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2015年11月12日 第16回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録
労働基準局勤労者生活課
○日時
平成27年11月12日(木)
○場所
中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室(19階)
○出席者
公益代表委員
宮本分科会長、岩本委員、小野委員、柴田委員、高木委員、内藤委員、八野委員 |
労働者代表委員
安藤委員、須田委員、山本委員 |
使用者代表委員
井上委員、上原委員、加藤委員、成島委員、布山委員 |
(事務局)
土屋大臣官房審議官(労災、賃金担当)、富田勤労者生活課長、山口勤労者生活課長補佐、角南勤労者生活課長補佐 |
○議題
(1)分科会長、分科会長代理の選出
(2)財形制度をめぐる状況について
(3)当面の課題及び対策について
○議事
○角南勤労者生活課長補佐 ただいまより、第 16 回労働政策審議会勤労者生活分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。私は 4 月 1 日付けで着任しました厚生労働省労働基準局勤労者生活課長補佐の角南と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は委員の皆様の改選後、初めての分科会の開催になりますので、分科会長が選任されるまでの間、私が議事進行役を務めさせていただきます。まず、事務局を代表して担当審議官の土屋より御挨拶を申し上げます。
○土屋大臣官房審議官 皆さん大変お忙しい中、今日は分科会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。私は 10 月から担当の審議官になりました土屋と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。この分科会では従来勤労者財産形成促進制度、いわゆる財形の制度について御審議いただいております。今回から御参加いただいている先生方もいらっしゃいますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
資産形成、財産形成という意味では最近は様々な選択肢が増えてきている中ではありますが、私どもとしては、勤労者の自主努力を事業主や国が支援するという形で計画的な財産形成を図ることができる財形制度は、地道ではありますが大切な制度であると考えております。今日の分科会では財形制度をめぐる状況について御報告を申し上げますとともに、従来より御意見を頂いております子育て世代を含めた若年層に対する取組状況や、今後の対策についても御報告させていただきたいと思っております。
是非、皆様方の忌憚のない御意見を頂ければと思っております。今後とも、この制度がより一層働く方々の生活の安定に役立つものになるように、私どもとしても努力をしてまいりたいと考えておりますので、引き続きの御指導をよろしくお願い申し上げます。
○角南勤労者生活課長補佐 初めに資料の確認をお願いします。お手元に資料番号 1 ~ 3 をまとめた冊子をお配りしておりますので御確認ください。議事に入る前に、今回は委員が改選後初めての分科会ということになりますので、委員の方々全員の御紹介をいたします。手元に配布しております資料 1 の勤労者生活分科会委員名簿を御覧ください。本日、御出席いただいている委員の方から名簿順に御紹介いたします。
まず、公益代表委員です。一般社団法人全国銀行協会理事、岩本秀治委員です。株式会社みずほ年金研究所研究理事、小野正昭委員です。三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング株式会社革新創造センター部長、柴田裕子委員です。敬愛大学経済学部教授、高木朋代委員です。慶應義塾大学法学部教授、内藤恵委員です。一般財団法人住宅金融普及協会会長代表理事、八野行正委員です。放送大学副学長、宮本みち子委員です。
労働者代表委員です。一般社団法人全国労働金庫協会常務理事、安藤栄二委員です。日本労働組合総連合会総合労働局総合局長、須田孝委員です。日本ゴム産業労働組合連合中央執行委員長、山本昭二委員です。
使用者代表委員です。日野自動車株式会社監査部長、井上智子委員です。東京都中小企業団体中央会副会長、上原洋一委員です。株式会社アドバネクス代表取締役会長、加藤雄一委員です。一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部上席主幹、布山祐子委員です。株式会社ベネッセホールディングスワークライフバランス・女性活用推進室長、成島由美委員です。
本日欠席されている委員として、公益代表では、亜細亜大学経済学部教授の権丈英子委員、労働者代表では、労働者福祉中央協議会事務局長の大塚敏夫委員、日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員の袈裟丸暢子委員、全国生命保険労働組合連合会中央書記長の大長俊介委員、使用者代表では、株式会社東芝人事・総務部労働企画担当グループ長の三原隆正委員です。
続いて、先ほど御挨拶申し上げた担当審議官及び私のほか事務局側の紹介もいたします。勤労者生活課長の富田です。勤労者生活課長補佐の山口です。
それでは、議事に入ります。本日は議題が 3 件あります。議題 1 の分科会長の選任及び分科会長代理の選出を行いたいと存じます。分科会長については、労働政策審議会令第 6 条第 6 項の規定により、分科会に属する公益を代表する本審の委員から、当該分科会に所属する本審の委員が選挙することとされています。本分科会の本審の委員は公益委員である宮本委員のみです。したがって、宮本委員に分科会長に御就任いただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。
( 異議なし )
○角南勤労者生活課長補佐 では、分科会長は宮本委員に御就任いただきたいと思います。
○宮本分科会長 それでは一言、御挨拶いたします。ただいま御指名いただきました宮本でございます。微力ですが、この分科会の円滑な運営に努めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
分科会長の代理を選任しなければいけないのですが、この代理に関しては労働政策審議会令の第 6 条第 8 項の規定により、分科会長に事故があるときにその職務を代理するとされております。分科会長代理については、分科会長が指名するということになっておりますので、私から指名いたします。亜細亜大学の権丈委員にお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。
( 異議なし )
○宮本分科会長 本日は、権丈委員が御欠席ですので、後日、御了解を得たいと思っております。それでは、議題に移る前に、第 1 回ということですので、委員の皆様から一言ずつ御挨拶を頂きたいと思います。お配りしてある委員名簿の順番でお願いしたいと思います。まず、岩本委員からでしょうか。お願いします。
○岩本委員 銀行の業界団体である全国銀行協会の理事をしております岩本です。昨年に続いて 2 年目になりますが、また御議論に加えさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○小野委員 みずほ年金研究所の小野です。私の専門は、母体が信託銀行ということもあり企業年金です。そういう意味では、財形制度は素人かもしれないですが、アクチュアリーという立場ですので、その観点から何か貢献できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○柴田委員 柴田です。その当時はまだ労働省だったと思うのですが、 20 、 30 年前には財形に関わる調査を受託していくつか調査しました。今は随分環境も変わりましたので、また改めて勉強しながら貢献できたらいいなと思います。よろしくお願いいたします。
○高木委員 高木です。私の専門は人的資源管理論でございまして、企業のマネジメントについて研究しております。この委員会に出させていただいて、この制度が先ほどお話にあったように地道だけれども大切な制度ということで、このことはこの委員会に出席して非常に実感しております。私も勉強させていただきながら様々な意見等を言うことができれば、お役に立てるのではないかと考えております。よろしくお願いいたします。
○内藤委員 内藤でございます。私は慶應大学法学部で労働法と社会保障法を専門といたしております。この委員会、重任ということになりますが、私自身が決して経済学、財形、年金ということについての専門ではありませんが、広く社会法という領域から労働者の生活や社会保障に関わっている観点から何か皆様からお教えいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○八野委員 住宅金融普及協会の八野です。主な経歴は旧建設省、旧住宅金融公庫、現住宅金融支援機構におり、今は普及協会の会長をやらせていただいております。そういう意味で住宅関係はかなり長く担当しております。財形融資についても少し関わった過去もあります。そういう意味で、また久しぶりに勉強させていただきながら意見を言わせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○安藤委員 労金協会の安藤です。私どもの労働金庫は、全国で財形については約 290 万件ほど取扱いをしております。そういう意味では、制度発足以来、勤労者にとって財形制度は非常に貯蓄奨励のいい制度だと我々も確信しておりますので、是非この会合の中でよりよい制度に向けて努めてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
