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2016年8月5日 第8回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成28年8月5日(金)9:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第20会議室(17階)


○出席者

委員

永井部会長 内山部会長代理 大西委員 斎藤委員 祖父江委員 花井委員 深見委員 福井委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立がん研究センターの平成27年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成27年度業務実績評価について
(3)その他

○配布資料

【国立がん研究センター】
資料1-1 平成27年度業務実績評価書(案)
資料1-2 平成27年度業務実績評価説明資料
資料1-3 平成27年度監査報告書
【国立長寿医療研究センター】
資料2-1 平成27年度業務実績評価書(案)
資料2-2 平成27年度業務実績評価説明資料
資料2-3 平成27年度監査報告書
(参考資料)
国立がん研究センター平成27年度財務諸表
国立長寿医療研究センター平成27年度財務諸表

○議事

 

○医政局医療経営支援課長補佐

 定刻となりましたので、ただいまから、第8回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。委員の皆様には大変お忙しい中をお集まりいただき、誠に有り難うございます。

 はじめに、本日の会議資料の確認をお願いいたします。本日は、がん研究センターと長寿医療研究センターということで、資料1-1から資料1-3が、がん研究センターの資料、資料2-1から資料2-3が長寿医療センターの資料です。参考資料として、がん研究センターと長寿医療研究センターの財務諸表があるかと思います。資料の不足・乱丁等がありましたらお申出ください。それでは永井部会長、議事の進行をよろしくお願いします。

○永井部会長

 それでは、国立がん研究センターの平成27年度業務実績評価について、御議論をお願いいたします。はじめに、研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-11-2に係る業務実績と自己評価についての御議論をお願いします。最初に法人から御説明いただき、その後に質疑応答といたします。それでは法人から、ポイントを絞って御説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長

 国立がん研究センター理事長の中釜です。私はこの4月から理事長を拝命しており、研究所には、横にいる間野が着任しております。研究に関しては、昨年度の実績等もありますので、私から説明させていただきます。まずは資料1-2を基に説明いたします。

3ページに当センターの概要が書かれています。左の真ん中辺りに理念として、社会と協働し、全ての国民に最適ながん医療を提供する、あるいは継続的にそれに貢献することを目指しております。使命としては右側にありますように、がんの本態解明に関する研究、更には高度先駆的医療の提供、標準医療の確立と普及に加えて最近では、がんサバイバーシップ研究の啓発と支援という、社会の中でのがん患者への支援と、そういう問題点の抽出にも取り組んでいます。情報発信、人材育成、政策の提言、国際貢献に関しても、引続き行っています。

4ページでは、がんセンターの組織の概要を示しています。真ん中辺りに6つの組織が書かれています。右から2つ目の社会と健康研究センターに関しては、この1月から、従来の予防研究検診センターがもう少し広く、社会の中でのがん患者への様々な問題の抽出及びその解決に向けての研究を行うという意味で、このような名称と組織の改正を行いました。この6つの組織が横断的に連携しながら、がん患者に新たな医療、標準的医療が提供できるような、又は新しいシーズ開発をシームレスに展開できるような仕組みとして、研究所から出口を見据えた研究を抽出すべく、病院とも連携し、間をつなぐべき先端医療開発センターという作りになっております。

 まず評価項目1-1及び1-2について、資料の5ページから、主な成果を中心に紹介いたします。まず5ページの左側に、胆道がんにおける大規模ゲノム解析というのがあります。ゲノム解読の進化によって、がんの本体が非常に深い所まで分かるようになってきました。それに伴って新しい治療標的、そのシーズの開発を行ってきたわけですが、それでも希少疾患等に関しては、まだまだ難しい面もあります。その点に関しても、胆道がんという、アジアで特徴的に多いがんに関して大規模なゲノム解析をし、その成果として免疫チェックポイントの阻害剤に反応するような、遺伝子の変化を見いだしました。現在は皮膚がんあるいは肺腺がんですが、これは将来、胆道がんに対しても、著効を示している免疫チェックポイント阻害剤の有効性を示唆するものであるということで、『Nature Genetics』に発表しております。

 右のほうは、乳がんに関してです。これも非常に多いがんで、かなり予後が良くなったとはいえ、治療抵抗性に関するメカニズム、つまり治療抵抗性があって転移を起こしたものに関しては、なかなか治療しづらい。それに対してマイクロRNAが治療抵抗性に関わることを、世界で初めて見いだしました。更に、miR-27bというマイクロRNAが、治療抵抗性に関わるということです。

 そのメカニズムが次のページにあります。この図の赤印の治療抵抗性に関わるENPP1というものがあると、細胞腫になるわけですが、マイクロRNAが減ってENPP1が過剰に発現することによって薬剤の抵抗性を獲得します。そういうメカニズムを見いだしました。これによりmiR-27bを使った新しい核酸医薬が提供可能になり、これによって5ページの下に書いてありますように、新しい局所コントロールによる患者のQOLの改善や、将来的には化学療法に抵抗性のある乳がんに関しても予後を改善する可能性を見いだせるということです。

6ページの右のほうには、合成致死に基づく新しいがん治療の考え方があります。既に遺伝性乳がん等ではBRCA12という遺伝子に関して合成致死、2つの遺伝子の異なったパッセルをブロックすることによって、効率的にがんに特異的な治療効果を発揮できるものの開発が進んでいるわけです。肺小細胞がんという非常に難治ながんに関しても、P300遺伝子というのを阻害することによって、合成致死性が発揮できる可能性を見いだしました。7ページの上のほうの図に書いてありますが、P300に関してはCBPというものと協調しながら、正常では2つのパッセルが生きています。正常な細胞ではCBPが生きているので、P300を阻害しても治療効果はないのですが、がんに関してはかなり高率にCBPが壊れていますので、片方のP300を阻害することによって、がん特異的に有効な致死効果が得られます。そういうものを肺小細胞がんという難治ながんで見いだしました。

 続いて7ページの下のほうですが、十二指腸乳頭部がんという希少ながんに関しても資料を収集しました。これに関しても、がん大規模ゲノム解析という手法を使うことによって、従来は治療標的となるものが見いだせなかったものに対して、いろいろな治療標的となり得る分子を見いだしました。こういうことが分かることによって、十二指腸乳頭部がんに関しても約半数の症例で治療標的となる遺伝子が見いだされ、将来的に十二指腸乳頭部がんという難治がんに関しても、分子標的の個別化医療の道が開けたということです。

8ページは、そのほかにコホート研究についてです。これは20年以上の長年にわたって、10数万人の住民コホートの治療を集積し、その生活環境と合わせたデータを蓄積しているわけです。このようなコホート研究の重要性は今後のゲノム医療、あるいはがんの予防におけるゲノムの関与に関しても、その参照データを検証するコホートとして役立つものと期待しています。

8ページの右のほうには、膵臓がんの早期診断の血液バイオマーカーの開発というのがあります。これは検査キットの開発に成功しました。これを使って今、検診ベースでの検証性能試験を行っています。9ページの左側にありますように、膵がんというのは非常に早期発見が困難で、80%以上の患者は手術ができない。手術ができなければ、予後も極めて悪いわけです。非常にレアなケースですけれども、Stage1で見つかれば5年生存率も比較的期待できるという意味で、早期診断が非常に重要になってきます。この新しいマーカーに関しては、9ページの左側にありますが、Stage1という赤い線で描かれたグラフに関しても、従来のCA19-9に比べても圧倒的に高い早期診断の精度を誇っております。現在、これによって実際に早期の膵がんがどのぐらい見つかり、予後がどのぐらい改善できるかを検診ベースでスタディーを始めているところです。

 加えて9ページの右のほうですが、最近、抗体医薬の開発が進んでいます。ただ、実際に抗体医薬が効くか効かないかということに関して、そのメカニズムはまだまだ十分に解明されていません。中でも特にADCC活性に関しては、それを簡便に正確に評価する方法もなかったのです。実際に最近の抗体薬の開発状況を見ますと、ADCC活性を正確に評価するシステムが非常に重要であるということです。10ページの左にありますように、従来はADCC活性という抗体薬の作用によって細胞が死に、そこから放出される物質を定量することによって、その効果を測定していたわけです。新しい方法では蛍光色素を使って、それを高感度かつ定量的にアッセイする系を見いだしました。この方法によって、どの患者に抗体医薬を投与すると効くのか効かないのかということが、非常に定量的に評価でき、層別化につながる技術開発だと認識しております。

10ページの右の下のほうには小児神経芽腫という、非常に難治ながんについての新しい治療法があります。これは日本で開発されたビタミンA類似薬です。もともとは血液の腫瘍で使われたものですが、これを神経芽腫にもトライアルするということで、標準治療に向けての新しいトライアルを進めているところです。

 それに加え、11ページですが、成人T細胞白血病リンパ腫という日本固有のレアながんがあり、そういうものの開発も進んでおります。

 同じく11ページの左のほうです。まだまだ予後の悪い難治性の乳がん、進行乳がんがありますが、これに関しても新しい核酸医薬のトライアルのファースト・イン・ヒューマン試験を開始しているところです。

11ページの右のほうです。ゲノム解析の進歩によって、様々な治療開発が進んだと言いますが、組織を採ってこないとなかなか分からない。そうすると、患者の侵襲が大きい。そこで、血液から何とか診断できないかということで、Liquid biopsyの重要性が言われているわけです。12ページにありますように、膵がんに関してもLiquid biopsyの系を作りました。Liquid biopsyの優れたところは12ページの左上にありますように、生検ではどうしても様々な合併症、例えば肺であれば気胸や出血等々が起こるわけですが、血液を使うことによって侵襲が非常に少なくなります。加えて、組織の場合がんの多様性や様々な部位によっての違いを複数の生検材料ではなかなか表現しにくい。それが血液の試料で診断や解析が可能になれば、がんの多様性も一度に血液から評価できます。それから、BNCTという新しい放射線治療の技術開発も進められております。

 次に13ページです。そのほかに、非常に先進的な開発研究や治療薬の開発に加え、支持療法のアンメットメディカルニーズに応えるような臨床試験の基盤の開発、J-SUPPORTも作りました。また、患者が社会の中でどのように生活して社会の中で問題点を解決していくかというサバイバーシップに関しても、実際に積極的に取り組んでいるということが、ここに書かれております。

15ページには、研究成果の1つの指標として論文数と、その引用回数を数値で示しています。簡単に説明しますと、論文の数としては毎年600を超えるものを出しています。加えて非常に強調すべきは、インパクトファクターが15以上ということで、世界のバイオロジーの中でも極めて質の高い論文を、昨年度は23件を提出しています。

 論文の作成に加え、論文の引用回数に関しては下の表にありますように、国立がんセンターは昨年度、日本の中でも18位でした。これは全ての分野の総合的な領域で18位となっています。右のほうにありますように、特にその中でも臨床医学に限って言いますと、日本中で2位でした。次のページですが、さらに論文の指標は数だけでなく、被引用回数あるいは高度に引用された論文の数というのが重要です。そういう点では論文の数でも、腫瘍学においては最多のものが示されております。被引用回数や高被引用回数においては、ここに示しますように、臨床医学あるいは腫瘍学という両方の面で見ても、棒グラフの赤の腫瘍学ではいずれも最多、ブルーのラインの臨床医学でも、東京大学等々の幾つかの大学に次いで、非常に高い数値を出しているということが言えます。

17ページからは評価項目1-2です。実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。昨今、ゲノム医療の重要性ということが言われており、ゲノムに基づいた全国的な医療提供体制が整えられています。それが正に進もうとしているところで、それに関しても準備を進めております。このメディカルゲノムセンターというのは、そういうものを意識した形の組織、あるいはセンター全体の取組を示しています。しかし、これは病院との連携をもって初めて成立するものですので、新しいラボの構築や、それを使った新しいゲノム医療のトライアルの詳細については、後ほど病院のほうから説明させていただきます。

 加えて、これらの基盤となっているのがバイオバンク事業です。これも交付金の中の開発費を使って基盤整備を整えております。なおかつ、バイオバンクに関しては、がんだけでなく、6つのナショナルセンターが連携してNCBN(National Center BioBank Network)という形で、更に試料の充実、情報の充実を図っているところです。

 18ページです。そのほかに臨床の出口を指向するわけですので、開発的なところで実際に臨床試験をする場としては病院が必要です。これも研究所と連携で行っていますが、医療法に基づく臨床研究に関しては、病院のほうで詳細を説明させていただきます。

19ページです。このような中で、右のほうに特許の出願状況というのがあります。これは1つの成果の指標で、昨年度の目標は30件としたわけですが、実際には職務発明が62件あり、目標値は2倍強であったということで、大きく目標を上回りました。

 加えて、国内だけのがん医療の開発、医療提供、希少性の疾患への対応だけでなく、そこには国際連携の重要性がうたわれているわけです。19ページの右下のほうには、国際連携の更なる強化と取組という意味で、実際に昨年度は英、米、仏、韓国大使館と、共同での治験に関するシンポジウムを開催しました。こういう切口での国際連携については今後も引き続き、その取組を進めているという状況です。

20ページには、そのほかの様々な試みとして、国際連携の1つとしては真ん中辺りにありますが、国際コンソーシアム研究・国際共同研究への参加ということで、基礎研究、疫学研究、あるいは臨床的な視点から、様々な国際的ながん研究機関との連携を進めております。

 右下のほうに、まとめとして実用化を目指した研究開発の成果として、数値目標が書いてあります。共同研究、新規臨床研究実施件数、新規企業治験等々、いずれも120%あるいは200%を超えて数値目標を達成しているという状況です。以上が、主に研究、その実用化を目指した部分に関する説明でした。

○永井部会長

 いかがでしょうか。ここまでのところで御質問、御意見を頂きたいと思います。

○大西委員

 大変素晴らしい成果を上げておられることは、よく理解できました。細かい質問をして恐縮ですけれども、15ページの論文の被引用数を見ますと、平成27年度は26年度に比べると、少し減っている傾向にあります。逆に、今度はインパクトファクター15以上は、平成26年度に比べて13から23ということで非常に多くなっております。この2つが、片やインパクトファクターが高いところは増えて、片や被引用数が若干減ったという、この辺りの理由を教えていただけますか。

○国立がん研究センター理事長

 これは数値の見方です。ここに書かれている被引用回数は、平成26年度に出た論文がこれまでに引用された件数ですので、新しい論文ほど期間が短いから数値が低くなっています。平成27年度のものも、来年で見れば3,000に近い、あるいはそれ以上の数が出るだろうと思います。

○祖父江委員

 非常に素晴らしい結果だと思っております。特に余り言うことはないのですけれども、1点だけ申し上げます。コホートスタディーのことをおっしゃったのですが、がんセンターは法律の後押しもあるし、歴史的にも非常に長く、こういうコホート研究を続けておられるので非常に素晴らしいシステムを構築しておられると思うのです。特に一番下に書いてある分子疫学コホート研究を立ち上げられて、今やっておられるということですが、これが非常に重要なのは、フォローアップと言いますか、サーベイを経時的にどれぐらいのクオリティーで、どれぐらいの頻度でされているのかというのが非常に重要な要素になると思うのです。しかも、こういうものはがんセンターというか、ナショナルセンターの非常に大きなミッションだと思うのです。その辺の現状をもう少し教えていただければと思います。

○国立がん研究センター理事長

 このコホートは、先生が御指摘のように非常に重要で、日本の生活環境と個人のゲノム、あるいは様々な体質といったインタラクションを見る意味では、非常に重要だと思いますし、正にこれが今言われているプレシジョンメディスンを検証し、その重要性を高めていくものだと思うのです。これは対がん戦略のときに始まって、フェーズの1期が20年前に始まった、トータル14万人のコホートです。次世代というのは第2期に相当するもので、2期も10万人近いものを目指しています。今、8万人くらいは集積できています。この研究基盤に関して、当初は対がん戦略だったのですが、現在は交付金の中で運営している状況です。ですから交付金が減る中で、非常に厳しい状況です。ただ、バイオバンクを含めたコホートに関しては、その重要性を認識していますので、そこに限ってはかなりその仕組みを支援しています。先生もおっしゃるように、フォローアップに関しても、その資金の中で可能な範囲で行っているという状況です。

