ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(結核部会)> 第7回厚生科学審議会結核部会議事録(2016年1月22日)
2016年1月22日 第7回厚生科学審議会結核部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成28年1月22日(金) 10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎第5号館 専用第14会議室(12階)
○出席者
加藤部会長 |
遠藤委員 |
鎌田委員 |
小森委員 |
味澤委員 |
磯部委員 |
南委員 |
山岸委員 |
吉山委員 |
徳永委員 |
有馬委員 |
杉本委員 |
脇田委員 |
○議題
(1)「結核に関する特定感染症予防指針」の見直しについて
(2)報告事項
1 感染症に関する情報の収集体制の強化について
2 結核医療の基準の改正について
(3)その他
○議事
○島田補佐 おはようございます。あと少しで定刻ですが、出席を御予定の委員の皆様がお揃いですので、第7回「厚生科学審議会結核部会」を開催いたします。
まず、委員の出欠状況について御報告します。本日は、中山委員より御欠席の連絡をいただいております。また、南委員におかれては、途中で所用のため御退席と伺っております。
また、前回参考人として御出席いただいた国立感染症研究所副所長の脇田隆字先生に今回の部会から当部会の委員として御参画いただくことになりました。脇田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年10月1日付で健康局長に異動がございました。開会に当たりまして御挨拶申し上げます。
○福島局長 健康局長の福島でございます。10月1日から前任の新村にかわりまして着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
先生方には日ごろから結核対策の推進に多大なる御支援、御協力を賜りまして、厚く御礼申し上げます。私、平成21年から22年まで結核感染症課長をしておりましたので、その当時お世話になった先生方もいらっしゃり、懐かしく思っております。
おかげさまで新規の結核患者数、登録患者数、罹患率、減少を続けておりまして、直近の平成26年のデータで新規登録患者数が初めて2万人を切りまして、1万9,615人ということになっております。
また、罹患率で言いますと、人口10万対が平成26年15.4ということで、前年の16.1から0.7ポイントの減少ということになっておりますが、なお10を超えておりまして、低蔓延国と言える状態にはなっておりません。
私どもは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催までに低蔓延国になるということを目指していきたいと考えておりまして、この目標の達成のためには、結核に関する特定感染症予防指針の見直しを行って、結核対策に関する関係者の皆様が進む方向を示すことが非常に重要なことだと考えておるわけでございます。
ぜひ先生方には活発な御議論をいただけますようにお願い申し上げまして、簡単でございますけれども、冒頭の御挨拶にさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○島田補佐 健康局長につきましては、別件公務のためここで退席いたします。
(福島局長退室)
○島田補佐 それでは、この後の議事進行につきましては、加藤部会長にお願いしたいと思います。
加藤部会長、よろしくお願いいたします。
○加藤部会長 かしこまりました。
それでは、まず事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
○島田補佐 それでは、配付資料一覧に沿いまして資料の確認をさせていただきます。
初めに、議事次第。こちらに配付資料一覧が掲載されておりますが、座席表、委員名簿、その後に資料1-1から1-4まで。それと、参考資料1、2-1、2-2となっております。
委員の皆様、不足等がありましたら事務局までお知らせください。
では、申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
○加藤部会長 それでは、議事に入りたいと思います。前回第6回の部会では、この予防指針につきまして、幾つかの項目を軸に議論を進めることとしていたかと思います。本日は、それを含めました議事次第に従って進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まずは資料1-1「病原体サーベイランスについて」、事務局から説明をお願いいたします。
○島田補佐 事務局から資料1-1に基づきまして御説明申し上げます。先ほど部会長がおっしゃられましたとおり、結核に関する特定感染症予防指針につきまして、前回の結核部会で御了承いただきましたとおり、議論の軸となる項目ごとに議論を進めてまいりますが、まずは資料1-1のとおり病原体サーベイランスについて御説明申し上げます。
では、資料をめくっていただきまして、1ページ目をごらんください。結核に関する特定感染症予防指針に関する進捗状況の中間評価について、結核部会において取りまとめられました。参考のために、中間評価の本文は本日参考資料1として付けておりますが、この資料の1ページ目の下、一部抜粋して記載しております。
病原体サーベイランスの進捗状況について、多くの自治体が施策として病原体サーベイランスを構築し、遺伝子解析や菌株保存を行い、分子疫学的手法を用いて取り組んでいるという状況が明らかになりました。
では、続きまして、2ページ目をごらんください。これまで進めてまいりました病原体サーベイランスに関する法的な整備について御説明申し上げます。上半分、薬剤感受性につきまして、結核登録票、いわゆるビジブルに記録すべき事項に薬剤感受性検査の結果を追加いたしました。
また、下半分、病原体管理規制につきまして、三種病原体として取り扱う多剤耐性結核菌の定義を変更いたしました。
3ページ目は、感染症に関する情報の収集体制の強化について、感染症法の改正の、今年、平成28年4月施行予定の内容をあらわした図になります。患者さんの検体や病原体について、それを所持する者、これは医療機関等から検体等を頂いて、都道府県等が検査した結果、発生状況を正確かつ確実に把握する流れというのをあらわした図になっております。
なお、感染症法の改正に関連する情報につきましては、参考のため参考資料2-2として付けておりますが、細かい規定はまたごらんいただけたらと思います。
続きまして、4ページ目を御説明申し上げます。法に基づく検体採取についてです。現状では、感染症法の第15条、積極的疫学調査の一環として実施することとなり、御協力をいただけない場合には、行政対応に必要な情報が得られず、感染症の蔓延防止対策に支障を来すおそれがございました。このたびの法改正の施行後は、検体提出の求めについて、法律に明確に位置づけ、新条文第16条の3など、御協力をいただけない場合は、勧告や命令を前置した上で、ほかに手段がない場合に限って、強制的な収去、措置が可能となるような規定をすることで、患者さんの人権を尊重しながら、確実な実施、確実な情報把握を担保させております。
また、そのような検体の検査を実施する際には、その検査の精度を確保することが求められるところです。
続きまして、5ページ目は検体採取の運用の流れについてです。感染症法第15条、積極的疫学調査で行う場合、検体採取をまずは求めます。要請、お願いして御協力をいただく。御協力がいただけない場合は、感染症の蔓延防止対策に必要な検体や病原体に限って、採取等の勧告・命令を行います。それでもほかに手段がない場合に限って、強制的な措置を可能とする、そういう段階的で限定的な規定とし、公共の福祉と患者の人権、両者のバランスをとっております。
同じような規定で結核事務として多いのは感染症法第17条の健康診断ですが、病原体保有者の把握、適切な医療の提供及び感染症の蔓延防止を目的に健康診断を受けさせる勧告を行います。その健康診断の一環で検体採取が行われるという場合もあります。
6ページ目は、病原体サーベイランスの実施体制で、結核以外の感染症も包括した病原体サーベイランスの実施体制を示した図になっております。
(1)として矢印が書かれたところ、診断の届け出から、(2)今般の法改正の検体提出の依頼(命令)、そして(3)検体提供など、一連の流れをこの図の中でお示ししております。
7ページ目は、第3回の結核部会で参考人の資料から御用意いたしました。海外の多剤耐性結核の率をその地域ごとにあらわしたものでございます。字は細かいですが、Nと書かれた新規の患者、及びPの再治療で、いずれも日本と比べて海外では多剤耐性の率が高くなっていることから、MDRの輸入及びその菌の日本における蔓延が危惧されるところです。
最後の1ページですけれども、これまで御説明申し上げたことをまとめますと、現状、中間評価において自治体の病原体サーベイランス体制の構築状況が明らかとなりました。法改正により、知事は検体提出要請ができるようになり、地衛研は精度管理を実施することとなりました。
課題として、行政対応に必要な検査の結果が把握できない場合があります。
VNTR検査など、どのような菌のどのような検査の結果をどの程度広域的に共有するべきか、現在評価が十分なされておらず、また、薬剤耐性状況、特に二次薬への耐性などや海外由来の菌の流入状況が把握できておりません。
また、患者の減少、菌の分離機会の減少によって、今後は検査精度の維持が困難となってまいります。
そこで提案ですが、都道府県等は、菌が分離された患者、すなわち全ての培養陽性患者の菌を収集するよう努めることとし、その検査・分析を通じ、病原体サーベイランスの構築に務めることとしてはどうか。
国は、研究成果を見ながら、結果集約や菌の収集のあり方について検討を進め、多剤耐性菌を優先して収集するための体制を整えるとしてはどうか。
また、医療機関等は必要に応じ菌検査の外部精度管理を定期的に行うべきとしてはどうか。
以上、3提案、ほか御意見等についてお伺いいたします。
説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○加藤部会長 どうもありがとうございました。
