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2017年9月4日 第31回 社会保障審議会生活保護基準部会
社会・援護局
○日時
平成29年9月4日(月)10:00~12:00
○場所
厚生労働省共用第8会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
小塩 隆士 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・生活扶助基準の検証
・その他
○議事
■駒村部会長 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第31回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
まず、事務局より委員の出欠状況について、報告をお願いいたします。
■鈴木社会・援護局保護課長 おはようございます。本日の委員の御出欠でございますが、宮本委員より御欠席との御連絡をいただいております。その他の委員の皆様は御出席をいただいております。
また、事務局におきまして、定塚局長が他の公務の都合上、遅れてまいります。
それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
前回の部会では、生活扶助基準の検証に当たり、年間収入階級に加えて消費支出階級五十分位別に消費動向の分析を行ってはどうかという意見が出ました。本日は事務局より、前回の意見を踏まえた作業の進捗報告をいただき、それを踏まえて今後の分析方法について議論したいと思います。
その次に、生活扶助基準の展開について議論し、最後に就労自立給付金のアンケート調査結果について、事務局から報告いただきたいと思います。
まず、事務局から資料1についての報告をお願いいたします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1から説明させていただきます。「消費支出階級五十分位別消費データ分析の進捗状況」という資料でございます。
1ページ目、先ほど部会長から御説明がございましたとおり、前回の生活保護基準部会において、年間収入階級五十分位別に加えて、消費支出階級五十分位別にも消費動向の分析をしてはどうかということで、御意見がございました。
また、その中で消費支出階級による消費データについて、費目別の支出構成等も見て、何らかの規則性を見出すことができないかという御意見もいただいたところでございます。
「このため、」というところでございますけれども、1カ月当たり消費支出階級五十分位別に並べまして、各消費支出の費目につきまして、食費、光熱費など、生活に必需的な費目である「固定的経費」と被服費ですとか教養娯楽費など、所得の状況によって変動しやすい「変動的経費」に分類をした上で、支出額、支出割合の集計を行ってございます。
固定的経費と変動的経費の分類方法につきましては、家計調査ではそれぞれ基礎的消費支出及び選択的消費支出という名称で分類をしてございますけれども、支出弾力性の計算方法に基づきまして、固定的経費、変動的経費ということでまず分けてございます。
支出弾力性は下に※印を書いてございますけれども、消費支出総額が1%変化したときに、各費目が何パーセント変化するかを示した指標でございまして、支出弾力性が1未満、つまり支出総額の増減と比べて変化が少ない費目について、今回は「固定的経費」で、1以上、支出総額の増減よりも変化が大きい費目につきましては、「変動的経費」ということで分けて分類をさせていただいております。
年齢が異なると支出構成も変わるだろうということで、今回、モデル世帯として分析を行うことにしております高齢単身世帯、また高齢夫婦世帯及び夫婦子1人世帯それぞれについて、各費目の分類を行っておりますので、作業の状況を報告させていただきます。
下に「参考」ということで家計調査の算定方法、計算方法を記載してございますので、ごらんいただければと思います。
2ページ目が今、御説明したとおり、高齢単身世帯等々、3つのモデルでそれぞれ費目の分類を行った一時的な作業結果でございます。こちらについては、中分類で算定、分類をした結果となっております。
「食料」については、「外食」を除きほぼ固定。それぞれ世帯類型ごとに若干入り繰りはございますけれども、そういった状況になってございます。
また、「光熱_水道」についてはほぼ固定ですとか、「家具_家事用品」については「家庭用耐久財」については変動的経費、あとは「寝具類」については変動的経費。「家事雑貨」については固定的経費という状況になってございます。
続いて、3ページ目も同じくそれぞれ費目ごとに変動的経費、固定的経費の分類を行ったものでございます。
「被服及び履物」で見ますと、「下着類」はどの世帯でも固定。全般的には変動的経費になってございます。
また、「交通_通信」につきましては、「交通」についてはどの世帯でも変動的経費。「通信」については、それぞれ固定経費となってございます。
「教養娯楽」については、高齢世帯については「書籍_他の印刷物」については固定的経費になっておりますけれども、全般的には変動的経費。
「その他の消費支出」につきましても、若干入り繰りはございますけれども、全体的には変動的経費と分類をしてございます。
4ページ目以降が、世帯類型ごとに支出割合とか支出額をグラフ化したものでございます。こちらについても先ほどの中分類の分類に基づいて、各費目の支出額等を積み上げたもので計算をしてございます。
4ページは、高齢単身世帯の支出割合を、全体を100とした場合に固定的経費の全体額の支出割合がどれくらい占めるか。同じく変動的経費の割合がどれくらい占めるかということで、消費支出の五十分位別にシェアを並べたグラフでございます。
5ページ目は、それぞれの費目について支出額、実額を消費支出階級別に並べたグラフでございます。
6ページ目が、固定的経費につきましてのそれぞれのシェア、10大費目別のシェアをグラフ化したものでございます。線がいろいろとあって見づらくて申しわけございませんけれども、一番上の青い線、ひし形の線が「食料」。次いで2番目の線が「光熱・水道」となってございます。
7ページ目、こちらも見づらくて恐縮でございますけれども、変動的経費について各費目の10大費目別に分けたもので、グラフ化してございます。一番上の横バーになっている緑色の線が、「教養娯楽」。その少し下、若干分位によって入り繰りがございます。あとは紫色のひし形の線が「その他の消費支出」になってございます。
今までは高齢単身世帯のグラフでございましたけれども、8ページ目以降が高齢夫婦世帯の支出割合を見たグラフでございます。
同じように、9ページはそれぞれの支出額の変動。
また、同じように10ページにつきましては、固定経費の中の10大費目別の全体の割合をグラフ化したものでございます。
11ページは、変動的経費の全体の10大費目別の割合を見たものでございます。
12ページ以降は、同じく夫婦子1人世帯で支出割合、13ページは支出額、14ページ、15ページとそれぞれ固定経費の支出の割合。また、変動的経費の支出費目の割合ということで、グラフ化してございます。
こちらについては、まずは一時的な集計結果ということで御提示をさせていただきましたけれども、今回、固定経費と変動的経費で分類をした考え方ですとか、分類の仕方がこういった観点で分析を進めていくことについてどうかということで、御議論いただきたいという点。また、各費目でも、それぞれこういった費用について特別に見たほうがいいのではないのかという御意見があれば、ぜひいただければと思ってございます。
また、今後の分析の考え方ということでも、こちらの分析をしていってどういったところで生活が苦しくなる点ですとか、最低限度の生活が維持される水準はどの程度かというところを導き出していくためには、どういった分析をしていくべきかという点も御議論いただければということで、資料を用意してございます。
資料の説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございます。
では、資料1について、皆さんと議論をしていきたいと思います。
前回から、どの所得分位と比較して生活保護の基準を考えていくのかという議論に入っております。今回、いろいろと試行錯誤というかどの基準、所得分位が保護の基準にふさわしいのか、どういう切り口があるのか、いろいろとデータを見ているところであります。
きょうは先ほども事務局から説明があったように、資料1にあるように家計調査の支出弾力性の分析方法を準用して、固定費と変動費を分けて、この2つのバランス、支出状況が分位ごとに異なっていくところに注目して、比較対象を見つけることができないかということを今、試みているところであります。
委員の皆様からこの点について、この進め方について御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
いかがでしょうか。
小塩委員、いいですか。
お願いします。
■小塩委員 きょうは非常に興味深い資料を出していただきましてありがとうございます。
幾つかお聞きしたい点とコメントをしたい点があるので、申し上げます。
1番目はそもそもの質問ですが、今回、固定的経費と変動的経費が区分され、非常に興味深い結果が出ています。回帰分析をベースに分析されているのですが、そのときにデータを五十分位に集約した上で回帰分析をしているのか、それとももとの各世帯のデータを使って回帰分析をしているのか。そこを確認したいと思います。それが質問です。
