向けの候補株について、議論検討が行われました。

 9ページ、製造株の選定に関する基本的な考え方として、記載のような考え方を改めて確認いただき、この中で議論が進められたところです。来シーズン向けの製造候補株として検討対象となったものを列挙しておりますが、感染研はそれぞれの亜型について、黒字で示した株を推奨されました。AH1、それからAH3、それからB型の山形系統株については、それぞれ1候補株のみの推奨となりましたが、B型ビクトリア系統株については、感染研から2つの推奨株が提示され、この2株のどちらを選択すべきかが基本的な論点となりました。

 B型ビクトリアの2株それぞれについて特性を表にまとめたものが、次の10ページです。それぞれコロラド株については抗原相同性が米国データとして97%、一方で推定された最大生産量がシーズンを通じて約2,602万本と予想されました。一方で、メリーランド株については、動物試験による抗原相同性が米国のデータとして65%である一方で、現時点における推定最大生産量は、シーズンを通じて約2,779万本と予想されました。

 こういった特性を持つ2株について、流行性及びワクチン供給可能量の観点から検討して、どちらを選択することが適当であるかということで議論を頂きました。論点の1点目、期待される有効性については、B/ビクトリア系統の2つの候補株について、ヒトにおける有効性に関するデータは存在しないのですが、いずれの株もWHOの推奨株に挙げられており、2つの候補株ともヒトで一定の有効性が期待できるものと考えられました。

 論点の2点目、ワクチンの供給可能量については、過去4年間の実績に照らした場合、コロラド株では推定使用量及び122週時点の医療機関納入量を充足できない場合がある一方、メリーランド株ではいずれも充足できることが期待できるということが示されました。

 これらの状況を踏まえ、委員の先生方に御議論を頂きました。11ページの下ですが、B型ビクトリア系統の候補2株から、どちらを選択するかどうかという点については、基本的な考え方が一番大事であって、4種類の製造株に係る有益性の総和を考慮すると、コロラド株でなくてもよいのではないか、あるいは、可能な限り収量を予測して、最大の収量を確保するという点ではメリーランド株を選ぶべきではないかといった意見が委員の大勢を占めたところです。またこのほか、今後の検討課題に対しても、資料に記載したような御意見を頂いたところです。

 12ページ、最終的に小委員会としては、記載の4つの製造候補株を選定することが適当と考えるとされ、論点であったB型ビクトリア系統については、記載のB/メリーランド/15/2016(NYMC BX-69A)という株が適当とされたところです。また付記事項として、安定供給対策についても継続して実施していくべきであるとされました。

 この小委員会の意見を踏まえ、最後の13ページですが、本年419日に健康局長通知を発出し、2018/19シーズン向けのインフルエンザワクチン製造株が決定されたところです。事務局からの説明は以上です。

○伊藤部会長 小委員会で廣田先生の出されたA/H3N2に対する2つのワクチンの有効性を見ると、野性株の中和抗体で判断する限り、抗原相同性ではなかなか判断しにくいということが前提にあって、B型のセレクションに関して供給可能量を一番大きな判断材料として選定されたとのお話を伺っております。

 川西先生は、季節性インフルエンザの製造株に関する小委員会の委員長をお務めになられておりますが、川西先生のほうから何かコメントを頂けますでしょうか。

○川西委員 小委員会での議論ですが、去年の場合は供給量がどう見ても足りそうもないということで、抗原の相同性の結果より、とにかく供給量を優先したということでした。今回も蓋を開けてみたら似たような状況ではあるのだけれども、抗原の相同性についても供給量についても、2つの間の差は去年ほどはありませんでした。

 ただ、廣田先生のデータ等々もあって、フェレット血清を使った抗原相同性の判定というのは絶対的なものとは思えないし、供給量がやはり少しでも多いほうがいいのではというのが委員の大勢の意見ということでした。ただし一部の委員からは、このぐらいだったら使用量を少なくするような工夫、例えば小児の使用量とか、例えば接種回数を減らすようなことを、もっと徹底することも考えていけば、また判断基準も違うのではないかということを示唆する形での御意見は出ました。

 いずれにせよ、ほとんどの委員は、今回の場合は供給量を優先すべきだということで、委員の大勢としてはそういう意見だったという結論です。

○伊藤部会長 ありがとうございます。川西先生以外にも委員をお務めの方がいらっしゃいますが、何か御意見などありますか。追加意見は大丈夫ですか。ありがとうございます。では、資料1については以上でよろしいでしょうか。

 2つ目の議題「ワクチンの生産・流通に関する事例等について」に移りたいと思いますが、まず事務局のほうから資料の説明をお願いいたします。

○事務局 それでは事務局よりご説明いたします。資料2を御覧ください。資料2は、平成26年に告示された「予防接種に関する基本的な計画」のうち、本日のものは関連部分ということで、ワクチンの供給に関する部分を抜粋したものです。そのうち第二ですが、国や都道府県、市町村、医療関係者並びにワクチンの製造販売業者及び卸売販売業者、こういった関係者のそれぞれについて役割の記載をしております。

 2ページ、第五の項目四「ワクチンの生産体制及び流通体制」です。その中の一部、下線を引いていますが、例えば「感染症の流行時等、一時的にワクチンの需給が逼迫した場合には、(一部中略)国、都道府県及び市町村の関与が不可欠である」といったことなどや、「国、都道府県及び市町村が医師会及び卸売販売業者等関係者と連携して、ワクチンが偏在しないよう取り組むことを通じ、ワクチンの安定供給に努める必要がある」といったことなどが記載されております。

 基本的な計画としては、このように記載されておりますが、ここ2年程度の間にワクチンの供給に関する事案が連続して発生しております。本部会においても、委員の先生方から度々御指摘を頂いてきたところです。供給問題に関して、どのような取組ができるかというところは今後も考えていく必要がありますが、近年の具体的な事例について、ここで少し振り返ってみたいと思います。

 資料3-1を御覧ください。資料3-1では大きく4つの事例を載せました。まず事例の1つ目は、平成28年、2年前の4月に発生した熊本地震です。この熊本地震ではワクチンの製造販売業者の1つである一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)が被災しました。時間の経過に伴い設備は順次復旧しましたが、B型肝炎ワクチンやインフルエンザHAワクチンにおいて化血研製剤の供給に影響が生じたところです。ちょうどこの平成28年は、B型肝炎ワクチンについて、10月から定期接種化がなされた年でした。化血研製剤については、主として0.25mL製剤が流通する時期が生じる等の影響が出たところですが、他社の増産等により対応することができたといった事例です。

 事例の2つ目ですが、2年前の平成288月頃より発生した麻しんの広域的発生による影響です。この年の更に1年前の年の秋頃、MRワクチンの3製造販売業者のうち、1業者の製品が供給されない状況となり、残りの2業者により必要なワクチンの量を確保している状況となっておりました。平成288月頃、麻しんの広域的な発生があったことから、任意接種に基づくMRワクチンの使用量の増大が予想されました。

 MRワクチンの全国的な不足は生じない見込みということでしたが、一部の地域や医療機関においてMRワクチンの偏在等が懸念されたところです。MRワクチンの必要な供給量を確保し、地域におけるワクチンの偏在等を解消するため、都道府県等の自治体や製造販売業者、そして卸売販売業者等の御協力を得ながら、前倒し出荷の要請や偏在等に関する情報の共有など、必要な対応を行ったところです。