ただいま事務局のほうから自治体等における状況、法的整備、それに基づく課題提案ということで、御説明をいただきました。ただいまの事務局の説明に対しまして御意見、御質問等ございますでしょうか。磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 幾つかお伺いしたい点と地研側の意見を述べさせていただきたいと思います。まず最初に、提案の1「全ての患者について、結核菌を収集するように努め」ということなのですが、地域によっては患者さんの数が多いところは、その予算というのが多分確保できない状況にあるのではないかと思うので、そこのあたり、予算的な措置が今後考えられるのかどうかという点が1つ。
あと、VNTRをやる場合に、患者情報、実地疫学の情報がないと、VNTRの結果だけだと余り意味がないと言ったら言葉が大げさ過ぎますけれども、患者さんの行動調査とか、そういう情報があって初めて活きるデータなので、VNTRだけみんなでやりましょうという話をしても、得られたデータがうまく生かせないと思うので、そこのあたり、保健所とか医療機関の人とのネットワークの構築が最初に来るべきなのではないかと思います。そのあたりについても触れるような体制にしていただけたらいいかなというのがあります。
提案の3番目ですけれども、外部精度管理ということがありますが、実際に地衛研でやっている検査というのは、ほとんどがVNTRとか遺伝子を扱うものであって、実際の菌を分離するところなどはやっていないので、精度管理を誰が中心になってやるのかなど、今回は「やったらどうか」という提案だと思うのですが、検査する側においてはすみ分けになっているような現状があるので、そこのあたりをうまく精度管理を、どのようにやっていくかというのは検討が必要かなと思っています。ここのところは少し考えていただきたいかなということがあります。
薬剤感受性の問題ですが、これは地方衛生研究所でもやっているところとやっていないところがあるので、ここのあたりをもう少し把握していくということになってくると、医療機関でやっているのか、地衛研でもやっているのかとか、そういうことも含めて、薬剤感受性についてはもう少し状況を把握する必要があるのかなと思います。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ただいまの件に関連する御意見とか質問ございますか。鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 北海道医療センター、鎌田でございます。
3つの御提案を含めまして、検査結果の集約体制の構築と精度管理と申しますものは、特に薬剤感受性検査では非常に重要なことと理解しております。
薬剤感受性なしは、耐性あり、薬剤感受性ありは、耐性なしを意味致します。耐性あり、なしのほうがお話をしやすいので、この言い方でお話をさせていただきます。薬剤耐性ありというのは、時として過大評価されやすい現状があります。これは検査の原理として、薬剤を包埋した培養培地に検体を接種して数週後の発育の有無を見るということですが、接種する検体の量の精度が確保されずに万が一多量に検体が接種されますと、本来その薬が有効な薬であっても、培養検査では発育してしまいますので、結果として耐性なしが耐性ありと判定されてしまうという問題があります。それが1点。
統計学的な事前確率、事後確率の詳細は省略いたしますけれども、耐性ありをなしと判定する偽陰性の問題はゼロではありませんが、実はそれほど多くありません。実際は、耐性なしを耐性ありとする偽陽性の問題のほうがはるかに大きいのです。結果的に耐性の問題が全くなくて本来使えるはずの薬をみすみす失ってしまうという事例を時々仄聞いたします。この点は情報として提供させていただきたいと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。
遠藤委員、どうぞ。
○遠藤委員 磯部委員がおっしゃった現場の状況でございますが、VNTRは全ての培養陽性の患者さんにもできればよろしゅうございますが、塗抹陽性の場合はすべて実施し、そして培養陽性の場合につきましては協議するという場合がございまして、そのためには都道府県での予算の確保、ある意味では国からの支援等も含めて検討する必要があるということが1点でございます。
VNTRの場合は、患者情報あるいは行動調査が必要であるという御意見につきましては、現場では逆に地衛研のほうに医療機関の情報を収集して、あるいはこちらで積極的疫学調査をして、患者さんの情報を伝えないと地衛研で検査してもらえないといったらおかしいですけれども、それが検査する上での状況であるというところを現場のほうから情報として提供いたします。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ほかございますか。では、磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 説明の中で、第15条、第16条によって積極的疫学調査をやるということになりますと、VNTRをやるにつきましても、SOP、標準作業書というものをつくっていくということが大前提になるわけですけれども、現在、ほかの感染症では、国立感染症研究所の病原体検出マニュアルというものがあって、おおむねそれをたたき台としてそれぞれの機関が自分のところでできるように改定していくという流れになっているのですが、結核につきましては、まだマニュアルがアップされていないので、皆さん、それについて、どこを見て標準作業書をつくろうかなと迷っているところですので、結核研究所さんで示されているものを使うのか、国立感染症研究所との兼ね合いというか、その辺を提示していただけるとつくりやすいかなと思いますので、お願いします。
○加藤部会長 ただいまの件ですけれども、VNTRについては衛生微生物技術協議会からマニュアルが出ていますね。
○磯部委員 ええ。マニュアルで、あれを使えば。
○加藤部会長 今の御指摘の点は、それ以外の点ということでございますか。
○磯部委員 それもですが、薬剤感受性のこととか。
○加藤部会長 ちなみに、薬剤感受性等については、日本結核病学会の抗酸菌検査委員会が2007年に出したマニュアルのアップデートを今、検討していると聞いてございます。
脇田委員、お願いいたします。
○脇田委員 ただいま御指摘がありましたけれども、感染症法が改正されまして、いろいろな感染症でSOP、作業手順書をつくりまして検査していかなければいけないと。重要なことは、自治体の間でギャップがなくなるということは非常に大事なことなので、作業手順書は非常に重要なところだということですので、それぞれの感染症において地衛研のワーキンググループ、レファレンスセンター等でコアになっている先生方を中心にSOPの作成を今、進めているところです。そういう場には感染研で担当している部局、そういうところも立ち会っていいものをつくっていこうと。
その際に、一番コアになっているところの先生方が中心になってやりますので、どうしても結構濃密なものになってしまうところがありますので、各地衛研でなるべく使いやすいものをつくっていくという作業が必要かと考えています。それも含めまして、今、結核の、自治体での検査フロー、SOPを含めた検査フローというものを決めて、それで機能的に稼働することが重要だろうと考えます。
今、御説明にもありましたけれども、海外からの耐性菌の持ち込み等を考えますと、サーベイランスは非常に重要だということですので、きちんと計画をして実施する必要があろうかと考えます。
一方で、全ての患者に対して病原体サーベイランスをやっていくということになりますと、毎年1万人ぐらいあるということですので、非常に作業量が多くて、地衛研自体でやり切れるのかという課題もあろうかと。先ほど磯部先生から御指摘がありましたけれども、地衛研によってはかなり患者数が違うとか、できる能力が違うところもあろうかと思いますので、そこのところを全数収集することの意義というものも十分に検討してやっていく必要があるかと思います。
薬剤耐性につきましては、結研のホームページ等で公開していただくと、情報としては非常に有能ではないかと思っています。
検査手順書の整備あるいは精度管理につきましては、感染症研究所でもお手伝いできるところはなるべくやっていこうということにはなっていますが、地方衛生研究所のワーキンググループ等をつくってやっていかれるのが一番いいのではないかと考えております。
以上です。
○加藤部会長 有馬委員、どうぞ。
○有馬委員 大阪市東住吉区保健福祉センターの有馬です。
1点確認というか、理由をちょっとお聞きしたいのです。提案の2点目です。以前こちらのほうに事前に送信していただいた文章の中には「多剤耐性結核菌及び外国出生患者の結核菌を優先して収集する」というような文言であったかと思うのですけれども、今回「外国出生患者の」という言葉が抜けているという点です。最初に見たときには、若者、20歳、30歳代のところは外国出生の結核の患者さんが徐々にふえてきているというのが今の日本の現状で、今後2020年までに罹患率を10以下にするというところの中には、外国出生の結核の患者さんがどのような菌状況になっているのかとか、蔓延状態がどうなのかとか、そういう情報を入手しておくということは、確かに数が多くなる、お金の関係もあるのかもわかりませんけれども、今後のことにつきましては、やはり必要になってくるのではないかなと思うのですが、抜いた理由をお聞かせいただきたいのです。
○加藤部会長 今、いろいろ課題が挙がっていますけれども、短い質問なので、これのみ事務局から回答をいただけますか。
○島田補佐 今、有馬委員から御指摘いただきました点ですが、以前に有馬委員に御相談申し上げた際には、この資料の中で「多剤耐性の患者さん及び外国出生患者」と記載したもので御相談申し上げたところですが、外国からの輸入という点で見た際に、外国生まれの方の例えば生きた菌を収集するということで何か得られるということではなく、むしろそれは全ての培養陽性患者の菌を検査する中で、その違いが出てきたときに初めて輸入の状況がわかるという考えもあります。今回の資料の中で御提案させていただくものの筋が通っているものとしましては、耐性菌については、優先して集めていくということで、検討した次第です。経過と理由については以上でございます。