○須田委員 連合の須田です。よろしくお願いいたします。現場の感覚を大事に、この制度をより良くしていきたいというスタンスで臨みたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本委員 ゴム連合の山本です。ゴム連合は分かりやすく申し上げますと、タイヤのブリジストンなどの組合が入っている産別の委員長をやらせていただいております。労働者側の意見につきましては、安藤委員、須田委員、そして私で役割分担をもって対応してまいりますので、よろしくお願いいたします。
○井上委員 日野自動車の監査部長をしております井上と申します。よろしくお願いいたします。私は、この 2 月まで人事で仕事をしておりました。会社に入って 30 年と少しですが、ほぼ 3 分の 2 は人事関係で、賃金や制度企画の仕事を主にやってまいりました。財形に関しては勉強がまだまだ足りないと思いますが、努力してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○上原委員 私は東京都中小企業団体中央会に所属しております。この団体は、協同組合等の団体で全国組織にもなっていて、どちらかというと財形の PR に努めなければいけないと思っているのですが、まだ努力が足りないと思っています。よろしくお願いいたします。
○加藤委員 株式会社アドバネクスで会長をさせていただいております加藤と申します。この会社は上場会社で、私は 3 代目です。社長になってから、約 30 年経営に携わっております。若い頃は社員側に立って経営側と交渉をしたこともあります。また、海外にオペレーションがたくさんあるために、国・地域によって労働条件が随分違うということを実感しておりますので、何かいろいろな視点から貢献できたらいいなと思っております。よろしくお願いいたします。
○成島委員 ベネッセホールディングスの成島といいます。よろしくお願いします。本日は遅くなって申し訳ありませんでした。今回からの参加です。財形については一積立ての利用者として 20 年ぐらい本当に大事に手を付けずに使わせていただいております。今回こういう貴重な場を通じて学ばせていただければと思います。よろしくお願いします。
○布山委員 経団連の布山です。財形制度を取り巻く環境が非常に変わっている中で、労使双方にとって有益な制度であり続けられるようにという観点から議論していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○宮本分科会長 最後に私から自己紹介をいたします。私は社会学をやっていまして、ずっと若者の労働や生活の問題を中心にやってきました。近年は子供の貧困問題や厚生労働省の今年からの事業で生活困窮者の自立支援にも関わっております。そういう意味で、いろいろな世代の生活の問題に関して深くコミットしているという立場で、お役目を務めさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、一通り自己紹介をしていただいたということで、早速、議題 2 に移ります。議題 2 は、「財形制度をめぐる状況について」です。事務局から説明をお願いします。
○富田勤労者生活課長 資料 2 です。表題で「財形制度をめぐる状況及び平成 26 年度の業務実施状況について」と書いております。目次を付けており、一般的な制度の概要、貯蓄をめぐる状況、持家の融資の関係の状況ということで、大きく分けて 3 つの塊で説明いたします。
1 ページです。「勤労者財産形成貯蓄制度の概要」です。この図にありますように財形貯蓄制度は、趣旨は勤労者が会社を通じて給与等の天引きにより積立てていくところに特徴があります。大きく分けて、使い道を限定しない一般財形貯蓄、 60 歳以降の年金支払いを目的とする財形年金貯蓄、住宅の取得・増改築等を目的とする財形住宅貯蓄の 3 つの貯蓄があります。このうち下の 2 つの貯蓄については、合わせて 550 万円までの利子等が非課税になっております。
2 ページです。「財形持家融資制度の概要」です。財形持家制度は財形貯蓄を行っている勤労者のための住宅ローンで、各財形貯蓄取扱機関にある財形貯蓄の残高を原金として融資を行っており、言わば還元融資の仕組みを取っております。融資限度額は財形貯蓄残高の 10 倍まで、最高 4,000 万円、最長が 35 年間の返済期間を設定でき、貸付金利は 5 年固定です。現在の金利は 0.81 %です。
3 ページです。貯蓄に係る状況一般です。国民の金融資産の状況についてまとめたものです。円グラフを見ていただきますと、現金・預金が家計で保有する金融資産の半分以上を占めております。右を見ていただきますと、勤労者以外も含めて 2 人以上の世帯における保有額の推移を経年的に見たものです。折れ線グラフは、預貯金と生命保険を示しております。やはり預貯金の占める率が、ここ数年間を見ても 5 割を超えている水準であるということで、貯蓄志向は依然として高いものがあると考えております。
4 ページです。これは、世帯主の職業別に貯蓄額の現在高の推移を見たものです。勤労者世帯、個人営業の世帯、勤労者以外の世帯と見ているものです。一番下のグラフですが、御覧のとおり依然として勤労者世帯は、勤労者以外の世帯よりも低い水準になっており、差がそれほど縮まっていないことが読み取れます。
5 ページです。このグラフは貯蓄額から負債を引いた純貯蓄額を示したものです。勤労者以外の世帯は、どちらかというと近年上昇傾向にあるのですが、勤労者世帯については少し低下傾向にあるということが読み取れます。右のグラフです。これは、勤労者世帯における 1 か月の実収入等の推移を見たものです。可処分所得を見ていただきますと、これも若干の減少傾向が見られ、貯蓄に回す経済的余力が幾分低下しているのではないかと考えております。
6 ページです。企業規模別に給与水準と貯蓄額を見たものです。左側で大企業、中規模と分けておりますが、やはり企業規模が小さいほど給与額が低い傾向にあります。同時に右の棒グラフを見ますと貯蓄額も規模が小さいほうが低くなっていることが見て取れます。
7 ページです。これは昨年の審議会で非正規雇用者の動向はどうかという御質問がありましたので、非正規雇用者に関する統計データをお示ししたものです。左のグラフは非正規雇用者の男女別、 60 歳で区切った人数の推移を掲載したものです。正社員以外の労働者の割合は増加傾向にありますが、この内数を見ると 60 歳以上の割合が高まっており、 60 歳以下で見ると女性の割合が高いということが見て取れます。右の表は就業形態、男女別の労働者割合を示したものです。男女ともに正社員以外ではパートタイム労働者の割合が高く、特に女性においては正社員を含めた全労働者のうち約 4 割となっております。
8 ページです。左のグラフは、雇用形態別の月額賃金を示しております。パートタイム労働者や臨時労働者の賃金額は相対的に低くなっており、個人の貯蓄余力は低いと考えられます。右の表は、主な収入源が自身の収入かどうかを尋ねております。パートの方については、約 30 %程度となっております。では、この方は余力がないのかどうかということですが、主な収入源が自分自身以外の所が高いという比率からすると、上の枠にも書いておりますが、家計全体として貯蓄がどうなのかということが検討されることになるのではないかと推察されます。
9 ページです。財形貯蓄をめぐる状況を書いております。まずは、各財形貯蓄の契約件数と貯蓄残高を載せております。契約件数が 3 財形ともに減少、貯蓄残高は棒グラフの一番下のものが一般財形ですがこれは増加、他方で年金・住宅の非課税財形が減少する傾向が続いております。この減少の要因ですが、様々に複合的なものがあると考えており、金融商品の多様化や長期間にわたって低金利情勢であり財形貯蓄の有利性が薄れているということが影響していると考えております。
10 ページです。この点を「就労条件総合調査」の経年変化から、財形制度の導入割合と利用者割合の推移について明らかにしたものです。左のグラフですが、財形貯蓄制度の導入企業の割合を示したものです。 15 年間で約 3 分の 2 に減少しており、平成 11 年が 61.8 だったのが平成 26 年に 41.4 と減少しております。右の上のグラフは、導入割合の推移について企業規模別に示したものです。いずれも低下傾向にあるのですが、企業規模が小さいほど落ち込む割合が少し大きいということが見られます。また、下のグラフですが、 1,000 人以上の大企業においても一般財形利用の労働者割合は 31.7 %に低下しているということが分かります。
11 ページです。左のグラフは、正社員とそれ以外の種類ごとの財形制度の適用状況を示したものです。正社員が 26 、嘱託・出向は各々 22 、 20 ですが、パートタイム労働者については 5.5 ということで適用している事業所の割合は低いということが見て取れます。これは企業年金も同様の状況です。右の棒グラフは、労働金庫連合会における一般財形の契約件数の年齢別のデータですが、 40 歳層が最多層です。折れ線グラフは、その契約件数を年齢階層ごとの雇用者数で割ったものです。若年層から定年近くの 60 歳層に向けて徐々に大きく増加しているのが見て取れますので、若年層の利用促進が、全体の底上げにも影響すると考えております。