 次の2ページ目の上、事例の3つ目は、昨年の平成295月以降に発生した日本脳炎ワクチンに関する事例です。日本脳炎ワクチン、化血研製剤については、熊本地震当初の被災状況では安定供給可能と判断されていたところですが、化血研の想定を上回る需要が生じたことなどから、一定期間供給がなされない見込みとなり、その旨が昨年の平成295月に周知されたところです。

 日本脳炎ワクチンについては、他社の製品もありますので、全国的な不足は生じない見込みということでしたが、製造販売業者の異なる製剤への切替え等に伴い、一部の地域や医療機関において日本脳炎ワクチンの偏在等が発生するということが懸念されました。日本脳炎ワクチンに関しては、平成29年、昨年の11月に、希望する都道府県管内におけるワクチンの円滑な流通に役立てていただくため、各医療機関におけるワクチンの納入量を月別に整理した情報を活用することとして、関連の事務連絡を発出するというような取組も行われました。なお、化血研製剤の供給は、今年、平成301月には再開されております。

 そして事例の4つ目ですが、平成299月以降に発生し、先ほども少し触れましたが、インフルエンザワクチンに関する事例です。2017/18シーズン向けインフルエンザワクチンの供給については、当初選定された製造株の一部について十分な量の製造が困難であるということが判明しました。ワクチンの製造株の切替えを行ったこと等の影響により、前シーズンよりも供給が遅れることとなりました。

 平成299月に発出した通知では、医療機関に対して13歳以上の方は原則1回注射としていただくこと、必要量に見合う量のワクチンを購入していただくこと等について要請をしたほか、ワクチンの供給関係者等にも、累次にわたって出荷の前倒しや、ワクチンの偏在等が生じないよう要請や通知発出を行ってきました。これらの事例に関する詳細については、この資料の3ページ以降に参考資料として付けておりますので、必要の際には御参考にしていただければと思います。

 また、この4つの事例には含めておりませんが、現在、麻しんの発生に伴い、MRワクチンの需給状況に関心が集まっている状況と考えておりますので、その点についても現在進行形の事例の1つとして併せて説明したいと思います。資料3-2に移ります。麻しんの接種に用いるワクチンについては、原則としてMRワクチンを使用するものと考えており、厚生労働省としてもMRワクチンの需給状況について、これまでも継続的に留意してきたところです。MRワクチンの需給状況について現在の状況を端的に申し上げると、資料の1ページ目の下に書いてありますが、現時点においてMRワクチンの全国的な不足は生じない見込みであると考えております。

 具体的なグラフで説明致します。次の2ページ目の上のグラフですが、こちらはMRワクチンの需給実績と見込みを、今年の3月から8月までの状況として示したものです。このグラフは時々何回か説明していますが、薄い色の方の棒グラフが供給側の量を示しており、濃い方の棒グラフが需要側の量を示しております。同じ月で比較した場合に、薄い色の供給側が、濃い色の需要側を上回っている場合には、需給バランスが保たれていると考えられます。

 この図ですが、今年3月及び4月の実績と、5月以降の需給の見込みを示しております。ただし、この5月の需要の所ですが、これは5月の冒頭のグラフになっておりますので、最新の状況と少し異なっているかもしれません。その点については、また後で説明します。3月、4月の実績の所を御覧いただくと、需要側を示す医療機関納入量の濃い色のバーですが、4月はかなり増大しているという状況があります。4月に関して言えば、その需要の増があっても41か月の需給バランスは保たれており、月末の在庫も十分に存在する状況ということでした。5月以降の見込みですが、このグラフ上は、先ほども少し申し上げたように、例年の需要水準を踏まえて推定されております。これは5月当初の見込みであり、5月の需要については、実際の状況が今は必ずしも反映されている状況ではないということです。例年の状況を踏まえて、ここから少し需要が伸びたとしても、まだ対応できる余力はあると考えております。

 2ページ目の下ですが、更に最新の状況として、518日という月の途中の状況ですけれども、518日現在の状況について説明したいと思います。グラフの所でも申し上げましたが、真ん中の医療機関納入量実績の対前年比%という所を御覧ください。4月の医療機関納入量実績は、昨年と比べて約217%と2倍を超えていたという状況でした。518日までの状況ですが、途中実績ながら、この分母のほうが昨年の51か月分に対して、今年の18日までの実績で、既に約210%に達しているということで、かなり多い量が実際に医療機関に納入されていることが見て取れるかと思います。

 さらに518日時点、それだけ納入された後でも、一番下ですが、流通過程上に存在すると考えられる在庫量は約46万本となっており、さらにこの18日時点では見込みと書いていますが、5月末までには追加のワクチン供給もなされているということで、現時点においても、今後の見通しとして全国的な不足は生じない見込みと考えております。

 次の3ページ目ですが、MRワクチンの任意接種に関して、少し誤解が一部であるかもしれないので、この機会に改めて説明したいと考えております。麻しんの抗体保有状況が、3ページ目の上のグラフのようになっております。MRワクチンの定期接種の世代として、よく1回接種世代とか2回接種世代といった説明がなされることがありますが、その1回接種世代あるいは2回接種世代にかかわらず、2歳以上ではどの年齢においても95%以上が陽性抗体価を満たしているとのことで、現時点においては、1回接種世代であるから感染リスクが高いといった情報については誤りであると考えております。厚生労働省としても、正確な情報提供に努めていきたいと考えております。

 ここまでが、今、最新の事例ということですが、ここで資料3-12ページ目の下の所に戻ってください。今まで事例について説明してきましたが、こういった事例を踏まえると、ワクチンの供給に関する課題を検討するに当たっては、以下のような論点が考えられるということで、この点を最後に説明いたします。

 大きく3つ書いておりますが、まず1つ目として、ワクチンの全般的な需給に関して、例えば自然災害を含む不測の事態が生じた場合について、どのような対応が考えられるかどうかといった視点があろうかと思います。また、大きな2つ目として、ワクチンの流通と受発注に関して、正確かつ適切な情報の共有をどのように確保するか、あるいは、卸売販売業者等が医療機関からの必要な発注に適切に対応するためには、どのような対応が考えられるかどうか、そして通常の取引先卸売販売業者から、必要なワクチンが入手できない場合に、医療機関としてどのように対処できるかどうかといった視点が考えられるかと思います。さらに大きな3つ目として、国、地方自治体の役割については、先ほど冒頭に説明したように、基本計画には役割について記載がなされていますが、ワクチンの供給に課題が生じた場合に、各自治体の役割について、どのように考えるかということについても議論していく必要があるものと考えられます。事務局からの説明は以上です。

○伊藤部会長 御説明ありがとうございました。今の御説明に対して、御質問等ありますか。

○細矢委員 2点お聞かせください。資料3-22ページの上のほうのスライド番号3になるのですが、需給実績及び見込みの表の中で、薄いバーのほうは合計で出していますね。在庫量と出荷量の和で出しているのですが、在庫量と出荷量を分けて、棒グラフ1本でいいのですが、どのぐらい在庫があって、どのぐらいが供給量なのかというのが分かるようにしていただけると、例えば突然の流行があって需要が増えた場合でも、常にこれぐらいは供給されて、かつ在庫がこれだけあるのだから大丈夫ですよと説明がしやすくなると思うのです。せっかくの図ですから、そのような形にできないかなというのが第1点です。

