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2017年6月19日 第21回厚生科学審議会感染症部会
健康局結核感染症課
○日時
平成29年6月19日(月)
14:00~16:00
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
○議題
(1)後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について
(2)風しんの排除に向けた取組について
(3)百日咳に係る発生動向調査の見直しについて
(4)中東呼吸器症候群(MERS)への対応について
(5)新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について
(6)平成30年度におけるH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄株の方針について
(7)インフルエンザに関する特定感染症予防指針の改定について
(8)報告事項
1 今冬のインフルエンザの発生状況について
2 ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの改定について
3 抗微生物薬適正使用の手引きの公表について
(9)その他
○議事
○高倉結核感染症課課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第21回厚生科学審議会感染症部会を開催いたします。はじめに委員の出席状況を御報告いたします。本日は、岩破委員、笹井委員、南委員、山田委員より、御欠席の連絡をいただいております。また、岩本委員より到着が15時30分頃になるとの御連絡をいただいております。現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。
次に、事務局より資料等の確認をいたします。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席図のほか、資料1~資料11、参考資料1~参考資料15を用意しております。御確認いただきまして、不足の資料がございましたら事務局にお申し付けください。なお、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。
以降の議事運営につきましては、倉根部会長にお願いいたします。
○倉根部会長 それでは、本日の議題を確認いたします。議題1「後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について」、議題2「風しんの排除に向けた取組について」、議題3「百日咳に係る発生動向調査の見直しについて」、議題4「中東呼吸器症候群(MERS)への対応について」、議題5「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」、議題6「平成30年度におけるH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄株の方針について」、議題7「インフルエンザに関する特定感染症予防指針の改定について」、議題8「報告事項」、議題9「その他」となっております。今日は御覧のように随分議題が多くなっておりますので、委員の皆様方には是非とも円滑な議事進行をお願いしたいと思います。
それではまず、事務局から審議参加に関する遵守事項につきまして、報告をお願いします。
○高倉結核感染症課課長補佐 審議参加について御報告いたします。本日の議題5では、抗インフルエンザウイルス薬に関連した審議を行います。岩本委員より申請資料等の作成への関与について、抗インフルエンザ薬、製品名「アビガン錠」に関して、申請資料等の作成に密接に関与があったと申告がありました。この取扱いについてお諮りいたします。
○倉根部会長 岩本委員からの、過去にアビガン錠の臨床試験アドバイザーをされていたことにより、申請資料等の作成に密接に関与があったという申告を頂いておりますが、厚生科学審議会感染症部会審議参加規程第5条により、議題5の審議及び議決が行われている間、審議会場からの御退室をお願いすることになります。委員の皆様にお諮りしたいと思いますが、そのような方針でいかがでございましょうか。よろしゅうございますか。特に異議がないようですので、岩本委員は議題5の審議及び議決が行われている間は御退室をお願いすることにしたいと思います。よろしくお願いします。
それでは議題に入りたいと思います。本日は議題2から始めたいと思います。議題1につきましては後ほど行うということになります。理由は、岩本委員の到着予定の時間が少し遅れておりますので、議題1「後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について」は岩本委員の到着後に行うこととし、議題2を最初に行います。事務局より議題2「風しんの排除に向けた取組について」の説明をお願いします。
○高倉結核感染症課課長補佐 資料2を御覧ください。風しんの排除認定に向けた取組について御報告させていただきます。風しんにつきましては、現行の風しんに関する特定感染症予防指針、本日の参考資料6に付けておりますけれども、この中で、2020年(平成32年度)までに排除を達成することが目標に掲げられております。この排除の定義は、麻しんの排除の定義に準じまして、「適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が1年以上確認されないこと」と記されております。WHOによる風しん排除の定義はいまだ厳密には提示されておりませんが、現在、毎年、WPROへ提出しております麻しん排除認定のための報告書には、既に風しんについても同様の情報の記載が求められております。つまり土着株による感染が1年以上確認されないことを示すために、全ての発生事例についての疫学情報、輸入症例及びそれに紐付けられる症例であること、及び8割以上の症例に関して遺伝子検査を実施し、海外での流行株の遺伝子型であること、これらの確認が求められていると想定されます。排除認定には3年間の排除状態の継続が必要ですが、少なくとも現行の指針にありますように、2020年(平成32年度)の排除状態を目標として取り組む必要があります。
発生状況に関しましては、現在の予防指針が改定されました平成26年3月におきましては、前年である平成25年には1万4,000人を超える全国的な大流行が起こっておりました。しかしながら直近の3年では年間100件から150件程度に発生数が落ち着いており、先天性風しん症候群の発生も認められておりません。こちらにつきましては参考資料8に発生状況をまとめてあります。
そこで「3.課題」ですけれども、目標達成への課題として3つの点が挙げられると考えています。まず第1番、現在、疫学調査については、集団発生した時とされております。このことから、現在は疫学調査がほとんど行われていないという現状があります。2番目が検査診断、これは「可能な限り実施」とされております。したがって、風しんであることが検査的に診断されている例というのが十分ではなく、特に遺伝子診断がなされている症例は大体10~15%にとどまっているのが現状です。3番目が、風しんの届出が「7日以内に報告」となっていることから、検査の適切な時期を逸する可能性、あるいは疫学調査の開始が遅れて疫学的リンクが追えなくなるおそれがあるのが現状です。この3つが課題として挙げられております。
したがって、今後の対応方針としましては、風しんについての届出に関する省令の改正や特定感染症予防指針の改正を行い、麻しんと同じ位置付けとするという対応案を考えております。「現在の対応状況」の所に、風しんに関するものと麻しんとを並べてありますが、風しんと麻しんの現行で異なっている部分を、風しんを合わせる形での改正を考えています。これらにつきましては、現行の予防指針におきましても、発生数が一定数以下になった場合には、原則として、全例にウイルス遺伝子検査の実施を求めるという記載もございますように、現在の予防指針が策定された当初より念頭におかれていたことですし、近年の風しん発生状況及び平成32年が排除達成の目標であることを考慮しますと、現時点から具体的な取組に着手することが妥当と考えております。
なお、専門学的観点からの風しん排除の確認につきましては、現行の麻しん排除認定会議に、必要な構成員に加わっていただいて、麻しん・風しん排除認定会議として検討する方向で考えております。つきましては、平成32年までに風しんの排除状態を達成する目標を踏まえまして、ここに示しましたように、大きく3つの点の改正という我々の事務局の方針につきまして、御審議をお願いいたします。
○倉根部会長 ただいま、事務局から、風しん排除認定に向けた取組ということで説明がありました。何か御質問、御意見ございますか。
○大石委員 感染研の大石です。基本的に風しん排除の認定に向けたこの取組は、大変必要なものですし、大賛成ですが、平成28年度には集団発生がなかったということは、感染研でも実地疫学調査を行ったところでもあり、これはどのように解釈されているのか。某県の研修所での集団発生があったと認識しておりますが。
○高倉結核感染症課課長補佐 我々の確認した範囲で見付けていなかったという状況で、どちらか公開されているものとしてございましたでしょうか。
○大石委員 麻しん・風しん排除認定会議の資料で報告したと思いますが。
○高倉結核感染症課課長補佐 大変失礼いたしました。麻しん排除認定会議等で、風しんの発生状況につきましては同じく確認させていただいておりますので、実施されていないというのは誤りだったかもしれません。公表されたものとして確認できれば、訂正申し上げます。