12 ページです。財形貯蓄利用率の高い企業 5 社に対して従業員アンケート及び人事、労務の担当者などへのヒアリング調査を行った結果です。右のグラフにあるように財形貯蓄を始めた時期は入社から半年以内が最も多く、 5 年未満まで拡大すると 7 割ぐらいの方が開始しています。
13 ページです。財形を始めたきっかけですが、労働組合、あるいは上司など会社関係の人からの勧めが上位を占めております。一方、少数ですが説明会やパンフレットなど、あるいは金融機関の勧めによって開始したというケースもあります。企業内では新入社員への研修に財形制度の説明を盛り込んだり、年代別のライフプランセミナーを開催したりしてライフイベントごとの必要経費と財形活用に言及して、加入促進を行っている事例があります。募集時に食堂に窓口を設置し未利用者への声掛けを行っている事例もあります。これらは、以前は多くの会社で行っていたかもしれませんが、こうした取組が継続されていることが高い加入率を維持することにつながっていると推察されております。また、金融機関においては、ライフイベントと所要経費を含む財形パンフレットを作成、活用している事例があったところです。
14 ページです。これは財形貯蓄を行わない理由について尋ねたものです。このような財形の取組を行っている企業においてさえ、「制度をよく知らない」、「手続が面倒」、これは行っていないのですから想像も含めてのものだと考えておりますが、そういう回答がかなり多いということが見て取れます。右側は、ヒアリングをした結果です。新規加入や月々の金額変更の方法は各企業において定めるものになりますが、ヒアリングを行った企業では、年に 1 回又は半年に 1 回など、期間を設定して行っておりました。また、募集時期には業務量が増えるものの、通常期は他業務と兼務で十分こなせるボリュームだとのことでしたが、一方、利用者からは金額変更回数を増やす、払出し期間を短縮するという企業への要望等が挙がっており、これらの要望に対応するとなると負担は増加することになると考えております。また、制度導入に当たっては金融機関の御協力によりスムーズに手続が行われていたこともうかがえるところです。
以上をまとめたものが 15 ページです。勤労者の貯蓄をめぐる状況としては 4 つポツを付けておりますが、勤労者世帯と勤労者以外の世帯における貯蓄額の格差がある、勤労者世帯における貯蓄余力の低下、企業規模による貯蓄水準の違い、賃金水準の低い非正規社員の増加がうかがえるところです。財形貯蓄制度をめぐる状況としては、契約件数・貯蓄残高の長期的な低下傾向、財形貯蓄制度の導入・利用の低下、若年層の利用率の低さ、一部企業での高い利用率の維持という状況がうかがわれます。
以上から下に○で 3 つまとめておりますが、勤労者にとって、計画的な財産形成に向けた自助努力は引き続き重要ではないか、制度普及・周知においては制度説明だけでなく若年期からの貯蓄の重要性を説明することが有効ではないか、また、企業や金融機関の役割も重要ではないか、国としても普及・広報に向けた取組を強化する必要があるのではないかとまとめております。
16 ページからは、持家融資をめぐる状況についてまとめております。まず、勤労者世帯の持家率についてです。年々上昇してきておりますが、依然として自営業主世帯とは少なからず開きがある状況です。右は年代別に持家取得予定を調べたものです。 20 代・ 30 代世帯においては 10 年以内に持家を取得したいという回答が半数近くです。なお、親からの住宅相続待ちや持家取得を希望しないとする数値は記載を省略しておりますが、高年齢になりますと、そちらが優勢となっているところです。いずれにしても、 40 歳代ぐらいまでには持家を取得したいという根強い持家志向があることがうかがえるところです。
17 ページです。住宅ローンの新規貸出残高です。平成 7 年頃をピークとして、ここ 7 、 8 年は横ばいで 20 兆円前後です。
18 ページです。財形の持家融資をめぐる状況をまとめております。平成 2 年と平成 15 年がピークですが、それ以降は減少している傾向で、平成 26 年度の貸付残高は、一番下にあるとおり 146 億円となっております。
19 ページです。折れ線グラフは、住宅ローンに占める財形持家融資の割合を示しております。平成 26 年度のシェアは 0.08 %です。
20 ページです。財形持家融資の最近の状況を少し細かく見たものです。棒グラフは四半期ごとの貸付決定件数を示しておりますが、左下の表にあるとおり、 4 、 7 、 10 、 1 月には貸付金利の改定を行っており、この金利の増減や消費税率変更などとかなり相関関係があるということが読み取れると考えております。財形の金利と比較ができると思い御参考に載せておりますが、同金利表の右端の民間の住宅金利についても低下傾向にあります。なお、平成 27 年 4 ~ 6 月は金利上昇等により件数が落ち込みましたが、 7 ~ 9 月においては後ほど説明いたします子育て勤労者対象の特例措置の導入により、回復傾向となったと考えております。
以上の状況をまとめたものが 21 ページです。勤労者の持家をめぐる状況ですが、自営業主と比べて持家の取得が進まず勤労者の資産形成が進んでいないということがうかがえ、また、 20 代・ 30 代世帯の約半数が今後 10 年以内に住宅取得を考えています。一方、融資をめぐる状況ですが、実績は中長期的に減少傾向にある、最近の低金利情勢も影響していると考えておりますが、民間の住宅ローンへのシフトがあるのではないかと考えられると整理しております。
こうした状況に鑑みると、勤労者の豊かで安定した生活の実現を図る上で、事業主と国の支援により持家の取得を促進する財形持家融資制度の重要性に変わりはないのではないか、しかしながら、財形持家融資制度の利用率が低いため、認知度を高めるための制度の周知が必要ではないか、それから、勤労者のニーズに応じた対策を講じていくということは引き続き必要なのではないかと考えております。説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○宮本分科会長 ありがとうございました。ただいま財形制度をめぐる状況について詳細な御説明がありました。去年、一昨年と、毎回こういう議論をやっていますけれども、今回頂いた資料はより詳細なものになっていると思いますので、これを基にして、それぞれ日頃からこれに関わる形でいろいろなお仕事をされている委員の皆様から、いろいろな角度から御発言を頂けるとよろしいかと思っております。どちら様からでも結構ですが、御意見、御質問などありましたらお願いいたします。
○高木委員 私は 1 年前の分科会のときに、若年層そして中小企業に勤める雇用労働者の方たちへの加入を、より力強く呼び掛けていくことが必要になるのではないかと申し上げたのですが、今日の資料を見させていただいて、その思いを更に強くしたわけです。説明いただいた資料の 6 、 7 ページの辺りにもありますがこれらの方々は、収入が相対的に低く、貯蓄額も低いということになります。低いというのは貯蓄することが難しいということと同義かと思うのですが、だからこそ財形という、国によって提供されている、比較的リスクが小さい貯蓄制度を、こういった方々こそ利用するべきであると考えるわけです。収入が相対的に低くて、貯蓄額が低いというのは、若年層であるとか、また、若年層に多く見られるのは不安定な雇用労働者、パートタイム、臨時労働の方もそうですが、それに加えて派遣の方たちもそれに含まれるのではないかと考えます。それと、やはり相対的に賃金が低くなりがちな中小規模の企業の勤労者ということになるかと思います。
先ほどの資料の 8 ページ目の右側の表中で、派遣労働者、パートタイム労働者、臨時労働者が下に 3 つ書いてあります。例えばパートタイム労働者では、御自身が生活上の主な収入源を賄わなければいけない主体とはなっていないという場合が多いということだったのですが、しかしながら、男性で派遣、パート、あるいは臨時労働者になっている方たちもいらっしゃいますし、そして御自身が主たる収入源を自分で賄わなくてはいけないパートタイムの方たち、派遣の方たち、臨時労働者の方たちがいることも確かだと思います。それは相対的に数が少なかったとしても、そういった不安定な状況にあって、そして現在不安定ということは将来もなかなか予見できない状況であることを暗示しています。将来的にどのような環境、どのような市場状況や経済状況になろうとも、生きていかなければならないわけであって、そのときに将来予見が薄いという方たちこそ、こういった国の制度によって救い上げる、また、自助努力もさせながら、その人たちが将来ちゃんと生きていくための道筋を示していくことが重要になってくると思います。その辺りが、この財形という制度を勉強させていただきながら理解したところで、極めて重要な制度であると考えるわけです。
○宮本分科会長 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。
○八野委員 財形制度が有効な手段であるし、今後ますます、今、委員もおっしゃっていましたように、不安定な雇用関係の人も増えてきている中で、勤労者の貯蓄を推進するという意味でも、それは必然のことだと思います。
1 つ質問ですが、 10 ページに、財形制度の導入企業の割合が年々減ってきているとありますね。どういうことなのか、この辺の分析をされているのかどうか。