2番目はコメントです。年間の収入だけではなく消費支出をベースにして議論することで何か新しいことができないか、という問題意識で分析をされたと思うのですが、生活扶助の基準はやはり年間収入がベースになっています。そうすると、今回得られた消費支出ベースの議論と年間収入ベースの議論をどう関連づけるのかが重要になります。今回消費支出で五十分位に分けられているのですが、それぞれの分位に分類された人たちの顔ぶれが、収入で五十分位に分けたときと同じになっているのかどうか。もし顔ぶれが違っていたら、今回の結果を生活扶助基準の議論に直接つなげるのはなかなか難しいと思うのです。恐らくかなりダブっているのではないか、重なっているのではないかと私は思います。だから余り厳密な議論をする必要はないかもしれませんが、そこは気になります。
3つ目は、その裏返しですけれども、今回は支出をベースにして分析をされているのですが、元に戻って年間収入をベースにして、年間収入に対する弾性値を計算したら同じような結果が出てくるのかどうか。既になさっているかもしれないですけれども、そこら辺の印象をお聞きしたいと思います。
以上です。
■駒村部会長 御質問の点は、五十分位単位のリグレッションなのか、個票というかそもそものデータを使ったリグレッションなのかという確認です。
2つ目以降は、前回から何をもって並べかえていくのかというところで、高齢者になると収入にいろいろと課題というか、入ってこない。それを経済力としてどう考えるのかということで支出も見ているわけですけれども、並べかえの方法によって2つのグループにどのくらいの違いが出てくるのかということ。
それから弾性値を収入で見たらどうなるかという3つ。
事務局からお願いします。
■免田社会・援護局保護課長補佐 では、私のほうから第1点目の回帰式の考え方につきまして、説明させていただきます。
1ページをごらんいただきたいのですが、「参考」として家計調査における支出弾力性の計算方法が掲載されておりますが、基本的にはこちらに倣って計算をさせていただいております。まず、「1 回帰式」にある変数の設定をごらんいただきたいのですが、こちらの「C_ij」が各支出項目の実際の金額になってございます。ここで第j年間収入階級と書いてございますように、まず、年間収入階級別に消費支出の平均をとって回帰分析を行っているということでございます。この分析を高齢単身世帯、高齢夫婦世帯、夫婦子1人世帯別にそれぞれのデータを用いて行っております。
年間収入階級につきましては、夫婦子1人世帯と高齢夫婦世帯につきましては、「2 使用データ」に書いてございますように、家計調査では全部で18階級に年間収入が分かれてございますので、そのうちの一番低い階級と一番高い階級を除いた16階級のデータを使って、回帰式を行っておるということでございます。
1点目につきましては、以上でございます。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、2点目、3点目について、現時点の事務局の考えということで、御説明をさせていただきたいと思います。
まず、1点目、御質問でございますけれども、消費支出階級と年間収入階級で五十分位に分けたときに顔ぶれが違うかどうかという点でございますが、年間収入階級別に分けた、例えば第1五十分位でも実際の支出が多い人、少ない人は、どうしても若干ばらつきが出ることになります。
一方、消費支出階級で見ますと、それぞれ年間収入階級で分けたときの支出が少ないグループを集めてきて、結果としてその方が消費階級の第1五十分位になろうかと思います。
全体の消費支出額の平均値を比べますと、やはり消費支出階級で分けた分位のほうが、低い分位だと年間収入階級で分けた消費支出額の平均値よりも消費支出全体が低いことになりますので、若干顔ぶれの入り繰りはあろうかと思っております。どの程度かぶるか、変動があるか、そういった作業ができるかどうかは、検討してみたいと思ってございます。
一方、今、いろいろと年間収入階級と消費支出階級の2つの方法で分類をしてみたところでございますけれども、例えば、同じく年間収入階級で分けた場合で、考え方でこうした場合には、ある程度比較水準がこの程度であろうと。
一方で、消費支出階級で分けてこういった支出費目で分類した場合は、この程度が比較対象分位であろうというものが、例えばそれぞれどういった視点で見てもある程度一定の範囲に収まるとか、それぞれ違うのかどうかというところも見てみる必要があるのかということで、考えてございます。
また、同じようにそれぞれ今、そういった固定的、変動的経費の支出割合の分類は、やはり消費支出階級で並べたほうが、各分位の消費支出の総額がフラットになるというか、なだらかな曲線になるということで、比較対象としては、消費支出階級で分類をしたほうが各分位の各費目の支出割合の変動はわかりやすいかなということで、まず、消費支出階級で分類をさせていただいているところでございますので、年間収入階級別での支出弾力性の計算ですとか、支出費目別の支出割合の変化も見てみたらどうかということであれば、それは作業をさせていただければと思ってございます。
■駒村部会長 小塩先生、よろしいでしょうか。
では、栃本先生、お願いします。
■栃本委員 この間見せていただいたものは、本当に私も興味深くて、自分でやってみれれば、それぞれの棒グラフを透明のフィルムで重ね合わせて、見比べるとすごくおもしろいです。このかたちであるとめくっていると何ページかを行ったり来たりするのだけれども、透明のもので重ね合わせてみると、なるほど、新しい発見や気づきが得られます。先ほど先生がお話しになったことは、大変興味深いものでした。
それで2つ質問なのですけれども、きょうの2ページ以降の固定的経費と変動的経費の分類結果で大分類と中分類になっていますが、中分類では高齢単身世帯と高齢夫婦世帯と夫婦子供の勤労世帯であるものは固定になったり、あるものは変動になっていたわけですが、その上で、大分類としては固定だとかそういう形で整理されていますね。これは全部がっちゃんこしたもので、弾力性を見てという形でそうなっているということですよね。そういう理解でいいのですね。
もう一つは、高齢単身世帯と高齢夫婦世帯であってもこれだけ違う。また、それとは意味ではパターンが違うわけなのですけれども、夫婦と子供さんがいらっしゃる勤労世帯でも一つ一つ中分類を見るとこれだけ違いがあるので、したがって、これはもともとこういう3つで見ましょうと。特に今回は高齢単身世帯だけではなくて、高齢夫婦世帯を入れたわけで、これはさらにわかりやすくなっているのだけれども、これはこれでいいのですが、その上でなのだけれども、前から議論されているワンペアレント・ファミリー母子、父子。特に母子ですけれども、そういう世帯があるわけで、ボリューム的にも先ほどの夫婦子1人世帯よりもはるかに実際のボリュームは大きいわけなので、そういうことからすると、この3つの分類でこうこうこうなのだけれども、これは私が聞くのも変なのですが、ワンペアレント・ファミリーの場合はこれがどういう形になるのか。右側の夫婦子1人世帯に近くなるのかとか、これは自分で考えなさいということでもあるのですけれども、だけれども、その上で実際に生活保護費、生活保護の額を算定する場合には、母子家庭など従来からこの審議会では議論を特に入念にということになっていますので、そのことをお尋ねしたいということです。
以上です。
■駒村部会長 1番目のところは、一応事務局に回答をいただいて、2番目のところは、この作業の意味を少し議論しなければいけない点で、第2番の基準の展開の話にもつながってくるのですけれども、どういう世帯類型同士を並べかえて見ていくのかというときに、果たして実際に多いとはいうものの、母子世帯を比較対象の一つのベンチマークとして置くのか。ただ、もちろん弾力性自身がどういう構造になっているのかは、見ることは非常に重要だと思うのですけれども、他方で比較する一個のグループとして母子同士を見るのかは、少しこの作業の意味にもかかわってくる点だと思います。
事務局からこの2点ほど、今の点、説明いただけますか。
■清水社会・援護局保護課長補佐 まず、1点目、それぞれの分類方法でございますけれども、中分類は中分類の全体経費で、大分類は改めて大分類の全体の消費支出額で比較をして計算した結果でございます。
また、一人親世帯につきましても、当然ながら一人親世帯で算出をすることは可能でございますけれども、サンプル数の関係上、そういったデータ結果をどう評価するかは、一つ御議論があるところかと思ってございます。
あと一点、資料の関係でお詫びがございまして、資料の4ページ、高齢単身世帯の支出割合と12ページ、夫婦子1人世帯の支出割合のグラフが同じものを張りつけてしまったようでして、非常に申しわけありませんが資料のミスでございます。また、後日になってしまいますけれども、差しかえて正しいものということで提示をさせていただければと思っておりますので、申し訳ございません。
■駒村部会長 ちょっとまずいですね。後で注をつけて資料の差しかえをしておいてください。
岩田委員がお先に、次に阿部委員。
先に岩田委員、お願いします。
■岩田部会長代理 私の聞き違いかもしれないのですけれども、先ほどの小塩先生の御質問の中で、年収分位と消費支出の分位について、もともと生活保護は年収でやってきたので、両者の関係はどうかという御質問だったと思うのですが、年収第1十分位を使ったのは水準均衡を宣言した時です。生活保護の相対比較とか水準均衡は、使用する資料も一定しているわけでなく、この水準均衡だと宣言した時は、家計調査を使って全消を使っていないのです。いずれにしても、水準均衡は消費支出の比較であって、年収はどこの階層を見ていけばいいかというだけの話なので、もともと生活保護は年収にそんなにこだわっているわけではないのです。実は皆さんが考えられているより、時代によって使う資料も違うし、生活保護基準と一般家計の比較ということではなく、生活保護世帯の家計と一般家計を比較することも結構行われていた。生活保護家計調査自体が、例えば東京都しかなされていない時代もありましたので、その場合は東京だけの比較ですね。だから、現在のやり方が不動のものと思われがちなのですけれども、実は相対比較という意味も時代によって大分違うのです。最終的に生活扶助の場合は日常生活費と考えればいいので、消費支出であっても年収でやってもどちらでも構わないといえば構わないのですけれども、年収でやるとかなりごちゃごちゃというか、うまく関係しない部分があるのです。これはやはり年収の五十分位なり20でも10でもいいのですけれども、その割り方が、これはたまたま50分の1ずつやったにすぎませんので、必ずしも収入階層とか消費支出階層を素直に50等分しているというわけではないので、図にするとこちらのほうがやはりきれいに出る印象はあります。だから、それはどちらでもいいのではないかという感じもするのですけれども、使いやすいというか、割合変更点みたいなものがはっきり出そうなほうで使うというのでもいいのではないかと思います。
