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2015年9月9日 第65回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局
○日時
平成27年9月9日(水)10:00~12:00
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
○出席者
山崎部会長、宮武部会長代理、浅野委員、牛丸委員、翁委員、駒村委員、佐々木委員、田中委員、野上委員 |
○議題
1.平成26年財政再計算のヒアリング-私立学校教職員共済制度-
2.その他
○議事
○清水首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまより第65回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
議事次第、座席図のほか、次のとおりでございます。
資料1は「平成26年財政再計算結果等について-私立学校教職員共済制度-」。
資料2は「セミナー形式の年金数理部会について」。
配付資料は以上でございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。駒村委員は30分程度遅れられるということで御連絡いただいておりますが、本日は全員御出席ということでございます。
それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願い申し上げます。
○山崎部会長 委員の皆様には、御多忙の折、御出席いただきまして、どうもありがとうございます。社会保障審議会年金数理部会は、被用者年金制度の安定性及び公平性の確保の観点から、財政検証・財政再計算時における検証を行うこととされております。本日は、私立学校教職員共済制度の平成26年財政再計算について、文部科学省に御出席をいただき、ヒアリングを行いたいと思います。
なお、私学の共済制度のヒアリングの後に、できれば昨日の厚生年金保険、国民年金についての質問を、まだ終えていないようでございますから、そちらのほうに充てたいと思いますので、進行について御協力をお願いいたします。
カメラの方はここで退室をお願いします。
(報道関係者退室)
○山崎部会長 それでは、議題1「平成26年財政再計算のヒアリング-私立学校教職員共済制度-」に入ります。
説明者の方は、どうぞ席をお移りください。
(文部科学省高等教育局私学部私学行政課私学共済室 元平室長補佐、日本私立学校振興・共済事業団 松澤数理統計室参事 報告者席へ移動)
○山崎部会長 本日は御多忙の中、文部科学省高等教育局私学部私学行政課私学共済室の元平室長補佐、日本私立学校振興・共済事業団の松澤数理統計室参事にお越しいただいております。ありがとうございます。昨日の部会でも申し上げたとおり、今回のレビューに当たり、昨年12月19日の当部会において審議した資料の内容に基づきまして、レビューに必要な資料を作成、提出していただくよう、私から制度所管各省にお願いしておりました。文部科学省におかれましては、お忙しいところ対応いただき、ありがとうございます。
それでは、説明をお願いいたします。
○元平私学共済室長補佐 本日は、山崎部会長を初め、委員の先生の皆様には、御多忙の折、私立学校教職員共済制度のヒアリングの時間を設けていただきまして、まことにありがとうございます。大変感謝いたします。
今回、私立学校教職員共済制度の財政再計算の基本方針等の概要につきましては、私、文部科学省の元平より、具体的な推計方法等につきましては、日本私立学校振興・共済事業団参事の松澤から御説明させていただきます。
まず、資料に入る前に、簡単に今の私学共済の現状について御説明させていただきます。
私立学校教職員共済制度では、平成16年財政再計算と同様に、平成21年財政再計算では、被保険者数を学齢対象人口の減少に連動して減少する見込みとしておりましたが、その後の実績は逆に増加傾向を示しました。そのため、前回の要留意・検討項目において、仮定よりも多くなる前提に基づいた試算もしておく必要があると御指摘いただきましたので、これを踏まえて、今回の平成26年財政再計算を行ったところです。
現在におかれましても、私学共済の加入者数は依然増加傾向を示しております。その主な要因としては、まず、急速な高齢化の進展と高度先端医療技術の進歩に伴って医療のニーズの多様化が進んでおります。これは私立大学の大学病院の現場においても、資質の高い医療スタッフの長期的な育成を図るという観点から、看護師あるいは介護スタッフなどの医療従事者が依然として増加していることが一つの理由として考えられます。また、少子化の進展が進んでおり、子供の数自体は減少しておるのですが、幼稚園における少人数学級の割合なり、あるいは認定こども園の件数が今、増加しているということで、その対応として、こちらの幼稚園においても新規の採用者数が依然増加している状況でございます。これらの実績を踏まえて、足下の加入者数は当分の間、増加を見込んでおりますが、長期的には将来の学齢人口に基づき減少していくという推計で計算をしております。その他の要留意・検討項目については、十分分析した上で、私学共済として、今回の再計算に反映しております。
この結果、財政効果としては、保険料収入の増収が見込まれるということから、共通財源に当たる1・2階部分についてはプラスの要因にはなるのですけれども、一方で保険料負担の軽減措置の財源が増加することに伴って、我々の独自財源に当たる3階部分ではマイナスの要因となると分析しております。
それでは、資料の説明に入らせていただきます。
1ページ目ですけれども、今回の財政再計算の基本方針として、被用者年金制度の一元化を前提とした財政の見通しを作成することが目的です。まず、本年4月から今月9月の一元化前までの掛金率、そして、10月の一元化以降の経過的職域年金の給付費、軽減保険料率、独自財源の将来見通しについては、私学共済独自の計算結果を示しております。制約条件といたしましては、今回の一元化施行に伴って職域部分が廃止されました。1・2階部分の保険料率については経過措置を設け、厚生年金の保険料率に統一されることを前提に保険料率の見通しが作成されております。賃金上昇率、物価上昇率、運用利回りの経済前提並びにマクロ経済スライドの給付調整期間及びスライド率については、厚生年金の平成26年財政検証における前提と同様としております。財政再計算の対象期間ですが、ただいま申し上げた制約条件のもとでおおむね100年間、2110年度までであり、財政均衡が厚生年金全体で図られているとしております。
財政再計算に関しまして、日本私立学校振興・共済事業団の共済規程、これは文科大臣の認可でありますが、第26条の2において、少なくとも5年ごとに再計算を行い、再計算を行う年以降、おおむね100年間に相当する期間の終了時に、長期給付の支給に支障が生じないようにするために必要な額の積立金を確保しつつ、当該期間にわたって財政の均衡を保つことができるようにすることが定められております。
資料をおめくりいただきまして、2ページ目、財政方式の考え方についてですが、段階保険料に基づき財政運営を行うこととしております。有限均衡方式に基づき、おおむね100年、2110年度までの財政均衡が厚生年金全体で図られております。前回の財政再計算までは、給付水準のもととなる経済前提やマクロ経済スライド調整率及び調整期間を厚生年金に一致させまして、財政均衡が図れるように最終保険料率を決定していましたが、被用者年金一元化法によって、本年10月から職域部分が廃止され、現行の1・2階部分である厚生年金部分については、今後も安定した加入者数が見込めることから開放集団方式に基づいております。一方で、職域部分の財政方式については、本年10月以降は新規加入者が発生しないことから、閉鎖集団方式により財政見通しを作成しております。
次に、3ページ目でございますが、今回の財政再計算にかかわる私学事業団の組織体制について御説明させていただきます。
現在、担当部署は、私学事業団の数理統計室で所掌しておりまして、6名の構成になっております。部長級であります数理統計室長を筆頭に、課長級である参事、数理担当と統計担当のそれぞれのラインがありまして、係長級の副主幹、主任がそれぞれ配置されておるところでございます。経験年数につきましては、室長が今年度就任し、参事は30年、数理担当の副主幹は21年、数理担当の主任は18年の経験を有しており、各種の実務研修会等に定期的に出席して、研鑽を図っています。
それでは、4ページ目の「推計作業における制度間の連携状況」について御説明させていただきます。
「基礎数・基礎率の作成における連携状況」としてですが、基礎数については原則的に私学共済で作成して、基礎率については、脱退力・総報酬指数などの主要部分については私学共済で作成、それ以外の制度特性の差異が比較的生じにくいと推定される部分については厚年の率を準用しております。
「将来推計作業における連携状況」ですが、加入者数の推計については私学共済が実施しており、それ以外の厚年相当部分の推計作業については厚年で作成している状況です。
ここからの具体的推計方法等については、私学事業団の松澤より御説明させていただきます。
○松澤数理統計室参事 私学事業団、数理統計室の松澤でございます。
今回の私学共済の財政再計算の推計方法等について御説明申し上げます。
5ページをご覧ください。まず、3-2「基礎数・基礎率に関する資料」でございます。
今回の再計算で使用しました基礎数につきましては、加入者関連、年金者関連、待機者関連がございまして、また、基礎率につきましては、人口学的要素、経済的要素がございますが、従来の財政再計算と同様となっております。
ただし、次ページをご覧ください。3-2-2「基礎率設定の基本的な考え方」の(iv)にありますように、いわゆる共通部分として厚生年金相当の年金額を推計するという目的から、今回初めてですが、厚生年金で用いた基礎率を一部準用しております。
「基礎率の設定に至る検討の過程」につきましては、加入者数の見通しにおきまして、3-2-3-1の(2)にございますように、また、冒頭で文科省から説明がございましたとおり、平成26年度から36年度までの各年度末につきましては増加するものと推計しておりまして、(3)にございますように、平成37年度以降の各年度末につきましては、学校種ごとの加入者数が、おのおのの学齢対象人口に比例して減少していくように推計しております。詳細につきましては、昨年9月の第59回年金数理部会で御説明しておりますので、省略させていただきます。
3-2-3-2の経済前提に関しましては、従来と同様、厚生年金と同じものを使用してございます。
続きまして、7ページをご覧ください。3-2-4にございますように、基礎数につきましては、23年度末の全数統計による実績値を使用してございます。
また、次ページの3-2-5の基礎率につきましては、原則、過去3カ年平均の実績に基づいて作成しております。