○祖父江委員

 実際にどれぐらいの比率で、どれぐらいフォローアップできているかという、その中身も含めてどのような状況ですか。

○国立がん研究センター理事長

14万人に関しては毎年だったと思いますが、アンケートを送り、その返答を回収するということを続けているという状況です。ですから毎年のフォローアップとしては、14万人は継続的にフォロー的な形では努力をしているということです。

○深見委員

 これだけではないと思いますけれども、膵がんなど、難治性ながんにフォーカスしているという取組みも、とてもいいかと思います。質問ですけれども、免疫チェックポイントの薬が、今は非常に効くということで話題にもなっている反面、医療費の問題も出てきていると思います。その中で、9ページで、ADCC活性を測定しながら免疫チェックポイントだけですから抗体薬ということですけれども、効くか効かないかという問題をあらかじめ判断できるというのは、とても有用なことだと思います。ただ、この手法が今後どの程度、臨床の場に使えるようになるのかといった見通しを教えていただきたいと思います。

○国立がん研究センター理事長

 そこは非常に重要なところです。このADCC活性だけでなく、免疫抗体薬あるいは免疫チェックポイントが効くメカニズムに関しては、まだまだ分からないところが多いということで理解しています。それに関しては、間野所長のほうから、現在の取組を含めて説明させてもらいます。

○国立がん研究センター理事・研究所長

 免疫チェックポイントの治療効果は今のところ、がんの変異の総数ぐらいしか、よい予測マーカーがないわけです。この患者には効くか効かないかということを予測する新しいマーカーをどうやって見つけるかというところに、世界中が非常に力を注いでいます。がんセンターとしては、患者のゲノムの変異だけでなく、実際に薬を投与した際のティーセル、あるいは免疫担当細胞の反応性の網羅的な解析、さらには患者個人個人のMHCのタイプですね。MHCはシーケンスでタイプを決めるのはかなり難しいのですけれども、それをローグリードシーケンサーという手法を使って、MHCを完全に決めるということを、全部を組み合わせてやります。それを大規模に肺がんやメラノーマの治療をした患者に応用することで、今、非常に大きなスタディーを正に始めていますので、日本からその成果を出したいと思っています。

○福井委員

20ページの最後、中釜理事長が説明された目標数と実績数の所です。この目標数自体は毎年上がっていくのでしょうか。それともこれから何年間か同じ数値目標で、毎年達成率を200%、300%などと記載するのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 毎年この数値を変えていたという認識ではないのですが、今回は第2期になりますが、最初の中期目標設定の段階で、1期のときには共同研究100件とか、そういう値で設定していたというように理解しています。これは第2期の1年目が終了した段階ですけれども、その段階においては1期の成果を基にして目標設定をかなり高く設定したわけです。ただ、これがどのぐらいできるか、企業を含めた共同研究ができるかというのは、正直なところなかなか予測できないところがあります。しかし1期に比べれば確実に高くなっています。毎年これを変えていくのかということに関しては、現状ではそこまでは。中間ぐらいでは見直しが必要かもしれないというようには認識しています。

○花井委員

20ページの治験なり臨床試験、ファースト・イン・ヒューマン等々がすごく進んでいます。患者からすれば、いい治療ができればいいと言えるのですけれども、先ほども触れられていたように、結局余りにも高くなるということです。別に日本で作ったから安くなるわけではないと思うのです。アメリカで先に売られるものは、大体高いという傾向があります。この中で国内の企業と共同したものと、外資系との比率というのは、大体どのようなものですか。それから、昔から言われているのですけれども、死の谷があって、基礎研究のシーズが下流のほうにうまく行かないというところについて、がんセンターの取組状況の中では、どういうお考えなのかを教えてもらえますか。

○国立がん研究センター理事長

 ファースト・イン・ヒューマン試験には、企業主導のファースト・イン・ヒューマンと、医師主導のファースト・イン・ヒューマンがあり、企業主導を含めて年間20件以上だと思います。医師主導は、両キャンパスを合わせると67件だったと認識しています。医師主導のファースト・イン・ヒューマンに関しては、日本国内からのものを育てていきたいというのが基本的な考え方です。企業治験に関しては優先順だと思います。ここに示した中で、例えば乳がんのTDM-812の核酸医薬の開発などは国内初ですし、がんセンター初のシーズではないのですが、サプリメントの共同研究での幹細胞の治療薬も日本初のシードを育てていきたい。そういうものを作ることによって、国内でのグローバル治験を主導し、価格も安く設定するということは試みていきたいと思います。

 同時に医療経済的な視点というのが我々のセンターでは、まだまだ欠けているところがあります。そういうところの分析を含めながら、さらに効く症例を研究としてもタイムリーに進めていく。先ほど免疫チェックポイントというのがありましたけれども、そういう効く症例と効かない症例を層別化できるような仕組みを早期から導入することによって、価格をある程度設定してコストを下げることは可能かなと。そういうことも同時に幾つか考えているところです。

○国立がん研究センター中央病院長

 中央病院長から補充します。医師主導のファースト・イン・ヒューマンは、ほぼ日本のシーズから出ています。5件です。それ以外に10件あるのですけれども、これはやはり企業関係ですので、海外の企業が多うございます。ちなみにコストを削減するためには、1つは治験を開始してから承認までの期間を短くすることが非常に重要ですけれども、その中で臨床試験のアダプティブ・デザインということで、より早く、よりコンパクトにやっていく方法に現在取り組んでいます。過去のものは難しいですけれども、将来的には、今やっているものはコスト削減ができるのではないかと考えております。

○国立がん研究センター理事・研究所長

 死の谷をどう乗り越えるかについて、研究所から少し述べさせていただきます。4ページの構成図にありますように、がんセンターでは先端医療開発センター(EPOC)という名前のTR、前臨床試験、つまり臨床試験を始める前にどこまでやればそこに入れるかということで、専用の組織を作っております。そこで専門のテクノロジーあるいは企業のライセンスアウトも含めて、前臨床の性能試験をやるようにしています。ですから、がんセンターとしては、死の谷は比較的浅いのではないかと考えております。

○祖父江委員

 国際共同研究と国際共同治験というのが、20ページの左下から右上に書いてありますが、今おっしゃったがんセンター主導型で国際治験に行っているものは、実際にはどれぐらいありますか。

○国立がん研究センター中央病院長

 正確な数字は分からないのですが、希少がんはフェーズ2になり、多分ほとんどがフェーズ3になります。「がんセンター主導」と言うときには、いろいろな意味があるのですけれども、PIを取ったというのと、やはりトップオーサーを取ったというのと両方あると思うのです。その数は、2割程度か、その前後だったと思います。もうちょっと切っているかもしれません。

○祖父江委員

 そんなにいっぱいありますか。

○永井部会長

 昨年、新聞に出た多くのがんを血液検査で診断できるという話がありましたね。あれはその後どうなったのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 マイクロRNAを使った13種類のがん、及び認知症等の神経疾患の診断薬を作ったことに関しては、今年で3年が終了した段階です。症例集積はほぼ終了していて、多くの13種類のがん種に関して、コンビネーションで診断率を上げるようなマーカーを同定しているところです。現在検診あるいはマイクロRNAの新しいコホートを使って、更に有用性を検証している段階で、2年以内には少しずつその成果を出していきたいと考えています。

○福井委員

 医師が541名とのことですが、完全に臨床と研究に分かれているのでしょうか。また、研究に携わっているドクターは何人ぐらいおられるのか教えていただけますか。

○国立がん研究センター中央病院長

 すみません、正確な数字は分かりませんが、常勤の医師は230名ぐらいだと思います。残りのほとんどが非常勤で、病院の者のほとんどが臨床研究という形です。また、間野先生の所と一緒に研究をやっていますので、研究者の部分もそれぞれのエフォートのパーセントは全部違ってくるのですけれども、それ以外にMDで研究所に所属しているか、あるいは柏の開発センターに所属している先生がスタッフとして多分2030人はいらっしゃると思います。正確な数字は申し訳ありませんが、今此処では把握できていません。

○福井委員

 少ないですね。もっと増やせないのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 実際には、病院の先生方が自分の臨床試験に付随した研究を行っているものを持っていますし、臨床の先生主導の臨床研究計画というのはたくさん出てきているのですけれども、もう少し基礎研究的なところではそういう数という認識だと思います。これから更にそれを充実したいということで間野所長が来られて、病院の先生方との共同ディスカッション、あるいは病院にあるシーズを研究のほうで、いかに拾い上げていけるかという試みを正に始めています。今月もかなり大きな会議が予定されていますので、そういうものを強化していきたいと思っております。

○内山部会長代理

 研究について素晴らしい成果を上げておられると思います。今のお話に関係するのですけれども、集まったドクターは、それまでの研究のベースがあって来られる方もおられるでしょうし、全くない方もおられると思うのです。その中でこれだけの体制を作るというのは、先ほどMDの話が出ましたけれども、ほかの職種、たとえばPh.Dの方たちと体制を整えて、現場で生まれたニーズやシーズを育て上げていくのでしょうか。どのような努力をされているのか、お聞かせください。

○国立がん研究センター理事長

 私が把握している限りですので、後は追加で病院長などに発言してほしいのですが、病院と研究所が同じキャンパスで近いとはいえ、お互いに話す機会がなければシーズや新しい共同研究は生まれてこないし、医師の参入もないのです。それに関してはリサーチカンファレンスを、独法化してから、もう56年続けています。基本的に月に1回行っており、そういう場で臨床や基礎から12名、あるいは3名ぐらい出て話をするのです。そういう中で、研究所ではどういうことが行われているのか、臨床現場ではどういう問題があるかということをお互いにシェアする機会が増えてきています。

 そういうことを契機に、実際に病院のレジデントが終わってから研究所に来る、あるいはレジデントをしながら研究に携わるという人が、以前に比べて、この5年間で増えているのは確実です。ただ、それでも診療科によっては診療に求めるものが高いので、その時間を割いて来ることは決して多くはないのですが、脳腫瘍や肺内科や皮膚科といった特定の臓器に関しては、かなり積極的にそういう試みが行われていると理解しています。

○国立がん研究センター中央病院長

 追加で言いますと、レジデントという初期研修が終わった、あるいは専門医の第一段階が終わった先生方が、毎年4060名ぐらい来られます。その先生方に対しては、ほぼ毎日のように臨床研究あるいは基礎研究のセミナーが行われています。参加するかどうかは本人の自由です。ナショナルキャンサーセンターというか、ナショナルカンファレンスセンターと言うぐらい、教育の提供はすごくたくさんあります。それを3年間終わった後に一度、臨床の別の現場に戻ってもらいます。ほとんどのスタッフは、そこからもう1回戻って来て臨床研究をやっているという形でやっていますから、その辺のフィードバックに関しては、十分いけているのではないかと思っています。

○永井部会長

 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは、続いて医療の提供等、そのほかの業務の質の向上に関する事項、評価項目1-3から1-5について御説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター中央病院長

 評価項目1-3は、中央病院長西田が説明させていただきます。21ページの医療の提供に関する事項(1/5)です。第1点は、右のページに書いてありますが、昨年の8月に中央病院、9月には東病院が臨床研究中核病院に承認されたことを御報告申し上げます。これは臨床研究に関してローカルとして実際に動かす所、それから、臨床研究全体をオーガナイズしてコントロールする所、つまりセントラル機能としての両方の機能を十分に果す実績をもっている病院として承認されたと認識しています。それ以後も、このセントラル機能、ローカル機能に関しては、両病院が努めて充実してきております。今後は、世界でも有数の病院になるべく、現在、努力しております。

 同じページの左側ですが、先ほど中釜理事長からありましたが、がんセンターでは、特にゲノム医療に尽力しています。その中で2点挙げたいと思います。1つは、先ほどのSCRUM-Japanです。これは産学連携で全国の病院が連携したゲノムスクリーニングということです。目標は3,000例ですが、ほぼ3,000に達している段階で、ゲノムスクリーニングをベースにして治験をやっていこうということです。現在は20近い治験が開始されています。その中で特に進んでいるのが、中ほどに書いてあるRET融合遺伝子に関するvandetanibの治験です。これが終了して、今年ASCOで発表されています。SCRUM-Japanでは、肺がん、大腸がん、胃がん以外に、希少ながんである胆道がんであったり、私が専門としておりますGISTのゲノムスクリーニングもやっております。

 これは、治験のほうを中心にやっているわけですが、もう1つは、実際にゲノムスクリーニングを実装しようということで、先ほど中釜理事長からありましたように、中央病院ではSCI-Labを作りまして、TOP-GEARと言って、院内で実際にゲノムスクリーニングを行っています。それを十分に動かして個別化医療を十分やっていくためには、遺伝子相談をちゃんとできる体制をつくらなければいけないということで、昨年、中央病院では遺伝子診療部門を設立しました。東病院でも今年度に入って同様なシステムをつくっております。

22ページを御覧ください。治験その他に関しては、いろいろな方法があります。遺伝子治療やウイルス療法がありますが、ここに書いてありますように、遺伝子治療に関しては、昨年2件開始しましたし、ウイルス療法も、今年、開始する予定で整備をしています。

 治験の実績は、先ほどあったように、ファースト・イン・ヒューマンで15件、特に医師指導では5件をやっております。治験の半数以上が、現在も国際共同治験という形でやっております。現在動いているものはまだ論文化されていないのですが、過去に動いたものは、最近論文化されてきて、昨年の実績では、『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に4報、『Lancet』に5報と出ております。その中にはco-PIでやっているものもあります。

 外科治療に関しましては、中ほど下に書いておりますように、胃がんに関してはロボット手術を先進医療Bで開始していますし、直腸がんに関しては、現在、ロボット手術は先進医療Bを目指してやっているのですが、中央病院はダビンチの研修施設になっている状況です。こういった機器開発に関しても力を入れておりまして、C-square等で企業との連携も進めております。

 右のページですが、特に日本が強い領域というのは、IVRと内視鏡です。IVRでは世界で5本の指に入る質と量ということで、そこに件数を書いていますが、5,000件以上のIVR治療を行っております。内視鏡は御存じのように、内視鏡の機器の開発も日本は非常に強いということですが、例えばESDも入れますと、同病院を合わせて1,200件以上のESDはやっておりますし、ポリペクトミーも入れますと、4,000件以上の治療を内視鏡で行っております。さらには、ステント治療も、その下に書いておりますようにやっております。

 がんセンターが力を入れなければいけないところでは、希少がんと難治がんがあります。希少がんに関しましては、一昨年、希少がんセンターを立ち上げて、特にホットラインには力を入れてきたのですが、昨年度は月々500件の相談を受け付けるという状況になって、センター内の中の相談支援だけではなくて、センター外に、日本全国の病院をつないだ希少がんネットワークをつくっているところです。希少がんの1つに、小児がんがありますが、小児がんでは、先ほど中釜理事長から紹介がありましたように、小児神経芽腫に対して新しい医師主導治験を行っております。これ以外にも企業治験2本、国際共同治験1本を開始しております。また、23ページの右側ですが、先進医療に関しては、両病院で先進医療A1つずつ、先進医療B5本ずつ実施している状況です。

24ページ、患者の視点に立ってどういうことをやってきたかですが、いろいろな患者教室をやっております。それは通常のがん拠点病院がやっているコモンキャンサーだけではなく、希少がんでもやっておりますし、カバーメイクとか予防的スキンケアの実践教室という、まだ他ではやられていない開発段階のことにも取り組んでおります。さらには、コメディカル外来に続いて、アピアランス支援センターでは、コスメティックケアに関しても尽力し、現在、これは非常に注目を集めています。セカンドオピニオンに関しては、目標を3,000件以上に設定しましたが、実際は4,000件近くということで、目標達成率は130%を超えております。

 チーム医療の推進に関しましては、我々の所は認定看護師、放射線治療専門の技師、医学物理士が非常に豊富におり、放射線医師と共にチームを組んでやっております。特段にコメントをしておきたいことは、周術期の管理に関しては、最近は高齢の患者が増えてきました。そこで、周術期管理チームを作りまして、多職種、多診療科で安全な手術や外科治療を行うチーム編成を作っております。25ページの左側、多職種からなるチーム医療としては、栄養サポートチーム、緩和ケアチーム、外来化学療法チームでやっておりますが、数字で示しますように、緩和ケアチームも栄養サポートチームも130%で、目標達成枠を超えるような成績を出しております。特に、緩和ケアに関しましては、新難治がんの緩和ケアを求められていますが、全体の約80%以上の患者がこういったことを実施するようになってきております。