 第2点は、3ページの上、先ほど1回接種であれば感染リスクは高くならないのだというお話でした。確かに感染リスクとしてはそれほど高くはならないかもしれないのですが、1回接種の場合ですと、やはり修飾麻しん等の感染はするのです。明らかな発症をしないようなことがあるのですが、保菌者となってヒトに感染させるといいますか、流行を止められなくなる可能性があるのではないかと思うのです。ですから、1回あれば十分だよというのではなくて、やはりMRワクチンについては2回接種することが必要ですよと、私は言っていただきたい。特に医療従事者とか、教育関係者とか、そういった多数の人に接触するような職業の場合には、2回接種を勧めたほうがいいのではないかと思います。

○伊藤部会長 事務局から、何か御意見はありますか。

○事務局 ありがとうございます。今日は自治体の方がいらっしゃっていますので、是非、この供給実績の関係で、自治体からのいろいろな経験をお話いただく機会に時間を当てたいなと考えておりますが、2点、簡潔にお答えしたいと思います。月の最初の在庫量とその月の出荷量の和を足した形でお示ししているものを、分けたほうが分かりやすいのではないかという点については、しっかり検討したいと思います。2回接種の必要性のことに関しては、恐らく実際に1回接種よりも2回接種のほうが着実に免疫がつけられるという観点からは、それは大事だということで、それは指針のほうでも述べているところですが、逆に1回接種世代の方たちに若干、不安が広がりすぎているかなというところがありまして、今の抗体保有率の関係からすれば、冷静に対応する必要があるのではないかというところで説明申し上げたところです。いずれにしても、適切な情報提供に努めていきたいと考えております。よろしくお願いします。

○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。

○釜萢委員 御説明いただいた資料3-1の下段の「麻しんの広域的発生による影響」、平成288月からのところですが、最終的には定期接種で本来、例えばMR2期を受けなければいけない時期にワクチンが供給されなくて、MR2期が受けられなかったという事例は、幸いにほとんど出なかったのだろうと思います。それは厚労省の御判断が、結果としては妥当であったということになるのかもしれませんが、医療現場では特に急な麻しん、あるいは風しんもそうですが、流行が起こる時期によって、MRのワクチンは2期の接種の時期が331日までというように決まるものですから、流行が出るのが、その最後の時期に近くなってしまうと、医療現場では果たして打ち終えることができるのだろうかという不安が大変強く出ます。

 これを変更するためには、政令の改正が必要ということで、行政の手続としてはなかなか大変だということも十分理解をしておりますが、MR2期は何しろ331日で、学年が変わってしまうと駄目になってしまうので、そこのところがもうちょっと柔軟に対応できるような方策を考えておいていただけると、医療現場はもうちょっと安心してできると思います。その後、日本脳炎の事例が出てきていますが、日本脳炎については接種可能な時期が割と幅が広いので、その間には何とかまた供給が追い付いてくる可能性が高いのですが、MRについては何しろ2期は1年の間に全部やらなければいけないものですから、そこのところの対応について、更に厚労省に御検討を賜りたいと思います。

○事務局 本来、定期接種で行う予防接種に関して、供給の不安が起こるということがないように努めなければならないところ、近年、供給の不安の関係が多く、御迷惑をお掛けしていることを申し訳なく思っております。各予防接種の接種時期に関しては、患者さんの発生動向とか接種の方法といったことを考えて、政令によって接種時期を定めているということですが、こういったいろいろな事案も含めて、今後どうあるべきかということに関しては、基本方針部会を中心に議論されていくことになるかなと考えておりますので、その中で論点として念頭に置いておきたいと思います。ありがとうございます。

○伊藤部会長 よろしいでしょうか。麻しんの感染が出てきていますが、東京オリンピックを控えて、できるだけそういう事態が起きないようにするというのは皆さんの願いだと思いますが、今後、知恵を集めて安定供給に努めていきたいと思いますが、山口先生、何かその辺は。

○山口委員 3-12ページに書いていただいていますように、通常の取引販売業者から必要なワクチンが入手できない場合という、これはワクチンの流通の特殊性があるのかなと、ちょっと思ったのです。参考資料の10ページに供給の流れをちょっと書いていただいていて、恐らくそういうある業者からの流通のところが割と止まりやすかったりすると、そこの医療機関で入手できないとか、そういうことがあるのかなと思ったのです。せっかくですので、流通とその辺の、総量としては十分間に合っているのに、こういうことが起きる可能性もあるという話かなと思うので、その辺をちょっと御説明いただけると、次の後の議論でもやりやすいかなと思います。

○事務局 今回、各自治体のほうからヒアリングをしていただく前に、少し全体としての状況を共有したほうがいいかなということで、事務局からの説明を前に挟んだ関係で、少しそれに関する質疑の時間を取ってしまっておりますが、可能であれば、各自治体における経験も踏まえた上で、流通の在り方についてはその後、総合的に議論いただければと考えております。今の御指摘の点は、正に我々としても対策を進めていく上でよく直面する課題で、正に血管のように、ワクチンが全身に、日本全国に届けられている中で、1か所でも目詰まりがあると、その先では非常に大きな不足が生じるということもあるなと考えております。その点も含めて、ヒアリングを踏まえた上で、また議論いただければと考えております。

○伊藤部会長 今までの御説明は、これから御説明いただく都道府県からの説明の前段というか、総論の部分だと思いますので、まず自治体から御説明いただいた上で、また最後に議論させていただければと思います。

 本日は、兵庫県、熊本県、福島県の3県の方に参考人としてお越しいただいております。過去の事例を踏まえて、順次御発表いただければと思います。まず、兵庫県の大岡参考人の御発表をお願いいたします。質疑については最後にまとめて行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○大岡参考人 兵庫県の疾病対策課の大岡と申します。本日は、ちょっとお時間を頂戴いたしまして、平成188月以降、麻しん患者が発生したことによる兵庫県のMRワクチンの不足事例に係る対応について、簡単に説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、このスライドは、当時のMRワクチンに係る背景に関するスライドです。先ほど厚生労働省の方からも御説明があったと思うのですが、平成2710月に、ここの業者が製造するMRワクチンについて、「力価低下がある」と書いてありますが、「力価低下の可能性がある」と御修正いただけたらと思います。力価低下の可能性があることが判明したために、自主回収を行っていると。その後、力価低下の原因が究明された、具体的には実際には力価低下は起こっていなかったということで、そのままでも十分売っても構わないということが分かったのですが、実際には平成30年、今年の4月に出荷が再開されていることを確認しております。

 このスライドは、当時のMRワクチンの不足感が非常に生じたという背景をまとめたものです。大きく分けて2つあります。1つは、平成288月中旬以降、関西国際空港の利用者であるとか、事務所職員、従事者を中心に、麻しんの集団感染が発生しております。これは最終的には33名の患者さんということになりました。一方で、平成289月に兵庫県尼崎市内の同一保育施設から麻しん患者が発生しており、最終的には11名の患者さんが発生したということになっております。ここには書いてありませんが、更にはこの同時期に千葉県でも10名の麻しん患者が発生しました。こういう状況の中で、特に大阪府と兵庫県を中心にMRワクチンの需要が増加して、一挙にMRワクチンの不足感が増加したという背景があります。