○大石委員 私も今朝方、レクは受けたのですけれど、その際に確認できておりませんで申し訳ございませんでした。
○倉根部会長 そうしますと、大石委員からは、ここの文言について、もう一度きちんと調べるべきではないかという意見かと思いますので、事務局、そこはよろしいですか。
○高倉結核感染症課課長補佐 承知いたしました。
○倉根部会長 ほかに。
○調委員 遺伝子検査についてですが、「8割以上遺伝子検査を行い」と。この遺伝子検査が指すものが、リアルタイムPCR法と、配列を決定するコンベンショナルPCR法で遺伝子を増幅させて配列を決定する、この2種類あると思うのですけれども、両方とも地方衛生研究所でやっているのですが、この2種類とも8割以上を目指すということでよろしいのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○高倉結核感染症課課長補佐 調先生がおっしゃるとおりでございます。
○調委員 もう1つ、麻しんと同じようにするということで、その点はそれでいいと思うのですけれども、麻しんと少し状況が違うのは、麻しんウイルスの場合はかなり多様性があって、中国、東南アジア、インドとか様々な異なる遺伝子型のウイルスがあるので、大体、輸入例で渡航歴と遺伝子型が一致すれば、非常に高い確度でそこから持ち込まれたものだろうと判断されるわけですが、風しんウイルスの場合はそれほどのダイバーシティがないので、配列決定で、ジェノタイピングでどの程度輸入例であることを示せるかどうかは、やはりこれからの課題ではないかと思います。
もう1つ、風しんの場合は、30代、40代でいまだに少し免疫の少ない人たちがいるということが、それほど解決されていないと思うので、平成25年にかなり流行があったわけですけれど、それと同じような規模の流行があったときに、地方衛生研究所で全例の遺伝子検査に対応できるかどうかという課題もあると思うのです。その辺は、そのときに例えば疫学的リンクが非常にはっきりしている場合には、その代表的なものだけを遺伝子検査をしていけばいいというような文言を盛り込んでいただくとか、そういう工夫をしていただき、通知や省令の改正などをしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○倉根部会長 大石委員、今のと関連がありますか。
○大石委員 よろしいですか。この麻しん・風しん排除認定会議でまとめたデータで、2016年に20例のウイルス株の検索がされています。2Bというゲノタイプが一番多いのですけど、ウイルス遺伝子配列を解析することでサブタイピングができるというところまで分析が進んでいると、感染研ウイルス三部の森室長から聞いております。検出できたウイルスが土着株なのかどうかという判定には、詳細な患者さんの渡航歴を含む疫学的情報とウイルス学的な検索の両方であると思います。これからの風しん排除に向けての重要な情報になるだろうと思っています。以上です。
○調委員 今の2Bなどのジェノタイピングは、どちらにしてもリアルタイムPCRだけではなく、遺伝子配列を決定しないとできないと思うのです。例えば、結果を国に報告するときに、単に2Bなどのジェノタイピングだけを報告するのでは配列の比較ができないので、やはり地方衛生研究所が決定した遺伝子配列を国に報告するというような仕組みは、これからますます重要になってくると思いますので、その点も考慮していくべきではないかと思います。
○倉根部会長 事務局、何か。
○高倉結核感染症課課長補佐 調委員の御提案に関しては、我々のほうで十分検討して、そのように対処したいと思います。
○倉根部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 風しんの特定感染症予防指針の策定のときに、風しん小委員会ができたと思うのですけれども、それは特定感染症指針を作ったあと、風しんのことに関して実質的にディスカッションする場が残念ながらなかったということがあると思います。今回、麻しんと風しんがかなり類似点もあるので、そこでディスカッションすることは非常に賛成で、今言ったような細部のことは、是非そこで検討していただけたらいいなと思います。大きい方針としては、2020年という基本方針は立ててあるので、それの実現に向けてどういう作戦が必要かというところを作る場と、それから、その実施に向けていっていただければと思います。
麻しんの際も、こんなことができるのかという声も随分多かったのですけれども、麻しんに関する特定指針を発出していただいて、それから自治体が、公にと言うとちょっとあれですが、バックグラウンドを持ちながら、根拠をもってできるということがありましたので、是非、そういう面で風しんの対策に対して大きく動いていただければと思います。
それから、もう1つよろしいですか。先週までTAG Meeting、WHOの西太平洋地域事務局で予防接種に関する委員会があり、私、倉根先生、大石先生も出席され、私と倉根先生は、メンバーの会議にも参加していたのです。私は事情があって早く帰ってきたので、最終結論の細部まで分かっていないのですけれども、WPROでも目標年を設定しようとなる中で、2020年というGAVI、WHOの動きとして、大きいところで2020年というのが出ているのですが、なかなかそこは難しかろうと。特に大きい中国や何かは、そこは難しいのでと。ただ全体としては、やはりWPROが目標年を設定することによって動きが出てくるということで、目標年を設定する方向にはなっていると思います。そのときに、GAVIの設定している2020年、日本も2020年ですけど、それが遅れる可能性がある。ただ、そのときに委員会でディスカッションされたのがリコメンデーションに入ってくるかどうか分からないのですが、もし既にちゃんと設定する目標を決めている国があるならば、WPROが仮にそれから遅れたとしても、そこに合わせないでほしいというディスカッションを強くされております。日本は、麻しんは、どちらかというと後から出てきて、劣等生がやっと上のほうに這い上がってきた感じですけれども、そういう意味では、風しんの場合は、アジアにおいて先見というか、割に早いところで対策をとれるところでも1つのサンプルになるのではないかと考えていますので、是非よろしくお願いいたします。
○倉根部会長 今の件については、いずれ正式な報告書が出てくるのですが、2020年という目標を消すということはないので、十分そこに対応できる国については、2020年に向けてやってほしいという結論になろうかと思います。まだファイナルが出ていないので、ですから、日本は特に変える必要はないのだろうと考えております。ただ、岡部委員がおっしゃったようないろいろな事情もあるけれども、進められる国については進めてほしいと。それから、2020年が今回ので消えるということはないはずです。最終報告書にもよりますが、そうなろうかと思います。ほかに本件についてございますか。
○山中委員 全国保健所長会の山中と申します。この指針の見直しに関しては、特に異論はございませんが、これまでも、都道府県レベルですと麻しん・風しん対策会議を設置しておりますが、麻しんの排除に向けては、保健所単位でも対策会議を結構実施して、具体的な取組を都道府県レベルより細かいレベルで議論できましたので、有効な対策だと思っております。是非、そういうことも含めて、地域によっては保健所単位でということも、今後の指針の中では御検討いただければ有り難いと思います。
○倉根部会長 幾つか御意見を頂きました。予防指針については、予防接種ワクチン分科会での意見を踏まえまして、そして、ここの感染症部会で改定についてまた審議することになろうかと思います。今日、頂いた御意見も含めまして、部会としては事務局の提案を了承としたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、了承としたいと思います。
次に議題3の「百日咳に係る発生動向調査の見直しについて」です。事務局から説明をお願いします。
○結核感染症課感染症情報管理室長 「百日咳に係る届出基準等の改正について」は資料3です。併せて参考資料10という分厚い資料が、資料の中に含まれていると思います。まず背景から申し上げます。百日咳の予防接種に関しては、予防接種部会の下にあるワクチン評価小委員会で縷々検討がなされております。参考資料10は、今年2月に国立感染症研究所からワクチン評価小委員会に提出された資料です。その中で話題になっていたのが、百日咳の実態が把握できているのかという点で、随分と議論があったと聞いております。それらを踏まえて、届出基準の改定について御提案申し上げたいと思っております。
まず「現状」が資料3の上にあります。感染症法に基づき、5類の定点把握疾患として把握しております。小児科定点、全国約3,000か所で臨床学的な診断に基づき、週単位で年齢別・性別の患者数を届けていただいている状況です。
2ページにその発生状況の資料があります。1981年から現在の予防接種体制になっているわけですけれども、それから随分と件数が減っており、2016年の時点では当初の10分の1ぐらいまで減ってきました。小児科定点は2006年以降、グラフの下の年齢群別を見ていただくと、成人や比較的年齢の高い15歳以上の報告の増加があります。また、中学生や成人の集団感染の報告なども散発されているという状況です。
3ページは2012年から2016年までの、引用可能なものとしてあった集団事例についてまとめております。小学校や中学校でこれらの発生があるということで、感染研及び厚労省が出している病原微生物検出情報の本年2月号に、それぞれ報告が出ているところです。