ここで御質問がございましたので、お答えさせていただきたいと思いますが、障害共済年金発生力、こちらが私学共済の実績に基づいていないということで御質問がございましたので、御説明申し上げます。実は、私学共済は母集団が大変小さい制度でございまして、年間の障害発生件数が50万人中300人ということで、なかなか統計がとりづらいということで、厚生年金の率を流用させていただいて、補正をかけて、私学共済の制度の基礎率として採用するという形をとってございます。
このような基礎率・基礎数を作成した上で具体的な推計作業に入るわけですけれども、その処理方法につきましては、ページを飛ばしまして、20ページをご覧いただきたいと思います。3-3「推計方法に関する資料」のうち、3-3-1といたしまして、フローチャートを作成してございます。こちらをご覧ください。
先ほども申し上げましたが、今回、いわゆる共通部分として厚生年金相当の年金額を推計するという目的がございますので、私学共済で作成しました左上にございます加入者数、基礎数、基礎率、こちらを上の矢印にございますように、厚生年金に対しまして提供するという形をとります。こちらに基づいて、厚生年金が厚生年金相当部分の算定を行いまして、実施した推計結果のうち、私学共済部分のデータを右下の矢印にございますように提供していただいて、そして、左の中央の独自財源分の推計結果とともに、私学共済制度の財政再計算結果としてまとめ上げるという作業を今回行っております。次ページ以降の具体的なケースにつきましては、説明を省略させていただきたいと思います。
ページを飛ばしまして、50ページをお開きください。4-1「推計結果の分析及び結果の示し方に対する基本的な考え方」につきましては、今回、厚生年金相当部分の推計に加えまして、私学共済の独自財源で賄うべき費用であります、先ほどもちょっとお話が出ましたが、経過的な旧職域部分の年金給付、あるいは保険料の軽減に充てるべき財源の推計という作業がございます。このうち、旧職域部分の年金給付に関する財政見通しにつきましては、資料の88ページをご覧いただきたいと思います。
こちらの88ページでは経済前提ケースのAからEまでの見通し、また、次の89ページにはケースF及びGの見通しを掲載してございます。文字が大変小さくて申しわけございませんが、表の最下段にございます収支差額の現価額をご覧いただきたいと思います。おおむねどのケースにつきましても約1兆2,000億円ということで、表題にございます上から3段目の独自財源積立金の額、こちらが約1兆8,000億ということでございまして、この範囲内で財政運営が可能であるということが今回の計算結果として求められております。
また、保険料の軽減措置につきましては、本日の資料にはございませんけれども、昨年9月の第59回年金数理部会で説明済みでございますので、省略させていただきたいと思います。
先ほどの続きに戻りまして、51ページ、4-9「財政検証・財政再計算結果の公表の過程」でございますが、こちらにつきましては、平成26年8月に私学事業団のホームページに掲載をしてございます。
また、関係者等への周知につきましては、4-10にございますとおり、全加入者向け、あるいは学校法人向けの広報誌に掲載し、こちらを配付するという作業とともに、私立学校の事務担当者に対する説明会を全国で開催しております。
ページを飛ばしまして、最後の90ページまで行ってしまいます。最後の項目でございます7-1「年金数理担当者の所見」といたしましては、財政再計算で使用しております統計データにつきましては、全数調査により作成していることから、十分性及び信頼性を満たしているものと考えております。また、前提の合理性・妥当性や手法の妥当性・数理的整合性や制度の持続可能性という(ii)(iii)(iv)の項目につきましては、厚生年金と同等と考えております。
説明は以上でございます。
○山崎部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの私学共済の説明につきまして、皆さんから質疑をお受けしたいと思います。浅野委員から我々の手元にメモをいただいておりますが、ほかの委員から最初に御質問があればお受けしたいのですが、よろしいでしょうか。野上委員、お願いいたします。
○野上委員 待機者の話なのですが、制度一元化とか、最近の話題ですとマイナンバーとか、いろいろ影響しそうな制度が入ってくると思うのですけれども、そのあたりはいかにやられているのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 資料の19ページをご覧いただきたいと思います。先ほど説明の中から省略してしまったのですが、待機者につきましては、退職後に死亡したと思われる分のみを除きまして、各待機者として上げられている記録期間につきましては全て年金に結びつくという形で推計をしています。
○野上委員 ということは、実績よりも大幅に改善するというか、年金を受けられる方がふえているということですか。
○松澤数理統計室参事 はい。実際には請求漏れ、請求おくれ、請求忘れというものが実態としてはございますが、こちらは実数がつかめないものですから、全て債務として上げるという形をとっています。
○野上委員 もう一点、受給者の方の消滅率といいますか、死亡率だと思うのですが、そのあたりは今、独自に算定しておられますね。
○松澤数理統計室参事 はい。
○野上委員 改善率に関してはいかがでございましょうか。
○松澤数理統計室参事 資料の9ページ、上から2つ目の退職共済年金者消滅率ということで、こちらのオ.のところで改善について御説明さしあげていますが、これは厚生年金その他の制度と同様の改善方法をとっています。もとの死亡率につきましては、私学共済制度の実績に基づいて補正をかけていますが、改善というやり方につきましては、各制度共通となっております。
○山崎部会長 佐々木委員。
○佐々木委員 1点だけ御質問させていただきたいのですが、私学経営はこれから、人員の見込みは高齢化に伴ういろいろな要因でふえていくということが見込まれて、ただ、総体的には厳しい経営環境にあるのだろうと思います。
1点だけ確認させていただきたいのですが、前回も見ていたのかもわからないですが、給与の見込みのところを御質問させていただきたいのですけれども、例えば21ページ目のケースAで、これは2015年度で被保険者が52万2,000人ということでよろしいのですか。
○松澤数理統計室参事 はい。
○佐々木委員 給与の総額が一番右の、これは1兆4,000億。
○松澤数理統計室参事 はい。
○佐々木委員 例えば10年後ですと、人員はほぼ横ばいで55万9,000人ということなのですが、報酬の総額は4兆7,000億ということでよろしいのですか。
○松澤数理統計室参事 2015年度につきましては、保険料収入を計算するに当たりましては一元化後の期間が半年しかないということで、半年分の総報酬を計上しています。ですから、約2倍にしますと平年度ベースになるということで、人員のほうは年度末ですので一時点の人数ですが、総報酬のほうは年間の報酬ということで、初年度が半年分という形の計上になっております。
○佐々木委員 では、2016年度から平年度ベースになっているということですね。
○松澤数理統計室参事 そうでございます。
○佐々木委員 これは、各個別の経営ですから、どうこうというのはわからないですけれども、各企業などでも人件費のコントロールというのは非常に大きな課題になっているのです。それは共済組合の関係とは違うのかもわからないですけれども、その辺の状況がもしおわかりになりましたら、コメントいただければと思います。
○元平私学共済室長補佐 詳細なところはちょっと不明なのですけれども、私学のほうも少子化を迎えて多角的な経営を図っておりますので、その辺の人件費のコントロールなどは割合率先して進めているところで、実際に私も私学の現場等に視察等で行かせていただいたときも、外注等を効率よく図って、人件費等には余り無駄な人員がいないといいますか、効率よく業務の遂行を行っていると見受けられるところでございます。詳細なデータはとっておりません。
○佐々木委員 では、ある程度昇給ということのあれは確保している。
○元平私学共済室長補佐 そうですね。抑制とかもかなり、国家公務員ベースではないのですけれども、自主的に財政を運営しながら、大幅な給与のアップとかではなくて、社会情勢との均衡を保ちながら構成しているようには伺っております。
○佐々木委員 ありがとうございました。
○山崎部会長 では、宮武部会長代理。
○宮武部会長代理 年金数理に関する質問ではなくて恐縮なのですが、被用者年金一元化に伴って職域部分を廃止するということ、私学共済は特に安定した経営をなさってきたわけでございますけれども、この職域廃止についてはどんな内部の意見があったのでしょうか。
○元平私学共済室長補佐 もちろん一元化に伴っていろいろな御意見はあったと思いますが、おおむね制度に反対するとかそういったマイナスな意見ではなくて、どちらかというと、この際、国家公務員も地方公務員も一元化されるということで、私学関係者の御理解はいただいていると考えておるところでございます。
○宮武部会長代理 例えば国家公務員共済は、年金制度ではないですけれども、いわば退職金の分割受け取りのような新しい仕組みを設けましたね。私学ではそういう検討はなかったのですか。
○元平私学共済室長補佐 各学校法人のところでございますので、私学全体としての中ではそのような御意見とかはございませんでした。
○山崎部会長 関連して、お手元の資料では88、89ページですが、旧職域部分の収支につきまして、国共済、地共済のほうは辛うじて収支のバランスがとれる、若干の余裕がある程度でございますが、私学の場合、これはどのように読めばいいのでしょうか。
○元平私学共済室長補佐 私学については、制度自体の成熟度がまだ低かったということもあって、比較的積立金が潤沢だったということもあって、今後の動向についてはまだ不明といいますか、臆測の段階にはなるのですけれども、それでも今の積立金を保持しながら何とかやっていけるのではないかということで、特にそこまではなかったとは。
○山崎部会長 何とかという程度ではないような気がするのです。明らかに国共済、地共済よりは余裕をお持ちのように思うのですが、いかがでしょうか。
○松澤数理統計室参事 先ほども申し上げましたが、独自財源としましては、旧3階の職域部分の給付とともに軽減措置というものがございまして、こちらも財源を賄わなければいけませんので、そちらをあわせますと、ほぼ現行の独自財源の積立金、予測にもよりますけれども、それほど残るものではないということと考えております。
○山崎部会長 つまり、その余裕分が拠出金の軽減に充てられるということですね。
○松澤数理統計室参事 それは1・2階部分ですか。
○山崎部会長 そうです。
○松澤数理統計室参事 それとは全く別の経理になってございますので、そういうことは全くございません。独自財源は独自財源で独自運営でございますので、1・2階部分の拠出金、交付金に関しましては全く別経理。
○山崎部会長 保険料の軽減ということですから、わかりました。
○松澤数理統計室参事 加入者、学校法人にとってプラスの要素ということで、1・2階部部の財政的には全く関係ないという形になります。
