ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第11回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2016年2月19日)
2016年2月19日 第11回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成28年2月19日(金)18:00~
○場所
厚生労働省省議室(9階)
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)
○議事
○滝室長補佐 定刻になりました。ただいまより、「第11回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会」を開催いたします。
本日は、御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力をお願いいたします。
また、傍聴の方は傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。
それでは、会に先立ちまして、課長より一言お話がございます。
○正林健康課長 大変悲しいお知らせがありました。厚生科学審議会予防接種分科会の委員であり、当部会の部会長でいらっしゃる庵原俊昭先生が病気療養中のところ、まことに残念ですが、本日御逝去されました。
庵原先生には、これまで厚生労働行政、予防接種行政に多大なる御尽力をいただきました。私自身も感染症対策を10年ほどやっていましたけれども、この間、庵原先生からは言葉にあらわせないほど数々の御指導をいただいておりました。この場を借りて感謝を申し上げるとともに、御訃報に際し、心からご冥福をお祈りいたしたいと思います。私からは以上です。
○滝室長補佐 それでは、進めさせていただきます。
初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、委員10名のうち伊藤委員、坂元委員、西島委員、野口委員、福島委員、細矢委員、森委員、山口委員の8名に御出席いただいております。また、庵原委員、小森委員からは御欠席の連絡をいただいております。
現時点で、厚生科学審議会の規定により定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを御報告いたします。
ここで、新しく就任された委員の方を御紹介いたします。早稲田大学政治経済学術院教授、野口晴子委員です。
○野口委員 早稲田大学政治経済学術院の野口と申します。まだ何も知らないことばかりですので、皆さんからいろいろ学ばせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○滝室長補佐 また、本日は3名の参考人をお呼びしておりますので御紹介いたします。
ファイザー株式会社ワクチン・リサーチ部部長、小河原修参考人です。
○小河原参考人 小河原でございます。よろしくお願いします。
○滝室長補佐 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長、小田切孝人参考人です。
○小田切参考人 小田切でございます。よろしくお願いいたします。
○滝室長補佐 同じく国立感染症研究所、インフルエンザウイルス研究センター第四室長、信澤枝里参考人です。
○信澤参考人 信澤です。よろしくお願いします。
○滝室長補佐 開会に当たり、福島健康局長より御挨拶を申し上げます。
○福島健康局長 昨年10月から健康局長を務めております福島でございます。
本日、御出席の先生方には遅い時間、または御多忙のところ御出席いただきましてまことにありがとうございます。また、日ごろから感染症対策予防接種対策全般につきまして、またさらには健康行政全般につきまして御指導、御協力を賜りまして改めて御礼申し上げたいと思います。
また、先ほど課長から報告申し上げましたように、庵原先生は残念なことに本日御逝去されたわけでございます。私もちょうど2009年の新型インフルのときに感染症課長をしておりまして、いろいろな形で御指導を賜りました。本当に残念なことでございます。心から御冥福をお祈りしたいと思います。
この研究開発生産・流通部会でございますけれども、これまで10回開催をされているわけでございまして、このワクチンの研究開発の促進策の検討や、あるいは関係団体からのヒアリングもあってさまざまな御意見を頂戴しているわけでございます。本日は、きょうの議事次第にございますように承認臨床試験の環境整備や、2015年、2016年シーズンのインフルエンザの流行状況、細胞培養季節性インフルエンザワクチンの実用化の取り組み、あるいは世界に先駆けたワクチンの開発状況について御説明をいただくということで、これに基づいて委員の先生方に御議論をいただきたいと考えているところでございます。ぜひ、先生方にはそれぞれのお立場、専門的な立場、科学的な見地から活発な御議論をいただきまして、今後の私どもの予防接種行政について示唆に富む御議論をしていただければと思います。
引き続き先生方の御理解、御協力をお願い申し上げまして、簡単ではございますけれども、冒頭の御挨拶にさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
○滝室長補佐 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
(プレス関係者退室)
○滝室長補佐 それでは、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第、配付資料一覧、委員名簿、資料1~資料4、参考資料については1-1~1-2、2-1~2-4まで御用意させていただいておりますので、配付資料一覧と照らして不足しております資料がございましたら事務局にお申しつけください。
次に、審議参加に関する報告をいたします。本日、議事内容において個別に調査審議される品目はございませんので、本日の議事への不参加委員はおりません。
それでは、本日の議事進行についてですが、部会長代理である西島委員に議事進行をお願いしたいと思います。ここからの進行は、西島部会長代理に議事進行をお願いさせていただきます。よろしくお願いします。
○西島部会長代理 ただいま御紹介いただきました西島でございます。庵原先生の代理ということで、本日務めさせていただきます。
私も今、庵原先生の本当に悲しい残念な訃報を聞きまして、かなり動転しております。もう皆さんは御存じのとおり、庵原先生はこの分科会においては本当に最適な先生でございました。その先生が亡くなりまして、この分科会はこれから大事な柱を失ってしまったということで皆さんも大変御心配されているかと思いますけれども、その後、皆さんとともにこの分科会は、庵原先生の遺志を継ぎながら頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日は報告事項というか、そういったような議題がほとんどでございます。まず、初めに幾つかございますけれども、伊藤委員より資料1について御説明をお願いしたいと思います。議題は、「小児臨床試験の環境整備について」でございます。伊藤先生、よろしくお願いいたします。
○伊藤委員 国立病院機構の伊藤でございます。私どもの三重病院の院長を務めておりました庵原先生が亡くなられたのは大変残念に思っておりますし、今日ここで提示させていただく小児臨床試験も庵原先生と一緒にやらせていただいた仕事でございます。
2006年から、H5N1の鳥インフルエンザのワクチンの開発を成人も小児も含めてずっとさせていただいております。また、N7N9の開発を引き続きさせていただいております、ここで提示させていただくのは2009年のときのH1N1pdm、当時の新型インフルエンザと言われているものの小児と成人の医師主導治験をさせていただいたものを参考に提示させていただきながら、小児のワクチン開発についての御説明させていただきたいと思っております。
ページをめくっていただきますと、その当時、2009年のときH1N1が流行したときは、同時にインフルエンザのワクチンの国内と国外で接種量が違っているという状況がございました。そのためH1N1についての有効性を検証するだけでなく、WHOの投与量にあわせたらどうかということをあわせて検討した試験がこれでございます、その当時、国内で販売をいたしておりました4社のそれぞれのワクチンを用いましてWHOの推奨用量の検討を4社の試験として行った試験結果がこれでございます。
そのとき、迅速に結果を出したいということもありまして小児の医師主導治験を行っております。そのときの治験調整医師4社分の4試験の治験調整医師を私がさせていただいたので、ここにこういう形でまとめさせていただいております。
3歳未満と、3歳から6歳までと、6歳以上の3つの小児の群に分けて検討を行っております。6カ月以上3歳未満については0.25ml、それから現在3歳以上については0.5mlということで、それ以前のものに関しては0.2ml、0.3mlというのと、それからもっと小さい子供に対してもっと少ない量で試験を行われておりましたが、1社分は比較として既存用量のものを接種させていただきましたけれども、それ以外のものについてはWHOの推奨用量を接種させていただきました。
もう6年も7年も前の試験ですので、内容については簡略にさせていただきたいと思いますが、そこに提出させていただいているとおり、H1抗体価の40倍以上の人が70%を超えると有効という基準ですが、星印のところが40倍、70%ですのでご判断いただけるかと思っております。
結論だけ4社分のものを先に申し上げさせていただきますと、2枚めくっていただきますと「まとめ」と書いてあるところがありますが、その当時4つの医師主導治験をまとめた結果を年齢別に解析をしております。
2009年の流行当初では、全ての被験児というのはH1N1pdmに対する抗体を持っておりませんでしたが、3歳未満児、3~6歳、6歳以上の順で1回接種後の抗体価というのは高くなった。A型に関しては季節性の香港型とか、あの当時のソ連型と言っていたものも含めてですが、2回接種をすると有効なワクチンであるということがこの結果からわかりました。
ただ、B型に関しては抗体保有率がもともと低かったのですが、2回接種後も6歳以下ではあの当時の臨床試験の結果では有効な免疫原性が得られなかったというようなことがわかりました。
この試験の被験者の多くは国立病院機構の職員の子供さんですが、迅速に3カ月ぐらいでこういった形で結果を提供させていただいたと記憶しております。
ただ、小児に多く使われているワクチンは3歳とか4歳とかということではなく、生まれてすぐの1歳未満の子供達が多くて、そういう人たちのリクルートに大変手こずるということがワクチンの開発において企業の方からの問題として言われているのだろうと思っております。
5ページ目をごらんいただきますと、開発環境の問題点として既にわかっているのは、こういった被験者の確保ですが、今、御説明させていただいた小児のインフルエンザのワクチンについては病院をベースにさせていただいておりますけれども、そういう規模の大きなところでは臨床研究推進室やコーディネーターなどの開発環境が整っているのですが、健康な小児がいないというのが大きな問題だと思っております。
クリニックでは夜間・休日などの、もし万が一重篤な有害事象が発現したときに緊急対応できないとか、施設のキャパシティーの問題があって施設当たりの実施例数が少ないので開発が大変だというような環境上の問題がございます。
こういった子どもを対象にした、特に1歳未満の子供を対象にした試験に関しては、実は国立病院機構でも企業主導の、例えばロタのワクチンのような形での開発のお手伝いをさせていただいた経験がございますが、そういった経験を踏まえてどういう回答ができるのか考えております。