4ページが百日咳の抗体の保有状況について、2013年の感染症流行予測調査事業のデータです。予防接種を受ける6か月以降から1歳ぐらいまでの間は、比較的高い抗体価があるわけですけれども、その後は急速に抗体価が下がっていくという状況です。その後、若干増えるわけですけれども、かなり多くの方々が百日咳の抗体を持っていない、すなわち、感受性のある群であることがお分かりになると思います。
加えて資料の5ページは、厚生科学研究の研究班の平成26年度の報告です。臨床学的に百日咳を疑った患者350人余りの検査のデータを整理いたしました。遺伝子検査(PCR法)で実際に百日咳と確認ができている件数は一部にとどまっているということで、臨床学的な診断は少し難しい側面があるのではないかと考えています。
さらに6ページです。百日咳に関しては細菌培養検査、血清学的な検査、遺伝子学的な検査のそれぞれについて、体外診断薬等々が新たに開発され、昨年の終わりまでに保険収載の措置が行われ、現在、これらのラボ診断も可能になっている状況です。
改めて1ページに戻っていただくと、主な課題を真ん中辺りにまとめさせていただきました。1つ目として、重症化しやすいワクチン未接種の乳児・新生児の感染源となり得る、成人を含む百日咳患者の発生動向が正確に把握できていないという現状があります。加えて、臨床学的診断によるもので、症状が類似している他の疾患を含む可能性がある。すなわち報告の特異度がそれほど高くないのではないかという課題があります。また、集団発生の報告が散見され、適時把握ができず、対応が遅延する可能性も否定できないということです。加えて、その症例について、例えば予防接種歴、重症度、転帰等々の把握が難しいということがあります。
これらの状況を踏まえ、改正案として、現在は定点で把握している5類感染症ですが、5類感染症はそのまま残すわけですけれども、全数把握疾患として資料の7、8ページにある届出基準及び届出票を定め、これで全数の届出をお願いしたいと考えております。資料3の7ページの届出基準ですが、臨床的特徴の部分は現在の定点での把握と、おおよそ変わっておりません。一方で、届出基準である検査所見を新たに追加しており、病原体の検出、PCRによる遺伝子の検出若しくは抗体の検出を追加しております。
それから、百日咳の届出票は8ページにあるような資料で、性別、年齢、症状、診断方法、初診の年月日等々があります。加えて感染原因、感染地域、予防接種歴等の詳細についても加えさせていただければと考えております。全数届出については、これらの届出基準で本部会で御承認いただければ、今年の夏に改正案についてのパブリックコメントを実施して、秋に感染症法施行規則等の改正を行い、平成30年1月から全数届出という形に移行したいと考えております。
○倉根部会長 ただいま事務局から、百日咳に係る届出基準等の改正についての説明がありました。御意見、御質問はありますか。
○岡部委員 百日咳もかなりインパクトの強い疾患です。確かに以前に比べれば患者数は減っていますけれども、やはり乳児の死亡、成人の長期にわたる咳嗽、場合によっては肋骨骨折もあるという話を聞いております。ただ、これは日本だけの問題ではなく、かなりDPTが進んでいる国でも、成人層ないし小児でも年齢の高い思春期年齢ぐらいで発生しているということがあるので、世界各地でどこも対策に苦しんでいるわけです。そのためにはベースラインが必要です。特に小さい子供たちがこれで重症になる、死亡するということを防ぐためには、是非、必要なので、このようなことをやっていただければと思います。検査診断にLAMP法などもかなり導入されて、確かこれも保険が適用になったのですよね。そういうバックグラウンドにしていただいた後なので、より正確な診断ができると思いますから、私は大賛成です。
○賀来委員 岡部先生が言われたように、やはり百日咳は臨床的にもかなり疑うことが多いのですけれども、これまできちんとしたこういう届出基準のようなものが余りないということで、やはりマイコプラズマとの鑑別とか、いろいろな意味で臨床的には慢性の咳嗽あるいは非常にアレルギー性の咳嗽との鑑別も含めて、百日咳というのは非常に重要だと思いますので、私も是非これは積極的に届出基準を作っていただいて、診断も含めてバックグラウンドをきちんと見ていくようなことをやっていただけると、臨床的にも非常に意義が高いと思います。
○倉根部会長 ほかにございますか。
○調委員 届出基準は、今回から検査診断によって届出になったと理解していますけれども、これまでも検査診断法として、抗体価を1回測って高い値をもって診断するということがなされていて、それが必ずしもそうでないこともあると伺ったことがあるのですが、これは診断基準の中に残っているのですけれども、その妥当性について、何か御存じであれば教えていただきたいと思います。
○倉根部会長 どうでしょうか。大石委員、どうぞ。
○大石委員 この届出基準については、抗体検査を入れるかどうかについて感染研でも検討しました。ペアPT血清による抗体価測定であれば、問題ないと思います。ただ、百日咳の患者でアウトブレイク等が起こったときに、ペア血清を採取するのはなかなか難しいと思います。とりわけ外来セッティングでは。届出基準にある百日咳としての特有の臨床症状がある場合には、PT IgGの100以上を百日咳と診断していいのではないかということが議論されました。正確に言うと、PT IgGはワクチン抗原に対する抗体でもあり、咳嗽症状のない者でもPT IgGが高値となることもあるのですが、百日咳を疑う症状がある場合、特にアウトブレイクセッティングも考えれば、PT IgGについては単一血清でも診断していいのではないかというのが感染研内の結論でありました。
○調委員 そういう考え方の上で残したということを、御周知いただければと思います。
○倉根部会長 よろしいですか。そうしましたら、百日咳については改正案として全数把握とし、届出基準と届出票というのが出ておりますが、これについても本委員会で了承したことにしたいと思います。
○岡部委員 一般の臨床の中では、依然として凝集素価を測定することがあって、例の東浜株などが用いられることが多いと思うのです。それがこの中には入ってないというように表明するというか、明確にしていただいたほうがいいと思うのです。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○結核感染症課感染症情報管理室長 入れておりません。その点についても通知等で、少し明確にできるものであればしたいと思います。
○倉根部会長 御意見ありがとうございます。よろしいですか。それでは、百日咳に係る届出基準等の改正については了承したいと思います。
岩本委員がおいでになりました。議題5の審議及び議決が行われている間は御退室をお願いすることになりますので、よろしくお願いします。議題1については先生がおいでになってからということで、議題2から始めておりますので、また議題1にあとで戻りたいと思います。次に議題4、「中東呼吸器症候群(MERS)への対応について」に移りたいと思います。これについて、事務局からまた御説明をお願いします。
○繁本結核感染症課課長補佐 資料4を御覧ください。中東呼吸器症候群への対応について御説明いたします。中東呼吸器症候群は2類の感染症に位置付けられています。その届出の基準等については、平成27年1月の通知で基準を定め、これに基づいて実施しております。しかし同年5月に、韓国においてMERSの流行がありましたので、そのときに当面の間の通知として自治体と検疫所において、自治体に対しては「中東呼吸器症候群(MERS)の国内発生時の対応について」という国内暫定の通知を発し、検疫所に対しては「中東呼吸器症候群における検疫対応について」という暫定通知を発し、それぞれに基づいてMERSの疑似症への対応を実施しております。
そこで生じた課題です。韓国における流行は同年12月に終息しました。また、我が国でこれまで疑似症として検査された症例は、全て陰性でした。一方で、以下の点からMERSである蓋然性が低い者も疑似症として扱う事例が発生し、運用に混乱が生じるという課題がありました。
例を申しますと、PCR結果を待たずに疑似症として対応すべき症例の定義が広範であった、そして平成27年1月の通知が、有効であるかどうかが曖昧であった、また「ヒトコブラクダとの濃厚接触」という文言があるのですけれども、その定義が曖昧でしたし、国内暫定通知と検疫所の暫定通知で少し異なっている所がありました。
別紙1の右の下にMERSの疫学曲線があります。赤で塗ってある所が韓国での流行です。このように韓国での流行は一時的なもので、現在も見られていません。また、世界的に見ても、MERSの発生数の増加は見られていません。このことから、リスクの増大はないものと考えています。
現在の国内の暫定通知と検疫所の暫定通知ですが、別紙2を御覧ください。左から2番目と右から2番目のコラムが、国内の暫定通知と検疫所の暫定通知です。アンダーラインが引いてある所が、この2つの通知で異なっている部分です。このようにダブルスタンダードと申しますか、2つの違う基準で動いているために、若干齟齬が生じて運用に混乱が生じることがあります。
そこで今回、対応の方向性として、事務局より御提案申し上げます。対応の方向性(案)ですが、MERSであることの蓋然性が高くなるように、疑似症の定義の見直しを行います。まず検査を行うものについては、平成27年1月の通知で示したものをそのまま使いたいと思います。それが定義の2です。しかし、そうしますとPCRの結果を待たないと、行政としては何も対応できないということになります。それでは困るので、MERSである蓋然性が高いものについてはPCRの結果を待たず、疑似症としての対応ができるというように残したいと思います。それが別紙2の一番左の列の定義1です。要件ア及び要件イのいずれかに該当し、他の感染症又は他の病因によることが明らかでない場合は、MERS患者であることの蓋然性が高いことから、PCRの結果を待つことなく、診断時に疑似症と定義するというのが別紙2の青い線で囲んだ部分です。