○山崎部会長 わかりました。
それから、運用収入を除く収入というのはどういったものでしょうか。
○松澤数理統計室参事 旧3階の年金に関しましては過去期間がございまして、昭和36年3月以前の期間につきましては、国庫補助金が19.82%相当出ます。こちらが制度廃止後も給付されるということで、こちらを収入として計上しています。
○山崎部会長 そうすると、追加費用に相当するものが私学にもあるということでしょうか。
○松澤数理統計室参事 追加費用ではなくて、各制度共通ですが、国民皆年金の前の期間に関しましては、各制度、比率は違いますけれども、国庫補助金が出るということで、給付時の国庫補助金という形です。
○山崎部会長 それはもともとあったものなのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 はい。
○山崎部会長 なるほど。わかりました。
牛丸委員。
○牛丸委員 ありがとうございました。
続けて2つ質問させていただきます。
細かい点ですが、きょうの資料の3ページ「担当職員等の経験年数、研修の実施状況等」という表と御説明がありまして、研修に参加されているということもわかりました。ただ、ここに書いてある年数は経験年数なのでしょうが、もう少し具体的に、年金にどのぐらいかかわってきたのかとか、あるいは年金数理にどのぐらいかかわってきたのかたのか、そういうことがもしおわかりになれば教えてください。
2点目は、少し基本的なことといいますか、今回こちらからいろいろ質問を設定してお伺いしたわけです。それに沿ってお答えいただいたわけですが、最初の枠組みということで、今回の財政検証・財政再計算の基本方針をお伺いしたのです。当然それは、きょうの御説明にもありましたように、制度的、法律的に定められている、5年ごとにやる、そして公表すると。それに従ってやっていることは十分わかっております。ただ、加えて、外からそのように与えられているだけでなく、せっかくそういう機会で財政検証・財政再計算というものが行われるとするならば、担当したところ、きょうお答えいただいています皆さんが、この財政再計算に独自の目的といいますか、位置づけといいますか、そういうものを持っていらっしゃるのかどうか。
というのは、今も言いましたように、公表しなさいと言いながらも、誰にというのが全く書いていないわけですね。それは当然、やる方々の意識の中で出てくると思うのですけれども、きょうの御説明を聞きますと、私学共済の場合にはホームページで掲載する、全員に徹底するように知らせるという努力をされているようなのです。そうすると、もちろん我々年金数理部会に、あるいはその他専門的な方々に報告をするわけですが、そういうレベルでなく、一般の方々はそれほど知識がない。そういう方々を念頭に、最終的な我々が出す報告書とは違うかもしれませんが、そういったものに何らかの心配りがあるのかないのか。そういうことを含めた財政再計算に対して独自の目的というものはあるのでしょうか。
同時にこれは、聞き方がちょっと違うかもしれませんが、最後に「年金数理担当者の所見」という、これはデータに関してのことだと思います。ただ、そういうことに限定しないで、今回行った財政再計算に対して、担当された方として自分たちの目的、位置づけということを考えて、やり終わった点から何か思うことがあるかということを、もしあればお聞かせいただきたいということです。
○元平私学共済室長補佐 最初の御質問の経験年数ですけれども、こちらの数理統計のほうは私学事業団全般の年金とか医療保険全てについての数理担当をしておりますので、その経験年数全てということで、詳しく年金担当だけで何年ではなく、全般的に数理担当での経験年数を記載しました。
2点目の御質問についてですけれども、確かに委員御指摘のとおり、私ども、今回の公表等についても、私学の加入者や学校法人に対して説明等はしており、ホームページでも公表してますが、国民の皆様方にお示しするという点では、ホームページの展開の仕方とか、そういったところはもうちょっと改善とか工夫の余地があると考えてます。
○牛丸委員 加入者だけで結構なのですが、加入者に対してやるときにも、我々というか、専門的な知識を持っている人でない方々に説明する、そこに何か配慮はされているのでしょうかということをお聞きしたいのです。私学共済ですから、私学共済に直接関係ない方にまで知らせる必要はないのでしょうが、私学共済に関係する人たちに、せっかくホームページで結果を知らせるのであれば、今回財政再計算が行われ、こういう意味があるのですよと、全部細かい数字を出さなくても、その辺の配慮をして示されているのかどうか、そこをお聞きしたいのです。
○松澤数理統計室参事 ホームページの掲載等につきましては、極力数字を少なくして図表を多くするという形ではわかりやすさを求めているつもりでございますが、なかなか伝わりにくいということがございます。我々は計算式で表示するのが一番楽なのでございますが、そういうことはできませんので、ポンチ絵等でやるということで工夫をしておりますが、おおむねご覧になった学校法人の事務担当者の方々からの意見ですと、大変よく理解できたと、よく理解できたの意見しか来ないのかもしれませんけれども、理解できたという意見をいただいておりますので、説明責任はやや果たしていると自負しております。
○山崎部会長 田中委員。
○田中委員 何点か御質問がありますが、まず、経済前提の話です。これは厚生年金と同一のものを使用ということなのですが、実際には厚生年金、国民年金はGPIFで運用しているけれども、私学共済は運用しているということで、ポートフォリオも基本的に違うわけですね。そうすると、期待収益率もおそらく違うし、リスクも違うということで、少なくとも運用利回りについては独自のものを利用すべきではないかと思うのですけれども、現実には全ての共済が厚生年金と同じものを使っている。その辺についてはどういうお考えかということが1点。
それから、もちろん結果が違ってくるはずなのですが、そのときに、例えばマクロ経済スライドの終了時期なども厚生年金、国民年金と違った年度になるはずなのですが、例えば、100年目に1年分の給付費に相当する積立金を保有するような独自のマクロ経済スライドをやっておられるのかどうかですね。そうしないと多分均衡しないので、おそらくそうなると思うのですが、そうするとだんだんずれてくると思うので、最終的にうまく一元化後の保険料率が厚生年金と一致するように計画されていると思うのですが、収支バランスはうまくいくのかどうか不安になりましたので、どのようにお考えかということが1点です。
それから、細かい話なのですけれども、計算基礎率を見ていると、16ページ、総脱退力が2.0と書いてあって、死亡脱退力は111歳で1.0と書いてあるのですが、2.0というのがどうして出てくるのかがよくわからなかったので、この点を教えてください。
○元平私学共済室長補佐 今のポートフォリオについては、昨年のGPIFの公表に合わせて段階的に我々も昨年11月に変更いたしまして、今後については10月1日に一元化になりますので、共通財源部分等については同様の方向で検討しています。
独自部分につきましては、なるべくバランスをとるといいますか、3共済あるいは厚年、GPIFに合わせて中央値を設定して、乖離幅で多少、私学独自で検討しようとは考えております。新3階等につきましては、安定的に運営するということで、こちらのほうは私学独自で検討してまいりたいと考えておるところでございます。
○松澤数理統計室参事 2点目のマクロ経済スライドの関係につきましては、マクロ経済スライド調整率自体が被用者年金制度全体での調整率になりますので、厚生年金で計算したものが全ての制度をあわせた上での調整率になりますので、私学共済独自というものはございません。ですので、各制度共通のものを使っているという形になります。
また、16ページの総脱退力の2につきましては、総脱退力の2を計算上インプットしますと、この年齢で全員脱退するという形になります。制度上69歳まで加入者という制度になってますので、70歳で全員脱退するということで、2という数字を入れております。
○田中委員 脱退力は1が上限かと。
○松澤数理統計室参事 力ですので、率ですと1が上限ですが、力の場合は2を入れますと全員脱退するという計算上の形になってます。
○田中委員 わかりました。力ということですか。
○山崎部会長 それでは、浅野委員からメモをいただいておりますが、これに沿ってお願いいたします。
○浅野委員 それでは、質問のメモを提出しているのですが、報告書の中の数値を我々は直接的には確認できないので、体制等がどうなっているのか、また、考え方がどうなっているかという視点で確認をさせていただきたいということであります。
まず、6ページ(iv)ですが、厚年の率を準用したというのは、先ほどの御説明ですと今回から使用したということなので、そういたしますと、今後、実際こういう率が出てくると、私学共済の場合はどうかというのは、データをとって厚年との比較をされていかれることになるのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 実際には一元化後の厚生年金全体の計算で用いる率ということですので、私学共済は大変小さな母集団ですので、その制度だけ別の率を使ってどれほどの影響が出るかというと、全体としてはほとんどないということで、そういう意味では整合性をとるために同じ率を使うということで、今後もこの扱いに関しましては実績をとるということはなく、準用を続ける形になると思います。
○浅野委員 基本は、母体が小さいので、厚年と分ける意味がないという理解でよいでしょうか。
○松澤数理統計室参事 そういう判断でございます。
○浅野委員 次に、その下の3-2-3-1の(3)で平成37年度以降は学齢対象人口に比例して減少とあるのですけれども、これは少し保守的過ぎないでしょうか。私学の教職員についてもやはり固定的な人数というのは必要になってくると思うので、これは少し見直しの余地があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○松澤数理統計室参事 今回、私学共済の場合は増加という設定を足下10年に入れたという初めてのことを試みましたが、それまでは、学齢対象人口で計算初年度から減少するというモデルを採用してございました。こちらは大変保守的だという御指摘をいただきまして、安全性に配慮したということで回答はしていたのですが、今回初めて増加を入れました。その10年後以降の数字に関しましては、厚生年金全体の推計が将来推計人口に基づいていることとの整合性から、私学共済につきましても、将来推計人口に基づいた推計を入れたほうがいいのではないかということで、厚生年金という一元化後の制度全体の整合性という意味で、同じように減少のモデルを入れたということになってございます。保守的であるかと問われれば、昨日も出ておりましたが、保守的ということでございます。
○浅野委員 現在のモデルでは保守性のレベルが少し高いのではないかと思うので、10年後以降、私学の教職員数がどうなるかを見通すのはなかなか難しいと思うのですけれども、本当に一律の比例でいいのかというのは、今後少し研究されたほうがいいのではないかと思います。
