ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第25回 社会保障審議会生活保護基準部会(2016年10月7日)
2016年10月7日 第25回 社会保障審議会生活保護基準部会
社会・援護局
○日時
平成28年10月7日(金)13:00~15:00
○場所
厚生労働省専用第21会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
小塩 隆士 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
宮本 みち子 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・子どもの貧困対策も踏まえた有子世帯の扶助・加算の検証
・その他の扶助・加算における検証に必要なデータの収集・整理及び検証手法の開発に向けた検討
・その他
○議事
■駒村部会長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第25回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開会いたします。
まず、本日の委員の出席状況について、事務局よりお願いいたします。
■鈴木保護課長 それでは、本日の委員の御出欠の状況でございます。全委員御出席いただいております。
また、事務局におきまして9月に人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。
中井川大臣官房審議官でございます。
■中井川大臣官房審議官 中井川でございます。よろしくお願いいたします。
■鈴木保護課長 それでは、部会長、議事の進行、よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、議事に入りたいと思います。
カメラの方は、もういいですか。いらっしゃらないですね。
前回の部会では、今年度の検証作業スケジュールについて御報告いただきました。そのスケジュールに従いまして、本日は有子世帯の扶助・加算とその他の扶助・加算の検証方法について御報告いただきたいと思います。
事務局から提出された資料1について、まず御説明をお願いいたします。
■清水課長補佐 それでは、資料1「有子世帯に関する扶助・加算の検証」について御説明させていただきます。
1ページ目をお開きいただければと思います。有子世帯の扶助・加算に関しましては、これまでの部会でも御議論をいただいてございまして、主な意見といたしましては、ひとり親世帯の生活水準を考える場合、相対的に低所得であること等に鑑みて、ふたり親世帯と同等の生活水準が保たれる必要があるのではないかとか、低所得者世帯との相対ではなく、子どもにどうしても必要なものを別途切り出して考える必要があるのではないか。子どもの家庭環境について、文化的、社会的観点で見ていくことも大事ではないかというような御意見をいただいているかと思います。
また、参考で記載しておりますが、平成27年1月の部会報告書においても、子どもの貧困率等を考慮いたしますと、一般世帯との均衡という考え方のみで見直すことは適当ではないのではないかということで、引き続き議論を重ねていく必要があるとされた経緯もございます。
こういったことも踏まえまして、今後の検証につきましては、単に一般世帯との均衡だけではなく、子どもの健全育成に係る需要とは何かという点も把握した上で、様々な視点から考えていく必要があるのではないかということから、検証の視点(素案)というものを作成させていただきました。
2ページ目をご覧いただければと思います。一番左の部分、検証の視点について大きく3つに分けて整理してございます。生活実態ということで、基礎的なデータも含め、有子世帯がどういった生活実態にあるのかという視点。また、就学・就労ということで、子どもの貧困対策、子どもの将来への自立に向けた支援として何が必要か、どういった費用が必要かといった視点。また、消費実態ということで、消費実態が実際どうなっているのかというような視点で分けてございます。
資料といたしましては、横に見ますと、一番左が現状把握・調査といたしまして、検証等を行っていく材料について記載しておりまして、真ん中の枠がそれをどういった分析・評価をしていくか。一番右で、その結果をもとにどういった検証・検討を行っていくかということでまとめてございます。
生活実態のところでございますけれども、被保護者調査、また、本年7月を調査時点として実施しております家庭の生活実態・生活意識調査をもとにいたしまして、分析・評価の視点といたしましては、有子世帯の傷病ですとか障害の状況がどうなのか。また、世帯構成と就労の状況。例えばお子さんの末子の年齢と就労の関係がどういった状況にあるのか。また、保護を受けていない世帯と保護世帯で生活実態や生活意識がどのような点で異なっているのか、差が生じているのかなどの分析を行いまして、右の欄でございますけれども、被保護有子世帯特有の課題があるのか、また、あるとしたらどういった点で生じているのかというところ。また、被保護有子世帯の生活環境、生活の質の観点で見るとどういった状況なのか。また、それは生活費の水準との関係が何かあるのかどうかといったことを検証してはどうかということで挙げさせていただいております。
1つ下の就学・就労のところでございます。こちらは文科省で実施されております子どもの学習費調査、また、先ほどの被保護者調査ですとか生活実態・生活意識調査をもとにいたしまして、一般有子世帯と被保護有子世帯について、子どもの就学状況、学習環境等に差があるのかどうか。子どもの学習費について、例えば年収別の支出項目ですとか支出の水準について、果たしてどうなっているのかということを分析しまして、生活保護制度において保障する学習費用の範囲、水準をどう考えるかというところを検証・検討を行えればと思います。
また、被保護世帯の就労状況がどうなっているのかということも踏まえまして、子どもの就職に向けた支援というものをどう考えるかという点も検証・検討が行えればということで挙げてございます。
一番下の枠、消費実態のところでございます。基礎となります全国消費実態調査、家計調査をもとにいたしまして、これまでの部会の委員からも、先ほど御紹介いたしましたとおり、子どもに係る費用というのは切り出して考えてみる必要があるのではないかという御意見もいただいておりますので、まず実態として子どもに係る費用、有子世帯特有の支出であるとか、支出がほかと比べて増加している費用が何であろうかといったことを分析いたしまして、その上で、2ポツ目、子どもに係る費用というのは、通常の生活費、大人の生活費と消費傾向に何か差があるのか、特徴があるのかといったことを分析できればと思ってございます。
また、ひとり親世帯の消費実態ということでは、ふたり親世帯との違いがどういったところにあるのかという分析を行いたいと考えております。
それらを含めまして、全体の検証課題ということではございますけれども、子どもの育成に係る費用の範囲、水準をどう考えるかということについて検証・検討を行ってはどうかということで資料をまとめてございます。
各種データに基づく具体的な分析、評価作業というのは、これから来年度にかけて実施していくことにもなります。また、枠外に矢印で書いてございますとおり、検証を行っていく中で必要な分析の視点等があれば、追加して分析を行っていくということにもなろうかと思いますが、本日の部会では、まずはこのような視点で検証を進めていくことでよいか、また、抜けている視点、追加する視点等、御意見をいただきまして、今後の検証作業の方向性ということを定めていければと考えてございます。
次ページ以降は基礎的なデータですとか参考指標等の資料を載せてございます。
3ページは、有子世帯の件数、世帯数のデータでございます。子どものいる世帯といたしましては、平成26年7月末日現在で15万7,000世帯。全世帯に占める有子世帯の割合というのは約10%になってございます。1世帯当たりの平均の子どもの人数は1.71人。親の状況で分けますと、子どものいる世帯の76%がひとり親世帯に属してございまして、その大部分、全体の66%は母子世帯となっているということでございます。
4ページについては、生活保護の世帯類型別、年齢別に子どもの受給者数をまとめたものでございます。18歳以下の人数ということでまとめてございますが、表の左下の合計欄、全体としては27万8,000人。全受給者に占める割合は13.1%となってございます。世帯類型別に見ますと、先ほど申し上げたとおり、母子世帯が割合としては一番多くなってございますけれども、右のその他の世帯にも22.7%ということで、一定割合属しているということになってございます。
また、子どもの年齢で見ますと、子どもの年齢が高くなるに従って受給人員も増える傾向にございまして、特に12、13、14の中学生の世代、15、16、17の高校生の年代は、ほかの年代と比べると増加しているということが見受けられるかと思っております。
5ページにつきましては就学の状況ということで、それぞれ小学生、中学生、高校生等の人数をまとめてございます。なお、ほかの資料も同様でございますけれども、被保護者調査は7月末日現在の満年齢で報告をいただいている関係上、12歳のところが小学生と中学生のところで分けてあったり、15歳のところが中学生と高校生、誕生日の関係でそういった分類になっているということで、ご覧いただければと思います。
6ページにつきましては、有子世帯の世帯主の収入状況をまとめたものでございます。これは生活保護被以外に収入を得ているかということでございますが、有子世帯については児童手当、児童扶養手当がございますので、約9割の世帯は何らかの収入を得ているということになりますけれども、就労収入を得ている世帯主の割合というのは約40%になってございます。親の状況別に見ますと、母子世帯は44.5%ということで、ほかから比べると比較的高い就労割合になっているということでございます。
7ページにつきましては、就労の状況を就労形態別に分けたものでございます。雇用の形態別に見ますと、やはりパートの割合が最も高くなってございまして、就労している人の約8割弱ぐらいがパート・アルバイト等の雇用形態になっているという状況でございます。
8ページが就労収入の状況を見た表でございます。有子世帯全体で見ますと、世帯主の収入月額、平均額が約8万2,000円強ということになってございます。その分布を右側の棒グラフで見ていただきますと、一番多いのは6万円以上8万円未満の階層となってございます。被保護者調査では就労時間数とか時給をとってございませんので、はっきりとは申し上げられませんけれども、大体パートで800円の時給だとすると、5時間で20日働くと約8万円ということになりますので、そういったイメージの方が多いのかなという感じで見ております。
9ページは障害・傷病の状況についてまとめたものでございます。こちらの資料の障害・傷病の定義でございますけれども、障害者加算を受けている者のほか、障害や傷病のために働くことができない、または、それと同等にある者ということで、福祉事務所で判断された方が計上されているものになってございますので、そういった意味では、比較的重度の方が障害・傷病があるということで分類をされているということでご覧いただければと思います。