定義1の要件アについては、最初の通知のアとイの症状と疫学的リンクの強いものが該当します。要件イは、これまでのウに該当するものの、中東呼吸器症候群が疑われる患者ではなく、中東呼吸器症候群と診断された者と読み替えていただいて構いません。このように疑似症と定義する要件を厳格化した上で、PCRは不要とするという項目を足し、かつ平成27年1月通知における疑似症は有効であるという運用で、今後は対応していきたいと考えています。このような案として御提案申し上げますが、この了承が得られれば、通知を発して対応を変更していきたいと考えています。
○倉根部会長 ただいま事務局から説明を頂きましたけれども、御意見、御質問はありますか。
○岡部委員 これにはMERS委員会という専門家会議があって、私が委員長を仰せつかっているのですが、そこで、今のところは二重構造だったりして、検疫所での要件と国内の要件と矛盾を来しているとか、全ての画像診断を検疫所でやるのは無理であろうといったことが議論になりました。逆に、MERSは現在の知見をもって見ると、院内感染はかなり警戒しなくてはいけないのですけれども、市中感染を起こしていないし、症状が極めて軽い人からのヒト-ヒト感染が極めて極めて少ないということで、軽症の人に全部検査をするというところまでは要らないだろうと。もちろんフォローアップは必要ですけれども、それをMERSとして取り扱うには、いろいろ問題点があるということが議論され、この新しい提案に至ったということですので、ここでも議論していただければと思います。提案は、委員会のほうでは一応全て了承しています。
○倉根部会長 岡部委員から、ただいまのような御質問でした。この件に関していかがでしょうか。国外での状況も勘案し、疑似症に関する新たな対応案を入れるということですね。
○岡部委員 加えて申し上げれば、これでMERSが全く楽になっているわけではないので、世の中に対しては、中東方面に旅行するような方には十分感染に気を付けていただくと。もし症状があった場合には、きちんと申告をして受診をしていただくというように、従来の注意は是非落とさないようにやっていただければと思いますので、よろしくお願いします。
○倉根部会長 岡部委員がおっしゃるとおりだと思います。
○大石委員 先週末に感染研のほうに、MERSのリスクアセスメントのアップデートをしております。ラクダとの濃厚接触については、ここでも疑似症疑いの要件にも入っているわけですけれども、既報の論文で正確なエビデンスとして示されているものは、ケースコントロールスタディーを行って得られたもので、過去2週間以内のラクダとの接触曝露ということになっております。その具体的な曝露様式の詳細な記述は今のところはありません。
一方、最近報告された論文の中では、カタールでの畜産業でラクダを直接飼育している人たちの中でのラクダへの曝露について、具体的には乳絞りをしたりといったことがリスク要因として示されています。しかし渡航者がそのような曝露をすることは考えにくいので、参考として示しております。渡航者における可能性のあるリスクの高い曝露様式については、未だ十分わかっていないというのが現状です。そういった認識でリスクアセスメントを見ていただき、今後の疑似症の検出に反映していただければと思っております。
○倉根部会長 ほかに御質問はありますか。よろしいですか。それでは、今回の中東呼吸器症候群への対応(案)については、委員会として了承することにしたいと思います。ありがとうございました。
次に議題5「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」に入ります。まず事務局から説明を頂きますけれども、説明については岩本委員もここにおいでいただいて、議論や審議に入りましたら御退室いただくという形にしたいと思います。まずは事務局から、議題5について説明をお願いいたします。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 それでは資料5「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」をお手元に御用意ください。まず経緯から御説明申し上げます。新型インフルエンザ等対策政府行動計画というのが、平成25年6月に閣議決定されています。その中で、国と都道府県は、諸外国における備蓄状況や最新の医学的な知見等を踏まえ、国民の45%に相当する量を目標として、抗インフルエンザウイルス薬を備蓄するとされています。この45%の中身については、平成21年の健康局長通知において示されています。概略は以下のとおりです。
1つは人口の25%です。これは行動計画の被害想定に基づく罹患者数で、その全員が受診するという想定をしております。さらに、全重症患者に倍量・倍期間投与、濃厚接触者等への予防投与、季節性インフルエンザが同時流行して、季節性インフルエンザの全患者に投与した場合、この量全てを備蓄すると大体45%で賄えると考えております。
上記の考え方については、平成27年度に新型インフルエンザ等対策有識者会議において議論されました。それまでこの感染症部会等でも、様々な御意見を頂きました。それぞれについては技術的な調査研究を進め、今後、厚生科学審議会で審議を進めることとされております。また、この結果を踏まえて、有識者会議の分科会である医療・公衆衛生に関する分科会において、備蓄方針の見直しを検討することとなっております。
この4つの案件のうち、2は厚生労働科学研究の研究班で、タミフル及びラピアクタにおける治療の有効性について、エビデンスの有無や種類について論文等が精査されました。その研究の概要は、小委員会のほうの三重病院の谷口清先生が代表者になっている研究班でされております。概要については参考資料12に示してありますので、適宜御参照ください。
大枠の概要について説明させていただきます。2.「研究班による論文等の精査の結果」です。研究班が論文等を精査し、以下のことが確認されています。1つは、タミフルについては、二重盲検ランダム化試験による高用量・標準用量群での介入研究において、高用量の治療による有用性は確認できなかったと。また、二重盲検ランダム化比較試験以外の研究においても、臨床的なアウトカムにおける有意差は確認できなかったということです。ラピアクタについては、二重盲検ランダム化比較試験を含め、重症患者を対象とした高用量と標準用量の臨床的アウトカムを比較した研究は確認できなかった。
これらを受けて、新型インフルエンザ対策に関する小委員会で御議論いただきました。平成29年5月29日の第9回新型インフルエンザ対策に関する小委員会で、この案件を議論いただき、次の結論が得られております。1つは、研究班による検討結果は妥当であって、倍量・倍期間投与の有用性については十分なエビデンスがなく、全重症患者への倍量・倍期間投与を標準的治療方針として推奨するべきではないと考えると。なお、臨床現場で、個々の判断で投与することを妨げるものではないそうです。その結論を踏まえ、新型インフルエンザ対策として、全重症患者への倍量・倍期間投与を行うことを考慮した抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は必要ないと考えるということで、小委員会で結論を頂きました。
○倉根部会長 ありがとうございました。岩本委員には、ここで御退室をお願いすることとします。また、議題5が終わりましたら御入室いただくことになります。
(岩本委員退室)
○倉根部会長 それでは、今、事務局から説明がありましたが、岡部委員は新型インフルエンザ対策に関する小委員会の座長もされておられます。何か補足はございますか。
○岡部委員 今、事務局からお伝えしたとおりですけれども、論文上、当初はそういうエビデンスがなくて、この倍量あるいは長期間投与というのがあったわけです。その後、そのエビデンスを見てみると、論文上では明確な根拠がなかったということですので、それをもって重症者のための備蓄をする、倍量投与としての考えをするのは必要ないのではないか。ただし、ここには書いていなかったと思いますが、現場での裁量というのは重要なので、いろいろな条件があると思いますが、例えば腎不全で腎臓が回らないのでもうちょっと量が必要だとか、そういったようなことまでも妨げるものではないけれども、通常の重症患者に対する備蓄としての倍量投与は、配慮しなくてもいいだろうという結論になりました。それから、国民の45%ないし人口の25%が罹患するという数字に対しては、現在、検討中ですから、それはそれで、この結論が出てから更に当てはめて検討するという経緯になっています。以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。質問、ございますか。この委員会としては量についてというよりは、この小委員会における結論の方向性ということですね。それから量については、また内閣府の委員会で検討されるということだと思いますが、御意見、いかがでしょうか。よろしいですか。特にございませんか。そうしましたら、今、御提案がありました新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄についてということで、特に小委員会における結論については、この委員会で了承するという形にしたいと思います。ありがとうございます。それでは、また岩本委員にお入りいただきます。