 さらには、患者相談に関しましては、3万件以上です。これは院内の患者もそうですが、我々の所では、院外の患者の相談も引き受けており、合計3万件を超える状況です。

 医療安全に関しましては、25ページの右のほうですが、現在、インシデント・アクシデントの報告を徹底しておりまして、特によく注意されるところですが、医師からの報告も、最近は月々全体の10%を超える成績になっています。これをリスクマネージャー会議、サブリスクマネージャー会議で解析、結果を報告して、全体運営会議で重要事項を伝達しているようにしております。もちろん、死亡例があった場合には、副院長及び院長が前例チェックをして、問題がないかを確認しております。25ページの下、その他の手術成績に関しては、目標以上の成績を残しているところです。以上で、私の説明は終わります。この後、若尾から人材育成に関して説明をお願いします。

○国立がん対策情報センター長

 がん対策情報センター長の若尾です。26ページ以降の評価項目1-4から1-5について御説明いたします。26ページ、人材育成です。丸1リーダーとして国際的にも活躍できる人材を継続して育成するということで、先ほども話がありましたが、3年間がんセンターで研修し、レジデント75名、それから、レジデント修了者A以降の者を対象として2年間研修し、がん専門修了医43名の育成を行いました。卒業生のうち82名を全国のがん診療連携拠点病院など、がんの専門施設に輩出しています。丸2そのほかに医療従事者に対する研修会も行い、これが7,480名で、今まで最高の数となっております。丸3です。それらの中で、認定がん専門相談員という全国のがん診療連携拠点病院の相談支援センターの相談員の育成については、今までは研修会を終了しておしまいということだったのですが、昨年からその修了者の後の試験をやったり、あるいは、その後の更新をやるという形で認定制度を新たに開始いたしました。さらに、がん登録の実務者についても、認定制度を行っています。認定制度を開始するに当たりまして、丸4ですが、e-ラーニングなども導入し、今までより約1.6倍の受講生を受け入れることが可能となりました。さらに、認定については、有償化しまして、認定事業で約4,600万円の収入を得ております。

26ページの右側の丸7です。臨床研修の教育は非常に重要で、ほかになかなか担う所はなかったのですが、こちらもe-ラーニングで、ICRwebを開発し、運営を継続しております。昨年度については、前年度より約1.4倍の13,600人の方に利用していただいています。ICRwebの画面については、27ページの左側に記載しております。こちらについては、厚労省・文科省などでも推薦していただいております。

28ページです。評価項目1-5、政策提言に関する項目です。11)です。昨年度は第2期のがん対策推進基本計画が始まって3年目の中間評価を行う年度だったのですが、そちらのがん対策推進協議会に向けまして、基本計画の中間評価のための評価指標を作成し、その継続を行って、報告をいたしました。その結果、厚労省が作成します中間報告書に、こちらのがんセンターから出しました評価指標が多く採用されたことがあります。

 その1つとして、全体目標として10年間にがんによる75歳未満の年齢調整死亡率を20%下げるという目標があったのですが、その予測値を出して20%の達成が難しいことを国に報告しました。その結果、国では、がん対策をより加速するということで、がん対策推進加速化プランが昨年末に制定されて、それに基づいて今、がん対策は進められているところです。

 そのほか、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会、あるいはがんセンターの集まりである全国がん(成人病)センター協議会等において、がんの専門施設としての様々な問題を集約し、厚労省に対して「体制整備に関する提案書」あるいは「『加速化プラン』におけるがん領域の専門医育成に関する要望」などを提出させていただいております。5)ですが、今年から全国がん登録が始まりましたが、全国がん登録をスタートするに当たり、昨年は厚生労働省で政省令あるいは指針作成などの作業が行われました。そちらの作業に対して、専門的な関与を多くさせていただいております。その結果、今年の1月に、がん登録推進法は、予定どおり円滑な施行ができたと考えております。

28ページの右側です。地方公共団体への政策支援ということで、都道府県のがん対策担当者は都道府県によってかなり格差がある状況ですが、その担当者の方を集めて研修会を実施しております。昨年度は、35都道府県から延べ93名の方に参加していただきまして、がん対策10分野の講義を実施するとともに、グループワークで実際に施策の評価、事業の進捗状況の把握をどうするかを、グループワークで学んでいただいて、各県で活用していただいております。2)です。がん検診を実施するのは市町村の事業としてやっているのですが、全国16都道府県の96市区町村に対して、がんセンター研究班が作成しました受診勧奨用資材を活用していただき、実際に受診率が向上したという報告も頂いております。

29ページ、医療の均てん化並びに情報収集及び発信に関する事項です。その1番目、ネットワークの構築の推進です。1)先ほども御紹介しましたが、今、全国49か所の都道府県がん診療連携拠点病院を一堂に会し、都道府県拠点病院の連絡協議会を開催させていただいております。ただ単に連絡だけではなく、臨床試験部会、がん登録部会、情報提供・相談支援部会、緩和ケア部会という4つの部会をつくりまして、各部会で自治体に担当する者同士の意見交換あるいは情報交換などを行っております。拠点病院の中では、今、新しい整備指針に基づいてPDCAサイクルの確保が非常に大きな課題となっているのですが、その対応方法がなかなか分からないということで、PDCAサイクルに関しましては、全国の好事例を集め、PDCAサイクルフォーラムを開催して、拠点病院などにその情報を周知させていただいております。2)拠点病院等に対する技術指導並びにコンサルテーション等の実施ということです。病理診断コンサルテーションは、目標が330件に対して455件と、138%の達成を示しております。

29ページの右側です。2番目に、情報の収集・発信です。丸1地域のがん患者を支える地域相談支援フォーラム、ワークショップを開催ということです。拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」は、がん患者の様々な相談や悩み事に対応する非常に重要な部門です。これも、県や病院の格差がある中で、その格差を可視化して、各改善に取り組んでいただくために、地域相談支援フォーラムをブロック単位で行っております。県単位でやりますと、県内の事情によって悪いところは悪いことしか分からないということで、ブロック単位で良い県と悪い県の取組を知り、それぞれのベースアップ、ボトムアップを図るというものです。昨年は、鹿児島県と大阪府(近畿ブロック)で行っております。

30ページを御覧ください。同時に、相談支援センターを多くの一般の方に知っていただくことが重要ですので、福岡県及び三重県でもフォーラムを行っています。今、相談支援センターは各拠点病院に400強あるのですが、そこの11つの連絡先を知っていただくことは難しいので、ワンストップの相談支援センターの窓口として「がん情報サービスサポートセンター」を開設しております。昨年度は、3,102件の問合せがありました。これは過去最高となっております。

 丸4がん情報サービスの運用と、がん冊子の発行と更新ということです。がんセンターから全国のがん患者に向けて「がん情報サービス」というホームページで情報提供を行っております。昨年度、新たにSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を活用して「がん情報サービスFacebook」のページを立ち上げました。これは9月に立ち上げたのですが、4月までの時点で1,347のファンを獲得し、今、大体、週に2万ページビューのアクセスを得て、がん情報サービス本体のアクセスを増やしている形です。がん情報サービスの本体は、月に240万ページビューの方に利用していただいております。ただ、インターネットだけでは高齢の方などにアプローチはできませんので、その内容を分かりやすくまとめた冊子を昨年度は3種類を新規に作成し、現在59種類の冊子を発行しております。これは拠点病院に購入していただく形で全国に普及を図っておりますが、昨年度は108万冊が拠点病院に供給された形になります。

 丸5です。「全国がん登録」は、今年1月から始まりましたが、全国がん登録を知っていただく、あるいは、がんの統計を知っていただくということで、がんの統計を分かりやすく伝えるサイトを、これは7月に新たに立ち上げました。こちらに統計情報あるいはがん登録の情報をまとめて開示することで、非常に情報が伝わりやすくなったと考えております。丸6がん登録センターの設置です。先ほども言いましたが、準備を進めて、今年1月に新たに、がん登録センターを国立がん研究センター内に設置し、全国のがん統計の集計等の作業を進めています。現在は、システム化、オンラインシステムの構築のための作業が中心となっております。

 丸8です。我々は直接的にいろいろ情報発信を行っていますが、やはり大きな影響力のあるのがマスメディアです。マスメディアの方に、がん情報を正しく伝えていただくということで、これは従来から行っているものすが、メディアセミナーを4回開催させていただいております。昨年度は、非常に新しい制度である患者申出療養と、拡大治験などもマスメディアの方に伝えさせていただいて、そこからまた報道もしていただいております。評価項目1-41-5については、以上です。

○永井部会長

 ありがとうございます。御質問、御意見をお願いいたします。

○本田委員

 大変幅広い活動で、どれから聞いていいかと思うのですが、まず医療の提供で教えていただきたいのです。今、がんは高齢者が大変増えているということで、先進的な医療の提供とともに、高齢者に適した医療をということに、これまでも取り組んでこられたかと思うのですが、国立がんセンターの場合、認知症の方とか、意思を決定するのが難しいのかとか、そういう方々は、大体どれぐらいいるのかと。そういうことに対してどういうことをやっているのかというのと、各地のがんの診療の中では、高齢の方に対応するのが大変難しくなってきていることに対して、国のがん医療政策を今後、ある程度どう示していくかという立場もあると思いますので、その辺のお考えみたいなものを教えていただきたいのですが。

○国立がん研究センター中央病院長

 申し訳ありません、正確なパーセントは今ここでは存じ上げません。実を申しますと、東病院は中央病院に比べ高齢化率が高くなっております。中央病院は比較的若年の方が多い様です。それに対して、いずれの病院もリスクアセスメント、つまり先ほど言われたような認知症だけではなくて、それ以外に高齢者の方は、ロコモティブとか、いろいろなことがありますので、そういった入院治療時のリスクアセスメントを入院前にやって、それに応じた看護体制やサポート体制を組んでいるところです。これは試みですので、完全に完成した状況ではなく、作っていきつつ、リスクアセスメントをやっている状況です。

○永井部会長

 今の点に関して、一般診療で、循環器や糖尿病などの合併症を持った方の診療体制は、どうなっているのでしょうか。

○国立がん研究センター中央病院長

 両病院とも総合内科がありますので、そこで簡単なスクリーニングをさせていただいています。実際の治療は、がんセンターでするのは難しゅうございますので、例えば中央病院でありましたら、済生会中央病院あるいは心臓血管センターとか周辺の総合病院にお願いして、、まず循環器なら循環器、糖尿病なら糖尿病の治療をしていただいて、それの指示の下に、がん医療を開始するというふうに、地域とのコラボレーションでやっております。

○本田委員

 あと、早期からの緩和ケアが言われてきていて、こちらでも取り組んでいるということですが、こういうことをやったことによって、どう良くなっているかとか、そういう分析みたいなものはあるのですか。

○国立がん研究センター中央病院長

 今、ちょうどデータを取っております。海外では既に論文が幾つか出ていまして、それによると早期から開始することによって、PSや予後は良くなります。

○福井委員

 簡単で結構ですが、評価項目の1-31-5まで3つの項目のそれぞれについて、自己評定Sが付いています。Sは特別な成果の創出とか、目標値の120%以上で、質的に顕著な成果が得られている場合の評価とされていますが、評価項目1-31-41-5について、一言で結構ですので、どういう点が質的に素晴らしいものなのか教えていただければと思います。

○国立がん研究センター中央病院長

1-3のほうからまいります。最初のページで、やはり臨床研究中核病院としての機能を従前以上に充実できたこと。2番目はゲノム医療を実装に持っていけるような体制が組めたことかなと思います。実際に臨床のデータの所で、症例数とか、その辺というのは病院のキャパの問題でありますから120%以上を達成できていない所もあります。例えば稼働率を上げるというのは、現実には100%以上に利用率を上げるのは難しいので、それぞれの限界があると思います。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 続きまして、評価項目1-4、人材育成の部分です。こちらは多くのレジデントを全国に配置したということと、その下にありますが、新たに認証制度を作りまして、そちらで多くの専門家を育てるという形を開始したということです。

 評価項目1-5については、全国がん登録を始めるために大きな対応をさせていただいて、スムーズに動かして、今、正に全国がん登録が動き出したと。そこに貢献させていただいたというところだと考えております。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。どこを取っても大変素晴らしいという感じはしているのですが、多分、問題点があるので、それが表に出てこないのではないかという感じはします。1つお聞きしたいのは、先ほどちょっと予防の話が出ました。例えばゲノムコードとか検診とか全国がん登録などは、恐らく今後、予防ということでは非常に有効な手段になっていくと思うのですが、例えばコホートで介入をやって、本当に予防が効いたかどうかというようなエビデンスというのは、今後、非常に重要になってくると思うのです。そういうことについて、これは前の項目ともかぶってくるのですが、何か御計画とか、実際やろうとしていることとか、やっておられることがもしあれば教えていただきたいのですけれども。

○国立がん研究センター理事・研究所長

 がんの罹患性、ジャームラインにおけるがん罹患の素因、生殖細胞系、もともと持って生まれた自分のゲノムのがんの罹患素因というのが、実は今まだ分かっていないものがものすごく多いというのが、がん研究分野では非常にホットトピックの1つです。ですので、コホートとか、今までみんなが注目していたがんの後天的体細胞変異が発がん原因だということを調べるのだけでなくて、その前の生まれ持っているジャームラインの変異がどのぐらいあるかということを今がんセンターは研究所としても高度の、あるいはバイオバンクのサンプルのシーケンスというのを始めていまして、それを世界に先駆けて新しい罹患素因遺伝子を見つけたいと思っています。

 現在、既に例えば乳がんのBRCA1とか、大腸がんのAPCとか、そういう比較的リスク、オッズレシオが高いものは分かっているのですが、実はそうではなくて希なものはすごく多いのではないかということが分かってきていて、特に小児がんではそれは明らかなのですが、現在我々はそれも見つけようという探索を始めているところです。

○祖父江委員

 ただ、それを実際に予防に役立てようとすると、かなり難しい介入が想像される可能性があるのですが、具体的にというか、そこまではまだこれから考えていくということでしょうか。

○国立がん研究センター理事・研究所長

 介入方法は、2次発がんの予防に尽きるのです。ですから、オッズレシオに応じて、どのぐらいのインテンシティでスクリーニングを行うかということが2次発がんの予防につながるので、相対危険度がどのぐらいの変異なのかというのは、もっと大きなコホートで調べないと分からないので、そこまでにはまだ少し時間がかかるかもしれません。遺伝子が見つかれば、恐らくそれはがんセンターだけでやるのではなくて、世界中のコンソーシアムで相対危険度を決めていって、それに応じた2次予防のブロックということになると思います。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 発症の予防というわけではないのですが、検診の精度を上げるということで、受診率を上げるだけではありませんで、検診自体しっかり正しい検診を行うための支援を全国の自治体に対して行っているところです。

○国立がん研究センター中央病院長

 もう1つ言えば、例えばピロリ菌の感染に関して言えば、感染しているかどうか、除菌した後にメチル化が入っているかどうかを見ながら、リスクベースで内視鏡をやっていくということを今トライアルしていますし、便のバクテオロジーに関しても、それに向けて今ちょうどやっているところです。

○大西委員

 いろいろな大変な成果を挙げられている中でお尋ねするのも心苦しいのですが、評価をしていく上で定量的な指標のお話もあるものですから、特に人材育成のところと、医療政策の推進のところで、いろいろな数字が挙げられてはいるのですが、どれを目標と掲げておられて、それをどのように達成されたかということで、少し整理して教えていただけますでしょうか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 目標としては、26ページの右側の上の赤字の所です。全国の指導者研修の実施する種類を、計画では7種類以上というのを8種類実施したというところで達成です。政策のほうでは数値目標の部分はコンサルテーションです。29ページの左側です。病理診断コンサルテーション、これは病理が少ない中で、正しい病理診断を進めるということの病理診断の実施の数なのですが、計画が330件に対して455件で138%の達成というところにあります。

