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2018年5月30日 第51回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会(議事録)

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成30年5月30日(水)15:00~17:00

 

○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省 共用第8会議室(20階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

○議題

(1)造血幹細胞移植法上の「造血幹細胞移植」の明確化について
(2)臍帯血を用いた医療の適切な提供に関する検証・検討会議について(報告)
(3)末梢血幹細胞の海外提供について(報告)
(4)海外血縁ドナーのサポートについて(報告)
(5)骨髄バンクドナーコーディネート開始人数増加の影響についてのトライアル事業の結果について(報告)
(6)その他

○議事

 

○瀬戸室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから「第51回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会」を開催いたします。本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。

 まず、委員会開催に当たり、健康局長の福田祐典より挨拶させていただきます。

○福田健康局長 健康局長の福田と申します。委員の皆様方におかれましては、大変御多忙中のところ、お集まりをいただき誠にありがとうございます。日頃から移植行政につきまして、御支援、御協力を賜っておりますことを、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

 本日は先般の、いわゆる経営破綻をいたしました臍帯血プライベートバンクから流出をいたしました臍帯血が、無届けで再生医療等に用いられた事案を踏まえまして、今後、造血幹細胞移植と称して不適切な医療が提供されることのないよう、造血幹細胞移植法上の造血幹細胞移植の定義につきまして御審議をしていただくこととしております。また同様に、臍帯血流出事案を受けまして、本年411日に開催をさせていただきました、臍帯血を用いた医療の適切な提供に関する検証・検討会議での検討状況につきまして、また、日本骨髄バンクにおける末梢血幹細胞の海外提供について、また、海外血縁ドナーのサポートの開始について、更には骨髄バンクドナーコーディネートの開始人数増加の影響についてのトライアル事業の結果の御報告も、併せてさせていただきたいと思っております。

 委員の皆様方におかれましては、これまで同様、本日も忌憚のない御意見をいただきまして、移植医療の向上にお力添えをいただければということをお願いいたしまして、冒頭にあたりましての御挨拶といたします。どうぞよろしくお願いします。

○瀬戸室長補佐 新年度となり、委員、事務局に異動がありましたので御紹介させていただきます。厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第3条の規定に基づき、疾病対策部会長より、自治医科大学免疫遺伝子細胞治療学講座名誉教授の小澤敬也先生が引き続き委員長として指名がありました。また、平成21年度より委員として御参画いただいておりました東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター教授の武藤香織先生が、任期満了に伴い、本年410日をもって退任されました。後任の委員につきましては、決定次第、御報告させていただきます。

 また、本日の委員の出欠状況ですが、山本委員から欠席の御連絡をいただいております。また、坂巻委員から遅れて出席する旨の御連絡をいただいております。また、本日は参考人として、公益財団法人日本骨髄バンク移植調整部長兼新規事業部長の小瀧美加様に御参加いただいております。

 続いて、前回の開催以降、41日付けで事務局の異動がありましたので御紹介いたします。健康局難病対策課移植医療対策推進室室長補佐に着任した、幕内陽介です。

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第にあります配布資料一覧を御参照ください。資料1、「造血幹細胞移植法上の『造血幹細胞移植』の明確化について」、資料2、第2回臍帯血を用いた医療の適切な提供に関する検証・検討会議資料、資料3「非血縁者間末梢血幹細胞移植の国際協力」、資料4「全米骨髄バンク(NMDP)との業務提携拡大:血縁者間調整のサポートについて」、資料5「コーディネート期間短縮に向けた骨髄バンク開始ドナー増加(5人→10)トライアル」、参考資料1「造血幹細胞移植法上の『造血幹細胞移植』の明確化について(回答)」、以上6点となっております。不足等ありましたら、事務局までお伝えください。

 これより、議事進行を小澤委員長にお願いいたします。報道のカメラは御退室願います。よろしくお願いいたします。

○小澤委員長 委員長の小澤でございます。先ほど新しい肩書を御紹介いただきましたが、私は今年の3月いっぱいで東大医科研を定年退職になりましたので、現在は主な肩書が自治医科大学の名誉教授と客員教授ということになります。

 それでは議事に入ります。本日は議事が5つあります。まず、「造血幹細胞移植法上の『造血幹細胞移植』の明確化について」、これは事務局より御説明いただき、議論をしていきたいと思います。2番から5番までは報告になりますが、事務局より、「臍帯血を用いた医療の適切な提供に関する検証・検討会議について」を御報告いただき、その後、小瀧参考人より、「末梢血幹細胞の海外提供について」、「海外血縁ドナーのサポートについて」、「骨髄バンクドナーコーディネート開始人数増加の影響についてのトライアル事業の結果について」、以上の3点を御報告いただきまして、それぞれについて議論をしていきます。それでは、議題(1)の造血幹細胞移植法上の「造血幹細胞移植」の明確化について、事務局から説明をお願いいたします。

○井内移植医療対策推進室長 それでは、資料1に基づきまして、造血幹細胞移植法上の「造血幹細胞移植」の明確化についての御説明をさせていただきます。資料11枚めくっていただければと思います。この委員会の中でも出ておりますが、いわゆる破綻したプライベートバンクからの臍帯血流出事案というのが昨年ありました。そのときのことですが、プライベートバンクが経営破綻をして、保管臍帯血が流出。臍帯血販売業者、仲介業者を経て、クリニックで美容やがん治療と称して使われたということが、再生医療法違反として問われたという事例がありました。この臍帯血販売業者、仲介業者も共犯ということで、実刑判決となっております。

 その上で、2ページのポンチ絵です。同じ絵ですが、下の所に赤の吹き出しで書かせていただいております。再生医療法の規制を逃れるために、規定疾病の治療と称して、他人の臍帯血を用いた不適切な医療が提供される可能性を指摘させていただいております。再生医療法であれば、このクリニックのほうが再生医療法違反となったのですが、これが造血幹細胞移植と称して、例えば造血幹細胞移植推進法において、移植として27疾病としておりますが、この中の膵がんや乳がんというようなことで使用されてしまった場合には、いわゆる造血幹細胞移植推進法の範疇となりますが、造血幹細胞移植推進法ではそれを取り締まるすべがないということになっております。そういったことで、どういった対応ができるかということで、これは新聞報道等でも出ておりますが、造血幹細胞移植法は議員立法です。その中で、今、立法府のほうでも、そこをどうするかという議論を進めていただいていると聞いております。

 その中で、行政としてどういったことができるのかということで、今回検討をして、本日御審議いただきたいということでございます。

 3ページです。では造血幹細胞移植と再生医療と何が違うのかということですが、その切り分けで、上の薄いブルー、左のほうに書いてありますが、臍帯血を用いて有効性・安全性が確立した移植(非血縁間)を行う場合ということで、これが造血幹細胞移植法の範疇ということになっています。上記の場合以外で、臍帯血を用いた再生医療を行う場合、つまり、臍帯血を使う場合、いわゆる今までやり方が確立されている、安全性・有効性が確立されているものを造血幹細胞移植ということにしておりまして、それ以外、全て再生医療法となっております。こういった括りになっておりますので、造血幹細胞移植を行う医療機関が、再生医療法の届出等をすることなく、今までどおり造血幹細胞移植ができるという仕組みになっているというものです。

 この27疾病というのが、4ページです。このとき、造血幹細胞移植法では、広く、可能性をつぶしてしまわないようにということで、いわゆる急性白血病以外、たくさんの病気が記載されています。この造血幹細胞移植法というのは、有効性・安全性が確立したということまではあるのですが、それが細かく規定をされていないということで、先ほど2ページ目で御説明させていただきましたように、いわゆる悪意を持った場合、他人の臍帯血を用いた不適切な医療を、造血幹細胞移植と名乗った上で行われてしまう可能性が出てきているというものです。

 7ページです。造血幹細胞移植という定義を、医学的見地から明確化しておけば、こういった悪意のある使い方は排除できるのではないかと。そういったことから、造血幹細胞移植の定義に該当しない医療技術については、再生医療法の規制の下、適切に提供されることを確実に確保できるようにしたいということで、日本造血細胞移植学会のほうに、医学的見地から、造血幹細胞移植とはどういうものなのかということで、事前にお伺いをさせていただいたということです。

 その上で、8ページですが、日本造血細胞移植学会のほうから御回答を頂いております。ア、イ、ウ、エとありますが、アが疾病がいわゆる厚生労働省令で定める先ほどの27疾病、イの所が、移植された造血幹細胞が骨髄に生着することにより、造血機能又は免疫機能を再構築させることを目的としている。当該目的で行われた行為であるか否かの判断は、以下によって判断するということで、ⅰ、ⅱとしていただいております。ⅰのほうが、移植された造血幹細胞の拒絶を防止し、又は、原疾患が腫瘍性疾患である場合にあっては腫瘍細胞を根絶又は減少させるため、移植を行う前に、レシピエントに対し、化学療法又は放射線治療によ前処置を行っていること。つまりきちっとした前処置を行っていることというのを入れていただいています。更に、移植された造血幹細胞の拒絶を防止し、又は、移植片対宿主病を予防するため、移植を行う前又は後から、レシピエントに対し、免疫抑制薬の投与を行っていること。しっかりと免疫抑制薬を使っているということ。ただ、既存のきちんとした造血幹細胞移植が制限を受けないように、ただし、原疾患が重症複合免疫不全症である場合、移植した造血幹細胞が生着不全であったため再度の移植を行う場合、採取した造血幹細胞を採取された者自身に移植を行う場合、その他、厚生科学審議会等において医学的見地から妥当と個別に判断された場合は、移植前処置又は免疫抑制薬の投与を省略することがあるため、この限りではないとしていただいております。