それから、栃本先生の御意見の母子に関わっての意見です。今回、所得弾性値を使って固定、変動を世帯3類型でやってもらいました。しかもこの所得弾性値は統計局は家計調査で実はやっていて、全消で今回やってもらったのです。だから、非常にオリジナルなものです。私としては中分類だけではなくて、細分類の中でポイントになる、例えば交際費の中に贈与金とか、何かそういうものが欲しいという感じはするのですけれども、ここまでやっていただいているので、余りそれ以上やってもそう大きくは変わらないかもしれないと思っていますが、ただ、よく見ると、常識的にはえっと思うようなこともなくはないのです。固定、変動を常識的に考える。
それで、母子でやるという御提案なのですけれども、理論的には賛同するのですが、現実のデータでいきますと母子は非常に少ないデータなので、母子世帯の家計の消費、水準にしても構造にしても、非常に解釈が難しい結果がよく出ているのです。それでこの変動と固定を合わせてやると、大変ぐちゃぐちゃになっていくのではないかと思うのです。
高齢を単身でやるか夫婦でやるかという問題は、後でまた出てくると思うのですけれども、夫婦子1人と高齢世帯を今回モデルにしようということでこれをやっているので、そこに母子は入れないほうが、むしろいいのではないかというのがあります。
■栃本委員 わかりました。
■駒村部会長 阿部委員、お願いします。
■阿部委員 何でこの作業をやっているのかというのを、もう一遍確認の意味でおさらいしたいと思います。
1つ目、すごく誤解が生まれやすいのが、固定と変動という分け方なのです。固定のほうが生活必需品で、変動のほうがそうでないというのではないのですね。これはただ単に所得階級によって支出額、消費額に差があるものと差がないものというだけのことですので、例えば、夫婦子1人世帯で教育費が全て変動になっておりますけれども、それは教育費が必需品ではないということではなくて、ただ単に、所得階級によって差がありますよということだけだと。そこはまず、一遍確認しておきたいと思います。
その上で、なぜこういうようなグラフを書いているかというと、この中から家計構造が大きく変わる分位がどこだろうというところを見るために見ているわけなのですね。ですので、ブルーのラインと赤のラインで大きく変わっていく閾値みたいなものがあるのかどうかを見ているわけです。そういった意味では、非常に見にくいというのはあるのですけれども、例えば高齢単身だとかなり固定的経費も直線的に右肩下がりになっているので、非常に難しいところもありますが、高齢夫婦世帯であるとやはり閾値みたいなもの、ちょっと平準化するところがあり、またそこからぐっと下がっていくようなところが見えないこともないといったところで、この変動点を見ることによって、そこから下、またはその周辺の階級の消費総額と生活扶助の金額を比べましょうという作業をするために、どこで切るかというのを見るために、これをやっているのだというのが私の理解ですけれども、そこを皆さん、共有していただいているのかどうかをお聞きしたいということがあります。
そういった上で、今回夫婦子1人世帯が見られないのがすごく残念なのですけれども、このグラフからどこまで読み取れるのかというところなのですが、正直なところ、ここで13階級から全く消費への家計のパターンが違いますねとか、そういったことを言うのが非常に難しいというのが印象としてあるということかなと思います。
意見だけです。済みません。
■駒村部会長 資料1のモデル世帯をどう設定していくのか、どの世代、種類をつくっていくのか、母子という形で分けるのかは、先ほども話したように、資料2の展開の話にもかかわってくるわけですけれども、今、岩田先生からお話があったように、やはりデータの制約もあり、今後の展開の問題もあり、夫婦子1人、高齢単身もしくは高齢夫婦世帯で作業としては進めていこうという考え方であるわけです。
もう一つは、何のためにやっているかというのは、今、阿部先生から解説をいただいたように、どこの分位で家計の構造的な変化を見出すことができるのか。見出したところで生活扶助の基準の比較の手がかり、ポイントにしていこうということでありまして、阿部先生はポイントがなかなか見つからないという御意見でございます。
ほかの委員の方から、いやいや、そうとは言わないのではないかと。もしかしたら、ここで構造的なパターンが何か見られるのではないか。もう一つ何かを組み合わせれば、場合によってはここから家計の構造的な変化が出てくる、要するに、生活のかなり工夫しているポイントのここから先が出てくるのではないかということも見えてくるかもしれない。この点が前半部分の議論のポイントになるわけです。
ほかの委員の方から御意見いかがでしょうか。
山田委員、お願いします。
■山田委員 細かい資料、作業をどうもありがとうございました。
1点目としては、固定的、変動的と枠組みとして分けられたのは、大変重要なところだと思います。これは阿部委員とも共有しておりまして、もとの基礎的とか選択的とかいう言葉だと、やはりちょっと誤解を生むおそれがある。特に教育費では選択的という言葉は誤解を生むおそれがあるので、やはり固定的、変動的とネーミングして、中立的なワーディングをしたのは、工夫されたのではないかと思います。
2点目で、先ほど小塩委員の議論にもありましたけれども、消費で見るのか所得で見るのかということに関して、そもそも論ですが、変曲点を見出そう、閾値を見出そうという考え方から出発して、細かく見ていったもの、と理解しています。今から去ること60年前くらいに中鉢正美先生が書いた論文を読みますと、大体変曲点には4つくらい説明がある。
1点目が、所得の低下に対して、生活構造を維持しようとして個々の家計が抵抗しているという、同一世帯の動態的な側面を捉えたものという考え方。
2点目としては、所得が一定程度低いとそうした家計で消費構造が大きく崩れ、壊れてしまったような状況が出てきているという考え方。
3点目としては、健全育成にかかる費用という岡部委員の話ともかかわりますけれども、社会生活を維持するために最低限必要な消費支出があるとすると、食費等を切り詰めてそこに回さざるを得ないというのが出てきたのではないかということです。
4点目としては、先ほどの小塩先生の議論ともかかわりますけれども、実は所得階層は結構入れかわっている。低所得層と高所得層で入れかわっている。だから短期で見てしまうと、所得が高いほうから流入してきた人が最も低い所得層として捉えられてしまって、消費支出はやや高目に出てしまうという人たちが、一定割合含まれていると考えられる。
そうすると、やはり所得で見ただけでは、所得で分位を区切ってしまうと、非常に分散が大きくなってしまうのですけれども、消費で区切ってみると、ひょっとしたら可能性としては、より閾値が明らかにされるのではないかということで、こうした作業をしているものと理解しています。
3点目としては、一部資料の差しかえがあるようですので、今後差しかえた資料を見ていかなくてはいけないと思うのですけれども、高齢単身と高齢夫婦、特に費目別に見た場合には、やはり単身はサンプルサイズが小さいこともあって、かなりぎざぎざしているので、何か傾向を見るとすれば、サンプルサイズがなるべく大きい夫婦世帯。先ほど栃本委員からもありましたように、やはり母子世帯は重要な世帯類型であることは間違いないわけですけれども、サンプルサイズの問題があるのではないかということで、阿部委員は見られないとか見られるとか、人によって閾値が見られたり見られなかったりするのではいけないので、今後はより統計的な手法を用いてそういったものが見えて、客観的に示されるのか示されないのかを見ていきたいと思います。
私からは以上です。
■駒村部会長 岡部委員がまだ初めてなので、その後に栃本委員。
お願いします。
■岡部委員 3点です。私は質問ではなくてコメントです。
1点目。今、お話に出ました1ページの固定的経費と変動的経費、あとは必需的な費用になると非支出的な費用ということに関して、できましたならば、こういうような読み方でしていただければよいのではないかと考えております。
ポツの2つ目の記述です。ちょっと長くなりますけれども、「被服費や教養娯楽費など、比較的所得の状況によって変動しやすい必需的な費用である『変動的経費』」としますと、それと対応関係になりますので、そうしていただくと、データの読み方に誤解が生じないのではないかと思います。
2点目。所得、年間収入階級別あるいは年間消費支出階級別という形で小塩委員に口火を切っていただきましたけれども、そもそも水準均衡方式は中鉢正美先生と籠山京先生が考えられたエンゲル線の変曲点、抵抗線についての考え方をベースにしていますので、そう考えたときに、先ほどお話があったように収入の低下によって消費が抵抗する。そこで一定の消費の構造が見られるのではないかということで、これは先ほどお話が出たように収入金額別で見てもよいです。消費の構造の枠が見られますので、これはより丁寧に行うならば収入と消費の2つを見たほうがよいと考えます。また、収入階級別で行ってきた歴史もありますし、消費で行ってきた歴史もありますので、時間的制約と技術的制約があるかと思いますが、両者のデータを精査するのがよいのではないかと考えます。