世帯主のうち約3割はそういった意味で何らかの障害・傷病を抱えてございまして、その分類で見ますと、中では精神疾患の割合、精神障害と傷病の精神病を合わせますと、全体で約15%ということで、割合としては一番高くなろうかなと見てとれます。
また、障害・傷病がない方のうち、一番右の欄でございますけれども、そのうちの就労者は、約半分程度が就労しているという状況になっております。逆に申しますと、明らかな障害・傷病がない場合でも約半数は何らかの生活課題を抱えて働けていない状況にあるということが言えるかと思っております。
10ページは子どもの障害・傷病の状況についてまとめたものでございます。こちらの障害・傷病の定義も先ほどの説明のとおり、同じ定義でとってございますけれども、それで見ますと、障害・傷病ありというのは6.5%、明らかな障害や傷病のない方というのは93.5%となってございます。
種別ごとに見ますと、強いて言いますと、知的障害のお子さんの割合が若干高くなっているというところが見てとれるかと思います。
11ページにつきましては、母子世帯の保護受給割合ということで整理してございます。母子世帯の保護受給割合、いわゆる保護率は14%ということになってございまして、母親の学歴ごとに見てみますと、最終学歴が中学校卒の母子世帯の保護受給割合が34%ということで、最も高くなっているという状況でございます。
12ページは母子世帯全体の年間収入の状況。これは保護を受けていない世帯を含めた全体のということになりますけれども、年間の収入の状況を整理したものでございます。こちらについては、母子世帯は相対的に収入が低いと言われておりますので、参考として資料をつけさせていただいております。
13ページは、生活保護受給者を対象に行っております「子どもの貧困」関連施策ということでまとめてございます。教育・生活の支援とか経済的支援、保護者に対する就労の支援ということで、それぞれの扶助・加算、また、就労活動促進費などの支給のほか、学習支援事業、就労支援事業などの各種事業、そのほか収入認定除外等の取り組みについてまとめておるものでございます。
右下の方に参考指標といたしまして、高等学校の進学率、中退率等についてまとめてございますけれども、進学率は一般世帯よりも低い、高校の中退率で比べますと、一般世帯より生活保護世帯の方が高いという状況になってございます。
14ページにつきましては、一般の子育て支援対策、ひとり親支援対策について一覧にしたものでございますので、またご覧いただければと思います。
15ページ、16ページにつきましては、今後の検証作業等に活用し得る調査等について概要をまとめたものでございますので、また御議論の中で御参考にしていただければと思っております。
17ページにつきましては、子どもに係る費用に関するデータの例といたしまして、内閣府の方で実施されましたインターネットによる子育て費用に関する調査について掲載しております。回答者の平均年収が600万円強ということで、若干高目の層であるということと、ネットのアンケート調査ということで、傾向を把握するための参考として今回資料に掲載させていただきました。
その結果を見ますと、年収の増加によって支出の増加が顕著に見られる費用といたしましては、習い事などの学校外活動費とかレジャー・旅行費については、年収の増加によって支出も増加する傾向にあるということ。また、年収500万円未満の層で見ますと、食費ですとか生活用品費等のいわゆる基礎的な生活費部分とか、通常の学校教育に係る学校教育費、また、学校外教育費については大きな差が見られないという結果になってございます。
1枚おめくりいただきまして19ページについては、文科省の方で実施しています子どもの学習費調査の結果を掲載させていただいております。こちらについては、先ほども申し上げましたとおり、今後いろんな年収ごとの分析等も詳細に行った上で、今後の検証作業の材料にさせていただければと考えてございます。
次ページ以降は参考として、扶助・加算の概要、その他の施策の概要資料を添付してございますので、また御議論の参考にしていただければと思ってございます。
資料1の説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
では、きょう御説明いただいた資料1について議論したいと思います。御質問あるいは御意見がございましたら、どうぞ挙手でお願いいたします。岩田先生、お願いいたします。
■岩田部会長代理 1に関してということではなくて、この部会の議論全体と、きょうの1と2の順番に関しての意見です。
1点目は確認ですけれども、生活保護基準部会の位置づけについてです。これは、平成16年の在り方委員会のときに、こういうものをぜひ作ってほしいと要望した一人でしたので、部会ができたときは大変いいなと思ったのです。
この趣旨は、議事録にありますように、全国消費実態調査が5年に一度あるので、少なくとも5年に1回は定期的に検証しましょうということだったのです。それと、平成16年は加算をいきなり扱ったわけですが、基本的にそれまでの扶助、生活保護の検証というのは、加算についても合理的かどうかという意見は書いてありますけれども、基本的には生活扶助本体についての検証というもので、何とか方式として変遷してきたわけです。
ところが、この基準部会が始まってから次々といろいろなお題が出てきて、それはこちらで発想するというよりは、保護課の方からいわば諮問のように出てくるわけです。それがあらゆる加算、それから他の扶助も含めて出てきております。非常に受け身で、その内容だけ。例えばきょうも非常に細かいデータを出していただいて、これ自体は悪いことではなくて、こういう観点から検証しましょうというのは、それはそれで一つの提案としてわからなくはないのですが、実際には部会が開かれるごとに何かを下げているのです。つまり、生活保護基準が全体下がっている。引き下げ部会みたいなイメージがありますね。たまたま常設なので、都合よく毎年毎年、予算編成前に何を下げたらいいだろうかということで出てくるのではないかと疑いを持つほどです。
私は最初の在り方委員会にかかわった者として、このままこういうふうに行くのかどうか。部会というのは下げるためにあるのですかということをまずお伺いしたい。
2点目ですが、加算は、その在り方委員会のときも老齢加算をとったわけです。その後もいろんな加算についてここで議論がありました。きょう、多分後から御説明があると思うのですが、つまり、加算とかほかの扶助をどういうふうに議論するかということについてのデータや検証手法の開発というのが次の議論にあるのですが、これは順序が逆ではないか。後で御説明いただけばわかると思うのですが、資料2では非常に根本的な問題が含まれています。つまり、加算と本体を一体化して検証する部分とそれと切り離してする部分が両方含まれている。
老齢加算のときは一体化してしまったのです。本当にあれでよかったのかというのは、私も非常に重い反省があります。というのは、生活扶助本体は作り方が、標準世帯から展開するという作り方でやっているわけですが、加算は、いわばライフステージや障害、その他の特別需要に関して設けてあるので、加算も例えば水準均衡でやるのかどうかという議論を実はしていないのです。
だから、きょうの2番目の議論が大変大事なもので、それを先にやらないと、有子世帯の子ども、特に児童養育加算というのが一つの目玉になるのだろうと思いますけれども、どうするかという議論は扱えないのではないか。もちろん、養育費については水準均衡でやるかどうかということは決めていなくて、むしろ絶対的な基準のほうがいいのではないかという議論であったように理解していますので、そういう意味で先にやるのだというのは、それはそれとしてあり得るかもしれませんが、つまり、加算とか他の扶助をどう扱うかということについて、今まではそのときそのときのやり方をしているのです。だから、とりあえずここ何年間は統一的にこの方針でやろうということが決められないと、私たちも非常に議論しにくい。
ちなみに、かつて保護課の方で加算の取り扱いについてルールを決められたことがあるのだそうです。私自身は今まで聞いたことがなかったのですが、ある本に書いてあったものですが、1975年9月19日に「加算の取り扱いについて」という意見がまとめられたようで、これは福祉年金が拡大したときにどうするかということで、老齢加算を一つのベースにして、母子加算や何かも扱うというような取り決めらしいのです。もしもそうだとすると、そういうものの仕切り直しをしなければならないのですけれども、今までどこも仕切り直しをしていないのです。していないまま、要は、テーマが来ると、テーマをともかく熱心に扱ってしまうという感じで来ているので、そういうやり方でいいのかどうかというのが2点目です。
この2つをお伺いしてから議論に入りたいというのが私の意見です。
■駒村部会長 ありがとうございました。
一番本格的な作業に入る前に、この部会の役割の確認、もう一つは、せっかく常設部会にしたわけですから、そもそも個別の水準や加算の議論をする前に、検証方法の開発とか考え方を整理しておくべきではないかというお話がありましたし、先ほどは具体的に資料、これまでの考え方の重要な転換期であるような資料があるという御指摘もありました。
今の岩田先生の御意見について、事務局から何か御回答ありますか。
■鈴木保護課長 まず、1点目のこの部会の役割は、まさに生活保護基準について客観的に科学的に検証していただくと。それを私どもの方で受け止めさせていただいて、最後は厚生労働大臣の判断になりますけれども、基準の改定に反映させるという位置づけでございますので、したがいまして、今の世の中、社会情勢のあり方などに照らして今の保護基準が妥当なのかどうかということを専門的あるいは科学的見地から御議論いただくということでございますので、結論ありきということではなくて、そこはもちろんそういう科学性をもとに議論していただくという趣旨で考えております。
それから、いろんな扶助・加算のルールがそのときそのときに決まってきていて、それをこれからどうするのかという方針がまずありきという御指摘だと理解しましたが、今までいろんな扶助・加算がございますけれども、例えば生活扶助基準に倣いますとか、そういう改定のルールなどをとってきておりますが、それ自身でいいのかということも当然議論があります。生活保護基準は、本体、生活扶助基準といろんな加算・扶助を足し合わせた形で最終的には生活保護受給世帯の方の最低生活を保障するという仕組みでございますので、まず本体が生活費の根幹ですから、今までは水準均衡方式をとってきた。あわせて、それではカバーできない特別な需要については加算などで対応する。現在はこういう体系になっておりますので、その全体の中で当然生活扶助基準、本体と加算の関係は、生活という意味では全体を当然議論していただきますけれども、部分的には加算としての特別な需要にどうやって対応していくかという見地もございますので、そこはある意味行ったり来たりしながら、最終的には全体像を見ていくということになろうかと思っております。
■駒村部会長 岩田先生、どうぞ。
■岩田部会長代理 今の最初の点についてですけれども、基準を決めるのが厚生労働大臣ということは分かっています。すると、基準部会は何をするのでしょう。基準部会は、データをそのお題に沿ってともかく検証して見せた。その素材を出すと厚生労働大臣が判断して、このようにされるというようなやり方を今後もしていくということでいいわけですか。
■駒村部会長 どうぞ。