併せて、 13 ページからヒアリングを 5 社にやっておられますね。この 5 社は比較的、財形制度をしっかりと運営されているように思えるのですが、その結果、 14 ページの右上に「企業からは事務手続が大きな負担となっている声は聞かれなかった」という書き方があって、ただ、利用者の要望があるので、負担も増すという分析をされているのですが、やはりこの辺りは企業の負担が本当に大きくないのかどうか。特に、よくやられている 5 社だけではなくて、調査されているのかも分からないですが、ある意味では撤退されていった所の理由などを少し見てみないと、まずは企業者側がこういう制度をセットしていただかないと、幾らいい制度であっても使えないので、根本的にはその問題がまずあるのではないかと思います。以上です。
○宮本分科会長 今の件について、事務局から御説明いただけますか。
○角南勤労者生活課長補佐 まず 1 点目の 10 ページ、なぜ企業における財形貯蓄制度の導入割合が減少傾向にあるのかという点に関しては、企業が勤労者の福利厚生制度をどのように考えられているのかという点かと思っております。最近、企業の福利厚生制度に掛けるウエイトが徐々に減少してきているというデータもありますので、その一環として、財形制度の導入率も落ちてきているのではないかと思っております。
○富田勤労者生活課長 2 点目の、実態をきちんと調べているのかどうかという御質問ですが、前回の分科会での御指摘を踏まえ、ヒアリングを行い、かなり有益な結果が得られたのではないかと思っております。特に、 14 ページ目の左側にもありますとおり、そもそも制度を知らない方がかなり多いということです。これは私どもの職場の中でも聞いてみたりもしているのですが、厚生労働省の職員でも知らない人がいる状況がありますので、やはり周知が足りなかった部分もあるかなと強く感じているところです。
事務負担は、確かにここは導入している企業に尋ねているものですので、比較的規模が大きくなれば、相対的に事務手続の負担は低くなりますけれども、委員のおっしゃっるとおり、やめていった所はどうなのかを聞いてみないと、実際のやめた原因というのは確かに浮き彫りにならないと思います。この 5 社のアンケート調査は有益だったと思うのですが、更に引き続き、委員の御指摘も踏まえて調べてみたいと思っております。
○角南勤労者生活課長補佐 こちらの調査については、課長から申し上げましたとおり、非常に導入率の高い優良企業における調査であり、一般企業で全て当てはまるかというと、必ずしもそうではないと思っております。ですから委員の御指摘のとおり、その部分については、来年度以降、また、いろいろと調査をしてまいりたいと思っております。また、このことについては次の議題でも少し触れさせていただきたいと思っております。
○宮本分科会長 ありがとうございました。
○加藤委員 質問です。 9 ページのグラフで、昭和 63 年に大きな変化があったようですが、どういう変化がここであったのでしょうか。
○角南勤労者生活課長補佐 それでは、私から御説明します。委員の御指摘のように昭和 63 年に一番下のグラフの件数が立ち上がっております。これが住宅財形です。それまであったのが一般財形と年金財形の 2 本で、この 2 つが共にいわゆる 500 万円の非課税枠を持っていた財形貯蓄でした。ところが、この住宅財形が導入されると、年金財形と住宅財形が非課税に替わりまして、一般財形が非課税ではなくなったということで、劇的な変化がこの年度で起きていると御理解いただければと思います。
○加藤委員 ありがとうございます。
○宮本分科会長 そのほかいかがでございましょう。
○柴田委員 アンケートについてお伺いしたいと思います。 12 ページ以降のアンケートは、全て 12 ページの左にあるヒアリング対象企業 5 社に勤めている大企業の従業員の 500 人に聞いたということですから、 5 社の従業員だけという理解でよろしいのですね。
○角南勤労者生活課長補佐 はい、結構です。
○柴田委員 ですから多分、この結果を見ていろいろなものを象徴していると思ってはいけないという御説明を頂いたと思います。実は 30 年ほど前、私は銀行に勤めていたことがあって、そのころは、入社時に会社が説明会を開いてくれたので、銀行員が新入社員に説明して、給与振込口座と財形とカードローンは一遍に、入ってもらっていたのです。今とは相当違いました。
ただ、とは言っても 13 ページにあるように「労働組合員の勧め」や「上司などの勧め」というのも、この 5 社に限ってのことだと思います。もうちょっと一般には財形に入るところが違うのかなという感じがします。
それから、 14 ページの財形貯蓄を行わない理由としては、大企業で比較的お給料も高い人たちなので、「金銭的余裕がない」というのが 19.6 %と余り多くないのですね。ただし、先ほど少しお話がありました、中小企業で、若い方たちは確かに雇用の不安定性もあるので、財産形成する必要があるけれども、貯めるお金がないぐらい金銭的余裕のない人たちだと思うので、その人たちに財形をさせるというのは、幾ら知っていても至難の業であると思うので、そこをどうやって解決していくかは大きな問題だと思います。
大企業の場合は、財形だと金利のほかに利子補給というか、奨励金みたいなものが付いていたりすることがあり、普通の定期預金よりも少し高めの設定となるため、「ちょっともうかったな」という安定した貯蓄になっているのですが、そうではない場合は、定期預金とほとんど変わりません。そうなってくると、幾らアピールしてもお得感がないので、やらないという問題がある中、財形貯蓄のメリットをどうやって打ち出していくかという根本的問題をどのように考えるかが重要だと思います。
それから、先ほどのデータの中にも御指摘がありますように、パート・アルバイトなどの適用に関してですが、 11 ページの左側に「財形制度の適用状況」で、パートにも適用しているという所がありますが、適用していても、パートの人が実際に利用している数字とは異なってきているわけです。これについても、実態がどうなのかとか、本人たちはどれくらいそういうものを使いたいニーズがあるのかというところも分からないので、よく調べていただいているのですが、今後、経済的弱者にどうやって財産形成のメリットを打ち出し、そして実際に加入していただくかという問題など、とても根が深い課題がたくさんあると思いました。
○宮本分科会長 ありがとうございました。極めて本質的な、今、直面している問題ですが、今の柴田委員の御発言に関わった形で、何か御発言はありませんでしょうか。
○上原委員 財形貯蓄の利用件数は右に下がっていることから、現状の整理の仕方として、制度そのものに魅力がないのか、若しくは今も議論が出たように、貯蓄をできない人たちがいるというのとでは、アプローチが異なるのではないかと思います。その辺の峻別をする必要があるのではないか。少々難しい話なのかもしれませんが、そのように思いました。
○加藤委員 以前、欧米と比べると貯蓄の割合が非常に高いのが日本人の特徴だったと思います。それがだんだん変化し、日本人の金融資産のうち預貯金の占める割合は徐々に低下しているのではないかと感じるのです。ですから、貯蓄したいという労働者側のニーズが少なくなっているのではないかというのが 1 つです。
それからもう 1 つは、消費の動向も変わっているという点です。クレジットカードなどの利用が進み、給料をもらう前に使ってしまうことも 1 つあるかと思います。逆に、お金を掛けなくなったものもあり、例えば我々の時代は若くても自動車を買っていましたが、今はそのようなことがなくなって、自動車は要らないという人が多くなりました。一方で金額的に高いスマートフォンなど通信機器の利用は進んでいます。ですから、そういった消費動向や貯蓄に対する価値観に大きな変化が起きているので、そちらのほうの調査もあわせて行う必要があると思います。
○高木委員 先ほどから出ている若年層の消費性向の問題だとか、貯蓄できるような余裕がないというお話でしたが、例えばこれが中小企業であっても正社員として勤めていらっしゃる若年層であれば、相対的に他国に比べると強い雇用保障というものが残っている日本の労働社会においては、正社員はある程度は守られていますので、継続的に働くことによってそれなりの生活を維持していくことができると思うのです。
若年層が、不安定な生活状況や雇用状況にあるというのは、やはり正社員ではない、非典型的な働き方をしている人々だと思うのです。この点に関して、特に根が深いというお話だったのですが、難しいのは、給料天引きという形で企業側が強く介入して、この方たちの加入状況を見ることがなかなかできない。当然そういったパートタイムの人たち、派遣、あるいは臨時労働の人たちは、勤めている会社を辞めていって、また次の会社に移っていく可能性が高いので、コントロールすることが難しいという問題も確かにあると思うのです。
しかし、この方たちの現収入が低いから、そして今の若者の消費性向が変わってきているから、きちんとした計画的な貯蓄というものができないということを、そのまま第三者として静観していていいのかというと、この方たちが将来的には社会保障を受ける側になっていく可能性もあり、社会的弱者に転落していく可能性も少なくはないわけです。
現在中心主義というのでしょうか、刹那的にすぐに何か買ってしまう、例えば高いスマートフォンを買ってしまうといったこともあるのですが、そうではなくて、将来長く生きることを一応予見して計画的に着実に生きていくための手立てを、こういった制度に加入させることによって見せてあげることだと思うのです。貯蓄していく額は僅かでもいいのですが、計画性を持たせるという教育的な側面が強いと思うわけです。