○有馬委員 わかりました。ありがとうございます。
○加藤部会長 ありがとうございます。
ほかに何かありますか。
今までいただいた意見をまとめますと、1つは精度管理をどうするかということ。これは、これまで結核病学会の抗酸菌検討委員会が中心になって実施してまいりましたけれども、制度上もちゃんとしなければいけないと思います。ただ、これは予算等々が絡む話ですので、具体的にどうするかということはこの先の課題であると思います。ただし、問題の必要性については、恐らく皆さん、御理解できたものと思っています。
2つ目のVNTRの疫学情報も非常に大事な課題だと思います。ただし、個人情報の取り扱いというのは自治体ごとの条例にもかかわってきますので、これもそれぞれの自治体の状況をよく考えながら、検討を進める必要があろうかと思います。この精度管理の問題については、各委員御指摘のとおり必要性があり、具体的なことはさらに検討が必要ということでいかがでしょうか。
SOPにつきましては、脇田委員から御指摘ございましたとおり、大変重要な問題だと思います。結核関係については、従来いろんなマニュアルとか手引がありますけれども、研究班でつくったものをこの部会で承認いただくことも考えられますし、あるいは学会でつくったものであったり、いろいろな手法で策定してきたものと思います。それぞれの必要性等々に基づいて、またはこれまでの経緯等に基づいてつくってきたということになりますから、薬剤感受性検査等々につきましても、ただいま申し上げたように、学会等もそういう動きがございますし、必要に応じまして研究班あるいは学会等と協力しながらつくっていくというのが現実的な選択肢かなと思われるところでございます。
このようなまとめ方をさせていただきましたが、何か御意見ございますでしょうか。何か不足がありましたでしょうか。よろしいでしょうか。
さまざまな御意見がございましたが、いただきました御意見や議論を含めてこの予防指針に反映させていくということで、8ページの提案について、部会で承認という方向でよろしゅうございますでしょうか。よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○加藤部会長 それでは、承認ということでまとめたいと思います。
それでは、資料1-2、BCG接種(小児結核対策)に移ります。
まず、審議に入る前に、審議参加に関する遵守事項について、事務局から報告をお願いいたします。
○島田補佐 それでは、本日の審議参加の取り扱いについて御報告いたします。本日の議題、BCG接種(小児結核対策)につきましては、乾燥BCGワクチン、日本ビーシージー製造株式会社に関する審議を予定しております。
本日御出席いただきました委員から厚生科学審議会結核部会審議参加規程に基づきまして、これらの品目の製造販売業者からの寄附金、契約金等の受け取り状況、これらの品目の薬事承認の際の申請書類への関与について、御申告をいただきました。
委員からの申告内容につきましては、お手元に配付しておりますので御確認いただければと思いますが、本日御出席の委員のうち、鎌田委員、加藤部会長及び徳永委員からは日本ビーシージー製造株式会社から50万円未満の講演料受け取りの申告がありましたことを御報告いたします。なお、委員等からの申告資料につきましては、厚生労働省のホームページで公表しますことも申し添えさせていただきます。
事務局からの報告は以上です。
○加藤部会長 ありがとうございます。
それでは、資料1-2「BCG接種(小児結核対策)」について、事務局から説明をお願いいたします。
○島田補佐 事務局から資料1-2「BCG接種(小児結核対策)」について、御説明申し上げます。資料1-2をめくっていただきまして、1ページ目をごらんください。
こちらは定期のBCGの接種制度の変遷を図で示したものです。一番右、平成25年度に接種時期を「生後1歳に至るまでの間にある乳児」に変更しまして、標準的な接種期間を5カ月から8カ月に達するまでとしたところです。
続きまして、2ページ目はグラフを2つ御用意しております。左のグラフはBCGの接種率でございまして、接種時期を変更する前の平成24年度までは、目標の95%には達していませんでしたが、おおむね高い接種率を続けておりました。平成25年度につきましては、接種時期を変更したまさにその年度でありまして、接種する時期を後にした影響がありまして、接種率の見かけ上、その値が低く表示されてしまいますので、制度の変更時点を含まない年度の値を見てみないと、この接種率については何とも評価ができないものかと存じます。
右のグラフに移っていただきますと、小児結核の発生数でございますが、年間100人を切りまして、減少傾向にもあります。BCG接種が小児結核の減少に寄与しているものと考えられます。
3ページ目は、BCGの接種後の骨炎・骨髄炎の副反応の発生状況について集計をしているものです。昨年の3月、第5回結核部会の資料と同じものですが、現時点においても最新のものとなっております。BCGの副反応につきましては、年度をまたぎ、越えて発生することがあると言われておりまして、BCGの接種時期を変更した影響につきましては、副反応の発生状況を追っていき、評価を行う必要があると考えられます。
4ページ目は、海外のBCG接種の状況について説明したものでございます。地図について、色がついた国、海外のほとんどの国において、乳児など、ある年齢全員に対しましてBCGを接種しているところです。ただ、一部の国、白く抜けた国々の一部におきましては、BCGの接種対象をハイリスク者に限定して接種しております。我が国におきましては、罹患率の低下に伴いまして、以前国際機関が出したBCGの接種を検討する基準を下に示しておりますが、この基準を見て、日本は間もなく満たす見込みとなっております。ただ、この基準自体は今の日本で適用するべきものなのか、科学的な知見と検討が必要ではないかと考えられます。
5ページ目です。まとめますと、現状でBCG接種の対象を変更いたしました。その影響は副反応報告等を追ってまいります。海外の一部の国におきましてBCGの接種対象をハイリスク者に限定しております。小児結核については減少傾向で、現在研究班におきまして小児の結核の事例の広域的な共有がなされているところです。
課題と提案でございますが、今後我が国が低蔓延国化を果たし、将来にはBCG中止または選択的接種をする時期が来ると考えられますが、今以上に小児結核が減少して研究が進めにくくなるという時期が来る前に、今からBCGの中止または選択的接種の導入の検討に必要な研究を進めていくとしてはどうかと御提案申し上げます。
御提案、ほか御意見についてお伺いいたします。
説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ただいまBCGの現状、課題、提案ということで、一連の御説明をいただきました。ただいまの事務局の説明に対しまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。徳永委員、どうぞ。
○徳永委員 小児結核を診療している立場から意見を述べさせていただきます。今の御説明の中で1つ確認しておきたいのは、小児結核の症例数が100例を切って、2014年50例を下回ったということを受けて、BCGの接種方法の変更を検討するというところは、多分正しくないというか、それはBCGの接種を勧奨している、その効果としてそういうふうに少なくなったということは確認しておきたいと思います。
ただ、人口全体の結核罹患率が順調に減ってきて、今後低蔓延に入っていったときに、確かにBCGワクチンの接種方法の変更を検討していくことは必要だろうと思っています。その際に、「現状」の中にも書いていただいているのですけれども、研究班の中で小児事例の広域的な共有ということなのですが、今後こういった検討を行っていく上で、小児に限った症例に関して、いろんな症例背景であるとか情報がより詳しく検討しやすいような情報提供体制を一つつくっていただければなと思っています。
それから、全例接種から選択的接種に移行していった国でこういったハイリスク者に限定しているということなのですけれども、今、お話ししたような小児症例、発病例に関しての詳細な検討というのは、こういうハイリスクグループを決めていく上でも非常に必要な情報だろうと思いますので、その辺のことに関しても御協力願えればと思います。
それからもう一つ、実際BCGを選択的接種あるいはやめてしまうということに至ったときには、一時的にはどうしても小児結核症例がふえることが起こると思います。そのときに自分が心配しているのは、こういうふうに小児結核症例が少ない状況では、今、ずっと少ない状況が続いていますから、小児結核に対しての診療精度が非常に落ちてしまっているのではないかなという懸念があります。BCGをやめて、一時的に小児結核症例がふえて、発病に至ったお子さんが出たときに、それをしっかりと診断したり、あるいは治療できるような診療体制を確保したりということもあわせて考えなければいけないのではないかなと思っています。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
今あるデータは、診断されたものがデータになっているのですが、本当にちゃんと診断できる体制を確保する必要があるという前提で、御指摘のとおりかと思います。なかなか容易ではないですけれども、頭に置いておかなければいけないことかというふうにお聞きしました。
委員の皆様、ほかにご意見はありますか。鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 北海道医療センター、鎌田でございます。
御提案の中のいわゆる選択的接種の導入の選択の基準というのが4ページ、今、徳永委員もおっしゃった「高まん延国出身者や家族に医療従事者がいる児などのハイリスク者」を想定しているものか。ないしはこの基準にプラスして、ほかに我が国独自で選択基準を設けるようなお考えがあるかどうかについて、確認させていただきたいと思います。
○加藤部会長 委員の中で御意見のある方はいらっしゃいますか。この選択の基準というのは大変難しい問題かと思うのですけれども。徳永委員、どうぞ。