それから、8ページ、9ページの基礎率の算出方法ですけれども、1つ目で、これは基礎率全般として過去のトレンドとか、異常値の排除とか、そういうフォワードルッキング的な率を設定されているのか、それとも、その基準時点の結果を横置きしているのか、そのあたりはいかがでしょうか。
○松澤数理統計室参事 昨日も厚生年金のほうから出ておりましたが、過去3カ年の実績に基づいて、全てそのまま作成したものを使っています。ただし、制度改正等明らかな修正がございますと、そちらは織り込むという形で基礎率を作成してございます。
○浅野委員 基礎率についてフォワードルッキングにつくっていくという考え方はないのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 昨日も出ておりましたが、過去何十年とやっておりまして、それで問題ないということで、今のところは考えておりません。
○浅野委員 保険会社の世界ですと、過去はある一時点の実績を横置きにして、いろいろなエスティメートをしていたのですけれども、最近は経済価値ベースの負債評価など、世の中の考え方も大分変わってきています。そこでは、フォワードルッキングに基礎率等をつくっていくというのが大きな考え方でありますし、アクチュアリー会などでもそういう議論がされています。これはこの私学共済だけの話ではないかもしれないですけれども、制度全体としてフォワードルッキングに基礎率の設定を行うといったことを考えていく時代になっているのではないかと思います。
それから、総脱退力以外は独自データを使っていらっしゃらないというのは、先ほど御説明があった実際の発生数が少ないからということでよろしいでしょうか。
○松澤数理統計室参事 はい。
○浅野委員 わかりました。
それから、この3つ目ですが、退職共済年金等で、消滅率等で2060年度にかけて次第に生命表の死亡率に近づけるというのがありますけれども、これはどういう意味なのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 全制度共通で行っている作業でございますが、将来推計人口が2060年から参考推計という形になってございまして、あくまでも2060年までの推計結果として、その後に参考として出しているものですので、参考推計からストレートに使う形にしているということであると思います。
○浅野委員 では、制度全体という話なわけですね。
○松澤数理統計室参事 はい。
○浅野委員 わかりました。
次に、障害共済年金の消滅率は洗い替えていませんということなのですが、これだけ洗い替えをしないというのが何となく少し奇異だったのですけれども、それは何か基準みたいなものがあるのですか。ほかのものは何らかの形で洗い替えているわけですね。
○松澤数理統計室参事 補正という意味でございますか。
○浅野委員 ここに洗い替えていないと書いてあったと思うのですけれども、9ページの下から2番目の障害共済年金消滅率の「ウ.設定方法」の最後のところに「過去3年間と比較した結果、男女ともそのまま使用」と。
○松澤数理統計室参事 先ほどの例数が少ないというお話から、大変補正がかけづらいということで、補正をかけていないという意味での洗い替えという意味でございまして、やり方を変える、変えないという意味での洗い替えではございません。
○浅野委員 補正の率は変えているということですか。
○松澤数理統計室参事 はい。
○浅野委員 わかりました。ちょっと日本語の理解を誤りました。
それから、基礎率はどの程度の保守性と思われているのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 先ほども申し上げましたけれども、3カ年の実績をほぼそのまま用いているということでは、保守性を見込んでいないとまでは言いませんけれども、今のトレンドがそのまま続くという形で見込んでおります。
○浅野委員 トレンドが続くといいますか、その実績がそのまま続くということですね。
○松澤数理統計室参事 そういうことでございます。
○浅野委員 わかりました。
次に、算出方法が前回から変更している場合ということで、1ヶ所前回との変更点があるのですけれども、この場合、変更する際のプロセスについて確認いたします。誰が起案するとか、誰が判断するとか、この変更しないもの以外は一応全部見直しされているのかとか、そのあたりはどういう体制になっているのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 今回の財政再計算の場合は、厚生年金相当の年金給付額を計算するという目的から、厚生労働省において各制度共通の財政見通しをつくっていただくということから、データの形式をそろえるという意味で変更したということでございます。中身につきましては、年齢別に変更したということで形は変わってしまいましたが、やり方、もととなるデータ、その他処理の仕方は同じだと考えております。
○浅野委員 基礎率の作成方法について、見直すとか、またはもう少し精緻化したほうがいいとか、そういう御検討は毎回の財政検証でされてはいないのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 財政見通しという中でそれを反映させて、結果がどう動いていくかというのは予測が大変しづらくて、基礎率をこう変えたらこうなるという計算まで作業が追いつかないという形で、実際には行っていないという形になっています。
○浅野委員 そうすると、そこはヒューマンリソースの問題というところで、本来はやったほうがいいのだけれども、なかなかそこまで手が届かないということなのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 従来からずっと踏襲しているやり方ですので、そちらで大した問題が起きていないということもあって、踏襲しているという形になります。
○浅野委員 わかりました。
それから、10ページから18ページに基礎率の数字が出ているのですけれども、昨日の厚年とか国年ですとグラフを描いていただいていたので、このレポートがこの後も残るのだとすれば、そういうものがあったほうが我々にはありがたいかなと。特に前回からの変化が著しいところとか、そういう説明をいただけると、よりいいかなと思います。
次に、19ページに行っていただきまして、これは今お答えいただいたものと関係するのですが、総脱退力とか総報酬指数は年齢別にされたということです。年齢別にされるというのは、この基礎率の精度を上げるという意味で非常にいいと思うのですけれども、これによってどれぐらいの影響があったかというのは評価されているのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 従来は年齢別ではなくて、加入年齢のグループ別の加入年数別ということで、さらに細かい区分を使っていましたが、それを厚生年金のシステムに合わせるということで年齢別に変更したということで、先ほども申し上げましたが、もとの数値、あるいは実績値の使用方法ですとかは変わっておりませんので、内容的にはそれほど影響はないと考えております。
○浅野委員 基礎率のメッシュを変えると、分布が変わることによって結構大きく結果が変わってくることがあると思うのですけれども、そのような変化はないものと判断され、影響はほとんどないため大丈夫であるということなのですか。
○松澤数理統計室参事 実際に基礎率を提出しまして、計算は厚生労働省のほうで厚生年金全体としての計算をすると、そのうち私学共済の分をいただくという形をとっておりますので、基礎率を変更したことによる影響というのが独自で計算したものではないものですから、なかなか難しいということになるかと思います。
○浅野委員 そこも私学共済さんではなかなか把握できないということですね。
○松澤数理統計室参事 はい。
○浅野委員 わかりました。
それから、20ページでフローチャートを描いていただいているのですけれども、この推計方法の仕方についても、5年ごとにもう少し高度化するとか、こうした点を見直そうとか、そのようなことは余り対応されていないということなのですか。
○松澤数理統計室参事 制度改正がございますとそちらを盛り込みますが、過去、やり方というのは余り変えたことはございません。
○浅野委員 最後のページの所見のところに統計データの十分性・信頼性について言及されているのですけれども、数理担当者としてはどのような検証を行っているのでしょうか。
○松澤数理統計室参事 先ほども申し上げましたけれども、今回、厚生年金相当部分の全体の推計というのが第一目的でして、私学共済の分は一部分でございますので、こちらをもって分析というのはなかなか難しいものがございます。
○浅野委員 分析といいますか、用いるデータが確かに信頼性もあるし、十分性があるとおっしゃっているのですけれども、それは数理担当者として、何をもって十分性がある、信頼性があるとお考えになったのかなと。
○松澤数理統計室参事 先ほどちょっと申し上げましたが、全数調査ということで実績を如実に捉えていると考えていると御説明申し上げましたので、それを超える範囲の数理担当者としての意見というのはなかなか出てこないと思います。
○浅野委員 数理担当者が直接このデータを見て少しサンプルチェックするとか、そういうことは特にされていないということですか。
○松澤数理統計室参事 全数調査してしまいますので、全て全体像を見るという形で判断しております。
○浅野委員 わかりました。
手法とか基礎率のつくり方は、先ほども言いましたけれども、やはり時代によって変わっていくと思うので、過去こうだったから大丈夫だというのは、今後は簡単には判断しづらくなるのではないかと思います。
ありがとうございました。
○山崎部会長 それでは、私のほうからもう一点。先ほど、今後しばらくは加入者増を見込んでいると、その根拠として、看護だとか介護、あるいは認定こども園の発足によって幼稚園教諭だとか保育士の養成が求められていて、なお一定期間ふえるだろうということでございますが、その先についても、私も長く大学、私学にも関係しておりましたが、今、大学院で社会人の学生が随分ふえてきております。それから、今後はさらに外国人留学生が随分ふえてくるような気がしておりますし、さらに、高齢者までも、いろいろな形で地域貢献事業ということにもなるのでしょうが、講座を開放しておられます。私も現実に近くの大学にたまに授業料を払って行っておりますから、そういうことを実感するわけでございますが、そういう意味では、かなり余力を残した見通しになっているのかなという気がします。
ただ、何度も御説明にありましたように、非常に小さな保険集団なので、やはり厚年、国年などと比べると、はるかに保守的な見通しを立てざるを得ないということも十分承知しておりますが、その辺は数理部会でも改めて議論して、必要ならコメントをさせていただきたいと思います。
そのほかに。
駒村委員。