 造血幹細胞の移植が頸静脈内投与(骨髄内投与を含む)によって行われていること。造血幹細胞の移植に用いられた医療技術が、「現在の科学技術水準に照らして、一定の効果があり広く行われる医療技術として評価」されたものであることとまとめていただいております。

 こういったことで、造血幹細胞移植のほうで医学的な定義を行うと、先ほど悪意があると申しましたが、悪意をもって臍帯血を、医学的な根拠のない方法で造血幹細胞移植の治療なんだということで行われることを防ぐ。つまり、それは造血幹細胞移植ではなくて、再生医療だというところで、再生医療法上の枠組みでしっかりとやっていただかなければいけない。つまり、しっかりと罪を問える状態にするということから、こういった定義を作らせていただけるかどうかということで、学会のほうから御意見をいただいたものです。造血幹細胞移植の明確化の説明については以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明に関して、御意見、御質問等、確認をしておきたいところはございますでしょうか。

○辰井委員 この内容をどのような形で示していかれる御予定でしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 現在、考えておりますのが、まずは学会から意見を頂いたということで、これで一定程度の効力はあると思っております。更に、この審議会の中で議論をしていただくということが2ステップ目。ここで何らかの形で取りまとめていただいたということであれば、我々といたしましては然るべきタイミングで、行政府からの通知という形、いわゆる厚生労働省が考える造血幹細胞移植というのはこれだということでお示しをさせていただきたいと思っております。

○辰井委員 内容については、造血幹細胞移植というものが、そもそも、ある程度安全性の確立したものを想定しているという前提ではありますので、解釈の在り方としては全く異論はありません。ただ、やはりこれは、法改正を伴わない形で行われるものですので、定義の明確化というよりは解釈の明確化ということなのだろうと思います。そのような観点から見ますと、通知とかいろいろ文言というのはこれから考えていかれるのかと思いますけれども、もし、この学会からの回答がそのまま通知で出ると仮定いたしますと、この「すべての要件を満たすものをいう」という書き方は少し強すぎると思います。それですと新たに何か定義し直しているという雰囲気が出てしまいますので、やはりあくまでも現行の法律の解釈であるという形が分かるような書き振りにしていただいたほうがよろしいかと思います。

○小澤委員長 それはよろしいのですね。

○井内移植医療対策推進室長 はい、了解いたしました。

○小澤委員長 そのほかに何かいかがでしょうか。長い文章ではありますけれども、何か気になる所がありますでしょうか。長いといっても教科書的な内容のようでもありますし、実際にこのプライベートの臍帯血バンクのほうのものを使って医療を行おうとしたときに、造血幹細胞移植法に沿った形でというような意向を示す状況はありそうだったのでしょうか。それとも事前に、こういうふうに対策を取っておくという感じでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 どちらかと言いますと、やはり今回の事例を踏まえて、事前に、こういうのが今後出てきたら困るなということで、我々のほうでこういうことを考えさせていただいて、いろいろ御検討をいただいているというところでございます。

○野村委員 質問なのですけれども、自分が理解できていないかもしれないのですけれども、これを要は、この解釈とおっしゃいましたけれども、この学会さんからの回答でこれ以外のものについて、じゃあこれがありましたと。何かある治療がありまして、この解釈に当てはまらないものイコール全て再生医療法の規制の対象になる治療になると自動的に解釈されて、即、再生医療法違反みたいな形で摘発だったり指導だったり、何かというふうになるという流れでよろしいのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 恐らく何か事件があった場合には、裁判でその辺は考えられることだと思われますけれども、我々のほうといたしましては、先ほどの3ページを見ていただきますと、いわゆる造血幹細胞移植法、いわゆる臍帯血を使った医療である場合に、基本的には再生医療なのですが、我々のやっている造血幹細胞移植、そこのところだけは再生医療から外れているということなので、つまり造血幹細胞移植でないということであれば、我々は今回この解釈を出させていただいて、その解釈が基本的に受け入れられた形での裁判になったとすれば、恐らくそれは再生医療で届け出るべきものだろうということで、我々のほうでも事前にそういう相談を受ければ、当然、再生医療の届け出をしてくださいと、我々の造血幹細胞移植法の定義より外のものであれば、当然再生医療法の届け出をして、しっかりとそのプロセスを踏んでやっていただくような注意はさせていただくということですので、そういった仕切りになっていくと思っております。

○小澤委員長 ほかにはよろしいですか。

○神田委員 将来的に、もし、この27疾病以外の疾患に対して、造血幹細胞移植が新たに試みられることは可能性としてあると思うのですけれども、そういった場合には再生医療法のほうになってしまうのですか。造血幹細胞移植としての臨床試験が可能なのかどうか。

○井内移植医療対策推進室長 現時点では再生医療法になるということになります。例えば、造血幹細胞移植法に、先ほどありました4ページの所に、例えば有効性・安全性が確立されたものとして28疾病目として書き入れられるというようなプロセスが踏まれた場合には、将来的に造血幹細胞移植というふうになる。ただ、現時点では再生医療のほうになります。

○鎌田委員 確認させていただきたいのですけれども、そうすると臍帯血というのは、基本的に再生医療法の対象なのだけれども、その中でこの27疾病に該当するものについては外すということですね。全体としては本来、対象だけれどもということですか。

○井内移植医療対策推進室長 はい、そのとおりです。

○小澤委員長 この造血幹細胞移植法も法そのものの見直しはいずれなされるかと思うのですけれども、そういったときにこういう27疾病、しっかりと、曖昧なところがなく、このように規定するのがいいかどうかということは、また、その時点で議論したほうがいいかとは思いますけれども、今後の法そのものの見直しの見通し、スケジュール的なものはどうなっていますでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 これは立法府での話なので、我々のほうも報道において見聞きしている以上のことは分からないのですが、先日、新聞にも出ましたように、いわゆるこの造血幹細胞移植法で、問題意識の持ち方としては我々と同じように持っていただいていて、いわゆる不用意に、有効性・安全性が確立されていないものを造血幹細胞移植と偽って実施されないような形で、再生医療法と同じようにしっかりと規制できるようにというようなことで議論をいただいていると聞いております。

○小澤委員長 今後の見通し、スケジュール的な点ではどんな感じになるのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 スケジュールとか見通しとかに関しましては、我々は行政府で、これをやっているのは立法府なので、我々としては全く分からないということでございます。

○山口委員 もう、この内容については異論はございません。そのとおりで結構だと思うのですけれども、多分、これを使って規制をされるのは研究開発振興課で、再生医療のほうを所管する課が、もし、これに違反したものがあれば、この間みたいに、きちんと警察に訴えるとかということになるかと思うので、そのツールをこれで作ったという解釈でよろしいのだろうと思います。

 1点、少し気になるのが、研究者が、要するに臍帯血を使ったりあるいは造血幹細胞移植のいろいろな技術開発をしていくときも、場合によっては造血幹細胞移植にならないところがある。要するに研究の部分だとかがあると、やはり再生医療のほうに行くのですよという、要するに悪意のない場合、普通に研究開発される場合、その辺は少し明確にしていただく必要があるという気がいたしました。

○井内移植医療対策推進室長 先ほど神田委員のほうからもありましたように、27疾病外であったりとか、いわゆる、我々が今まとめようと御審議いただいている、この解釈ができたその外のものに関しては再生医療の対象になってきますので、然るべき手続を踏んでやっていただくということが、今も必要なのですけれども、今後も必要かなと思っております。

○小澤委員長 よろしいでしょうか。特にないようでありましたら、造血幹細胞移植の明確化として示された案につきましては、本委員会として了承することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、事務局では本件の運用開始に向けて必要な準備を進めてください。よろしくお願いいたします。

○岡本委員 この定義を作るときに、学会としては全くこういったタスクがくることは予想しておりませんでした。確かに開き直ってみると、造血幹細胞移植って何ですかと言われると、非常に明確な言葉で説明することができないと理解いたしました。ただ、今回、この定義を作った背景は、先ほど説明がありましたように、不適正な非倫理的な使用に関してしっかりとしたハードルを設けるということでした。そこで私たちが非常に懸念をしたのは、神田委員等々から話がありました移植の将来の可能性というものについて、ブレーキになるものでは困るということでございます。それを学会からの答申の手紙には明文化いたしましたけれども、少なくとも今後の先進的な取組が円滑かつ適正に実施できるよう御配慮いたしますということでした。難しいとは思いますけれども、移植の歴史を振り返ってみますと、チャレンジ精神でここまで進歩してきた医療ですので、この辺のところについては是非、今後も、配慮しながら進んでいっていただきたいと思いますので意見をさせていただきました。