○徳永委員 これは非常に難しい問題だと思うのですが、例えば低蔓延国の中で、アメリカなどはもとからBCGワクチンは行っていなかったわけですけれども、例えばアメリカなどは、発病に至っている子どもにしても大人にしてもそうですが、人種的な背景であるとか、そういうのがかなり偏っているという事実があります。今、日本で例えば子どもに関して言うと、高蔓延国からの出身、あるいはそこで生まれた子どもたちというのはまだ10%か15%程度で、必ずしもそこに偏っているわけではないので、ある特定のハイリスクグループを定めるというのが非常に難しいかなと思っています。
あとは小児の発病例にかなり地域差もありますけれども、地域で割ってしまうというのも非常に難しい方法ですし、ハイリスク集団をどういうふうに決めていくのかというのは非常に大きな検討課題かなと思っています。
○加藤部会長 ありがとうございます。
ほかにこれについて御意見のある方。山岸委員、どうぞ。
○山岸委員 先ほど徳永委員がお話しになったことなのですが、診断治療の確保ということは非常に重要なことだと思います。千葉県のことから言いますと、千葉県は人口がかなり多い県だと思うのです。ところが、小児の結核の治療を行える医療機関が一つもない。では、小児結核が出るとどうするかというと、東京まで行って入院するか、外来通院にしても東京まで行っているということです。各都道府県はそうだと思うのですけれども、小児の結核を治療できる医療機関の確保について御検討いただければと思っております。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
重要な御指摘かと思います。これは医療提供体制ということにも関連する中で、議論が必要と思います。
ほかに。吉山委員、どうぞ。
○吉山委員 これは質問なのですけれども、2つあります。
1つは、小児の結核性髄膜炎、粟粒結核がしばらく0ないし2ぐらいだったのですが、2014年はちょっとふえております。これにつきまして、接種年齢をおくらせたことは関連があるかないかについての情報がございますかどうかお伺いしたいというのが1つ目。
2つ目は、BCGをやめた国、例えばスウェーデンがやめたときは、今回も問題となる骨炎、骨髄炎が容認できないくらい多いということで、それが中止に大きな影響を与えたと伺っていますけれども、現在、BCGのデメリット、もちろん、コストが一つありますが、それ以外にデメリットとしては何が一番考えられるかということをお伺いしたいです。
○加藤部会長 徳永委員、よろしいですか。
○徳永委員 2014年に結核性髄膜炎が5例程度あったと思うのです。それに関しては、BCGの接種時期が5から8にずれたのは2015年からなので、それの直接的な影響はないと思いますし、詳細には把握していないですけれども、全てが乳児例ではなかったというふうに聞いています。
接種時期が後ろにずれたことの影響に関しては、2015年に後ろにずれてから、BCG接種時に結核に感染しているかもしれないコッホ現象の報告例がふえているというのが少し気になっていますので、今後そこの動向はしっかり見ていく必要があると思います。
それから、BCGワクチンを接種することのデメリットですけれども、1つは、今、吉山委員がおっしゃったように、骨炎に関して、2015年に接種時期を変更するまで、多い年で年間10例弱の発生があったということです。数としては少ないかもわからないのですが、骨炎というのは、長期の治療であったり、あるいは外科的な治療であるとか、そういった対応が必要な比較的重篤な副反応だと思っていますので、そういったものが以前に比べればふえてきたということが一つ懸念される材料だろうと思います。
それともう一つ、もっと数は少ないのですけれども、先天性の免疫不全に伴ってBCG感染症を起こして非常に重篤な状態になる、あるいは場合によっては生命にかかわるようなお子さんも1年に1名とか、あるいは数年に1例おられるということも理解しておく必要があるかなと思っています。
○加藤部会長 ありがとうございます。
小森委員、どうぞ。
○小森委員 検討に必要な研究を進めるということについては基本的に賛成です。
しかしながら、ハイリスクグループは社会的な弱者の方に多いということに十二分に配慮いただくことが必要だと思います。
○加藤部会長 ありがとうございます。
ほかございますでしょうか。味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 BCGは乳児に効果があって、昔は大人も打っていましたけれども、開業医の先生たちはBCGに対する過信というのがまだありますので、BCGをやめるに向かっては、そういった教育も大事なのではないか。私自身は研究して、低蔓延国になれば、BCGは最終的にやめていただいたほうが、結核の診断にはよいと思います。今、結核の診断にQFTとかを使わざるを得ませんけれども、アメリカですとツベルクリン反応で済んでしまうわけですから、そういった方向に行くほうが望ましいと思っています。
○加藤部会長 ありがとうございました。
南委員、どうぞ。
○南委員 私も一点御質問させていただきたいのですが。先ほどのお話に出ておりますように、低蔓延国になっていく方向で、BCGが廃止できるということは好ましいことだとは思うのですけれども、一方で小児結核の診断と治療の担保ということは非常に重要なことです。首都圏の一部でもある千葉県でも、1つも施設がないというのはちょっと驚きで、全国的にそういう県はたくさんあるということなのでしょうか。
○加藤部会長 情報はありますか。徳永委員、どうぞ。
○徳永委員 決して小児結核の診療が難しいわけではないのですが、余り診療したくないという小児科の先生も多いようで、各都道府県内で診療できないケースというのもしばしばあります。関東に関して言っても、千葉県に限らず、ほかの県から東京に来て治療を受けておられるという現状はあると思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。
南委員、どうぞ。
○南委員 県という単位がふさわしいかどうかはともかくとしても、行政上は今、医療は全体的には都道府県単位に動こうとしているわけですから、最低でも各県でそういうことが担保されないと心配なことかと思います。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ほかございますか。
いろいろな意見をいただきまして、ありがとうございます。1つは、今のお話にもございましたとおり、小児に対する医療の確保がちゃんとできるということが前提になるというのが一つあると思います。
もう一つ、拙速に結論を出すということでなくて、きちっとした研究が必要だろうと。事務局の御説明にもございましたとおり、国際的な基準が本当に適正なのか、あるいはそれを日本に適用することについて本当に妥当性があるのかといったことも必要かと思います。
実は学問的にもBCGというのは発病を防ぐこと、感染を防げないと言われていたのですけれども、昨年の12月にケープタウンであったIUATLDの学会で感染も防いでいるのではないかという疫学データ、そういう話がありましたし、私どもの島尾名誉所長が、BCGをやった後の世代というのは陳旧性病変を持っているのが少ないのではないかということもおっしゃっています。
こういった学問的観点からもBCGの効果、それから今お話しましたデメリット。これも副反応がそんなに多くないものですから、データをきちっと出すにはそれなりの時間が必要かと思います。こういったことも含めて、提案にございますように「検討に必要な研究を進める」というまとめ方かというふうに理解してございます。
皆様、部会としてこのまとめについて承認いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○加藤部会長 ありがとうございました。では、こういった形で進めてまいるということにいたします。
それでは、資料1-3、DOTSに移ります。
事務局から説明をお願いいたします。
○島田補佐 資料1-3、DOTSにつきまして御説明申し上げます。
資料をめくっていただきまして、1ページ目でございます。こちらはDOTSの推進につきましてあらわした図ですけれども、入院した患者さんがチームで服薬支援する院内DOTSから、退院後、地域の関係機関や関係者が連携して、患者さんの入院環境に応じて支援する地域DOTSを図で示したものになっております。
2ページ目は、地域の関係機関と連携してDOTSを実施している自治体、青の棒グラフのほうが、そうではない赤の自治体よりもDOTSの実施率の数値が高くなっているということをあらわしたグラフになっております。
3ページ目は、平成25年のDOTS実施率の達成状況ですが、全国の自治体に御協力いただき調査しました結果、平成25年のDOTS実施率については87.5%でした。ただ、DOTS実施率の定義について、それをお示ししたのが昨年、27年1月でもありまして、平成25年の時点ではその定義に沿って取り組めていなかった自治体もある旨、この調査結果の収集の過程でお聞きしておりまして、評価年の27年においてはその体制も整えられ、改善が期待されるところではないかと考えております。
また、下半分ですが、25年の内訳を見ていただきますと、真ん中あたりの塗抹陽性は比較的高いものの、塗抹陽性以外や肺外結核につきましては84%、LTBIについては70%台となっておりました。
4ページ目は地域DOTSの実施状況としまして、平成27年7月1日から31日の1カ月間における地域DOTSの実施状況をあらわしたものです。縦の青の棒グラフにつきましては、地域DOTSで支援した患者数を積み上げております。保健所から依頼されて医療機関や薬局など地域の関係機関におきまして地域DOTSを実施しているという実績が明らかになりました。赤い折れ線グラフについて、こちらは患者1人当たりの7月1カ月の間の支援回数でございまして、そこにありますのは、介護保険事業所などの患者に身近な関係機関において支援する回数が多くなっているということが一定読み取れました。
では5ページ目でまとめますと、現状として、結核の再発や耐性化を防止するため、保健所はDOTSを軸とした患者の支援を行っております。地域DOTSについては、地域の関係機関に依頼できる旨、法律上規定いたしました。身近な関係機関では、患者1人への支援の回数が多くなっておりました。