こういった開発時の問題とあわせて「小児臨床試験の環境整備に向けた課題」として考えられているのが、新たな疾患のワクチンの開発では、特に発症抑制効果を評価する臨床試験の必要性が高まっておりますし、また、まれな副反応についても精度の高い研究とか調査実施が要求されておりますし、こういったこともあわせてクリニックでの被験者のリクルートのメリットと、それから病院の精度管理ができることの、両方あわせたような開発環境の設定が必要だろうと思っております。
また、疾患発症を確認するための抗体価の測定というのは国内ではある程度、数が限られておりますので、オールジャパンで開発のお手伝いをしていただけるような体制づくりがどうしても必要なのではないかというところでございます。
これを考えますと、2つの方法があるのだろうと思っております。7ページに書きましたとおりで、地域の中核病院にクリニックのから該当する被験者の方を御紹介いただいて地域の中核病院で実施するという方法もあろうかと思いますし、それから逆に小児科クリニックをメンバーとして病院のほうの中央倫理審査委員会で審議、精度管理するという方法もあろうかと思っております。
それは、その地域、地域に応じて方法論が幾つかあるのだろうと思っておりますが、どちらかというと治験のような話で重装備でやろうと思うと地域の中核病院に被験者を集めるほうが多分比較的やりやすいかと思ってはおりますが、場所によってはどちらでもできるのだろうと思っております。
その全体をまとめますと、最後の8ページになりますように「小児ワクチン開発ネットワーク構想」のようなものができるのではないかということでございまして、現在H7N9のワクチンの開発をさせていただいておりますが、それにあわせてある程度こういった体制整備ができないかということについての指示をいただいているものと思っておりまして、こういった形の体制について実際のモデルとなるものができるかどうかについて検討していきたいと思っているところでございます。
これが、小児の開発環境における問題点、私どもの過去の経験からの認識でございます。説明は、以上でございます。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
小児の臨床試験についてお話を伺いましたけれども、今のお話につきまして御質問等はございますでしょうか。
福島委員、どうぞ。
○福島委員 大変すばらしい構想をありがとうございました。ワクチン開発に向けたシステマティックな環境というのは整備されるべきと思っていますので、ぜひこの実現に向けて先生のお力をいただきたいと思います。
スライドの8枚目のポンチ図で、「医学・疫学専門家」と、「疫学」を入れてくださったのはすごくうれしいと思いました。私は治験というものには携わっておりませんので、どちらかというとその外の仕事にかかわってくることが多かったのですが、ワクチン開発という大きな枠組みにおいて疫学者が貢献できることを常々考えてはいるんですけれども、治験の範囲ではありませんが、1つ疾病負担ですね。新たなワクチンを開発したときに、どれだけの病気が予防できるのか。今、日本でどれだけの疾病負担があるのかが意外とわかっていないことが多いんです。サーベイランス等で把握できるものもありますけれども、把握できないものについては今、例えば厚生労働省の研究班に下ろしているとか、あるいはワクチンメーカーさんのほうで個別に調査されたり、委託の研究をされたりというような現状であると思います。
こういう全国の病院のネットワークがありますので、その中で、疾病負担を明らかにすることが必要な新規ワクチンについても、調査の枠組みなどをぜひ一部組み入れていただければというような希望でございます。
○伊藤委員 ありがとうございます。とりわけ小児に関してはプラセボコントロールの試験を置くのが大変困難な状況でございますので、そういう意味ではやはりワクチン接種が始まって、それで疾病の負担がどの程度減ったのかというのは疫学調査に依存するだろうと思っております。
それもワクチン接種が始まる前の段階のデータがきちんとしていないと、そのワクチン接種が始まってからのデータが何を意味しているのかがわからなくなると思っておりますので、こういうワクチンが今後出てくるということがわかった段階でデータの収集を始めなければならない意味で疫学の先生方に御協力をいただいて、どんなデータを事前から取っておく必要があるのかいう御示唆いただくのが臨床現場の者にとっては必要だと思っているので、こういった形で入れさせていただいたところでございます。
○西島部会長代理 ほかに御質問はございますか。
細矢委員、どうぞ。
○細矢委員 国内で例えば新規の子供用のワクチンを開発しようと思うと、先ほど触れられたようにかなり大規模なものの有効性、安全性を見ようと思うと、恐らく万の単位の被験者が必要になるかと思うんです。そうすると、やはりこういった方法しかないと私も思うのですが、そうするとかなりたくさんのクリニックを入れることになって、制度上また少し問題が出ないかなというふうに不安なんですけれども、こういった先生のお考えのシステムでどれぐらいの被験者を対象とした治験が組めると考えておられるのでしょうか。
○伊藤委員 大変難しい御質問を受けていると思っております。対象によって随分変わると思っておりまして、今この世にいらっしゃる方々を対象にするときには比較的計算しやすいのですが、多くの小児を対象とするワクチンというのはこれから生まれてくる人を対象にして、そのリクルートをいかに効率よくするのかという問題だと思っております。それは、小児科の先生方とのネットワークをいかにきちんと築けるのかという病院サイドの問題と、それからその地域の先生方との結びつきによって変わると思っております。
実際、私どもも今このお話をいただいて検討を既に進めておりますが、この最後のところのページでM病院と書いてあるところ、これは三重病院を念頭にしているところで、庵原先生の後を継いで仕事をしてくれている菅先生なども含めて、地域との連携が大変うまくいっていますのでお願いしてすぐに機能すると思っていますし、そういうのをうちの病院のグループの中で数を広げていくことによってある程度対応ができるでしょうし、そのノウハウをほかの病院にも広げていくことが、やはり先生がおっしゃるように多くの被験者の方に参加していただいて迅速にある程度の数を集めていくことだろうと思っております。そういうことで、こういった絵を書かせていただいております。
○西島部会長代理 ほかにいかがでしょうか。
山口委員、お願いします。
○山口委員 本当に小児の治験の難しさを非常によく教えていただき、ありがとうございます。
以前のH1N1のときも海外はかなり大規模な治験をやっていたような気がするのですけれども、特にヨーロッパのほうなどは割とそういうワクチンの治験が大規模にできるという環境、あるいはそのインセンティブはどこにあるのか。そこら辺を先生にお伺いしたいと思います。
○伊藤委員 我が国の治験は厳格なデータは取れるんですけれども、非常に高額でなかなか手こずって大変というのは今、言われているところで、Nの数をふやすのが難しいのはコストの問題がやはり一番大きいと思っております。
それから、2009年のときの治験で実は1歳、2歳の子供の採血にてこずって、てこずってしようがない。大人であれば1日に10人とかできるのですけれども、2歳以下の子供は一つのクリニックで2人とか3人採血するのも大騒ぎの状態です。何が一番大変かというと、採血をさせていただくというのが大変で、Nの数を稼ぐのに苦労すると思っております。ですので、逆の言い方をしますと多くの医療機関の医療従事者の人に参画していただかないとNを稼ぐのが大変というのが一番だと思っております。
○山口委員 もう一つよろしいでしょうか。有効性に関しては割と統計学的にどのぐらいのものを出せばというか、そういう計算は割と簡単でしょうけれども、もう一つは安全性の面でどこまでのものを最初に拾うべきなのか。特に多分、乳児は非常に難しいというのは先生そのとおりだと思いますし、例えば小児にしても6歳以上にしても、0.1%の安全性を拾おうと思うと3,000人という規模に多分なろうとは思うんですけれども、その辺をどういうふうにどこまで治験の中で見ておく必要があることになりますか。
○伊藤委員 治験で見ておりますのは、抗体価の推移を見るところが多くて、抗体価の推移を見るだけのことであれば多分、最低100人から300人見ればある程度十分です。
ただ、安全性でまれな有害事象を追いかけようと思うと、ルール・オブ・スリーで見ていくと0.1%発現するはずの有害事象を見つけようとすると3,000人を追いかけないとその中に入ってこないというところがございます。
ですから、何を見ようとするのかによってNの数は違うのですが、健常の子供相手にするというということで、やはりまれな副反応であったとしても、やはりディテクトする必要があるところで難しいと思っております。
ですから今、私どもがさんざんやっておりますH5N1にしても、Nの数からいうと今1万人ぐらいの人にご参加いただいていますが、ギラバレーは幸い私が関知している限り1例も起こしておりませんけれども、逆にギランバレーをディテクトするためには30万人でワクチンの接種をしないと、なかなかその評価をするのは難しいというのが現状ではないかと思っております。
○西島部会長代理 ほかによろしいでしょうか。どうぞ。
○坂元委員 先生に1点お伺いしたいんですけれども、その治験に参加するということに対して多分、欧米人と比べると日本人はちょっと後ろ向きなところがあるかと感じますが、特に小児の場合ですね。やはりワクチンの開発というのは多くの病気を防ぐために非常に必要なことで、例えば啓蒙普及という観点ですね。お母さん方に、ワクチンの開発というのはやはり欠かせないものだという啓蒙普及をやるという観点からはどんな方法がいいのか。
例えば保健所などでは乳児健診で、川崎市の場合だと年間1万何人が受診するわけですね。そういう場での例えば啓蒙活動とか、何かそういうものができるのかなとちょっと思ったんですけれども、先生の御意見をお伺いしたいと思います。
○伊藤委員 大変、厳しい質問だろうと思っております。実際、我が国の子供のワクチンの接種率が100%にならない状況なので、それを100%にすべく皆さんで努力をしなければいけないと思っておりますが、やはりワクチンでこういった病気が防げてよかったんだと、先ほどの疫学データじゃないですけれども、ワクチンが開始されてこれぐらい病気が減っているんですということを見せて差し上げるのが自分たちも必要だと思うのではないか。
一つの考え方として、ワクチン接種をしないがゆえに例えば風疹のようなものによって問題が発生したりとか、そういうことが言われたりしますけれども、必ずしも脅すことがいいことではないのだろうと思っていますので、実際にこれぐらい効果があるので、皆さんも受けると効果があるというもう少しポジティブなキャンペーンができると個人的にいいのではないかと思ったりもしております。
○西島部会長代理 ほかによろしいでしょうか。本当に小児の臨床試験の難しさがよく理解できました。また、いろいろな意見をいただきまして、今後とも伊藤先生にはぜひよろしくお願いしたいと思います。
それでは、次の議題に移らせていただきます。2番目として「インフルエンザワクチンについて」ということでございますが、これについてはお2人の参考人の先生からお話を伺いたいと思います。
まず、最初は「2015/16シーズンのインフルエンザの流行状況について」、国立感染研の小田切先生にお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小田切参考人 ありがとうございます。それでは、資料2に沿って御説明させていただきます。