3点目。これは先ほどから出ている高齢者世帯と夫婦子1人世帯は、生活保護の中で高齢者世帯が一番多いですから、これを分けるのは非常に意味がある。もう一つは、標準世帯の夫婦子1人世帯を見ることが必要だと考えます。これをどれだけ細かく見ていくかというのが、次の資料2で世帯類型あるいは年齢階級別に細かく見ていくというのは、行った方がよいのでしょうけれども、やはり一定のくくりでするにはどうしたらよいかという議論であり、次の資料2でまた改めてこの点について御説明と議論をされたらよいのではないかと考えます。
■駒村部会長 表現については、必需的という表現が少し後々問題になるのではないかという可能性もあるので、これについてはまた後ほど議論をさせていただくと。
それから並べかえについてです。何を軸に並べて分位の設定をしていくのかについても、それぞれメリットもあるし課題もあると思います。今の消費がデータ的にも安定しているのではないかという前提で進めておりますけれども、所得で並びかえても結果はどの程度反映するのかということは、チェックしておかなければいけない。
最後の点ですけれども、これは間もなく資料2のほうにも入っていきたいと思いますが、今回は夫婦子1人と高齢単身あるいは高齢夫婦のいずれかなのですけれども、2軸で展開を始めることになります。これが2軸、3軸、4軸とふえていくと、何か丁寧にやっているようにも見える一方で、データ制約の問題や展開そのものの安定性にも影響を与えてくると思います。これは後ほどの議論にしたいと思います。
栃本委員、お願いします。
■栃本委員 先ほど中鉢先生のお話がありましたけれども、籠山先生が北大時代にゼロ階層、それから生活の履歴効果を分析したと。やはりあれが基本だと思うのです。私も大学院時代、中鉢先生と籠山先生などから学びました。その議論からすると、、屈折する線とかを見るわけですね。その上で、変動的経費は別変動するから軽いという意味とはならず、逆に極めて重要な部分なのです。あと、所得の状況によって変動しやすいと書いてあるのですけれども、それ以外の要素でも実は変動しやすいのです。それはそうですね。所得だけで見るから変動するのではなくて、世帯であるとかその他、ライフコース上のへんかとか、高齢になるとか何とかいろいろな要素があってそれによって変動しやすい部分でもあるわけですね。そういう観点からすると、両者はともにイーブンに重要なもの、必要なものですね。変動するから多少幅を持ってみればよいといったことや、伸び縮みするものだから軽んじるというのでは全くありません。固定的経費の方が重要というものではなく、性質がそうだというだけです。したがって、そちらに着目して変動的経費をむしろ逆に重視してみることが屈折する、変曲点を見ることは、相当重要だと私は思います。
その上で、左側の表頭と表側、横はいいのだけれども、縦が変動的経費の場合は20%とか固定的経費の場合は30%とか、それぞれ違うのです。よくテクニックで顕著に見せるために、これを20にしたり40にしたりすることがあるではないですか。それはそのほうが見やすいからいいのだけれども、そういう意味で、自分でやれということかもしれないが、これの左側が20%、30%だと自分で伸ばさなければいけないから、20%と30%と左側の割合を別につくってしまっているから、同じものをつくっていただいて、50倍くらいに拡大してそれを遠目で見ると、数時間見ていると、非常におもしろいことがわかる。ぜひ事務局でパーセントを合わせたものを、もう一度お時間のあるときに頂戴したいです。
■駒村部会長 ありがとうございます。
事務局のほうでもどう対応できるか考えていただきたいと思います。
そろそろ次のテーマに行きたいわけですけれども、きょうの作業部会なり事務局からの議論をしていただきたいポイントに当たるのは、4ページと8ページ。本来は12ページだったわけですけれども、消費分位ごとに見たときに、仮に今回の方法で2つの支出グループに分けてみて、どの分位あたりが一つの参照点となり得るのか。あと、何の補強の資料をつければそこがより浮き出てくるのか、少し注目していただきたいところであるわけです。
4ページを見ていただくと、上位40以上になってくると、さすがに変動的経費のウエートがかなり大きくなってきて、自由にお金を使えているようにも見える。一方、50分の10より下になってくると、かなり窮屈な感じも見られる。
8ページを見て高齢夫婦世帯で見ると、様相は変わってきて、50分の25くらいを境に自由度が上がってきているようにも見える。他方で、やはりこちらも50分の10より下になると、かなり固定の割合が高いようにも見てとれる。
これと同じ話を12ページでもやりたかったのですが、12ページのデータは、きょうは問題があると。
■清水社会・援護局保護課長補佐 先ほど、資料の張りつけの誤りがあってということで御説明申し上げましたけれども、4ページに高齢単身世帯でついている表が夫婦子1人世帯の状況でございまして、失礼いたしました。なので、高齢単身世帯のグラフがついていない状況でございます。また、資料につきましては、差しかえた上で委員の先生に配付するとともに、ホームページはまた差しかえさせていただきたいと思います。済みません。失礼いたしました。
■駒村部会長 ということで、大事な資料なので見ていておかしいなという気もしたのですけれども、夫婦子1人世帯と高齢夫婦世帯については、評価を見ることができるということです。
もし、委員のほうからさらにこの辺に注目してと、さらにデータを加えたり分析を加えることによって、比較参照のポイントが見えてくるのではないかというヒントをいただければ、次の作業に入っていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
岩田委員、お願いします。
■岩田部会長代理 何かうまく見えてくるということではないのですが、8ページの今回夫婦子1人世帯のグラフがないので、単身と高齢夫婦。
■駒村部会長 4ページが夫婦子1人なのです。8ページが高齢夫婦なのです。
■岩田部会長代理 これが一番よくできたグラフで、先ほど山田委員からもこれまでの研究が幾つかの変曲点を示しているというお話がありましたけれども、これはとてもうまくできていて、大体3つのポイントがあって、1つは第8~第13くらいのところ、第8五十分位を境に固定支出が60%以上にぐっと上がって、80%近くまでになっています。第1とか第2だと非常に変動的なものが小さくなって、両方にこうなっています。
真ん中のところで両者が交差するわけですけれども、交差する25か28くらいのところが上になったり下になったりみたいなところがあって、それから緩く両者が分かれていって、さっきの第8~第13くらいのところでぐっと上がっていくような感じが、割合きれいに出ているかと思います。
3つ目のポイントは上のほうです。上のほうは42~44くらいのところで明らかに変動的な費目割合がぐっと上がって、固定的な割合がぐっと下がる。極端に上がったり下がったりということと両者がせめぎ合うことを考えると、大体3つくらいのポイントがあるかと思います。
エンゲル法則だけを使うよりも、今日的な家計を考えると、固定、変動を使ってかつてのエンゲル線に類似の考え方で、ここでかなり質的に家計が変わることを考えるとすると、8~13くらいのあたりを見ていく考え方は出てくるかと思います。
なお、固定、変動ですけれども、統計局は必需選択という言い方をしていまして、内閣府か何かは固定、変動に変えたと思うのですが、変動は少なくとも余裕があることを示しているのです。だから、かなり余裕が生まれていくのは、30くらいのところ。第30分位くらいから生まれていることは確かで、一番上の49~50のところがぐっと上がってきますから、これは異次元の家計ということは言えるかと思います。高齢夫婦世帯はデータ的にも割合安定していてこういうものがはっきり出ていますけれども、高齢単身世帯はこういうように出ない。これは単身の問題なのかデータの問題なのか、特に全消の高齢単身世帯は、女性世帯の割合がすごく多いのです。これは国調と比べて有意に多いのです。だから、女性単身の性格が少し出ていて、やや低所得層が多いとも言われているので、そういう影響がちょっと出ているのかもしれないので、使いにくいなとは思いますけれども、夫婦世帯はこれを見ると、結構きれいに出ている印象を私は受けました。
■駒村部会長 ありがとうございます。
次の作業への手がかりをお話しいただいて、エンゲル係数というわけではないけれども、この時代における何か必要なというか、尊厳のある生活のために必要な支出割合みたいなものが、どこかで見えてくるのではないかというお話だったと思います。
時間もございませんので、きょうの資料をまた後ほども見ていただいて、これと今のお話、つまり所得、消費で並べかえていった分位。例えば今、岩田先生が単身夫婦については8~12くらいの間、それから25くらいのところに2つの大きなポイントがあるということで、ここで一つのベンチマーク、比較参照点が見えたと考えるならば、その後、実際の扶助の金額を計算していくためにどういう作業が連なってくるのかが、資料2の話になってくるわけです。
よろしければ、資料2に向かっていきたいと思いますが、いかがでしょうか。いいでしょうか。
では、事務局から資料2についての説明をお願いします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料2「生活扶助基準の展開方法について」、資料の御説明をさせていただければと思います。
1ページ目、今回、生活扶助基準の検証については、今、それぞれ単身、夫婦のお話が出ましたけれども、夫婦子1人世帯と高齢単身世帯の2つのモデル世帯を設定して、基準の比較対象として所得分位の検討を行っていこうとしていたところでございます。
その上で、2つのモデル世帯をもとにどのように1類費、2類費に分けて年齢、世帯人員別、また級地別の基準額表を設定していくかという作業、展開と言っておりますけれども、どういった形で展開を行うのかということで整理をさせていただければということで、資料を御準備させていただきました。