 この背景を基に兵庫県の具体的な対応について説明申し上げるわけですが、大きく分けて5つあります。1つは情報の共有化、1つは関係者会議の実施、1つは定期接種の実施状況の把握、1つは関係者への周知・依頼・要望、そして5つ目はMRワクチンの供給調整という5点です。このスライドは、その第1点目、対応1、情報共有ということです。具体的には、MRワクチンの供給状況や供給予定についての情報提供なのですが、この背景は県内の一部の市町や医療機関より、MRワクチンの入手が困難という情報提供がありました。これを受けて、同県では国に状況を報告するとともにワクチンの製造メーカーに出荷計画を確認して、その結果を市町、県の医師会に情報提供させていただいたところです。

 対応2、関係者会議ですが、具体的には平成28年に3回実施しております。1018日と1111日、そして128日です。1回目は、医薬品の流通を所管している薬務課という所があるのですが、その県の薬務課が主催して、医師会、医薬品卸業協会、ワクチンの製造メーカー、そして当課、疾病対策課のほうでワクチンの供給会議を行い、現状の御説明とか、その現場でどういう状況かということの意見集約といったようなことをしております。2番目、1111日ですが、疾病対策課が主催となったMRワクチン供給に係る関係者の打合せ会議も、同じようなメンバーでしております。ここでも、そういう不足感に対してどういった対応を取ればいいのかということを、基本的にはどの立場、ドクターからも、医薬品卸業協会からも、メーカーからも、そして行政機関からも、共通認識を持って課題に対応していこうではないかというような会議でした。128日については、医師会の主催でワクチンの供給会議をしております。現在のMRワクチンについての製造メーカーから、どのような供給体制で、どのようなことを行っているかというような具体的な説明があったところです。

 対応3、定期接種実施状況の把握ということで、3回調査しております。1回目が9月時点のもの、2回目が平成2812月末時点、そして平成293月末時点です。調査内容は、基本的には対象者数、月別の定期接種実施状況、これは県内の市町に対して調査を行っておりまして、月別のMRワクチンの出荷数については、医薬品の卸業協会を通じて各会員の卸売販売業者の方に御協力いただいたということです。2回目の調査、12月末時点では、それに加えてMRワクチンの市場流通の在庫量、これは主に卸に対して調査・協力をお願いして、医療機関についても県庁から直接、医療機関のほうに調査を実施させていただいて、どのような形で購入されているのか等の調査を実施したところです。3回目は、また戻ってどういう状況か、第1回調査と同じような項目で実施いたしました。

 これが第2回目の調査の結果の概要なのですが、平成289月、赤で書いてある所を御覧いただいたら分かるとおり、平成27年度、一番右の欄に「参考:MRワクチンの出荷量(H27)」とありますが、平成27年度と比較しても、多くのワクチンが出荷されていたと。不足感があった9月は、特に定期接種数は大幅に増加、9月から10月については任意接種も、他の月と比較して大幅に増加していることが分かっております。

 このスライドについては、当時の調査の結果、必要ワクチンに対する供給可能なワクチンは上回っているという結論に達して、すごく不足感があったのですが、実際の供給量のほうが必要量よりも上回っていることも、この調査の結果、判明しました。

 対応4については、関係者への周知・依頼・要望ということです。平成2899日に厚労省から各都道府県、日本医師会、日本医薬品卸売連合会、日本ワクチン産業協会のほうに、「麻しんの広域的発生に伴う乾燥弱毒性麻しん風しん混合ワクチンの供給に係る対応について」という通知文が発出されました。これを受けて、当課でも県内の大学、短期大学、専修学校、各種学校に「風しん・麻しんの予防接種の実施について」ということで協力依頼しております。平成29127日においても、特に「第2期対象者に対する積極的な勧奨及びワクチンの供給等について」ということで、もう一度通知を出しております。平成29216日には、近畿26県において、厚生労働省健康局長宛てに「麻しんワクチンの不足について」という要望の中で、先ほど少しお話が出ましたとおり、331日で定期接種の期限が切れる方に対して、そういうことになってはいけないので、経過措置について要望を出させていただいているところです。なお、近畿の各医師会のほうからも要望を出していただいており、行政と医師会のほうから国のほうに経過措置の要望を出させていただきました。

 対応5、MRワクチンの供給調整、ここが具体的に兵庫県が供給調整を実際に行ったところです。1点目は、一番最初に申しました背景の中で、尼崎市内における麻しん患者が複数発生しました。それによって、尼崎市内のMRワクチンの需要が大幅に増えた結果、不足しているということが市からも要望がありました。結果、1期の対象者用のMRワクチン300本について、国のほうに供給の調整を依頼したところです。

 2点目の個別調整の実施、これは平成289月下旬からですが、医療機関のほうからワクチンが不足してどうしても手に入らないということがありましたので、その医療機関に対して最終の納品日と納品本数、現在の在庫本数、今後どれだけ必要なのかという必要本数などを確認した上で、本県を通じて、県の医薬品卸業協会へ納品状況の改善を依頼させていただきました。

 3点目、実際のMRワクチンの供給調整の実施ということで、平成29213日から行ったのですが、具体的には県内の2市から年度内の不足が見込まれる場合に、卸業協会を通じて供給調整を依頼したところです。そのときに、神戸新聞という地元の新聞なのですが、「はしかワクチン異例の供給調整」というような新聞記事にもなりました。実際にどれだけ供給調整を行ったかということなのですが、この2市について、計72本のワクチンを調整したところです。そこに具体的な市が書いてあるのですが、小野市という県の中ほどの市に対しては36本、加古川市という明石の隣の市については2回、平成2933日と314日に、それぞれ27本、9本、計36本、合計72本について供給調整をして、卸業協会のほうから速やかにワクチンが供給されて、事無きを得たという結果になっております。

 このような当時のMRワクチンの不足懸念を経験して、どういうことが必要なのか、感じたことをここにまとめております。1つは、正確な実態を把握すること。把握することによって、どの部分に力を入れて対応すればいいのかが見えてくるということです。次に、関係者の連携を強化すること。医師会や卸業協会と情報の共有化を図ることで、優先順位などの共通の認識を持つことが可能となりました。3番目は、必要に応じて供給調整の実施を行うこと。12、つまり実態を把握することと関係者の連携を強化することによって、実際のワクチンの供給調整も比較的スムーズに行えたのではないかと思っております。また、このときは、先ほども申しましたように、近畿府県から国に定期接種の経過措置の延長の要望も行っています。1から3の先ほど申しましたようなことを実施していく上では、国と都道府県の連携は欠かせないものであるということも付け加えさせていただきたいと思います。