■鈴木保護課長 下げるかどうかというのは結果論でございますので、適切に検証いただいた結果を私どもの方で受け止めさせていただいて、基準のあり方に反映させるということですので、下げるとか下げないとか、それは最後の結果論ですので、あらかじめそこを念頭に置いていただく必要はないと思っております。
■駒村部会長 では、続けてください。
■岩田部会長代理 これまでも現実的には基準を下げてきたわけです。その影響について、とりわけこの間、デフレで全体を下げた影響について調査をしてくれというのは、この部会でもたびたびお願いをしてあったわけですけれども、必ずしもそれとして出てきていない。
私は、今、出ている生計費調査と被保護世帯実態調査の保護歴ありで、再開まで何カ月ぐらいかかったかという項目をちょっと見てみたのです。つまり、再保護というのは、平均で言いますと大体15%ちょっとなのです。ところが、高い層がありまして、例えば母子世帯、障害世帯はそれよりはちょっと高いのです。しかも、もっと問題なのは、その中で再開まで何カ月かというのを見ますと、1カ月未満が一番多いのです。1カ月未満が多いというのは何ですか。3カ月まで足し上げますと平均で大体25%弱なのです。特に非常に多いのが障害世帯と母子世帯です。こういうことがあります。
私たちの検証は、今まで基準のモデル計算と、それから全消なら全消、家計調査なら家計調査のプールデータと比べているのですが、過去に歴史上、生活保護の検証をやるときに家計調査同士を比べたというのが結構あるのです。それで、社会保障生計調査を見ていますと、これは毎年わかりますので、消費支出がどのぐらい変動したかというのが出ているわけです。今わかるのは2014年までです。2013年から14年にかけて落ち込みが大きいです。これは類型で違いますけれども、例えば母子世帯は消費支出が平均2万円落ちています。2万円ですよ。私もこんなに落ちているとは思いませんでした。
それから、家計構造ですけれども、これは前からそうなのですが、例えばエンゲル係数というのがありますが、生活保護世帯のエンゲル係数は信じられないぐらい高いのです。平均で31.4%ですが、一番高いのは高齢世帯で37.5%です。今はどのぐらいかといいますと、全消で2人以上の勤労世帯の平均は23.4%です。これは第一分位でも26.9%なのです。だから、水準と現実の家計というのはちょっと違うところがあります。これは全部生活保護でやっているわけではありませんし。
しかし、全消の収入の方は、単身世帯は十分位で区分されていませんので、見ることができないのです。大まかなところでわかっただけでもそういうことがあると、特に1カ月未満で再開というのは引き下げと関係があるのではないか。例えば加算を下げても入り口のハードルが上がります。そういう影響なのではないかという勘ぐりもちょっとあるのです。いや、そうではない、そもそもこういう世帯類型はそういうものなのだと言うことであれば、その理由を知りたい。
ちなみに、地域別で見ますと、北海道だけは例外なのですが、東京、大阪、福岡は、この1カ月未満が断トツなのです。つまり、影響なのか、もともとそうなのかというのは、ずっと時系列的に見ていないのでわかりませんが。また保護世帯の生計費調査で消費水準を、例えば2012年、2013年、2015年と見ますと、2012年より2013年がちょっと上がって、2013年か2014年でがっと下がっているのです。生活保護の場合は、基準が下がりますと、その分ほかの収入を上げるというわけにはいきませんので、結局、消費水準をそれに合わせて縮めていくというやり方になっていきますから、そこそこそろうのです。何とかやっているということになってしまうわけですが、それが先ほどのように、日本の中では異常なエンゲル係数です。何十年前ではないかと思うようなものです。
こういう実態を確認しながら進めないと、モデル、ただ平均で比べていくというやり方がいいのかどうかということがある。
これは何回もお願いして、私たちとしても最終的に決めるのは厚労大臣ですということはわかっておりますけれども、その検証ぐらいはしないと、我々の検証も進まないわけです。現実にどういう影響だったかということ。ですから、そういうことを丁寧にやった上で、新たなテーマの検証がなされるべきではないか。
それから、加算について生活扶助本体と一体的にやるとすれば、生活保護基準の考え方の大転換なのです。つまり、一体型でやるというのは、類型的にやるのですかということになります。そうすると、展開が必要なくなるという可能性もあります。そこまで踏み込むのか、いや、それはそれでやりますと。そうすると、加算とは何かという話にまた戻ってきますので、これは多分保護課のほうも大変苦労されてなさったとは思うのですが、非常に長い間の積み重ねなので、そう簡単なものではないのです。この際整理しようというのは、それはそれでいいと思うのですけれども、それだったらそちらを先にやってから、この有子世帯の方もやったほうがいいのではないかと思います。
■駒村部会長 今の岩田先生の御意見は、もともとこの部会をつくるときの考え方までさかのぼって、データが出たから、さあ、やりましょうという形ではなくて、やはり開発とか現行水準の評価とかをきちんとやっていくのが前提にあるということで、進め方は今までどおりでいいのかという御意見がありました。
加算についても、これは本体との関係でどう評価するのかというのを改めて整理してからきょうの後半のような議論があるべきではないかと。これについては、先ほど岩田先生からもお話があった1975年9月の資料でしょうか、加算がどういう性格のものだったのか、今、それがどう変わってきたのか。恐らくその議論が前提になければ今後の話は進まないと思いますから、今の岩田先生の検証をまずきちんとやらなければいけないということも踏まえて、あるいは単に丈比べ的なものでいいのかというのも踏まえて、少し今後の議論、意識していただきたいと思います。
きょうは、事務局も先ほど先生がおっしゃったような経緯の整理はできていないと思いますので、宿題にさせていただいて、とりあえず資料1、今後の母子やひとり親世帯の検証等々の話で、事務局から冒頭ありましたように、資料1の1ページ、単に一般世帯との均衡だけではなくという御指摘があって、多様な評価方法も考えていかなければいけないということで、幾つか興味深い資料が出ておりますけれども、こちらの方について何か御意見はありますでしょうか。どうぞ。
■栃本委員 今のことに関係があるのだけれども、生活保護基準は、トータルに全体を見て本当に最低限の生活を営む水準になっているか、そういうものとして見るというのが基本的な前提だと思うのです。もちろん、先ほど岩田先生が話されたように、展開作業をする上で、生活扶助基準という部分を全消と比較している。これはコアになっていて今までの議論でみなずっと言っていたのです。
もう一つは、これは岡部先生が一番お詳しいと思いますけれども、小山進次郎さんの本に、扶助がいろいろあるのだけれども、一つをもって足りている、足りていないという議論ばかりしてはいけないので、トータルで見るのだということを小山進次郎さんは書いています。そういう意味では、これは我々全委員が例えばきょうの議論の生活保護、ワンペアレント・ファミリーの場合、特別な需要があるのではないかということで、加算であるとか、どういう姿がいいかということを考えるわけで、その場合、特別な需要という概念があって、それをどのぐらい本体との比較というか、案分で考えるかというのは根本的な非常に重要な課題だと思います。
一方、前、標準世帯を軸にしてその展開を考えるという方法から無理くりしてやる方法と、もう一つは個別の世帯類型、そういうものを見て需要をはかっていく。結果的にはある種一致するというか、似通う部分があるかもしれないけれども、ずれる部分があるから、そういうやり方も一方で見てみるといいねという話が前回か前々回あったと思うのです。
僕は、ここは新参者なのだけれども、絶対的な生活扶助基準を軸に実際にあるか、ないか、具体的な比率で言うと非常に少ないにもかからずモデル的な形にして、展開する。それで個々の世帯類型というか、高齢者とかそういうものに当てはめて、こうこうという形にやっているではないですか。それについては昔から駒村部会長も話されていたし、山田先生もそうだけれども、水準の定め方について、諸外国のことを見たら、どう考えるべきだということが議論があったので、スケジュールの中でも書いてあったように、それは引き続き議論していくというのが今日の岩田先生に対する回答ではないのだけれども、従来からの答え、そういうものだと思のです。それはみんな共有していると思います。
その上で、全てが理論上、世帯類型ごとの水準というか、そういうものが設定されたとしたら、加算とかそういうのは全くなくていいということになりかねないのです。どれが一番合理的で、具体的に現実的に我が国の生活保護を必要とする人たちの経済水準を保障する、守り抜くかということの具体的な算段の方法にかかっているから、そこら辺はバランスよくと言ったらあれですけれども、折衷という意味ではないのですが、そこら辺もちょっと議論していくといいのではないかと思います。
事務局が示したものを僕たちが漫然とやっているつもりはないのだけれども、進め方としては、今、申し上げたようなことを加味しながら議論していくということを常に忘れないということが重要だと思います。
■駒村部会長 阿部委員、お願いします。
■阿部委員 私は、先ほど岩田委員がおっしゃった第1番目のポイントのところをもう一度私の方からもお願いしたいと思います。というのは、今までの引き下げの検証をするということです。母子加算、特に子どもについての加算のところの議論をする前に、生活扶助の引き下げで一番大きな影響をこうむったのは、やはり子どものある世帯でした。ですので、ここがこの間どれぐらい変わったかということは、生活保護受給者の中での消費行動の変化を見るだけで見ることができますので、そこをきちんと検証しないと、後の加算の話はとてもじゃないけれどもできないかなと思います。
それと同様に、これも何遍もお願いしておりますけれども、そのほかの制度への波及ということをもう一度ちゃんと確認していただきたいということ。
あと、前回行った住宅扶助の基準が変わったことによって、例えば転居を余儀なくされた方々がどれぐらいいらっしゃったとか、それによってどのような影響があったかということをまず議論するというのが初めにあるべきではないかなと思います。
以上です。
■駒村部会長 ほかにありますか。山田委員。
■山田委員 私からは2つあります。
1つは、今も御意見がありましたように、どういうふうに生活保護世帯が影響を受けるかという一番のデータが、今回これまでの引き下げによってとれるということです。それを見ないと、一体どういうことをこれから行う。特に有子加算にしろ何にしろ行っていいかというのが見えてこないということです。もちろん、ほかのデータを利用しながらというのもありますけれども、そこをまず見ないと、一体どういう、要するに、思いもよらない政策効果ということについて確認しておかなくてはいけないということです。
これまでどんどん引き下がっているというのは、ある意味では非常に大きな政策の影響があるということですから、そこをまず確認していただきたいというのは、私からもお願いしたいということです。
2つ目としては、加算というのは様々な歴史的、これは岩田委員のお話と重なるかもしれませんけれども、制度の発足当初から歴史的な経緯を変遷して異なる役割を担わせている可能性があるということです。