1ページ目につきましては下のところでございますけれども、「平成24年検証における生活扶助基準の展開方法」で1類費につきましては、年齢体系、世帯人員、それぞれ年齢区分はせずに、全世帯のデータをもとに回帰分析をいたしまして、年齢区分の基準単価の指数化をした。
世帯人員体系についても、全世帯のデータをもとに各世帯の支出額の指数化をしたところでございます。
右上でございますけれども、2類費については年齢による違いは検証をせず、世帯人員体系だけの検証を実証したところでございます。
2ページ目につきましては、経緯を踏まえて一番大きい論点の整理ということで、記載をしてございます。
上から申しますと、一番上ですけれども、1類費についてはこれまで個人の年齢による消費の差に着目して、年齢別の基準額の単価を設定してきた。2類費の基準額設定につきましては、世帯人員別のスケールメリットということで、世帯人員別の基準額を設定してきた経緯がございます。
2番目の○でございますけれども、1類費については平成19年の検証の報告書において、1類費についてもスケールメリットが見られるという御指摘を踏まえて、前回の平成24年検証で1類費についてもスケールメリットについて検証をしまして、その結果、世帯人員別の逓減率を導入した経緯がございます。
「一方」でありますけれども、平成19年検証の報告書においては、2類費についても年齢による支出額の差が見られると指摘がされていたというところでありますが、先ほど申しましたように、前回の検証では年齢別の支出の差という検証は実施をしていない状況でございます。
今回、平成29年検証におきましては、夫婦子1人世帯と高齢期の世帯で2つのモデル世帯を設定しまして、それぞれの年齢による差の違いを踏まえた検証を行うことで、実施をしておるところでございますので、2つのモデル世帯をもとに基準額を作成する場合は、今まで年齢差を設けていなかった第2類費の基準額についても、そういった年齢による支出の差は見られるということで考えられることから、この場合の2類費のあり方について検討をする必要があるところが、一番大きな課題であろうかと思ってございます。
続いて3ページ、それも踏まえて1類費、2類費それぞれの課題、論点ということで、整理をさせていただいております。
まず、一番上でありますけれども、「年齢別の第1類費相当支出の算出方法」でございます。夫婦子1人世帯と高齢期の世帯でありますけれども、いずれも65歳を区切りとして設定している状況でございますので、年齢別の基準額の基軸となるもとについては、65歳未満の第1類費相当支出は夫婦子1人世帯をもとに、また、65歳以上の1類費相当額については、高齢単身世帯または高齢夫婦世帯を基軸として算出をすることでよろしいでしょうかということで、挙げさせていただいております。
また、その下の括弧書きでございますけれども、今、1類費の世帯人員に応じた逓減率を設けさせていただいておりますが、こちらも算出理論的には同じように、例えば65歳を区切りとして世帯人員別のスケールメリットを算出して、65歳未満のみの世帯の逓減率、また65歳以上の方のみの世帯の逓減率を算出することも考えられるところでございますけれども、しかしながらということで、実際の生活保護受給世帯については、当然ながら若年期、高齢者とさまざまな組み合わせが考えられるところを踏まえますと、そういった多様な世帯に対応するようなスケールメリットを設定することは、パターンを分けてというところは、実務上煩雑を極めることから、スケールメリットについては、従来どおり年齢による差を設けることなく設定してよいかということで、議論いただければということであります。
また、一番下の「年齢区分の設定」で、こちらも一つ大きな論点かと思っておりますけれども、今回65歳を区切りにモデル世帯を設定したことを踏まえますと、現行の年齢区分につきましては、60代については一つの区切り、また70歳以上で区切りがなってございますので、こちらの年齢区分、65歳を区切りに分けるとすると、どういった年齢区分が考えられるかというところ。
あわせまして、若年層の子供のときの年齢区分。青年期の年齢区分。これはもともと栄養所要量の違い等をもとにしまして、年齢区分を設定していたところかと思いますけれども、今日的な年齢区分の考え方をどう考えたらいいかということで、御議論いただければということで挙げてございます。
4ページ目につきましては、「(2)第2類費の世帯人員別基準の展開方法について」でございます。こちらについても少し先ほどの繰り返しになりますけれども、やはり今回モデル世帯をもとに基準を展開する場合、それぞれのモデル世帯から算出される水準に差が生じることも考えられるということで、その結果、年齢による基準額の差を設ける必要が生じる可能性があるのではないかということで、考えてございます。
「その場合」でございますけれども、1につきましては1類費の体系、算出方法と同様に、65歳を区切りとして世帯人員別の2類費についてもそれぞれ若年者、高年齢層を分けて単価の設定をいたしまして、世帯人員別のスケールメリットに応じた逓減率を設定する方法も一つ考えられるかと思います。
また、2でありますけれども、第2類費の品目について、年齢による差がみられない支出費目に限定をした上で、従来どおり2類費については、年齢による差を設けることなく設定をすることも考えられるかと思ってございます。
下のポツでございますけれども、それぞれの方法についても一定の課題があるということで考えてございまして、1につきましては1類費と同様に、年齢別の単価を設けまして逓減率をかけるという構成にいたしますと、1類費と2類費の基準額表上の構成が全く同じになることになりますので、そもそも1類費と2類費を区分する必要性等についてどのように考えるかということで、一つ課題として挙げてございます。
また、その下の2でございますけれども、年齢による差がみられない消費支出費目を選定する方法につきましても、かなり個別の品目、約300項目ございますので、そういったものをどういった考え、どのような方法で分類をするのかも一つ課題であるかと認識してございます。
続いて「(3)指数展開時の回帰分析の説明変数」で、こちらは若干技術的なところにはなりますけれども、基本的には平成24年検証の手法を踏襲いたしまして、展開作業の実施をしてまいりたいと思っておりますが、これまでの基準部会の議論でもございましたとおり、特に若年層については、例えば住宅ローンとか教育費の圧迫を受けている影響があるのではないかということがございましたので、前回資産とか家賃、地代を説明変数に入れておりますけれども、候補として挙げてございます住宅ローンとか教育費等についても、説明変数に加える必要があるのではないかということで、そのほかにもこういった項目については、影響を考える必要があるのではないかというものがあれば、御示唆いただければと思ってございます。
5ページ以降は、そのための関連する資料を載せてございますので、また議論の中で御参照いただければと思います。
資料の説明は以上でございます。
■駒村部会長 先ほどの議論を、具体的に扶助の基準に展開するプロセスについての一つの考え方を御説明いただいたわけです。
今の事務局の御説明について確認したい点、疑問点がありましたら、委員の皆様から御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
事務局に確認ですけれども、1ページ目を見ますと、前回は第1十分位に属する全世帯について、このデータを使って回帰分析などを使ってパラメータを抽出していった。その際には、第2類費については年齢についての違いは検証しなかったので、ここは空欄になっている。
今回、仮に夫婦子1人世帯の五十分でも十分でもいいですけれども、X分位が参照点として見つかり、もう一軸として高齢単身世帯あるいは高齢夫婦世帯の五十分あるいは十分のY分位がある参照水準として見つかった場合に、このやり方だとどういうように展開してくるかは、説明してもらえますか。
■免田社会・援護局保護課長補佐 まさにそちらにつきましても、御議論していただきたいポイントではございますけれども、事務局といたしましては、65 歳未満については夫婦子1人世帯で、65歳以上については高齢世帯を用いて第1類費と似たような展開手法をやるのが、一つの案なのではないかと考えてございますので、そういったことも含めまして、御議論いただければと思います。
■駒村部会長 例えば平成24年のときには、第X十分位に属する夫婦子1人世帯のデータを分析対象としてやっていき、もう一軸としては、第Y十分位に属する高齢夫婦世帯をデータとして解析していくようなやり方も一つの考え方であるということでしょうか。
例えばそういう方法が行われていくことをイメージして、その方法で果たしていいのかどうなのかということを、2軸が出てきたときにその方法でいいのかどうなのかというところも出てきますし、それをやった場合に、2ページ以降のさまざまな2類の扱い、スケールメリットの扱いが非常に複雑になることをどう考えていくのかが、今、御相談したいというか議論したいポイントだということになります。
この点に限らなくても、御質問とか御意見がありましたらお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 第1類、第2類に年齢区分を設けるかについては、まず、やはり第1と第2の分け方が恐らく変わってきているというのがあると思うのです。ですので、そうした中で、例えば通信費とか携帯電話代とかはかなり個人単位になってきているので、そういったものを第2から第1に移すとかいったようにした後で、家族全体でシェアしているような第2類費に残るものについて、その後にそれに年齢区分を設けるのは、単身世帯ならわかるのですけれども、複数人数世帯だと非常に難しいかと思います。ですので、世帯主の年齢だけでそれを言うことができるのかということもあります。ですので、勤労世帯と高齢者世帯という分け方はできるかと思います。それから引退世帯。ですけれども、その中での一つの世帯の中でも、30歳代の世帯主で子供が何歳でというので書いてくるのは、恐らく実態には違いはあるかもしれませんけれども、それをこれにルール化してやるのは、非常に難しいのではないかと思うのです。ですので、私としては第2類費で、もちろん第2類費を精査した上ですけれども、何が項目に含まれるか。そこに高齢者世帯、そうでない世帯、今回モデル世帯が2つありますので、それで分けるにしても、それ以上に年齢を入れる必要はないのではないかと思います。