課題といたしまして、DOTS実施率について、塗抹陽性の患者以外、肺外結核の患者においてDOTS実施率は高くなく、さらにLTBIの者に対する支援、DOTS実施率も低い状況でした。
提案でございます。引き続きDOTSを推進してはどうか。また、保健所はDOTSの実施や関係機関との積極的な調整など、地域の結核対策の拠点の役割を引き続き果たすとする。また、地域DOTSは、必要に応じて関係機関に積極的に実施を依頼し、LTBIの者も含めて患者を中心として、患者中心に、患者の生活環境に合わせた支援をしていくとしてはどうか。
以上3点提案と御意見等についてお伺いいたします。
説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ただいまのDOTSに関する説明でございますけれども、委員の皆様から御意見、御質問をいただきたいと思います。有馬委員、どうぞ。
○有馬委員 大阪市東住吉区保健福祉センターの有馬と申します。
今回、平成25年度のDOTS実施率の調査、以前からただDOTSの患者を率で出すというのではなくて、塗抹陰性、陽性とかLTBIとかという形で収集していただけたらという意見を事務局はのんでいただいて、本当にありがたいなと思いました。
大阪市もそうですけれども、各自治体は調査の回答においては大変だったかもわかりません。しかし、ここではっきりとどこにきちっとかかわりが持てていなかったのかというのがまず見えたと思うのです。その中で、喀痰塗抹陽性の患者さんは、院内DOTSがあり、病院の中で専門的に患者教育も受け、DOTSの必要性を感じて地域の中に帰ってこられますので、地域DOTSは本当にスムーズにつながっていき、93.6%という率が担保されているのだろう。
しかしながら、喀痰塗抹陰性ないし肺外、LTBIの患者さんに対しては、保健所、一般医療機関、地域の病院、そこからスタートになってくる。そこにおいて、私も保健師ですので、保健師から患者さんへの教育がまだまだ足りていないというようなこととか、介護保険事業所とか学校・職場、そういうところでは患者さんへの実施回数がふえていて、これはまさしく確実に薬を飲めていけている、患者さんが確実に治っていっているというのがはっきりと見えているというところです。こういうところにDOTSがしっかりとなされていくことが、もっと結核が確実に治り、罹患率が減ってくるというところにつながっていくという形になってくると、もっともっとDOTS支援者に対してのDOTSの教育みたいなところが必要になり、そこがまだ私たち保健師に足りていないのだということがこの調査に協力することで見えてまいりました。
私たち、苦労した分そこが感じ取れたということは、きっと各自治体も感じながら、今後の活動の方向性というのを感じているのではないかなと思っています。大阪市もその点、頑張ってDOTSを実施していかないといけないですし、薬局がかなりふえてきているというところもあります。
患者さんの職場の近くでも医療、そういう薬をとりに行くという状況からいったら、薬局DOTSも大阪市はぐんぐんふえてきているので、いろんな関係機関の協力も得ていきながら、DOTSをしっかりと実施していくことは、今後もとても必要になってくると思います。その点、この調査の中で私たちは学ぶことができたなと思って感謝しております。ありがとうございます。
○加藤部会長 ありがとうございました。
杉本委員、どうぞ。
○杉本委員 大阪府薬剤師会、杉本と申します。薬局の立場から意見と御提案を申し上げたいと思います。
大阪市のほうは、今、有馬委員がおっしゃったように、平成13年ぐらいでしたか、「ふれあいDOTS」の一環として薬局DOTSを進めてきたのですけれども、実際大阪市薬剤師会会員を対象にアンケートをとりまして、「現在実施している」というところが、回収した445薬局の中から11%、「以前実施したことがある」というのが24%、3分の2ぐらいが「実施したことがない」という回答でした。
「実施したことがない」理由としまして「依頼がないから」というのが一番多い理由だったのです。大阪市の中でも区によって非常に差がございまして、患者数にかかわらず、保健所とかとのつながりをきちんと持って、研修会をしたり、薬剤師教育がなされているところは、アンケートの結果としてもその回数が多く出ておりました。
その中で「新規に取り組みますか」というアンケート結果では、75%が「取り組む」ということで、薬局側もそのように準備は整っているというのが現状です。
ちなみに、取り組まない理由としましては、薬局は薬剤師不足になっておりまして、一人薬剤師のところもあったりしますので、そういった人員不足であったりとか、あるいは私はそれほど煩雑だとは思わなかったのですが、人によってはその報告書、提出書類が面倒くさいという意見があったり、あとは委託料の問題です。
ことしから全国の5万7,000薬局をかかりつけ薬局としていくという方向にありまして、なおかつ、その上の高度医療管理ができたり、あるいはセルフメディケーション支援が強化できたりするような薬局を健康サポート薬局としていくという、中学校区に1つ設けるような体制を整えていくというふうに聞いておりますが、かかりつけ薬剤師になるに当たって薬剤師は生涯学習に努める必要があると考えられます。この薬剤師の生涯学習の中で感染症対策のようなところを織り込んでもらえたらいいかなと思います。というのは、大阪市に関しましてはそのような研修をうけたりしているので、こういうDOTSに関しても関心はあるのですけれども、そうでないところというのは、結核と聞いただけで、ほかの患者さんに迷惑がかかるから困るというような御意見もありました。そういったところで薬剤師がもうちょっと意識を高めていくということも必要かなと感じています。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
遠藤委員、どうぞ。
○遠藤委員 保健所の立場から実際に地域DOTSをどのように実施しているかというお話をさせていただきたいと思います。もちろん、院内DOTSも含め、外来DOTSあるいは訪問DOTS等もございますが、一人一人の患者さんにDOTSカンファレンスをして、その地域の関係機関、関係者に集まっていただいて、例えば高齢者の方であればケアマネジャー、そしてかかりつけ薬局の方などと、DOTSカンファレンスで退院後を含めてどのようにその人をフォローしているかということをそこで詰めていって、あるいは時には保健所で訪問DOTSをしたり、あるいは病院の外来DOTSとか重層的に、重ねてDOTSを推進していくという方向性を保っています。それとともに、保健所といたしましては、地域の感染対策のネットワークというのを以前からつくっておりまして、大学病院、医療機関、社会福祉施設等、そして保健所です。「社会福祉施設等」ということは、もちろん高齢者施設も含めての話でございますが、さらに地域の感染対策の研修会、さらには地域の服薬ボランティア研修会の中に薬剤師の方、薬局の方、そしてケアマネジャーさんを呼んで、依頼して勉強会をし、研修をしています。そして、患者さんに応じてかかりつけ薬局に連絡をとってDOTSをお願いするということで、薬局DOTSもボランティア的なこともございますが、保健所から患者さんのかかりつけ薬局に積極的にお願いするという対応をとらせていただいております。その結果、自分たちの保健所でも自助努力しますが、関係機関と連携して充足しているというような実施状況として読み取れるのではないかと思います。
以上です。
○加藤部会長 情報提供ありがとうございました。
杉本委員、どうぞ。
○杉本委員 今、薬局DOTSができるのは、名前のとおり薬局だけなのですけれども、現在薬局とドラッグストアが併設しているところが非常にふえてきていまして、服薬指導、投薬はもちろんその薬局のほうでするとしましても、薬殻チェックぐらいはドラッグ側の薬剤師も簡単にできることなのですね。ですから、そういったところももうちょっと広げていただけたら進めやすいのではないかなと考えます。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
法律的には「保健所長が必要と認める者」という中にあらゆる職種が入っているという理解でよろしゅうございますね。
○島田補佐 はい。
○加藤部会長 ですから、保健所長の判断によって、そういうことも制度上は可能ということです。貴重な御指摘だったと思います。
有馬委員、どうぞ。
○有馬委員 1点保健師からのお願いなのですけれども、先ほど言いました喀痰塗抹陰性患者さんは、一般の医療機関ないし開業医の先生のところで治療がスタートになってくると。そのときに主治医の先生から、保健師さんからDOTSの話があったら必ず受けるのよというような形で積極的に服薬支援を受ける勧奨を先生のほうからしていただきますと、私たちも。華々しい結核の症状がない方に私たち保健師なり関係機関の者がDOTSを実施していくに当たっては、患者さんへの落とし込みがなかなか難しい点があります。その点の御指導のほうをぜひともお願いできたらなという点があります。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ほかございますか。味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 豊島病院の味澤です。
私も年に1人ぐらい結核の治療をしているのですけれども、3年前ぐらいまでは主にHIVの患者さんだったのですが、私自身だけなのか、1回もDOTSを何とかと言われたことがないものですから、意外と宣伝されていないのではないのかなと思います。30年ぐらいずっと1年に何人かは結核の治療をしていますけれども、1回もありませんので、逆にその辺はよろしくお願いします。
○加藤部会長 情報をいただきました。ありがとうございます。
実際、保健所によって少し差があるということはございますね。実際こういった指標をつくることによって全体を把握することができたということがありますし、その指標の達成に向かって各保健所がこれから努力していただくという意味では、今、委員御指摘のようにそれなりの有効な指標ができたということで、今後の改善を期待したいというところかと思います。