(岩本委員入室)
○倉根部会長 次、議題6「平成30年度におけるH5N1プレパンデミックワクチン備蓄株の方針について」、御説明を事務局からお願いします。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 事務局から議題6の資料について御説明申し上げます。資料6「平成30年度に備蓄するH5N1プレパンデミックワクチン株の種類について」を御参照ください。平成30年度に備蓄するH5N1プレパンデミックワクチンの種類について、経緯の説明、備蓄株選定における方針、小委員会における結論を御説明申し上げます。
1.のH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄の経緯ですが、今までプレパンデミックワクチンの備蓄の経緯としては、もともと平成9年に、初めて鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスによるヒトへの感染確定者が報告されています。病原性の高いH5N1ウイルス由来の新型インフルエンザが発生した場合、その病原性の高さから、大きな健康被害が引き起こされるだろうと想定されたために、他の国も大体同じような時期ですが、我が国では平成18年度からH5N1プレパンデミックワクチンの備蓄を行うことになりました。
主な備蓄の状況ですが、平成18~26年度には複数のワクチン株について、それぞれ約1,000万人分の原液を備蓄し、そのうち54万人分を製剤化して備蓄しています。有効期限の切れるタイミングで同じワクチン株を追加備蓄していました。平成27年度には備蓄対象に、鶏卵培養ワクチンに加え、細胞培養ワクチンを追加しています。他のクレードに対する交差免疫性を重視し、この際はインドネシア株を備蓄しました。平成28年度には別のデータが出てきて、国立感染症研究所のデータから、インドネシア株の交差免疫性は、近年分離されたH5N1の野生株については十分ではない可能性が示唆されたため、危機管理上の重要性からチンハイ株(クレード2.2)を備蓄しています。
このような経緯を踏まえ、平成28年度の第19回感染症部会で、平成28年度以降の備蓄株選定における方針について下記のように示されています。まず、今後の備蓄方針としては、近年のH5N1鳥インフルエンザ発生の疫学的な状況、パンデミック発生の危険性、パンデミックが発生した際の社会への影響、発生しているウイルスとワクチン株の抗原性等を踏まえ、検討時点で「危機管理上の重要性」が高いワクチン株の備蓄を優先するとなっています。平成29年度に優先すべき株として定められたのが、クレード2.2のチンハイ株となっています。今後の製剤化方針についても、製剤化の対象となる備蓄株は、「今後の備蓄方針」と同じように、検討時点で「危機管理上の重要性」の高いワクチン株の製剤化を優先する。製剤化の量は10万人分を基本とする。ただし、生産可能な最小製剤化量が10万人を超える場合は、当該最小製剤化量を基本とする。今後の臨床研究の方針ですが、今般、新たに導入された細胞培養法ワクチンについても、製剤化したワクチンの一部を用いて臨床研究を行い、有効性・安全性等に関して確認を適宜進めていくことが定められました。
平成30年度に備蓄するH5N1プレパンデミックワクチンについてですけれども、これが、3.新型インフルエンザ対策に関する小委員会における結論です。結論として、平成30年度に優先すべき株について、昨年同様、クレード2.2のチンハイ株を1,000万人分確保する方針を継続する。こういうことでどうかということです。理由としては、クレード2.2系統の鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染確定者数は、平成28年にエジプトで10症例、平成29年に3症例が確認されています。一方、ベトナム、インドネシア、中国での流行が懸念された、クレード1.1、クレード2.1、クレード2.3系統における人感染症例数は近年報告されていないので、現在もクレード2.2系統が危機管理上の重要性が最も高いと考えます。今後のプレパンデミックワクチンのあり方については、近年の状況等を踏まえ、改めて議論を行うことになっています。事務局からの説明は以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。これについても岡部委員、何か追加はございますか。
○岡部委員 これも私の委員会でやったので検討させていただきましたが、今の事務局の御説明どおりで、次年度用としてはチンハイ株を使う基本的な方針です。もう1つは、従来、毎年毎年、1,000万人分をH5N1を想定してプレパンワクチンとして作るのが、考え方としていいかどうか。あるいは量的にこういうようなものが妥当かどうか。もう1回、再検討するべきではないかという声は今までもあったわけです。2009年にパンデミックが起きて、今、2017年で10年ぐらい経ってくると、次のことがあるかもしれないということも踏まえて、これを見直すべきではないかという議論がありますから、今回はこれを決めているけれども、これについての議論を、これからのこの委員会できっちり議論していこうという方針が立っています。以上です。
○倉根部会長 質問、いかがでしょうか。廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 2.の平成28年度以降の備蓄株選定における方針の最後の行で、「臨床研究を行い、有効性・安全性等に関して確認を行う」と書いてありますが、この「有効性」というのは免疫原性ですか、それとも本当の有効性ですか。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 鳥インフルエンザのワクチン株ですので、基本的には免疫原性を確認するところを、まず始めるというところです。
○廣田委員 分かりました。
○倉根部会長 ほかに、調委員、どうぞ。
○調委員 今後の製剤化方針の所で、2番目に「ただし、生産可能な最小製剤化量が10万人を超える場合」とあります。生産可能な最小ロット数というのは、認可のときかGMPか何かで決まっているのではないかと思いますが、もし分かったら教えてください。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 御指摘のとおりGMPで定まっていまして、メーカーによっては10万を超える所もあると思いますので、そちらのほうは10万を超える場合もございます。
○調委員 GMPで決まっているということは、一般的にこれだけのロット数ということが決まっているわけではなく、メーカーごとに決まっているということですか。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 御指摘のとおりです。
○調委員 具体的に言うと、もう作っている会社があると思いますが、そこの最小ロット数というのは分かっているのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、分かりますか。
○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 備蓄が決まった各社について、備蓄の契約をした会社については確認で聞いているところですが、必ずしも全ての会社について、細胞培養のワクチンも鶏卵のものも、それぞれのときで事情が異なりますから、契約のときに確認してさせていただいているところです。
○倉根部会長 ほかに質問、御意見、ございますか。よろしいですか。そうしますと、今回の平成30年度に備蓄するH5N1プレパンデミックワクチン株の種類についても、新型インフルエンザ対策に関する小委員会における結論を、この委員会として了承したいと思います。ありがとうございます。
次は、議題7です。議題7は「インフルエンザに関する特定感染症予防指針の改定について(案)」ということで、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○野田結核感染症課課長補佐 資料7「インフルエンザに関する特定感染症予防指針の改正について(案)」を事務局より御説明させていただきます。改正の背景と概要ですが、インフルエンザに関する特定感染症予防指針につきましては、平成11年に告示として出されているもので、こちらのほうは感染症法及び予防接種法に基づき定められています。これまでに時点改正という形で平成12年、14年、17年、22年、26年に改正されていますけれども、今回は下に示す内容について改定したいと考えています。なお、この改定につきましては、「あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならない」という形で書かれていますが、感染症部会及び予防接種・ワクチン分科会のそれぞれの意見を聴くことを考えています。
改定の主なポイントですが、1は、感染症法改正の施行が平成28年4月1日付けで行われています。この改正につきまして具体的に例えば知事などに関しては、全ての感染症の患者等に対して検体の採取等に応じることや、医療機関等に対し、保有する検体を提出することを要請できる旨の規定が整備され施行されています。また、現行の予防指針に関しては、第6の所で新型インフルエンザについても記載されていますが、新型インフルエンザ対策に関しては新型インフルエンザ等対策特別措置法があり、新型インフルエンザ等対策政府行動計画等がありますので、新型インフルエンザ対策に関しては総合的な推進のための指針の役割を見直す観点から、こちらについては削除してはどうかと考えています。