それと並行して、生活保護制度の外ではいろんなユニバーサルな制度がある。児童扶養手当もそうです。要するに、ユニバーサルなそうした給付と生活保護の加算部分というのは、ある意味ではユニバーサルな役割を担っている部分もありますから、そこの部分と本体との関係を考える上で、ほかの加算の経緯をいろいろとさかのぼっていただくときには、ほかのユニバーサルな制度とどういう関係にあるのかというのもきっちり整理していただければとお願いしたいと思います。
1点だけ細かいことなのですけれども、気になったのは、きょうの資料1を1枚めくっていただいて、下から3行目は「単に一般世帯との均衡で」ということでよろしいですね。
■清水保護課長補佐 そうですね。
■山田委員 わかりました。
■駒村部会長 幾つか御意見がありました。これは前回も議論したように、前回の検証があって、その検証はどちらかというと構造的な議論をやったわけですが、我々の報告書を踏まえて政府の判断で、これは物価に連動した給付の見直しが行われていると。それを評価もしないで、次が来たから次の作業に入りましょうというわけにはいきませんよと。そのときのインパクトについてはちゃんと検証をやっていくのだということは、前回も議論したのではないかと思います。
それから、先ほど栃本委員のおっしゃった2つの考え方、あるいは今、山田先生からも話があり、岩田先生からも話があったわけですけれども、加算の役割というのは、その時代その時代の社会保障制度との関係で位置づけられてきたわけでありますが、これは後半の資料の中に一部その情報が入ってはいますけれども、その辺もきちんと踏まえて、先ほど栃本さんがおっしゃったような2つの考え方を今後どう考えていくのかというのも整理をしないと、加算を例えば何かの価格に素直にくっつけてスライドさせましょうといったような考え方ではこの見直しはできないというお話があったと思いますので、その辺もきちんと今後の議論の前提になっていくと思います。
どうぞ、お願いします。
■栃本委員 今、山田委員が触れられた部分なのですが、また部会長が話されたので、今日、介護保険もできたし、その他もろもろ一般施策、普遍的な仕組みとして、障害者施策は従来の措置費ではなくて、現在の障害者施策に変わっているわけで、そういう意味では、社会保障が充実していく途中段階で、生活保護で生活されている方にとって、先ほどのライフコースとかそういう中で必要なものがあるからつけていった。ただ、その後、社会保障の一般施策としてかなり代替される、それで充実したものについて、それでいいのかということで見直すという意味が一つあります。
もう一つは、これを見ていてすごくいいなと言うとあれなのだけれども、例えばドイツなどだと、ベーシックな一般扶助と特別な生活状態に対する扶助みたいなものがあって、二段構えになっていて、特別な生活状態に対する扶助というものが大変重要で、それは母子であれ、障害者であれ、いろんな方々は経済的な意味で生活ができないというだけでなく特別な需要がある、生活している場合でも移動とかそういうのができにくかったり、文化的なものに触れるチャンスがないとか、そういった場合は特別な生活状態に対する扶助みたいな組み立てになっているのです。小塩先生もお詳しいと思うのですが。
そういう意味では、この資料の中の特別な需要と書いてある部分が非常に重要で、特別な需要というのは、先ほど言った特別な生活状態に対する扶助にちょっと似ているようなというか、そういうものなのです。だから、先ほどの社会保障制度の充実とともに、今までそれがなかったから生活保護制度の中でつけ加えなければいけなかったものについて整理するということだけでなくて、それと同時に特別な需要というものが、生活保護の被保護者というのは非常に多様であり個別性が高いであり、1人だったり、2人だったり、高齢者だったり、障害プラス高齢とか、そういうのがもろもろあるわけだから、生活扶助の一本建てだけでは無理なのですね。そういう意味では、今回「加算についての見直し」という表題についての受け止め方が重要で、特別な需要というものを一つ一つ丹念に見るということが必要だと思います。新しいものも含めて。
それから、先ほどの検証のことなのですが、前回か前々回か、最終的に基準を決めるのは厚生労働省でしょ、僕たちが決めるのではないでしょと言って、その場合、介護給付費部会、介護報酬のことを例に議論して、最終的に財政当局とかそういうのに行って決めますね。その場合、介護給付費分科会でも責任を取れないでしょう。ただし、例えば介護給付費分科会だったら、今されているし、ずっとされているでしょうけれども、検証作業をするではないですか。報酬をこうやったら経営が非常に難しくなったとか、これではとてもやっていけないよと。先生も委員をされているかもしれないけれども、そういう検証作業というのは介護報酬の算定のときにもしているわけですよ。それはとても誠実なというか、絶対条件として必要なもので、我々はこうではないかとやって、最終的に財政とかいろんなことで介護報酬が決まるのだけれども、だけど、あれは準市場なので、実際にやってみたら、ちゃんとやっても赤字が出るようなことがあるわけではないですか。そういう意味での検証作業というのは、そういうのを先生方が話されているように、やはり必要だなと私は思いました。
長くなりました。
■駒村部会長 岡部委員、お願いします。
■岡部委員 社会保障審議会の生活保護基準部会ですので、生活保護法の目的が「最低生活の保障」と「自立の助長」ですので、その中の最低生活保障を中心に検討することがこの部会ということになると思います。そうしますと、今、お話が出ました、生活保護の基準、具体的には最低生活保障の体系について、資料2の中で改めて御説明があると思いますが、その中の生活扶助をどう考えるかということが中心となります。もう一つはそれを越えて最低生活保障に関わる制度設計全体をどう考えるかの話になると考えます。
今、出ています生活扶助では、1類が個人的経費で、2類が世帯人員別で世帯共通経費、1類プラス2類、それに個人的な経費と世帯共通経費でとらえ切れない特別な需要が加算となります。その加算を消費の実態で見る、もう一つは理論値でどういう費目が必要か、実態と乖離している理論値をどのように見ていくかの整理し議論していくかととらえることになります。私も2003年、2004年に開催しました生活保護制度の在り方に関する専門委員会に参加させていただきました。生活保護基準の中で最低生活保障をどう考えたらよいかは、8つの扶助から見る必要があります。その中で生活扶助は大きな位置を占めていることはわかりますが、生活扶助基準そのものも非常に入り組んでいますので、その考え方の整理をどこかでしていただくことが必要であると考えます。なお、その制度のあり方を基準部会か別の検討会の場で行っていただくことも必要と考えます。
もう一つは、現行の中で考えるとするならば、何が加算の中で必要かとの精査をどういう方法、どういう内容、どういう種類で考えていくかの議論をしていくことになります。どういう土俵、ステージで私たちは議論したらよいか、その仕切りをもう少し明示的に説明していただいた方がよいと考えます。基準を下げるだけの話が基準部会で何回か出されていますので、そうではなく、そもそもどのように考えたらよいか考え方を整理していただくことが建設的な議論となります。
長くなり申しわけありませんが、子どもの貧困の話が出ますが、旧生活保護法まで教育扶助はなく、生活扶助の中に教育費が入っていた経緯があります。生活扶助の中で議論できる守備範囲と水準はどこまでか。また、教育扶助あるいは生業扶助の中でどこまで考えられるか。そのことを含めて今回の子どもの貧困対策を踏まえた有子世帯の扶助・加算の検証ということになるのかと思いますので議論の守備範囲、要点について明らかにして進めていただければと考えます。
解説的な内容で申しわけありませんが、私なりの議論の整理ということでお話をさせていただきました。
■駒村部会長 どうぞ。
■栃本委員 岡部先生が今、生活保護のイロハというか、健康で文化的な、経済的な部分、それと自立助長が目的だとおっしゃったでしょ。もちろん、自立助長というのは、ソーシャルワーク的な意味で位置づけられたりしているわけなのだけれども、この数回の議論で明らかなのは、皆共通して例えば子どもの貧困とか貧困の連鎖とか、そういうのを考える。また、前からお話ししているように、経済資本だけでは自立に向かわないから、文化資本とか社会関係資本というものを形成しないとだめなのだと。だからこそ母子家庭、ワンペアレント・ファミリーを見るときに、その部分に着目してそれが形成されるようなものを入れておかないと、一番下の第1・十分位ではこうこうこうだから、これでいいのだみたいな議論はだめですよというのは、みんな共通した認識だったと思うのです。
だから、そういう意味では、自立助長というのはソーシャルワーク的なものだと一応なっているのだけれども、全部いろんなものを使ってからこいというのとトランポリン式の部分で言うと、トランポリン式になるようにするためのものとしては、入り口論でいろいろ議論があるし、それはわかるのだけれども、最も着手しなければいけないのは、きょうのテーマのワンペアレント・ファミリーにおける額をどのぐらいにしたらいいかというのは、繰り返しになるけれども、文化資本とか社会関係資本を形成できるようなある種のバッファー、そういうものをつくれるのか我々は理論構築して、それを確保するたためのロジックを示すということだと思うのです。
■駒村部会長 今までの議論はほぼ、これまでの作業の検証、今までの水準の見直しの検証と、あとは開発的な部分、要するに、このままのやり方を今後も続けられるのかどうなのかという部分に分けられると思いますが、これはこの部会ではいずれも同時並行でやらなければいけない。時間が来たから、漫然と今までどおりのパーツ、比較をしていきましょうという話ではないということは、委員の皆さん、繰り返しおっしゃっていると思いますので、事務局におかれましても、そういう考え方をまず整理しないといけないということは認識いただくということで。
その中で、今までとは違う見方でより広くひとり親世帯の自立助長や困難さを把握する方法として、事務局、資料1の2ページあたりの実態、就学、消費実態をこういうフローチャートで把握していったらどうかと。それに関する資料がきょう様々出てきたということでございますけれども、2ページのフローチャートなどで直面している困難さや、自立のために必要なヒューマンキャピタルをどう評価するのか、こういう把握方法でいいですかという素案が出ていますが、これについては何かありますか。阿部先生、その次に宮本委員、小塩先生、お願いします。
■阿部委員 まさに2ページのところでもう一点つけ加えていただきたい視点がございます。もしかしたら最後のところにも入ってくるかもしれませんけれども、全体の資料の中で「子ども」というのを、年齢を区別せず「子ども」と言っているようなところがあるかなと思います。
でも、その次の4ページにもありますように、実は生活保護の子どもたちが一番多いのは中学生以上の子どもたちなのです。特に自立といったことを考えたときに、子どもが自立する時期をもう一度検証するべきではないかなと思います。以前は中学だったのですが、高校を卒業したら働いて自立できるだろうという暗黙の了解があるかと思いますけれども、この30年間で変わってきているのは、これのちょっと上の年齢の貧困率が一番多くなってきて、普通の一般家庭においてもこの時期に経済的に自立するのは極めて難しくなってきている状況にあるといった中で、「子どもの自立」をどういうふうに考えるべきかという点を、一般世帯との状況も鑑みて検討し直す必要があるのではないかなと思います。