○坂巻委員 すみません、この27の対象以外で具体的に何か、もう少し追加すべき検討する疾患というのはあったのでしょうか。

○岡本委員 この27疾病の下に、何と呼んでいいか分かりませんが、細かい疾患をリストアップしたものがあります。それを何と呼ぶのでしたか。

○瀬戸室長補佐 施行規則とガイドラインになります。

○岡本委員 施行規則とガイドラインというものがございまして、そこに非常に細かい疾患が網羅してあります。ですので、この27疾病だけを見てみると、結構、これは適応ではないのかといったような疾患が移植医の頭に浮かぶと思うのです。実際に、理事会で審議をしたときにも1人の理事から、この疾患は駄目なのでしょうかという質問がありました。でも、それはちゃんとその下のガイドラインと施行規則にあるということです。そこには、この法律を作ったときにかなりブロードに組み込むことにしておりますので、法律を開始したその時点で移植の適用が妥当である、あるいは少し研究的なものに関してもかなり包括的に含んであります。ただ、その時点で全く考えられていなくて、新たな疾患概念が出てきて、それに対して移植をしようといったことになった場合には、先ほどのプロセスを踏んでということになるのではないかと思います。

○小澤委員長 そうすると、この27疾病というのは、厳格に規定されているわけではないのですね。

○井内移植医療対策推進室長 いや、厳格なのですが、これは施行規則のレベルなのですが、更にガイドラインのほうで、例えば急性白血病と、ここでは一言だけ5番で書いているのですが、例えば急性骨髄性白血病で芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍とか、何かそういうのがずらっと並んでいるガイドラインがあって、もっとブレイクダウンすると、病名でいくともっとたくさん入っているということでございます。

 なので、これは造血幹細胞移植法を施行するときに、その時点で、基本的には今やられている可能性があるもの全てを網羅するという形で作っていただいたと理解をしておりますので、今、岡本委員からも言っていただきましたように、今後新たに造血幹細胞移植というものが行われるというものであれば、再生医療の手続が必要なのですが、この法律ができるとき、再生医療法ができるときとほぼ同じなのですが、そのときのものは基本的には含有されているという理解です。

○小澤委員長 では、27疾病の範囲内での細かい解説ということなのですね。

○辰井委員 少し法律の立場から理屈を申しますと、あくまでも条文に書いてあるのは造血幹細胞移植ということで、この造血幹細胞移植というのは27疾病ということが1人歩きしたきらいがあるわけですけれども、そうではなくて、現在の科学技術に照らして、一定の効果があり広く行われる医療技術として評価できると。そういう確立された医療であるということが、ここで特別扱いをする理由であったわけです。

 ですので、これ以降の解釈についても、法解釈の原則から言えば、その行為当時の時点で確立されたと言える医療であるかどうかが最終的な判断基準になると思います。ただ、実際上、その現場でなさる皆さんが自分自身で11個、今の時点で確立されているかを判断するのはなかなか難しいところもあるので、そのために行政がガイドラインなり何なりを出しているという形でありますので、27疾患よりも増えていくという場合には、そのプロセスを踏んだほうが安全ではあるわけですが、理屈から言いますと、それが若干ずれるということはあり得ると思います。今、厚生労働省の手続で27疾病の中に入っていないけれども、しかし、学会においては、もう、ここは確立されたと言っていいのではないかと言える医療があるというような、そういうずれが生じることは可能性としてはあり得ると思います。

 ですので、多分、我々の共通見解として持っていたほうがいいと思いますのは、その時点で確立された医療かどうかということが最終的な判断基準だということで、それはこの移植学会からの回答の本旨としてもそのようなものが含まれているのではないかと思います。以上です。

○小澤委員長 確立されたというのも言い過ぎのようなところがあって、何か、まだ、実験的な感じの移植も入っていることは入っていますけれども。特に固形がんに対する移植などは。よろしいでしょうか、これはこれで。

○岡本委員 この最初の法律の27疾病を規定するときに、今、辰井委員がお話になったことと同じことを伺いました。そのときに私たちは非常に心配をして、これでは駄目なので、その下にあるものを全部上に載せてくれないといけないのではないかという懸念を強く強く示しましたところ、それはここのエという文言でカバーできるので、法律のフォーマットに関して言うとこの形しかないですということで、その時は納得したのを思い出しました。ですから、そういいう判断でいいのだなと理解いたしております。

○小澤委員長 いずれにせよ、この法律の内容、細部については、今後また見直しをするときにしっかりした文言を使うという方向で議論を、また立法府のほうでしていただければと思います。今日の議論は、それでよろしいですね。

 それではその次、2番に入りたいと思いますけれども、2番は臍帯血を用いた医療の適切な提供に関する検証・検討会議について、事務局から報告をお願いいたします。

○井内移植医療対策推進室長 それでは資料2で説明いたします。「臍帯血プライベートバンクの実地調査の結果について」です。これは、この造血幹細胞移植委員会及び再生医療部会からメンバーを出していただき、昨年あったような臍帯血の流出というところで、きっちりと有識者の御意見を頂きながら行政として対応していくという趣旨で作られたものです。その中で2回目が行われ、一定の方向性が見えてきたということで、本日御報告いたします。

 まず、この検証・検討会議の中で行われた資料に沿って説明いたします。1ページを御覧ください。臍帯血プライベートバンクの実地調査の結果ということで、調査の概要の所にあるように、今、新規に契約を行っているプライベートバンクのアイルとステムセル研究所に実地調査に行かせていただきました。その結果報告です。これには今日来ていただいている神田委員にも検証・検討会議のメンバーとして来ていただいたということです。

 その調査結果ですが、次のページを御覧ください。品質管理・安全対策に関する書類の管理ということで、きちんとそれぞれ手順書等が整っているかどうかを確認いたしました。また、現地に赴いて、臍帯血に関する記録の有無ということで、説明の同意文書から必要な記録が残っているかということで見せていただきました。

 次のページを御覧ください。まず、株会社アイルから見てきた記録をしています。臍帯血の採取に関しては、採取マニュアルに従って採取するように採取施設に依頼しているということです。あと、調製・保存に関して調製保管手順書が作成され、記録も管理されていました。品質管理に関しては品質管理手順書が作成され、きちんと実施設備・機器に対する記録も残っています。廃棄に関しては廃棄手順書がありました。さらに、移植施設への搬送に関しては、保管細胞の移動作業手順書が作成され、それにのっとって作業が行われることになっておりますが、現時点では搬送実績がないということです。

 さらに、プライベートバンク等からの受入れについては、移管作業手順書があったというものです。さらに文書や記録の管理に関して、管理手順書が作成されていました。保管されている臍帯血の記録の中から、臍帯血をランダムに選択して調査をし、その当該臍帯血が記録されている場所に保管されているかどうか、採取施設での臍帯血の採取、採取施設からの搬送、受入れ、調製・保存までの記録が全て分かるように保管されているかということの確認をしました。これについては、1例のみ行ったということで、それはできていたということです。

 さらに教育訓練は毎年行われ、記録も保管されています。通常の作業手順からの逸脱が生じた場合にはということで、そういった原因調査・結果の報告の記録も保管されていました。IMSグループの産科医療機関での母親学級等で保管を申し込んだ契約者には、医療従事者よりきちんと説明を行っているということですが、それ以外にホームページを見て資料請求のあった希望者に対しては、書面での確認のみとなっていたということが分かりました。さらに、実態調査の際に厚生労働省へ報告した臍帯血の契約数に、つくばブレーンズが破綻した際に移管した臍帯血27件の契約数は含まれていなかったということで、これについても報告を受けました。

 次のページを御覧ください。ステムセル研究所です。ここに関しては、臍帯血の採取に関してはマニュアルの入ったキットを採取施設に送付し、マニュアルに従って採取するように要請しているということです。臍帯血の調製・保存に関して、有核細胞分離作業手順書が作成され、それにのっとって作業が行われ、記録も管理されています。品質管理についても、手順書があって記録が管理されています。臍帯血の廃棄に関しては、細胞払い出しの指示書の運用手順にのっとって行われていたが、新たに廃棄手順書を作成し、社内倫理委員会の承認を得て20184月中に臍帯血を廃棄予定である旨の報告を受けました。ただ、これは少し遅れていて、現在進行形です。

 移植施設への搬送に関しては、保管細胞の移動作業手順書があって、記録も管理されています。他のプライベートバンクからの受入れに関しても手順書にのっとって作業が行われ、記録が管理されています。文書や記録の管理に関して、文書及び記録に関する管理手順書もあり、これに記録も管理されています。保管されている臍帯血の記録の中から臍帯血をランダムに選択して調査をしたところですが、これもきちんと保管され、記録も残っていたということです。