ことしのシーズンは国内も海外も10年ぶりぐらいに流行の開始が遅いというのが特徴でありまして、調べるべき流行株の収集状況が例年よりはおくれているということで、途中経過を報告させていただきます。
資料をめくっていただきまして2ページ目になりますけれども、これはWHOに報告になっています北半球と南半球の流行のパターンであります。北半球は今、申し上げましたように流行の開始が遅いということで、本格的には2016年に入ってから立ち上がってきているというのが大体共通して見られています。
今シーズンは、北半球では主にH1N1pdmウイルスが流行の主流であるという国が非常に多いというのが去年とは違っています。去年はH3N2が主流でした。
それから、南半球は下のパネルになります。これは半年、流行のピークがずれていますけれども、南半球は流行はH3N2が主流であって、現在、幾つかの国でインフルエンザの流行がありますけれども、B型が流行の主流で、2つの系統のうちビクトリア系統が南半球で主流です。
次のページの3枚目ですけれども、これが国内のウイルスの検出状況であります。今、申し上げましたように、本格的に始まったのは第1週以降のところから立ち上がってきまして、国内でもH1pdmウイルスが流行の主流である。
めくっていただきまして、日本地図のついたページですけれども、それが現時点で検出されているA型ウイルスの亜型およびB型の比率をあらわしています。H1pdmがほぼ50%以上を占めているということで、今シーズンの主流がH1pdmウイルスです。
B型は2種系統、ビクトリア系統、それから山形系統があるのですが、かなり拮抗している状況で、わずかながらビクトリア系統が多いという状況です。
次の5ページ目になりますけれども、これが今シーズン使いましたワクチンに入っているウイルス株であります。上のほうが、WHOが推奨したワクチンコンポーネントでありますけれども、ほとんどの国では3価のワクチンを使っていますので、WHOも3つのウイルス、H1pdmはカリフォルニア/7/2009、H3N2はスイス/9715293/2013イルス、それからB型は山形系統のプーケットを推奨しています。それで、4価のワクチンを使用している国向けには、もう一つB型のビクトリア系統のブリスベン/60をWHOは推奨しました。
下のほうは日本のワクチンでありまして、日本は今シーズンから4価のワクチンが導入されていますので、4種類のウイルスがワクチンの中に入っています。H1、H3、山形系統は、WHOの推奨とほぼ同じでありまして、ワクチン製造株としてはカリフォルニア/7のX-179A、H3N2はスイス株のNIB-88、型は山形系統のプーケット、それからビクトリア系統はテキサス/2/2012、これが入っているものが使われています。
ここからは、それぞれの亜型ごとの特徴に関して御報告申し上げます。
めくっていただきまして、6ページ目にサマリーをつけておりますけれども、7ページ目を先にごらんください。これが現在はやっている遺伝子系統樹で見たグループ分けなんですけれども、ことしH1pdmウイルスの主流は6B.1に入るウイルスがほとんどであって、国内で取れている71%はここに入ります。海外でもほぼ、ここに入るウイルスが主流になっています。
ちなみに、このワクチンに使っていますカリフォルニア/07/2009は系統樹の下の方にあります。カリフォルニア/07から比べますと遺伝的にはかなりダイバースしてきていますけれども、抗原性はほぼ一様でありまして、違いありません。すなわちこの6Bに入る全てのウイルスはカリフォルニア/07類似株です。
めくっていただきまして、8枚目のスライドになります。これは、現在流行しているウイルスと、それからワクチン株の抗原性の類似性を円グラフでまとめています。左側がワクチンに使われました野生株の卵で分離したウイルス、カリフォルニア/07、それから右側の円グラフが実際にワクチンに製造したウイルスのX-179Aというものをまとめています。
この円グラフをごらんいただきますと、まず野生株のカリフォルニア/07に対してはほぼ100%、流行株と抗原性が類似しているということがわかります。
一方、製造株X-179Aはオレンジ色で示していますけれども、13%、これは8倍以上というのは、いわゆるワクチン株に比べて流行株の変異株のパーセンテージですが、調べた13%の流行株はワクチン株と抗原性が乖離していたということですが、これはほぼアクセクタブルな比率であって、ワクチン製造株と流行株の抗原性は一致しているということがこの円グラフからわかります。
戻っていただいて、6枚目にそのことをサマリーにまとめています。細かい説明は省きます。
そして、また行ったり来たりして申しわけありませんが、9枚目が海外で流行しているH1の状況であります。海外におきましても、H1の主流の国が多い。特に西アジア、東ヨーロッパからの報告が多いという状況です。それから、ほとんどの流行株の抗原性はワクチン株のカリフォルニア/07/2009に類似している。それから、遺伝子のグループ分けからしますと6B.1に入るのが主流である。それから、昨シーズンからの流行株の抗原的、遺伝的な変化は見られていないということで今、使っていますワクチン株と非常に類似したものが流行しているという状況であります。
次に、H3N2香港型と言われるウイルスの状況をまとめたのが10ページ目のスライドからになります。これも、例によって11ページ目の遺伝子の系統樹をごらんください。どういうウイルスが今、主流になっているかといいますと、系統樹では3C.2aが国内も海外もほぼ流行の主流を占めています。今シーズン使っていますスイス株のワクチン株、赤字で示していますけれども、それが3C.3aというグループに入って、今流行しているウイルスの遺伝的グループとは違っているということであります。
それでは、この3C.2aと3C.3aが抗原的にどれぐらい違うかというのをまとめたのが次のページの円グラフになります。まず、流行している「細胞分離株」という12枚目のスライドの上の円グラフをごらんください。これが、ワクチンのスイス株のいわゆる元株と言われる細胞分離したものです。この細胞で分離したウイルスは、人の社会ではやっているウイルスの抗原性を代表していますので、まず細胞分離株を調べています。
そうしますと、まずスイス株に関しては48%、これが今、流行しているウイルスと抗原性が乖離しているということなので、流行パターンが少しずつこの3C.3aのスイス株から変わってきているということがこれでわかります。
一方、その上の左側の香港/4801ですが、これは3c.2aという今の流行の主流グループの中の代表選手でありまして、来年度の南半球用のワクチンに採用されたウイルスであります。これを見ますと、43%が流行株との抗原性の乖離があるということで、この香港/4801も必ずしも今の流行株とぴったり抗原性がマッチしているわけではありません。
それから、下の円グラフの左側、香港/7127/2014、これは同じく主流グループの3C.2aの別の代表株ですけれども、これと抗原性が類似していないものは26%程度であって、どちらかというとこの香港/7127に近いウイルスが今、流行しているということです。
それから、その右側になります埼玉株です。これは国内で取れた3C.2aの代表選手でありますけれども、これと今の流行株との抗原性のずれというのは大体40%程度ということで、上のスイス株や香港株に比べるとさらに今の流行株に近いということであります。
次に13ページ、13枚目のスライドです。「卵分離株」ですが、実際インフルエンザワクチンというのは卵で分離したものを使うということになっていますので、実際のワクチン株と今、流行しているウイルスとの抗原性の乖離をこの円グラフで示しています。
一番左端のスイス株、これが実際ワクチンに使われているウイルスなんですけれども、今の流行株との抗原性の乖離というのはかなり大きいということがわかります。赤で示したのは16倍以上、オレンジ色で示したのが8倍で、乖離の度合いを示していますが、この2つを足したパーセンテージがいわゆる抗原性が乖離していると読んでいただいて結構ですが、89%のウイルスがほぼワクチン株とは類似していないというそういう成績です。
それから、真ん中が3C.2aの代表である香港/4801、これもやはり91%プラス5%の96%が今の流行株とは類似していない。
それから、右側の埼玉/103株は抗原性の乖離度合いは35%程度であって、より埼玉/103株のほうが今の流行株と抗原性が近いということをあらわしています。すなわち、この3つの円グラフは卵馴化による抗原性の変化の度合いを示しており、スイス株も南半球で来年使われる香港/4801ワクチン株も卵馴化による抗原変異の度合いがかなり大きいことがこれでわかると思います。それに比べて、埼玉株は卵馴化の影響が比較的軽微であるということがわかります。
それをまとめたのが10枚目のスライドでありますけれども、これも詳細の説明は既に行いましたので割愛します。
そして、14ページ目のスライドを見ていただきます。これが、海外の状況であります。遺伝子解析の結果、海外で分離された株の多くは3C.2aに属している。幾つか3C.3a、もしくは3C.3bに属するものも取れていますが、国内の状況と同じように3C.2aが主流、それから今シーズンのワクチン株、スイス/9715293(クレード3C.3a)と抗原性が類似している流行株の割合が減少している。
一方で、3C.2aの代表株であります香港/4801と類似しているものが比較的多いというのが海外の状況であります。
次は、B型であります。15枚目のスライドです。まず、最初に山形系統の国内の状況をお示しいたします。国内では、冒頭に申し上げましたように山形系統よりもビクトリア系統がB型の主流であります。
ページをめくっていただいて16枚目の円グラフが、実際ワクチンに使っているプーケット株と流行株との抗原性の一致度を示しています。原株Cell、これはほぼ100%、今の流行株と抗原性が一致しています。それから、実際ワクチンに使っている卵分離したプーケットウイルス、これも流行株と抗原性がぴったりマッチしています。山形系統のワクチンは卵馴化による抗原変異の影響は全く受けていないということがこれでわかります。
その次は、ビクトリア系統であります。17枚目のスライドですが、これは一応サマリーとしてまとめていますけれども、抗原性の違いのところはその次の18ページ目の円グラフをごらんください。左側がブリスベン/60、これはWHOが推奨しているワクチン株でありまして、海外のほとんどの国はこのブリスベン/60をワクチンに使っています。日本は、右側のテキサス/2/2013を使っています。
まずその原株であります細胞で分離したそれぞれのワクチン株を見ますと、流行株と抗原性がほぼ100%マッチしているということで、ビクトリア系統のウイルスは2008年からほとんど抗原変異していないことがわかります。
一方、それに対して下のグラフが実際ワクチンに使われる卵分離株でありますけれども、卵分離株にしますとブリスベン/60のワクチン株というのは卵馴化による抗原変異の程度をかなりドラスティックに受けていまして、流行株の96%とはもう抗原性が乖離していることがわかります。
一方、日本で採用したテキサス/2/2013ワクチンは、卵に馴化しても抗原性の変化が起こっていないので、現時点で解析数が少ないんですけれども、ワクチンに採用したウイルスと調べたほぼ100%の流行株と抗原性がマッチしています。そういう意味では、テキサス/2を採用してた日本は、最も適正なワクチン株選択をしたと思っています。
19枚目が、海外の状況であります。山形系統、ビクトリア系統、両系統が混合して流行していますけれども、多くの国でビクトリア系統が流行の主流であります。それから、山形系統の流行の抗原性はワクチン株B/プーケット/3073/2013に類似しています。