そうすると、一概に大学進学どうのこうというだけではなく、例えば子どもが年齢に達したときの世帯分離の話ですとか、そういったいろんな議論が出てくるかと思いますが、ここのところは今までの暗黙の了解では現状立ち行かなくなっているところではないかなと思います。
■駒村部会長 子どもの年齢区分に着目してもっと丁寧にやっていきましょうということですね。
■阿部委員 というか、子どもが自立をする時期をもう一度検証し直す必要があるのではないか。
■駒村部会長 特に中学ぐらいからの世代ということですね。
■阿部委員 中学以上、高校を卒業したときに自立できるのかということですね。
■駒村部会長 わかりました。
では、宮本先生、お願いします。その後、小塩先生。
■宮本委員 今、阿部先生が言われたことにほぼ重なるのですけれども、加算という問題を考えるときに時代状況の変化というのが非常にあるので、今の時代の中で加算の現行のあり方が妥当かどうかという検討は十分必要で、そのときの一つの問題が、子どもとは何かという問題だと思うのですが、現行制度の整理をしたこの資料、貴重なものだと思って拝見したのですが、「子ども」と言ったときに、基本的に18歳で切ってあるのですけれども、幼少期から義務教育段階に焦点が当たり過ぎているような感じがいたします。例えば生活保護の引き下げがこの間あって、その影響がどうかということの検証ということで言うならば、一つの重要なことは、もう既に各所で言われていることですが、問題を抱えている高校生が非常に多い高校現場で検証を量的にでなくて質的にしてみれば、何が問題になっていて、何が課題かというのがかなりわかるのではないかと思っているのです。
その一つとして、中退も含めてですけれども、18歳になって自立するという段階で、今の保護制度というのは妥当であるのかという問題が非常に大きくあるように思います。
それから、こうやって見ていくと、例えば自立といったときに、基本的には進学的自立に力点が当たっていて、現実には進学による自立の割合は一般世帯よりも非常に低いのですが、それ自体問題ですけれども、それだけではなくて、生活保護世帯から働くという形で自立していこうとしている子どもたちが多い中で、そのための支援の制度としては非常に問題が多いということを加えた上で検証すべきだと思います。
先ほど岩田先生からありましたように、例えば母子世帯でこの間で2万円の消費支出が落ちているということなのですけれども、この2万円というのがどういう意味を持つかということは、金額で言うと非常にわかりにくいところで、専門家であれば、2万円落ちればどうなるかということは長年の感覚でわかるところだけれども、実際のところはわかりにくく、説得力がなくて、2万円落ちたときに何が起こるかというのは、やはり質的な調査が必要だろうと思います。そのあたりも含めた上での検証・検討が行われるべきではないかということです。
■駒村部会長 では、補足で。どうぞ。
■阿部委員 宮本先生がおっしゃった中退というところに関して、資料の説明なのですが、4ページと5ページで年齢別の保護者数と就学者数があるのです。これを見ますと、例えば17歳とか16歳の子どもですと、17歳では2万1,379人いるのに対して、就学者数が1万3,904人しかいないのです。残りの方々はどういう状況にあるのかということも調べていく必要があるかなと思いました。
■駒村部会長 これは後で幾つかまとめて事務局から御対応を確認したいと思います。
では、小塩先生、お願いします。
■小塩委員 まず、2ページ目のいろんな検証の視点についてなのですが、ここにいる我々はどちらかというと社会科学系の人間ばかりなので、そういう観点からの検討課題が出ていると思うのですが、このほかに子どもの健康状態とか栄養摂取状態も重要と思うのです。これは既存のデータでもある程度検証できるのではないかと思います。所得が低いと栄養摂取面あるいは健康面で大きな問題が出てくる。それが後々大きな影響を及ぼすということはよく知られていますので、そういう面も検証の視点としてつけ加えていただきたいと思います。これが1つ目です。
2つ目は質問ですけれども、私が非常に注目している、期待しているのは、「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」です。16ページに御紹介があったのですが、これは生活保護を受けている世帯とそうでない世帯を同じ土俵の上で比較する調査です。今まで余りこういう分析はなかったということで、非常に重要な情報を提供してくれると思うのですが、これはいつごろ具体的にこの場で資料を提示していただいて、議論できるのか。そのタイミング、スケジュールを教えていただきたいというのが質問です。
それと関連してなのですが、先ほどからいろんな加算の変更の影響を検証しないといけないという議論が出てきているのですが、具体的にどうするのかが問題になると思うのです。加算の変更の影響を受けた世帯と受けていない世帯を比較するという作業が必要になると思うのですけれども、それは統計上、実際にできるのでしょうか。そのイメージがわかりません。同じ世帯をずっと追っているわけではないので、パネル分析は難しいと思うのですが、同じクロスセクションデータを見ても、影響を受けた世帯と受けていない世帯でどういう違いがあるかというのをしっかりと調べないといけないなと思うのですが、それは現行の統計で可能なのでしょうか。私はこの分野を余り詳しくないので、もし現時点でわかれば教えていただきたいと思います。
■駒村部会長 小塩先生、先ほどあった議論は、加算でなくて本体の部分とここ数年の住宅扶助の部分のインパクトを評価しましょうということで、加算のところではない議論で、先ほど皆さんが影響の検証という議論をしていたのは、前回の本体の見直し水準が与えた影響の部分と住宅扶助のところの議論をしていたので、加算について見ましょうという議論を評価しろといった議論ではなかったわけです。
■小塩委員 はい。
■駒村部会長 あと2つの御指摘については、先ほどの御指摘も幾つか質問があったと思いますので、まとめて事務局に聞きたいと思います。健康・栄養関係の資料はぜひとも用意していただきたいと思いますし、この調査結果も早急に材料として見たいわけだと思います。
今、委員から幾つか話があった点について、事務局から回答できますでしょうか。
■清水保護課長補佐 幾つか御指摘をいただきましたけれども、まず阿部委員の方から御指摘をいただきました、実際の年齢別の受給者と教育扶助を受けている人の差については、どういった形で把握できるのかというのは検証してみたいと思っております。
小塩委員の方からいただきました家庭の生活実態・生活意識に関する調査について、まとまるタイミングということでございましたが、生活保護世帯の部分につきましては、恐らく今年度末から年度明けぐらいをめどに集計等を進めてまいりたいと思っておりますので、年度を明けた部会の方でまた御提示ができればいいかなと思っております。
ただ、一般世帯の方が、国民生活基礎調査とのマッチング等を実施する関係上、もうちょっとタイミングがおくれまして、恐らく来年の秋ぐらいまでにまとめられるように進めてまいりたいと思っております。
■駒村部会長 では、岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 4ページの今、話題になっている子どもの年齢別の表なのですけれども、先ほどから出ているのはもうちょっとステージというか、学校入学、卒業とか、多分そういうので区切って見るということだと思いますが、これをご覧になって皆さんおわかりのように、高齢者世帯にもたくさんの子どもがいます。その他の世帯には18歳の子がたくさんいます。これはかねがね言っていますように、生活保護統計の世帯類型というのは本当に間違っているのです。イメージと違うわけです。だから、これはしようがないのですけれども、これをもうちょっとかみ砕いていくと、生活保護の役割というのは非常に難しくて、モデル世帯のように一般の。一般の家族も今、大変変わってきていますけれども、それと比較したり、そこの最低限をはっきりできるような機能を片方で持つわけですが、もう一つは、生活保護を利用している世帯の中には、これまで普通と考えられていたような世帯とは違う組み合わせの世帯が相当入っている可能性があります。例えばおばあちゃんとその孫の世帯とかです。これは別に一般でもあるとは思いますけれども、それで貧しいということ。例えば高齢者世帯の中の中高生が入っているようなところにそういうのがあるのか、それともその他の世帯で子どもだけの世帯があるのか、そういう世帯類型です。例えば母子世帯というのでなくて、おばあさんと子ども何人とか、世帯類型を細かく一回ばらしてといいますか、組み合わせを考えられて、だーっと作っていただけませんでしょうか。
それをどういうふうにまとめるかというのは、その後の話になると思うのですけれども、何しろ被保護者生活実態調査というのはとてもいい調査なのですが、それだけ見ていてもわからないのですよ。あの製表で見ていても。そういう世帯類型の類型イメージが全然違いますから。その他などというのはいろんなものが入っているはずなのです。
だから、そもそもどういう世帯の中に子どもがいるのか。お父さん、お母さんと子どもがいて、お父さんが病気なのか。それともお父さんもお母さんもいなくて、おじさんと暮らしているのか。おじいさんがやむを得ず引き取っているのか。いろんなパターンがあると思うのです。そういうことは実態の方ですね。
基準をつくるときは、やはり全体の中での最低限とかを考えるわけです。加算というのは実態に合わせていくということも大事なので、いろんな形で家族が変化していったり、場合によって壊れるという言い方はなかなか難しいですが、その変化というのは低所得層ほど速いわけで、子どもがそこで育つわけですけれども、子どもが一番影響を受けます。せっかくここまでお作りになったので、昔、そういう組み合わせ、よくこんな長い表を作ったりしていたのですが、一回そういうのを作ってみた上で、全体を丸めるというのも後で必要だと思うのですけれども、それはすごく大事です。
障害のある子どもがいるかいないかというのは、逆に言いますと、児童福祉、障害福祉が頑張ればいいのです。生活保護は生活の基本のところ、最低生活をきちんとできるような体制に持っていかなければいけないですね。もちろん、障害手当てなどがもっときちんとしないといけないのですよ。先ほどのユニバーサルの問題ですから。
ですけれども、何でもかんでも入れればいいというものでなくて、生活保護がきちっと見なければならないのはどこかということ。私たちもついそういうのに引きずられてしまうのですが、今回こういうのが出ましたので、ぜひ分解してやってみていただきたいと思うのです。統計表がすごく簡単に見られるようになったのはいいのですけれども、生活保護の統計というのは本当に特殊なのです。国民生活基礎調査に合わせていただきたいとかねがね言っているのですが、なかなか直りません。ともあれ、子どもに関しては、この4ページをさらに進化させて、先ほどのような子どものライフコースのステージを意識したり、どういう世帯類型の中に子どもがいるのかということをはっきりさせた上で、加算の問題を考えていかなければいけないのかなと思います。せっかくですから、ぜひ展開をしていっていただきたいと思います。
■駒村部会長 今の岩田先生のお話は、要するに、4ページの資料は子どもを中心に再集計をしてみろということですね。