○駒村委員 体制についてですけれども、今回、AからHまで8通りの作業をお願いしたということで、中には従来よりも非常に改善した部分があると御指摘があったのですが、作業量としては、感覚的にでもいいですし、はかっておられればいいのですけれども、前回の検証に比べてどのくらいふえているのかということと、外部委託とかプログラムとかは一切なく、作業は全部内部でやられているという、この辺を確認させてください。
○松澤数理統計室参事 従来の再計算ですと、1・2・3階一体となった再計算を行うわけですが、今回は1・2階部分と旧3階、あるいは新3階も別途出てきましたので、作業としては単純に申し上げれば3倍ということになりますが、新3階のほうは同時に作業いたしませんでしたので、概算で言いますと1.5倍の作業量で済んだのではないかと。厚生年金のシステムに合わせるという作業が新たに入ってきましたので、そちらで基礎数・基礎率の見直しその他がありましたので、従来の再計算よりは作業量は少し多目だったということがございます。
今回の再計算につきましては、業務委託は全くなくて、内部で全て開発いたしております。統計部門につきましては外部委託をしておりますが、数理部門に関しましては外部委託は全くしておりません。
○山崎部会長 田中委員。
○田中委員 多分最後になると思いますので、コメントということですが、私も実は私学共済の組合員なのです。それで、共済だより、広報誌を毎年見させていただいているのですが、年金について同僚などに聞きましても、共済年金の仕組みとかはほとんど知らないですね。65、70ぐらいになっても年金はどうなっているのだということで、年金に関しての説明会も学校内で余りないですね。私が知っていることは教えますけれども、なかなか理解が進んでいない。
それから、私学共済の財政は健全だよということで、何となくイメージではわかっているのですが、実際に広報誌には何もその辺のことが書いていなくて、よくわからないというのが率直なところですので、ぜひグラフとかを交えて、大丈夫だよということを数理担当者が一筆書いていただけると非常に助かるかなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
○山崎部会長 よろしいでしょうか。
それでは、以上をもちまして、私立学校教職員共済制度の財政再計算についてのヒアリングを終えます。
説明者の方々には、お忙しい中をありがとうございました。どうぞ席をお移りください。
(文部科学省高等教育局私学部私学行政課私学共済室 元平室長補佐、日本私立学校振興・共済事業団 松澤数理統計室参事 関係者席へ移動)
○山崎部会長 それでは、引き続き、昨日審議途中でありました厚生年金保険、国民年金(基礎年金)の平成26年財政検証につきまして、昨日頂戴できなかった質問等、あるいは御意見でも結構です。ありましたらお願いいたします。
数理課長には、お席のままでお答えいただきたいと思います。
牛丸委員。
○牛丸委員 3点お願いしたいのですが、1点は、今、私学共済の方にお聞きしたことと同じようなことなのですが、昨日、数理課長が御説明された最初のほうでおっしゃっていたことで、心強かったのですが、財政検証の報告書を今作成中で、さらにこの数理部会のヒアリング、それらが全て終わらないと財政検証は終わらないということです。ですから、報告書の作成ということが続けられていると思うのですが、先ほど私学共済の方にもお聞きしましたように、5年置きに財政検証・財政再計算を行うように、公表するようにとされて、それは制度的、法律的に定められて、やっているのでしょうが、そこに加えて、せっかくそういうものをつくるからには独自の目的というか、位置づけとか、そういうお考えがあるのか、ないのか。
先ほども言いましたように、要請されている中には、誰に向けて公表するというのが書いていないので、実際に担当されている方は、誰を念頭に置いてまとめ、またはお書きになっているのかと。当然、我々数理部会とか、きのうお話がありました議員とか、いろいろな専門の方々に御報告するわけですが、それだけでなく、報告書を作成するということであれば、それをお読みになる一般の方々かどうかわかりませんが、当然そういう方々も念頭に置いていらっしゃるわけです。だとすれば、その目的とか位置づけというところにそこも入っているのか。となると、書き方もその辺の配慮がなされているのかどうか、その辺をお聞かせいただきたい。そういうことを踏まえて、最終的に何かこの財政検証を行うに当たって、きのうは聞かれなかったのですけれども、担当者として御意見がもしあったとすれば、お聞かせ願いたいというのが第1点です。
第2点と第3点は、年金数理部会の考え方というより、まさに私個人的な考え方ですので、数理部会の考え方として解釈していただきたくないのですが、まず2番目の質問としては、毎年行っている財政の、我々がヒアリングして発表されますね。ああいうものに関しては厚生年金、基礎年金ということで、それぞれちゃんと出ておりますが、この間の財政検証に限って言いますと、これは完全に私の個人的な捉え方なのですけれども、どちらかというと、きのうの説明もそうですが、厚生年金保険というものが中心となっている。第2号被保険者が年金受給者となった場合には、当然関心が行くのは厚生年金と基礎年金の合計でありますから、その意味からすれば、その合計額の所得代替率に注目することは重要であるわけですが、基礎年金というのは第2号被保険者に限定しない全国民的なものであって、当然、報酬比例部分のない方々もいらっしゃる。そうしますと、財政検証をそういう点を踏まえた形で出されるほうがいいのではないかと思うのですが、これは先ほどから何度も言っていますが私の個人的な感じ方なのですが、今回の財政検証はどちらかというと厚生年金に付随する形での基礎年金の扱いがされているのではないかと。独自の存在の重要性を持った基礎年金という位置づけがないような気がしたのですが、その辺についてどう思われるか。そういうつもりは全くないというような御意見をお聞かせいただきたいと、これが第2点です。
第3点も私の個人的な見解なのですが、きのうの最後の所見の中で、1つのプラスの要素として、オプションをしたことによってその効果がどうであったかと、それがわかったということをお書きになっていらっしゃいました。また、お話もありました。私はそのとおりだと思いますが、プラスの要素はもちろんありますが、今お聞かせ願いたいのは、むしろそういう点ではなく、財政検証としてオプションが一緒に発表されたことの、私個人的にはプラスよりマイナスと言いたいのです。というのは、確かに国民会議から要請された。それから、実際に検討されている事柄がどうなっていくか数字でもって検証していくというのは大事なことですから、その作業をして数字を出していくことは当然必要だと思います。だから、そういう意味では、きのうの所見に書いてあったようなプラスの要素はあると思うのです。ただ、それを従来とは形の違うというか、確かに発表されたときに本体とオプションを分けて発表されておりました。しかし、分けてはいましたけれども、一緒に発表されたということは、普通の感覚で言うと、財政検証の一体として捉えてしまうのですね。というと、従来の財政検証とは違うものが入ってきたわけです。
財政検証とは果たしてそういうものだったかというと、私はそうではなく、そもそも予定されていた今回の法律等で言われていたようなことがありましたけれども、そういう形での財政検証があるわけです。今回はたまたま国民会議の依頼とか、また、その必要性からそういうことをやったわけですから、それをやったこと自体はいいのですが、やはり別に発表すべきではなかったかと。それは財政検証のプロセスの中で出てきて、同じようにやってもいいのですが、発表自体は財政検証ということではなく、もう一つ別な形で発表すれば、それなりの理解も得られたのではないかなと。我々は一緒に出されたことによって、やはりあれも財政検証の一つであろうと。
これは、わかっている人はわかっていると思いますが、先ほど私学共済の方にも申し上げましたが、対象が一般の方となると、必ずしもそこまで理解がいかないだろうと。しかも、あれは、最終的にはああなるのでしょうけれども、検討中の課題であると。マスメディアも発表された途端に、こういうふうに改正されるような書き方がされていましたので、それに先んじてあのような形で出すのはいかがなものかなと、私は個人的にはそう思ったのですけれども、これについてどのようにお考えかということをお聞かせいただきたい。それが1つです。
よろしくお願いいたします。
○山崎部会長 では、お願いいたします。
○武藤数理課長 大変貴重な御質問をありがとうございました。
3つ御質問がございましたので、まず一番最初からお答えさせていただきますけれども、牛丸先生からは、形式的な財政検証の公表に加えて、それ以外にどういう工夫をしているのか、そのことについてどう考えているのかというのが1点目の御質問だったかと思っております。きのうの復習にはなりますけれども、まず、形式的に誰に対して公表しなければならないのかというのは、法律から確認してみますと、昨日お配りした厚生年金、国民年金の参考資料1に条文がございましたが。
○清水首席年金数理官 お手元のファイルに入っていますので、必要に応じご参照ください。
○武藤数理課長 昨日の参考資料1でございます。財政検証の根拠とした法令に関する参考資料ということで、1ページに厚生年金保険法の法律上の規定がございます。
厚生年金保険法の第2条の4、昨日も簡単に説明させていただきましたけれども、財政検証を行うことが規定されておりまして、政府は、少なくとも5年ごとに、ここに挙げられているような年金財政の収入・支出に関する財政の見通しを作成しなければならないということが第1項に規定されております。その作成を踏まえて第3項に、第1項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これが法令上の規定ですので、誰に対してというのは公に対してということになりますので、国民に対して公表するということです。
義務的にやらなければならない財政検証というのはこのとおりでございまして、そういう意味では、昨年6月3日に公表させていただきました財政検証結果をもって、もうそれは終了しているということです。ただ、もちろんそれだけでいいのかという話がありまして、通常、事後的にやる作業というのがございます。それが一つは数理レポートの作成でございますし、一つはまさにこの場であります年金数理部会からのヒアリングを受けて、前提、推計手法、結果の詳細等について御評価いただくということでございます。
私どもとして意識している視点を若干述べさせていただきますと、誰に対してというところで、形式上の財政検証結果は国民に広く一般にということなのですけれども、やはりそれはご覧になる方によって使われ方は違うでしょうということがございます。まず、数理レポートについては、主にこれまで研究者の方、企業年金の関係者の方が使われる場合もありますけれども、そういった方を目的につくっておりまして、上司からはもうちょっと大学の一般教養課程の方にもわかるような書き方にすべしという御指示をいただいたりして書き加えたりすることもあるのですけれども、一応、研究者の方中心に公表しております。