13 ページになりますが、アンケートの中にある「企業内における取組」の2の「全社員へのアプローチ」でアンケートをした企業においては、ライフプランセミナーというものを開催しているとのことでした。財形の問題にかかわらず、働く一人一人の労働者が自分の職業人生をきちんと設計していく職業生活設計であるとか、ライフプランセミナー、カウンセリング、コンサルティングといった人事施策は大変重要な意味を持っていると思うのです。職業人として一人前にきちんと全うし続ける、そのためには経済的な側面もきちんと企業や働く御本人が見ていかなくてはいけない。ですから、このライフプランセミナーというものは重要な意味を持っていると思います。ただ、ここにアクセスできるのは、正社員しかいないだろうと思うわけです。先ほど言った非典型的な働き方をしている若者は、ここにもアクセスできないわけで、代わりのものを何か手立てとして用意する必要が実はあるのではないかと考えております。
○須田委員 2 つを分けて考えたほうがいいと思います。例えば 10 ページ、制度を導入しているけれども、加入者割合が減っているとあります。ここの加入者を増やすという対策と、言われるように中小企業だとか非正規だとか、特に中小企業の場合は労働組合も組織率が 5 %ぐらいだった記憶があるのですが、そういう中でどうやっていくか。例えば 1 ページに手続があります。去年も申し上げましたが、企業はチェックオフは勝手にできないのですよ。労働者個人の承諾を得るか、従業員代表又は労働組合との協定がないとチェックオフできないわけです。私も地方をいろいろ回るのですが、中小でも本当の地方の 10 人ぐらいの会社だと、給料の銀行振込すらまだできていない現金払いの所があるのです。
それから、賃金支払の 5 原則というものが一応ありますから、それも踏まえた上でどうするかということを考えなくてはいけない。そうすると、多少手間暇が掛かっても、「やっぱり財形をやったほうがいいよね」という魅力を上げていく一策と、それから既に導入されている企業がどう広げていくのかという、 2 つに分けて議論しないと、一緒に議論しても現実はそう簡単には動かないと思います。
これは、後ほどの議題 3 とも関わるとは思うのですが、例えば大企業で制度があって、そこで働いている非正規の人たちと、非正規を中心とするビジネスモデルをやっている企業にいる非正規の人というのは、同じ非正規というカテゴリーでも違いますし、最近の特徴を「非正規」と一括りで言いますが、今、増えているのは 65 歳以上の人なのです。その人たちに財形の話をするのかというと、現行制度では年齢的にもう対象外の人なのです。それでは、若年の非正規がそんなに増えているのかというと、しかし今は増えていないのです。
それで、高木先生が言われたように、これから人口減少、労働力不足という中で、将来の社会保険の担い手が受給者になってしまうかもしれないという問題は財形だけの話ではないですが、そういう社会的な問題を踏まえた上で、この仕組みをどう維持していくのか。いろいろな切り口があるので、分けて議論していかないと、何となく 1 個 1 個は意見として正しいと思いますが、では実際にどうするのだといったときに、どこを対象にしてどう議論するのかを分けていかないと、現実としては非常に難しいという印象を持ちました。次の議題で扱っていただければいいと思いますが。
○宮本分科会長 少し議論の方向を整理していただいて、ありがとうございました。今の状況についての確認をしていますので、ほかに御意見があればお願いします。
○安藤委員 先ほどの、 16 ページの住宅持家取得のニーズについての調査結果についてです。確かに、持家取得のニーズが強いのは 20 ~ 40 歳代ぐらいまでというのは、そのとおりだと思います。これは後ほど出てくる、今後、制度の魅力を高めることにもつながっていくかもしれませんが、私も 50 代ですが、お客さんといろいろな話をしている中でも、逆に高齢化が進んでいったときに、親の相続の問題を抱えている 40 代後半から 50 代の勤労者は、やはり親が住んでいた住居を相続すると。しかし、自分たちは家を既に 30 代ぐらいまでに持っているので、それをどうするのか。
今は空き家対策などいろいろ問題になっていますが、それを例えばリフォームして活用していくとか、高齢化に対応した住宅に関わるいろいろな形の新しいニーズが相当あるので、住宅のニーズというものを持家取得という従来型のニーズに限定せずに、もっと多様なニーズがあるという観点から分析したときに、住宅財形というものがもう少し広がりを持った制度にできるのではないか。それは今後の魅力をどう高めていくかということにもつながると思いますので、そういった若年層の住宅に関わるニーズと、中高齢でのニーズというものがどうなってきているのかという辺りの分析も必要であると思いました。
○宮本分科会長 ありがとうございました。
○八野委員 各委員がおっしゃっていますように、特に若年層で貯蓄ができないとか貯蓄の意識が薄らいでいるのではないかという辺りは、かなりいろいろなことで見ていかないと、多分ここだけで分かる話ではないと思います。
次に、先ほどの制度導入の件ですが、労働組合が必要だとか従業員の代表者との契約みたいなお話もありましたが、正にそういう制度の問題で、使いづらくなっている制度ではないのかということが大きくあります。では、これが周知されていないのか。雇用者側においてもそうですし、勤労者のほうについても、せっかく制度があっても知らない、周知されていないという問題もあると思います。
先ほどもあった、では、メリットはそもそもどうなのかということですが、これはかなりいいメリットがあると私は思います。一般財形はともかくとして、年金と住宅財形については、当然、非課税枠も 550 万円までありますし、持家融資についていえば、今は 5 年固定金利で 0.81 %とおっしゃっていましたし、子育て世帯であれば更に 0.61 %まで落とすという画期的な制度です。
今、民間の変動でも、みずほなどのメガバンク系で大体 0.8 %を少し切るぐらいですから、ソニー銀行や SBI などのネット銀行では、中には 0.6 %を切るものもありますが、これは変動金利ですよね。 6 か月の金利ですから。そう考えると 5 年のこれだけの金利を持っている制度は、すごい制度のはずなので、このメリットをいかに周知するか、いかに理解してもらうかというところがかなり大きいのではないか。これは後半の議論になると思いますが、制度としては非常に立派な、メリットのある良い制度だと思いますので、やはりほかに要因があるのではないかという気がいたします。
○宮本分科会長 ありがとうございます。
○井上委員 今、メリットという話があったのですが、天引きができるということは非常にメリットがあるという声は社内からも聞いています。私どもは確かに大企業ですが、社員には入社の時点の研修のときに、財産形成のしていく話をいたします。そのときに、会社が用意している制度ということで、財形の制度というものがありますよという説明をし、加えて労働組合からも、組合員になるときに、同様の説明があるということで、若い方が財形制度に加入するという声が聞かれています。
加入比率としては、先ほど 6 割という会社がありましたが、それほど高くはありませんけれども、制度としてのメリットをある程度の方が感じるからこそ、利用されているのではないかと思っています。伝えていくことに効果があるのではないかと感じています。
○宮本分科会長 ありがとうございました。
○小野委員 余り本質的なことではないかもしれませんが、 1 点の質問と 1 点の意見を申し上げます。皆さん御指摘のとおり、 7 ページ辺りに、労働者が非常に多様化しているのは御承知のとおりですが、労働者に関するいろいろな呼称があるということだろうと思います。
一方で、前段の部分ですが、そこでは用語として「勤労者」という言葉が出ております。「勤労者」と各労働者の雇用形態による呼称との関係について、御質問を申し上げます。その背景としては、やはり、勤労者の世帯のいろいろな貯蓄動向等を考えた場合に、それぞれの雇用形態ごとに、どれぐらい影響しているかということもありますし、先ほども「勤労者以外」という形でまとめられた集団の中に、恐らく個人事業主という方がいらっしゃると思うのですが、御承知のとおり、個人事業主の数は昨今、相当減っているのではないかと思います。同じ個人事業主の中でも雇用的な個人事業というものがあり、いわゆる請負みたいなものだと思うのですが、それによって、家計の状況も大分違ってくるのではないかと思います。
あるいは先ほど須田委員がおっしゃったとおり、そもそも財形制度に入れない方も一部いらっしゃるわけですので、こういった勤労者世帯というものを年齢ごとに区切ったら、またこういった貯蓄動向の分析が少し深められるのではないかという気がいたしました。まずはその定義の確認をさせていただきたいということです。
2 点目は意見です。企業年金の関係で恐縮ですが、 11 ページに、企業年金との比較という形で、適用率のようなことを見ていらっしゃいますが、企業年金というものは、会社単位でやるかやらないかを決めるということで、決めたらほとんど全員の従業員が加入者になる、正社員ということが多いのですが、そういう形になるということで、個人の希望によって加入するかしないかという要素はかなり小さいという制度です。ですから、そういうところで比較の対象としてどうかという点。あと、企業年金というものは、そもそも退職金の資金の一部を企業年金に移管している部分がありますので、もし比較するならば、退職金を含めた給付制度との比較という形になるのではないかと思います。
○宮本分科会長 ありがとうございました。今、御質問の 1 番目の「労働者」という呼称と「勤労者」との違いを、ここではどのように整理されていますでしょうか。