○大西委員

 この2つということですね。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 はい。

○花井委員

2つ教えてほしいのですが、1つ目はチーム医療についてです。24ページの右下なのですが、チーム医療の中身について、薬剤師の役割について、チーム医療の所を見ているのですが、薬剤師は本来、欧米などでは化学療法のレジメン提案というのが一番中心の役割なのですが、そう言いつつ、せいぜい服薬支援とか、ちょっと相談しているというところも見ているのですが、がんセンターの場合は薬剤師の専門性というのは、チーム医療の中でどのように進捗しているのかというのが1つです。

 それから、人材育成の件で、26ページの左上なのですが、専門医制度が始まって、理事長からの懸念の意見書を読ませてもらっていて、いろいろ議論はあると思うのですが、今回ここに連携教育、すなわち後期研修の義務教育も含めて研修ということで、ここに協議中と書いてあるのですが、これは人材確保の上で相当マイナスの影響が出る可能性があると考えているのか、中で義務はまだ見えないところもあるとは思うのですが、その辺についてはどのように考えておられるのか、この2点について教えてください。

○国立がん研究センター中央病院長

 後のほうから最初に答えさせていただきます。専門医制度が1階部分の実施が、1年間伸びましたが、1階の所だけでも5年になります。したがって、今、我々の所に入ってきているのは、2年目以降、正式に入ってきているのは3年目以降の医師です。従って、専門医制度に合った制度にレジデント制度は変えなければいけないと考えております。それが第1点です。

 最初のほうに関して、薬剤師がどこまで介入しているかということですが、これは診療科によって多少違います。ある診療科に関してはレジメン提案をしている診療科があることは存じ上げています。現実は担当医と相談しながらやっております。もう1つは、薬剤師外来をやっていることです。服薬指導だけではなくて、薬剤師外来をやっていることを挙げたいと思います。また、外来化学療法センターでは薬剤師フォローアップをやっているというのも、薬剤師の関与という点では大事なところかと思います。特にホットラインの受付に関しては、ほとんど薬剤師がやっていますので、その辺に関しては薬剤師が非常に化学療法の治療に関与していると御理解いただければ幸いです。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 専門医について、よろしいですか。今考えられている専門医制度は、どうしても学会主導で診療科単位での専門性ということが重視されていて、がんのように臓器横断的な専門家を育てると、この前提示された制度ではなかなか難しい。その中で、レジデントの担い手をなかなか呼びにくいというところで、この新しい制度に移行することに懸念しているところがあります。がんの場合はもう少し広く、様々な臓器横断的に、外科も含めて学べるような専門性を持った医師を育てないといけないと考えております。

○本田委員

 評価項目1-5の医療政策の所で、先ほども評価Sの理由をということで、1つは全国がん登録がスムーズにスタートできたと。大変御尽力いただいて、法律の後押しもあって、やっとできたと有り難く思っているのですが、一方でスムーズにスタートができたことは大変素晴らしいことだと思うのですが、スタートできただけではなくて、今後、まず国立がんセンターとしては、これをどのように国民のがん対策、がん政策に生かして、まずどこから、どういうことからできるのか、方針みたいなものを教えてください。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 すみません。その部分の説明がありませんでした。まず、今までは全国のがん患者さんの罹患数が分からない状況なのです。今までは都道府県がやっている地域がん登録の中で、特に精度の良い所だけを拾って、全国の推計値を出していたという状況と、その場合、都道府県単位ですので、県間移動をしている患者さんをどうしても把握できていなかったということ。全国でしっかりと患者さんの数を分かることができ、さらに、患者さんの診断時のステージなども確認することができるということになります。例えば今まで分かっていたのは、がんの死亡率だけなのですが、死亡が高い場合に何で死亡が高いのか、罹患が多いのか、検診発見が遅いのか、あるいは治療が悪いのかという、その辺をしっかりと確認することができて、新しい対策の手を打つことができるということと、今まで様々ながん対策が行われておりましたが、そのがん対策の効果を計ることができていなかった。その効果を計るためのデータをしっかりと出すことができて、これから全国がん登録によって、データに基づいたがん対策の推進につなげることができると考えております。罹患数についても、今まで4年かかっていたものが今後は2年で全国の罹患値を出すようなことで、今、想定準備をしているところです。

○国立がん研究センター理事長

 追加で、こういう政策的なものの評価というのはなかなか難しいと思うのですが、がん登録に関しては今、説明がありましたように、日本ではまだまだ罹患率、死亡率の変化に関して分析が十分できない状況で、そういうデータが取れていなかったのです。そこが、がん登録によって可能になった。最終的に分析の成果を次の政策に生かすというのは、これからのことだと思うのです。まず、その基盤ができたというのは大きくて、それが最終的には、S評価を得るようなものを提案できることが目標です。それに向けて毎年できることとしては、目標向けた情報の共有であるとか、相談支援の充実、そういうことが具体的な数値目標となるかと思います。今、少し最終ゴールが見えにくいですが、先ほど説明した数値目標に関しては、そういう意図で説明させていただいたということです。

○祖父江委員

 がん登録はどのぐらい、悉皆性としては、ほぼ100%ですか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 はい、ほぼ100%を目指しております。最終的には医療機関から出していただかなくてはいけないのですが、そこはいろいろ死亡票からの確認などをしまして、遡りなども含めて100%を目指した対応を考えております。

○斎藤委員

e-learning、ウェブサイト、SNSITの活用をとても上手にしていらっしゃると拝見しましたが、IT関連の人件費を含むコストはどのぐらいなのでしょうか。あるいは、前年からどのぐらい伸びているのか、その辺りのデータを教えていただけますか。

○国立がん研究センター理事長

 このメンバーでは、今すぐには答えられません。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 いろいろ増やしていますが、逆にコストがどんどん増えているということはありません。コストを削っている方向で、更に人が変わらず業務が増えているところは、ITを使うことで業務量を増やしているところです。コスト自体は様々な契約等の効率化によって、コストダウンを図っているところです。

○斎藤委員

 そうしますと、ITの活用というのは、戦略の1つとして大きく打ち出してらっしゃるというように考えてよろしいですか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 はい。最後の所でも説明があると思いますが、そのような形で対応させていただいております。

○祖父江委員

 先ほど腫瘍のがんの横糸的な専門医の育成という問題がちょっと出ましたが、御存じだと思いますが、内科のほうで、それはサブ・スペシャリティになりますが、腫瘍内科というのを今、実現しそうな方向に向かっていますので、是非それを後押ししていただいて、がんセンターなどが主導的に役割を果たしていただけるといいのかなと思っています。

○永井部会長

 最後に私から、がん登録は長期的な予後とか、治療法の比較もできるのですか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 治療法については、本当に手術をやっている、化学療法をやっている、放射線をやっているという、そのレベルでして、各学会がやっている臓器がん登録のような詳細なものは取れておりませんが、どういう治療法をやった方がどのぐらいの予後だということは取れます。今までも予後の確認についても、各都道府県がばらばらでやっていたのを、全国の死亡票を集める形で、死亡票と照合する形で、予後も非常に高い追跡率が出るようになりますので、精度も上がると考えております。

○永井部会長

 今後、個人情報保護法が改正されると、長期フォローやほかのデータベースとの照合、突合が難しくなると思うのですが、その辺の対応はどう考えてらっしゃるのですか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 まず、がん登録自体は、がん登録の法律の中で予後の確認を含めてできるようになっていて、先生がおっしゃられたように、ほかのデータ等の活用ということですが、これもがん登録の推進の法律の中で、がん登録のデータのデータ利用の促進ということもありますので、今はがん登録のデータを利用するための審査委員会等の制度を整備して、研究利用に活用していただくという仕組みも作っているところです。

○深見委員

 全ての項目に非常に積極的に取り組んで成果を出していらっしゃるのですが、理事長が交代ということで、体制も少し変わってまいりました。これまでの成果というのも非常に評価している中で、またそれでもこういうところを今後変えたいところとか、それから今後、技術的なことを考えて、こういうことを是非やってみたいという、もう既に何かお話をされているとも思うのですが、簡単にそういう点がありましたら御紹介いただけますでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 組織全体としては継続的に流れているものですが、この4月に私が就いてから、特に重点的に取り組みたいものとして、先ほど説明しましたゲノム医療、ゲノム情報を基にしたプレシジョンメディシンの実現したいところは治験に力を入れたい。そこは予防も含むと思います。それから、アンメット・ニーズの課題解決ということで、希少がん、難治がん、小児がん。小児がんは成育医療センターの専門医さんとの連携です。そういうものをしようと考えていますし、希少性の高いものに関しては、センターだけではなくて全国的なネットワーク構築を含めたところが必要なので、そういうところには重点的に取り組んでいきたいと。加えて、がんの患者さんに関しては、病院の中だけではなくて社会の中で、いかに安心して暮らせるかというのは、サバイバーシップ、就労支援等を含めた問題も広く出ていますので、がんセンターが独自にできるところは限定的ですが、そういうことにも力を入れていきたいと思います。広く社会的な生き方に関しても、がんセンターが全国の医療の提供の均霑化に貢献できるように進めていきたい。主にこの3点を重点的に行っていきたいと考えています。

○永井部会長

 続いて、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他、業務運営に関する事項、評価項目では2-1から4-1について、御説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 資料31ページからです。まず、業務運営の効率化ですが、大きい点が収支改善で、31ページの右下から32ページです。32ページ、右下のグラフですが、経常収支率が折れ線ですが、前2年赤字でありましたところを平成27年度はプラスに持ってまいりまして、約1.6%増ということです。これは金額にすると平成26年度は14.1億円のマイナスだったところ、平成27年度はプラス9.9億円ということですので、合わせて24億円を改善したということです。この要因ですが、1つは2つの病院がそれぞれ稼働を良くした。特に患者さんの数、多く来ていただいたということが32ページの表にもあります。これはいろいろな医療機関との協力もありますし、今日、縷々いろいろ御説明しているような取組、成果を幅広く発信して、患者さんの信頼を獲得しているというところが一番大きいかと思います。これに併せて、診療報酬上、いろいろな上位の基準を取っていくということであるとか、室料の負担の在り方を見直すとか、業務委託の在り方を見直すということを重ねています。外部資金にしても、競争的資金をはじめとした獲得に努めて、間接経費の規模を上げていくというところを併せて行っております。

 他方で、最初のほうにもありましたが、運営費交付金について減少の傾向がずっと続いており、この年度でいくと6億円マイナスということになっています。これは特に中期的な研究には非常に厳しい状況がありますが、全体の収支として見ればプラスというように、大きく平成27年度は方向を転換していくことができたということです。

33ページの右に電子化の推進というのがあります。先ほどのICTもありましたが、大きく2つあり、効率化を進めるとともに、施策を良い形で幅広い対象者に届けていくという形で使っていくということが1つです。もう1つはセキュリティで、非常に機微にわたる情報を扱っておりますので、CSIRTという組織を設けるとか、職員向けの研修、e-learningを含めて実施することをやっております。

34ページから評価項目3-1、財務内容の改善等です。この部分は先ほどの評価項目と重なりますが、併せて寄付金の増額とか、外部資金の獲得に関する取組といったことを書いております。長期的な借入れと投資ということですが、この間、債務残高を少しずつ減らすようにしつつ、長期の借入金を投資のために進めており、35ページの左に絵がありますが、来年3月には東病院に、次世代外科・内視鏡治療開発センターを新たに作るということも併せて、長期的に財務管理をしながら、必要な投資を行っていくということに取り組んでおります。

 評価項目4-136ページからですが、コンプライアンス、内部統制などの取組を進めつつ、将来に向けての取組を進める。36ページの右に、先ほど東病院のことを申し上げましたが、さらに中央病院でも新しく研究棟を設けるというのを来年、予定しています。人事交流という面では、AMEDPMDA、大学、研究開発法人との人事交流を進めておりますが、37ページの右上にあるような障害がある方の雇用も、2つの病院をあわせて積極的に取り組んでいるというのがあります。

38ページですが、いろいろな活動を進めていく基盤として、患者さん、国民に広く理解していただくことが非常に重要ですので、広報に積極的に取り組んでおります。38ページの左下のプレスリリース・記者会見ですが、各種の統計、あるいは新しい技術開発、今年度からの全国がん登録等について積極的に発信することが、全体の業務運営にも必要なことだと考えております。以上です。

○永井部会長

 どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

○深見委員

 ナショナルセンターの中でも、人件費の比率が非常に低い。センターにはいろいろなミッションがありますので、多い、少ないという事情もある程度分かるのですが、その中でもがんセンターは非常に人件費率が低いという点、どうしてここまでできるのか、簡単に教えていただけたらと思います。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 人件費の比率を一定に押さえるということを大きな目標に掲げてやっているわけではありませんので、全体としての規模の大きさとか、ここ数年少し下がっているのは、むしろやや収支マイナスの傾向がありましたので、特に外部資金の獲得などに努めてきた、その反映というところがあろうかと思います。

 他方で適正な人材を確保、特に優秀な人材を確保していくために、それ相応の人件費を払っていくことは将来の投資という意味でも非常に重要だと思っていますので、今後についても、それによって得られる効果等を確認しつつ、必要な部分については人材の確保に積極的に努めていく必要があると考えています。大事なことは、それがきちんと将来の効果に見合うのかどうかという観点だろうと考えています。

○祖父江委員

 今もお話が出ましたが、6センターの中では非常に健全といいますか、右肩上がりに事が進んでいるなという印象で、苦しい所はものすごい苦しいセンターもありますので、そこから比べると非常にいいなと思います。一番大きいのは、医療収入が平成22年度と比べると、単純な計算で言っても140億円ぐらいの増加になっているのではないかと思うのです。それが事業をいろいろインベストメントやっていく上で、非常に重要なドライブコストになっていると思うのです。全体を見ていると、医療収入が非常に中心的に働いているように思うのですが、寄付とか企業との連関とか、いろいろなことをおっしゃっているのですが、その辺の将来構想になってしまうかもしれませんが、どうお考えなのか。医療収入にずっと頼っていくというのは、単価も高いですし、ほかの疾患と比べても研究と直結していますし、非常にやりやすい構造にはなっていると思うのですが、それの将来構想というか、何かお考えのことがあればちょっとお聞かせ願いたいのですけれども。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 医業収益が中心であることは間違いないと思います。今回の改善も、そこが非常に大きい効果を出していますので、これは引き続き全体を上げて各般の取組を進めていくことが必要だと思います。他方でこれまでの反省に立つと、医療について何がどう変わるかということを見通しにくいところもあります。また、がんセンターの使命から考えたときに、そちらを最優先に置くというのもちょっと違っているところがありますので、企業、あるいは開発費、競争的資金を、併せてどうやって増やしていくかということだと思うのですが、そのときなかなか悩ましいのが、特に先ほども申し上げましたが運営費交付金が減少しているという中で、どうしても競争的資金というのは、得られる部分がある程度、見切りやすいところがありますので、中期的に見て非常に大事であるがゆえに、なかなか効果を訴えにくいというところについて、どういうふうにと。そこにこそ、がんセンターの存在意義があると思いますが、どのように基盤を堅くしていくかというところが大きな課題です。

○祖父江委員

 例えば先ほどのコホート形成などは、どちらかというと運営費交付金に頼っている部分があるということをおっしゃったのですが、これを長期的に転換していこうと思うと、医療費を注ぎ込むという形だけでいいのかどうかという問題はあるのではないかという感じはしますけれども。

○国立がん研究センター理事長

 その点については、最後に一言述べようと思ったのですが、今、正に委員が御指摘のように、経営自体は外部資金、医療収入を上げることによってプラスのほうに向いているのですが、その基になっている基盤的な部分ですね。人材育成、あるいはバイオバンク、疫学、コホート、こういうものも実際にはそういうもので賄っていたわけですが、その分の交付金の部分はかなり減額されていると。そういう中で、実際のところ、各部署、研究所、病院を含めて、基盤部分に関しては、実際のところは交付金で賄いきれないところはもう既に外部資金を入れながらやっています。それが健全かと言うと、正直なところ、そこは非常に厳しい状況であります。外部資金的なもの、企業との共同研究は出口が明確であり、そこの部分の支援もしなければいけない。そうしないとそこが増えていかない、育っていかない。そのもともとの、もっと大事な基盤の部分をどうするかというところは非常に頭の痛いところであり、そこは引き続き主張をし、求めていきたいと考えています。