あと、それと同じ流れですけれども、財政検証で使ったプログラムを公表させていただいておりまして、それは数理レポートの作業と一体でやっているということなので、それもこれから作業して、それほどたたずに準備していきたいと思っているところです。昔は徐々に情報公開等の対応に応じて公表してきたのですけれども、21年財政検証のときからは、ホームページで使った基礎データあるいはプログラムを公開しているということでございます。
では、数理レポート等だけでいいのかという話がございまして、もうちょっと一般国民向けに財政検証をうまくお伝えできないかなという目的意識のもとに、平成26年財政検証をやる前年度の平成25年度に、よりわかりやすく国民にお伝えしようという目的で「いっしょに検証!公的年金」というホームページを開発いたしました。これは外注して、いろいろ競争していただいた結果決まったのですけれども、その中で漫画を使って財政検証を解説するという工夫をしていまして、これもいろいろな意味で話題を呼んだりもしたのですが、そういった工夫を一つさせていただいているところです。
あと、その公表については、公表の場として年金部会があったり、あるいは公表後1年ぐらいたって、まさに数理部会でレビューをいただきまして、そこでいただいた意見を踏まえて次の財政検証の作業に入っていくというサイクルで大きな作業を考えているところです。前回、21年財政検証のときにいただいた御意見の中でも、例えば納付率の前提について考えるべきという話ですとか、経済前提を変動させて考えるケースも入れるべしというのは、そういう意味で考えて反映されているものと思っておりまして、1点目の牛丸先生の御質問については、そういう視点のことを考えながらやっている。昨日、いろいろなところに説明に行ったりするということもありましたけれども、いろいろなチャレンジをしながらやっているという状況でございます。
2番目につきましては、財政検証結果の公表が厚生年金中心になっているのではないかということだったと思います。これは確かに所得代替率が平均的な厚生年金の男子の加入者、40年加入の世帯での給付水準を確認していくことになっていることとかも、あることはあるのですけれども、同じものの公表なので、きのうの説明もどちらかというと形式的に厚生年金の資料で説明させていただきましたが、もちろん基礎年金が重要であるという認識については当然のことでございます。
今回の財政検証、幅広い8通りの経済前提で結果をお示しして、成長するケースでは給付水準を確保できるのだけれども、低成長のケースではそうでないケースもある。さらに、成長するケースであっても、基礎年金の給付水準調整期間が長いということについては問題意識を持っておりまして、そこは大変注目して、これから考えていかなければならないと思っています。
オプション試算の結果も、給付水準を確保する上でプラスの効果ということがわかったので、まずはこれまで年金部会で検討されてきた制度改正案も、今、途中になっているのですが、それが具体的に進んでいって、さらにはその次のステージになるかもしれませんけれども、その後の議論が続いていくことを期待しているところです。基礎年金の給付水準低下問題については引き続き議論が必要なところかなと認識してございます。
3点目、オプション試算の結果を本体と別々に公表すべきではなかったかということについて、これは特段、同じ流れの作業でやったということで、法定の財政検証の作業と同じロジックを使ったプログラムで計算して、同じ時期になっているということで、今後頭に入れて考えていく話かなと認識しているところです。
以上です。
○山崎部会長 今のをちょっと確認したいのですが、オプション試算というのは、本来の財政検証を行う数理課の仕事を超えたものだったと理解しておりますが、いかがでしょうか。オプション試算というのは、本来の財政検証を所管する数理課の仕事を超えた政策的な観点からのものですね。
○武藤数理課長 数理課がやることは大きく2つあると思っておりますけれども、まさに法定の財政検証、法律で定められた財政検証で、これは年金財政の現行制度の定期的な健康診断ということになると思います。おっしゃるとおり、オプション試算というのはそれとは別のものなのですけれども、数理課がやる仕事というのは、現行制度の検証と制度改正の影響等を評価する数理業務というものがありますので、やることは別なのですけれども、課の所掌としてやることの両方をやって、それがたまたま同時だったと認識をしてございます。
○山崎部会長 私自身は、8つのケースを並列でお出しになったというのは非常に勇気ある姿勢かなと思います。要するに、これはもう局長の責任でお出しになっていると私は個人的に思っているのですが、オプション試算については、その作業の相当の部分を数理課で行ったということだと思います。つまり、8つのケースを並列で出して、はっきり言えば、100年安心ではなくて、そう遠くない時期に破綻するというケースまでお出しになったのですね。局長は、そこまで出しておいて涼しい顔をしているわけにはいかないのだろうと思うのです。在任期間中は大丈夫ということになっておりますが、そうすると、責任ある政策担当者としては、必要な手だてを同時に示した上で国民の判断をあおぎたいというのは、非常に謙虚な、誠実な態度だったのではないかと私自身は思います。コメントです。
○武藤数理課長 大変ありがとうございます。
○山崎部会長 それでよろしいですか。局長もよろしいですか。
ほかにございますでしょうか。
宮武委員、お願いいたします。
○宮武部会長代理 102ページの「数理担当者の所見」のところが、今のいろいろな質疑に関連してくるのだと思います。私は、その所見の中で、子供が産みやすい環境の整備、女性や高齢者が安心して働ける環境の整備、これをきちんと強調されていることに強い共感を覚えます。
同時に、もう一つ欲を言えば、今回の検証においてはっきりしたことは、8つの経済前提いずれをとってみても、やはり老齢基礎年金、基礎年金の落ち込みが非常に激しいということ。それは、検証の目的の一つである給付の十分性というものが問われる時代が来るのだということ、そういうことから考えれば、その点に一つ触れておかれるべきではなかったかと。オプションで40年の加入期間を45年にすれば、基礎年金の所得代替率は飛躍的に上がるという、そういうのがちゃんとあるのだからいいと考えることもできますが、あくまでも財政検証は財政検証でありますので、そこで給付の十分性が問われる事態に至っているということを明確に書き込まれるべきではなかったかと。その上でオプションがありますよという論旨ではなかったのかと思っております。
以上です。
○山崎部会長 どうぞ。
○武藤数理課長 今の御質問に対して直接のお答えというよりも、関連の話で参考までに紹介させていただきたいのですけれども、牛丸先生の3点目の質問にもうまく答えられなくて、それにもつながるのではないかと思うのですが、諸外国とも、年金制度、年金財政の持続性を確保するという観点と給付の十分性を確保するという観点については結構苦労しているようでして、それを両立させるというのはある意味難しいわけです。例えば、OECDの報告書を簡単に一例として紹介させていただきたいのですけれども、OECDは年金制度のその国の置かれた状況とか給付水準を比較する資料として「ペンションズ・アット・ア・グランス」というものをつくっているのです。その2011年の報告書の中に、先進国の年金制度が共通に持っている課題というのをまとめていただいておりまして、そこにやはり給付の十分性と制度の持続可能性を両立させるのは矛盾がありますねということで、年金パラドックスと言われているのです。
その処方箋についてなのですが、そのジレンマから抜け出す解決策としてOECDが挙げられている処方箋は3つありまして、1つは、就労期間の長期化ではないかということが言われています。これは保険料拠出期間の延長、支給開始年齢の引き上げや早期退職インセンティブの廃止につながるという視点で1つ挙げられている。
2点目が、公的年金の支給努力の対象を最も脆弱な人々に置くという視点が1つ。
さらに3点目は、公的年金給付の削減を補完するために私的年金等を奨励したらどうかということが挙げられておりまして、若年者や低所得者層に対する私的年金のカバー率の向上を図っていったらどうかと言われております。日本においても、今後、もちろんこういう視点を入れながら考えて、制度運営を図っていくのかなと思っているところです。感想です。
○山崎部会長 牛丸委員。
○牛丸委員 ありがとうございました。
ちょっとつけ加えますが、2点目の基礎年金のことですが、私も読みまして、例えば基礎年金の所得代替率は確かに財政検証の中で示されていましたが、きのう駒村委員から御質問がありましたように、基礎年金と報酬比例部分を両方もらっている人の場合に、そのウエートによって効果が違ってくるというのはわかるのですが、やはり基礎年金そのもの、基礎年金だけしか受給されていない人を対象としてどう考えるかというようなことがなかなか見えにくかったかなと。ですから、そういう意味で、毎年行われている財政の発表ではなく、財政検証においては基礎年金を中心とした見方というのは、そうでもなかったかなという印象を受けたものですから、こういう質問をさせていただいたわけです。
3番目ですが、今も幾つか御意見がありましたように、今後の財政を考えたときにいろいろな政策をしなければならない。そして、どのように財政をよくしていくか、その効果はどうか、それは当然必要だと思いますし、その検証もしなければいけないし、その数字自体を公表することも大事だと思っています。ですから、それを否定するつもりは全くございません。
ただ、今回の我々のヒアリングのための設問でも最初にありましたように、なぜ財政検証が行われるか、財政再計算が行われるか、その枠組みですね。法律で求められていると。その中に、健康診断のようなものですけれども、きのうの発表もありましたように、その後、21年財政検証の後に成立した法律、制度改正は全部入れて、その状況の中で財政はどうなっていくかというのを見るわけですね。ですから、先ほど私が言ったように、このままいくと問題があるから、こう変えなければいけない、それを変えたらどうなるか。それは大事ですけれども、それはこれからのことであって、少なくとも前の検証から行われた制度改正を含めて、現在、この後はどうなるか、これはしっかり分けなければいけないのですね。
確かに1部、2部と分けてはいますけれども、その辺のしっかりした説明がされていないと、専門家はわかるでしょうけれども、普通の人はごちゃまぜになってしまうだろうと。ですから、そういう意味で、少なくとも前回の財政検証以降の今日までの実際に変わった部分を踏まえた上での財政検証の健康診断はこうですよと。というのは、今後ずっと財政検証を5年ごとに続けて見た場合には、それぞれの時点の財政検証につながるわけですね。その中に、そのとき例えば今回だけが今後のことで新しいオプションが入っていたら、ちょっとそれはどうかなと。