全ての株のHAの遺伝子グル—プはクレード3に属していまして、これはプーケットが入るグループであります。それから、ビクトリア系統の流行はワクチン株であるブリスベン/60/2008、またはその類似株であるB/テキサス/02/2013と抗原性が類似している。
全ての流行しているウイルスのHA遺伝子系統はクレードの1Aに属している。これが、海外の状況であります。
めくっていただきまして、20枚目が薬剤耐性株のサーベイランスの状況でありますけれども、現時点で国内ではH1、H3B型、両系統とも薬剤に関して耐性もしくは感受性が下がるというウイルスは1株も検出されていません。
一方、海外ではH1で2株、それからH3で数株が検出されている程度でありまして、海外でも薬剤耐性のウイルスがほとんど検出されていないというのが現状であります。以上です。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
現在、流行中のインフルエンザワクチンの流行株の状況ですけれども、御質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
大変難しい質問かもわからないんですけれども、このようにウイルスによって卵で変異しやすいものと、しにくいものがあるということですが、その辺のメカニズムみたいなものは何かわかっているんでしょうか。
○小田切参考人 特にH3N2は卵馴化による抗原変異のシリアスな問題がもうここ数シーズン続いているわけですけれども、もともとH3N2というのは卵で増え難いウイルスが人の社会ではやっていて、それをワクチンに使うために無理やり卵でふやし直すわけですね。そうすると、卵の中で卵にアダプテーションしてふえやすくなったウイルスが選ばれてきてしまうので、実際に人の社会で流行しているものとは抗原性が違うものが取れてしまう。それを、ワクチン製造に使わざるを得ないというのが問題なんですね。
これは日本国内だけでなくて海外でも卵でワクチンを製造している国は全て同じ問題を抱えていて、今のところそれを解決する方法はないというのが現状です。そういう意味で、これから信澤参考人が言うと思いますけれども、それを回避できるのは培養細胞でワクチンを製造するしか解決法はありません。そのため細胞培養ワクチンの研究開発が進められています。
○西島部会長代理 ありがとうございます。
それでは、福島委員からまずどうぞ。
○福島委員 関連で教えていただければと思います。昨シーズンのワクチン株も、私が記憶しているところでは先生が卵馴化の起こりにくい株を選ばれて、H3の株だったかと思います。ただ、実際の流行株の抗原性が少し変異してしまったというような問題があったと思います。
今回もBテキサスは日本でのみ選択されたということで本日御報告いただきましたけれども、海外でもそういう選択努力をされているのかどうか。あるいは、時間がかかるのでそういうステップ、なるべく卵馴化が起こらない株を選択するというステップは実際のところ海外では省かれているのか。その現状を教えていただければと思います。
○小田切参考人 海外ではワクチン株は基本的にメーカーの裁量によって選ぶんですけれども、もちろんそれぞれの国にこのワクチンのリコメンデーションをする機関、委員会とかがあるのですが、基本的にテキサスとブリスベンという2つのものは類似株なので、どちらを選んでもいいという状況であるので、ブリスベンのほうが若干ですけれども製造効率がいいんですね。
それでメーカーはブリスベン株を選んでいると思うんですけれども、これはこの円グラフでも示したようにブリスベン株は卵馴化の影響を受けているウイルスなので、製造効率が若干落ちたとしても、卵馴化程度の少ないテキサスを選んだ日本の選択は、いい選択だったと思っています。
○西島部会長代理 それでは、森委員どうぞ。
○森委員 実際、系統上的には6B.1とA/カリフォルニア/07/2009が離れているということですが、抗原性が近しいというのはどういったことからでしょうか。
○小田切参考人 これは、遺伝子のヌクレオチドのトータルの変化を合算してこういうグループ分けをしているんですけれども、抗原性が違うというのは抗原特定な部位があって、そこの中に変異が起こると1個でも違えば抗原性ががらっと変わったりするのですが、この6B.1に入るウイルスの遺伝子の変化というのは、そういう抗原性に影響のない部分の変化の総和なので、系統樹的にはダイバースしているけれども、抗原的にはそれほど違っていないという状況です。
○森委員 では、抗原性というのはある決定域のところを見て比較されているということでしょうか。
○小田切参考人 基本的には、それが反映された抗原抗体反応になると思います。
○西島部会長代理 ほかによろしいでしょうか。
それでは、次も同じ類似の御報告、御説明ですけれども、2つ目に移りたいと思います。「細胞培養季節性インフルエンザワクチン実用化への取り組み」についてということで、信澤先生よろしくお願いいたします。
○信澤参考人 では、始めさせていただきます。
まず、簡単にこの細胞培養ワクチンの取り組みの背景をお話いたしますと、現行のインフルエンザワクチンというのは鶏卵培養法で製造されていますけれども、このワクチンですとワクチンの供給時期や量が全てその孵化鶏卵の供給時期や量に左右されます。そのために、パンデミックワクチンなどを迅速に作製しなくてはならないときに迅速な対応ができない可能性もありますので、日本ではパンデミックワクチンは細胞培養法で作製するということが既に決まっています。
一方、その季節性のウイルスに関してですが、今、小田切先生からもお話がありましたように、特にH3N2のウイルスなどは卵でふえにくくなっていまして、無理やりふやしてやるとそのワクチン株が鶏卵馴化を起こして抗原変異を起こすということが起きています。そのために、日本でもその細胞培養法を季節性インフルエンザワクチンに導入しようという取り組みを行っています。
実際に、現在、海外でも細胞培養ワクチンの製造や販売というのは行われているんですけれども、海外でつくられている細胞培養ワクチンといいますのは全て鶏卵用のワクチン株を細胞に接種してつくる細胞培養ワクチンです。したがって、その鶏卵のワクチンで起きている問題の解消にはならないわけです。
そこで、日本では臨床検体からウイルスを分離して細胞培養ワクチンを製造するまでの全過程を細胞だけを使って行い、鶏卵を一切使わないでワクチンをつくるという細胞培養ワクチンを実用化させることを目指して取り組みを行っています。
2ページ目に、この実用化のために解決するべき課題というものを示しています。これは前回の本部会でも説明させていただきましたけれども、このうち(1)と(3)に関しまして今、日本国内5社のワクチン製造所に協力をいただきましてAMEDの研究班で研究開発を進めておりますので、その結果について報告をさせていただきます。
めくっていただきまして3ページ目ですけれども、そこに「(1)細胞培養ワクチン株作製法の確立」として、まずワクチン株作製までのプロセスを挙げています。細胞培養ワクチンの場合は、ワクチン株はワクチン製造所が作成しまして、そのワクチン株がワクチン株として妥当であるかどうかの抗原解析試験を感染研が行います。
簡単に左のほうから説明いたしますと、まず臨床検体の入手は感染研で行います。入手した検体からウイルスを分離するわけですが、その分離に用いるのはNIID-MDCKという細胞です。細胞培養ワクチンの場合には、臨床検体からウイルスを分離する際に品質上管理をされている細胞を用いるということが求められておりまして、NIID-MDCK細胞はその管理基準を満たしている細胞です。
一旦、ウイルスを分離しますと、その後にそのウイルスの抗原性が、WHOが推奨しているプロトタイプ株と類似であるかということの確認を行います。それが、「抗原解析試験(1-way)」と書いてあるところです。その1-wayの試験に合格したウイルスを、ワクチン製造所に分与します。ワクチン製造所では、各社が保有している細胞でそのウイルスを増殖させて高増殖馴化株の作製を行います。できたウイルスがその右上に書いてありますpccCVV、左下にそのフルスペルが書いてありますが、potential cell culture Candidate Vaccine Virus、つまり細胞培養ワクチン株候補となり得るウイルスということです。
このpccCVVがつくられました後に、そのウイルスが確かにWHOが推奨するプロトタイプ株と抗原的に類似であるかどうかということを確認する試験が必要になります。その確認試験は、感染研が行います。
今、プロトタイプ株と申しましたけれども、前回のこの会でも簡単に説明をいたしましたが、もう一度プロトタイプ株が何であるかという説明をさせていただきます。それが4ページに書かれていますが、プロトタイプ株というのはMDCK細胞で分離されたウイルスで、そのシーズンに流行しているウイルスの抗原解析結果に基づいてその流行ウイルスの中で代表となる株として選定されたウイルスです。
毎年、2月と9月に北半球用と南半球用のワクチン会議がWHOで開かれますけれども、そのワクチン会議でこのプロトタイプウイルスが選定されます。そのワクチン会議は、ワクチン株を作製する際には、このプロトタイプ株と抗原的に同等、あるいは類似であるウイルスを使うことを推奨します。
では、5ページ目から実際に臨床検体からウイルスを分離して今回作製したワクチン株をどのようにして作製していったかについて説明をいたします。
まず、5ページ目は「臨床検体からのウイルス分離」とありますが、用いた細胞は先ほど申しましたNIID-MDCK細胞です。これまでに2つのシーズンの臨床検体を入手しまして、ウイルスの分離を行いました。そこに、臨床検体を入手したシーズンと検体数を書いてあります。その下のほうに、ごく簡単ですけれども、臨床検体からウイルスをどのように分離するかを図で示しています。
臨床検体を入手しました後、その臨床検体中のウイルスゲノムを解析しまして、まずその検体に含まれているウイルスの型/亜型を同定します。その際、ウイルスのゲノム量もある程度推定できますので、それらの情報をもとにウイルスを分離する検体を選択します。選択した検体を用いて、NIID-MDCK細胞でウイルス分離を行います。ある程度のウイルス量がふえるまで継代を繰り返します。
6ページに実際にNIID-MDCK細胞を用いて分離したウイルスの分離効率を示しています。一番左に型/亜型、系統を示していまして、その次にインフルエンザシーズン、これは臨床検体を入手したシーズンです。その横に、調べた臨床検体中どれぐらいの検体からウイルスが分離されたのかを示しておりまして、一番右側に分離効率を示しています。大体、見ていただきますとおわかりのように、分離効率は比較的いいという結果でした。
H1N1pdmの2010/2011シーズンとH3N2の2014/2015シーズンの分離効率が50%と、ちょっと低目なのですけれども、これは後づけですが、その臨床検体中のウイルスゲノム量を測定したところ、かなり量が少なかったということがわかっております。
では、この後、ここの赤字で示しましたインフルエンザシーズンの検体を用いてワクチン株作製のtrialの結果を示します。
まず、7ページを飛ばして8ページを見ていただきたいのですが、ここに示しておりますのは臨床検体から分離したウイルスで、プロトタイプ株と抗原的に類似であるというふうに評価を行ってワクチン製造所に分与したウイルスです。一番左に型/亜型、系統を書いてありまして、その右がウイルスのID、その隣のパッサージヒストリーといいますのはMDCK細胞で何回継代を繰り返したかという数です。
そして、その横にHAの力価、そしてH1 test 1-way、その1-wayの試験で抗原の類似性を検討したプロトタイプウイルスと見立てたウイルスがそこの一番右のカラムに書いてあります。