○富田勤労者生活課長 勤労者と労働者の違いですが、一般に私どもは「労働者」と呼ぶ場合は、労働基準法に適用がある労働者であるとか、いろいろとありますが、民間企業において、使用者と使用従属関係にある方を「労働者」と言っております。「勤労者」と言った場合は、少し広い概念になっており、例えば、財形制度は公務員にも使えるわけですから、そういった部門も入っており、場合によっては、いわゆる役員層、取締役層でも、勤労者と認めるケースもありますので、そういう意味で若干違う場面も出てきます。
○宮本分科会長 小野委員、今の説明について何かコメントはありますでしょうか。
○小野委員 ということは、世帯の主たる収入を得ている人が勤労者ということで分析されていると思いますが、その勤労者の中には、場合によっては 7 ページにあるような、いろいろな、嘱託であるとか、派遣であるとか、パートタイムといった方々も、世帯主ということで、それらの方々がそういった地位であれば含まれると理解してよろしいということですね。
○宮本分科会長 それでは、まだ御意見があるかもしれませんが、ちょっと先に行かせていただき、何か御意見があれば、そのときにまたご発言いただければと思います。では、議題 3 になりますが、当面の課題及び対策について、まず事務局から御説明いただきたいと思います。
○富田勤労者生活課長 資料 3 の 1 ページに「財形制度をめぐる当面の課題及び対策について」とあります。私どもとしては、 2 つほど課題があると考えております。まず 1 つは、先ほどの議題 2 でも出てきておりましたが、財形制度の認知度が低いことです。 2 つ目の課題は、最近の低金利状況の影響も受けているのだと思うのですが、財形制度の魅力が相対的に低下していることがあるのではないか。もちろん、これ以外にも先ほどの委員の皆様からの御指摘のように、課題はあろうかと思いますが、それはこの説明が終わった後に、また引き続き頂きたいと思いますので、これからはこの課題 1 、課題 2 の観点で、私どもがどのようなことに取り組んでいるのかということをお聞きいただきたいと思っております。
下のほうに書いていますが、課題 1 については、普及・広報活動が重要ですので、それをやっていくことが必要であり、課題 2 については、魅力のあることをやっていく必要がありますので、下のほうの 2 、 3 にあるような対策を講じております。
2 ページです。財形制度の普及・広報について行っている取組です。まず、厚生労働省において実施した普及・広報活動は、関係機関との連携等による事業所への制度周知に向けた取組があり、メルマガへの掲載、各種パンフレットにも載せていただく、経済団体にも御協力いただき、会員の皆様に周知をしていく、労働局を通じた周知、広報媒体を活用した制度周知をしております。
4 番目の○にあるように、厚生労働省のホームページも検索しにくい部分がありますので、それを改善していくことを今後もやっていきたいと思っております。また、今週の月曜日からツイッターで毎日 12 時に発信するようにしておりますが、先ほどからも「若年層への周知」という御指摘もありましたが、若年層の方は SNS など、いろいろなものを活用されておりますので、そういったものをこちら側としても利用していくというのが重要ではないかと考えて、このような媒体も使っていくことに現在取り組んでいるところです。
2 番目は、私どもが所管している独立行政法人の勤労者退職金共済機構において実施した普及・広報活動です。まず、財形普及推進チームによる活動があり、こちらで制度導入の働き掛けを、就職面接会に参加すること、財形普及推進員により事業所へのアプローチをしていく、ファイナンシャルプランナーズ協会のイベントに参加して協力をお願いしていく。機構においても、各種媒体を活用した広報活動ということをやっており、こちらにいろいろな媒体を通じた周知を行っているということです。
3 ページです。 (3) で「財形普及促進事業」と書いています。これも勤労者退職金共済機構で行っているもので、中小企業等を構成員とする事業主団体の方に御協力いただき、事業を実施しているものです。こちらに実施団体、実施結果が付いておりますが、こちらに書いてあるような実施団体、合計として、実施事業数で説明会に 4,000 強の事業所に参加いただく、訪問・相談も 2,900 事業所に対応するといったこと。3として、これは平成 27 年度に初めて実施したものですが、中小企業団体等に御協力いただき、アンケートを実施いたしました。これは事業主アンケートですが、制度を知っていたかについては、貯蓄制度は 65 %の事業主の方が知っていました。一方、持家融資制度については 28 %の方しか知らなかったということですので、貯蓄制度そのものに比べて融資制度の認知度は、事業主の方の間でも低いということが読み取れます。
4 ページです。これは制度の導入について尋ねたものです。貯蓄制度については、「既に導入している」とお答えになった事業主が 23 %で、「導入を考えている」という事業主が 6 %でした。持家融資制度については、更に少なくなり、導入している事業主が 5 %、導入を考えている事業主が 6 %であり、消極的な事業主の割合が高いことが分かります。
これを受けての「今後の方針」です。先ほども「メリットがある」という御指摘を八野委員から頂いたわけですが、知らないという方も多いわけですから、分かりやすいホームページを作成するなどして、周知・広報をやっていかなければいけないのではないかと思っております。それから、勤労者退職金共済機構での訪問、説明会、相談等により、制度に興味を持っていただいた事業主に対しては、きめ細やかなアプローチ方法をやっていかなければいけないのではないかということです。
ここのアンケートでは、導入する予定はないということを聞いて、その要因などそれ以上のことは聞いていませんので、今回お願いした後で気が付いた反省点ではあるのですが、そこはやっていかなければいけないと思っています。そういうことを含めて、今後の普及活動を効果的にしていきたいと思っております。ここは後ほど委員の皆様からも、こういうことも考えるべきではないかという御指摘を頂きたいと思っております。
5 ページです。いろいろなニーズに応じた対応を講じていくということで、ここで書いているのは、「財産形成年金貯蓄及び財産形成住宅貯蓄における育児休業等取得に伴う預入中断期間の特例制度の実施について」ということです。この内容については、本日 12 時にツイッターでもつぶやいているのですが、月曜日から発信している中で一番反応があったのがこの中断制度の話で、実は関心はあるのではないかと感じているところです。
この特例措置の概要を申し上げますと、勤労者財産形成住宅 ( 年金 ) 貯蓄非課税制度について、勤労者が 3 歳未満の子に係る育児休業等の期間等を記載した申告書を、当該育児休業等を開始する日までに提出された場合には、育児休業等の開始の日の直前に金銭等の払込みをすべき日から終了の日の直後に金銭等の払込みをすべきまでの間は、金銭等の払込みがないときであっても、非課税措置を適用するということで、これを 3 歳未満の子のところまでは OK にしますとしたわけです。これについては広報を (2) で書いていますが、リーフレットを作成し、周知をしているところです。これまでの申告書の提出状況ですが、労働金庫に御協力いただき件数を拾っていただいたのですが、 4 月に 47 件、 9 月現在で 463 件の提出を受けているということです。
6 ページは、「子育て勤労者支援貸付金利下げ特例措置について」です。特例措置の概要は、通常金利よりも、下の対象者の方については、当初 5 年間 0.2 %引き下げた貸付金利において融資するということで、現在、年 0.61 %ということです。対象者は、 18 歳以下の子等を扶養している勤労者ということです。これについても普及・広報をやっており、メルマガ、経済団体に御協力いただいた周知、広報媒体、プレスリリースなども実施しているということです。勤労者退職金共済機構において実施した普及・広報活動ですが、地方公共団体への訪問・電話連絡等を、以下のように行っています。それから、広報媒体の活用も、以下のような内容で行っているということです。
7 ページは、特例措置の利用状況及び事業主の皆様からの御要望です。1に利用状況を載せております。平成 27 年 9 月末現在において、本件特例措置の利用件数は 164 件で、全体の 77.7 %になっておりますので、非常に高い比率ではないかと感じております。2にあるとおり、 4 月、 5 月、 6 月の貸付決定件数は、それぞれ 29 件、 44 件、 41 件で、特例措置開始以後は増加傾向にあるということです。
どのような御意見があるかというのが3で、「利用希望者はいるが、平成 27 年度末までに物件探しが間に合うか不明」、あるいは「財形貯蓄の貯蓄額や貯蓄歴が足りず利用できない」「財形制度 PR のよい機会であるのに実施期間が短期間であり残念」といった、延長を望む声が上がっているところです。
こういったことを受けて、今後の方針です。継続的な広報・普及活動も実施しつつ、この特例措置の実施期間を平成 29 年度末までの 2 年間延長する方向で、関係機関と調整を行わせていただきたいということです。
私からの説明は以上ですが、これ以外にも論点があろうかと思いますので、忌憚のない御意見を頂きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○宮本分科会長 先ほどの議題 2 でも、どういう取組が必要かというような御意見が少しずつ入っていたかと思いますが、この御説明を踏まえて、より具体的に課題及び対策について御発言いただければと思います。