ですから、そういうことと、先ほどから議論がありましたように、このままいくと問題があるからこういうことをしなければいけない、それを検証しましたという結果を出して、そこはしっかりきれいに区別をして、わかるように出していただきたかったということなのです。それが、この間の出し方がそこまで十分きれいに分かれていたというのであればそれでいいのですけれども、私の読み方が浅かったのかもしれませんが、一緒に出されたことによって、それも含めた財政検証のような理解をしてしまったので、そういう質問をさせていただいたということでございます。
○山崎部会長 翁委員。
○翁委員 別の視点なのですが、きのうの御説明で基礎率についてさまざまなグラフを出していただいて、これは非常にわかりやすかったのです。それで、特に前回との比較という意味で、例えば脱退力の65歳の山が変化していたりとか、そういったところを検証する上でも、少し前回との比較のようなものを出していただくと非常にわかりやすい。あと、今は労働市場が非常に大きく変化していて、もちろん生産年齢人口が減っていることに伴って女性と高齢者が働くようになって、その人たちがどんどん非正規化していくということで、構造的に大きく変わっているところもあると思います。専門委員会などでもこの点は議論されているのだろうと思いますけれども、かなり雇用環境や労働市場が変化しているということを踏まえて、中長期的にどのように変化していくかということをぜひ反映させるような形で行っていただきたいし、財政検証のときには過去の比較というのもきちんとわかりやすくお示しいただければいいかなということが感想として一つございます。
もう一つは、きょう、私学共済のほうのお話も聞いて感じたことなのですけれども、やはり一元化ということで基礎率と基礎数、どのように私学がここまでをやって、それで全体としてこれをあわせることによってこういう影響があったというようなお話をいただいたのです。今回こういう作業を始めておられるわけですけれども、今後、一元化に向けてこういった数理を検証していく上での課題とか、そういったことをぜひ考えていっていただいて、よりよい方法をぜひ検討していただきたいなと感じました。
以上でございます。
○山崎部会長 駒村委員。
○駒村委員 5つぐらいあって、一気に申し上げてしまいますけれども、1つ目は、今回、AからHの8通りと、経済前提もかなり工夫をされて、オプションも一元化もとあったわけですけれども、これは作業の量とか質的に見て、課長としてはどのくらい負荷がかかったのか、工夫の余地はまだまだあるのか、何通りまでできるのかなと思ったのですけれども、今後の質や作業量の余力というか、負荷というのを教えてもらいたい。これが1つ目です。
2つ目ですけれども、数理レポートをもって国民に対する説明があるわけですが、これは現在世代だけではなくて、将来世代にももちろん説明責任があるわけです。この数理レポートが今、手元にないので、どういう構成だったかすぐには思い出せないのですけれども、細かい作業の流れはいいと思うのですが、経済前提から始まって、一連の流れをきちんとカレンダーというか、こういう手続で、こういう流れでこのようにたどり着いたのだというものをお出しいただいたほうがいいのではないかと思います。数理レポートはおそらく国民との、例えば年金部会とのコミュニケーションツールだと思うのですけれども、数理レポートの内容については年金部会にかけるのか、かけないのか、その辺は確認をさせていただいたい。それが2つ目です。
それから、内容的なことで3つほどありまして、1つ目は、先ほど牛丸先生が御指摘されたところなのですけれども、基礎年金の水準の変化について、少なくとも資料2の97ページとか、このような出し方ではわからないのではないかと思いますので、基礎年金の水準の変化をどういう形で表現するのだろうかというのをお聞きしたい。これは内容に関する質問の1つ目。
2つ目が、いわゆる20%ルールについてはどうなっているのか、どこで言及されているのか、ちょっと見当たらないので、そこが内容についての2つ目。
内容についての3つ目ですけれども、今回も経済前提のときにもひっかかったわけですが、全要素生産性の議論や、あるいは利益率から金利に持っていくところの作業がどういしても説明力が低いという問題もあったと思うのです。今回いろいろひっかかった部分で、今後感じた開発目標というか開発テーマみたいなものがあれば教えていただきたい。
5点ほどでしたけれども、お願いします。
○武藤数理課長 まず、財政検証の作業量についてでございますけれども、今回、御案内のとおり経済前提のケースもふえましたし、先ほど来出ていますようにオプション試算というのも作業時期として同じ時期にやったということでございます。それで作業量がどう変わったかということですけれども、まず、経済前提がふえたことについては、確かにプログラムを回して一個一個出た結果を検証するという意味で物理的な作業量がふえました。数理レポートを今、作成中なのですけれども、ページ数がかなりふえ物理的な作業量がふえるというのはあるのですけれども、質的には、やはりオプション試算のほうが大変だったかと思います。
オプション試算もオプション1、2、3とあるのですけれども、1がマクロ経済スライドのフル発動、2が適用拡大、3が拠出期間の延長ということですが、特に3番目の拠出期間の延長が制度の根幹にかかわってくる見直しということになります。これが、自分の見ていた限りでも、財政検証公表の直前まで作業をぎりぎりやっていて結構大変だった記憶があって、もちろん数理課の職員は将来のことをにらみながら事前より準備はしていますけれども、これはかなりの負荷だったなと。従来の何倍かということは簡単には申し上げられませんけれども、現行制度の定期的な健康診断をすることと比べると、このオプション試算、特に3番目のものを中心に大変だったなという記憶がございます。
2番目の財政検証作業についてのカレンダーみたいなもの、流れがわかったほうがいいのではないかということですけれども、財政検証作業の全体像につきましては、きのうフローチャートで御説明させていただいたとおりです。基礎率・基礎数の作成があって、それを入力して、将来推計人口、労働力等も織り込みつつ、まずは被保険者推計の作業をやって被保険者が出てきて、次に、マクロ経済スライドの給付水準調整をする前の給付費推計というのがあって、それで経済前提等を入れつつ、マクロ経済スライドの調整期間を決めて、最終的な収支見通しになるということなのですけれども、実は数理レポートの構成でも、その項目ごとにどういうデータを使って、どういう考え方でこれを設定してきたかということは解説しておりますので、それをご覧いただければ、一応大体それに当たるものはわかるのではないかと思います。
さらに、年金部会にかけるのかどうかということにつきましては、年金部会の委員については従来よりお送りしてはおります。もう既に昨年6月に出た財政検証結果の詳細について使った基礎データを公表させていただくというものなので、先ほども主に研究者の方などに向けて準備しているということですので、前回もお送りしておりますし、今回もそうする予定なのですけれども、特段年金部会で議論していただくということは考えておりません。
3番目の基礎年金の水準低下が大きな問題なので、それをどう示していくかということですけれども、確かに今回御要求いただいた資料は、割と技術的な観点での前提、推計手法、あるいは結果の詳細ということだったので、その資料自体は準備できていないのですが、昨日いろいろ御議論いただいて、宿題事項が何点かあると認識しておりまして、それを回答する機会がそのうち数理部会においてあるのではないかと思っておりますので、それにあわせて、今、駒村先生がおっしゃった資料は準備させていただければと思っております。
あと、20%ルールについて記述がないではないかというのは、確かに言われてみてそうかなと思いました。どちらかというと制度的なルールの話だと認識していて、それを財政検証にも織り込んであるということでしたので、今申し上げました宿題の整理とあわせて考えてみたいと思います。
最後は、例の利潤率から金利に変換するところで専門委員会の最終盤に大議論があった話ですけれども、それについては、例えば次の経済前提を専門的に議論する場があったとすれば、そこでそのことについて、前の議論でこういうことがあったというのを引き継ぎつつ考えていっていただくような話なのかなと思っております。あと、個別にそれ以外に何があるかというのは今ぱっと思いつかないので、それぞれに応じて適切に対応していきたいと考えております。
以上です。
○山崎部会長 どうぞ。
○駒村委員 数理レポートの中に、私が言ったカレンダーというのは、最初に人口推計が出て、経済前提が決まって、必要なデータとか指令が8通りやれというのが出てきてこういう順番になっていったという大きな流れがわかればいい。というのも、一時期、年金白書みたいなものを厚労省が発表したこともありましたけれども、後世の人が見るに当たっては、やはり資料がどうしても散逸してしまうというか、過去の審議会に出た資料を全部どうぞご覧くださいというのも、10年、20年たったときに非常に非現実的かなと思っていて、その中で必ず出されるのが数理レポートということですので、数理レポートの中には、なるべく数理の部分だけではなくて手続論的なところも出していただければ後世の評価にも耐え得るのではないかと思ったのです。ほかにそういうものが出ていれば、何も数理レポートをやらなくてもいいと思うのですけれども、どうしてもばらばらになってしまう傾向があるわけですので、まとまったものが必要だと思っているのですけれども、なければ数理レポートの中の充実ということを申し上げておきます。
○山崎部会長 ほかによろしいでしょうか。
野上委員。
○野上委員 きのうは関連質問をさせていただいたのですが、独自のものを、若干重なっておりますが、質問させていただきます。
まず、経済モデルについて質問したいのですが、3つの観点から疑問があります。きのう、人口減少の中で労働分配率をそれぞれのシナリオごとに見ると、100年間、長期にわたっては一定としたことによって、賃金上昇率と運用利回りが高く出過ぎているのではないかという指摘をさせていただきました。これはかなり技術的な話ですので繰り返しません。もう2つ目は、賃金上昇率がちょっと高いのではないかと。これはいろいろな見方があるのですが、名目GDPと賃金上昇率を比べて、名目GDPのほうが高いというのはある意味で経験則としてあるのではないかというのを年末にやった前回のヒアリングのときにグラフでお示ししたと思います。あれは何も私が思いついたわけではなくて、昔、経団連が日経連と経団連に分かれていたとき、まだ春闘があったときなのですが、そのとき日経連さんが、賃金上昇率が名目GDPの伸び率を上回ると日本経済の国際競争力がなくなるという主張を盛んにされていたという記憶がございます。そのときに、100年間にわたって名目GDPよりも賃金上昇率のほうが高いと、果たして日本経済は100年間生き残っていけるのかというのが素朴な疑問でございます。
もう一つ、政府のほうの成長計画、成長モデルといいますか、それに基づいて長期の設定をされておりますが、その後、政府のほうもかなり人口減というのは大きな問題と認識されたようで、成長モデルの前提として、人口減を1億人を下限に下支えしていくという計画を加えておられます。ですから、今回の財政検証のときは、多分先ほどのスケジュール感といいますか、カレンダーの中ではなかなか難しかったと思うのですが、政府の成長計画自体がかなり人口減と整合性を持って策定されているということですので、財政検証のほうも、今回は仕方ないとしても、今後はその辺をやはり重要視していくべきではないかと思います。これが3つ目です。