薬局のDOTSについていろいろ情報もいただきましたし、御意見もいただきました。これも地域によっていろいろ差があって、最近あるところでDOTSに関する議論があったのですが、杉本委員御指摘のように、薬局側から「保健所から依頼がない」という意見もありました。これに関しては患者中心の服薬支援というのがキーワードだと思いますので、それに向かって薬局の体制の整備と同時に、保健所からも薬局に情報を伝達して、患者さんにとって最もいい方法を提供するというのが趣旨かと思います。
ほかに何かつけ加えること、言い残したことはございませんか。よろしいでしょうか。
そうしましたら、1-3、DOTSについての提案につきまして、部会として承認ということでよろしゅうございますでしょうか。
(「賛成です」と声あり)
○加藤部会長 ありがとうございます。それでは、原案のとおり承認させていただきます。
続きまして、資料1-4、管理検診に移ります。
事務局から説明をお願いいたします。
○島田補佐 資料1-4、管理検診について、資料に基づき御説明申し上げます。
資料をめくっていただきまして、1ページ目は、感染症法第53条の13、結核の精密検査、いわゆる管理検診の法令上の規定を整理したものです。
管理検診につきましては、結核登録票に登録されている者に対して精密検査を実施することを言いまして、必要があると認めるときに保健所長が実施いたします。
登録される結核回復者というのは、医療を必要としないと認めてから2年以内の者とされ、全ての結核登録者は治療終了後2年間、6カ月ごとに病状を把握され、他で把握できなければ管理検診が実施されるというような運用がなされているところです。
2ページ目をごらんください。こちらのグラフは、年末時、すなわち12月31日時点の登録者数の推移をあらわしたものです。患者の減少に伴いまして、棒グラフで積み上げた結核登録者数につきましても一定減少しておりましたが、平成22年になりまして、活動性分類に潜在性結核を追加したことによりまして、グラフでは緑のLTBI治療中及び紫の治療後に経過観察中の者が登録者として扱われることとなりまして、保健所長が病状を把握する登録者の数が増加しております。
3ページ目は、平成24年登録者で治療完遂後、中断や死亡されずに治療を終了された後、どれだけの方が肺結核を発症したか、それを集計したものになっております。上は肺外結核の患者、下はLTBIの者について。治療完遂後2年間で肺結核を発症したのは、それぞれ0.20%、0.13%でありまして、またそれらの半数は現に医療機関の受診を契機に発見されているという実態が明らかとなりました。
4ページ目につきましては、結核に感染してLTBIの治療を行った者と、治療せずに経過観察した者の保健所での取り扱いの違いを例えとしてお示ししたものでございます。結核の接触者に対する健康診断、つまり接触者健康診断で経過観察をする場合であれば、一般的に「接触者健診の手引き」に沿って2年間経過観察が行われます。
一方で、LTBIとして治療する下のパターンの場合では、LTBIの治療期間プラス治療終了後の2年間病状を把握することとなります。
このように同じ時期に感染した者において、例えば発症のリスクを下げた者のほうが長期間にわたって保健所からの経過観察を要するという現行の運用となっております。
5ページ目、まとめますと、現状ですが、保健所長は、患者の治療後2年間病状を把握しておりますが、LTBIの者の分その業務がふえている一方で、肺外結核やLTBIで治療終了後2年間観察いたしましても肺結核の発症は0.20、0.13%でした。
課題といたしまして、LTBIを治療してリスクを下げたほうが長期間の経過観察を要するという制度になっています。
提案でございます。肺外結核やLTBIにおいては、治療終了後定期的にあるいは有症状時に結核を治療した医療機関やかかりつけ医などを受診するよう指導を徹底し、保健所長はその診断結果を把握していくべきか。
また、LTBIは、原則として現行どおり治療後2年間登録するとして、保健所長がリスクが高くないと判断した者に限って、2年間のうち適当な時期で結核登録者から外し、登録を削除できることとしてはどうか。この提案は別途施行規則の改正が必要ですので、特定感染症予防指針と並行して適用をめざすという形になりますが、あわせてお伺いいたします。
説明は以上です。どうぞよろしくお願いします。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等を伺いたいと思います。
鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 1点御質問させていただきたいと思います。3ページ目の肺外結核患者の2年以内の肺結核発病のデータは寡聞にして存じ上げなかったのですが、肺外結核の内訳というのは承知なさっていますでしょうか。と申しますのは、粟粒結核は肺外に分類されますので、粟粒結核であれば2年以内の肺結核発病はある程度想定されると思うのですけれども、いわゆる腸結核であるとか、純粋な意味での肺の外の結核患者の治療終了後2年以内の肺結核発病がこれだけの数字で起こっているとすれば、注意を払うべき問題と思います。肺外結核の内訳、もしも機会がありましたら教えていただければと思います。
○島田補佐 事務局です。
具体的な病名を微細に伺っておりませんので、例えばこの8人について調査が必要であれば追っていきたいと思います。
○加藤部会長 ほかございますか。
確認なのですけれども、今の図の中で「医療機関受診」とされているのは、有症状で見つかった人でしょうか。それとも医療機関が自主的に経過観察をしている中で見つかった人も含まれているという理解でしょうか。
○島田補佐 事務局です。
こちらの調査につきまして、発見された契機を自治体のほうで選択していただきましたものを集計したものでございます。それが有症状での受診なのか、例えば並存疾患の定期受診中に発見されたものなのかなどは区別して集計しておりませんが、一部の者については、例えば悪性疾患の治療経過の中で発見されたというような事例を伺っております。
○加藤部会長 ありがとうございました。
それでは、質問が先行しましたけれども、これにつきまして御意見、また、ほかにも質問がございましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。遠藤委員、どうぞ。
○遠藤委員 遠藤です。
全国の保健所長からのLTBIの治療をした6カ月後、2年というのは、ある意味では通常の結核管理検診と整合性がないというか、長いのではないかという話がよく意見として挙がってきている現状はございます。
提案につきましては、患者さんも2年間の間に関節リウマチが発生して例えば生物学的製剤を使ったとか、あるいは免疫抑制剤を使ったとか、あるいは発がんしたとか、その状況によっていろいろ変化する場合がございますので、私ども保健所としては、有症状時には医療機関を必ず受診するということなどを、肺外結核にしてもLTBIにしても肺結核そのものについても、必ず患者さんにお知らせして、定期健診を含め情報提供をしております。
全国保健所長の全てではございませんが、そういった意見もあるので、接触者健診で経過観察をする場合と同じような形ということで検討して、保健所長が判断した者に限り云々を含め、現状では提案の上か下かというよりは、両方を並行して進めたほうがよろしいのではないかと個人的には考えます。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ただいま遠藤委員御指摘のLTBIをしたほうが経過観察が長くなると。実は日本結核病学会の予防委員会でもこの検討を今、始めているところでございます。私は予防委員会に所属しているので、かかわっておりますけれども、LTBIをしたほうが発病までの期間が長くなるというデータがあるのです。ですから、医学的に全く意味がないというわけではないのですが、ただ、それが2年間でいいのか、あるいは本当にそこまで必要なのかということについては、さらに検討が必要ということです。
○遠藤委員 その点で質問ですが、LTBIで2年以上経過して、もちろん患者さんの行動パターンが違うわけですから、どの程度発生するか。例えば3年後、4年後とか、長くなればなるほどほかの要因も入ってきますけれども、そういうデータといいますか、インスピレーションでもよろしいですが、どういった状況でしょうか。
○加藤部会長 今、手元にはデータはないのですけれども、集団感染事件等々でのデータは既にあります。非常に長いのも中に入っています。
○遠藤委員 ありがとうございます。
○加藤部会長 吉山委員、どうぞ。
○吉山委員 今の質問ですが、千葉先生が昔まとめたイソニアジドのコントロールド・トライアル報告あるいはFarebeeの報告、どちらもそうなのですけれども、予防内服しないと、初めの1~2年間はすごく発病率が高くて、あと毎年0.何%ずつ発病なのですが、予防内服すると、初めの1~2年間も予防内服しない人の3年目以降と同じような毎年0.1ないし2%と発病が多くない。7年か10年の経過観察です。その間そのくらいずつ発病していく。ですので、中央値をとってしまうと、初めの1~2年のところの高い発病率がないので遅れるように見えるのですけれども、私は、遅れるというよりも、毎年少しずつ発病していくのだけれども、初めが高くないから遅れたように見えるというふうに解釈しています。
○遠藤委員 ありがとうございます。
○加藤部会長 ありがとうございました。
ほかに。有馬委員、どうぞ。
○有馬委員 大阪市東住吉区保健福祉センターの有馬です。
私、大阪市保健所から今、職場はかわっているのですが、以前結核対策をやっているとき、所長、下内先生もいらっしゃったというところもありまして、大阪市自体がDOTSに予算を注入していかなければいけないというところもありますけれども、DOTSの実施率が上がっていくことによって、確実に服薬ができるということを担保できている。それと同時に、先ほど遠藤委員もおっしゃったように、有症状受診を徹底的に患者さんに伝え、発症しても早く発見するということを行う。大阪市としてはこの動きをある一定しているところもあります。ただ、それで発病者がどれぐらい見つかったかというデータは今、ないのですけれども、大きな混乱はなく来ているというのが現実あります。