 職員の教育訓練は毎年行われています。通常の作業手順からの逸脱が出た場合も、きっちりと原因調査・結果の報告の記録が管理されています。資料請求を行った希望者全員に対して、スタッフが電話にてパンフレットを用いながら、公的バンクと民間バンクについての説明をし、再生医療に用いるために臍帯血を保管するということを説明しているという報告を受けております。さらに、実態調査の際に厚生労働省へ報告した臍帯血の契約件数には、血液培養が陽性のため有償契約とならなかった臍帯血を無償で預かっているものが含まれていなかったことが分かりましたので、今後の届出でこれは訂正していただきます。

 次のページは総括ということで、アイルとステムセル研究所でまとめております。アイルのほうは、採取、調製・保存、品質管理、廃棄等について、作業手順書に従って行われている。記録の管理も行われています。採取施設における採取から保管施設へ、この辺の一連の流れに同一性が担保され、使用する際に品質や安全性を確認できる状態にあったと考えております。さらに契約希望者への説明というのも、公的バンクと民間バンクの違いについて記載されているが、今後は全員に対して口頭説明等をしていただくことが望ましいということで伝えています。改訂後の新たな契約書については、契約終了後あるいは廃業時の臍帯血の扱いや処分方法等について明確化が図られてきております。改訂前の契約書により委託契約を行った臍帯血に関しては、契約終了後に廃棄する旨の記載がないことから、住所不明等の理由で契約者の意思確認が取れない場合は、内規に基づいて保管を継続するということでした。これは、毎年報告していただくということです。

 ステムセル研究所に関しても、採取、調製・保存、品質管理、搬送等、手順書に従って記録の管理もできております。臍帯血の廃棄についても順次行っていく旨であるということです。採取施設における採取から保管施設への一連のものについては、同一性が担保されていて、医師が実際に再生医療等で将来臍帯血を使用する際に、品質や安全性を確認できる状態にあったと考えております。公的バンクと民間バンクの違いを契約希望者に伝えているということです。廃業時の臍帯血の扱い、処分等について明確になったというものです。これが実地調査にいった報告書ということで、これをまとめさせていただいたというものです。

 次のページを御覧ください。各措置の進捗状況ということで、現在のプライベートバンクの状況はどうかということです。事業の届出ありが現状で2社です。これは先ほど実地調査の所で御説明したアイルとステムセル研究所です。現在、事業を実施していない旨の報告があるのが、レクラン、オンロード、さい帯血協会、臍帯血保管センターということで、これについては全て現時点では行っていないというものです。事業の届出なしということで、1社、ときわメディックスというのが新規の契約は行っていないのですが、我々としては臍帯血を保管している以上、届出を出してほしいということでお願いしておりますが、まだ事業の届出が出ていないというものです。

 次のページを御覧ください。この検証検討会議をやるときに問題視していたのが、契約終了後に廃棄されずに、どういった用途に用いるかということがないまま保管され続けている臍帯血が2,100件程度あったということで、これがどういったやり方になるかということです。アイル、ステムセル研究所、ときわメディックス、ビー・ビーということで、一番右のビー・ビーというのは廃業ということですので、0件です。ときわメディックスは届出がないので分からない状況です。アイル、ステムセル研究所は先ほどの実地調査等でも御報告したとおりですが、廃棄を順次進めています。ただ、アイルのほうは廃棄の同意がなく保管を継続するということで、確認が取れなかったものについて、40件については契約者の意向が分からないということで、このまま保管は続けるということだそうです。ステムセル研究所のほうは、順次廃棄をしていくということで、ステムセル研究所は研究利用ということで、明確に文書で将来的に、いわゆる基礎研究ということだそうですが、研究に用いるということで契約者の同意を頂いているものについては、629件を保管を続けて、社内の倫理委員会、又は研究をする先の倫理委員会等で通ったものについて、提供を行っていくことを考えていると聞いております。

 契約書の見直しの状況です。厚生労働省において望ましい契約書のひな形について、7社に対して929日付けで通知を出しています。アイル、ステムセル研究所、それぞれ契約書の改定をやっていただいているものです。公的臍帯血バンク及びプライベートバンクについての情報提供というのは、自治体等を通じて、これもかなり進んできているとは聞いております。

 ホッチキス留めの一番後ろの17ページですが、これが今までの現状を踏まえて今後の行政の対応を提案いただいたものです。現在も活動が確認でき、契約者からの委託を受けて臍帯血を保管している事業者は3社あり、このうち、厚生労働省に対し事業の届出があったのは2社です。この2社について、事業者への聞き取り、実地調査を行った結果ということで、品質管理・安全性に関する情報を提供できるようにすることを確保するための措置を講じているということです。さらに、望ましい契約書のひな形を踏まえ、契約者の意に沿わない臍帯血の提供をなくす観点から、これまでの契約書を見直し、契約終了時あるいは廃業時の臍帯血の取扱い等について明確化が図られたこと。さらにパンフレットの改訂を行う等により、契約者に正確で分かりやすい情報の提供に取り組んでいることが確認できたということです。さらに、厚生労働省において、上記の実地調査の結果についてもホームページで情報提供するとともに、今後も、事業者からの届出を基に、保管臍帯血の管理状況や活用実績、契約終了後の廃棄状況等について、ホームページ等により契約者や関係者に対する情報提供を継続的に実施することと御意見を頂きました。

 このほか、現時点では未届けである1社から届出があった場合には、厚生労働省においても当該業者の協力を得て実地調査を実施し、業務実態の把握に努めるとともに、当該調査の結果や届出内容について、ホームページ等により契約者や関係者に対して情報提供を行うことという提案も頂きました。また、臍帯血プライベートバンクへの臍帯血保管委託を検討している者に対し、届出のあった2社以外の臍帯血プライベートバンクとの契約を検討する場合は、これらの事業者からは届出が出ていないことを踏まえ、当該事業者の業務内容、契約内容、契約終了時の臍帯血の取扱い等を十分に確認するよう注意喚起を行うこと。厚生労働省としては、今後とも契約者に正確で分かりやすい情報が行き届くよう、関係省庁、産科医療機関等と連携し、公的臍帯血バンクに対する情報も含めた適切な情報提供に努めること。このような提案を頂いております。

 さらに当日は、きちんと届出の出ていない所について、再度届出を出していただくようにということを言うべきだという御意見も頂き、それについても対応しているというもので、ここに頂いたものをホームページ等で対応、又は産科医療機関、関係省庁等に情報提供を我々としてもさせていただいたということです。以上です。

○小澤委員長 それでは、この問題について御質問、コメントはいかがでしょうか。最後は提案という形で、行政としての対応の方針が出されており、余り厳しいことは書かれていませんが。

○張替委員 この2社は再生医療法上の要件はクリアしているということでよろしいですか。

○井内移植医療対策推進室長 再生医療で使われるときに、一連の流れで、使う医療機関が届出を出してということでやりますので、実際に保管しているだけでは再生医療法上は特に問題はないのですが、調製・加工のところで届出が必要となります。実行上は、ステムセル研究所のほうだけは届出をしているということで、またそれは使われるときに必要な手続が再度確認されると考えています。

○張替委員 ステムセル研究所から提供されたものについては、実施機関が届出をすれば使っても構わないということになるのですか。

○井内移植医療対策推進室長 いや、いわゆる実施機関が届け出れば、自動的にもらえるものではなくて、実施機関が担保しなければいけないのは、全ての臍帯血を入手するルートから全て確認しないといけないので、そこの医療機関が責任をもって、その先はどうなっているかということを、例えばステムセル研究所等に聞いて、ステムセル研究所がその関係を満たしているということであれば使えると。これが、いわゆる非血縁者間か血縁者間かということでも、少しハードルが違うとは聞いています。

○張替委員 実施機関の届出には、疾患などは関係ないのですね。

○井内移植医療対策推進室長 届出で、こういう病気にこういう治療をすると。そのときに、こういった臍帯血を使うという全てのものを届け出ると。

○張替委員 分かりました。

○鎌田委員 今回、プライベートバンクにおける保管とか管理の在り方という意味では把握していただくことが必要だったと思いますし、それができてよかったと思います。そういう意味ではメインテーマとは少し離れてしまうのかもしれないのですが、公的バンクと民間バンクの違いという点について、そこがすごく気になっています。臍帯血バンクを通した移植というものが、現状医療上必要とされている現在において、公的バンクと民間バンクの違いについて提供者の理解を得ることを事業者に任せているだけだと、9ページにもどういう説明がされているかというのは出ていますが、事業者側にしてみたらこれぐらいのことしか、こちらも商売でしょうし言わないとは思うのですが、バンクのことなどをよく知らないでお産をするときに、産科に行ってこういうものを見たときに、再生医療というのは今すごく世の中でもいろいろ言われていますし、「取っておくと将来役立つかもしれない。だけれども、あげてしまうこともできる。」というだけの説明だと、取っておいたほうがいいのではないかという気持ちになるのではないかとも考えられますし、現実問題として、前にも伺ったことがありますが、臍帯血というものに将来どれだけの可能性があるかというときに、もちろん可能性はあるのだと思いますし、それがどこまで現実的なものになるのかというのが分かる部分と分からない部分があると思いますが、本当に「取っておいたらすごくいいのだ」という場合には、「だけれどもください」というのはどんどん言いにくくなってくると思いますが、どこまでどういう情報をきちんと伝えて、どのように臍帯血が使われるかという形を考えていけばいいのかというのは、どこかできちんと考えていかないと、このやり方でも臍帯血バンクは全く困らない、住み分けなども全く困らないというのであれば、それはそれでいいのかもしれませんし、現状把握とこれからどうすべきかというのを一回きちんと考える必要はないのかなと思いました。