 以上ですが、先ほど厚生労働省のほうからも御説明がありましたように、平成29年に入りましても日本脳炎ワクチンの件、あるいは季節性インフルエンザの件、そして最近では沖縄発のMRワクチンの不足感、例年こういうワクチンの不足感があって、現場では右往左往しているという実態もあります。特にMRワクチンについては、麻しんが兵庫県内でも1名の患者が発生したということもあって、余計にまた不足感があって、問合せも多くなっている状況です。今後とも、確実な定期予防接種の実施に対応するためのワクチンの安定供給に御尽力いただきますことをお願いいたしまして、簡単ではありますが、私からの説明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○伊藤部会長 ありがとうございました。御質問は後でまとめていただくことにいたしまして、続いて、熊本県の小山参考人から御発表をお願いいたします。

○小山参考人 本日は、このような機会を頂きましてありがとうございます。熊本県健康危機管理課の小山と申します。熊本県では、平成28年度のMRワクチン、平成29年度の日本脳炎ワクチンに関して、安定供給に向けた取組みを行いましたので、それを報告いたします。本日、スライドのボリュームがありますので、少し駆け足にはなるかと思いますが、説明していきます。

 平成28年度MRワクチンですが、本県でも8月半ば過ぎぐらいから、ワクチン不足に関する問合せが目立つようになりました。この時点で、厚生労働省のほうに御報告をしましたが、その時点では熊本県及び大分県からのみの報告で、総量としての供給不足はないでしょうというお答えを頂きました。しかしながら、その後も県内の市町村からは問合せが相次ぎ、県内の卸売業者に関しても情報をお聞きしたところ、若干不足気味とのお返事を頂きました。

 そうこうしているうちに、先ほどもありましたが、99日の事務連絡が届きまして、その中で「都道府県において必要な対応を行っていただくようお願いします」という文言がありましたので、本県でも何らかの調整をしていかなければいけないと考えました。そこで、卸売業者に対する在庫調査、それから市町村あるいは医療機関における直接の不足量の調査、それらを踏まえて安定供給に向けた調整をしようと考えました。熊本県では、大体、定期接種の対象者が32,000人ぐらいで推移しております。

 そこで、取組みの1番目ですが、まず在庫調査を行いました。過去の動向を見るために、平成27年の第一三共社のMRワクチンの自主回収の影響を考慮して、過去2年分の実際の在庫調査も併せて行いました。また、現状を把握するということで、その年からは916日から週ごとに調査も行っております。実際の出荷状況がこちらになりますが、3年を比較すると上半期の出荷総数に関しては、平成28年度も決して遜色がないということは見て取れます。一方で平成26年度を見ますと、第一三共社のシェア割合が県内では約4分の1ありました。これらの状況から、4点ほど県内の状況をまとめましたが、実際としては大きく2点あると思います。

 まず、県内のワクチンのシェアに関しては偏りがあるということです。次に、平成28年の接種者の動きについて、本県では地震がありましたので、4月、5月の接種者が少なくて、例年4月、5月の多い分が後ろ倒しになり、7月、8月、9月にかけて増えていました。そこに麻しんの報道が重なり、更に需要と供給が悪くなってきたというところを考えました。ワクチン不足の原因としては以上2つになりますが、まとめますと、第一三共分の自主回収に伴う阪大微研と武田の増産のうち、武田の増産がシェアの割合からして恩恵が少なかったことと、需給のバランスが崩れていたことが原因だと考えました。

 そこで、本県では9月以降、実際の調査から不足しているエリアをあぶり出して、それらの情報を卸売業者に情報提供して調整を依頼していきました。それでもなかなか解消ができませんで、11月には管内医療機関の接種待機者数を市町村に照会していただいて、月ごとの定期接種者の照会なども行いました。こういう情報は、提供元の同意を得て、直接、薬卸売業者のほうにも情報を提供しております。これらについては1月まで続けながら、現場でお困りになっている小児科の医療機関等に関しても現状の説明、それから私たちがどのように対応しているかを説明して、協力を依頼しました。資料6ページの上段ですが、実際にこのような形で接種者が推移しておりました。

 MR用ワクチン不足に対する本県における課題なのですが、本県は9社の卸売業者がありますが、特に武田製品に関しては直接取り扱える業者が2社しかなかったということで、増産の影響は偏在があり、熊本県全体ではその増産の影響が乏しかったということが挙げられます。それから、先ほど少し流通の話が出てきましたが、薬剤の販売業者と卸売業者、それから卸売業者と医療機関の取引は民間同士になり、どうしても行政が過度に介入することは困難となりますので、お願いベースの調整となりました。あと、特に2期ですが、上半期の未接種者に対し、下半期の初めに一斉に勧奨の通知がいくということがありましたので、特にこの8月、9月、10月辺りのバランスの悪い時期に、接種勧奨で更にバランスが悪くなるといけないということで、一斉通知の在り方について市町村と対応するように調整をしました。

 平成29年度の日本脳炎ワクチンの対応ですが、基本的にやったことは、前年のMRワクチンと同様です。やはり5月から県内には市町村、医療機関からワクチンに関するお問合せが増えてまいりました。本県でも、前年のMRワクチン同様に、過去の動向調査、入出荷の在庫調査を行うと同時に、それらの情報を市町村や薬卸売業者に情報を提供して、情報の共有を図ってまいりました。本県での日本脳炎ワクチンの接種者は過去2年分調査し、接種者の動向を把握しました。今回、5月に不足の相談が増えて、一番ピークになる夏シーズン直前でしたので、いろいろと対応が必要かと考えました。

 本県における日本脳炎ワクチンの出荷量に関してですが、本県には化血研がありますので、圧倒的に化血研のエンセバックがシェアを占めているという状況がありました。それに関して、本県での状況としては、ジェービックの取扱いの業者が少ないことに加えて、取り扱っていない業者もありました。そこに対しては、前年の例からエンセバックの増産の恩恵が受けられないという現状が予測されましたので、このような現状に関して、622日の時点で厚生労働省に報告・説明させていただきました。そのときに厚生労働省からも、その当時の指示事項について御説明いただきましたが、改めて本県でのワクチンのシェア割合のこと等がありますので、その辺の調整をお願いいたしました。

 その後も、MRワクチンのときと同様、接種待機者数等を調査することを行いました。接種待機者数を調べると、医療機関からは1,000名ほどの待機者がいるという情報にはなりましたが、市町村への不足の報告は特段上がっていなかったという現状がありました。なお、この間の日本脳炎ワクチンの県内の在庫量ですが、一定数以上の在庫が常にあるという状況でした。さらに、2月末まで在庫調査を行いましたが、その間、特段ワクチンに関する問合せはありませんでした。これに関しては、先ほども少しお話が出ていたとおり、大きな問題とならなかった理由は、定期接種から外れる恐れのあるケースが少なかったためだと思われます。

 県として心掛けたことは、卸売業者等とは日頃から顔の見える関係を構築すること、市町村、医療機関も含めますが、とは、このような調査をした情報を提供・共有し、それから何をすべきか、一緒に調整することといったことでした。厚生労働省との調整に関しては、できるだけ具体的な要望を絞って伝えることを心掛けました。以上が熊本県の報告になります。御清聴ありがとうございました。

○伊藤部会長 ありがとうございました。引き続きまして、福島県の伊藤参考人から御説明いただいて、その後で、各県の方々に質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○伊藤参考人 福島県保健福祉部健康増進課で保健師をしている伊藤と申します。私からは、日本脳炎ワクチンの供給実績に係る情報提供の活用について御報告いたします。よろしくお願いいたします。