■岩田部会長代理 はい。
■駒村部会長 子どもを中心に再集計したらどういうふうに見えてくるかというのを少し工夫してくれということだと思います。
それは事務局、また御相談と。
■栃本委員 3点ね。
■駒村部会長 関連ではなくて、また新しい。
■栃本委員 関連プラス。
■駒村部会長 では、先生。
■栃本委員 今、岩田先生が話されたことは、要するに、この世帯をこういう形で分けているのだけれども、母子プラス傷病とか障害とか、その他もろもろがあるということと、子どもは18歳になっているけれども、私も母親から見たら子どもですので、そういう意味では両方とも年とった親子というのも子どもでありますのでそのような母子もある。何を言いたいかというと、こういう形で区切っているけれども、実はほかの要素が相当入っているから、どのぐらいのパターンがあるかというのをちゃんと見ないとだめですよということですね。だから、それをやっていただくということだと思うのです。
それを見ることによって、一見母子世帯だけに見えるのだけれども、ほかのものとか複雑にそういうものが加わっているから、そのときに加算制度で対応しなければいけない部分がどうしても出てくるから。特別な生活需要、プラス何何といったような形でなければいけないのではないかということで、いろいろなタイプを作成してもらいたいそういうのが必要だということは私も本当にそう思いますし、ぜひ前からそういうのをしてもらいたいなということです。
あと2点ですが、1つは、2ページ目のところで「有子世帯の扶助・加算の検証の視点(素案)」が示されています。先ほど岡部先生から自立の視点というのもあったのですけれども、現状把握のところは数とか学習費とか、そういう部分が多いので、時間であるとか、例えばワンペアレント・ファミリーで中学・高校の子どもがいて、そういう家庭の中の生活時間を見てみたらよくわかることだけれども、時間の使い方が違いますね。もう一つ、友達の数も違うということがある。もう一つ、非常に細かいような感じだけれども、友達の数とか勉強時間とか、リフレッシュや余暇のような時間というのも見ていかないといけない。。僕は社会学なので、どうしてもそういう部分も見て一般との比較をする。そこに境遇というか連鎖を解きジャンプすることができないような制約が非常に明瞭に出てくるので、そういう部分も調べてもらいたい。
もう一つは、意識調査というか、通常これはどう思いますかという月並みの意識調査でなくて、もうちょっと工夫した選択枝を作り意識調査ができれば、非常に有益なデータになると思うのです。
最後に、先ほど子どもの自立の時期というお話があったのですけれども、我々は生活保護の関係を中心になって見ているけれども、視野を広げて例えば児童養護施設で、その後自立援助ホームみたいな形で行って、子どもたちにとって心理学や教育学でいうところのソーシャライゼーションが難しい、巣立った後の社会生活や仕事などを見ていると、やはり自立の時期とかそういうのは一昔前、従来と大分違いますね。そういう意味では、本当に御指摘のとおりだなということ。
もう一つは、日本はヨーロッパと違って児童福祉というのがあるのだけれども、ヨーロッパでは青少年福祉というのがあります。日本は最近でこそ生活困窮者とか、ひきこもりとか、若者就労支援とか、サポステとか、そういうので議論されているけれども、青少年福祉領域のソーシャルワークというのが余り十分ではないのです。そういう部分がすごく児童福祉のほうに特化してしまっているというところがあると思いましたね。保護世帯のお子さんを考えたばあ重要です。
■駒村部会長 時間の話はまた事務方に。ひとり親世帯のほうが非常に時間的に苦しい生活を送っているということも、もしデータとしてあれば、これも把握しないと、どういう状況に置かれているかというのがわかってこないと思います。
小塩先生、お願いいたします。
■小塩委員 先ほどの岩田先生の御指摘のことについて、簡単に追加的なコメントを申し上げます。いろいろな世帯があるので、丁寧に見ましょうというのは、そのとおりだと思います。例えば3ページの表を見ますと、ふたり親世帯、ひとり親世帯のほかに上記以外の世帯というのがありますが、この世帯が結構いて、10%を超えています。それだけでなくて、子どもの状況を調べたものがあります。10ページを見ていただきますと、今、申し上げた上記以外の世帯で障害・傷病ありというのが8.8です。これはほかの世帯に比べると高くなっています。子どもの貧困の問題というと、普通はひとり親世帯、特に母子世帯をイメージするのですが、それ以上に深刻な状況に置かれている子どもたちがいるということは認識しておいた方がいいと思います。
以上です。
■駒村部会長 岡部委員、お願いします。
■岡部委員 1点目として1ページの「これまでの部会での主な意見」というところで、有子世帯の問題で子どもに焦点化しているというところでお話を致します。所得の多寡にかかわらず必要な費目が過不足なく提供されているかどうかの精査をお願い致します。これは相対的ではなくて絶対的な見方をとるべきだという意見を改めて私から主張したいと考えます。
2点目は、先ほど栃本委員がお話しされたことに関連して、貧困な状態に置かれている人たちは、消費の萎縮と同時に社会関係が萎縮する、文化的な機会が十分享受できない傾向にあると言われています。生活保護制度は健康で文化的な生活の保障を目的としていますので、どの程度それらのことを保障したらよいかについて、17ページに「子どもに係る費用に関するデータの例「子育て費用」が出ています。例えば学校にかかわる費用、FからMまでは学校の費用になりますと、当然教育にかかわる費用、例えばクラブ活動や学校の中での活動費用や、学校外の費用が出てきます。先ほどの社会関係の観点からみますと、子どもの世界の中で社会関係がどれだけ広げられるかは、ある意味では学校外の活動費、例えば携帯電話であるとか、お小遣いとか、行事への参加ということになります。そういう費目を丁寧に拾っていただいて、これは必要な費用と設定していくことが大事かと思います。
これが先ほど小塩先生がお話しされた期待されている家庭の生活実態・生活意識調査の中でそれが読み取れるのではないか。またそこで読みとれないならば別な調査で補強していただきたいと考えます。
3点目は、栃本委員から先ほど時間分析の話が出ましたが、例えば、ひとり親、あるいはそれに近い世帯は、どうしても子どもの生活時間に、例えば親の代わりに家事や育児に関わりますので、子どもの自由時間がそれらに充てられて不足してくることが出てきます。逆に言うと子どもの最低限の自由時間の保障や、学習時間の保障に留意し、有子世帯の費用を考えなければなりません。宮本委員からお聞きした方がよいのかもしれませんが、お小遣いであるとか、時間であるとか、子どもにかかわる調査が幾つか出されていますので、そのことから標準的な費用を算出していくことが子どもの貧困対策を考える上では非常に大事であると考えます。
■駒村部会長 そろそろ資料2に入りたいのですけれども、私の方から資料について確認したい点があります。ちょっとお聞きしたいのは、9ページと10ページがともに障害・傷病の状況を示していて、データの読み方としては、例えばふたり親世帯のケースだと、世帯構成として人数別に見ているということですか。1つの世帯に2人いたら、2人いるというのか、これは世帯単位でこうなっているのか、どちらなのかということです。同じことが下の子どもの方も、2人いて、2人とも傷病・障害を持っていたら、どう数えているのかというのを確認させてください。それが1つ。
それから、先ほど子どものほうも大人のほうもともに重いという感じか、加算や働くことができないということで、単に通院しているとか治療を受けているというよりは、やや重い人を集めていると。その関係で見ますと、これもどう考えるかなのですが、6ページの特別児童扶養手当、母子世帯の場合、4%もらっているということなのですか。これと障害のほうの数字に若干差が出てくるのは、福祉事務所の担当者の判断で、これはカウントする、カウントしないというのが入ってしまった結果、少し差が出ているのか。この辺、知りたいなと思います。福祉事務所の判断にもしばらつきがあると本当の姿が見えなくなってしまうなと思って、これは心配なところなのです。済みません、資料について。
■清水保護課長補佐 まず、9ページの方については世帯主の状況をまとめたものでございますので、例えば、ふたり親で世帯主が父親であれば父親部分だけが載っているという資料でございます。
10ページの方は、18歳以下の世帯員ということですので、子どもが2人いて、どちらも障害を持っていれば、2人ないし3人なり計上されてくるという状況になっております。
特別障害児手当と障害の状況の差等については個別に見てみないとわかりませんもので、また見て、状況がわかりましたら報告させていただきたいと思います。
■駒村部会長 ほかに事務局のほうからこれまでの議論で御回答しておきたい部分はございますか。課長、お願いします。
■鈴木保護課長 きょうたくさん、前回改定の影響の評価、ちゃんとやるようにという御指摘でございました。まさに今回の基準の検証そのものが、その間に基準変更を挟んでおりますので、その影響、社会全体の消費の動向だけではなくて、生活保護受給者の人たちの生活とか意識にどういう変化が出たかということをできるだけつまびらかにできるように、これから検証の過程の中で逐次対応してまいりたいと思います。
■駒村部会長 では、余り時間もなくなってきているのですけれども、引き続き資料2についての御報告をお願いいたします。
■清水保護課長補佐 それでは、資料2、その他の扶助・加算に関する資料について御説明をさせていただきたいと思います。1ページ目をお開きいただければと思います。
第1のテーマの中でも幾つか御指摘等をいただきまして、そもそもの加算の整理のあり方の資料についてはまた御提示をさせていただければと思います。
その他の扶助・加算につきましては、今、生活扶助、第1類、2類では対応できない被保護世帯の特別な需要に対応するものとして設けられていますということで、御説明をさせていただきまして、四角のところ「検討における基本的な視点(案)」ということで、各種加算等が対応する特別な需要の内容を把握する必要があるのではないかということで、どのようなデータを用いて、どのような方法で把握していくのかというところから検討が必要ではないかということでさせていただいております。その上で、特別な需要に対応する加算等の内容、水準の妥当性について検討してはどうかということを視点として挙げさせていただいております。
2つ目の○ですけれども、これも今回の前半の議論でも出ましたとおり、他法他施策との関係についても十分に踏まえて検討する必要があるのではないかということで、2点挙げさせていただいております。
2ページ目については、各種扶助について一覧にしたものでございます。一番右の欄に近年の特に部会での検証実績がどうだったかということで挙げてございます。特に近年検証を行っていないものということで挙げますと、上から3つ目、入院患者日用品費、入院中の生活費の部分ですとか、介護施設の入所者の基本生活費、また、先ほどの有子世帯のところでも話がありましたが、真ん中からちょっと下にあります教育扶助の関係。それから下の方になりますが、生業扶助。そのほか、出産扶助、葬祭扶助についても基本的に今のところでは実態を踏まえて改定をしているという状況にございます。