○井内移植医療対策推進室長 説明が足りませんでした。まず、業者だけではなくて、まず自治体のほうにも通じて、いわゆる母子保健のほうでも説明はしていただくようにしているというのが1点です。

 造血幹細胞移植を実施する、いわゆる臍帯血移植を造血幹細胞移植として実施するときに、では現状で困るかと言うと、実は現状では困らないと理解しています。と言うのは、大体産科医療機関が全国に2,4002,500ありますが、臍帯血バンクのほうは、いわゆる臍帯血バンクまで運ぶ時間の制限等、お産をするときに取らないといけないという技術的な問題もあって、全国で90程度の産科医療機関で、逆に言うと、全国津々浦々の産科の医療機関から頂いているわけではなくて、ごく一部の機関から頂いています。それで、現在、おおむね1万個の保管をベースに考えていて、今のところは、ほぼ成り立っている状態です。

 再生医療のほうも、今言っていただいたように、可能性はあるけれどもマストではないという状況の中で、預けられる方がいるということで、今両者が共存していて、特にどちらかが圧迫されて使えなくなる状況ではないと思っております。

 ただ、再生医療等の今後の発展等ができたときに、例えば造血幹細胞移植のための臍帯血のほうに影響が出るかどうかというのは、我々のほうも注視していかなければならないと思っておりますので、またそういった問題が出たとき、出そうになった時点でいろいろ御相談させていただきたいと思います。

○小澤委員長 こういう民間の業者の場合には誇大広告があってはいけないとか、そういう議論も前にしたと思いますが、実地調査に参加された神田委員から何かコメントはありますか。

○神田委員 その公的バンクとの違いについては私も気になっていた部分ではあったのですが、少なくともその場での説明、それからそのそれぞれの担当者の理解においては、民間バンクのほうは例えば白血病の治療等には役立たないということは彼らも理解しておりまして、そのためには公的バンクがしっかりあるということです。そして、この民間バンクのほうは、あくまでも将来的に、もしかしたら研究的なところで役に立つかもしれないという説明をしているというお話でした。私は説明には直接立ち会っていないので分からないのですが、正しい理解で進める姿勢は見せていただいたと思います。

○小澤委員長 廃棄の件数はかなりありますが、そういったときに何かクレームというかトラブルというか、そういったものは出ているようなことはありますか。

○井内移植医療対策推進室長 今はそれぞれ廃業を決めた所も含めて、契約者ときちんとコンタクトを取った上で廃棄をしていると。アイルとステムセル研究所の一部については、契約者の意向が住所変更等で追えないというのがあって、アイルのほうはそういったものについては保管すると決めましたし、ステムセル研究所のほうはそれでも廃棄をする方向で検討を進めていると聞いています。特に、何か個別事案でもめたということは、今のところは聞いておりません。

○野村委員 要は、ときわメディックスとは連絡が付いたり付かなかったり、届出がまだないという話だったと思うのですが、これがこのまま届出がなかったからといって、何かできるわけではないという理解でおりまして、基本的にはそういうところがもし出てきた場合、前の説明だと医療機関で情報が入ってくるということですが、それを踏まえて提案についての行政の対応についての最後から2段落目の「注意喚起を行うこと」という所について教えてもらいたいのですが、これは希望している妊婦御本人だったり家族に対して、これは医療側の努力に期待するしかないという部分があると思うのですが、「行政の対応についての提案」という形でなされておりますが、行政側としては、医療側の努力だけではなく、どういう形で注意喚起を行うようにするつもりなのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 この部分に関しては正に行政に対する提案です。我々のほうでは厚生労働省のホームページにこういった趣旨のことを書いております。実際に届出のない所は、新規の契約は行っていないと聞いておりますので、医療機関側からの、いわゆるこういった所があるよというのはありません。新しい所が出てくれば医療機関等に教えていただくということですが、ここはもう新しいのは動いていなくて、過去に預かっているものを持っているだけと聞いておりますので、そういった所からの情報は取れないと思っています。我々のほうから何とかコンタクトをして、出していただけないかということをお願いし続けています。実際、言っていただいたとおり、それを出さなければ何か行政指導や法的措置を取れるのかというと、取れないというのが実態です。

○野村委員 今後、ものすごく小さな単位で、バンクまでいかなくても、医療機関アンド保管というような形で、個人的にではないですが、本当にプライベートに取っておくといいらしいとするという話が出てこないとも限らないというところがあって、そういうことはしないという医療関係者の方たちがほとんどだとは思うのですが、その部分で賢い消費者として振る舞わなければいけない私たちではあるのですが、なかなか難しいところがあるのだろうなと思います。ホームページだけを出していても、絶対にそのようなものは分からないというのもあって、賢い患者や消費者になるために、もちろんマスコミも本人も含めて、どうしたらいいかということと行政のことは難しいと思っていました。

○小澤委員長 ほかにはよろしいでしょうか。この資料の7ページにある表ですが、ステムセル研究所では研究利用予定の件数が629件とかなりあるのですが、この内容はどのようなものが考えられているのかという情報はあるのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 基本的には人には使わない、基礎実験とは聞いております。

○小澤委員長 そのほかに何か確認しておきたいことはありますか。ほとんど機能している会社もなくなってきて、ようやくステムセル研究所だけは、もうしばらく何とかやろうというような雰囲気ですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。では、特にないようでしたら、この最後の提案と書いてある対応の仕方に沿って、よろしくお願いいたします。

 次は議題(3)「末梢血幹細胞の海外提供について」です。小瀧参考人から報告をお願いいたします。

○小瀧参考人 日本骨髄バンクの小瀧です。どうぞよろしくお願いいたします。では、「非血縁者間末梢血幹細胞移植の国際協力」ということで御説明させていただきます。資料3です。おめくりいただいて、まず、非血縁者間末梢血幹細胞移植に関する国内外の状況です。全世界では、平成27年に年間12,000例以上の非血縁者間末梢血幹細胞移植が行われていて、移植全体の約6割を占めております。日本におけるこの移植については平成12年に医療保険が適用されまして、平成28年には血縁者間で869例の移植実績があります。日本の非血縁者間移植に関しましては、平成228月に当委員会を経て、同年10月に導入をしております。

 ドナー、患者さん双方の安全性・確実性を重視することを目的に、導入に当たっては対象ドナーを絞ってスタートいたしました。これは当時、HLAフルマッチに限定する、かつ採取施設が遠方ドナーを除くなどの条件でした。その後、段階的に条件緩和を行いまして、平成2710月、当委員会で、この移植においてもHLA1抗原不適合を可能とすること等が了承されまして、現在までに累計463例の移植が実施されております。単年で見ますと、平成27年度は58件、近々の平成29年度については182件と増加を示しております。コーディネート期間につきましては、骨髄移植と比較して約10日間短いという数字が出ております。これは骨髄移植の場合は貯血のスケジュールが必要なため、それがPBにはないということで短くなっております。

 次のページです。国際協力の意義ですが、先ほどのように国内ではこれまでに実績を重ねてきているということ、そして2点目、これが一番大きいのですが、世界的には非血縁者間骨髄移植よりもPB(末梢血幹細胞移植)が主流です。主な理由は、得られる細胞数が多いこと、また、骨髄と比較してドナーの方の採取後の回復が早いということが挙げられています。海外からは、かねてより末梢血幹細胞提供の要望が高かったということが挙げられています。これは、その細胞数が多いということが期待されるためです。平成22年、非血縁者間末梢血幹細胞導入の際に、国内におけるコーディネートが安定したら、国際についても導入していきましょうということが話し合われていまして、今回それに至ったということです。

 次のページ、国際協力に当たって、留意することは1点あります。コーディネートの流れは、基本的に国内におけるコーディネートと全く同様ですけれども、1点のみ留意事項があります。ドナーの方へのG-CSF投与は、患者さんの前処置開始を確認した上で投与されるということになっています。これはもし移植が懸念される場合は、不要な投与を避けるためという意味があります。しかし、海外提供の場合、時差の関係で前処置開始前にG-CSF投与をするケースがあるということ。これが1点、留意事項になっております。