ここのH1 test 1-wayに関して、7ページの図で説明をいたします。7ページの上のところにプロトタイプ株とありますけれども、これが先ほどのWHOが推奨している株でしてMDCK細胞で分離されたウイルスです。このプロトタイプ株と、左下にありますけれども、感染研で分離した分離株が抗原的に類似であるかということを抗原解析試験を行って調べます。
その試験方法が、7ページの下の試験方法と書いてありますところに記載しております。通常は血球凝集阻止試験を用いますけれども、ウイルスによっては中和試験を行うことがあります。
それで、実際にNIID-MDCK細胞で分離された株の抗原性をどのように調べるかといいますと、プロトタイプ株に対するフェレットの抗血清を用いまして、プロトタイプ株に対する抗体価とNIID-MDCK分離株に対する抗体価が一致するか、あるいは2倍以内の差である場合に抗原性は類似であるというふうに判断いたします。
具体的に数値で申しますと、プロトタイプ株に対する抗体価が320、NIID-MDCK分離株に対する抗体価が320であれば同じ値ですけれども、160であってもそれは類似株というふうに判断します。ただ、それが80だったりしましたら、その場合は抗原性が類似ではない、という基準でウイルスの選択を行いました。
それで、8ページ目にありますH1 testの1-wayのところに書いてあります2-fold diff.とか、equiv.といいますのはその抗体価の差についてです。ここに示した株は、いずれもプロトタイプ株と抗原的には類似したという判断をしております。
9ページ目から、ここの8ページに示したウイルスを各ワクチン製造所に分与して増殖性等を検討していただいた結果を示しております。今回はワクチン製造所の社名、それから細胞名に関しては控えさせていただいております。また、会社により事情がいろいろ異なりますので、検討された株、検討を希望された株ですとか検討の開始時期も異なりますので、全てのワクチン製造所の結果がそろっているわけではないのですが、その点は御了承ください。
まず、9ページ目のH1N1pdmの結果ですけれども、9ページの一番左にメーカー名をAからEとして記していまして、その横が分与したウイルスのID番号、それからこれはワクチン製造所で調べられたHA titer、1-way HI試験、そして遺伝子解析結果が出ております。表の右側の2つのカラムで、感染研で行った2-wayのHI testの結果と遺伝子解析結果を示しています。
このワクチン製造所で行われた抗原解析試験の1-wayHI試験というのがどのような試験かといいますと、7ページ目の図をまたごらんいただきたいんですけれども、この1-way試験はプロトタイプ株に対する血清を用いまして、右下にありますワクチン製造所細胞馴化株に対する抗体価がプロトタイプ株に対する抗体価と同等、あるいはX倍以内であれば類似とするという基準です。今回は、そのXを2倍というかなり厳しい条件で判定をしていただいております。
この1-wayに合格したウイルスに関しては、そのウイルスに対するフェレットの血清を作製していただきまして、今度感染研で行います2-wayのH1試験、抗原解析試験でその血清を用います。2-wayのH1試験といいますのは、プロトタイプ株に対する血清と、ワクチン製造所の馴化株に対する血清をそれぞれ用いまして、プロトタイプ株に対する抗体価とワクチン製造所の馴化株に対する抗体価が、それぞれにやはりX倍以内の差しか示さない、抗体価に差がほとんどない場合に抗原的に類似とみなします。この2-wayの基準も、今回は2倍以内といたしました。
その結果、9ページのH1N1pdmの結果では真ん中の1-way HI testと書いてあるところでパスしたものが1株、そのパスした株に関しては感染研でも2-way試験に合格していました。残りの2株に関しては、1-way試験で抗原的に差が見られる結果になっています。
10ページと11ページにH3N2ウイルスの結果を示していますが、H3N2ウイルスは全社が検討してくださいました。これまでに結果が得られているうち、感染研での評価が終わっているのが4株で、メーカーのほうで1-way testで合格していて、現在、感染研で試験中というのが2株あります。1社のウイルスに関しては、残念ながら1-wayは合格しなかったという結果でした。
12ページと13ページには、B型のビクトリア系統と山形系統の結果を示しておりますが、いずれもB型に関しては、1-way、2-wayともに抗原解析試験には合格しておりました。これがファーストトライアル、最初のワクチン株作製の結果です。
14ページ目に、このようなワクチン株作製をどのようなスケジュールで行うのかについて簡単に示しております。
これは、3ページのワクチン株作製までのプロセスの上に青、赤、緑の連続する3年間を示して、どういうスケジュールでつくられるかを示しています。仮に緑色の年の10月に接種するワクチン用のワクチン株を選定する場合にどういうスケジュールで行うかといいますと、日本で開かれるワクチン株の検討会議が大体、その緑色の年の2月から3月ですので、それまでにccCVV株と言われるワクチン株が作製されていることが必要になります。
そのためには、大体、赤の年の11月ぐらいまでにはワクチン製造所にウイルスの分与を行っておく必要があります。その赤の年の11月ぐらいまでに分与するウイルスはいつぐらいから準備を始めるかといいますと、大体、青の年の11月から赤の年の11月までの間、臨床検体からウイルスを分離してプロトタイプ株と抗原的に一致するかどうかの確認というのを繰り返し行いまして、最終的にもっとも妥当と思われる株をワクチン製造所に分与するということになります。
15ページ目にワクチン株作製の取り組みの結果をまとめてありますけれども、今回のファーストトライアルの結果、NIID-MDCK細胞分離株は各ワクチン製造所細胞で一定の増殖性を示すことが確認できました。
また、ファーストトライアルでは、各社の細胞で継代後に出現する抗原変異株は、A型ウイルスでは顕著でしたが、B型ウイルスでは比較的継代後も抗原性が安定しておりました。
セカンドトライアルは既に開始しており、引き続きpccCVV、ccCVVの作製を試みております。
臨床検体の選択法をさらに改善することで、変異株の出現率を下げる手法をこれから検討していく予定です。
また、日本分離株をプロトタイプ株として提供するとか、あるいは各社の細胞間でccCVVを共有することが可能であるかといった点を検討してまいります。
次に、「(3)細胞培養ワクチンのHA抗原量測定試薬作成法の確立」についてです。これは細胞培養ワクチン株ではなく、既にワクチンとなったもののワクチン中のHA抗原量をどのように測定するかですけれども、現行の鶏卵培養ワクチンではここに書いてあります一元放射免疫拡散試験(SRD)が用いられております。このSRD試験というのは、SRD試薬の調整が必要です。SRD試薬というのは、そのワクチン中のHA抗原量を測定する際の物差しに当たるものですので、正確な物差しを作製する必要があります。
17ページに非常に簡単ではありますけれども、そのSRD試験の概要が書いてあります。上段が鶏卵培養ワクチンのHA抗原量の測定ですけれども、鶏卵培養ワクチンの場合には鶏卵用のワクチン株を鶏卵に接種してウイルスを増殖させまして、そのウイルスを精製して標準抗原を作製します。それから、その精製したウイルスのHA抗原を羊に接種しまして、羊でできた血清とその標準抗原などからなるSRD試薬を用いまして、同じワクチン株で作製されたワクチン中のHA抗原量の測定をSRD試験によって行います。細胞培養ワクチンの場合には、当然ですけれども、細胞で増殖させたワクチン株をもとにSRD試薬を作製し、SRD試験を行うわけです。
18ページ目に、現在行っております細胞培養ワクチンHA抗原量測定用試薬の検討の概要を示しています。今回、ファーストトライアルでワクチン株を作製していただきましたので、まずH1N1pdmのワクチン株を用いてSRD試薬の調整、それからSRD試験を行うことを予定しております。H1N1pdmの分与したTA-73株に由来するワクチン製造所で作製されましたワクチン株を用いましてSRD試薬を、これもワクチン製造所の協力をかなりいただきまして現在作製しているところです。作製されましたら、細胞培養ワクチンをつくり、SRD試験を行う予定です。
一方、その下にあります鶏卵培養ワクチン株のSRD試薬、これもあわせて細胞培養ワクチンの抗原量を測定するのに使用することを予定しています。この鶏卵培養ワクチン株はX-179Aといいまして、TA-73と抗原性がほとんど一致しております。ですので、その鶏卵培養用のSRD試薬で細胞培養ワクチンの測定がどの程度できるのか、あるいは全くできないのか。その抗原量の比較検証を行っていく予定です。
最後に、「今後の取り組み」としまして、ファーストトライアルで作製したccCVVに由来するSRD試薬を引き続き作成してSRD試験に供していきます。
また、鶏卵培養用及び細胞培養用のSRD試薬の兼用が可能であるのか。
またSRD試薬を各ワクチン製造所間で共有することが可能であるのかについてもあわせて検討を行っていく予定です。以上です。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
細胞培養によるワクチンの製造ですけれども、御質問等ございましたらお願いいたします。
では、山口委員どうぞ。
○山口委員 特にA型のほうがなかなか各社に配ったときに変異が大きいという結果だと理解したのですけれども、要因として考えられるのが、各社の事情は公開できないところもあるのでしょうが、以前から議論していたことでもあるのですが、細胞がそれぞれ違うものを使っているというところに要因があるとするのでは?感染研がコントロールするにもなかなか難しいところがあるかという気がちょっとしたんですけれども、その辺は例えばこのNIID-MDCKを配るとか、そういう方法ということも考えられるのでしょうか。
○信澤参考人 先生がおっしゃるように、NIID-MDCKを使っていただくということも検討していただくようなお願いはしておりますけれども、実際にそのワクチン製造に使える細胞というのは品質上の試験というのは物すごい莫大なお金を投じてされているものですので、既に各社で用意されている細胞を捨ててNIID-MDCKに変えるというのはなかなか難しいのではないかと思われます。
ただ、確かにA型のウイルスで必ずしも全ての株がパスしてはいないんですけれども、感染研で配るウイルスのほうを例えば臨床検体中のウイルスのクアジスピーシーズなどを調べまして、その変異といいますか、いろいろなウイルスが混じっているような検体というのは極力避けるとか、特に変異を持ちはじめているようなウイルスは避けるとか、ある程度その検体中のウイルスの配列を調べることでそういう変異株が出てくることを避けられないかという検討をこれからしたいと思っております。
○山口委員 NIIDのほうは浮遊培養に使えるのでしょうか。
○信澤参考人 今、使っておりますのは付着です。
○山口委員 付着ですね。そうすると、もし配るにしても浮遊培養系としてつくられるところだと、そのことも必要になってくるということですか。
○信澤参考人 はい。研究レベルではありますが、その浮遊化が可能かどうかはこちらでもやっておりますけれども、付着と浮遊とでまだそれほど目覚ましい差は出ておりません。
○山口委員 あとは、先ほど小田切先生の質問のところでしたかったのですけれども、変異をどういうふうに評価するか。この場合の変異ついても、昔、H5N1のときでもそうだったのですが、変異の比率を例えば培養後にどのぐらいのパーセンテージにするかという議論があったかと思うのですけれども、先ほどのお話ですとむしろ全体のゲノムの変異よりも例えばHAのところとか、そういうところに限った変異のほうの議論をやはりしたほうがよろしいということになるのでしょうか。