■駒村部会長 非常に難しい作業になってくると思うのです。実際に阿部委員がおっしゃるように、4ページ、検証の際に支出費目の選定をどうするかが、一つ作業としてあるわけです。また、スケールメリットなり第2類費なりを細かく年齢で分けていくことの意味とか、現実にそれを分けたところで、どうやって実務において制度に反映させるのかというところもいろいろある。そういう点も考えなければいけないということだと思いますけれども、阿部委員の考え方としては、いろいろと分けてからいろいろと議論をしていくということなのか、初めから決め打ちでやっていくのかというと、それは決め打ちというわけではないと。
■阿部委員 そうです。ここでは第1類費に何が含まれるか、第2類費に何が含まれるかというリストがないので、検討しにくいところはあるかと思うのですけれども、まず第1類費が何か、第2類費が何かというところを決めて、それからこの話をしたほうがいいのではないかという気はします。
■駒村部会長 そういう御意見がありました。
ほかに委員の皆様からこの点についてありますか。
岩田委員、お願いします。
■岩田部会長代理 私も1類、2類については疑義があるのですけれども、それもそうだし、加えて第1十分位だけでやるわけですが、それがよかったのかという反省はあります。つまり、さっきの議論にもありましたけれども、第1十分位が既成事実化してきている。ところが、さっきごらんいただいたように、余りそうでもないのです。ぎりぎりのところを見ると、高齢夫婦世帯の固定、変動で見ると、変曲点はむしろ第1十分位だとすると、平均よりももっと第2十分位に近いほうにずれている可能性があるのです。だから見るとすると、本当は全体、つまり生活最低限とは何かということなのですけれども、ある程度、例えば年齢差とか世帯人員差は低所得も平均もそんなに違わないと考えるのか、違うと考えるかによります。私は違わないと考えたほうが、最低限の理屈には合うのではないかと思うので、平均的にやってみるほうが素直かなという感じを持っています。せいぜい第1五分位です。ところが、前に母子でやったときも第3五分位でやったりいろいろとしましたから、平均でやったほうがいいかなという感じもします。
問題は、それはいわば相対比較から出てくるわけですけれども、年齢体系と世帯人員体系をモデルでつくって、今度はその指数でやっていって実際に組み合わせて、それはやらないというお約束にしていただきたいのですけれども、つまり比較はモデルでやるのであって、マーケットバスケットのときには、栄養学に基づいた理論値が最初にありますから、全部が相対比較に解消できない面をどうしても持ちます。平均でやると、その面が少し出てくると思うのです。そうすると、展開した結果、ここでまた違う。またそれを修正するという作業になるとまずいので、何らかの指数を使って展開をする。指数はなるべく平均的に把握して、それで展開する。比較はモデルでやるというような原則を決めておかないと、スパイラルのように相対比較、相対比較になってどんどん下げていくみたいな、そういうようになるのはまずいかと思うのです。
もう一つ不安なのは、これをやったときは平成24年検証でやっていますから、今回やるときに、また新たにやってみるかどうかということなのですよね。つまり、絶えず変わっている一般世帯の家計の内容とか年齢差みたいなものと、絶えず絶えず検証しながら変えていくというような、5年おきの検証ではやるというような決め方をするかしないかというのも、大きいかなと。
■駒村部会長 ありがとうございます。
かなり作業の本質的な部分に関しての御意見だったわけですけれども、岩田先生の御意見は、従来から第1十分位が一つの参照グループである。前回この参照グループに入っているデータ、つまり、低所得者のデータを使って支出パターンを抽出する作業を行ったことになっていたわけですけれども、今回は前回を踏襲することになると、先ほども少し事務局とも議論したように、2つの世帯類型に大枠を分けて、先生に言わすとその中の第1五分位とかそういったもののデータを使ってそれぞれについて分析して、パラメータを引っ張り出してくる方法は、少し課題があるのではないかという御意見でしょうか。
ということですね。
そういう方法もあれば、そこについては課題も多いのではないかという御意見もあったということで、ほかの委員の先生の方からも、きょうの資料2についての御意見をいただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
従来どおりやっていくと、スケールメリットも2つのグループで数字が出てきてしまいますし、2類についても少し考慮しなければいけない部分がまた出てくるということで、事務局がいろいろと4ページでこの辺の対応をしましょうかという御相談も、この中には入ってきているということであります。
では、栃本委員からお願いします。
■栃本委員 4ページの部分で、今までの委員の先生方の御議論だと、4ページ目の「その場合、以下の算出方法が考えられる」で1と2があって、1の場合には次のような課題があるよというので、下に「なお」で書いてあるのだけれども、2のほうが多い。「2 第2類費の品目について年齢による差が見られない消費支出費目に限定した上で、従来どおり年齢による差を設けることなく設定」したほうがいいのではないかといった意見が多いように。そういう議論。
■駒村部会長 この辺のところは、まだそこまでたどり着いていない。だけれども、阿部先生はさっき若干そういう。
■栃本委員 それがあったので、ただ、後ろの下のほうの平成24年とか最後の資料を見る限り、当たり前のことだけれども、やはり年齢別の消費支出には1類、2類であっても差があるわけで、数字を60~69歳を1とした場合にどのくらい20~39歳、70歳以上、40歳、59歳で見ると差があるかデータが出ているので、それで見る限りは、特段4ページの1でしたからといって、どういう支障が生ずるかがわからないのです。なるほど、理論的にというかロジカルな整理としてはいろいろな議論があるかもしれないけれども、非常に雑駁な言い方かもしれないが、一応年齢の差があるのだから、やってみる価値はあるのではないかというだけのことなのです。
以上です。
■駒村部会長 では、事務局から4ページの1、第2類費消費支出を算出して、2類についても年齢別の基準額を設定してスケールメリットをつくった。平成19年の検証では、年齢によって第2にも差があるのではないかということが確認できている。この支出分類だからこうなったということも言えるかもしれませんけれども、この辺について何の課題があるのか、4ページの1を選択した場合に何の課題が起きるのかというのは、説明してもらえますか。
■清水社会・援護局保護課長補佐 1点、算出方法としては先ほども申しましたように、同じように体系になるというところでございますけれども、基準額を同じように分けますと、やはり1類費の構造と2類費の構造が、基準額表上、算出方法が一緒になるところがございます。そうなると、先ほども課題で申し上げましたとおり、1類費と2類費を区分することの必要性は、一つ議論いただく必要があると思っております。2ページになりますけれども、四角の点線のところで、平成19年検証のときの報告書を抜粋させていただいておりますが、一つは一番下の○でございますが、スケールメリットを消費実態に合わせて反映することで理論上考えますと、先ほども申しましたとおり、2類費にも年齢差が出てくるというところで、1類費についてもスケールメリットがございまして、2類費についても年齢による差があるということであれば、必ずしも1類費、2類費を区分する必要性があるのかどうかというところは、一つ論点になるかと思ってございます。
支障があるかどうかというところも、少し考えなければいけない点かとは思いますけれども、基本的には算出の方法、これからの方向性として一つ区分をする必要性があるのかどうかは、事務局としても検討課題ではあるかと思っております。
■駒村部会長 実務上の課題もある一方で、分析プロセスとして1類、2類を分けておく必要があるのですかということですね。
■栃本委員 そういう話になってしまうから、それをどうしましょうかということですね。課題の持つ意味が違うから。
ただ、私はそれはそれとして、課題という表現が別の意味で使われているので、今までのロジックというか組み立ての再見直しというか、今まで説明してきたことについてどう答えるかとか、そういうことになってしまうことがあると思うのです。ただ、数字的にはさっきお話ししたように、60歳から何歳を1として見たときにこうこうこういうのがあるわけだから、やはり科学的にというか、そういうことで実際どうなのかということを見つつ、待てよという議論はまたできると思うのです。1類と2類を分ける意味がなくなってしまうとか、今まで説明したものをどうしましょうという話はまた別のことというか、一応仮定としてというかやってみることは、私は必要だと思うのです。その上でやはり顕示すべきかどうかももちろんあるかもしれない。
■駒村部会長 岡部委員、お願いします。
■岡部委員 3点です。