 図のほうを見ていただきまして、上が日本時間、下が海外時間ということですが、この事例ではPB採取が2日に渡ったことを想定して移植日を設定していますが、727日に移植予定だった場合、いろいろなスケジュールを調整しますと、前処置開始日が向こう時間で721日金曜日だった場合、時差の関係で日本では721日、日本時間の金曜日にG-CSF投与になるということです。

 そうしますと、このときに患者さんの状況をよく確認するということで、本当に移植に入れるかどうかということをきちんと確認した上でG投与をするということです。720日木曜日に海外のほうに前処置開始の見込みを確認することにいたしました。その対策といたしまして、手続については2行目ですが、ドナー安全委員会及び国際委員会の承認を得た後、G投与を開始するという手続を決めたところです。

 次のページです。コーディネートの流れは国内の手順と全く同じですので、こちらについては割愛をさせていただきます。

 次に海外バンク向け料金表ということで、全く国内と同じ手順を取ります。それから国際の手順と同じ手順を取りますので、コーディネート料金については、国際料金、骨髄提供を行うときと同様の国際料金を設けております。マーカーになっている所です。骨髄・末梢血幹細胞採取料200万とありますけれども、欄外を見ていただきまして、※印の所です。全米骨髄バンクのほうからは、ここの料金を先方からは270万と提示されていますので、全米骨髄バンクに対しては270万請求することになります。

 それから、骨髄にはないものとして、採取に至らなかった場合、キャンセル料といたしましてG-CSF投与料の料金を頂くということになっておりまして、ここが骨髄と違う場合の想定です。以上、PBの国際協力に関する報告を終わらせていただきます。

○小澤委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御報告について、御質問は何かありますでしょうか。

○梅田委員 国際協力を進めていくというのは非常に結構なことだと思います。先ほど資料では御説明がなかったのですが、参考資料8ページの末梢血幹細胞移植につきまして、日本では、このグラフを見ると末梢血が全体の造血幹細胞移植の6%になっています。一方世界では末梢血が63%と非常に多いということです。ドナーの立場からすると、負担が骨髄移植よりも少ないというのが、この末梢血幹細胞移植で採取後の回復も早いという、非常にメリットがあると思っています。

 患者さんの立場でもコーディネート期間が10日も少ないというデータが出ています。また国際協力での要望も大きいという説明を、今、受けたわけです。これはバンクさんへの質問ではないのですが、なぜ末梢血幹細胞移植が6%と少ないのか、これを実施してから8年近くたっているのにほとんど伸びていないことに懸念しています。なぜ少ないのか、増やすにはどうしたらいいのかというところに常々疑問を持っています。ここの所はどんなものなのでしょうか。

○小澤委員長 岡本委員、何か御意見はいかがでしょうか。

○岡本委員 いろいろな要素があると思います。1つは医療サイド側からすると経験不足。つまり、これまで海外でいろいろデータが出てきて、GVHDが高い、生存率を見ても明らかに少し下がる可能性がある等々のことで、やはり日本の場合に骨髄、末梢血、どちらでもいいですよと言われたときに、医療サイドとしては、まだ骨髄を選ぶ確率のほうが高いのではないかという、それが1点です。

 2点目は、ドナーに対する負担が少ないから。確かに採取の後はかなり少ないですが、その前の時間の制限で、今、私の理解が正しければ、まだ入院している施設が多いですよね。入院するということは、海外ではあり得ない。基本的にはほとんど皆さん、どこでもG-CSFを打っていただいて、ある海外では自分でG-CSFを打って、そしてその採取に臨むという、そこの利点が生かされていない。そういった連携を採取のフィールドの中にうまく作れていないということで、それがもう一つの2点目です。

 それからさらに日本の場合に、これはすごく大切なことですけれども、安全性がものすごく要求されているので、例えば最近起こったアナフィラキシーのような問題が起こってくると、やはり採取側としても、それを外来で打つというより、やはり入院でということに踏みとどまってしまう等々のことがあるかと思います。もちろんそういったことが日本だけではなくて、アメリカ、韓国、様々な国で本当に起こっているわけで、でも彼らはそれをもっとフレキシブルにやっているというところで、そこになかなかジャンプインできないというところは、国民性といいますか、いろいろな問題があって、それをいかにクリアするかは一生懸命検討しております。

○梅田委員 事情よく分かりました。ただ、趨勢は世界のほうですので何とか努力して、そちらに向かっていただければなと思います。

○小澤委員長 そのほか何か御意見ありますでしょうか。

○山口委員 キャンセル料としては、G-CSF投与料となっておりますけれども、G-CSFは我が国では保険適用されているはずですよね。海外の場合には、それは使えないということになるわけですよね。

○小瀧参考人 海外の場合、実費で対応しておりますので、その分を請求させていただいております。

○山口委員 多分、こういうのはアンメットニーズでは使えない、保険はそういうのには余り使えないのですね。

○小澤委員長 実際に、こういう国際協力は年間に何例ぐらいと想定されているのでしょうか。

○小瀧参考人 今、海外提供の実績そのものが年間に5例から7例ぐらいなのですが、それの約半数以上がPBを希望されてくるのではないかと思っています。もともとPBの細胞数が多いことを理由に希望が多かったので、半数以上はPBになるのではないかと考えています。

○小澤委員長 ドナーの希望ではなくて、実際に移植を行う医療機関からの希望ということになるのですか。

○小瀧参考人 補足いたしますと、日本のコーディネートに上がったドナーさんは、約8割の方がPBBMどちらでもよいと答えてくださっていますので、PBであってもお応えいただける方が多いかなと思っています。それから先ほどの岡本委員の補足なのですが、国内の登録患者さんがバンクに登録してこられるときに、PBも含む移植を希望するという方は85%ぐらいいらっしゃるのですが、実際に移植の段になると、それが骨髄のほうに変わられるケースが多いということで、現在の実績になっております。

○小澤委員長 ドナーの考え方が骨髄のほうに変わるのですか。

○小瀧参考人 いえ、2パターンありまして、ドナーさんは8割の方がPBBMどちらでもいいよと言ってくださっているので、どちらの希望が来ても、恐らく希望に応じてくださる方が多いと思います。一方、患者さんのほうは、患者登録のときに、PBBMどちらでもよいというようにして登録はされるのですけれども、いざ移植の段になるとBMのほうがよいと選ばれる方が多いということです。

○小澤委員長 主治医の考え方があれなのですか。

○小瀧参考人 そうですね、それが先ほどの岡本委員のおっしゃったところかと思います。

○小澤委員長 何かほかに。

○岡本委員 細かいことですけれども、海外から採取料を言われるときは、日本の基準でやるのですよね。

○小瀧参考人 はい、そうです。

○岡本委員 リクエストで5×106の細胞をくださいとか、いっぱいリクエストが来ると思うのですが、それはできませんという判断ですか。

○小瀧参考人 はい、そうです。

○岡本委員 アリルミスマッチはどうするのですか。アリルが3つ違うとか、4つ違うとか。

○小瀧参考人 日本と全く同じなので、そこは制限はありません、制限は1抗原ミスマッチの所だけです。

○岡本委員 アリルが幾ら違っていても、日本は今、提供しているのですか。

○小瀧参考人 現在はそうです。ただ、実質上3ミスマッチ以上の移植は、ほとんど行われていないかと思います。

○岡本委員 でも、それはもともと許容していたのですか。

○小瀧参考人 はい。あくまでも抗原ミスマッチ数だけに制限があり、アリルミスマッチ数には制限はありませんでした。

○岡本委員 最初の研究を50例やったときというのは、それはアリルもフルマッチではなかったのでしたか。

○小瀧参考人 そうです。最初の条件としては8/8アリルフルマッチを条件にしていたのですが、それを条件撤廃したときにアリルの個数は問わず1抗原ミスマッチまでに行うということが、この委員会で確認されたという背景があります。

○岡本委員 でも、最初はフルでアリルをマッチしていてやって、そこで安全性を確認したということで、そこから後、アリルは幾ら違っていても構わないですよという形で提供しているということですか。

○小瀧参考人 構わないというか、8/8アリルフルマッチの条件を撤廃したということです。

○岡本委員 言葉を変えて言うと、抗原さえ合っていれば、何をやってもいいということになるわけですよね。

○小瀧参考人 そういう表現までが、ここの委員会で確認されたわけではないのです。解釈としてはそうなると思います。

○岡本委員 1つ気になるのは、そこまでフルに完璧に合わせたものの中から、いきなりミスマッチの何でもやっていいですよという方向に飛び込む、その発想はどういうことなのですか。すみません、今日はそれを議論するところではないかもしれませんが、少なくとも安全性を十分確保しましたという中で流れてきて、しかもそこで、これで安全性が確保されましたというのは、全て合っている人のことを言って、そこに結構時間を掛けたわけですよね。その症例を集めるために、安全性を確保するために。