○小田切参考人 まさにおっしゃるとおりで、やはりワクチンの場合は抗原性がほぼ命ですので、遺伝子が変わっても抗原性が変わらなければ全然問題ないわけです。だから、そこを物差しとして見ています。
○山口委員 ゲノム変異の中にあっては、その増幅率などにやはり影響してくる可能性はあるのでしょうか。
○小田切参考人 一部はあるとは思いますが、先ほども言いましたように遺伝子の変異の箇所、部位によって抗原性に影響する部位とない部位とがありますので、そこがむしろワクチンとしてはクリティカルになると思います。それで、ワクチンの製造効率というか、ウイルス自体の製造効率はどちらかというとHA遺伝子ではなくてウイルスの内部遺伝子のほうに規定されていますので、それほどHAだけを見ている限りでは変わらないと思います。
○西島部会長代理 ほかにいかがですか。
森委員、どうぞ。
○森委員 今回、B型ウイルスに関しては抗原性が安定していたということですけれども、それは予測されたことだったのでしょうか。
○信澤参考人 特に予測はしていませんでした。
○森委員 A型では変異が見られたけれども、B型で抗原性に関して安定していた理由はどういうことが考えられますか。例えば鶏卵ではどうなのでしょうか。
○信澤参考人 鶏卵では、先ほど小田切先生もお話をされましたけれども、今のところはB型は、細胞と鶏卵でブリスベン/60は抗原性に差がありましたが、細胞培養と鶏卵培養とで抗原性に大きな差がないという状況です。それで、強いていいますとA型の場合、H1N1pdmの場合は細胞馴化が多少起こるウイルスなんですね。ですので、ここで出ているフェイルになったウイルスというのはそういう影響を受けているという可能性はあります。
それから、H3に関しても鶏卵でふえにくいというのは確かなんですけれども、細胞でも最近はちょっとふえづらいウイルスがふえてきておりまして、そのふえづらいウイルスがふえたときにやはり抗原変異を起こしてしまうという可能性はあります。
それに対してB型のウイルスは、今のところNIID-MDCKで分離したものに関しても思っていたような抗原変異というのは起きずにおります。思っていたというか、抗原変異は起きないでいます。
○森委員 細胞ではふえにくかったウイルスを培養していると変異が見られたということですけれども、先ほどのお話とあわせるとウイルスの増殖にかかわっているのは違う遺伝子だと思うのですが、それがなぜHAのところに影響したのでしょうか。
○信澤参考人 ポリメラーゼにかかわる増殖性の変化はもちろんポリメラーゼに変異がはいるのですけれども、HAというのは細胞上のレセプターに結合するファンクションを持っていますので、やはり細胞のレセプターにより結合しやすくなるような変異が起きる可能性があって、その変異が起きる場所というのが抗原領域に近いものですから、抗原性が変わるということはよくあることです。
○森委員 ありがとうございます。
あとは、17ページ、18ページのところですけれども、これは細胞培養での抗原の変化を鶏卵と比べて見ていくということだと思うのですが、これはやはり細胞培養では変異が起こらないことを期待している実験なのでしょうか。
○信澤参考人 18ページですか。
○森委員 そうです。
○信澤参考人 これはSRD試験といいまして、ワクチン中のHAの抗原量を測定するという試験で、細胞で変異が起きないといいますか、ワクチンをつくるもとになったワクチン株で実際にSRD試薬をつくる必要がある。
○森委員 鶏卵となぜ比較する必要があるのでしょうか。
○信澤参考人 鶏卵と比較する理由といいますのは、この両方のウイルスというのは抗原性が一致していますので、そういう意味では例えば血清に関しては反応性が一致している可能性が高いと思われますので、その乖離しているかどうかを見たいというよりはむしろ細胞培養ワクチンの抗原量を同程度に測定できることを期待してやってみようとしています。
それで、どういうメリットがあるかといいますと、鶏卵培養ワクチンは既につくられていて、SRD試薬というのも結構つくられておりますので、細胞培養ワクチンが実用化していいSRD試薬がうまくつくれない場合も恐らくあると思うんですけれども、そういうときに代用が可能なのかというようなこともあわせて検討できるのではないかと思っています。
○森委員 ありがとうございました。
○西島部会長代理 ほかに御質問はございますか。
細矢委員、どうぞ。
○細矢委員 MDCKで分離したのがプロトタイプでいいと思うんですけれども、MDCKも犬の腎細胞由来ですね。これは、全く抗原は変異していない。ヒトでふえているのと同じと考えてよろしいのですか。
○信澤参考人 正確な意味では、その調べ方としては臨床検体中のウイルスの配列とMDCK細胞で分離されたウイルスの配列を比較して全く同じかということを調べればいいと思うんですけれども、現在全て分離されているウイルスに関してそれを行っているわけではないので、必ずしも人の中で流行しているウイルスが反映されているとは言えないということです。
それから、確かにMDCK細胞に馴化したために起きる変異というものが先ほど申しましたpdmでありますので、必ずしもMDCK細胞で分離した株をプロトタイプとすることがベストとは言えませんが、これまで一応使われてきたという経緯もあってMDCK細胞分離株がプロトタイプ株の設定に使われているということだと思います。
○細矢委員 例えば、ヒト上皮細胞由来みたいなものはないんですか。分離できるようなもので、もう少し近いようなものは。
○信澤参考人 それを世界的に同じレベルで普及させて、将来的に不可能ではないかもしれませんけれども、ウイルスを効率的に分離できるような細胞株を樹立するというのは少し難しいかもしれません。理想的だとは思いますけれども。
○西島部会長代理 ほかによろしいでしょうか。
今、細胞をいろいろ遺伝子を変えることは簡単なわけですけれども、そういう方向から、より増殖しやすい細胞株を人工的につくっていくという方法は難しいのでしょうか。
○信澤参考人 それも可能だと思います。それで、今、検討しておりますのは、1つは鶏卵培養ワクチンの場合にはPR8株を母体ウイルスとしてHA、NAの抗原以外の遺伝子を鶏卵でよくふえるウイルスの遺伝子に置きかえたウイルスを鶏卵培養ワクチンで使っているんですけれども、細胞培養ワクチンでもそのように例えば各細胞でよくふえるウイルスをHA、NA以外の遺伝子の供給体として使うということも可能ではないかということは考えています。
ただ、現行の細胞培養ワクチンはまずは野生株で作成するということになっていますので、順次研究レベルで開発していければと思っています。
○西島部会長代理 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
それでは、本日の3つ目の議題でございますけれども、「世界に先駆けたワクチンの開発状況」ということでファイザー株式会社の小河原先生、よろしくお願いいたします。
○小河原参考人 西島先生、ありがとうございます。ファイザー株式会社の小河原でございます。本日は、この貴重な機会を御提供いただきまして部会委員の先生方、並びに厚生労働省の方々に厚く御礼申し上げます。
本日のプレゼン資料は18枚でございまして、表紙及びタイトルページを除く右下部にページを入れておりますのでよろしくお願いいたします。
それでは、始めさせていただきます。1ページでございますが、表紙でございますので2ページに移らせていただきます。
2ページは、本日の発表内容でございます。初めに、過去の企業も含むファイザーのワクチン開発の歴史及び私が所属いたしますワクチンクリニカルリサーチ&ディベロップメント部門の存在目的及び責務等について発表させていただきます。
その後、開発品目、特に黄色ブドウ球菌ワクチン及びクロストリジウム・ディフィシルワクチンの開発状況につきまして御報告させていただき、最後にまとめとしまして本日の発表内容及びクリニカルリサーチのビジョンにつきまして発表させていただきます。
3ページに移らせていただきます。3ページは過去に存在いたしましたワイス、レダリーラボラトリーズ、ワイスレダリーワクチン、そしてファイザーによって開発されてきましたワクチンを示しております。細かくて申しわけございませんが、1882年、一番左でございますが、ワイスによって天然痘ワクチンが開発されて以降、DTP/DTaPワクチン、Hibワクチン、DTP-Hib混合ワクチン、また近年におきましては、7価肺炎球菌ワクチン、13価肺炎球菌ワクチンの開発に成功し、世界の人々の健康に貢献していることを示しております。
4ページはタイトルページでございますので、5ページに移らせていただきます。
5ページは、私が所属いたしますクリニカルリサーチ&ディベロップメント部門の目的、歴史及び責務について記載してございます。私どもの部門の目的としましては、左にございますように、予防用及び治療用ワクチンの世界各国での研究開発、歴史につきましては先ほど御説明しましたとおりでございます。
部門の責務としましては、予防用ワクチンを開発するに当たりましてヒトを対象とする最初の臨床試験、有効性/免疫原性の実証試験、それから製造販売後臨床試験を含めて実施することとしております。また、予防用ワクチン以外につきましても革新的な治療用ワクチンの開発を、我々の責務として日々の業務に邁進しております。
6ページはタイトルページでございますので、7ページに移らせていただきます。
7ページは、現時点におきますファイザーのワクチン開発状況を示しております。まず上段からでございますけれども、小児及び成人を対象としましたプレべナー13につきましては一部の国で承認申請中でございますけれども、小児対象としましては、150カ国以上、50歳以上の成人につきましては100カ国以上で承認されております。
また、中段でございますけれども、青年及び成人を対象としましたB群髄膜炎菌ワクチンにつきましてはグローバルで第3相試験が進行中でございまして、米国では2014年に承認を取得いたしました。
また、下段につきましては成人を対象としました黄色ブドウ球菌ワクチン及びクロストリジウム・ディフィシルワクチンにつきましては黄色ブドウ球菌ワクチンがグローバルで第2b相、日本では第1/2a相試験が進行中でございまして、クロストリジウム・ディフィシルワクチンではグローバルが第2相試験、日本では第1相試験が進行中でございます。
8ページはタイトルページでございますので、9ページに移らせていただきます。
9ページは、黄色ブドウ球菌ワクチンの必要性を示しております。1つ目のビュレットにございますように、黄色ブドウ球菌はいまだ医療関連疾患及び市中感染の主な原因でございまして、米国では黄色ブドウ球菌が医療関連感染の最大15%を示しており、また、手術部位感染、SSIでは最大3分の1を占めております。
また、日本におきましても、SSI患者由来の臨床分離菌のうち10%が黄色ブドウ球菌によるものであることが報告されております。
一方で、抗菌薬に対します耐性菌の出現や、また感染症管理対策を十分講じていても黄色ブドウ球菌感染症は依然として存在しておりますので、本感染症予防におけますワクチンの開発は重要な役割を担うものとして現在開発を進めております。
10ページに移らせていただきます。10ページは本ワクチンの特徴を示しているスライドでございまして、本ワクチンはMSSA及びMRSAを含む広範囲な黄色ブドウ球菌感染症を予防できるよう、以下の4抗原を含有したワクチンとして開発しております。
2番目のビュレットのサブビュレットになりますけれども、まず1番目としまして、宿主の貪食作用から回避する莢膜多糖体血清5型(CP5)及び8型(CP8)にキャリアプロテインとしましてCRM197を結合させた2つの抗原、2つ目といたしまして宿主への接着に必要なクランピングファクターAの遺伝子組みかえ抗原、そしてマンガントランスポーターCの遺伝子組みかえ抗原の合計4つの抗原を含有したワクチンでございます。