3ページ以降につきましては、各種加算の状況について一覧にしたものでございます。加算の資料につきましては、先ほど申しました特別な需要というもので、今、加算がどういったものを想定してつくられているかということを記載させていただきまして、右側に検証する際の論点を挙げさせていただいております。
上から加算ごとに御説明させていただきますが、妊産婦加算については、妊産婦の母体保護、栄養補給ということで、追加的に必要となる栄養補給等の経費を補填しているというところでございます。
論点といたしましては、今の水準均衡方式の中で栄養補給の補填を理由とした加算のあり方、その位置づけ、考え方はどういったことが必要なのかということを考えていく必要があるかなということで挙げてございます。その中で栄養補給以外の需要をどう考えるかというのも必要な視点になってこようかと思っております。
また、細かい点になりますけれども、産婦に関する加算につきましては、母乳の場合とミルクの場合で算定する期間が異なっているということもございまして、そもそも乳児の例えば1類との関係がどうなっているのか、どういう整理をつけるのかということも考えていく必要があるかなということで挙げてございます。
2番目、母子加算については、先ほど1点目のテーマの中でも触れましたとおり、有子世帯の扶助・加算のあり方の中で整理すべきではないかということで挙げてございます。
障害者加算につきましては、それぞれ特別な事情ということで、費用の面と介護関係の費用の面ということで、大きく2つに分けるわけでございますが、この障害者加算につきましては、そもそも障害者を対象とした消費実態を把握したデータが特にないかと思っておりますので、また、障害種別ですとかその程度、その方によって個別性が高い中で、その特性を踏まえた需要についてどう把握・評価をしていくかというところから考えなければいけないのではないかということで、論点として挙げさせていただいております。また、ほかのサービスとの関係についてもあわせて検討していく必要があるということで挙げさせていただいております。
4ページ、介護施設入所者加算につきましては、介護施設の入所者の基本生活費と連動するものでございまして、こちらについては介護入所者基本生活費と一体的に考える必要があるのではないかということにしてございます。その際に、同じく入院患者の日用品費ですとか、あと入院・入所時に算定される各種加算のあり方についてもあわせて考える必要があるではないかということで挙げさせていただいております。
在宅患者加算については、結核の患者さんを主にしまして、追加的に必要となる栄養補給等の経費を補填するものということで、当時想定してきているところということでございますが、先ほど妊産婦加算の方でも触れましたとおり、そういった名目、考え方がどうなのかというところは改めて検討する必要があるかなということで、挙げさせていただいております。
放射線障害者加算につきましては、原爆被爆者の方等を対象といたしました加算でございますが、対象がまさしく特定の方であるということと、原爆被爆者援護法で想定しています被爆者の健康管理等の特定の需要に充てられるものということでございますので、他法の各種手当の状況に応じて加算の算定を行ってはどうかということで、挙げさせていただいております。
児童養育加算は、母子加算と同様に有子世帯全体の中で検討してはどうかということで整理をしてございます。
介護保険料加算については実費でございますので、特に論点としては整理してございません。
それを踏まえた上で、5ページ目、それぞれの扶助・加算について検討の進め方ということでございますけれども、1つ目の○につきましては、先ほどの1つ目のテーマでございます有子世帯に対する扶助・加算のあり方として一体的に検討を行うものということで、教育扶助、高等学校等就学費、児童養育加算、母子加算、また、妊産婦加算も広く言う意味では子どもにも関係する加算でございますので、その中であり方、水準等の検討を行ってはどうかということで挙げてございます。
2つ目の○でございますけれども、そもそも加算対象者の生活実態ですとか、特別な需要をどう把握するかという点から検討する必要があるのではないかというところで、入院患者日用品費等につきましても、入院した場合の生活費がどれぐらい必要なのかというデータをどうそろえるかというところから検討を行っていく必要があるのではないかということで、介護施設入所者基本生活費等もこの中で入れてございます。先ほど申し上げたとおり、障害者加算、在宅患者加算についてもそういったことで、その需要をどう把握していくかということで挙げてございます。
一番下の出産扶助、葬祭扶助については、対象経費が明確でございますので、基本的には実態を踏まえた形で水準を設定するという形でどうかというところ。生業扶助につきましては、自立助長、自立支援というところで、今後の制度の見直しの状況も踏まえて考えていってはどうかということで挙げさせていただいております。
6ページにつきましては、各種加算と、先ほど少し申し上げましたけれども、居宅の場合に当然生活扶助にプラスされて各種加算が出る。入院の場合、入所の場合もつく加算等がございますので、これらについては、基本的には全体として入院の場合に何が必要か、入所の場合に何が必要かというところもあわせて検討していく必要があるのではないかということの参考資料でございます。
7ページ以降は各種加算の概要。
一番最後のページについては、それぞれ各種加算の事業費と件数を載せてございますので、また御参考にしていただければと思います。
資料2の説明は以上でございます。
■駒村部会長 どうもありがとうございました。
委員の方から。宮本先生。
■宮本委員 ぜひ検討に加えていただきたいと思うことがあるのですが、年齢的に言うと高校生年齢くらいの子どもたちの問題です。家庭の事情が非常に悪くて、早く働いて家を出たいという事情を思っている例は非常に多くあるわけですが、生活保護世帯の子どもたちがそういう希望を持ったときに家を出られるかという問題で、あるケース、いろいろと聞いているのですけれども、世帯分離というのを使ってということが可能になりましたが、これは3カ月限定ですか。正確にわからないのですけれども、在学中に3カ月世帯分離の手続をして、その間アルバイトをしたら、そのアルバイト費用は本人がその後のために使っていいということに数年前から許可されたということなのですが、ここには2つの問題がある。
例えば3カ月世帯分離の形をとって、親等々と同居しつつアルバイトをしながら、それを自分で蓄えて、それをもとにして、学校が終わった後、自分で引っ越しをして自立できるかという話ですけれども、まず3カ月のアルバイトではまともなお金はたまらない。それが第1点。
もう一つは、この世帯分離に対して許可する自治体と許可しない自治体があって、許可しない自治体のほうが圧倒的に多いようで、結局、高校生が自分で努力して、自立して家を出て自分で生計を立てたいという道が非常に狭いという問題があります。このあたりのところは、きょうの扶助の話で言うとどこにかかわるか。一つは住宅です。外へ出る場合に住宅の問題がクリアできないということです。
1つ自治体の例では、世帯分離をして何とかといって支援をしたのだけれども、アパートの入居の費用の半分も満たせない。それをいろいろな人たちが支援したのだけれども、引っ越しをしてみたら布団一枚ない。お金はどこからも出ない。もちろん、家族からも出ないという状態で、周りが支援をすればするほど疲弊するというような実態だということ。あのあたりのところもぜひ調査をする必要があって、希望としては、自治体が何ゆえ世帯分離を認めないのかということももっとはっきりさせてもらえないかということを耳にしております。
以上です。
■駒村部会長 各扶助と加算の関係でどう整理するかということになると思いますけれども、少なくとも世帯分離についての今の運用とか実態というのを厚労省は把握しているかどうか、お願いできますか。
■清水保護課長補佐 御指摘の事案と合っているかどうかわからないのですが、今の取り扱いといたしましては、例えば高校生が就労した場合のアルバイト収入のうち、そういった自立のために充てられる経費というのは収入として見ない。要は、手元にそのまま残せるという取り扱いを設けてございまして、その例といたしましては例えば進学に要する費用というのもございますけれども、その中で、就労・就学に伴って転居が必要と見込まれる場合の費用は収入認定除外ということができますので、在学中、自分の収入をためておいてそこに充てられる。取り扱いとしてはそういった取り扱いになっております。
■宮本委員 国はそこまで行ったのですね。ところが、ある自治体は認めて、ある自治体は認めないというような状態だそうです。
■駒村部会長 関連することですね。
■岩田部会長代理 はい。
■駒村部会長 では、お願いします。
■岩田部会長代理 多分宮本先生の御質問の本当の意図は、例えば16歳で世帯主として生活保護を居宅で受けられるかという話ではないかと思うのです。世帯分離という方便ではなくて。例えばイギリスでは16歳から特別に単身でも2人でも世帯を認めます。後からそういうふうにしたのです。それはなぜかというと、家族がすごく変化していく。その家族から早くこぼれてしまう子がいるわけです。
今、子どもの健全育成みたいなことになると、塾がどうだ、やれレクリエーションがどうだと言うけれども、その前に高校からドロップアウトしているような子どもたちの存在を全然視野に入れていないわけです。事実に目を向けて、16から特別ですけれども出すのです。大して出しませんが。でも、日本は多分要養護児童になってしまうのではないか、児童福祉の対象になってしまうのではないかなと思うのです。
世帯分離というのは、今まで高校を認めるとか大学を認めるとか、そういうふうにやっていましたけれども、もしかするとそこが自治体や何かでも違うのかもしれないのですが、多分そういう話かなと思うのですけれども。
■宮本委員 そうですね。そのあたりは本当に現場の声を聞いていただくと何が問題かというのがわかりますけれども。
■岩田部会長代理 でも、1回ちょっとまとめていただいて、その辺も何歳で居宅保護の主体になれるかという問題だと思います。
■宮本委員 加えて、たとえお金がたまったとしても、場所によるかもしれませんけれども、そこから家を出るという費用、住居、移動の費用が非常にかかる中で、ほとんどカバーできないという問題があります。
■駒村部会長 今の話は貧困の連鎖とか子どもの貧困脱却の話なので、前半の部分の方でひっかかっている部分を明らかにする中で、では、何が足りないのか、あるいはその実態がどうなっているのかという話になると思いますけれども。
栃本先生、何かありますか。
■栃本委員 加算の部分の議論なのだけれども、障害者加算とか重度障害者加算というのはもちろんありますね。これは三障害ということになっているではないですか。私は介護保険部会で話をしたのだけれども、高齢者の福祉用具とか住宅改修というのがある。特に住宅改修などは、一戸建てとかマンションを持っている人は住宅改修ができますよ。だけど、生活保護でアパートとかそういうのを借りて、しかも住宅性能が、広さだけでなくて、必ずしもよくない。そういう問題があるではないかということを介護保険部会で言ったのです。住宅改修をするといったって、アパートはこんなものをつけてはいけないとか、取り回しも悪いということがあるので、そこら辺というのはすごく重要なことだと思うのです。