これらの改定につきましては、今回、まず感染症部会で御意見を伺い、その上で更に、先ほども申しましたように予防接種・ワクチン分科会で御審議いただき、内容につきましてまとめた上で、再度、感染症部会のほうに諮らせていただきたいと考えています。事務局からは以上です。
○倉根部会長 ありがとうございました。今、事務局から御説明いただきました。このような改正のポイントを示していただきましたので、部会として、この方向性についていかがかということです。内容については予防接種・ワクチン分科会での意見も踏まえて、またこの感染症部会で取り上げることになると思いますが、ただいまの説明に関して、いかがでしょうか。特にありませんか。よろしいですか。そうすると、この改正について、感染症部会としては了承したという形になります。次に、先ほども申しましたけれども予防接種・ワクチン分科会で討議していただき、また、感染症部会で討議いただくという形ですが、よろしいですか。ありがとうございます。
それでは、今、議題7までまいりましたが、議題1に戻ることになります。議題1は「後天性免疫不全症候群および性感染症に関する特定感染症予防指針の改定について」です。これについて事務局より資料の説明をお願いいたします。
○エイズ対策推進室室長補佐 事務局より御説明させていただきます。資料1、1ページを御覧ください。昨年10月17日の第19回当部会において設置の了承を頂きました、エイズ・性感染症に関する小委員会において、本年4月まで4回の小委員会を開催し、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針、及び性感染症に関する特定感染症予防指針の改定作業を進めてまいりました。
資料1の2ページ、3ページに関しては、小委員会の中では、現状報告、課題抽出を踏まえ、委員の先生方に御議論いただき、こちらのページにあるような方向性で改正案を作成しています。参考資料4、参考資料5が各予防指針の改正の新旧対照表の案です。こちらを御参照いただきながら説明をさせていただきたいと思います。お手元に参考資料4を御用意いただけますでしょうか。
後天性免疫不全症候群に関する予防指針は、今回、全部改正としています。項立てについて、現行指針では、第三の「普及啓発及び教育」、第四の「検査・相談体制の充実」を分けて項立てをしている部分を、今回の改正では、第二の「発生の予防及びまん延の防止」の項としてまとめています。これにより、性感染症の予防指針とは「人権」を除いて同じ項立てという形になっています。該当ページは4ページ後半部分になります。
近年、HIV感染症・エイズ患者の新規報告件数は1,500件前後で推移しており、ここ数年、横ばいの傾向ですが、報告されるうち3割がエイズと診断されており、検査の遅れが指摘されています。一方、保健所等での無料匿名の検査の実施件数は伸び悩み、2016年は約11万件で、2008年のピーク時の17万件をかなり下回る状況です。近年、抗HIV薬の進歩により、早期に診断され早期に治療を開始し適切な治療を継続すれば、非感染者と同等の生活を送ることができるようになっています。これらの内容について1~3ページの前文に記載し、3ページの8行目には、「国民が自らの健康の問題として感染予防を適切に行うことが重要である」としています。
また、前文の2ページ中ほどに個別施策層についての記載がありますが、今回の指針では、個別施策層を、HIV感染が拡大する危険性が高い特徴のある、男性間で性的接触を行う者、性風俗産業の従事者及び薬物乱用・依存者とし、施策の実施において特別な配慮を必要とする人々と定義付けています。現行の指針では、性に関する意思決定や行動選択に係る能力について形成過程にある青少年、並びに言語障壁や文化障壁のある外国人を個別施策層としていますが、この両者については、それぞれ普及啓発の重要性、保健医療サービスへのアクセスの改善等、具体的に記載をし、対策の必要性については引き続き記載をしています。検査の拡大とともに、広く一般に治療がよくなったこと等の普及啓発を行い、検査受検へのハードルを下げることが重要であり、第2項の「発生の予防及びまん延の防止」では、普及啓発の重要性について記載するとともに、検査機会の拡大については、具体的に保健所等のHIV検査については性感染症との同時検査や検査の外部委託など、地域の実情に合った検査の推進を、また、第3項の「医療提供」の項では医療機関での積極的な検査の実施について記載しています。また、11ページ後半には、利用が増加している郵送検査についても触れ、郵送検査の課題として、医療機関に確実につなげる方法等について検討するとしています。
前後しますが、第1項の「原因の究明」において、有効な施策の立案には国内動向の正確な把握とともに、UNAIDSが提唱するケアカスケードに資する疫学研究等を継続的に実施することとしています。加えて、新規報告件数が2万7,000件を超える中で、現行の指針でも触れられている拠点病院の患者集中から、一般医療機関への患者のシフトにつきましては、12ページ、第3項の「医療の提供」の部分で基本的な考え方、及び13ページの「地域での包括的な医療体制の確保」の所で触れています。抗HIV薬の安定的な処方に関しては一般医療機関へのシフトを促し、治療の導入やエイズ治療患者の治療等の専門的な医療については、引き続き拠点病院が担う体制を想定しています。このシフトの実現については、医療機関の連携が必須であることも併せて明記しています。以上が、後天性免疫不全症候群の予防指針に関する部分の説明になります。
続きまして、性感染症に関する特定感染症予防指針につきまして御説明させていただきます。こちらの指針は時点修正を主とした一部改正としており、項立て等については現行指針と変更はありません。細かな書きぶりについては、後天性免疫不全症候群の予防指針との整合性をとる形で文言の修正を一部しています。参考資料5をお手元に御用意ください。
1ページの最後の部分は、梅毒の増加を受け記載を時点修正しています。また、今回の改正で重点的に取り組む項目として、性感染症予防の普及啓発に関し、社会の理解を後押しするような効果的な一般向け普及啓発とともに、医療従事者に対する普及啓発の重要性についても議論されました。これらの内容については4ページ後半から5ページに新たな記載を加えています。普及啓発する内容については、予防方法以外に検査を受けるタイミングについて記載すべきとの議論があり、新たに6ページ最後の部分に検査を受けるタイミングについても記載しています。9ページの「研究開発の推進」については、薬剤耐性に対する研究、また近年の梅毒の増加を含め、発生動向の多面的な把握のために疫学研究を強化することも、併せて重点的項目として位置付けています。以上で性感染症のほうの説明も終わらせていただきます。なお、今後は6月16日よりパブリックコメントの募集を開始しており、1か月のパブコメ期間を経て、10月頃の告示を予定しています。資料については事務局から以上になります。
○倉根部会長 ありがとうございます。参考資料4、参考資料5を使いながら、資料1についての説明を事務局からしていただきました。御意見、いかがでしょうか。岩本委員、荒川委員は、この小委員会の委員ということですが、何か追加はございますか。
○岩本委員 特にございません。
○倉根部会長 荒川委員からありますか。
○荒川委員 特にございません。
○倉根部会長 特に追加なしということですが、いかがでしょうか。中山委員、どうぞ。
○中山委員 よく分からないので教えていただきたいのですが、参考資料の改正案の7行目に、「HIVに汚染された血液」という表現があります。この「汚染」という言葉は、専門家の中では一般的に使われるのでしょうか。パッと見た限りで汚染という言葉を目にしたのは、ここだけだったように思うのですが、一般の感覚から汚染と言うとネガティブに聞こえるので、質問しました。
○倉根部会長 中山委員、もう一度、ページを言っていただけますか。
○中山委員 参考資料4の1ページ、改正案の7行目です。
○倉根部会長 1ページの7行目、上の段ですね。
○中山委員 上の段です。「HIVに汚染された」という所。
○倉根部会長 事務局、あるいは小委員会の委員の方、いかがでしょうか。
○岩本委員 例えば「リスク」を危険性と訳すのかという日本語の語感の問題と、それから専門用語というところの差がかなりあって、それで感染症の場合、HIVが感染した血液という言い方も、これまたちょっと変で、blood contaminated with HIVというのが英語の言い方だと思いますが、そのcontaminatedというのは、どういうのかというところです。そこに感染症の場合、汚染という言葉だと、例えば血液が汚れているとか、あるいは感染した人の人権に関わるような、差別意識のようなものが芽生えるといけないという危惧を持たれるかもしれない。強い用語であることは共有しますが、ほかにいい言葉を思い付かなかったということだと思います。
○倉根部会長 中山委員、いかがでしょうか。よろしいですか。
○中山委員 はい。結構です。
○岩本委員 幾つかこういう点で、廣田先生から御意見を頂いたところはあるのです。
○倉根部会長 廣田委員、何かコメントはございますか。
○廣田委員 汚染でいいと思います。
○倉根部会長 ほか、いかがでしょうか。大石委員、どうぞ。
○大石委員 確認ですが、性感染症に関する特定感染症予防指針で、現在の国内発生動向の所に「疫学研究を強化する」ということが記載されていて、実際、参考資料5の9ページに、「国は、発生動向の多面的な把握に役立てるため、性感染症に関する各種疫学研究について、疫学者や都道府県等の協力を得る等により強化し」と書かれています。この点、具体的には梅毒のサーベイランスにおいて、自治体をまたいで患者さんが移動されるということがあり、症例の把握のために保健所間での自治体を超えた情報交換ができることを意図されているのでしょうか。そういう意味合いでこれは改定がなされているのか、確認させていただきたい。