○福井委員

1点確認と1点意見です。1つは先ほどの人件費のところで、委託費や派遣関係のお金は入っていないのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 入っていないという認識です。

○福井委員

 施設によっては、その比率は、随分違う数字になると思います。もう1つ、評価の仕方のところですが、例えば評価項目2-1Sをつけられていて、収支が改善したということですが、今まではネガティブだったのが、±0に近くなったということですので、そのところをどう評価するのか。例えばマイナスのところから0にようやく近付いたと見るのか、改善の幅が大きかったから、Sと判断することになるのではないかと個人的には思います。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 ここは我が方から申し上げるというよりは、この部会での皆さんの御議論だと思いますが、私どものほうで評価Sとさせていただいているのは、目標上は収支相償うというところに置いているのですが、そうすると120%というのを機械的に考えますと、例えば昨年の費用に対して2割増ということになるのですが、それが規模的に現実的な問題なのかどうかということあります。我々のミッションとしては、それだけの黒字を出すというよりは、むしろ将来に対して適切な投資を行いつつ、必要な機能を果たせるようにするということこそが目標ですので、ここ数年の収支マイナス基調に対して大きくプラスに転換したというところと、併せて将来に向けての投資を組み合わせてやっているというところで、私どもの気持ちとしてはこのようにさせていただいたということです。

○内山部会長代理

 先ほどの祖父江委員の質問とも多少関連するのですが、確かに構造的に、診療報酬の単価は高いでしょうし、研究もやりやすいということもあると思います。ただ、中央病院、東病院の内容を見ますと、特に入院患者は中央病院が94.8%、95%、東病院は99%で、これ以上伸ばすということは極めて難しいわけですよね。ドクターの方たちは、高い志を持って集まってきていると思うのですが、99%の稼働率の中で、よく周りの看護師をはじめ、メディカルスタッフの方たちのモチベーションを下げないでやっておられることに感心しますと同時に、今後の方向性をどうもっていくのか心配な点もあります。どのような形でモチベーションを支えているのか、教えてください。

○国立がん研究センター中央病院長

 モチベーションを支えるというか、がんセンターに入職していただいている放射線技師も看護師さんも、もともとが非常に高いレベルのモチベーションを持たれています。我々のミッションを非常によく理解していただいているので、その辺が十分理解して頂いているのかなと思います。ただ、我々は稼働率99%を目指すのではなく、それは90%でもいいと思うのですが、回転率を上げていくという方向で今考えています。できるだけ多くの患者さんに、がんセンターの医療を届けたいと思いますので、今後はスタッフも増やさなければいけないと思うのですが、スタッフを増やしながら回転率を上げていって、がんセンターでなければいけない医療をやっていきたいと思っております。そして、がん研究センターでの治療が終われば、地域へ戻っていただくという形で考えています。

○内山部会長代理

 平均在院日数は分かりますか。

○国立がん研究センター中央病院長

 平均在院日数は、今、両病院を合わせて12日ぐらいになっています。

○永井部会長

 例のオプジーボ問題ですが、今年度に入って大体3億円ぐらい購入されていますね。これは病院経営の中でどのようにマネージメントしていくのか、材料比率も上がるし、予算の組立てとして大きな変更があると思うのですが、いかがでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 今、安定的に月々3億円ぐらいの出資だったのです。その中で、いかに医療収益を上げていくかというのは大きな問題です。これは高額な医療費、効果的な医療費をどのようにがん医療の中で有効に活かしていくかに関しても、がんセンターが主導的に考えていく必要があると思います。今年度医療収益は厳しいものの、何とかやっていけるのではないかという見通しではあります。ただ、同時に現状を受け入れるだけでなくて、それを変えていくような、あるいは薬価の層別化であるとか、そういうものも併せて研究開発という形で提案しながら、そこに切り込んでいきたいと考えています。

○永井部会長

 次に、法人の監事から、業務の監査結果等をまとめた監査報告について御説明をお願いいたします。同時に、監査を踏まえて、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いいたします。

○国立がん研究センター監事

 監事の増田でございます。資料1-3、監査報告です。この1の監査の方法及びその内容では、監査計画に基づいて期中監査及び期末監査を実施した旨が記載されております。監査の結果として、5項目、それぞれの内容について両監事で検証した結果、適正意見を表明させていただいております。

 別途、監事からの何かのコメントというお話ですが、やはり今まで執行部から説明がありましたように、今後の国立がん研究センターの運営そのものは、運営交付金が削減されていく中で、いかに研究費を捻出していくかというのは、大きな課題ではないかと考えております。先ほどありましたベッドの回転率も非常に高い状態にありますので、医療収益に頼るというのは相当難しい状況になっているのかなとも考えておりまして、今後の国立がん研究センターの運営そのものが非常に大きなハードルに向かっているのではないかと考えております。私のほうからは以上です。

○永井部会長

 ありがとうございました。続きまして、理事長から日々のマネージメントを踏まえて、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長

 これまでも少し述べさせていただいたのですが、当センターの方針としては、がん患者さんに最適な医療を提供する、あるいは提供に資するようなデータを提供することだと思うのですが、そのためには基礎研究から開発研究、あるいは診療提供というところをバランスよく進めていく必要があります。加えて、昨今ゲノムという視点からの予防治療ということも踏まえながら、研究開発と医療提供をしていかなければいけないと思います。重要なことはその中で効果的、効率的な医療を提供するというところも、医療開発の中に含まれている点です。その結果として、最終的に国として効率の良い医療を提供できる、がん医療を提供できるということなので、収益を第一に目指すというところではなく、正に効果的、効率的な医療を検証し実施をする、そのモデルを構築する必要があります。それと同時に、医療収益も効率良い運営を目指す必要があるところから、かなり高いハードルを与えられたとは思います。ただ、日本の現状を踏まえると、センターとして取り組んでいく必要があると思います。、繰り返しますが、中でもやはり基となっている基礎、あるいは基盤の部分というのは非常に重要です。開発の部分からの資金を導入するというのは決して容易ではないので、そういうところは常に国に対してもアピールしていきたいですし、それこそが将来的な発展的開発、あるいは効果的、効率的医療につながるのだというところを主張していきたいと思います。

○永井部会長

 ありがとうございます。ただいまの御発言につきまして、御質問、御意見を頂けましたらお願いいたします。特にありませんでしたら、以上で国立研究開発法人国立がん研究センターの平成27年度業務実績評価に係る意見については終了いたします。どうもありがとうございました。ここで5分、休憩させていただきます。

 

(休 憩)

 

○永井部会長

 それでは、国立長寿医療研究センターの、平成27年度業務実績評価について御議論をお願いいたします。最初に、研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-11-2に係る業務実績と自己評価についてお願いいたします。最初に理事長から説明をお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 猛暑の中、本当にありがとうございます。当センターは、高齢者の心と体の自立を支援するために、その阻害する要因の最大である認知症、あるいは虚弱などというものに対し、有効な研究、医療を提供して、国民の健康長寿に貢献するということでやってまいりました。このポンチ絵を見ていただければ分かりますけれども、そのための最大化の戦略として、従来の病院と研究といったものだけではなく、認知症に関して病院のもの忘れセンター、認知症先進医療開発センター、また虚弱や社会的なものを含めた老年学・社会科学研究センターや、健康長寿支援ロボットセンター、栄養を含めた歯科口腔先進医療開発センターや、治験・臨床研究推進センター、また啓発がそれに資するということで、長寿医療研修センターを設け、新たにセンター長会議を年に4回開催し、その実績を全センターの職員が共有して、最大化の加速を図ってきました。

 このような成果の公表に関しては、研究論文だけではなくて、臨床を通じた先端医療、あるいはモデル医療によって、患者さんの評判を得ること、また見学や報道などを通じた公表などもありますけれども、このセンター全体を通じた、財務を含めた評価を全体に評価していただく貴重な機会と考えております。是非、これがセンターの課題と、また将来性に関して評価をしていただき、我々がより良い方向へ進めるように評価をお願いしたいと思います。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 研究所長の柳澤です。引き続き説明させていただきます。業務実績概要説明の5ページを御覧ください。評価項目1-1担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について説明いたします。加齢に伴う疾患に対する予防、診断、治療法の開発においては、まず私どもはアルツハイマー病先制治療薬の開発に関して、臨床で既に使用されている既存薬の中にあるアルツハイマー病の2大病理の1つであるタウ重合阻害活性を見出しました。既にヒトでの安全性が確認されていることから、臨床試験への展開を図ってまいりたいと考えております。一方、アミロイド重合阻害低分子化合物の開発に関しては、シーズの発見以来20年余り進めてまいりました探索研究がようやく最適化の段階に到達し、幸いにもAMEDの創薬支援ネットワーク及び構造展開拠点事業の支援課題に選択され、非臨床及び臨床試験への展開について検討を始めました。

 アルツハイマー病の早期(発症前)診断法開発に関しては、脳内のアミロイドの蓄積を検出することが可能な世界初の血液バイオマーカーの開発に関し、大規模検証試験を開始いたしました。またPET及びMEGを用いた発症前の特異的な脳機能の変化の検出にも成功いたしました。

NCGGが独自に開発した認知症予防法「コグニサイズ」に関しては、効果検証を鋭意進め、併せて全国普及に向けた広報、情報発信を行いました。加えて、高齢者の自動車事故防止に向けた安全運転技能訓練を実施いたしました。

 高齢者に特有の呼吸器疾患に対しては、老化細胞除去による画期的な治療法開発の可能性を世界で初めて提示いたしました。

 右側を御覧ください。加齢に伴う疾患の本態解明及び実態把握に関しては、オールジャパン体制によるアルツハイマー病レジストリを、世界初となるアルツハイマー病時間軸に沿った長期間の前向き観察研究として、全国をつなぐ大規模コホート研究体制、これを私どもはオレンジプラットフォームと呼んでおりますけれども、その上に構築いたしました。これに関しては、世界に情報発信するとともに、国際連携の構築に向けた活動も開始いたしました。

 本研究により、欧米において先行するアルツハイマー病の大規模コホート研究に対する、日本及びアジアのカウンターパート拠点ができたということは大変意義が大きいと私どもは考えます。このオレンジプラットフォームの開設に関しては、先般の内閣府健康医療戦略推進専門会議においても高く御評価いただいたと伺っております。

 次に、アルツハイマー病原因遺伝子研究からは、新規のAβ産生調節系を発見し、これまでにないAβ産生蓄積抑制法の開発の可能性を提示いたしました。英文献著論文数、国際学会発表件数及び論文被引用回数についてはお示したとおりです。自己評価はSとさせていただきました。

6ページから9ページには、ポンチ絵で成果を示しております。6ページを御覧ください。アルツハイマー病の先制治療薬と早期診断法の開発においては、右下を御覧ください。創薬開発において、リード化合物の最適化の段階に至りました。

 左下を御覧ください。島津製作所と共同で、世界初の発症前血液バイオマーカーの大規模validationを開始いたしました。本マーカーは、広くアルツハイマー病根治薬の開発に貢献するとともに、私どもが開発するアミロイド15阻害薬に対しては、薬効評価にも力を発揮するものと期待されます。

 左上を御覧ください。新規のアルツハイマー病アミロイド蓄積トランジェニックマウスを開発し、これを用いて、生かしたままでの薬効評価に成功し、論文発表いたしました。新規のAβ産生調節系の研究成果に関しては、専門誌の表紙でも紹介いただきました。

7ページを御覧ください。国の新オレンジプランに対応すべく、NCGを中心に国内30か所の医療機関を結んだ、オールジャパン体制によるオレンジプラットフォーム研究を開始いたしました。これは認知症の方、その前段階にある方を対象とし、全ての参加者に恩恵をもたらす、認知症の大規模前向きの観察研究です。登録目標数としては、5年間でMCI2,000名、発症前段階6,000名を設定しており、これらの中から臨床治験への参加者を募り、アルツハイマー病根治薬の開発に大きく貢献したいと考えております。

8ページを御覧ください。認知症予防法については、エビデンス構築とその社会実装展開を積極的に図りました。地域在住高齢者の20%が軽度認知障害(MCI)を有するという事実、また男性MCI高齢者の84%が運転を続けているという事実に対し、認知症予防法として開発した運動介入法、コグニサイズを適用し、更に左下を御覧ください。地域の自動車学校と共同し、MCI高齢者の安全運転技能向上プログラムを開発し、その有用性を検討いたしました。

9ページを御覧ください。高齢者呼吸器疾患の画期的治療法として、臓器内に出現する老化細胞を除去することにより、加齢により低下する呼吸機能の回復を誘導し得ることをはじめて示しました。この研究成果に関しては、一昨日、プレス発表を行いました。

10ページを御覧ください。評価項目1-2実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について説明いたします。健康長寿支援ロボットセンターを開設いたしました。このセンターは少子・高齢化に伴い、高齢者介護に必要な人材が絶対的に不足するという状況に応えるものであり、高齢者の自立・介護支援に特化した国内初のロボットセンターです。「あいちサービスロボット実用化支援センター」も併設し、開設初年度から精力的に、トヨタ自動車等国内企業と連携し、各種ロボットの開発とその有用性の検討を進めました。

NCGGにおける治験及び臨床研究の推進に関しては、平成264月に治験・臨床研究推進センターを設置し、研究倫理及び研究手技の技術・知識の向上を目指しております。平成27年度においては、臨床試験、臨床研究及び治験の実施件数としてはお示ししたとおりです。医師主導治験を1件実施しました。またPET診断による先進医療B臨床研究が承認され、鋭意患者登録等を進めているところです。

 メディカルゲノムセンターを開設いたしました。このセンターは、NCGGのバイオバンク事業を拡大発展させる形で開設したものであり、平成27年度の登録数及び分譲数はともに高い数値となっております。また、バイオバンクのオールジャパン体制を構築すべく、東北メディカル・メガバンクとの積極的な連携を図りました。

 高齢者医療・介護等に関するガイドラインの作成に関しては、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン並びに、過活動膀胱診断ガイドラインを策定いたしました。また、高齢女性に特有の下部尿路異常への診療ガイドラインを、共著ではありますけれども英文で発表いたしました。

NCGGにおける新しい医療機器開発に関しましては、世界初となる歯科用のOCT画像診断装置の開発を、複数の企業との上での連携で進めてまいりましたけれども、平成27年度においては、ようやく実用化に向けた第5号試作機を作製し、PMDAの対面助言の機会を頂く段階に至りました。自己評価はSとさせていただきました。

11ページから15ページのポンチ絵で御説明いたします。11ページの中ほどにあるように、見守りシステム、トイレ支援システム、傾聴ロボット、歩行器ロボット等を、企業との共同で開発しております。これらにおいては、ロボットが高齢者の身体に直接触れることによるリスクの評価と、その対策を念頭に、私どもNCGGに蓄積された高齢者の骨折や、褥瘡予防の研究実績を現在活用しているところです。

 左下を御覧ください。フレイル予防リハビリロボットを導入し、その有用性を検証いたしました。左側のグラフは、ロボット訓練が高齢者に受け入れられるばかりではなく、楽しんでいただけるということを示しております。このことは、高齢者のリハビリの継続性から重要なことと考えます。

 右側のグラフを御覧ください。水色の薄いバーが通常のリハビリの効果を、紺色のバーはロボット使用の効果を示しております。左の2本は足関節の筋力、右側の2本は動的バランス能力の変化を、それぞれ6週間のリハビリの後の改善度として示しております。通常のリハビリに比べて、ロボット導入の場合は3倍から5倍の効果が確認されました。この結果は私どもの予想を超えるものであり、通常リハビリを実施してきた関係者には、ある意味ショッキングなデータでした。ロボットの実用性、産業としての期待値は更に大きくなっておりますけれども、その社会実装にはまだ様々な問題があります。当センターでは、ロボット開発企業から相談を受ける窓口を開設し、開発の早い段階から協議を行っているところです。