1点目。阿部委員がおっしゃった、1類と2類の考え方をそもそも整理しておかなければいけないのではないか。1類は個人的な経費、2類は世帯共通経費ということです。そのため2類を1類の個人経費の中で考えられる話なのかどうなのかということは、少し慎重に行ったほうがよいのではないかと思っています。世帯の共通経費といった場合には、世帯の中で共通に使用するものについては、2類で出しましょう。しかし、それはある意味では、年齢で左右されるものとされないものがある。左右されるものは、仕分けの仕方もあるかと思いますので、考え方と費目の取り出し、データを出すのは結構ですが、そこで最低生活費の考え方に即して、きちんと説明ができるようにしておく必要があるのではないか。データをとる、とらないとは別の話として、そのことを整理する必要があるのではないか。
2点目。先ほど資料1でもお話ししましたが、データをより細部にわたって丁寧にやっていくのは、非常に大事なことと思います。
もう一つは、これは実態を踏まえて基準をつくっていくという話なので、そうなったときに、このデータをどこまで追いかけるかということは、そのデータの持っている意味合いが、データを出すことによって一定の根拠にもなってきますので、そこはデータとしてとると同時に、もう一つは説明ができたときに、ほかの根拠に引っ張られないような形でやっていただくことが必要なのではないかと考えます。
3点目。年齢区分の関係で、8ページに年齢区分の変遷が入っています。それで、平成17年度以降の8区分が現行の制度ということでされていますが、このあたりのところはより細分化されてやってきた経緯、下に書いてあるようにマーケットバスケット方式は、カロリー計算をベースにしていたことがあります。それをもう少し大括りで考えていくことが、平成17年度で検討されてその年齢区分になった経緯があります。
それともう一つ、これはこの表には載っていない話なのですけれども、1985年度の話になりますが、それ以前は、男性、女性と1類の基準表の基準額が違っていた時代があります。これは要するに、基準に男女格差を設ける考え方に立っていましたが、国連婦人年後の10年で規範的な考え方に立ち、性別を取り払い年齢階層別の基準額にしたという経緯があります。そうなったときに、1985 年度以前の実態に即してより細分化していく。先ほど栄養学、カロリー計算のあれもその次の9ページで年齢階層別のカロリー消費、男性、女性と分かれていますけれども、そこのところは一つ参考にしながら、1類の立て方について、あるいは2類の立て方を年齢階層別にどこまで年齢区分を刻んでいくか、先ほど数字が出ていましたが、あるいは世帯の共通経費を年齢でどこまでデータを縛っていくのかが、規範的な考え方と実態に即した考え方に立つことについて、これをここで議論することかどうかということになるかということになります。また行政の実態を踏まえて、実務を行う方は基準の算定を行いますので、理論的により細かい基準で設定していくのは必要なことかもしれませんが、ある程度は実務になじむような基準の分類にしていただくことや、どのような考え方なのかが説明できるようにしていただくのがよいのではないかと思っております。
■駒村部会長 栃本委員、お願いします。
■栃本委員 もともと1類とか2類については、相当の根拠があったからしたわけですね。世帯類型でも違うし世帯の規模も違う。しかしながら実際に調べてみたら、1類においてでさえ年齢によって差があることが明らかになった。2類においてもそうだといった場合に、我々の責務は最終的に1類、2類を取っ払うとかそういう事は影響が大きいから別としてそれはきちっと調べることは必要だと思うのです。先ほどの前半の議論、またもっと前の会議でもそうですけれども、母子世帯はサンプル数が少ないから、それはよくわかります。
ただ、参考資料としてとか参考にしてみることは、極めて重要です。事実、昔、生活扶助の基準についての意見書だったかをこの会で取りまとめたときに、参考までにこういうことも調べてみましたとか、そういうものがありましたね。それはとても重要な説得力を持つものでして、基準の原則としては採択というかそのように至らなかったけれども、国民の方々から見て、関係者の方々から見てこれはどうなのかといった場合には、そういうことについても見ましたよということは、私はとても大切だと思うのです。
時間の関係もあるので、後ほど年齢区分についても議論するのですかね。事務局のほうでは意見を出してほしいということ。
■駒村部会長 宿題に入っています。
■栃本委員 それはこの後の仕事で、岡部先生はそうおっしゃったけれども、私としてはそれはドグマ、というか、ドグマが最初にありきかどうかということです。実際上、実務上ということは、もちろんそれは先生の御専門で一番近いところで研究されていますので、それはよくわかるのですが、ここは基準部会だから一応そういうものをデータとして見てみることは、私は回避すべきではない、禁ずるというと言葉がきついですが、禁ずるものではないと思います。
■駒村部会長 岡部委員が関係することだと思いますので先で、阿部委員も今のやりとりに関係しますか。
■阿部委員 関係することです。
■駒村部会長 では、その次で。
先に岡部委員、お願いします。
■岡部委員 私は調査をしてはいけないとお話をしているわけではなく、より精査していただくのは結構かと思いますが、これを実際の実務に即して考える、あるいはここの中でまとめるときには、詳細な資料、参考資料として取り扱い、それを基準に反映させるのがよいと思います。考え方と理論的根拠が確定している。そのことは実証できるデータとして提示することを必要であると考えます。そのことで出せるデータと出せないデータの仕分けはあるのではないかと述べたということです。
■栃本委員 ドグマは理論ではないからね。
■駒村部会長 指名してからお話しください。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 今、岡部先生は男女差を理念的なところで、実態には差があるのですけれども、撤廃したというお話を聞いて、私もすごく心を動かされました。もちろん実態を見れば、私たちは実態のデータを見てどのくらい年齢によって差があるからとか、そういってこう見ようとしているわけですけれども、実態を見るのは非常に大変なのです。エンゲル係数のときは、必要カロリー数という身体的なものがあったからいいと思います。ですけれども、そこから離れた場合、例えば食品をとってみても、30歳代の人の食費が50歳代の人より少なかったとしても、それは教育費がかかっているので食費を抑えている実態があったりとか、なので、その人が必要かどうかというのと余り関係のないところでのさまざまな制約の中で私たちは生きていますので、それを考えると、やはり実態ではない理論的なものがないところで詳しく分けようとするのは、非常に難しいのではないかという気もしてきていて、今、切っていますけれども、例えば40歳の前と40歳以降で、生活するのに必要な経費がどれだけ違うのかといったときには、もちろんいろいろと違いますが、それを例えば勤労控除で見ていたり、子供であれば教育扶助とかそういったようなさまざまな加算とかで見ていたりというところもあるので、それほど年齢区分を細かくしていくのは、よろしくないのではないかという気もしてきました。ざくっと全ての人に、ある程度設けるにしても今より細分化していくよりも、むしろ今より少なくしていく方向もあるのかなと気が変わってきました。
■駒村部会長 なかなかデータですぱっと納得できるような形にならない部分もありますし、理論といったものから導き出せるわけでもない状態で、作業班としても非常に苦しい部分でございます。いろいろとやってみなければいけないわけであります。
先ほど岡部委員がおっしゃった1類、2類の分け方については、資料の中にも書いてありますけれども、2類は年齢によって影響を受けない部分であると決めてしまって、そうやって分析していくことになれば、4ページの2の方法をやってみることになると思います。探索的な作業を続けるしかないのかなという感じは、アプリオリにこうだと決めつけられるほど、家計に単純性があるわけでもないわけでございまして、この辺は探索的にやり続けるしかない。そこで、先ほど岡部委員からも出されたような補強データを精査して、さらにそれで皆さんと議論をする作業を続けていくしかないのかと思っています。
きょう、この議論をしたのは、そうするとは言っていませんけれども、一つは年齢区分についての見直しも視野にはある。
それから1類、2類の分類についても、あるいは2類の規模計数についても、もしかしたら今後の議論として俎上に上がってくるかもしれないというのが、現状、作業をやっていると課題として出てきたわけですし、このやり方が必ずしもいいかどうかは、岩田先生からも課題多しという御意見もありましたので、幾つかの通りで探索的にやっていくしかないということではないかと思いますので、引き続き作業班で、きょうの意見を踏まえながらデータ分析を続けたいと思っております。
時間もございませんので、きょうは作業班でどういう課題を検討しているのかという御紹介と、各委員からのサジェスチョンをいただきたかったということで、きょうの議論を踏まえて続けていきたいと思います。
事務局から資料3についての説明をお願いできますでしょうか。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3について説明をさせていただきます。就労自立給付金についてでございますけれども、こちらについては昨年度からの一つの課題としまして、就労に関する施策の効果、勤労控除とか就労自立給付金の効果の測定が必要ではないかという御議論をいただいておりまして、今回、就労自立給付金について受給された方、また自治体に対するアンケート調査を実施してございますので、そちらの調査結果の御報告をさせていただきたいということで、資料を用意いたしました。
1ページは調査の概要を記載しておりますので、ごらんいただければと思います。
2ページからは、就労自立給付金を受給された被保護者へのアンケート調査結果でございます。年齢層につきましては、ボリュームゾーンとしては40代、50代が6割弱を占めますけれども、65歳以上も6.5%存在する結果になってございます。