○小瀧参考人 はい。

○岡本委員 でも、そのデータは、そういった実際には使われている人たちの中での安全性が確保されているわけではなかったような気がしますが。それであれば最初からもっとそういったものも含めた形の安全性を担保すべきだというような気が私はするのですが、それはどうなのですか。

○小澤委員長 ちょっとその内容は今日の議論から外れますので、また資料か何かを事務局のほうに提出してもらって、それで情報提供をしていただいて。

○井内移植医療対策推進室長 こちらで、またまとめて提案させていただきます。

○小澤委員長 そのほか海外提供の関係ではよろしいでしょうか。そうしましたら、その次は4番、「海外血縁ドナーのサポートについて」、御報告を、小瀧参考人からお願いいたします。

○小瀧参考人 では、引き続きまして資料4です。「全米骨髄バンク(NMDP)との業務提携拡大:血縁者間調整のサポートについて」ということです。おめくりいただきまして、まず概要です。全米骨髄バンクでは、血縁者間移植のための血縁サポートサービスを開始しております。これは国内外ともに開始しております。平成2911月に当バンク、日本骨髄バンクに対しても強い協力依頼があったものです。

 図を右側から御覧ください。患者さんは米国で移植予定をされているのですが、対するドナーの方が日本に在住されている、この方々が血縁関係にあるということです。米国で移植予定の患者さんに対する日本在住の血縁ドナーの提供に向けて調整をお願いしたいという依頼でした。

 当バンクのほうでは、次の条件で本件に協力することを業務執行会議のほうで決定しております。2点ありまして、まず血縁ドナーさんへの対応、これは日本のドナーさんへの対応です。提供年齢、コーディネートフロー、ドナー適格性基準、フォローアップ、ドナー団体傷害保険加入等について、非血縁ドナー対応に準ずることといたします。全く同じといたします。一部除外がありますけれども、これは欄外のほうを見ていただきまして、郵送連絡のところを一部、電話で行うことや、「ドナー、患者に関する情報はお互いに知らされない」といったことをお約束していただくのですが、これらを除外するということです。

 2つ目が患者さん、これは米国在住の患者さんへの対応ですが、ドナーの方への対応は、非血縁ドナーと同様のために、かかる工数が日本骨髄バンクについては同じですので、現行の国際コーディネート料金と同様といたしまして、患者さん側に請求させていただくということにしております。

 次のページですが、日本骨髄バンクが、この海外患者さんの血縁ドナーの調整に協力する理由といたしまして、患者の観点、ドナー保護の観点、その他ということでまとめました。まず、患者の観点ですが、ドナーの方が遠方等の理由によって移植施設で提供できない場合、これまでの国際協力のノウハウを用いてサポートすることは、移植が必要な患者さんの救命に資すると考えました。

 次にドナー保護の観点ですが、ドナーの方が長時間移動を要して、提供前後の検査実施や提供後の移動は、ドナーの方の身体的負荷が大きいであろうということ。それから仕事のスケジュールや家族状況等の側面を考慮いたしました。その他といたしまして、海外の血縁患者さん、又は日本在住の血縁ドナーさんが、日本の採取施設を主治医の先生同士で選んでいただいて、連絡調整するのは、各々に大変な負荷がかかり、移植スケジュールそのものに大きな影響が出るのではないかとも考えました。そして発生件数は、年間に1件あるかないか、過去のこういった相談があった実績から、こういった件数を想定しております。こういったことを考えますと、現在の骨髄バンク事業の事業範囲で検討しますと、事業内容に合致すると考え導入可能ではないかと考えた次第です。

 次のページです。コーディネートの流れは非血縁と全く同じですので、割愛させていただきます。血縁であっても検査を受けていただき、最終同意面談も受けていただき、担当コーディネーターが付いてコーディネートをさせていただくということにしております。

 次に参考2ですが、国際コーディネート料金ということで、先ほど申し上げましたとおり、血縁関係であっても日本で行う工数には全く変わりはありませんので、濃いオレンジ色の所を御覧いただきまして、アメリカに患者さんがいらっしゃり、ドナーさんが日本にいらっしゃる場合、現在の国際コーディネート料金と同様の金額を請求させていただくという流れです。以上です。

○小澤委員長 ただいまの御説明について、いかがでしょうか。

○坂巻委員 採取料金は採取病院にとっては、一応、保険で請求できる金額を請求するということですか。

○小瀧参考人 これらは全部実費になりまして。

○坂巻委員 全部実費でも、日本の場合、かなり安いですよね。そうすると、この差額はどのようになるのですか。

○小瀧参考人 差額は骨髄バンクの調整料ということで頂戴しております。

○小澤委員長 そのほかいかがでしょうか。年に1回あるかないかというお話のようですが、よろしいでしょうか。エクストラのサービスみたいな仕事になるような感じがしますけれども。特に御質問がないようでしたら、その次に移りたいと思います。

 次が5番で、「骨髄バンクドナーコーディネート開始人数増加の影響についてのトライアル事業の結果について」、小瀧参考人から報告をお願いいたします。

○小瀧参考人 引き続き、資料5です。こちらについては、過去にこちらの委員会でも報告をさせていただいている内容ですが、最終的なデータがそろいましたので報告いたします。もう一度背景を整理させていただきます。患者さんがバンクに登録をして初回にコーディネートを開始するドナーの人数の上限は5人です。患者1人当たりの移植までにコーディネートが必要なドナーの人数は、過去の解析において中央値11人ということが示されています。ドナーの再確定ですが、6人目以降のドナーまでのタイムロスがコーディネート期間を延長させている可能性があるという背景がありました。

 こういったことから、510人の解析の目的として、初回開始ドナー人数をトライアルで5人から10人へ増やし、次のことを確認することにいたしました。まず運用上の課題や問題点がないか、初回確定ドナーからの移植が増加するか、コーディネート期間が短縮するかの3点についてでした。対象・方法については、20174月から6月末までに実施し、拠点病院9施設と期間短縮に取り組んでおられる福田班の合計10施設からの患者登録で行いました。当初は、HLA8/8アリル一致ドナーが45人以上存在する患者を対象にしたということです。

 次ページです。トライアルの流れの簡単な説明を申し上げます。コーディネートフローです。左側から見ていただいて、移植施設から骨髄バンクに患者登録がありますとそこでドナー検索を行うわけですが、ドナー進行人数の所を御覧ください。今までは黒マル5人のところ、初回確定のみここを最大10名にするというものでした。10名で始めて、4人以下になるまでは再検索は行わず、4人以下になったところで最大5名までは再検索を行うということで、とにかく初回のみ最大10名ということを行ったということです。

 次ページの患者さんの背景は、総数としては18人のトライアルでした。患者さんの詳細背景は割愛させていただきますけれども、ここでドナーさんの確認検査を行ったものは中央値2回でした。総コーディネート人数は、先ほど過去の人数では11人と出ていましたけれども、今回のトライアルでは一番下の所、15人ということで結果が出ておりました。

 一方、ドナーさんの背景ですが、これら患者さんに対して検索に上がったドナーさんは、282人でした。背景の詳細は割愛いたしますけれども、これらのドナー背景については通常のコーディネートと変わっていませんでした。*の所に16という数がありますが、282人のドナーの方の中で16人のドナーさんは、過去1年以内に確認検査を受けて適格になったドナーさんでした。これは、他の患者さんとのコーディネートでということでした。その方々については、次のコーディネートに上がったときに確認検査を省略できる人たちということで、コーディネートが早く進むドナーさんが16人含まれていたことを示しております。

 次ページは、移植到達患者さんの背景です。18名のトライアル患者さんの中で、17人の方が移植到達をいたしました。左側から見ていただいて、今回のメインテーマである初回確定ドナー10人から移植に到達できた人数は12人で、全体の71%を占めておりました。同期間の通常コーディネートで、初回確定ドナーさんで移植に至った方と比較いたしますと、この方々は5人以下の方々ですけれども、全体の56%ということで、このトライアルで移植に至った患者さんが到達率が高いことが分かるかと思います。

 このトライアルの中で、11人目以降の確定ドナーさんの中から移植に至った方々は5人ということで、全体の29%ということでした。これらのことから、やはり初回10人の方から移植到達した人が高かったことが示されたと考えております。

 次に、患者登録から移植到達までということで、コーディネート期間を見てみました。トライアル患者さん17人のコーディネート期間は、患者登録から移植までが128日、一方、過去10年間の患者さんを見た場合は146日ということで、トライアル患者さんにおいては、コントロール群に比べてコーディネート期間が18日間短縮されたことが示されました。これは全体を見たものですが、黄色の骨髄と末梢血の内訳を見ていただくと、骨髄の場合が131日、PBの場合が98日となっています。

 次は、各症例について見たものです。オレンジの棒グラフの所ですが、初回確定10人のドナーさんから移植に到達できたそれぞれのケースです。PB4例、BM8例ありますけれども、それぞれのコーディネート期間がこのようになっています。赤い星印の方々ですが、先ほど御説明申し上げた確認検査省略ということで、一部の工程をパスできるドナーの方々でして、コーディネート期間が短くなる要因の1つになっていることを示しているかと思います。