 日本脳炎ワクチンに関する本県の状況ですが、平成28年度の途中、大体夏頃から日本脳炎ワクチンの不足に関する相談が健康増進課へ寄せられるようになっていました。月に1件から4件のペースで相談が継続していたことから、健康増進課と福島県医師会との協議で、福島県内におけるワクチンの供給状況の把握体制を取り決めました。この供給状況の把握体制については、資料の2ページの参考1のとおりとしています。この図が、福島県におけるワクチン供給状況の把握体制です。これは日本脳炎ワクチンに限ったものではなく、日本脳炎ワクチン等の供給状況の把握体制としております。

 参考1の図を具体的に御説明いたします。ワクチン不足の相談が健康増進課へ寄せられた場合の対応の流れですが、まず1番目として、市町村や各保健福祉事務所等を通して健康増進課に入ってきたワクチン不足の情報を、2番として薬務課に情報提供します。薬務課というのは県の薬務課なのですが、ワクチンの供給を担当しております。薬務課では、毎日各卸業者より在庫状況の報告をもらっているため、その情報を健康増進課に頂きます。3番目に、薬務課より提供いただいた情報を、相談のあった市町村や保健福祉事務所にフィードバックしております。4番目として、特定の地域からの相談が続いたり、相談が立て続いたりする場合には、2の部分の薬務課からの卸組合の状況把握に加えて、より詳細な流通状況を薬務課より卸組合に確認していただいております。

 この流れを基に、相談の一件一件に対応しておりましたが、相談件数が増加していくことに伴い、次のことを感じるようになりました。まず1つ目、相談が続いているのですが、ほとんどが同じ市町村また同じ医療機関からの相談であるということ。2つ目に、県内でワクチンの偏在が生じているのかもしれないと感じる反面、特定の市町村からの相談、特定の医療機関からの相談で全県的な調査をすべきなのか、それともまずは、市町村主体で市町村内のワクチンの状況を把握していただくべきかということ。3つ目に、一般住民から、「かかりつけ医からワクチンがないと言われたので接種できる医療機関を教えてもらえないか」という相談が保健福祉事務所や県庁の健康増進課にも入っていたのですが、提供できる情報がないということ。4つ目は、卸組合などの情報で不足の状況は見られない、不足の見込みはないという話ですので、それを相談元にお伝えしても市町村はなかなか納得できないという回答。これらの状況から全県的な在庫状況の調査が必要か、まずは各市町村に管内医療機関の状況を調査してもらうかなど、東北各県から情報収集するなどしておりましたが、健康増進課でも対応に苦慮しておりました。

 そのような中、平成291124日に、厚生労働省より「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの供給実績に係る情報提供及びその活用について」という事務連絡がありました。健康増進課としては、相談が相次いでいたこともあり、情報提供を希望したいと考え、県の薬務課と協議した上で、厚生労働省からの情報提供を依頼することとしました。厚生労働省からの情報提供を受けてからは、厚生労働省からの事務連絡に添付されていた「日本脳炎ワクチンの供給実績に係る情報提供及びその活用に係る具体的手順等」に沿って対応しております。

 具体的には、情報提供を県で受けた後に市町村へ速やかに情報提供するとともに、卸販売業者へ薬務課を通して情報提供をしております。その他としては、健康増進課で持っている情報と照らし合わせて情報の整理を行っております。現在までに、厚生労働省より平成2912月、平成302月、3月、5月の計6回の情報提供がありました。

 厚生労働省からの情報提供を受け、健康増進課より関係機関に対し6回の情報提供を行っております。健康増進課から情報提供を行っている関係機関については、6ページ下段のとおりとなっておりますが、中核市を含む市町村と県の薬務課と県内の各保健福祉事務所に情報提供をしております。なお、前述しているとおり、各卸販売業者へは薬務課より情報提供をしております。関係機関への情報提供と併せて行っている健康増進課の情報整理の一部なのですが、7ページ上段にありますように各保健福祉事務所ごとのデータ整理及び、予防接種実施状況調査、これは厚生労働省でやっていたものなのですが、それのデータとの比較などを行っております。

 7ページの下、厚生労働省からの情報提供を受けた結果・所感です。情報を関係機関に提供するようになってから、日本脳炎ワクチンの不足に関する相談が全くなくなりました。その理由としては、各医療機関の納入状況を市町村が把握できるようになったため、住民などからの相談に対して市町村レベルで対応できるようになったためだと健康増進課では推測しております。2つ目として、健康増進課、薬務課を含めた本庁と保健福祉事務所、市町村において、医療機関別のワクチン納入状況を客観的なデータとして把握することができるようになりました。3つ目として、県内における日本脳炎ワクチンの状況や偏在の有無について評価できるようになりました。これらの結果から、ワクチンの不足時だけではなく、平時からこのような情報提供の仕組みが確立されていれば、有事の際の供給不足に素早く対応、評価できるのではないかと感じました。

 最後になりますが、今後も引き続き、厚生労働省からの情報を速やかに関係機関と共有し、ワクチン不足などの問題に迅速に対応していきたいと考えております。以上で福島県からの発表を終わります。御清聴ありがとうございました。

○伊藤部会長 ありがとうございました。兵庫県からMRワクチンと日本脳炎ワクチン、熊本県からはMRと日本脳炎ワクチンについて、最後に福島県から日本脳炎ワクチンについて、特に厚生労働省から医療機関別のワクチンの納入状況についての情報提供があったという御報告がありました。各演者の方々に御質問などはありますでしょうか。

○坂元委員 貴重な講演をありがとうございました。兵庫県と熊本県の方にお伺いしたいのですが、見ていると割と小さな市町村でこういう問題が発生しやすいと感じたのですが、例えば熊本県の場合に「A市」「C市」と書いてありますが、具体的に熊本市とか、兵庫県の場合は神戸市という市では、こういう問題が発生しているのかということです。

 感じるのは、小さな市だと単独で問屋との日頃のやり取りが余りできていないこともあるかと思いますが、大きな市だと日頃から担当者と問屋は常に情報交換をしているというところがあると思われるのです。つまりそういう傾向は見られるのかということと、例えば兵庫県と熊本県の場合は、日頃、県が中心となって県内の問屋を集めて、市町村と調整会議のようなものを、緊急時ではなくて平常時でもやっているのかということ、もちろん福島県もそういうことをやっているならばお教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大岡参考人 兵庫県からお答えします。ワクチンの供給会議は毎年1回から2回、必ず実施しております。そこのメンバーは先ほどお示ししたとおりのメンバーで、医師会、県庁の関係課、卸業協会の方、メーカーの方、この方々が集まって、必ず毎年1回か2回実施しておりまして、その場でその年あるいはその時期の問題点などの情報の共有化を図っておりますから、ふだんからそういう会議や招集というルートは整っていると思います。

 それから、大きな都市と比較的小さな都市で、そういう情報があったのかなかったのかという御質問だったと思うのですが、このときのMRワクチンの不足というのは、神戸では余り起こらなかったということです。尼崎と西宮の医師の先生からはいろいろと情報等を頂きました。質問等は神戸からも頂いているのですが、どちらかと言うと神戸というのは神戸市の医師会というしっかりした所がありますので、それから県を通じて言っておられるということで、個々の医療機関というのは、どちらかと言うと当事者である尼崎市内や西宮市内であるとか、あるいは加古川とか小野といった所からが多かったと、平成28年の事例はそのように記憶しています。