また、保護脱却に至った職種としましては、下にグラフを書いてございますけれども、介護・福祉を筆頭にいろいろな職種がある状況になってございます。
雇用形態といたしましては、7割弱が正社員以外になってございます。
3ページ目、こちらについては実際被保護者の方が就労開始してから保護廃止、自立に至るまでどれくらいかかったかという期間を調査したものでございます。
左のグラフでございますけれども、就労開始してから保護廃止までが6カ月以内であった方が67.1%で、安定した職につけば比較的短期に就労自立に至っているところでございます。
一方、右側のほうが、就労自立給付金の説明を実際に受けた時期について調査をしてございます。保護廃止、就労自立に非常近いとき、また保護廃止になったとき、自立をした後が8割を占めてございまして、給付金額がある程度判明してから具体的な説明をされているケースが多いところでございます。
下にございますけれども、やはり説明を受けるまでは、就労自立給付金の制度を知らない方がほとんどでございました。
4ページ目、先ほどの周知時期等の結果をどう見るかでございますけれども、就労自立給付金の制度を知って意欲が変わったのかどうか、継続する意志がどうなったのかというところで意識の調査を実施してございます。
右下でございますけれども、実際に就労自立給付金をどのような使途に当てたかというところで、多くは生活費に充てた方が多いという結果になってございます。
5ページ目以降は、自治体に対する調査結果ということでまとめさせていただいたものでございます。
こちらについては、就労自立給付金支給対象世帯、就労による自立をした世帯のうち、実際に支給された世帯は4割程度でありましたという結果でございます。理由でございますが、右に書いてございますとおり、仮想積立期間がなかった世帯、すぐに就労して就労自立をした世帯が6割弱を占めるという結果になってございます。一方、「本人から申請なし」も3割ございました。
6ページ目、就労自立給付金を受給した世帯が、再度保護に至った場合の再保護に至った時間がどうであったかも調査してございます。3カ月未満という方の割合が16%。それぞれ期間別の割合を載せてございます。
7ページ目が、同じく再度保護に至った方の理由ということで整理をしてございますけれども、病気になってしまった、退職をされた方が76.1%で、就労ができなくなった、または収入が減少した方がそういった割合になってございます。
8ページ目、同じく就労自立給付金に関する情報の伝達方法ということで、自治体に対するアンケートも記載してございます。こちらについては就労指導の際に説明しているというところでございますけれども、先ほどの受給者に対する認知とどう考えるかということもあろうかと考えております。
9ページ、10ページ以降は制度の説明になってございますので、ごらんいただきたいと思っております。
また、就労自立給付金の制度そのものがどうあるかというところについては、もう一つの制度の検討をしている部会でございます、「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」で議論をいただくことを予定しておりますので、こちらの基準部会で出された御意見については、もう一方の部会のほうに御報告をさせていただいて、そちらのほうで制度をどう見直していくかというような御議論をしていただくということで、考えてございます。
資料の説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございます。
この制度の制度改善というか改革そのものは、もう一個の部会で議論していくということでありますが、こちらにも影響のある制度でございますので、これは重要なアンケート分析があったと。幾つか課題もあり、効果、もうちょっと分析をしないと本当の効果かどうかわからない部分もありますけれども、まずはこういう集計が行われたということでございます。
委員の皆様から御意見、御質問ありますか。
岡部委員、小塩委員でお願いします。
■岡部委員 2点、コメントです。
1点目。4ページに就労自立給付金の効果、アンケート結果が書いてありますが、非常に効果があらわれていると私は判断をしています。インセンティブをつけるために創設された制度としては、一定の機能をしているのではないかと考えております。
2点目。3ページの利用者からのアンケート、8ページは自治体の箇所です。その上で、就労自立給付金に対しての周知、説明時期が遅れていると考えます。その時期としては、1つは相談の申請時に説明をする。2つは、就労指導あるいは支援時に説明する。3つには、就労開始時に教示し周知、徹底を図り、同制度を利用することによって保護から脱する、あるいはその後の生活の安定に図れるのだということをより周知していただくと、同制度の給付金の効果が上がっていくのではないかと考えます。このデータを見ますと、その点が1 つ、2つの時期に十分行われていませんので、より周知徹底していただければと考えています。
■駒村部会長 今の委員のお話にあった、御本人に対する説明の理解と事務所の理解に少しそごがあるような気がします。恐らく現場においては、世帯を見ながらいろいろと判断をされている部分もあるとは思うのですけれども、この辺をどういう説明をされているのか、元気づける、あるいは一歩向かわせるためのインセンティブにあるわけですから、説明についても効果的な説明について、不遇については少し厚労省も検討していただきたい。どのタイミングで説明すれば、活用と自立につながっているのかを事務所任せではなくてということがあるのかなと。私もこれをそんな感じで今、資料を見て感じています。これもまた岡部委員と向こうの審議会でも議論しなければいけないテーマだと思います。
小塩委員から手が挙がっています。
お願いします。
■小塩委員 私も岡部先生と同じようにこの制度が非常に重要だと思うのですけれども、政策の効果を調べるためにはもう少し分析が必要かと思いました。
3ページ目に、給付金を受けた人のその後の行動の変化が分析をされていますが、対照実験といいますか、給付金を申請しなかった人がその後に見せた行動と比較しないと、給付金の効果はよくわかりません。その観点から言いますと、給付金を受けるかどうかは説明をちゃんと受けていたかどうかに非常に大きく左右される点が気になります。自治体に対しても、そういう説明をしっかりとしたのか聞いておく必要があるかと思います。その結果は6ページ以降に書いてあるのですが、私が気になったのは、5ページで支給しなかった理由に幾つか理由が書いてありますけれども、「本人から申請なし」も結構大きいですね。この原因がどういうものなのか注意しておく必要があると思いました。
以上です。
■駒村部会長 では、栃本委員、その次に山田委員でお願いします。
■栃本委員 6ページ目の自治体に対する調査結果の中で、保護開始時に説明しているとありますね。だから、保護開始時だから、窓口というかそこに相談に来てかなり経ってからという感じなのですかね。その間がどのくらいかによるのだろうけれども、一般的にはソーシャルワークにおけるインテイクのときに、何を話すかが結構重要だと思うのです。下手をすると、別のメッセージを発することにもなり兼ねないということもあるので、それで保護開始時に説明しているということをお聞きしたのだけれども、やはり主訴というか、受けとめてその後に本格的な議論にはいるという段取りよくしていく必要があるので、要保護者からするなら相談に来てそれで最初のインテイクのところで言うことが適切かどうかとかいろいろとあると思うのです。そこら辺をきめ細かにしないと、別のメッセージになってしまったりするのは、本来の目的からも違うから、そこら辺を気をつけていただきたい。
以上です。
■駒村部会長 山田委員、お願いします。
■山田委員 非常に興味深い制度の開始後で、影響が、政策効果があったのは多分疑いようもないと思うのですけれども、気になったのは4ページで、今回給付された就労自立給付金の使途が生活費になっていることなのです。私は貯蓄としてとっておくのかなと思ったのですけれども、それが生活費として使われている。
6ページでも再度保護に至った場合が一定割合いるということで、幾つかの仮説としては、可能性としては、十分に安定的な職業についていないから生活費に使わざるを得ないとか、いろいろな理由があると思いますので、再度保護に至った場合と生活費に使ったか使っていないかで、就労自立の環境が十分に整っていないにもかかわらず、可能性として、生活保護を脱してしまったケースがないのかが、今後の検討課題ではないかと受けとめました。
私からは以上です。
■駒村部会長 政策効果については、今、何人かからの委員からもお話があったように、使った、すぐ使わない人でどう行動が違っているのかとか、使った人と使わない人で世帯の類型とかパターンが違うかとかそういうものもちゃんと区別してみて、なおかつやはりちゃんとした自立への成果が出ているのか、再受給ということもないのかということを確認したところで、さらにそこにおける課題を抽出していただきたいといった御意見があったかと思いますので、きょうはクロス集計と思いますけれども、さらなる分析で課題を見つけていただきたいというのが、部会の皆さんの意見だったのかと思います。
この点について、ほかにいかがでしょうか。先生ありますか。いいですか。
なければ、ちょうど予定の時刻となってきましたので、最後に次回の開催について、事務局より御説明を願います。
■清水社会・援護局保護課長補佐 次回の予定でございますけれども、9月29日の午後を予定しております。場所は厚生労働省内の省議室を予定してございます。また正式に確定いたしましたら、お知らせのほうをさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。
御多忙の中、ありがとうございました。
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