もう少し突っ込んだところも動いているところではあるのですが、DOTSをしっかりやっていくことによって、管理検診の部分に関しては、そこに労力を投入するのではなくて、DOTSのほうに注入をしたらどうかという視点からも来たという動きがあるのですけれども、大阪市の現状としてはもう動いているというところがあります。
以上です。
○加藤部会長 ありがとうございます。
ただいまの御意見について何かございますか。
実際このデータをもってどのぐらい発病するかというのは非常に重要なことだと思います。私どもも検討しているのですが、全体を見ますと、治療した人の中から発病した人は必ずしも高くないかもしれませんけれども、治療した人の中に非常に発病リスクの高い人たちが入っていますから、これについては、例えば今までやっている健康診断等々に比べてもかなり高い発見率が期待できるのではないかと思われます。ここはしっかりしたデータも示さなければいけないということになろうと思います。ただ、事実としてそのようなことがあるということは重要なことかと思います。
一つは、患者さんに対する発病の早期発見というのがありますけれども、別の見方をしますと、周囲の人に対する感染予防、一般の方が結核の感染を避けることができる権利を持っているはずだというふうに考えます。症状が見つかればそれでいいのではないかという考え方を欧米はしますが、私ども日本の対策というのはもう少し丁寧にやってきた歴史があるのではないかと思います。これにつきましては効率だけでなくて、そういった観点からもよく議論し考えていく必要があると思っています。
吉山委員、どうぞ。
○吉山委員 どうしても自分が昔やったスタディーに引っ張られてしまうのですが、第二世代のクォンティフェロン検査が2003~2004年ごろ、保険で認められる前に結核研究所で一手にやっていたころがありまして、そのころに第二世代クォンティフェロン陽性者、陰性者、その後発病したかどうかという後追いをやったことがあります。陽性者のうち予防内服した人が400人弱、完了した人が300人いて、予防内服が完了した人から11人ほど、約4%弱発病者が出ています。
ちなみに、中断した人からは17%発病しているのですけれども。
ほかのスタディー、IGRAになってからのトライアルを見ると、予防内服を完了した人というのは50人規模とか、せいぜい200人ぐらいまでしか経過を見ていないのですが、ちゃんと終わった人から発病なしというのが多いですね。50とか200です。数が少ないので見つからないのかもしれないのです。
見つからないというのと今回の報告。あるいは今回の報告と同様の検討を2007、2008年に伊藤邦彦先生が「結核誌」に載せていますけれども、潜在性結核感染症治療終了後、発病者が少ない。
では、私の研究と何が違うのかなと思ったのですが、発病者が少ないスタディーの文書を見てみると、IGRA陽性では予防内服しなかった人からも3%ぐらいしか発病していないのですね。私がかかわったやつは、中断者から17%発病しているのですが、この違いは何かというと、2003~2004年ごろの第二世代クォンティフェロンをやった人というのは、発病の危険が高くて、予防内服しようかどうしようか非常に迷う症例、感染性がすごく高い人の接触者がたくさん含まれているのです。そういった集団というのはもともと発病率が高いので、そういった人についてはそれなりに発病するのではないか。
でも、現実世界における接触者健診というのは、もっと発病率が低い人など、周りに感染者をたくさん出していないような人も接触者健診をやって、それで陽性だったら予防内服になる。陽性者の中の発病率、これはツ反のころからそうですが、感染源の感染性が高い人の接触者、陽性者の発病率は、感染性が低い人の接触者で陽性者の発病率よりもはるかに高いのですね。なので、すごく感染性が高い人についてはそれなりに発病率を考えないといけないけれども、一般についてはそれほど考えなくてもいいのかもしれない。少なくとも何十人規模、200人規模ぐらいまでのスタディーでは発病者が出ていないということを考えると、そう考えています。
逆に言うと、発病率が高い集団の接触者については丁寧に診ていく必要があるということにはなるかと思います。
第三世代のクォンティフェロンになってから、保健所に問い合わせのスタディーをやったときは、予防内服を完了した人が90人ほどで、その中から発病者はいない。50人規模とか200人規模で発病者がいないというのと全く同じ、90人で、いないということなのですが、こちらは第二世代のほうと違ってクォンティフェロンをルーチンにやっている時代ですので、普通の接触者健診での発病、状況かなと思いますので、一般の状況は多分90人で、発病者なしというほうなのだろうなと。だから、そんなに発病者が出ないというのはむべなるかなと思います。現実世界を見てみると、接触者健診など、かなり過剰な予防内服もされていることもあり0.1%も発病があるというのは、そんなものかなと思います。本当に発病の危険が高い人についてはそんなものではないだろうと思っています。
○加藤部会長 ありがとうございました。
有馬委員、どうぞ。
○有馬委員 先ほど大阪市のやっていることを簡単に言い過ぎたのですけれども、先ほどLTBIにしても感染のリスクがすごく強い方とか、たくさん感染者が出たというようなLTBIの患者さんに対してはきちっと管理をしていっておりますし、人工透析をしているとか、発病しやすいような患者さん、リスクを持っていらっしゃる方に関しては論外で、きちっと半年ごとの追跡を実施して、その情報を把握するというような形はしております。そういう意味では、皆様方と同じ視点で動いているというところは変わりないということです。
ただ、本当にアドヒアランスが高くて、確実に飲めている、そういうバックボーンがほとんどないという方、LTBIとか肺外という感じのケースに関して、きょう御提示されたような動きを少ししていっているところであるということです。
○加藤部会長 御説明ありがとうございます。
鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 大体議論が出尽くしたかと思うのですけれども、IGRA陽性で、LTBIの治療に入る段階でその人その人の背景をしっかりと押さえて、遠藤先生がおっしゃったように関節リウマチで生物学的製剤を使っているような人や、感染率の高い集団からの陽性者は重々注意をする。一方で、医療機関の雇い入れ時にたまたまクォンティフェロン陽性のような人についてはその限りではないといった理解が必要なのかと思います。
あと、加藤先生もおっしゃったように、LTBI治療を行うと発病がおくれるというのは私も実感しておりまして、2年間服薬した後、3~4年してから発病した症例を2例ほど経験しております。2年間管理検診をして異常なしは全く免罪符とならない。逆にそれで安心するほうが恐ろしいのではないかと考えております。それがLTBIについての私見です。
次に、冒頭の質問とも関連致しますが、肺外結核に粟粒結核と純粋に肺以外の結核も混在している状況があるのですが、肺の結核は御承知のようにレントゲンなり痰の検査、つまり、患者さんにとっては痛くもかゆくもない、つらくない検査で診断がつきますし、経過観察もそれで十分です。一方で、肺外結核、例えばリンパ節結核を疑えばリンパ節の生検をしなければなりませんし、腸結核を疑えば大腸内視鏡検査での生検が必須となる。そういった患者さんが治療終了後にその都度その都度リンパ節の生検をやるわけではないですね。結核の影響でリンパ節が腫れる、治療によって腫れが治る。実際のところは半年ごとに腫れのあったリンパ節を触診して、腫れがぶり返しているようなことはないですねとお尋ねするというのが正直なところです。私も勉強不足だったのですが、資料の1ページの「精密検査の方法」というところをもう一回読み直しますと、5つ目に「その他必要な検査」という記載がありまして、私は、リンパ節結核の場合の「その他必要な検査」はリンパ節の生検といったものを想定していたのですが、これを読みますと、全結核患者の中で精密検査は結局、エックス線検査に置きかえることができると読めてしまうのですね。
ということで、腸結核の管理検診を胸のレントゲン異常なしで済ませているという自治体があるやに仄聞しております。最初ちょっと信じられなかったのですけれども、現実にそういった運用があるとすれば、それは全く意味のないことと思います。肺以外の結核、つまり、エックス線写真なり痰の検査だけでは経過観察が困難な症例の管理検診のあり方については一考を要するのではないかと考えております。
○加藤部会長 ただいまのは御質問ということでよろしいですか。肺外結核の場合の検査方法について、法律的な規定の解釈として胸部レントゲンが必要かという御質問ですか。
○鎌田委員 はい。
○加藤部会長 いかがでしょうか。
○島田補佐 資料1-4の1ページ目に鎌田委員御指摘の精密検査の内容、真ん中あたりですが、「精密検査の方法」として、エックス線検査、結核菌検査、聴診、打診、その次にその他必要な検査と書かれているところが御質問の内容かと存じます。こちらにつきましても、保健所長が必要と判断した検査として、合理的なものについて実施することができるものと考えておりますが、実施する主体は保健所長になりますので、管理検診の委託の際、その患者の必要な検査については、その患者の登録保健所の保健所長とよくよく御相談いただいた上で実際していただくべきものかと存じます。
○加藤部会長 ありがとうございました。
それでは、このほかに意見ございますでしょうか。LTBIのもの、管理検診の必要性、肺外についてということで議論が進んでまいりましたけれども、ございますでしょうか。吉山委員、どうぞ。
○吉山委員 1つ目に「定期的に医療機関を受診するよう指導を徹底し」と書かれていますが、複十字病院や何かも、結核治療もそうなのですが、予防内服でさえも近くないところから来る方がいらっしゃって、そういう方は近くの保健所で診てもらったらとすぐ言ってしまうのですけれども、これから外れて医療機関でも受診するようにとなると、今まで診ていただいたことのない医療機関に行っても、向こうのドクターもよくわからないでしょうし、そうなると、遠いけれどもこちらまで来てねというふうになるのでしょうか。
○加藤部会長 どうぞ。