○倉根部会長 岩本委員、お願いします。
○岩本委員 委員会でも議論になったところですけれども、正に梅毒が、例えば東京都ですと実際に言うとかなり繁華街の多い所、渋谷、新宿、池袋というような所に集中しているわけです。そういうことに関して、指針あるいは法律でどこまで調査するかについては、個人の人権に関わることですから、むしろ研究レベルで、今、日本で何で梅毒が増えているのか。海外ですと、やはりHIVと似ていて、男性同性間の性的接触による感染が多いわけですけれども、女性の中の感染比率であるとか感染数が増えていることに関して、今すぐ法的に決められた報告を強化するよりも、まず、より詳しい研究面でやったらどうかというようなニュアンスで書いてあるつもりです。もちろん、先生のおっしゃった複数の患者が登録されていないかということを含むと思います。研究のほうが、より個別な人権問題とかをあまり侵害しない形でできるのではないかという意図で、追加させていただいたことになると思います。
○大石委員 了解いたしました。
○倉根部会長 事務局から更に追加のコメント、よろしいですか。ほかに何かございますか。清水委員、どうぞ。
○清水委員 事務局に確認をしたいのですけれども、パブリックコメントのやり方というものと、そのパブリックコメントに寄せられた意見の取扱いについてはどのような形をされているのか、お聞きしたいと思います。
○倉根部会長 事務局、お願いします。
○エイズ対策推進室室長補佐 パブリックコメントにつきましては、インターネットで募集の開始を既に公表しております。こちらに御意見を記載していただき、この件につきまして全て事務局で回答をし、それをもって必要な内容の修正等を行うことになっております。頂いた御意見、全回の指針のときには1件あったと確認しております。今回もこちらに御記入を頂き、それについて事務局で回答するということになっております。
○清水委員 感染症部会に対しての報告は特には行わないということでよろしいでしょうか。
○倉根部会長 事務局、どうぞ。
○野田結核感染症課課長補佐 パブリックコメントが終わった後で報告させていただきます。
○倉根部会長 ほかに。
○調委員 資料の2ページ目の、「保健所等・医療機関等での検査拡大」という所の、3番目の項目ですけれども、「近年増加している郵送検査」、これは検査の機会が拡大されるということは必ずしも悪いことではないかもしれないですが、病気の診断というのが、医師の監督下でもなく、保健所のような医療機関に結び付けるシステムもないような検査が拡大していくのは非常に危惧されるような気がするのですが、具体的にこれをどう扱っていくのかに対して、何か考え方みたいなものはあるのでしょうか。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○エイズ対策推進室室長補佐 11ページに郵送検査について記載しておりますが、郵送検査のみではHIVの感染の有無は確定するものではなく、あくまでプレ検査であることを明示し、また医療機関等への受診を確実につなげる方法について検討ということで、現在も研究班でその精度管理、それと医療機関への結び付けについて検討を進めているところです。この春に郵送検査の在り方について研究班の報告が出ておりまして、今後この実効性を踏まえ、提言を出していくことになっております。医療機関等への受診に確実につなげる方法については、それぞれの企業がかなり努力をしている状況で、その中でモデル的に取り入れるべき部分は取り入れる形で、今後、企業等に働き掛けていくような形になっております。
○倉根部会長 ありがとうございます。調委員、どうぞ。
○調委員 是非、郵送による検査だけで終わることがないように、きちんとした対策を取っていただきたいと思います。
○倉根部会長 事務局、よろしいですか。味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 実際、郵送検査も年間7万件近くて、保健所の件数の半分ぐらいに達しているわけなので、ちょっとこれを無視するわけにはいかないので、研究も含めて検討していこうという。
○倉根部会長 ほかにはいかがでしょうか。
○山中委員 保健所で検査がなかなか増えていないということで、委託も検討するということですが、例えば私どもの保健所でも相談も一緒にやっていますので、お一人に掛かる時間が結構長いです。例えば感染した場合に、これからどうなっていくのかとか、あるいは医療費はどうなっていくのかとか、福祉的なことまで相談されますので、そういう意味では、結構、自分たちとしては目一杯やっているけれども、やはり人数をこなせないというところでは、委託も致し方ないなとは思っております。そういうことで、受診していただく方を増やすことは重要だと思っていますけれども、委託先を選ぶに当たって、条件というか、やはりどこでもいいというわけにはいかないと思いますので、その辺も少し御検討いただければと思います。
○倉根部会長 事務局、あるいは岩本委員からですか。岩本委員、どうぞ。
○岩本委員 委託先は非常に大事だと思います。やはり6月の検査週間とか、恐らく急に検査が増えるときに、委託される先によっては、陽性率が非常に低い場合もありますので、例えば東京都の南新宿検査相談所とか、一般の保健所と比べてかなり高い陽性率を示していますので、検査件数とか陽性率を加味しながら御検討いただくということになるのではないかと思います。
○倉根部会長 事務局、追加はございますか。よろしいですか。
○廣田委員 先ほど疫学調査の話がちょっと出ましたけれども、例えば梅毒でクロスセクショナルに見ると、20代から40代で多いですけれども、出生コホートで見ると40代になっても増加傾向を示しているのです。常にクロスセクショナルで何歳台という議論と、そうした議論も是非お願いして、実際の対策に役立てていだきたいと思います。
○岡部委員 質問ですけれども、そのときに例えば高齢者の人数が多くなっていますよね、ポピュレーションとして多くなっているという。
○廣田委員 そうです。これは届出患者数しかいませんので、純然たるバースコホートアナリスではなくて、届出数です。
○倉根部会長 ほかはいかがでしょうか。御質問、御意見はございますか。いろいろな御意見を頂きましたので、その御意見を取り入れるべきところは取り入れる形にしたいと思いますが、今の御意見を入れて、感染症部会として案を了承するということでよろしいですか。また今後考えるべきところもあるでしょうから、そこについてもまた事務局としてよろしくお願いします。それでは、感染症部会としては了承といたします。
次は、議題8、報告事項です、まず1「今冬のインフルエンザの発生状況について」、事務局からお願いします。
○結核感染症課感染症情報管理室長 資料8、この冬、2016/17シーズンの季節性インフルエンザの概要について、毎年まとめている資料です。本日6月19日付けで国立感染症研究所及び厚生労働省のWebサイトに掲載しています。基本的に毎年同じような項目をまとめておりますが、ポイントとなる点を幾つかハイライトしたいと思います。資料8の5ページを御覧ください。これは過去3シーズンの流行曲線を示しています。赤い線が2016/17シーズンです。2016/17シーズンは昨年の第46週から流行期に入り、1.38という定点当たりの報告数は全国平均で超えておりまして、これまでのシーズンの中では早い部類ということになります。ピークを打っておりますのは年が明けて今年の第4週がピークになり、この時点で定点当たりの報告数が39.40になります。過去10シーズンの中では5番目に多かったということです。その後、順次低下し、先々週の段階で今シーズンの定例の報告は終了しております。
6ページは、地域での流行の状況について、レベルマップで落としているものです。左がシーズン入り、シーズンのピークが真ん中、第13週の時点で比較したものが右という形になります。今シーズンのものが一番上、真ん中が去年、その下が更にその前の年になります。北海道などが早期に流行しているような状況がありますけれども、注目していただきたいのは一番上の真ん中の所で、ちょうどピーク時では、関東以西での流行が多かったというようなことになります。加えて、右側の第13週で比較しますと、おおよそ流行が下がってきたわけですけれども、昨年と比較すると今年は随分下がった状況にあったということです。
7ページ、インフルエンザ推計受診者数の概要です。こちらは先ほどの流行曲線と極めて似ているわけですが、累積推計受診者数については1,672万人というのが今年度の数字になります。この点については後ほどもう1件御報告させていただきたいと思います。
8ページは年齢別の推計の累積受診者数を分けたもので、今シーズンは一番右側、真ん中が昨シーズン、その前のシーズンが一番左側です。今年は15歳以下の数字が、ちょうど右側の所になりますが約39%、昨年は約41%で、15歳以下の受診者数の割合が限られているということです。
続いて10ページです。分離された病原体の状況です。2016/17シーズンが一番上で、順次繰り上がり、2015/16、2014/15、2013/14シーズンという形になります。ちょうど白く抜けているのが今シーズンでもたくさん報告がありますが、これがH3によるものの分離された数、赤色のH1については今年は非常に少ないという状況で、昨シーズンは逆にH1が大変多かったということです。ちょうど2014/15シーズンと比較しますと、今年とよく似たような傾向になります。B型の山形株などの報告は若干異なるところですけれども、A型のインフルエンザについては、H3が主体ということになります。