○小山参考人 熊本県です。このワクチンの供給に関しては、当県では薬剤を管轄する薬務課は直接には関与しませんで、当健康危機管理課という感染症を扱っています当課のみで対応しております。薬卸売業とは年に1回は、当課で行う総合的健康危機管理推進会議というものがありまして、そこの中の委員として卸売業協会の代表幹事の方が毎年参加されておりますので、もともと顔の見える関係があります。またこのような状況、あるいは本県の場合は化血研もありますので、そういう情報提供でおいでいただく機会が比較的ありますので、そういう意味では割と接点、顔の見える関係があるかと思います。

 それから、熊本市のような大きな地方都市の件ですが、確かに最初は熊本市以外の市町でありましたが、徐々に熊本市からの報告・相談も増えてきました。やはり熊本市に関しては、兵庫県同様、市の医師会からの要望書の提出というのもありました。ただ、熊本市の医療機関も調査はしておりますが、実際のところは医療機関がどこの卸売業者と提携されているかによって、流通の差はあったかなという印象を受けております。

○伊藤参考人 福島県です。福島県では、兵庫県や熊本県のように、平時から卸組合との会議を行うというのは、健康増進課としてはやっていません。薬務課としてはやっているのかもしれないのですが、こちらとしてはやっておりません。ただ、ワクチンの安定供給に係る平時の対応としては、先ほどもあったとおり、毎日卸組合からワクチンの在庫状況、日本脳炎とMR、あとインフルエンザが少し不足だったということで、去年の冬はインフルエンザも追加してやっていたのですが、それぞれの卸業者からの在庫状況を毎日頂いておりまして、相談があったらその都度薬務課と情報共有して、その情報を提供したり、続くときには薬務課から卸組合に情報を話していただいて、その都度もっと詳細な情報を頂いたりということをしています。

○伊藤部会長 ほかにいかがでしょうか。

○山口委員 話題として出していただいたのは、熊本県からの話だったと思うのですが、定期接種の連絡というのが一気にくるので、その時期に集中するという話があったと思います。こういう連絡というのは、この場合は例えばずらして連絡をするというような調整は可能だったのでしょうか。

○小山参考人 実際、1町に関してはかなり逼迫している状況でしたので、一勢に出してしまうとバランスが悪くなるということを考えまして、月別に分けていただくとか、そういうことをお願いしに上がりました。

○釜萢委員 医療機関側は、卸に持ってきてもらうワクチンの注文を出して、そのとおりにすぐに納入されないと、すぐに不足なのです。医療機関が注文をしてすぐに納入されないという状態が、いろいろな理由でそれが起こるわけですが、今後かなり需要が増えるから一遍に出しても駄目だから、出荷調整を掛けるとか、足りない所に補わなければいけないというような配慮も働くと思うのです。まず、兵庫のお話もとてもよくやっていらっしゃると思って大変感心したのですが、在庫の調査というのはリアルタイムでできて、この日にどのぐらい出荷したか、次の入荷はどうなるかということを日ごとに見ていけば分かると思うのですが、その辺りの情報というのはリアルタイムに県で把握なさったのでしょうか。そして、特に入荷については、いつ頃にどのぐらい来るという見込みの話があると思うのですが、その辺の情報はしっかりと入手されたのか、それは後から振り返ってみると正確な情報だったのかどうか。その辺を教えていただけますでしょうか。

○大岡参考人 把握していたつもりですが、それを医療機関側から見たら、もっと県がリアルタイムで把握するべきなのではないかという御批判を頂いたのは確かだと思います。ただ、正確な情報をお伝えしなければいけませんので、中途半端な、こうだろうというような推定で物を言うことができなかったものですから、結果的には、こうだということが断定できるまでは、なかなか公的な会議の場では言えませんでした。どこまで言っていいのか、そういうようなことは今後、危機管理の観点から課題なのではないかと思います。

 兵庫県の場合は定期的に医師会など関係者が集まってやっておりますので、そのときに今後議論を重ねていけたらなと思っております。

 それと、リアルタイムですぐに情報が入ってこないということについては、これは言いにくいことなのですが、ふだんからそこのワクチンのメーカーと取引があるのかないのかによって、すぐに入ってきたり、なかなか入ってこなかったりというのも、大分影響があるのかなと思います。これまでワクチンの不足感がいろいろと出ておりますが、そのように感じています。先ほど福島県もおっしゃっていましたが、どこまで介入できるのかというのも1つのことでして、ここもまた課題なのかなと思っております。

○伊藤部会長 ほかにはございますか。日本脳炎ワクチンに関しては厚生労働省の予防接種室が大変努力をして、各医療機関単位で、どのような形でワクチンが納入されているのかを把握できるシステムを作り上げたと聞いています。それを福島県は利用されて情報提供されることによって、随分うまくいったという話だったと思いますが、熊本県や兵庫県について、このシステムを利用されたのでしょうか。

○小山参考人 熊本県では利用しておりません。基本的には、まずMRのとき同様に、県でどうにか調整ができないかと取り掛かりましたが、実際の不足に関する相談はその後に上がってきませんで、ある程度現場で落ち着いているものだと判断しましたので、そのまま様子を見ていたという状況です。

○大岡参考人 兵庫県の場合も利用していません。その理由は、日本脳炎ワクチンの不足感が出たときに、やはり関係者が集まって協議しました。その結果、MRワクチンと違って、接種の限度、例えばMRワクチンだったら331日までというのがあるのですが、非常に日本脳炎ワクチンの場合は猶予のあるものでしたから、そんなに慌てることはないだろうと。そして、ちょうど期限がくる人がどれだけいるのかということを把握する必要があるということで、その把握に努めて、医療機関の協力も得ながら、「まだ期限があるでしょう」という形で患者に御説明してもらうといった取組をした結果、それほど日本脳炎ワクチンについて供給調整するところまではいかなかったということです。

 ある程度の見込みが立ったときに厚労省から通知をもらったので、利用はしなくてもいいだろうという結論に達し、利用しなかったということになりました。

○伊藤部会長 ほかにございますか。

○坂元委員 不足という情報が上がってくる場合、県のほうは市町村から上がってくる場合が多いのか、それとも医師会から直に県のほうに来てしまうのか、一度医師会から市町村に上がってから県にくるのかと、その辺が錯綜するのか、複数から来てしまうというような状態というのは、現実には見られるのでしょうか。

○大岡参考人 ほとんどの場合、まずは医師会からです。市町からは時間がたてば問合せ等がくるのですが、ほぼ今までの事例を見ていると、医師会を通じて、医師会は郡市の医師会もありますし、そこの先生方からの情報というのをすぐに吸い上げるようなシステムになっていますし、ワクチン担当の理事もいて、そういう意見を集約した上で、医師会からそういう情報提供があるというのがほとんどです。

○小山参考人 熊本県ですが、熊本市以外の市町村に関しては各医療機関が市町村に御報告されることが多いので、市町村を経由して県に上がってくるという状況でした。

 熊本市に関しては、やはり医療機関から熊本市に報告がいくのですが、熊本市医師会としても、それらを取りまとめたという形で、市と県とに要望書を持ってこられたという状況でした。