○布山委員 先ほどの御議論も含めて意見を申し上げます。ここの資料にもあるように、それから皆様のこれまでの御議論のとおり、まず制度そのものの認知度が低いということと魅力があるかどうかということで、メリットをどれだけ言えるかということだと思います。
御説明があったように、特に若い方に知っていただくには、多分、職場におけるポスターだけでは、もはや難しいと思っています。そういう意味では、ツイッターを始められたということなので、随分変わってくるのではないかと思います。
魅力というところにおいては、既に導入している企業、今回は 5 社のヒアリングの内容がここに出ていますが、もう少し幅広く見ていく必要があるのではないかと思います。加入している企業だけでなく、相談などがあって、ある程度のところまで説明したけれども導入をしなかった企業についてもです。導入している企業での課題、効果、あるいはやめてしまった、断念した企業については、何が原因でそうなったのかというところを踏まえて、メリットあるいは魅力がもっと出るような制度にしていくということを議論する必要があると思っています。
ここで皆さんがおっしゃる内容とか方向性というのは、おそらく同じだと思うのですが、なにぶん、その後の議論をするデータがないのではないかと思っておりまして、それは今後、議論していく際の課題ではないかと思っています。
○宮本分科会長 この間、少しずつデータが集まってきましたが、まだまだ今回も 5 社、しかも優良 5 社ですので、引き続き調査をより広げて、より具体的に議論ができるようにということが、 1 つ課題かと思います。そのほかにいかがでしょうか。
○高木委員 今、行われている取組として、プレスリリース、ホームページへの掲載、パンフレット、ポスターということで、それにプラス若者向けのツールとしてツイッターを新しく利用しているということでした。当然そういった取組は、新たな取組も含めて重要だと思っています。しかしながら、例えば若者がツイッターなどで目にすることがあった、あるいはパンフレットやポスターで目にすることがあったとしても、それらは恐らく右から左へと流れてしまい、他人事だとしか思わないと思うのです。
そういった取組は当然やっていくべきであって、必要ですが、同時に私が注目したいのは、 2 ページの (2) に書いてある勤労者退職金共済機構がやっている、むしろ従来型のアナログな方法です。これはちゃんと顔と顔を突き合わせて説明するものです。そのメリットというのは、何か質問があったら、その場ですぐに顔の見える相手から答えを聞くことができる。そういった対面のアナログな方式によってこそ、人々はその必要性を認識して、この制度に加入することについて具体的に考え始めるということなのではないかと思っています。従来型のアナログな方式というのが、現代においても効いてくるのではないかと思います。御本人が気付いていないけれども真の対象者として、この仕組みが必要になってくる人たちを、いかにして対面式の所に連れて来ることができるのかだと思うのです。
勤労者退職金共済機構で行っている事業所へのアプローチというものがあるのですが、事業所の担当者、例えば総務であるとか人事の方が出てきて、説明を受けられて、それを会社に持ち帰ると思うのですが、その後、本当に対象者となるべき働く人々に、それが届いているのかということです。これは昨年も申し上げたことなのですが、働く人々にそれがきちんと届かなければ、その先にはいかないということもあると思うのです。願わくば、その働く人々に直接向かって、顔と顔を合わせて説明するような場に、さらにこの勤労者退職金共済機構の活動として、そこに踏み込むことができないのだろうかと考えるわけです。
もう 1 つは別件なのですが、育児休業に伴う特例措置です。育児休業の制度を持っている企業は多いと思うのですが、実際に取られている方は女性が多いということになるのだろうと思います。その特例措置を受ける件数が増えているということなのですが、やはり数的にはすごく少ないわけです。
私が何を申し上げたいのかというと、数が少ないからやめていいのかというと、そうではなくて、国がやっているからこその、この仕組みの重要性というのは、対象者の量とか範囲というものを問題にするべきではないということです。御本人が気付いていなくても、本当に必要となり得る人々が少数であったとしても、その人たちをどうにか、むしろ救い上げるような制度という意味合いがあるような気がしておりまして、この対象者の量が少ないから、範囲が狭いからということによって、この制度の今後の方向性を決めるべきではないと考えています。
ですから、育児休業を取られる少数派の女性も対象になりますし、不安定労働をしていらっしゃる方たちも対象になってくると思います。この制度の理念として、そういったところに重点を置くべきで、それだからこそプロフィットを追求する民間企業とは違う、国の仕組みの意味合いがあるのではないかと考えています。
○宮本分科会長 大変重要な御指摘を頂いていると思います。そのほかにいかがでしょうか。
○柴田委員 普及・広報活動について意見があります。ここに入っているメニューも非常にいいと思うのですが、先ほどおっしゃったようにインターネットをうまく使うことが非常に重要で、資料 2 の中にもあったのですが、日銀の金融広報中央委員会がやっている「知るぽると」というホームページがあって、これは膨大なデータがある上に、若者向けの金融教育の教材がたくさん入っているのです。その中では生活設計やファイナンシャルプランニングを入力して、何年後にこれだけ貯まって、借金はこうすると赤字になってしまうというのが、ゲーム感覚でできるページもあります。私は大学で生活設計を教えていたときに、ファイナンシャルプランニングを作らせると、そんなに無駄遣いをしてはいけないと気が付いてくれるので、実際にシミュレーションをやらせるということが大切だと思うのです。
若者は、特に厚生労働省のページでシミュレーションをやろうとは思っていないと思うので、知るぽるとのページには貯蓄の種類もいろいろな種類が書いてあるのです。例えば、知るぽるとの財形の説明ページには、厚生労働省のリンクをつけるなど、ネットの中で網を掛けることが必要であると思います。
フラット 35 についても、資金計画シミュレーションが入っているので、これだけ借りたら資金が破綻してしまうということも分かると思うので、それも必要だなというのが 1 つです。
もう 1 つは、財形持家融資制度についてです。勤労者と事業所にアプローチするだけではなくて、不動産業者にアプローチするということも考えたらいいと思います。 1 つは、新築の場合には大体提携ローンと抱き合わせで売っていることが今でも多いと思うのですが、そのほかに、中古を買うとか、仲介していくときに、どのようなローンが使えるという、個別のローンが出てきたときに財形持家融資制度が使えるということが分かると、不動産業者も買えるか買えないかというときに、お金を借りられないといったときに「これがあるのではないか」ということを一言言ってもらうだけで、相当可能性が高まるというので、不動産業者へのアプローチも必要であると思います。的外れかもしれませんが、そのように思いました。
○宮本分科会長 今、日銀の知るぽるとは財形に飛ばないのですね。
○柴田委員 飛ばないです。
○宮本分科会長 その辺りはすぐに工夫ができそうな感じがします。知るぽるとを使った教育を誰かがやらないといけないというのもあるかもしれませんね。個人に任せたら、これはなかなか広がらない。
○柴田委員 あそこは頼むと出張教育もしてくれます。
○八野委員 柴田委員の意見に関してです。私は、住宅金融公庫や住宅金融支援機構にいました。、今、住宅金融支援機構がときどき調査をやっているのですが、お客様がローン付けをどうしてするのか。これは、先ほどおっしゃっていたように、メーカーの営業マンとか、ディベロッパーの営業マンの意見が相当効いているというデータが毎回出ております。ときには 6 割、 7 割を占めます。。
ですから、持家住宅ローンに限る話ですが、住宅を取得することが目的なので、ローンはその後になりますので、メーカーの営業マンの方、それはまた提携ローンが結構ありますので、よほどネットで調べておられる方以外は、ほとんどが業者の言いなりになる部分があります。
関連して言いますと、広報をどうするかということなのですが、そういうビルダーとか建設会社の営業マンに財形持家融資のことを PR してもらえるかというと、これは至難の業というか、フラット 35 でもなかなかやってくれない中で、まず無理だと思います。
ところが、先ほどの資料 2 の 19 ページ、財形持家融資制度が平成 15 年をピークに極端に落ち込んでいます。これは明らかに、ここの黒い棒グラフ、住宅金融支援機構が従来の公庫ローンを廃止したときなのです。
ですから、かつては財形の持家融資制度は旧住宅公庫なりが、今も申込書の中に書いていますが、お客様に PR していたということが結果的にあります。ですから、勤労者退職金共済機構と、今も住宅金融支援機構が共同でいろいろとやっておられますが、ここの連携は必要だと思います。住宅金融支援機構の貸付制度の中に併せがありますから、住宅金融支援機構も財形持家融資の紹介はしているのですが、ただ大半はフラット 35 の民間ローンで、証券化ローンのほうを当然営業していますので、なかなか財形の話まではいかないというのが実態だと思います。
ただ、先ほどおっしゃいました事業者に少しでもアプローチするのであれば、両独法が協力されて、そういうチャンネルを使っていく、住宅金融支援機構の営業を使っていくということも、両省で話をされて、考えられたらどうかという提案をさせていただきます。