12ページを御覧ください。治験・臨床研究推進センターにおける、平成27年度の実績はそこにお示ししたとおりです。時間の関係で詳細は割愛させていただきます。

13ページを御覧ください。認知症のPET診断による先進医療Bが平成27年度に承認され、平成28年度末までの登録終了を目指し、鋭意サービスを進めているところです。

14ページを御覧ください。メディカルゲノムセンターの活動をお示ししております。左側のバイオバンクへの登録、右側の資料・情報等の分譲ともに、確かな実績を収めることができました。

 最後に15ページを御覧ください。歯科用OCT画像診断装置の開発においては、先ほど申し上げましたように、PMDAの対面助言を頂戴できましたので、製品化に向け、企業と共同して鋭意作業を進めてまいりたいと考えております。以上です。

○永井部会長

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。ロボットが、通常のリハビリよりも成績が良いかもしれないというのはどういう理由ですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 それを今、正に解析しているところなのです。先ほど申し上げたように、概してお年寄りというのは、リハビリに対して少し引いてしまうと言いましょうか、どうしてやらなければいけないのと思われるかもしれないのです。例えば、フレイル予防のロボットを見ていただいても、一瞬体重が軽くなります。それで、例えば正面にテニスであったり、ピンポンであったり、そういう画像が出て、それに合わせて自分の体を移動するという現実性があるというのが顕著だったというのが1つかと考えています。

○永井部会長

 他人に言われるとやりたくないという面もあるのですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ロボットに言われるともっとやりたくないのかもしれませんが、そこはお年寄りの特性を重々念頭に置いて開発しています。

○祖父江委員

 非常に広範なところで良い結果が出ています。1つは非常に注目されている島津との共同のバイオマーカーは超早期というか、発症前からの診断に非常に期待されていると思うのです。これを意味付けと言いますか、発症前、それから超早期発症というように、コホートとか何かバックアップを取りながら、実用化されるのだと思うのです。その辺の見通しはどのようにやられるのですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 一昨年の秋ですけれども最初の論文を出し、メディア等でも非常に広く取り上げていただいて、本当に有り難く思っています。ただ、それは最初の論文にすぎませんので、きちっとバリデーションしなければいけないということ。しかも対象は必ずしも日本人だけではいかがなものかということがありましたので、海外のかなり大きなアルツハイマー病のコホート研究をしているグループと組み、平成27年度にバリデーション作業を開始し、現時点でほぼ終了しました。近々発表させていただけると思います。

 御質問の、今後の日本におけるコホート研究との対応という点では、先ほど御紹介した私どものオレンジプラットフォーム、これは全国規模でネットワークを繋ぎましたので、そういう方たちと共同しながら、発症前と発症後の全ての期間にわたって、できたら調べていきたいと考えます。ただ問題は、脳の中にアミロイドが蓄積していることが分かっても、その後の対応手段が今のところないものですから、その取扱いには重々慎重にならなければいけないと考えています。

○祖父江委員

 今のオレンジプラットフォームの画像データとの発症前とのリンクというのも考えておられるということでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 やっています。

○国立長寿医療研究センター理事長

 幸いなことに全国規模で、アミロイドイメージングが10施設以上、タウイメージングも7施設以上なものですから、最先端のイメージングと、このバイオマーカーを対比した研究を是非進めていきたいと思っています。

○深見委員

 先ほどのロボットの話なのですけれども、センターに新たにロボットのセンターを立ち上げという話でした。ロボットの重要性というのは割と普遍的に知られるようになってきたと思います。ただこういう組織化するというのは余りないのかなという感じがします。他組織化するということが、やはり連携とかで有利に働くというビジョンという理解でよろしいのですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 私は、愛知のロボット開発の協議会にも入っております。その行政の枠組みと、そこには地場産業、愛知県は製造も利用も日本一、3割以上ある所なものですから作りやすかったのです。そこのシーズとニーズを、行政とアカデミアが通じたような形にするには、恒常的なこのようなセンターでないと、イベントだけでは駄目だということで、県の職員がここに常駐していて、行政とアカデミアがタイアップした形の運営をさせていただいています。これが非常に効率的ではないかと考えております。

○大西委員

 今のお話にも関係するのですけれども、リハビリロボットなどの場合、医療上の有効性とか有用性をきちっと評価して、それがきちんと試験がされましたということを実証していくということは、ロボットを開発されている方にとっては非常に困難に直面されているのかなと思うのですけれども、そういうことを実現することを支援することも含めて、センターを運営されているということでよろしいですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 おっしゃるとおりです。ロボットを開発する会社が多いわけですけれども、そういう方々は、効果をいかに上げるかということに、工学的技術をフルに活用されていき、それができるわけですが、それを臨床の場で試すことは非常に限られています。それを我々の所では実現させて、RCTで、つまりコントロール比較して、そういうロボットの効果を肉体的、身体能力であったり、会話とか聴き取りというものも含めてデータを取って企業にお返ししたり、我々もそこから次の開発のシーズやニーズをつかんでいくということをしています。

 もう1つは少し論点が外れるのですけれども、効果を得るものを作り上げる点で工学系は優秀なものを作ってきます。それが、本当に人間の身体に安全か。若い人なら大丈夫ですよ、しかし高齢者の脆弱な方が使ったときに、本当に大丈夫かというのを調べられる所は本当にないと思います。そういう意味の安全性を込めて、我々のセンターはそういうところでも、皆さんのお役に立てるようにという形でやらせていただいています。

○大西委員

 先ほど御紹介いただいた、フレイル予防リハビリロボットも製品開発の段階だとは思うのですけれども、今後は医療機器として認定されていくとか、承認されていくということも視野に入れながら進めておられるということでよろしいですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 組織上は、リハビリテーションの部長、副院長の近藤がこのロボットセンター長を務めております。回復期リハ40床、その他のリハ施設の中で、安全性と実用性をRCTで検証していく体制、すなわちロボットセンターはリハビリセンターと非常に混合した状態で運営させていただいています。

○祖父江委員

 すみません。多分質問は、市販後のリアルワールドで、どれぐらい本当に役立つかということをアセスメントしていくということが、今後非常に問われるのではないかと思うのです。いわゆるクリニカル・イノベーション・ネットワークという考え方だと思うのです。それをやるにも、先ほどおっしゃっていたオレンジプラットフォームの膨大なデータからRCTがなかなか組めない状態でデータを取っていくという作業は、オレンジプラットフォームを是非活用させていただけると有り難いという感じを持ちましたので、追加させていただきます。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございます。

○本田委員

1つは感想なのですけれども、皆さんおっしゃっているロボットは大変興味深いです。このデータだけでは、N16ということで1つのということなのでしょうけれども、この展開は発表されていましたっけと思ったのですけれども、まだ報らせていませんよね。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 まだです。

○本田委員

 すごく興味深いし、医学的なポイントは、各先生方がいろいろおっしゃっていましたけれども、高齢者の方々が外に出ていく楽しみみたいなことにもつながるといいと感じました。

 あとは、8ページのコグニサイズから更に、自動車のところなのですけれども、来年3月から、認知症の方の運転免許の法改正もありますし、これからは社会全体として大変興味が高まっていきます。この研究というのは始めたばかりで、今後の展開とか、どのようなものを出していくというのはあるのですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 組織的な研究・開発を始めてから1年少しということだと思うのです。先ほど申し上げたように、MCIの高齢者の8割強が運転しているという、本当に恐ろしい事実があります。運転をやめてくださいということでは、余りにも一方的で意味がないのかもしれないということで積極的に、これは自動車学校との協力関係の構築に努めております。

 自動車学校側が、こういう技能をしっかり持っていれば、まずまず安全でしょうという評価軸を作って下さいましたので、それに向けて、実際のドライバーの運転台を用意して、そこでトレーニングをしております。対照としては座学と言いましょうか、口頭でのお話しを聴講する方を設定しておりますが、明らかな差が出ました。現時点では名古屋市が中心なのですけれども、できたら広く対象者を増やしていって、より確かな結果なのかどうかを確認していきたいと思っています。

○花井委員

12ページの治験・臨床研究推進センターで、「セントラルIRBによる審査がスタート」と書いてあります。質問は、IRBだけなのか、倫理委員会というか、臨床研究も含めてセントラル化というイメージなのかということ。それから、セントラル化ということになると、ここは特別な領域の認知症とか運動系疾患等に関連したもので、愛知県というか、ここのセントラルで審査するというようなイメージで広報などをして、スタートということはそういう大分の医師と治験等々を受けるような感じになっていくものなのかどうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 認知症の臨床研究に関しては、国立長寿医療研究センターが中心となって、中部地域ですけれども、そこの幾つかの病院とネットワークを作って臨床研究の対象者を比較的しっかり確保してやっていこうと努めております。その臨床研究においては、当然のことながら私どもがセントラルIRBです。

 一方、もう少し大きい規模では、名古屋大学が中心になって、私たちがそこに、この右側に書いてある円環コンソーシアムにメンバーとして入っています。それで、名古屋大学が中心となって、セントラルIRBを作っていただいて、そこに私たちが御相談申し上げるというような形を取っています。ですから、セントラルIRBと言っても、いろいろな事業、あるいは臨床研究のものがあるのかもしれません。レベルとしては、そういうものをやっていくことで、全体がレベルアップできていければと期待しています。

○福井委員

 着実に成果を出されていて素晴らしいと思います。マンパワーのことについて伺います。1年間で、英文の原著論文が260報出て、センターが8つあって、病床が321床で、職員がたった544名です。医師は何人で、これだけの研究と診療の成果を出されているのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 医師は65名です。

○福井委員

65名。大変ですね。

○国立長寿医療研究センター理事長

 でも、私が来たときに比べると、医者は10名以上増えていますし、職員も200名ぐらい増えています。

○福井委員

 論文を書いたり、診療もやったり、全部合わせて65名ですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 そうです。医師の中には研究のほうに専念して、統計とかそういうことに専念してくださる方も含めて65名です。

○内山部会長代理

 うまく産学連携を成し遂げながらやっておられ、感心して見ていました。最近は口腔内の衛生が様々な疾患の原因となり、あるいは治療成績に影響するという知見が明らかにされてきていて、この観点から、世界初の歯科用OCT画像は素晴らしい成果と思います。ちょっと興味を持ったのは、3号機、4号機、5号機とそれぞれ違う製作所になっています。大抵は1つの所が作って、そこで改良していくと思うのです。この辺の経緯はいかがなものでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 共同研究先が変わっているというところに、正に私どもの苦労が、そこに反映されています。いろいろな理由があると思うのです。12年の開発ですぐに承認されて実用化できるものではないということ。それから、どのぐらいマーケット性があるのかという議論が、どうしても企業側にはあります。綱渡り的なと言うとあれですけれども、なんとかPMDAの対面助言を頂戴して、私たちは具体的に5号機で出したいと考えているのですけれども、そこまで来たということで、一応世の中に出せるのではないかと思っています。

 もう1つは、パナソニックが最後だと思ったのですけれども、これは完全に向こう側の事情で、とんでもないことが起きましたので、そこからもう一回組み直したというのが事実です。

○祖父江委員

 何度もすみません。今の治験のところなのですけれども、恐らく今後世界初のシーズとか何か非常にたくさん蓄えつつあるので、今後展開してくると思うのです。1つの評価基準として、国際治験のPIに幾つあるか。もう1つ、シロスタゾールのあれは、先生の所はオーンのシーズで。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 循環器病センターと一緒にやっています。

○祖父江委員

 ですから、医師主導治験がオーンになるのが幾つあるのかということになると、今後ちょっと問題になってくると思います。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 そうですね。

○祖父江委員

 多分、先ほどのいろいろなシーズが今後展開していくと思うのです。そういうものを見ていくといいですね。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 国際治験で、現時点で長寿の職員がPIというのはないです。ただ、本当に有り難いことに、長寿が生み出したシーズから、診断法であるとか、そういうものがそう遠くない将来出ると思うのです。これに関しては、当然私どもがやっていきたいと思います。これも本当に有り難いことに、アルツハイマーに関しては、つい2週間ほど前、国際的な大きな会議に私どもが参加して、アメリカやヨーロッパで先行するコホートと連携することができましたので、是非、一気に世界に展開していきたいと思っています。

○永井部会長

 それではよろしいでしょうか。続いて医療の提供と、その他の業務の質の向上に関する項目で、1-3から1-5について説明をお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 病院長の原田です。16ページ、17ページを御覧ください。認知症とフレイルは、超高齢社会の進展に触れて、より重要な状態にあるため、重点的に取り組んでおります。認知症はオレンジレジストリ、医師主導治験、先進医療Bなど。フレイルは、世界に先がけた「ロコモフレイル外来」は大切なので、取り組み、排尿障害国際ガイドラインを作成いたしました。移行期の在宅療養を多職種訪問で支援することを始めました。

18ページを御覧ください。新オレンジプランの7つの柱を上にお示ししてあります。もの忘れセンターでは、この新オレンジプランを、初年度で実現しております。容態に応じた適時・適切な医療は、初診患者1,000名に、アミロイド画像などの最高レベルの診断技術で老年科、神経内科など、専門医が一堂に会して医療決定し、提供いたしました。予防法の研究開発・普及は、日本初の認知症オレンジレジストリ中央施設として認知症、軽度認知障害(MCI)の全国ビッグデータを集積し、治験の高速化を目指し、MCI・脳小血管病に対し抗血小板薬の医師主導治験を開始し、白質病変の英文誌に特集を行いました。

 診断治療法の開発・普及はFDG-PETの先進医療Bや、多数の治験によって貢献し、リハビリモデルの開発・普及はMCIにコグニサイズ、軽症に園芸療法、中等度以上には入院でアクティビティーリハビリなどを行いました。介護モデルの開発・普及は、世界で初めてケアレジストリによる仕組みを構築いたしました。若年性認知症は、この診断方法を実践しております。

 理解を深める普及・啓発は、右にあるような新オレンジプランの最大のポイントである、本人と家族の視点重視が盛り込まれた「もの忘れ教室」の有効性が確認され、プログラムが公開されております。認知症にやさしい地域づくりは、下にあるように認知症カフェに関する全国調査を実施し、地域ごとに調査・指導をいたしました。介護者支援に関しては、愛知県の自治体と、警察の徘徊情報を調査し、それを基に、自治体には「徘徊対応マニュアル」の新規パンフレットを作成しました。

 次のページの右の写真は認知症サポートチームです。認知症の専門医、認知症認定看護師など、多くの専門医で構成されたチームが認知症患者をサポートして、評価、看護アドバイスを79件行いました。特に大声、暴力といった行動・心理症状が重症化しております。チーム介入で大声、ルートトラブルなどに効果が認められ、更に他施設の立上げを支援して、対応指針が初めての認知症看護(韓国語版)になりました。このように認知症サポートチームは、我が国で最も先駆的に実現し、4月に認知症ケア加算として保険収載されたことは特出すべきものと思っております。

20ページを御覧ください。上の図にあるように、年齢を重ねると、顕著に認知機能が低下いたしますが、フレイルは要介護になっていない状態を意味しております。その中で運動期障害がロコモティブシンドローム、筋肉量減少がサルコペニアと呼ばれます。中でもサルコペニアは、この4月からICD10に採用され、大きな注目を浴びております。私どもが貢献いたしましたアジア診断基準での予備の有病者数は男女とも130万台と推定され、縦断的解析で明らかなADL低下位値であること。また、総エネルギー消費量等が合併症の危険因子であることを示しました。診断は、大腿のCTが、筋力と歩行の速度に関連し、国際基準の骨格筋指数以上に診断に有用で、専用の超音波装置も始めています。薬剤は、アレンドロネートが、筋肉を増加させるという可能性を世界で初めて発表し、マイオスタチン受容体の抗体の治験を継続しております。

21ページを御覧ください。フレイルは左のグラフのように、基本チェックリストを用いると国際基準とよく相関し、高い感度の特定度で診断できます。そして、要介護リスクが5倍にもなります。最も多くの歩みは世界で初めてロコンモフレイル外来を開設したことです。多数の専門科の医師と、多職種連携で医療決定し、栄養・運動治療いたします。そこにフレイル予防リハビリロボットが選択肢です。また、手術予後判定に重要なことも実証され、治験を見据えて、フレイルレジストリーも開始しております。また、主要疾患が改善しても、すぐに在宅化できないのがフレイルの患者さんですので、そこを考慮し、在宅医療支援病棟と、2種類の回復病棟が機能し、栄養と退院後訪問による在宅での安定化につなげます。このように、フレイルの医療体制を、我が国で最も早く構築し、今後の基盤を固めたところです。