○島田補佐 事務局です。この提案の趣旨は、治療を行った医療機関が引き続き経過観察を追うことに限定しているものではなく、地域の医療体制はさまざまですので、そちらで診ていただくことも含めた内容と考えております。御指摘のとおり、いきなり紹介されてということについては、紹介される側の先生も混乱されると思います。例えば地域の登録中の保健所であるとか、経過観察についてはこちらであるとか、例えば並存症がおありであれば、それもあわせて診ていただける医療機関を御案内するとか、個別の状況に合わせて医療機関を御案内することは可能かと存じます。
○加藤部会長 今の点を確認します。今の御説明は保健所も含めたというような解釈になりませんか。例えば吉山委員御指摘のように、患者さんが非常に遠いところから通ってきて、そこで治療したといった場合について。
○島田補佐 補足いたします。今回、御提案しておりますのは、病状把握のために保健所で管理検診を実施しないということではございません。保健所にその機会がなければ、必要に応じて保健所長は精密検査を実施する。その中で肺外結核やLTBIの者においては定期的あるいは有症状時に医療機関を受診するよう指導した中で、患者の健康課題の一つとして結核治療後の方の健康を診ていく。その中で病状の把握、診断結果を聞かせていただくという形に、軸足をそちらに移してはどうかという御提案であって、保健所で行う直営の管理検診を否定またはしないということを意図したものではございません。
○加藤部会長 吉山委員、よろしゅうございますか。
○鎌田委員 済みません、1点だけ確認。
○加藤部会長 鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 今の島田補佐の御発言の中で、保健所にそのキカイがなければの「キカイ」は、レントゲン撮影装置という理解でよろしいですか。それともoccasionというか、そういった機会の意味ですか。
○島田補佐 occasionの意味です。
○鎌田委員 わかりました。
○加藤部会長 よろしいでしょうか。
全体につきまして、ほかに御意見、御質問ありますか。味澤委員、どうぞ。
○味澤委員 先ほど日本のLTBIの治療のデータを吉山委員にいろいろ教えていただいてありがとうございます。低蔓延国の欧米は大体ツ反で陽性になると、本当にそのときに感染したのだと診断できます。その場合、イスコチンの予防効果というのが50%から、よくて66%ということが報告されています。結核にかかって2年間の発病率というのは大体5%ぐらいと言われていますから、それがせいぜい2.5%とかその程度になるのだなというふうに今まで理解していたのですけれども、そうすると、先ほどの吉山先生の3%というのは非常にリーズナブルだと思います。日本では、7,000人予防投与をして10人しか結核発症しないということでびっくりしました。7,000人というのは、日本ですから、QFTがプラスといっても、古い結核感染を見ているのかもしれないので、かなり過大評価しているのではないかなと思います。したがって厚労省の提案のようにある程度のところで保健所長の権限でリスクの低い人は打ち切るというのがいいのではないかなと思いました。
○加藤部会長 よろしいですか。吉山委員、何かコメントございますか。
○吉山委員 いえ。
○加藤部会長 ちなみに、LTBIの学会で書いているガイドラインには、先生と同じような考え方ですけれども、例えばという形で引用しているのは、治療しない場合は10%が発病するとして、LTBIの治療効果として、いろんな論文、先生の御指摘のようなものもありますが、60~70%くらいとされています。これらの数字から3~4%が発病するといったことを引用しています。
どうぞ。
○吉山委員 あともう一つ、最近、潜在結核感染診断のときにCTが広まっていますので、潜在結核感染だけれども所見がある人をかなり拾っているので、発病の危険が高い潜在結核感染は4剤治療になってしまうため、その対象にならなかった人からのその後の発病がさらに減ってきているというのが最近の日本では特にあるかと思います。その意味では、さらに発病の危険はそんなに高くないから、やめてもいいのかもしれない。
○加藤部会長 ありがとうございます。
ほかございますか。磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 今、IGRAの話とかが出ていると思うのですが、これについては、接触者健診をするときに第17条という認識でよろしいのか。だとしたら、標準作業書とかそういったマニュアルとか、例えば精度管理を受けるとか、そういうことは必要ないという理解で正しいでしょうか。
○加藤部会長 事務局、どうぞ。
○島田補佐 事務局です。
磯部委員御指摘のIGRA検査を結核の接触者健診の法第17条の健康診断の一環として行った検査につきましては、法改正事項、検体提出要請等に係るもの、例えばSOP、標準作業書の作成が必要であるなど等の適用の対象外になります。なので、IGRA検査を第15条として行った場合についてはその適用の範囲にはなるのですけれども、一般的に接触者へ健康診断の勧告を行って、そこで検査を行ったという場合のIGRA検査については、第17条として行いますので、適用の対象外という御理解をいただけたらと思います。
○加藤部会長 ほか御意見、御質問ございますか。
その対象者の中で非常にリスクの低い人が結構多いのですけれども、中にはリスクの高い人もいる。そこはほうっておいていいわけではないだろうというような意見が出されたと思います。
肺外については、今、御指摘のように、健診方法等の解釈が明らかになっていると思います。こういったことも踏まえた上で、管理検診の提案、お手元の資料にある形でまとめたいと思いますけれども、皆様、よろしゅうございますでしょうか。よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○加藤部会長 では、こういうことで了承するということでまとめたいと思います。
以上で予定された審議事項は終わります。
続いて、報告事項に移りたいと思います。感染症に関する情報の収集、医療基準の改正について、事務局から説明をお願いいたします。
○島田補佐 報告事項につきまして、事務局から説明申し上げます。参考資料2-1をごらんください。感染症に関する情報収集体制の強化について御説明申し上げます。
このテーマにつきましては前回の部会でも報告させていただきましたが、それ以降の動きについて御報告いたします。
1ページ目は、感染症発生動向調査事業の実施要綱を一部改正いたしました。基本的には28年4月施行の感染症法の改正事項に沿って、概要、真ん中ほどの2にありますとおり、病原体定点につきまして、法に基づく指定提出機関として選定する旨、規定を追加いたしました。
結核に関する内容といたしましては、例えば概要の3の(1)検体検査、これは法第15条の積極的疫学調査で行う検査については別で定めます病原体検査要領に基づいて実施することとしております。
2ページ目につきましては、法第15条の積極的疫学調査として実施する検体検査は、この病原体検査要領に基づいて実施することとなります。検査室、検査機器、試薬等の管理について、また、検査の標準作業書の作成、検査の記録や保存、精度管理や研修など、検査の業務管理の細則を定めて、その検査の信頼性を確保いたします。
3ページ目は、病原体検査要領、先ほどのものの適用となる検査は、先ほどの御質問にもありましたが、感染症法に基づく全ての検査が対象になるわけではありません。適用となりますのは法第15条、積極的疫学調査の一環で行う検査でありまして、先ほど御質問がありました第17条の接触者健診であるとか、第53条の13、管理検診などの一環で実施される検査につきましてはこの適用外となります。
また、病原体の探索等に関する検査につきましても適用外という形になります。
4ページ目でございます。今、申し上げました病原体の検索等とは何ぞやということで、適用の対象外となる病原体の探索等に係る検査というのは、特定の感染症を想定した検査ではなく、さまざまな検査手法を実施するなどして、病原体を同定する場合を想定しております。例えば事例3、原因不明の感染症で、特定の感染症を想定せずにさまざまな検査を実施するような場合は、病原体の探索として検査要領の適用外となりまして、その後、一旦、三類感染症の特定の感染症、例えば腸管出血性大腸菌感染症であるなどと判明した後に、第15条に基づく積極的疫学調査としてその血清型の特定など、検査を行う場合は検査要領の適用となります。
また、そうではなくて、第17条に基づく健康診断を受けさせて、それに伴う検査の場合は、第15条ではありません。第17条ですので、適用外となります。
結構ややこしいですが、この報告事項につきましては、昨年末に自治体に対しまして説明会を開催しておりますことをあわせて御報告いたします。
資料2-1に引き続きまして報告事項2も御報告させていただきます。資料はございません。報告事項2「結核医療の基準の改正について」御報告いたします。前回9月の結核部会で了承されましたレボフロキサシンを公費負担対象とするなどを内容とする改正につきまして、告示に向けての手続を進めてまいりました。間もなく1月中には官報に掲載して、適用の通知を発出する見込みであります。
報告は以上です。
○加藤部会長 ありがとうございました。
事務局からの報告事項について御質問ございますか。よろしゅうございますか。
それでは、本日予定しておりました全ての議題が終了いたしました。閉会とさせていただきたいと思います。
事務局から何か補足はございますか。事務局、どうぞ。
○島田補佐 事務局です。連絡事項です。
結核に関する特定感染症予防指針につきまして、次回の結核部会においても指針の見直しに必要な内容を御審議いただき、そしてなるべく早く、28年の夏ごろをめどに指針を改正したいと考えております。
次回の結核部会の開催につきましては、委員の皆様、日程調整の上、改めて連絡差し上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○加藤部会長 それでは、これをもちまして第7回「結核部会」を終了させていただきます。
本日は熱心な御討議をいただきまして、どうもありがとうございました。以上でございます。
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