11ページにその検出の割合が書かれていますが、圧倒的にH3の検出が多いという状況です。同じページの一番下に、抗インフルエンザ薬耐性の検出状況ですが、下から3行目ぐらいの、いわゆるタミフル等への耐性を有する株は2例検出され、1.2%ということで、これがH1型のパンデミックの株で確認され、それ以外については確認できないということです。
13ページは基幹定点でのインフルエンザ入院サーベイランスの状況です。年齢群別に並べたものが13ページの上の図にあります。特に70歳以上の高齢者の報告数が今シーズンは多く、昨年と比較してほぼ倍ぐらいの数字になっているという特徴があります。あと幾つか飛ばさせていただきますが、途中にインフルエンザ脳症のサーベイランス等々ありますが、詳細は割愛させていただきます。
最後、28、29ページに今シーズンのインフルエンザウイルスの分離株の性状と抗原性ということで記載しています。A(H1N1)pdm09亜型ウイルスに関しては、ワクチン株との抗体反応、抗原性についてほぼ類似したものであったということがあります。一方、その流行したA(H3N2)亜型ウイルスについては、29ページのB型ウイルスの少し上辺りに、鶏卵での増殖によってウイルスの抗原性が変化したことにより、流行株と抗原性が乖離する傾向が認められたことが報告されております。以上が資料8に関する今冬のインフルエンザの報告の概要です。
引き続き、資料9について御報告いたします。先ほど申し上げました推計の受診者数について、標題がいろいろあって申し訳ありませんが、インフルエンザの罹患者数の推計とも申し上げるものでありますが、資料9です。これは厚生労働省の研究班で「新興・再興感染症の発生に備えた感染症のサーベイランスの強化とリスクアセスメント」という研究班が行っており、インフルエンザに限らず、様々な感染症の罹患者数の推計についていろいろ検証を行っていただいております。現在の罹患者数の推計、正確に申しますと、受診者数の推計は、現行では内科及び小児科の定点約5,000箇所で報告していただいたものについて、推計数を出す際に、報告のあった定点の施設数を全国の医療機関の施設数で割り戻すという形をしております。したがいまして、現行の報告数ですと、2015年の推計数は1,200万人余りという推計が出るわけですけれども、これについて少し過大な推計になっているのではないかというのが従来から指摘をされていたところです。
資料9の2ページ目、参考資料1、これは上が全国の医療施設の状況、下がインフルエンザ定点となっているものの状況です。赤く囲んでいる外来患者延べ数の平均値で、左から病院の小児科、一般の診療所等々、病院の内科とありますけれども、上の医療施設全体での平均値、それから、インフルエンザ定点の平均値を見ていただくと、インフルエンザ定点となっている所の施設が若干全国の平均よりも多い、すなわち外来患者数の延べ数が多いような医療機関が定点に挙がっている例があると。したがって、このようなところが単純に医療施設数だけで割り戻すと過大な推計になるのではないかということです。
1ページに戻って、それらを勘案しまして、研究班の報告で頂きましたものでは、これは医療施設調査などにおいて、定期的に外来患者の延べ数を医療機関ごとに集計するということがなされております。この数字を使って外来患者延べ数で割り戻すというやり方をとる形で行ってはどうかという御提案を頂きました。これで行いますと、2015年の推計値はおよそ800万人になるのだろうと。この数字について検証したのが、また前後して恐縮ですけれども、同じ資料の3ページです。こちらは2012/13シーズンを使っているわけですけれども、レセプトのデータベースを使いインフルエンザ様疾患の患者数の推計をしたもの、それと現行法、すなわち医療施設数での推計を行ったものは、およそ1.5倍程度の推計値の差があったと。これは先ほど示した新たに患者延べ数で推計を行ったものも同じぐらいの倍率ですので、恐らくレセプト情報のデータベースを使った推計と、今回行おうとする外来患者延べ数を用いた推計というのは、ほぼ似たようなところに収まるのではないかということで検証がなされているということです。したがって、現在の推計方法を、患者延べ数を用いて割り戻すというやり方に今後変更していきたいと思っております。
これにつきましては、現在の発生動向調査のシステム改正を今年度末、来年3月に予定をしております。これはシステム上、乗せる必要がありますので、その機会にこの推計に変更していきたいと考えております。実際にこの新たな推計を使っていくものは、次の次のシーズン、2018/19シーズンからこの推計方法に基づく推計を出していく。これについては毎週現在も出していたところですけれども、毎週この推計値を計算して、お示ししていく。ちょっとまだ技術的な部分について検証が必要ですけれども、可能であれば都道府県においても活用していただき、都道府県ごとの推計値のようなものも算出していただくような形も検討したいと思います。推計方法の変更等々を行っていく際には、情報について、どの推計に用いられたものであるか等々を明確にして、正確な情報が伝えられていくように工夫していきたいと思います。以上、報告事項2点でした。
○倉根部会長 何か御質問はございますか。
○清水委員 2点目の、資料9の、データの分析方法を変えるということで、何か影響として考えられるものはあるのでしょうか。
○結核感染症課感染症情報管理室長 直接的な影響はそれほどではないと思います。現在の推計が多少過大になっているということからすると、様々な医療機関や地域の対策とかには、この数字がある程度使われてきたのではないかと思います。多少過大な推計であったということですので、地域の対策などを立案していく上で、より実態に近いような形で施策を講じていけるのではないかと思います。
○清水委員 私ども地方の自治体としては、国と同じような方向性で計画が策定できるということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
○倉根部会長 ほかにございますか、よろしいですか。それでは、次の報告に移ります。報告事項の2「ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの改定について」、これも事務局からお願いします。
○野田結核感染症課課長補佐 事務局より資料10を用いまして御説明させていただきます。「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」の一部改訂について、この手引きにつきましては、平成28年6月付けで作成し、公表していたところですけれども、作成から1年が経過しまして、新規の知見や状況の変化等がありましたので、改定をしたいと考えております。改定のポイントとしましては、2つございます。1つ目が、ファビピラビルに関する新たな知見が出てきたというところで、具体的に論文など出てきておりますので、こちらについて記載を加えたいと考えております。また、作年の6月に作成した後に、数値等の修正が入っておりますので、そちらについても改定をするという、一部改訂をしたいと考えております。事務局からは以上です。
○倉根部会長 この手引きの一部改訂ということです。何か御質問はありますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、次の報告事項3「抗微生物薬適正使用の手引きの公表について」、事務局からお願いします。
○野田結核感染症課課長補佐 資料11の「抗微生物薬適正使用の手引き」について、こちらは前回の感染症部会で御審議いただき、その後、公表をしております。具体的には6月1日付けで公表しておりますので、そちらの御報告になります。参考資料15もお手元に用意しておりますので、お持ち帰りいただければと思います。以上です。
○倉根部会長 これは既に公表されているものであるということです。何か御質問はございますか。
○菅原委員 私の勉強不足かもしれませんが、これはAMRのアクションプランの一環だと思うのですけれども、この手引きのアウトカム、成果と言いますか、そうしたことを評価していくような枠組みというか、そういうシステムみたいなものがあると思うのですけれども、ちょっと御説明いただきたいと思います。
○倉根部会長 事務局、いかがでしょうか。
○野田結核感染症課課長補佐 御指摘ありがとうございます。正にこのAMRの関係では、全体の動向について把握をしていきましょうと言われております。その関係で、健康局長の私的検討会という形でワンヘルスの観点で、AMRの動向調査を行っていくという検討会を開催しておりますので、その中で動向について報告書を作成していくことを考えております。
○倉根部会長 ほかに御質問、御意見はございますか。よろしいですか。
○廣田委員 ちょっとよろしいですか。先ほどの私の梅毒と出生コホートの件ですけれども、ちょっと言葉足らずでしたので。最近の出生コホートで見ると40代になっても届け出患者数が増加を示していると、そういう意味でございます。
○倉根部会長 今、更に説明がございました。これで報告事項まで終わりました。特になければ本日の議事を終了したいと思いますが、事務局から何かございますでしょうか。
○高倉結核感染症課課長補佐 第22回の開催につきましては、日程調整の上、改めて御連絡いたします。
○倉根部会長 本日の部会はこれで終了いたします。委員の皆様、どうもありがとうございました。
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