介護保険の場合、住宅改修とか福祉用具というのは、持ち家とかそういうのがある人が前提になってしまって、そこの部分が抜け落ちてしまっているのではないか。ほかの局、社援局にそういうことは考えた方がいいのではないかと言った。住宅がすごく重要というのは、前回の議論で住宅扶助のことを阿部先生もおっしゃったし、生活保護世帯の場合、いろんな課題があって住宅性能を直せないのです。そこら辺のことをどう考えるかというのは重要だと思います。
もう一つは、特別な生活需要といった場合、ここでは概要が書いてあるのだけれども、先ほど岩田先生が障害者福祉の施策でやらなければいけない、それがしっかりやるべきことだというのはよくわかるし、それはそうなのだけれども、参照がいい一緒だと、その一方で、なかなかそれが難しい部分もあるので、そこら辺もちょっと視野に置いて、既存の、現在はこいういものだというのは結構古い概念。古い概念と言うとあれなのだけれども、おさまっているので、もうちょっと今日的な意味での障害者、特別な生活需要、特別な状態にある人、具体的に生活保護の人を守り抜くためのものとしてこの加算ということを再確認することは重要であることなので、そこら辺を検討してもらいたいということ。
それと、先ほど話があった部分なのだけれども、中学校とか高校で学校に行かなくなってしまって、独立してという話がありました。まさにそういう問題があるけれども、結局、児童福祉という概念とか児童ソーシャルワークというのがあるのだけれども、青年ソーシャルワークとかユースソーシャルワークとかユース福祉というのが日本は欠落しているのです。そこに大きな問題がありますよ。
実はきょうの議論というのは、その部分について光を当てていることでもあるから、特にワンペアレント・ファミリーだけでない形での青年の貧困問題とか、そういうことというのは、宮本先生などは生活困窮者の方でされているとは思うのですが、そういうものと重ね合わせたような形で見ていかれることも重要だと思います。ユースソーシャルワークとかそういう観点。
■駒村部会長 阿部委員、どうぞ。
■阿部委員 ちょっと関連しているのですけれども、特別な需要ということについて申し上げたいと思います。ここに書いてある特別な需要というのは、私たちは恐らくこれを例えばそのことが発することによって追加的に発生する費用というふうに捉えていると思うのです。そういう形で私たちは今までも例えば冬季加算とかも検証してきました。
ですけれども、この類型で言えば例えば妊産婦加算といったところでも、妊婦になることによって、特別に、余計に食費が要るだろうという考え方でそれを検証しようとすると、一般世帯の妊婦さんが、妊婦になる前と後でどれぐらい変わったかというような議論になってきてしまうわけです。ですけれども、そういったものは、その妊婦さん自身がそれまでどういった健康状況にあるとか、どういった家に住んでいるとか、そういったことにすごく関連してきますし、例えば冬季加算で言えば、冬のエネルギー費と夏のエネルギー費の差がどれぐらいあるかというのは、その方がどういう家に住んでいるとか、羽根布団を持っているとか、ほかのことに関連してきますので、必ずしも一般世帯の方々にも発生している特別な需要があるという意味での特別な需要ではないのではないかなと思うのです。
ここで恐らく私たちがとるべき解釈としては、妊婦加算であれば、生活保護の妊婦さんが十分な栄養がとれているか。とれていないのであれば、とるために必要な経費がこれだけですねという考え方をするべきであり、冬季加算であれば、生活保護の御家庭の方々が冬季でも十分な暖房をとることができているかと。それを十分とるためにどれだけエキストラな費用が必要なのかという意味での特別な需要というふうに捉えるべきだと思うのです。そうでないと、この特別な需要を一般世帯との比較でやろうとすると、費目というのはほかのところに波及してきます。例えば教育一つやろうとしても、塾に行くためには、もしかしたら食費も増えるかもしれないし、交通費も増えるかもしれないし、塾のためのかばん代も増えるかもしれないし、いろんなところに波及してきたり、冬季加算とかも妊婦加算とかもほかの費目に全部ひもづいているのです。
ですので、その差だけを見ようとするのは恐らく間違った方向であって、そうでなくて、まず必要とされる最低限のものが生活保護の御家庭で満たされているか、それを満たすために必要な経費は何かという考え方で見るべきなのではないかなと思います。
■駒村部会長 きょうはその他、扶助と加算に関する時間を十分とっていないので、引き続きこれをやらないといけないような感じがします。5ページなどは、今の阿部先生のお話を考えると、この分類で果たしていいのかどうなのかということも十分考えなければいけない。
それから、今、事務局から御説明がありましたけれども、かなり古い制度でありますが、その後の改正、改定などで制度の趣旨がほかの制度との見合いで変わってきているのかどうなのか。ただ、これだけたくさんの扶助・加算を全部、現代的意義を再検討するというのはかなりの作業になってくるような気もします。
ちょっと終わり切れないところがあります。きょうのうちに事務局に対して、次回引き続き議論するために必要な宿題みたいなものがあれば、今、発言していただきたいと思います。山田委員、ありますか。
■山田委員 5ページ、先ほど阿部委員がおっしゃられたのは、ある程度平均のようなもので、たとえ生活保護の方たちで妊婦加算になると、どれくらいの額をとる必要があるかというのは、ある程度平均でとれるかもしれないですが、特に2つ目の○に書いてある入院患者日用品費とか介護施設入所者基本生活費などというのは、物すごくばらつきが大きい世界になってくるわけです。それをどうやってデータをとって、どのように比較するのか。足りなくなってはいけないものを、ばらつきが非常に大きいと予測される中で、どうやってやるのか。この分類とともに非常に慎重に、○の2つ目については特に慎重にならなくてはいけないところで、ほかにもいろいろ検討しなくてはいけない中で、時間的にここまでやる余裕があるのか、もしくは要するに、ばらつきが大きい中でどういうふうに判断するのか、実現可能なのかというので、これはかなり疑問に思っている点ということで、相当精査しないと、もう一回議論の俎上に上げていただくわけにはいかない。非常に慎重になるべきところではないかと思います。
以上です。
■駒村部会長 岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 済みません、時間を延ばして。
各種加算ですけれども、今の入院の場合とか施設の基本生活費や何かは1類、2類との関係で考えていくしかないと思うのですが、加算の概要に書いてあることは建前ですね。後からともかく加算を維持しようとしてつけたことで、実は福祉年金との関係だったり、母子加算はもともとありますから、そのときは違うかもしれませんけれども、本体が余りに低いということもあったかと思います。
しかし、これを見てわかるように、障害者のところに栄養とかエネルギーとか、やたら書いてありますね。それは生活保護がマーケットバスケットの影響を依然受けていて、1類費がもちろんそうですが、それを書いたわけですね。だから、一般の方々がこれをご覧になると、えっ、こんなものはとったらいいではないかとなってしまいますよ。だけど、そういうことでできてきたわけではない経緯があるわけです。
一遍できたものは、その類型の世帯にとっての最低生活費になって継続していくわけですから、下げるときは、この加算が合理的でないから下げましょうという、それだけで済むのかどうかということです。
はっきり言って、こういう作文は、私はこんなことは知りませんよという感じですよ。それはそちらでいろいろな状況の中で作文なさったのでしょと。だけど、今、加算があるということはもう現実なのですね。加算をとるというのは、下げるということでしょ。そのことをよく踏まえて、一つ一つエネルギーが要るかどうかなどという検証はすべきではないと思う。それだったら、1類から全部マーケットバスケットでやりましょうよ。そうしないと合わない。
こういう加算の検証の仕方は余りよくない。だって、この歴史的な積み重ねは、ここにいらっしゃる事務局の方に責任はないにしても、歴代社会局がなさってきたことですよ。ですから、そこのところもよく考えて検証に。
■駒村部会長 栃本先生。
■栃本委員 ちょっと細かいことなのだけれども、その前に今のお話とも関係があるかもしれませんが、いみじくも、もともとこの加算がついた経緯があって、そこのいろんな理屈があるのだけれども、その部分が隠れたというか、それを何とか維持しておこうということからいろんな表現ぶりになっているので、逆に言うと、本来の加算をつけたときの経緯があって、それというものが消滅したら、それは必要ないのよということになるわけです。
ただ、先ほどもお話ししたように、現在の多様な生活保護世帯を見ると個別の需要があるから、そういう意味で加算制度というのは非常に重要なものですから、見ましょうと。ただ、検証は別なのだけれども、項目立てとして出していただくのはありがたいと思いました。
もう一つは、生活保護の人は住宅改修とかそういうのはできませんね。そういうものはどうするのかということもあるし、もう一つは、入院とか施設との関係で何かの加算みたいになっているけれども、これから非常に重要な問題は、必ずしも低所得者とか生活保護の方は養護老人ホームとか特養だけに暮らしているわけでなくて、サービス付高齢者住宅とかそういうところで多くの方が暮らしていて、しかも介護保険外の負担というのはすごく出ているし、生活支援サービスとか、これも必要だ、あれも必要だという世界になって、事業者から相当搾取されているというか、そういうのもある。
したがって、加算というのを考えたときに、施設利用者がこうだという形。今はそういう組み立てになっていますね。そこら辺もちょっと検討する。これは検証とかそういう意味ではなくて、加算制度というものを考えたときに、施設との関係でというのは、古典的な形の生活保護の方の暮らしぶりだけれども、今はそういう施設以外のところ、サービス付高齢者住宅とかそういうところで暮らされている生活保護の方がいるから、その場合、生活するために必要な経費というのがあるのですよ。それがなかなか出せないからということがあるといけないから、そこら辺も少しきめ細かくというか、細かいことだけれども、見ていただきたいなということです。
以上です。
■駒村部会長 時間も来ておりますが、きょうの時点で御発言のある方はいかがでしょうか。
事務局におかれましては、前半は前半でああいう考え方があって、さらなる検討項目があって、後半の部分は、きょう時間も不十分だったかもしれません。かなり慎重にやっていかなければいけない、入り方が難しい部分だと思いますので、ここのところはまだ宿題ということになると思います。
それでは、まだ議論すべき問題はあるのですが、本日は予定の時刻になってしまいましたので、これで本日の審議は終わりにしたいと思います。
次回の予定について、事務局から連絡をお願いいたします。
■清水保護課長補佐 次回の予定でございますけれども、10月28日、時間は午前10時から、場所は本日と同じここの専用第21会議室を予定してございます。また正式に決まりましたら御案内させていただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 オーバーして恐縮です。本日はこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
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