○伊藤参考人 福島県ですが、福島県は市町村からの相談がほとんどです。ただ、市町村から直接県に上がってくると、県の保健福祉事務所でその状況を把握していないという状況になってしまうので、一度管轄の保健福祉事務所を通して、保健福祉事務所から県庁に上げてもらうように予防接種の担当者会議などでお願いしているところです。

○伊藤部会長 せっかくの機会ですので、いろいろな問題点を把握されたと思うのですが、県から御覧になっていてどういうところを改善すれば、こういった不足というよりは不足感がなくなるのかということについて、改善策の提案はございますか。もしあれば御発言いただければと思います。

○大岡参考人 どうしても1つの医療機関がワクチンが入ってこないとなったときには、すぐに情報が医師会にいって、こちらに来ると。それはいろいろな要因があるのですが、1つにはワクチンの偏在ということがあるのも、どこか特定の医療機関が定期接種のワクチンをふだんより多く買ってしまうという、いわゆる偏在があるのは事実だと思うのです。ただ、それをどこまで行政が言えるかというのが、お願いベースにはなるのですが、介入についてはなかなか、どこまでどうしていいのかというのが分からないというので対応に苦慮することが多いのが実際です。

 国のほうは、不足感があって問い合わせても、国全体では不足していないという回答をしていただくことが多いと思うのですが、そこにギャップというか。ずっと時間がたてば、不足感というのはだんだんなくなってくるのですが、起こったときというのは、現場にすごく不足感があったら連鎖反応的に問合せが殺到するものですから、正確な情報を把握するまでの間、どうやって対応したらいいのかということが、一番苦慮する点だと思います。

 ですから、なるべく早くて正確な情報を、国としても都道府県に情報提供していただくのが、一番有り難いかなと思います。

○小山参考人 熊本県ですけれども、先ほどMRに関しては331日で定期から外れてしまうという、そのように期間が決まっているものに関しては、どこかでバランスが崩れたときに、それを引きずってしまうと、それが後まで響いてうまく解消できないということになったのかなというのが、熊本地震の影響等を考えても、見えてきたことだと思います。

 それから、ワクチンの流通に関しても、総量では足りるかと思うのですが、販者と卸の関係、あるいは卸と医療機関との関係性で、もともと、どこのワクチンをどこの業者から納入されているかによって、増産の影響が十分ではない、同じようにはいかないといったことが起きます。それで医療機関ごとによってワクチンが足りない所と不足を感じない所がある。そこまで直接は私たちが把握できませんので、介入できる範囲は限られていると思います。

○伊藤参考人 お願いしたいこととしましては、タイムリーに正確な情報を流していただくことに限るかなと思っています。日本脳炎ワクチンの今回のもののように、MRもやってほしいとは、大変な労力でしょうからなかなかお願いできないとは思っているのですが、やはりタイムリーに情報を流していただくことによって、こちらに相談が上がってきたときに返す後ろ盾になりますし、それがあるとないとでは相談元も違うので、その情報提供というのはお願いしたいなと思っております。

○伊藤部会長 よろしいでしょうか。

○坂元委員 それぞれ3県の中の市町村で、市町村でワクチンを一括購入という形でやっている市町村というのはあるのでしょうか。もしあったらお教えいただきたいと思います。

○小山参考人 熊本県では、1市だけが市が購入するという形を採っているとお聞きしております。それ以外は、基本的にありません。

○大岡参考人 予防接種は基本的な市町の事務になりますので、市町が購入しているケースもかなりあると思います。

○伊藤参考人 福島県としては、その辺りのことは把握しておりません。

○福島委員 今、兵庫県の大岡参考人が言われた「予防接種は基本的には市町村事業」というところでお尋ねしたいのですが、予防接種法に基づく定期の予防接種は基本的には市町村事業であると、すなわち法的な根拠があるということで、都道府県の立ち位置が難しいことが現場ではあるのではないかと思うのです。そういう場合に、厚生労働省から発せられた事務連絡というのが、法的根拠と同じぐらいの力を持つのであればいいのですが。もちろん本日いらっしゃっている3県はモデルケースになるぐらいに、県レベルでかなり平時から努力されていて、こういう成功事例もあったということだと思うのですが、県での対応が、実際にはかなりばらつきがあるのかどうかという点ではいかがでしょうか。

○大岡参考人 こういう事例があった場合は、例えば市町がまとめてワクチンを購入していてもしていなくても、全市町で担当者がいらっしゃるので、県のほうから同じように文書通知をして、どういう状況かというのは県が把握するようにしておりますので、どちらかと言えば県と市町も、ワクチンに関しては連携が取れているのではないかと思っているのです。実際はどうか分かりませんので、そう思っているだけかもしれませんが。

○小山参考人 熊本県ですが、卸売業様とは比較的顔の見える関係ですので、在庫調査をするということに関しては、これまでも何度か経験はあります。ただ、ここまで更に踏み込んで供給調整をしたというのは、平成28年のMRワクチンが初めての取組でした。なので、今後また同じようにやっていくかどうかは、これを参考にという形になっていくかと思います。

○伊藤参考人 福島県ですが、やはり定期予防接種というのは市町村に主体となってやっていただいているもので、都道府県の立ち位置というのは難しいといつも思ってはいるのですが、こういう安定供給だったり不足となってくると、県全体のことを見ている県がやらないといけないのかなと、不足の状況だったり偏在というのは見えてこないのかなと思っておりますので、今後も市町村と協力しながらやっていきたいなとは思っております。

○大岡参考人 追加なのですが、ワクチンの流通の調整というのは、県の薬務課、薬務行政が担っておりまして、兵庫県の場合は、医薬品卸売販売業というのはまだ保健所設置市には権限が下りていなくて、流通そのものは全て県が所管しているということがありますので、どうしても市町からのいろいろな質問であるとか、状況であるとか、そういう医薬品の流通になると、県が把握せざるを得ないという事情もあります。

○伊藤部会長 ありがとうございました。日本脳炎に関しては、医療機関単位での見える化を図って、偏在の防止に随分努力をして、分かる形になったと思ってはいるのですが、今回、県が動かれたことで、医療機関にしても、県が動いている状況で買い占めるのが難しい状況になって、うまく落ち着いたのかなという気もしないではないのですが、県のワクチンの供給の安定化については、兵庫県からお話があったとおり、流通に関しては県がキーになっているということですので、今後もご尽力頂けるのだろうと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 よろしいでしょうか。最近、働き方改革で本来615分以降にこういう会議をやっているのはいかがなものかと言われそうですので、この辺で議事を終了させていただきたいと思いますが、事務局からは何かございますでしょうか。

○事務局 本日の前半のほうで、国から全体の振り返りの資料の御説明申し上げた中で、幾つか御質問もありました。少しヒアリングなどを積み重ねながら、更に論点整理していきたいと思っておりますし、我々の取組に関してもまた御紹介申し上げる機会を持ちたいと思っております。

○事務局 次回の開催については追って御連絡申し上げたいと思います。

○伊藤部会長 それでは、本日の厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

 

(了)

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