22ページを御覧ください。在宅医療の取組として、退院からかかりつけ医に任せるまでの移行期における、在宅療養支援プログラムを、多職種訪問で開始し、在宅医療と介護の連携事例集を作成し、医師会、市町村、地域包括支援センターに1万部以上配布いたしました。人生の最終段階における医療の取組として、研修プログラムで養成したファシリテーターに、終末期患者への有意な意識変容を認め、論文化されました。また、エンド・オブ・ライフケアチームでは、非がん疾患54%、そのうち倫理サポート74%です。同規模病院の非がん率3%より、ず抜けて高く、非がん疾患の倫理サポートが主役である長寿型エンド・オブ・ライフケア・モデルが構築されております。さらに、エンド・オブ・ライフケアチームは入院患者に相談支援したところ、訪問診療ありの在宅看取りでは望んだ場所で最期を迎えられております。以上です。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 人材育成に関する事項です。23ページを御覧ください。当センターでは、新オレンジプランに基づいて、左側上の認知症サポート医研修、認知症初期集中チーム員研修を実施しております。左側のサポート医研修については、認知症に係る地域医療体制構築の中核的な役割を担っていただくということで、これまで研修を重ねてまいりました。昨年度の開催回数は6回で、これまでの累計修了者数が5,067名となっております。中長期目標、あるいは新オレンジプランの目標が、平成29年度末までに5,000名ということでしたので、これは前倒しで数値目標を達成することができました。平成28年度も引き続き研修を実施してまいりますが、年度の目標を800名と量上げして実施しようと思っています。

 また、初期集中支援員研修のほうですが、平成27年度より本格的に実施いたしました。これに関しては、昨年度は4回実施し、修了者は1,000余り、市町村数では443市町村です。平成29年度までに全市町村に設置できるよう実施することが目標です。平成28年度は、平成27年度の実績を踏まえ、1,000名という目標で実施いたします。

 以上のほか、左側の中ほどですが、連携大学院の制度により、研究者の育成を実施しております。課程の修了者数で、平成27年度は博士が3名、修士が3名でした。連携大学院14校に対し、当センターの職員、客員教授等で21名が教員として活動しております。

 右側ですが、コグニサイズの指導者員研修、当センターで開発した認知症予防運動について、指導者の研修、あるいは実践者の研修ということです。その下は、高齢者の医療、在宅医療、総合看護研修を実施していて、平成27年度は7講座で、延べ319人実施しています。

24ページを御覧ください。以上のうちの新オレンジプランに基づくサポート医研修と、初期集中支援チーム員研修です。左側の認知症サポート医研修について、これまでの研修修了者の実績です。累計数が棒グラフになっていて、平成27年度で前倒しの目標を達成しました。下は、ブロック別の受講者が、その地域内の医師に対してどれだけの割合になっているかを示しております。平成26年度の段階では、北海道など1%を割り込む地域もあったわけですが、平成27年度修了段階で、御覧のようにいずれのブロックでも1%を超える水準になっております。

 右側は、初期集中支援チーム員研修です。ブロック別の状況で見ると、北海道は修了市町村、あるいは修了者が少ない状況です。平成28年度には北海道で実施することにより、ブロック別の均衡を図っていくことを考えております。修了市町村数は、先ほど申しました443で、全体の4分の1ぐらいの市町村になっております。これらの中で現実に設置していただける市町村数を行政ベースで調べていただいておりますが、310市町村が設置することを決定している状況です。

25ページを御覧ください。医療政策の推進等に関する事項で、国への政策提言です。1つ目は、高齢者の特性に応じた保健事業に関し、新しい健診事業の提言をしております。後期高齢者医療確保法に基づき、高齢者の心身の特性に応じた保健事業の効果的推進を図るための研究を行い、提言を実施しております。2つ目は、認知症ケア加算の保険収載ということがあります。一般病床で認知症患者を受け入れるための切札として、認知症サポートチームを当センターで設置・運営してまいりました。そして研究事業を通じ、情報発信、普及支援を実施してまいりました。これは平成28年度の診療報酬改定で、院内の多職種のチームが、病棟における認知症症状の悪化防止、あるいは早期からの退院支援を行う、ということを評価する「認知症ケア加算」ということで収載されております。

 この2つの項目について、26ページの図で説明させていただきます。上の図は、高齢者の特性に応じた保健事業です。平成275月に公布された改正法で、高齢者の医療の確保に関する法律が改正されました。後期高齢者医療広域連合が、28年度から高齢者の特性に応じた保健事業を実施することになっております。この中身について中ほどですが、平成27年度に後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究を行い、フレイル、認知症低下、運動機能低下、更にはオーラルフレイルでの後期高齢者の特性に応じた対策が重要、あるいはガイドライン試案を提示した研究を実施いたしました。この研究による提言に基づき、平成27年度から平成28年度にかけて、3つの政策への反映がありました。

1つ目は、平成2712月に、経済財政諮問会議の改革工程表が決定され、数値目標として、平成32年度までに全ての広域連合において、高齢者のフレイル対策に資する事業を実施することが決定されました。2つ目は、平成28年度予算のほうに、所要の予算措置が行われ、高齢者の特性を踏まえた保健指導を実施するということで事業が開始されております。3つ目は、平成284月に入ってからになりますが、高齢者の保健事業の在り方の検討WGがスタートすることになっており、左側の研究を準備的研究と位置付け、この成果を踏まえ、在り方の検討が進められることになっています。

 それから、認知症ケア加算の保険収載です。平成238月に、当センターでは認知症サポートチームの設置をいたしました。平成27年度の段階で、年間80例へのアドバイスを行っております。平成25年度から平成27年度にかけて、認知症対策総合研究事業を実施し、このサポートチームを運用し、介入効果の評価を行いました。黄色の吹出しで書いてありますが、平成26年には認知症の救急医療の実態に関する研究を実施しております。認知症患者の救急外来診療を通常行っていない医療機関、あるいは行わないことが多い医療機関が7%程度ある。緊急入院の場合で、通常受け入れない、あるいは受け入れないことが多い医療機関が5%あるということが明らかになりました。こうしたことを受けて、平成28年度の診療報酬改定で認知症ケア加算が設けられました。

 この施設基準を満たすために必要な看護研修について、従来から当センターではこれを満たすと考えられる内容の研修を実施してきています。認知症ケアについての事業の在り方、その必要性、それを満たすための研究を実施してきて、これがこのケア加算に反映されています。平成27年度には、このように政策に具体的に反映いただく2つの提言をすることができました。

 前のページに戻り、以上のほか、地方自治体との協力という関係では、先ほど申し上げましたコグニサイズの普及といったことをはじめとして、地方公共団体と協働して取り組んでいる保健事業等があります。また右側は、ネットワークの構築ということで、関係学会と連携してのガイドライン作成、あるいは研究事業の実施、あるいは連携協定を結んでいる東京都の健康長寿医療センターとの共同研究を実施するということなどに取り組んでいます。

 また、情報の収集・発信ということでは、当センターで国際シンポジウムの開催をしていて、昨年度においては「糖尿病と認知症」というテーマで実施いたしました。ホームページを通じた情報発信については、平成26年度に比べて大幅なアクセス増をすることができました。以上です。

○永井部会長

 御質問、御意見をお願いいたします。

○深見委員

24ページの研修等をたくさんやっていただいていますけれども、サポート医の研修、又は右側の認知症初期集中支援チーム員研修ということで、データの読み方がちょっと分からないのですが、未修了の「研修」というのは、このセンターでやった研修ではなくて、全国ネットで同様な研修を受けたか受けないかと、そういうデータになりますか。未修了と修了という、「修了」の意味がどこの研修か、例えば北海道からわざわざ名古屋まで受けに来ているという、そういう意味なのか、ちょっとそこの解釈の所をお願いします。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 申し訳ありませんでした。当センターで行います研修につきましては、幾つかの地域で実施しており、関東とか関西、研修によりましては、東北とか九州とかで実施していると、そうしたものを受講いただいたものを「修了」としてここに書いております。そして北海道についても、本年度においては、当センターとして北海道でも実施をしようとしているということです。

○深見委員

 そうしますと、距離が遠いから未修了のような意味合いはないという解釈ですね。そういう中で北海道が低いというのは、情報の周知度などが低いという理解になるのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 北海道に関しましては、平成27年度は実施いたしませんでしたので、やはり地理的な問題も平成27年度はあっただろうと思っています。北海道はやはりなるべくその地域でも実施したほうがよいのだろうというのが私どもの考えで、本年は実施するということです。

○深見委員

 修了した人たち、修了者の受けた後の効果とか、どのように変わってきたかについてお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 御存じのように、認知症初期集中支援チーム員研修は、評価と、医療や介護につなぐという2つの能力がありますけれども、少なくとも評価について、前後にテストをして、どの程度履修能力が上がったかを確かめております。実際にその方たちが帰って初期集中支援チームとして活動して、どの程度実現性があるかというのは、この前に多くのモデル地域で、大体大丈夫だということを確かめてはおりますけれども、そのように広がった状態での前後のアウトカム調査は、まだこれと並行に、これから行われるべき厚労省の研究事業だと存じております。

○福井委員

 確認させていただきたいのですが。診療科の中に、外科系の診療科はないのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 いや、あります。外科、脳外科、整形外科、泌尿器科です。

○福井委員

 手術件数などのデータは。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 件数はちょっとここにはありませんが、がんセンターに比べると少ないですけれど、年間400近くやっております。

○福井委員

 もう1つ、医療安全については特に問題はございませんか。確認ですが。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 医療安全に関しましては、NC相互の訪問を受けておりまして、そこでの指摘を受けた部分がございますけれども、おおむね私どもの体制が水準に適った状況であると、評価を受けております。

○大西委員

 先ほどの研修事業のことについて、実態の、また地域別の修了者、市町村別の修了者という、対象となっている方々は、どういう職種の方々を研修の対象とされていらっしゃいますか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 初期集中支援チーム員研修は、看護師、保健師、あるいはケースワーカーに、自治体の方の場合もあります。セットで、1つの市町村で3名から67名いらっしゃいます。サポート医研修はドクターだけです。

○大西委員

 こちらは、ドクターだけですね。

○国立長寿医療研究センター理事長

 はい。

○祖父江委員

 私もこのサポート医研修とか、支援チーム研修を全国的にやられていて、これは確か前に、アウトカムがどうだったかというデータを出されたことがあると思うのですが、是非継続的に見せて頂けると、今後も有り難いなと思います。よろしくお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございます。サポート医研修は2年前にもアウトカムのデータを出させていただきました。また毎年、参考までに付けさせていただきます。

○祖父江委員

 もう1つは、認知症はいろいろな原因があると思うのですが、一番はもちろんアルツハイマーをターゲットにしていらっしゃると思いますけれども、ほかの例えばFTDとかFTLD型とか血管性とか、いろいろな原因があるのですが、その辺も、ちょっとこれは若干、それこそ認知していないかもしれませんが、長寿研としては全体を含んでやるという体制と考えていいですか。それともアルツハイマーがやはり中心、それが一番中心であることは間違いないでしょうけれども、その辺のスタンスというのを。

○国立長寿医療研究センター理事長

 医療に関してはアルツハイマーだけというわけにはいきませんので、全ての認知症、ただ、レビー小体型は祖父江先生などの所と御指導いただきながら、FTLDについても専門家と協調しながらやることは間違いありません。研究部分におきましては、やはりアルツハイマーが主体ですが、医療に関しては全ての水準でトップクラスでいたいと思っております。

○本田委員

 医療の提供の32ページ、「長寿型・地域包括ケアシステムの構築」とあるのですが、そういう在宅医療のモデルを作って広げていきましょうということなのでしょうか。スタートして介入を開始とあるのですが、ちょっと説明を教えてほしいです。

 あと、「人生の最終段階における医療の取組み」で、ACPの問題とか、いろいろ国のモデル事業と合わせて取り組んでこられたと思いますけれども、それの発展型として更にこういうことをされているという理解でいいのでしょうか。それを今後どうやって広げていくのかも、併せて教えてください

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 まず1点目の在宅医療推進に関しましては、在宅医療支援病棟などを中心にしまして、入院してくる方を通じて、登録医を、要は家族に関して役に立てるような支援をしていたわけですが、今年度に関しましては、退院してから直ぐに、特に掛かり付け医に渡すまでの3か月の間に非常に再悪化を起こしますので、その間に我々がアウトプットで電話して、1か月の間に2回ぐらい出ておりますけれども、そういう方にその後、無事かかりつけ医が対処できるようにしております。これを見ますと、このチームでいろいろな問題が解決できて再入院まで行ったという例がありますので、今年度も更に数が増えておりますので、ナショナルセンターとしては、こういうアウトリーチ開始後、初めての試みですし、この機構の構築案の中で病院が果たす機能を考えますと、この一般病院がアウトリーチをすることに関しては、これから大きく更に期待できる部分が多くなるのではないかと思っております。

 最終段階の取組に関しては、これも今までもずっとエンド・オブ・ライフケアというのを活動はしてきたのですが、その事業を終えた後に、内容、教育プログラムを私どもで作りまして、地域圏で、それを使って関係の方々に研修を受けていただきました。その研修を受けた方が、効果が受けた後と前後では、明らかにあったという結論が出まして、それも英論文化ができたという部分もありまして、これはいわゆる研修部分の実践、標準化という形に関して成果を上げたものと思っております。

○花井委員

1つだけ、「在宅医療と介護の連携事例集」ですけれども、これは事例集なので、No.2とか、そういうのが出るのかなと、今後続けていくお考えがあるかどうかということ。これはダウンロードとかもできるのですか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 できると思います。病院長の説明に付け加えますと、大島班で在宅医療に関するこれまで到達したエビデンス集として、これからの在宅医療というのをごく数週間前に刊行したところですが、まだまだ在宅医療もエビデンスが少ないけれども、少しずつ今後整っていくだろうと。一方、全く手つかずの分野が今、花井委員が御指摘になった連携と地域包括ケア全体のエビデンスといったものは全くないのです。ナショナルセンターで、これから取り組むべきことは、その連携や地域包括ケアに関するフィールド作りの端緒をやらなければいけない。それは連携事例集を通じて、より定量的なあるいは科学的な研究計画を立ててやっていく、それが長寿型・地域包括ケアシステムの構築の第一歩になるとそのように考えております。

○花井委員

 こういうナショナルセンターが標準的なものを作って、トップダウンで医療というのを今までずっとやってきました。地域医療構想からボトムアップで、それで作られていくものをナショナルセンターがどうやっていくかというのは非常に重要な点だと思いますので、一応これは、よい感じなので、また是非その辺のことをよろしくやっていただけたらと思います。

○国立長寿医療研究センター理事長

 認知症でもそうですが、集合知というシステムをいろいろと、好事例あるいは失敗事例といったものに学ぶものも含めて、集合知を活かしたボトムアップ型の左右ともどもを、これから是非、勉強していきたいと思っています。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。では続きまして、評価項目2-1の業務運営の効率化、3-1の財務内容の改善、4-1のその他業務運営に関する重要事項について御説明をお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

27ページを御覧ください。評価項目2-1「業務運営の効率化に関する事項」です。平成27年度の計上収支率は99.2%ということで、これは100%を割っておりますが、100%近い水準です。この分野での主な取組ですが、まず、制度の適正化として、超過勤務手当の縮減に取り組みました。この分野で、27年度、超過勤務手当を1割弱(前年度比)で実現したところです。また、非常勤職員の勤務時間数の見直しを行っており、これは研究事業に関して、後ほど申し上げますけれども、研究事業規模が拡大しておりますので、それを除いた研究外での非常勤職員については、1割程度の勤務時間の減少を27年度に達成しております。それから材業費等の削減のため、共同購入、在庫管理といったことに取り組んでおります。後発医薬品のシェアについても59.3%ということで、中長期目標で60%以上の目標に大変近い水準までもってきております。