現在の臨床試験におきます進捗状況としましては、繰り返しになりますが、日本では健康成人を対象としました第1/2a相試験、海外では腰椎後方固定術の術後感染に対します予防効果を評価しております第2b相有効性試験を実施中でございます。
11ページはタイトルページでございますので、12ページに移らせていただきます。
12ページは、クロストリジウム・ディフィシル菌に関連する疾患(CDAD)について説明しております。クロストリジウム・ディフィシルはグラム陽性の嫌気性芽胞形成菌でございまして、その特徴としましては抗菌薬使用後における院内感染症下痢の主な原因菌となっております。このクロストリジウム・ディフィシルは抗菌薬使用後における腸内細菌叢の破壊により増殖しまして、本菌が産生するトキシンAとトキシンBがCDADの直接的な原因となっております。
また、その病態としましては、このトキシンAとBが腸に重度の炎症を引き起こし、重度の下痢、そして右下部にございますように、偽膜性大腸炎を発症することが知られております。
現在までにこのCDADを予防するワクチンはいまだ承認されておらず、以上のような背景から弊社といたしましてはこのワクチンの開発に至っております。
次に、13ページに移らせていただきます。13ページはCDADの疫学情報を示しておりまして、上段の米国における疫学データではクロストリジウム・ディフィシルによる集団感染発症数が増加しており、かつ重症例も増加していることが報告されております。
また、本邦におきましては国立病院機構、高橋らによりまして、日本におけるCDADのリスク因子、例えば発症上昇因子、死亡上昇因子につきましては欧米におけます過去の研究データとおおむね類似していることが報告されております。
次に、14ページに移らせていただきます。14ページにつきましては本ワクチン、クロストリジウム・ディフィシルワクチンにつきまして説明しているスライドでございますが、特徴としまして本ワクチンは不活化いたしました遺伝子組みかえトキシンAとトキシンBを有効成分としております。また、このワクチンにつきましては重要な抗原のエピトープを保持しておりまして、臨床株由来のトキシンを中和することが確認されております。
このワクチンの適応としましては、リスク集団におけますCDADの初回発症予防を考えており、先ほど申し上げましたように米国では第2相試験、国内では健康成人を対象としました第1相試験を実施中でございます。
15ページはタイトルページでございますので、16ページに移らせていただきます。
16ページは、本日の発表内容のまとめとさせていただいています。本日は、ファイザーがワクチン開発の長い歴史を持っていること、また開発プロジェクトにおきましては黄色ブドウ球菌ワクチンがグローバルで第2b相、日本においては第1/2a相試験を実施中であること、またクロストリジウム・ディフィシルワクチンにつきましてはグローバルで第2相、日本では第1相試験を実施中であることを御報告させていただきました。
また、その他のワクチンにつきましては、本日御説明しましたワクチン以外に既に非臨床試験のステージに進行しているワクチンがございまして、現在その評価を進めている最中でございます。
最後の17ページと18ページにつきましては、私どもファイザーの「ワクチン・リサーチのビジョン」について御説明いたします。ワクチンにつきましては、既に周知されておりますように世界中の人々の健康のために重要な製品であることを認識しておりまして、私どもファイザーは今後も産官学共同のもと、日本を含めた全ての年齢及び地域の人々のために予防用ワクチン及び治療用ワクチンの開発に今後も貢献してまいります。
以上、これで私の説明は終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
それでは、ただいまの御発表で御質問等はございますでしょうか。
山口委員、どうぞ。
○山口委員 御発表ありがとうございました。開発されているターゲットが割と重篤度の高いというか、そういうものをターゲットにされているということかと思いました。そういう意味からすると、こういう試験が日米、例えばヨーロッパとかとずれてやられているというか、多分慎重にされているのかなという気がするのですけれども、こういう試験こそマルチリージョナルにやったほうがメリットが高いかという気がするのですが、やはりその辺はマルチリージョナルに治験をやるのはなかなか難しい点とか、そういうのはございますか。
○小河原参考人 山口先生、ありがとうございます。非常に回答が難しい御質問かと思いますけれども、一般的なお話としまして、グローバルスタディとかグローバル治験という形に参画することは常々考えてございます。
ですので、開発戦略としましては、やはり日本人がどのようなポジションから参加するのかというのは日々、私どもも考えておりますが、今回は諸事情がありまして少しおくれていると認識いただければと思っております。
○西島部会長代理 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
それでは、森委員どうぞ。
○森委員 どうもありがとうございました。クロストリジウム・ディフィシル関連疾患に関してですが、このワクチンの対象者はどういう方を考えていらっしゃるのでしょうか?また、健常成人を対象に第1相試験を実施されていますが、効果の判定はどのようにされているのでしょうか。
○小河原参考人 まず1点目ですけれども、対象者という形でございますが、明確に今お答えすることはできません。一般的に申し上げますと、例えばリスクポピュレーションとしまして高齢者、もしくは介護施設入居者であったり、あるいは病院等に入院している方々を対象とすることが考えられます。
もう一点の有効性の評価につきましては、ディフィシルのトキシンAとBにつきます抗体価を測定することは公開してございます。
○森委員 一般の人がどれぐらいの抗体を持っているのでしょうか? また、1回の接種で十分な免疫反応が得られるのでしょうか。
○小河原参考人 公開されております情報だけで回答させていただきます。抗体価の情報につきましてはちょっと控えさせていただくのですけれども、今回、日本人を対象としました第1相の試験では、用法用量としまして3回接種を考えております。
○西島部会長代理 細矢委員、どうぞ。
○細矢委員 同じような質問なんですけれども、接種対象が黄色ブドウ球菌もそうですし、ディフィシルについてもそうですが、やはり免疫不全状態でのディフィシルの感染症というのは非常に問題になっているんじゃないかと思うんですね。例えば、そういった状態でのワクチンの効果を見るつもりなのか。そうではなくて、先ほど言ったように本当に広く高齢者について接種しようとか、入院患者さんを接種して守ろうかということを考えているのか。要するに、治療が必要で入院しているような患者さんをこのワクチンで守れるかどうかをお聞きしたいです。
○小河原参考人 現在まだ海外では第2相試験という形でのステージでございまして、どのようなインディケーション、適応をとるかにつきましては現段階では明確にお答えすることができません。第2相試験の結果、それから規制当局との相談によりまして、ライセンスを取るための適応疾患であったり、ポピュレーションを決定していく予定でございます。
○細矢委員 黄色ブドウ球菌についても教えてください。
○小河原参考人 現段階で申し上げますことは、先ほど申し上げましたように第2相試験におきます腰椎後方固定術におけます有効性を確認することは考えております。これを将来の適応とするかどうかにつきましては、現段階ではまだ控えさせていただきたいと思っております。
○西島部会長代理 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ないようですので、その他のところに移りたいと思いますが、本日、その他のところで2つ資料がございます。参考資料1-1でございますけれども、これにつきましては事務局のほうから御説明をお願いいたします。
○氏家課長補佐 事務局から、参考資料1-1及び参考資料1-2について御説明させていただきます。
麻しん風しんの混合ワクチンに関する製造販売業者における自主回収への対応ということでございます。日本において麻しん風しんの対策は定期接種でも実施されていますが、3社の製造販売業者により製剤の供給を行っていただいているところでございます。そのうちの1社が流通中のワクチンの一部を自主回収するという対応をとることをプレスリリースされたということで、そういったことに対して定期接種等を行っている自治体に対する情報提供を行いましたので、その対応について御報告させていただきます。
まずその現状ですが、参考資料1-1の次のページをめくっていただきますと、当該製造販売会社は第一三共株式会社になりますが、こちらで示しているのが公開されたプレスリリースでございます。昨年の10月30日のことでございまして、その中で説明されているのが社内の定期安定性モニタリングの結果、麻しんウイルスの力価が有効期間内に承認規格を下回る可能性があることが判明したということで、当該ロットにつきまして自主回収を行うことを決定したということでございました。
次のページをめくっていただきますと、その具体的な中身について当課の課長宛てに同日、当該企業の見解という形で説明をいただいてございます。
まず、「回収ロットの有効性」のところでございますが、このMRワクチンにつきましてはその有効期間が18カ月ということで、その有効期間終了時において自社試験の中でそのウイルス力価が最も低い値が1,900という値であったということでございます。これは麻しんウイルス力価の承認規格が5,000になっていますので、それよりも低いということで力価が低い製剤が流通していた可能性があるということにより、今回の対応になったというような説明でございます。
一方で、この力価の規格でございますが、今回問題となっているよりもさらに低いような力価であっても100%の抗体の陽転率があるということや、WHOの示す国際的な標準規格につきましては1,000単位になっているというような御説明がございまして、今回流通している中で、この規格を下回るような製剤は示されていないということも説明をいただいています。
次のページでございますが、そのほか安全性につきましては当該ロットにおいて安全性の問題が確認されたという情報がないということ、そして製剤を使用したことで麻しん罹患の報告等はないということを報告いただいています。
そのほか、品質等につきましても出荷時の品質試験等の結果が全て適合ということで、定期モニタリングにおいても、力価以外の項目は全て適合ということを御説明いただいています。
また、当該製造販売会社の見解としまして、こういった当該製剤を受けたことで、抗体検査等の検査を希望される方には実費を当該会社のほうから負担するということ、そして追加接種の必要性がある方につきましてもその実費を負担するということを御報告いただいている次第です。
その対応としまして、また1-1の一番前に戻っていただきますが、定期接種等を行っていただいている自治体に対して出した課長通知の内容でございます。この中で、先ほど申し上げた製造販売会社のプレスリリースの内容を説明した上で、残りの2社の製造販売会社に対して安定的供給を行うために状況を確認し、全国的なワクチンの不足ということは起こらない見込みであるという見解を示してございます。
さらには、今後も自主化異種のような対応があっても安定供給が可能になるように、製造販売会社に対して予定の前倒し出荷や増産等のお願いをしているというところでございます。