 一方、黒星印の所ですが、ドナーさんを1人に絞った後にドナーさんの理由で中止になってしまったということで、つまり、もう一回ほかのドナーさんでコーディネートを進めなければならなかった方々で、コーディネート期間が延びていることを示しているものです。

 下のほうは、残念ながら11人目以降のドナーさんからしか移植ができなかった方々についてですが、やはりおおむね期間が延びているという結果が出ております。一番下の枠囲みの所ですけれども、11人目以降の確定ドナーから移植した症例では、初回確定10人のドナーから移植した症例に比べて移植到達までの期間が延長していました。ただし、有意差はありませんでした。確認検査省略ドナーの選択によりコーディネート期間が短縮した症例や、ドナー選定後のドナー理由中止によりコーディネート期間が延長した症例を認めたことを示しております。

 最後に、トライアル参加施設と当バンクからの意見ということで、3点あります。施設からは、通常より早く移植日が決まって有用であった。希望時期で移植することができたというお声を頂いております。一方バンクのほうからは、運用上の問題は確認されていませんでしたので、通常どおりスムーズに運んだものと認識しております。

 まとめですが、トライアル患者さんでは、初回確定ドナーから移植を行える確率が増加し71%です。通常の場合は56%でしたので、コーディネート期間が短縮しています。トライアル参加施設や骨髄バンクにおいて、コーディネート開始ドナー数増加による大きな問題点は確認されなかったということでまとめております。以上です。

○小澤委員長 ありがとうございました。それでは、何か御質問はいかがでしょうか。

○梅田委員 今御説明いただいて、コーディネート期間の短縮については骨髄バンクのボランティアの立場でも長年要望していたところで、非常に大きな成果ではないかとうれしく思います。ただ、データを見ていますと、5ページの所で10人でトライアルを始めているのですが、この表の一番右の所の総コーディネート人数は、10人を超えている方が結構多いということです。トライアルが3か月のデータということですけれども、この4月からは実施に移り今後はデータが更に取れると思いますので、その解析をいただいて、必要ならば10人をもっと増やしたほうがいいのか悪いのかとか等を厚生労働省でも判断いただいて、更にコーディネート期間を短縮できないかという方向で御検討を是非ともお願いしたいと思います。

○小澤委員長 余り大きな問題点はなかったということですから、コーディネーターの負担は特に増えはしなかったということですね。

○小瀧参考人 はい。

○小澤委員長 ですから、10人からもう少し増やすことは可能ではあると。

○小瀧参考人 今後、検討かと思われます。

○小澤委員長 もともと従来の必要ドナー人数の中央値が11人ということですから、10人で全員決まるというわけではなかったわけですしね。

○小瀧参考人 そうです。

○井内移植医療対策推進室長 コーディネーターの負担は増えているので、その部分を診療報酬で評価されています。バンクでは増員を図るということでやっておりますので、人数を増やすのも多分今後の検討課題ではあると思いますが、簡単に増やせるものではないという認識でおります。

○小瀧参考人 補足させていただきます。本導入は4月から始めていますけれども、コーディネート開始件数は10%ほど増えてきていますので、今言っていただいたように今後、注視する必要はあると思っております。

 もう一点よろしいですか。先ほどの委員長の御発言ですけれども、この71%の患者さん方については、初回10人のドナーさんから移植に至っております。総コーディネート人数は10人以上なのですけれども、その中でも最初の確定ドナー10人の中から移植に至ったケースでした。

○神田委員 前回もお願いしたことですけれども、公的に残る資料として6ページの比較対象の146日という分はHLAの不適合も含まれていて、しかも2004年から2013年という古い時代のデータですので、やはり同時代の、かつ8/8アリルマッチが45人以上いるというものすごく恵まれた条件の患者さんで比較しないと、本当にそれだけ人員を増やすほどの価値があるかどうかは分からないと思います。これは残る資料ですので、そこはやはり再解析した資料を作らなくてはならないかと思います。

○小瀧参考人 ありがとうございます。

○小澤委員長 感触としてはどうですかね。有意差が出なくなってしまう。まあ何とも言えないでしょうけれども。一応その辺は、もう一度解析はされますか。

○小瀧参考人 はい。

○坂巻委員 昨年の全体のコーディネート期間が確かかなり短くなっていたと思いますが、あれだけ短くなった理由は何でしたか。

○小瀧参考人 前年よりも短くなってきております。その理由については、2016年頃から内外ともにコーディネート期間短縮のいろいろな取組について、現場の先生や骨髄バンクで情報を共有するようになってきたことがあるのが1つと、PB件数が増えてきましたので、それも影響しているかと思います。

 移植希望日程時期を移植施設側に伺うのですけれども、希望時期の精度を上げるということで、今まで第3希望辺りまで伺っていて第3希望辺りまでに調整できればよいのではないかというところで調整をしていたのですが、それを絞り込んで第1希望にとにかく注視して調整を行うといったことで、期間が少し短くなってきたかと考えております。

○坂巻委員 この調査時期は去年ですね。一方初回確定ドナー10人で調査した群の対照となったのは2004年から2013年ということになると、今回の調査でコーディネート期間が短かったという中には全体が短くなったというファクターも入ってしまっているわけですよね。

○小瀧参考人 そうです。というか、この過去10年間のデータは、確かに神田委員もおっしゃるように全体のものが入っております。昨年の単年度のコーディネート期間は単年だけで、この解析とは対象外になっています。

○小澤委員長 昨年は、何日間ぐらいだったのですか。

○小瀧参考人 患者登録から移植まで133日ほどになっております。

○小澤委員長 なかなか微妙なところですが。

○坂巻委員 そうすると、今回の調査研究は133日対128日の比較ということになるわけですか。

○井内移植医療対策推進室長 これは、前回のこの委員会でも議論をしていただきました。実際この初回確定ドナー10人から移植されたのが今回、結果として71%ということで、初回に声掛けした人から提供に至るということはやはり早くなるファクターになるだろうということです。今いろいろ御審議いただいていますが、実際に全体で動かし始めると更によく分かってくるとは思いますが、去年のトライアルの中間報告においても、コーディネート短縮に有効だろうとの御意見をいただいたことを踏まえて、我々としても診療報酬改定のほうで要望させていただいたというのがあります。

 先ほどからありますように増員も関係することで、簡単にやって引っ込めてという話ではなくて、我々としてはこれはコーディネート短縮に効果があるというのを前回の委員会でも御意見いただいた上で、そういった形で進めています。今後、効果があると思って1回やったけれどもなかったというものについては当然取り下げていくべきだと思いますので、今後骨髄バンクでは本日出た意見を踏まえて、きっちりと再解析を継続的にしていくということで更なる改善策を提案していただけるように、我々としてもバンクとも協力してやっていきたいと思います。

○小澤委員長 理論上は恐らく短くなるのでしょうけれども、有意差を出すには件数が相当増えないと難しいかもしれないですね。一応これは研究事業になっていますので、神田委員が指摘されたように後でネガティブなコメントが付かないように、解析はしっかりしておいたほうがいいかとは思います。そのほかに、何かいかがでしょうか。

○野村委員 私が言うのも本当に偉そうで恐縮なのですけれども、30年近く新聞社にいてここの委員会にも何年かいさせてもらって、この医療に関しては医療関係者と患者さん家族、バンク、ボランティア、皆が一緒になって作り上げた医療という印象を委員会に参加してより色濃く実感しているところではあります。今回の微妙な数字が出た、でも引っ込めるわけにはいかないとかいろいろありますけれども、効果があるなしも含めて先ほどの造血幹細胞移植の明確化についてもですが、やはり大事なのは現場の医療関係者の医療の進めやすさと患者さんの不安を取り除くのが第一だと思いますので、一緒になって作り上げてきた医療という風通しのよさを利用して、何にしても、とにかくすぐフレキシブルに、柔軟にテンポよく対応するというのを続けていただけたらと思っています。

○小澤委員長 何かほかにありますか。時期的な面で、こういう制度にはどういう形で移行していくのですか。

○井内移植医療対策推進室長 5人から10人のですか。

○小澤委員長 トライアルではなくて、実際にそういう方向にシフトするのは、いつ頃を想定していますか。

○小瀧参考人 本件については、この4月から開始しております。

○小澤委員長 失礼いたしました。そのほかは、よろしいですか。予定している議題は以上です。

 最後に6番で「その他」とありますけれども、委員の先生方から何か御発言はありますか。いかがでしょうか。今回は、議事の内容にしては2時間という長い時間を取ってありますので、自由に御意見を出していただければ、あるいは今後、議論すべき点が何かありましたら、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。特にないようでしたらこれで終わりにしたいと思いますが、事務局からは何かありますか。

○瀬戸室長補佐 本日は活発に御議論いただき、ありがとうございました。次回以降の開催につきましては別途調整させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○小澤委員長 それでは、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

(了)

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