 収入の確保ということで、レセプト点検、あるいは医療未収金の低減に取り組んでおります。医療未収金の比率は0.018%で、大変低い水準になっていると考えております。一般管理費についても縮減に、先ほど申し上げましたような給料制度などで努力をしておりますが、27年度においては、一般管理費が前年度と比べて600万余りの増加となっております。人勧の実施等の影響がありました。電子化の推進に関しては、病院情報システムの更新の検討に着手したほか、マイナンバーの関連での情報セキュリティー対策に取り組んでおります。また、その他の情報セキュリティー対策として、個人情報保護研修、情報セキュリティー研修、あるいは不信メール等については多数、当センターにも送り付けられてきますので、こういったものについて、随時センター内に情報発信をする。必要があれば紙情報も併用して、周知を徹底することを行っております。

 評価項目3-1「財務内容の改善に関する事項」です。外部資金の獲得の推進に関しては、前年度よりも若干増加した104,700万余りの受入れを行いました。寄付金については、受入れ1,170万余り、これは昨年度を下回る金額ですが、そういう水準になっております。資産及び負債の管理に関する事項としては、老朽化した病院施設の新築建て替え整備に、平成27年度に着手いたしました。財政等融資による資金調達を行い、償還確実性を確保しつつ行ったところで、長期借入金の残高が、期末では22億円余りという数字になっております。これらについて必要な事項を行ったということで、自己評価をBとさせていただいております。

28ページを御覧ください。財務状況に関して、その他、補足の説明をさせていただきます。左側の中ほどの損益計算書ですが、当期純損失としまして、14,200万円の純損失、赤字になったということです。背景として右側に運営費交付金収益の推移を書いております。予算ベースの折れ線グラフですが、金額で見ますと、27年度は26年度と比べて3億円余りの運営交付金の減となっております。また、これを財務諸表に反映します運営交付金収益で見たものが棒グラフになっていますが、27年度は26年度と比べ、6億円程度の収益の減となっています。このように大きくなっているのは、26年度が中期計画の最終年度だったため、運営交付金については全て、当該年度で収益化するということであり、27年度は前年度からの繰り越しに当たるものがなかったということがあり、運営交付金収益のベースでの減少が大きくなっているということです。

 それで29年度の、収支についての分析です。まず、医業収支に関して、29ページの上半分ですが、26年度の医業収益55億円余りに対して、27年度は56億円余りと、収益が拡大しております。拡大の背景ですが、主に外来収益の増加、15億円が16億円余りということで増加していることが寄与しておりまして、背景としては、リハビリをはじめとする診療科での外来機能強化を実施したことが影響しております。なお、入院収益については、前年度より微減となっております。費用について、医療費用については26年度は52億余り、これが27年度53億余りで、やはり若干増加していますが、医業収益の増がこれを上回っていることで、収資差のベースで対比しますと、27年度は前年度よりも収支差が若干拡大しているということです。

 次に医業外収支です。収益に関しては、26年度42億円余りが、27年度41億円余りということで、1億円余り減少しております。この収益減の主な要因ですが、先ほど申し上げました運営費交付金収益が63,300万円減少しておりますので、これが影響しているということです。そのほかの収益については、研修収益については8,200万円、研究収益については32,900万円の増ということで、大幅にそのほかの収益は増加させることができたのですが、運営費交付金収益の6億円の減を全てカバーするには至らず、1億円程度の医業外収益の減になっています。医業外費用ですが、26年度は44億円余り、27年度は46億円余りとなっており、医業外費用は拡大しております。人件費を中心とした先ほど御説明しましたように、縮減に努力したわけですが、全体として2,000万円程度の増、また経費に関しては、特に研究に関する委託や材料費等の増加がどうしても出てきますので、そうしたことが7,300万円の増。それから研究に関する機器等の原価償却費が3,000万円程度の増となっており、全体として医業外費用が増加しているということです。医業外の収支に関しては、この収支差が拡大しているということで、26年度がマイナス2億円余りに対して、27年度はマイナス48,000余りになっております。医業収支と合わせた総収支算については、26年度は11,000万の黒字に対し、27年度は14,000余りの赤字になったということです。ただ、運営費交付金の収入が27年度はかなり減少があった中で、費用の減少と収益の増に努めることができたのではないかということで、この項目を、Bという自己評価にさせていただきました。

30ページを御覧ください。「その他の業務運営に関する重要事項」です。法令遵守と内部統制の適切な構築ということです。内部統制に関しては、法律に基づく監事、会計監査人、内部監査等の実施のほかに、新たに内部統制推進規程の整備ということでの体制整備を行っております。

 それから研究の不正防止についても、研究活動規範委員会をはじめとする体制に加え、27年度は文書の重複を検出するソフトウェアーの導入、外部業者の活用による文書剽窃や引用の記載漏れ、画像の不自然な箇所のチェックといったことを開始しております。

 調達等の合理化の取組に関して、特に27年度は電気の需給調達について、一般競争入札を導入することをいたしました。この結果ですが、使用料金とありますが、2610月から273月にかけての期間と比べ、電気代については1割程度減少しました。これは為替の変動による電気料金の変動などの影響もありまして、単純比較はできませんが、減少に資することができたと考えております。

 施設設備計画については、先ほど申しましたけれども、外来棟の建て替え整備については27年度に着工しております。新外来棟では、現在の診療科機能を維持しつつ、新たに診療科横断的なロコモフレイルセンター、高齢者感覚器センター、歯科口腔先進医療開発センターの設置を念頭において整備を進めております。

 人事に関する方針ですが、人事交流については、AMED、国立病院機構、あるいは厚労省と交流を行っております。また国立大学法人などにも人材を出したりしております。クロスアポイント制度について、27年度中に準備をしまして、284月から研究者1名の受入れを開始したところです。以上のようなことで、必要な事項を実施していることで、自己評価をBとしております。以上です。

○永井部会長

 御質問、御意見をお願いします。

○花井委員

 ちょっと気になるのですが、後発医薬品のシェアですが、これは新基準で、国の基準として、ジェネリックではないものが分母にあったまま、ジェネリック発売されているのを分母にして新基準で国の目標が78割というようになっている中で、この基準でやっているのですね。だとすると、6割目標というのは立ててもちょっと少ない気がするのですが、これは難しいですかね、7割ぐらいにするのは。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 その点に関しては、中長期目標で現在60%以上と定めていることがありまして、27年度中におおむねその水準までいきましたと。今後は、28年度において、この60%を越えることをまずは目標として、中長期目標に基づく目標として取り組んでいこうと思っております。国の29年度に70%以上というものと近い水準で取り組んでいかなければいけないだろうとは考えております。

○花井委員

 これは新規基準でですよね、分母はジェネリックのある医薬品の分母ですね。最初の目標設定のときは旧基準だったのではないのかな、それによって60%が変わってくるし、それと問題なのは、これによって医業収入に関わってきてしまうので、病院のコンピュータをちょっといじると本当は上げられるし、もしその基準が、旧基準と新基準の話が混じっているのであれば、早い段階で国が求める基準になるようにしたほうがよいかと思います。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 はい、ありがとうございます。

○祖父江委員

 非常に厳しいところで頑張っておられるのが非常によく分かるのですが、これはほかのナショナルセンターにも同じようなことをお聞きしているのですが、この長寿センターは、人件費比率が、ほかと比べてかなり高い、トップに近いと思うのです。ですから、かなり厳しいところでやっておられることが分かるのです。もう一つ、財務の構造と言いますか、医業収入がたくさんというか、かなり右肩上がりでどんどんいく場合はそれを注ぎ込んで研究のほうに回して、あるいは人事に回して、右肩上がりにすることは発展的にできると思うのです。ここの長寿センターはなかなか医業収入が爆発的に上がることは考えにくいと思うのですね。一方で、例えば先ほどのオレンジフラットホームなども、立ち上げのときは資金がバーっと出ますけれども、例えば10年、20年維持していこうと思うと、どういう構造に予算的な、人員的なものをやっていくのかというのは厳しい基盤的な整備が必要だと思うのです。そういう財務の今後の、これはちょっと大きな問題でありますが、構造的な問題がそれぞれのセンターにあって、うまくいっている所もあるのですが、それは主には医業収入が非常に活況を呈しているということがあって、まあ、今後どういう形を考えていかれるのか、もし考えておられれば教えていただけると有り難いです。

○国立長寿医療研究センター理事長

 外部研究収益が、ほかのセンターと比べてやはり少ない、これは、もう少し取らなければいけないです。それは認知症に関しては、まだシーズが製薬会社で近いものが、画期的なものが少ないために、積極的に当センターのシーズも含めて外部研究費の獲得を増やすのがまず第一であろうと思います。ロボットについても同じような形のものになっていかなければならないと。病院についてはおっしゃるとおり、確かにどんどん増えるというわけにはいきませんけれども、新しいモデル病院にすることによって、より営業効率を高めるようなことを、例えば感覚器センターなどでは、若手の医師を中心に考えていただいているようなので、そこに期待しているところです。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 病院で、私どもが対象とする患者さんの内容からしますと、そこから病院の大きな医療収入を上げるのはなかなか難しいです。ただし、先ほど御紹介にもありましたけれども、外来などは確実に患者数も点数も上がっているのです。それから入院も、残念ながら26年度途中で、看護体制が101になったものですから、そこの不利がまだ続いているのですが、しかし患者数は普通にゆっくり増えておりますし、27年度から28年度途中まで見ましても、入院の中の診療点数も101の中でかけておりますので、大きな収入源を上げるというのはなかなか難しいものがありますけれども、私どもの長寿に見合った内容、例えば認知症ケア加算等、患者さんのニーズに合わせるときに、そこで診療を伴っても、相当増えておりますので、その活用をどんどん増やすということがあるのかなと。ただそれは大きな収入になるというようにはならないと思いますけれども、今よりは変わっていくと思います。

○祖父江委員

 これはサポーティブな意見として言っておりますので誤解されないようにしてほしいのですが。それからもう1つ、今の理事長のおっしゃったのは、企業との外部資金という意味で、これを増やしていこうと考えておられるというように理解してよろしいのですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 いいえ、やっぱり企業なり、AMEDを含めた公的な研究費の獲得が、ほかのセンターに比べて不十分なものですから、それはやはり少なくても、本年度は2倍というような指令はしているところですが、十分、それを身に染みて、不足している事態だと思っています。

○永井部会長

 手術室がありますけれども、どういう手術がされているのですか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 数は多くはないのですが、一般外科の手術、泌尿器科の手術、整形外科の手術、耳鼻科、眼科、一応、それがされております。

○永井部会長

 何か、長寿特有の手術を少し増やして、医業収益を図るという計画はあるのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事・病院長

 フレイルの方がどんどん増えております。フレイルの方というのは、手術適応が非常に厳しくなっており、そういうフレイルのある方とない方を比較しますと、ある方は手術の後の合併症が多いし、手術の回復が悪い。つまり、そういう手術に対して条件の悪い患者さんがおりますので、そういう方に対する新しい技術というのはまだ開発途上ですので、今すぐにうちうちの技術でそういうことに上乗せできるようなのがあるかと言われますと、そこは難しい部分があります。眼科とか感覚器の部分と、泌尿器科の部分とかは少しずつアップしております。外科に関しては、例えば、がんの手術適用がしっかりある方でも、認知症を合併していて、それをどうするかとか、そういう方に対する相談支援には積極的にやっていますけれども、それはイコール手術の数が増えることにはなりませんので、なかなか、そこは難しいと思っております。

○深見委員

30ページの人事に関する方針の所の、「女性の働きやすい職場環境の整備」が上げられていると思うのですが、具体的にどのような整備を考えていらっしゃるかという点です。それと、現状の女性の比率、看護師等々、たくさんいらっしゃると思いますけれども、そうではなくて、幹部と言ったら何ですけれども、執行部というか、施策等に関わるところに女性の方がどのぐらいいるか、そこのところを少し教えていただきたいのですが。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 女性の働きやすい職場の整備としては、当センターの場合で院内の保育所に当たるものをもっておりまして、これを利用していただくことが中心になると思います。女性の幹部職員の状況ですが、研究部門での部長級まで女性の職員がいらっしゃるというのが現状です。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。それでは続いて、法人の監事から業務の監査結果等をまとめた監査報告について御説明いただきたいと思います。続いて、業務運営の状況、今後の課題、改善方針等のコメント。更に理事長からもコメントを頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター監事(二村)

 監事の監査報告、資料2-3、監査報告を御覧ください。前段の独法の通則法に求められていますが、法人の業務運営全般を対象とする業務監査。もう1つ、財務諸表を対象とします会計監査について監査を行ってまいりました。2の監査結果にもありますように、業務監査は法令等に準拠している旨、会計監査は、会計監査人の監査結果が相当である旨の意見表明をしており、どちらも特段の指摘事項はありません。1の所に関連しまして、監査の方法に関連しまして、業務運営状況について報告させていただきます。

 月1回、理事会に出させていただいております。構成メンバーは理事長、病院長、理事の先生です。オブザーバーとして、研究所長と監事と参加させていただいており、大変活発な意見が出され、審議決定されているのを確認しております。このほかに、運営会議とセンター長会議にも出させていただき、会議を通して問題意識を共有しており、取り組むべき案件が積極的に出ているのも確認しております。

 先ほどと少し重なりますが、資料2-2の業務実績概要説明書の30ページにありますが、内部統制委員会が立ち上がり、出させていただいております。リスクの洗い出しに努めていることを確認していますので、今後は更なるリスクを認識し、整備・運用されていくことと思っております。その下の「研究不正の防止」に関しても、早い段階でチェックできる仕組みに取り組んでいるというのが会議を通して確認しております。

 また、27ページに戻りまして、ここも細かいところではありますが、監事の監査重要事項として、医療未収金の回収について、ここ数年、監査室を通して取り組んでまいりました。金額のグロスの規模としては、それほど高くはありませんが、古いものや少額のものを今年度、貸し倒れ処理されて、今後、長期滞留しないような取組をされていくことも確認しております。

 最後に、課題ですが、外来棟の建設工事が始まってまいりました。財投の償還も平成32年より始まってまいります。本当に運営交付金が減少の中、とてもよく取り組んで見えると思うのですが、より効率的な運営を迫られており、意識も、理事長をはじめ皆さん大変高く、今後も効率的な経営を見守っていきたいと思っております。以上です。

○永井部会長

 理事長からお願いします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 ありがとうございました。当センターはこの6月に、医師65名のうち16名が新しい医師になりました。優秀な方も来ていただけるようになり、また研究所でも募集をしますと、数倍の良い研究者が来ていただけるようにようやくなりました。この限られた財源の中でやっていくためには、残念ながら、まだまだ労働生産性を高めていかなければ赤字を克服できない、病院の建て替えに関して3億円以上の利益を上げないと借金を返せないという厳しい状況がございますので、今でも身体を壊しながらも相当頑張ってやっていただいてはおるのですが、なお、労働生産性を高めて、頑張っていく所存であります。どうも御評価、ありがとうございました。

○永井部会長

 長寿医療研究センターの平成27年度業務実績評価にかかる意見につきましては、以上で終了いたします。どうもありがとうございました。

 続いて、事務局から今後の流れについて御説明をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 今後の流れについて御連絡申し上げます。本日御議論いただきました業務実績評価につきましては、この後、当部会における御意見や法人の監事、理事長のコメントなどを踏まえ、厚生労働大臣による評価を行いまして、その結果について法人に通知するとともに、公表いたします。また、決定した内容については後日委員の皆さまにお送りさせていただきます。本日配布しました資料の送付を御希望される方は、事務局より送付いたしますので、机上にそのままにして御退席いただきますようお願いします。

 最後になりますが、佐藤課長から一言、お礼の言葉があります。

○医政局医療経営支援課課長

 委員の皆さまには御多忙の中、3日間にわたり、御専門の立場から御意見、御助言を頂きまして誠にありがとうございました。当部会におきまして皆さまから頂きました御意見を踏まえ、厚生労働大臣の評価を検討させていただきたいと考えております。皆さまには引き続き当部会の御協力をお願いするとともに、今後もナショナルセンター、6法人への御指導を賜れば幸いと考えております。本日を含め3日間ありがとうございました。

○永井部会長

 本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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