その上で、自治体に対して下記のような協力を求めているということでして、これは2013年の風しんのワクチンにつきまして安定供給が困難になる可能性が生じた際に同様の対応したものでございますが、自治体に加えて関係機関である医師会や都道府県の卸売販売業者団体等と情報を適切に共有していただいた上で、在庫の確認であるとか偏在等が起こらないような対応を求めているところが1番と2番でございます。
3番につきましては、地域間でその偏在の調整を行っても調整が難しくなるようなケースが出てきた場合には、当課のほうにその旨、御報告いただき、さらに広域での対応を行うということを示したものでございます。
4番目に記載しているものにつきましては、当該ワクチン製剤を接種された方に対する適切な情報提供をお願いしている次第でございます。
加えて、当該接種を行った場合においても、有効期間であればウイルスの力価を下回ったというデータがないことや、より低い力価のデータで抗体が獲得できるというデータがあるということから、必ずしも再接種を必要とするようなものではないということを前提とした上で、必要な評価を行った上で再接種が適当と判断されたものについては、それを定期接種として実施することも差し支えないということを示したものでございます。
加えて、資料1-2には11月4日付で事務連絡を出させていただいてございますが、これにつきましては回収ロット等の力価について当該製造販売会社がその自社試験を更新したことで提供されている情報を更新していますので、そのホームページを参照していただき、適切に対応いただくということをお願いしているものでございます。
その後の流通製剤につきましても、現在に至るまで定期的に自社試験を実施して情報を更新していただいているところでございますが、流通中の製剤において規格を下回るというようなウイルス力価の製剤があったというような報告はいただいておりません。事務局からは、以上です。
○西島部会長代理 ありがとうございました。
続いて、参考資料2-1も続けて御説明をお願いいたします。
○芳川室長補佐 事務局から、参考資料の2-1~2-4について、一連の化血研にかかわる事案についての御説明をさせていただきます。
まず参考資料の2-1からでございますけれども、「一般財団法人化学及血清療法研究所の製造するワクチン製剤等に関する意見」ということでございまして、化血研の製造するワクチン製剤等に関して、昨年10月21日に第13回感染症部会の審議事項として取りまとめられた意見を示したものでございます。
経緯といたしましては、化血研のワクチン製造に関しては承認書と製造実態のそごが報告されたということで、厚生労働省といたしましては化血研に対して関連製品の出荷自粛を求めているところでございました。
本部会の中で、化血研の製造するワクチンについては感染症及び予防接種法上に規定される感染症の予防及び治療のために必要な製剤といったものが他社製品での代替が困難、または供給量の著しい不足等が見込まれる製剤については、公衆衛生対策上の必要性の観点から速やかな出荷の必要性や、緊急時における使用の必要性等についての議論が必要ということで、このときに審議が行われてございます。
まず1番目に、このときに議論をされたワクチンがインフルエンザワクチンでございますけれども、品質及び安全性等には重大な影響を及ぼすようなそごものではないと厚生労働省が判断をしていることを報告するとともに、インフルエンザの発生予防及びまん延の防止を推進する観点から出荷を認め、供給不足を避けるべきということを結論づけていただいたという内容でございます。
おめくりいただきまして、2番目といたしましてその他検討を要するワクチンということで、いわゆる4種混合ワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチン、そしてA型肝炎ワクチンの4つの化血研が製造するワクチンについても同様に公衆衛生対策上の必要性が高いと考えられること。また、他社製品での代替が困難であるということから、供給が著しく不足することが見込まれるため、その品質及び安全性等の重要な影響について、できるだけ速やかに確認調査を行うべきという意見をいただいております。
その次のグループといたしまして、危機管理の観点で必要性が高いワクチン等ということでございまして、現在、未発生の感染症や、患者数は少ないけれども生命や健康に重篤な影響を及ぼすおそれのある感染症につきましては、その予防や治療への有効性が確認されている必要な製剤であって、他社製品やほかの治療薬等で代替が困難なものについては危機管理の観点から、もしそのような感染症が発生した場合には緊急的に使用または出荷を認めるべきという意見をいただいている。このような意見が取りまとめられたということでございます。
この審議を踏まえまして、次のページです。プレスリリースございますけれども、同日のプレスリリースにおいて、季節性のインフルエンザのワクチンにつきましては出荷自粛の要請を解除するということをお知らせしているところでございます。
さらにおめくりをいただきまして、資料1と書いてございますが、その審議で用いられた安全性の確認の中身でございまして、これは医薬・生活衛生局から報告がなされているところでございます。
資料1の中の1ページ目というところでございますけれども、1番目としては実際上のそごに関して全て確認をした上で実際に影響が低いということ。
2番目といたしましては、国家検定をきちんと基準をクリアしているということを確認してございます。
また、インフルエンザワクチンにつきましては、今年度から価数が変更になったということもありますので、管理状況の変更についての妥当性を実地による立入検査等を行って確認したことも記載をされてございます。
さらに、副反応の報告というものについても過去にさかのぼって確認したところ、他社と比較して化血研製品に特異的な副反応が多いなどといったことは確認できなかった。こういった確認作業を行ったということが報告をされております。詳細につきましては、それ以降の2、3ページにおいて記載をされてございます。
引き続きまして2-2ですけれども、10月21日の感染症部会での御意見を踏まえまして、厚生労働省は4種混合ワクチンについても化血研製のものですけれども、同様の品質及び安全性等の精査を行い、同様に重大な影響を及ぼすそごはないこと及び同種の他社製品の今後の在庫見込みについて感染症部会委員に報告をさせていただきました。
その結果、この4種混合ワクチンの対象疾患であります百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオの発生の予防及びまん延の防止を推進する観点からこれの出荷を認め、供給不足を避けるべきという部会の意見をいただきましたので、化血研の製造する4種混合ワクチンの出荷の自粛の要請を解除するという報告をさせていただきました。
その次のページでございますけれども、それにつきましては感染症部会の委員に対して行った報告の内容について記載がされているところでございます。詳細については、省略をさせていただきます。
次に参考資料2-3でございますけれども、本年の1月29日のプレスリリースでございます。これは、B型肝炎及びA型肝炎ワクチンについても化血研が製造するワクチンについては、同様に感染症部会の委員に対して持ち回りで審議を行った結果、肝炎の発生予防及びまん延の防止を推進する観点から出荷を認め、供給不足を避けるべきとの意見をいただきましたので、同様に出荷自粛の要請を解除するということを決めたことをお知らせするといった内容になってございます。
また、同様に後ろに報告をさせていただいた内容を資料として添付させていただいてございます。
続きまして、最後になりますけれども、参考資料2-4についてもあわせて御報告をさせていただきます。これは、医薬・生活衛生局から発出をされました1月8日付のプレスリリースでございますけれども、こういった化血研の一連の問題を受けまして、医薬品医療機器法違反業者に対する行政処分ということでございまして、医薬品医療機器法に基づきまして、平成28年1月18日から同年5月6日までの110日間の業務停止命令というものを行った報告になってございます。
違反の事実といたしましては次のページにございますけれども、承認書の製造方法と整合させた虚偽の製造の指図書及び製造記録等を作成し、厚生労働省等の査察に対して組織的欺罔及び隠蔽を図ったこと、9月1日に行ったワクチン等に関する報告命令に対して適切な報告を行わなかったこと等におきまして、適切な対応を行わなかったということで業務停止が110日間ということでの内容が記載をされてございます。
ただ、業務停止命令除外品目というものが設定されてございまして、それが見開きのお隣のページに記載されているという形になってございます。事務局からは、以上です。
○西島部会長代理 ありがとうございました。かなり駆け足でしたけれども、2点の御報告をいただきましたが、御質問等はございますか。
では、どうぞ。
○坂元委員 それぞれのプレスリリースに「重大な影響を及ぼすそごはない」という表現なのですが、おっしゃりたいことはよくわかります。
ただ、この表現が、では重大じゃない以外の影響はあるのかと一般市民の目から見たらそういう捉え方をされるので、例えばもしできるならば問題となるような影響を及ぼすそごはないとか、やはりこれはちょっと工夫しないと非常に致命的な重大なものはないけれども、中等度ぐらいはあるかもしれないというふうに捉えられてしまう場合がありますので、そこら辺はもし表現等が工夫できるならばお願いしたいというお願いでございます。
○西島部会長代理 事務局のほうから、何か今お答えはございますでしょうか。
○石川予防接種室長 行政的なお答えで申しわけないのですが、担当部局が異なりますのでその御意見はお伝えはしたいと思います。
○西島部会長代理 医薬・生活局になるということですか。わかりました。
ほかに、どうぞ。
○細矢委員 参考資料1-1ですけれども、この安定供給に不安が出た場合にこういったことを都道府県に要請するというのは非常に理にかなっているんじゃないかと私は思ったんです。特に、DPT-IPVの不足のときも同じような通知が出たと思います。あれが本当にうまく機能すれば、供給量と需要のバランスがとれているんですから、現場では不足は生じないということになるはずなんですけれども、実際にはいろいろなところから足りなかったというふうな意見を聞いています。
ぜひ、これがうまく機能したかどうかというのを検証していただけないかと思うんです。もし本当にこれがうまくいくんだったら、次に同じことが起こったときにもこういった方法が働けば余り買い占めるようなことは起こらないで乗り切れるような気がするんです。毎回同じようなことが起こって、毎回同じように不安が起こって足りなくなるということが問題になっていますので、いい案だと思いますので実効性があったということを示していただきたい。ぜひ調べていただきたいというのが希望です。
○西島部会長代理 事務局、これについてはいかがでしょうか。
○石川予防接種室長 どうもありがとうございます。まさに本日の部会が生産流通部会ということですので、今回の件を踏まえまして、予防接種の基本計画にもいろいろな関係者の責務ですとか、流通に関することをきちんとやっていくということも書かれておりますので、今後検討していく際に御相談させていただきたいと思います。
○西島部会長代理 ありがとうございました。そのほか、よろしいでしょうか。
それでは、ちょっと時間も過ぎておりますので、本日の議事は終了しましたが、最後に事務局のほうから何かありましたらお話願います。
○滝室長補佐 次回の日程は未定となっておりますので、改めて御連絡申し上げます。ありがとうございました。
○西島部会長代理 それでは、以上で本日の部会を終了いたします。
どうもありがとうございました。
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