○宮本分科会長 いろいろ具体的な御提案を頂いていると思います。そのほかにいかがでしょうか。
○内藤委員 私が最後に質問する方がよかったのかもしれませんが、今、御提言いただいた資料 3 は、例えば先ほど須田委員がおっしゃったように、導入している企業内の入っていない方々、あるいは導入できる状況にあるのにまだ入っていない企業に対しては、広報が有効であり、また働き掛けようとしている。これはすごくよく分かりました。そこで、是非お願いをしたいと思うのです。
先ほど厚生労働省がおっしゃったように、資料 3 の 4 ページ、両制度とも導入に消極的な事業主の割合が高いという、これが一体なぜなのかということと、労働者へのメリットはよく分かるのですが、事業主そのものへのメリットがあるのかどうかの辺りというのは、やはり調査検討し、広報の中に盛り込む必要があるのではないかと思う点、これが意見の第一です。
第二点としては、今日の御提案から少し離れてしまうのですが、先ほどの資料 2 から伺っていて気になったのが、例えば資料 2 を御覧いただきたいのですが、 7 ページの「勤労者の貯蓄をめぐる状況について」というデータです。就労形態別労働者割合として、下が「正社員以外の労働者」ということになっています。確か、つい先日の統計資料では「ついに非正規労働者割合が 40 %を超えた」というお話を聞いております。
こういった中で、これは例えばの話ですが、実は家計補助者でしかない方々が多いのかもしれませんが、パートタイマーは自分が勤めている企業の財形の対象として、企業側が考えているのかどうかという視点、あるいはどうしても財形というと、正社員が中心でしたので、その辺りがどうなっているのだろうかということ。これは単に御質問というか、今後の課題として考えますが、そういった方々、および、まだ非正規の中の全体ではありませんが、特に派遣が非常に増えている中で、派遣労働者というのは、ここでいうところの正社員以外の労働者の中に入っているのでしょうか。つまり、派遣労働者の場合、御存じのとおり、今回の派遣労働法の改正で、一般労働者派遣と特定との区別がほぼなくなってきますが、一般労働者派遣すなわち登録型の派遣労働者はどう対応されますか。彼らは、どこで労働力を提供するかといえば派遣先ではあるのですが、その契約期間内は派遣元企業の正社員というか、そこに労働契約が存在します。
そうしますと、派遣会社というのは自社の社員、もちろん自社の基幹部門で働いている人事とか、財務をやっている方々だけではなく、一応自社が雇っている派遣労働者たちに対しても対応をされるのか。特に、非正規が増えているということを先ほど高木委員も非常に強調されましたが、そういった 40 %の労働者が非正規となると、失礼な表現を使いますと、従来我々が考えていた財形制度そのものの見直しも近い将来は必要であるかもしれない。これはこの委員会で決めることはとてもできませんし、法改正の問題にもなるでしょうが、将来的な課題としてはそこまでお考え合わせいただけませんと、よりよい財形あるいは幅広く使える財形にならないのではないか。質問を兼ねてお伺いしたいと思いました。単に御提言ということで、お聞きいただけると幸いです。
○宮本分科会長 今の御指摘は重要な話であったと思います。御説明いただけますか。
○富田勤労者生活課長 非常に重要な御指摘を頂いたと思っております。初めのほうの資料 3 の調査の最後の「導入する予定はない」と書いてあるところの追跡調査は今後考えていただきたいと思いますし、調査でどういうことができるか分かりませんが、もっと詳細なものができないかというのは、引き続き考えていきたいと思っております。
その上で、資料 2 の 7 ページの非正規雇用労働者の問題です。これは先ほどから委員の皆様からたくさん御指摘を頂いており、ここでは 39.8 %となっておりますが、最近、 4 割を超えたとの話を聞いております。これは労働力調査ではなかったですが、この中で財形、貯蓄をどうしていくのかということですが、いろいろな委員の方から御指摘があるように、切り分けて考えていかなければいけないと思っております。
非正規雇用労働者は、そもそも貯蓄に回す余力がないという方もたくさんおられまして、これはなかなかうちの所掌だけでは対応しにくい、非正規雇用労働者がいかに生活できるようにしていくかという観点でして、場合によっては、それこそ正規雇用労働者と処遇の格差の問題ということで、均衡待遇の推進、あるいは一部では均等待遇みたいなものも併せて検討していくようなことも必要ではないか。これは格差の問題にどう取り組んでいくかということで、貯蓄の問題とは少し違う観点で検討していく必要があるということです。
一方で非正規雇用の方、こういった方の自助努力ですが、これは当然、社会保障などを考えていく観点でも重要な視点で、これをどうしていくのか。これは当分科会でも議論していくべき話だと思っております。その中でも、家計補助者的な方、あるいは自らが所得を稼いで生活している方、これは当然また違った観点になっていますので、詳細な分析が必要であると考えます
非正規雇用の中でも、今、御指摘がありましたが、派遣労働者の方ですが、派遣労働者の方については、どこが雇用しているかというと派遣会社になるわけです。派遣労働者の方の難しいのは、御指摘がありましたが、登録型と常用型の 2 つあり、登録型の方というのは本当に短期間のことがあります。そうすると、短期間しかおられないのに、派遣会社として貯蓄を支援していくということができるのか。一方で常用的に働いておられる方、長期間働いている方については、もちろんこれは支援していくようなインセンティブも、これから人材不足の中で定着を求めていくということからすると、貯蓄を支援していくということも当然考えるべきことだろうと思いますので、そこは派遣労働者といってもいろいろな形があるということの中で、属性も見ながら考えていく必要があるのかなと思っております。
いずれにしても、当分科会の議論のテーマでございますので、委員の皆様からの御意見を頂きたいと思っております。
1 つだけ申し上げますと、資料 2 の 7 ページの派遣労働者が増えているとあるのですが、現在は 2.6 %と非常に小さな数字ですので、そこは申し上げておきたいと思います。
○宮本分科会長 ある程度重要なポイントは御意見を頂いたかと思いますが、加えて御発言はありますでしょうか。
○井上委員 資料 3 の 5 ページ、特例措置の広報について「育児関係パンフレットへの掲載」とあります。財形の加入促進ということならば、財産形成ということを最初に打ち出してパンフレット等を作られたほうが、企業の担当者にはダイレクトに伝わると思いますので、ここは少し工夫をしていただくといいかと思います。
○加藤委員 厚労省でツイッターを始めたというお話で、とてもいいチャレンジだと思います。ツイッターとか Facebook 、 LINE などは、若い人たちがどんどん使っていますから、若い人たちの意見を頂きながら、それをどうやって活用するかを考えるべきだと思います。
例えばツイッターでも、果たして厚労省をフォローする方がどれだけいるのか、という点にも留意すべきです。具体的には、ツイッターで人気がある、みんながフォローしているような影響力のある人に情報を発信してもらうとか、そういうことをやらなければいけないし、それと同じようなことが、 LINE とか Facebook の活用においても重要ではないでしょうか。そういったことを若い人とチームになって考えてみたらよいと思います。
○宮本分科会長 大事な御指摘かと思います。
○富田勤労者生活課長 重要な御指摘でございますので、影響力のある方から発信していただくというのは考えたいと思います。厚労省のツイッターのフォロワーは 30 万人おりますので、実はかなり多数のフォロワーがいるということは申し上げておきます。
○加藤委員 すごいですね。
○上原委員 財形持家融資制度について使用者側は余り積極的でないということなのですが、若者の価値観の変化もあって、物を持てば固定資産税もかかる、買うのは嫌だ、重たいと、そういうのをどう抑えるかというのも非常に重要なのではないかと思うのです。
もう 1 つ、入り口で金融機関の役割を見直すという指摘が前の資料でもありましたが、言わば競合する部分もあるのだろうと思いますが、今の金融機関、メガバンクなどを見ていても、 NISA は宣伝していますが、財形はしていません。その辺をどううまく調整するのかというのが必要なことなのではないかと思います。
○須田委員 資料 3 で提示いただいたこれからの対策は、是非このとおりやっていただきたいと思います。その上で、来年に向けて検討いただきたいと思うのは、預入中断の特例に育児がありますが、介護問題も考えてもらいたいというのが 1 点です。
それから、高齢者退職等はある中で、年金の預入が 55 歳未満と。この年齢制限ももう少し考えてもらえないかと思います。今どうのこうのという話ではないのですが、今後に向けて検討していただければ有り難いと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○宮本分科会長 それでは、定刻になってきましたので、たくさんの意見を活発に出していただき、誠にありがとうございました。事務局におかれましては、本日の各委員からの御意見を踏まえて、引き続き勤労者の財産形成の促進制度の適切な運用に努めていただくよう、お願いいたします。
最後に議事録の署名委員ですが、労働者代表として安藤委員、使用者代表として布山委員にお願いしたいと思います。本日はこれにて散会といたします。ありがとうございました。
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