あと、マクロ経済スライドに関してですが、今回、AからHで、Hに関しては完全賦課方式に移行するということで、この可能性を初めてメーンのシナリオの中で示されたというのは大変高く評価しておるのですが、一方で、A、Bのシナリオに関しては、マクロ経済スライドは厚生年金に関して2017年に終わってしまうということです。これは、例えば2018年が近づいてくると、2018年はマクロ経済スライドをとめるのですねと言われたときにどう反論するのかなと。私はそういうことは言いませんが、世間の中では言う人がいるのではないかということで、そのときは、やはり財政検証をもう一回やって示すしかないのではないかという気がいたします。そのあたり、どういう今後の計画をお持ちなのか、お示しいただければと思います。
○武藤数理課長 まず1点目のGDP成長率と1人当たりの賃金上昇率の関係ですけれども、これは御案内のとおり、専門委員会での議論というのは、従来から使っているコブ・ダグラス型生産関数を使って、改良は加えるのだけれども、それを基本としてやっていきましょうという議論があったということです。このモデルになったのがいつかと振り返ってみますと、10年前、16年財政再計算のときからで、それより前は、実はもうちょっとざっくりと決めていて、過去の実績を分析して、それに応じて将来の経済前提を設定するというやり方だったのです。諸外国の財政検証を見ると、そういう考え方でやっている国がいまだに多いのですが、16年のときに経済前提を議論する専門委員会の前身のそういう議論をする場という感じなのですが、年金資金運用分科会というものが社会保障審議会の下にありまして、そこに経済・金融の専門家がいらっしゃって、まさにこれから人口が減少していく局面だということが見通される中で、従来の過去実績をそのまま伸ばすようなやり方でいいのかという議論があって、割とそこで集中的に議論がされて、そのコブ・ダグラス型生産関数が設定されたということで、参考までに御紹介しておきます。
コブ・ダグラス型生産関数というのは、労働分配率と資本分配率を固定するという基本的なモデルになっているということですけれども、労働分配率を一定として考えると、総賃金の伸びというのは、労働力人口が減少すれば減少する。人が減った分、減るのはそうなのですけれども、1人当たりに考えたときに、労働者数が減る分、1人当たりの賃金上昇率はその分高くなるということなので、それは別に、日本のように人口減少、労働力人口が減少していく中で、GDPの伸びよりも1人当たり賃金の伸び、1人当たりの労働生産性が高いというのは不思議なことではないのではないかと思っております。
以前、野上委員からも、諸外国を見たときに、GDPの伸び率と1人当たり賃金の伸び率でGDPの伸び率のほうが高いではないかというお話があって、そのときも思ったのですけれども、諸外国はまだ日本ほど本格的に人口が減少する局面に達していないので、そういう過去データになってしまうのかなと思ったことがあるのですが、それは別にそんなに不自然なことではないのではないかと認識したのが1点目でございます。
2点目でございますけれども、マクロ経済スライドの調整終了期間について、幅の広いケースでやっていてどう考えていくのかということにつきまして、これはきのうも部会長より御確認があったのですが、きのうお答えしたとおりです。幅広いケースの中でプロジェクションでやってみて、こういう結果になるということですので、それらを総合的に見て考えていくということではないかと思います。つまり、昨日も申し上げましたけれども、特定の成長するケースの一番高いものの中でとめてもいいというケースがあったからといって、直ちにそれでとめるという判断をするものではないということで、議論をしたところでございます。
以上です。
○山崎部会長 時間に御協力ください。
○野上委員 余り議論しても限りないので、もう一回ぐらいにとどめたいと思っておりますが、まず、生産関数の話ですが、成長関数といいますか、あれは御案内のとおり、要はミクロ経済の理論をマクロのほうに持っていってつくったものでございまして、もともとは超短期のモデルでございます。ですから、成長モデルとしても、通常使うときはそんなに長期に持ってこないということで、分配率一定とする場合が多いですが、アプリオリに一定と決まっているわけではないと理解しております。もし間違っていたら教えてください。
もう一つ、国際比較で過去のデータの話が出ましたので申し上げますと、あの中にドイツも入っております。ドイツはもう生産年齢マイナスでございますし、もう一つ、日本も入っております。日本は既に、人口は別にしまして、生産年齢に関しては減少し出して10年以上たっておりますので、その辺に関しては特に、日本は名目GDPどころか物価上昇も賃金上昇を下回っているというグラフだったと思いますので、失礼ですが、反論になっていないのではないかと思います。
もう一つ、マクロ経済スライドのストップの件ですが、あれはどちらかというと、誰が決めるのかなという話もございますので、総合的に見るというと誰か一人が判断なさる、例えば厚生労働大臣が判断なさるというようなイメージで今お答えになったと思いますが、総合的に誰が見るのかなという話をもしお聞かせいただけたら。
○武藤数理課長 まず1点目のモデルについてのお話ですけれども、基本的には長期の経済モデルというときには、供給面から考えるというのが普通の、成長経済学でのモデルだと認識しておりまして、その中に1つ、コブ・ダグラス型生産関数を使うというのがあるということで、労働分配率をそもそも一定にするモデルということでコブ・ダグラス型生産関数があると思っています。それ以外のモデルもあるかもしれませんが、それはそれで、専門委員会の先生方が今回の26年財政検証の経済前提モデルをどう考えるかに当たって、最先端のモデルを研究されたり、あるいは諸外国のモデルを見たり、いろいろされた上でこのモデルをベースにしていこうと考えられていたので、特段、労働分配率一定というのはおかしなものでもないのかなと。
ちなみに、参考までですけれども、諸外国のモデルを経済前提専門委員会で研究されたときに、諸外国はもう少し素朴な方法でやっている感じなのです。例えばアメリカの経済前提、賃金上昇率をどう設定しているかというと、アメリカは実質の賃金上昇率をざっくり言えば3つぐらいの要素に分解しています。労働生産性の上昇率と、その生産性の上昇率をどう分配するかという労働分配率と、交易条件に当たるものの3つに分解して、過去のそれらの実績がどうだったから将来にそれをどう投影していくかというのを御判断されて、設定されていましたけれども、アメリカでも労働に分配される分は将来一定となっていましたので、別にそれはそんなに不思議なことでもないかと思っております。
諸外国のデータについては、手元にないので、何とも今は申し上げにくいところでございます。
マクロ経済スライドをとめるルールにつきましては、具体的に法令上どういう構成になっているかといいますと、法律に基づいて政令でマクロ経済スライドのスタートとストップを決めるという構成になっております。
以上です
○野上委員 まず最初のものですけれども、分配率一定というのは決まっているのかなということで、某経済前提委員会に入っておられる経済学者の方にお聞きしたのですが、特に一定とは決まっていないという確認をした上で、私は発言しております。この辺はむしろ次回の経済前提委員会がもしもう次回も開催されるとすれば、そこら辺でもう一回議論していただくしかないとは思っておるのですが、現実問題としては、労働分配といいますか、賃金上昇のところはもうちょっとセンシティブに動いたときにどうなるかというのを今回、ヒアリングの中で資料としてお願いした点もございます。きのう申し上げましたけれども、最後の資料でございますが、その辺はもうちょっと充実させていただいてもいいのではないかと、これはお願いでございます。
○山崎部会長 では、最後、簡単にお願いいたします。
○武藤数理課長 今後、頭に入れて考えていこうとは思います。ただ、専門委員会でそういう議論があったか、なかったかについては、いろいろなモデルを専門委員会で御確認されたのですけれども、基本的には10年前に決めたモデル、コブ・ダグラス型生産関数を最終的には踏襲して、それに改善を加えていこうということで、労働分配率一定のモデルが採用されたのです。ただ、野上委員がおっしゃるような問題意識はやはりありまして、将来の労働分配率をどう見込むかは難しいですねという話があって、それはパラメーターをどう設定するかという中で工夫されておりまして、従来の労働分配率の設定は過去10年平均を一律に設定していたのですけれども、それよりももっと長期間で見た労働分配率の値を使って、2つ幅を持って設定しようという議論があったことだけ御紹介させていただきたいと思います。
○山崎部会長 私、数理部会長として、今、我々がやっているのは、次の財政検証に向けて改善の余地があるかどうか、その辺の検討をしているわけでございまして、おそらく年明けにはレポートを出さなければいけないということです。
それで、ちょっと確認しておきたいのですが、文書で事務局に出していただいても結構ですが、先ほどの質問にありましたように、20%ルールというのは、何となくではちょっと困るので、一応制度上、年金部会にも説明し、承認を得ているだとか、それが必要なような気がいたします。
○武藤数理課長 わかりました。
従来より国会等でも答弁しておりますけれども、資料に抜け落ちていたという認識でございます。
○山崎部会長 それがないと検証がしにくいので。
○武藤数理課長 わかりました。
○山崎部会長 それから、きのうの資料の82ページです。21年財政検証以降の制度改正は織り込んでおりますというのですが、当然それは織り込んでいただかなければいけないのですが、そのことで財政的にどのような影響があったかという数字が欲しいということでございます。今回、法案には出さなかったようですが、年金局として用意されていたのは、第1号被保険者の産前産後の期間について保険料を免除しようと、それについて100円保険料を上げるということでございますが、それは正しい判断だったのだろうと思うのです。ですから、かなり財政的な影響があるのであれば、保険料を上げるということを言わなければ無責任になるのかなと、それをしない限りは給付水準を落とすだけの話になってしまうという気がいたします。
あとは、年金生活者支援給付金は、年金制度とは別の福祉的な措置であるからということで対象にしていないというのですが、年金制度の内枠として当初は提案されて、国会修正で外に置かれたのですが、果たしている機能は全く同じでございまして、水準低下というものを低所得者に限定して何とか緩和したいという配慮なのですね。そのことは、直接財政検証の範囲ではないにしても、どこかで数字を出していただきたい。つまり、初年度で5,600億円というのは相当な金額で、将来に向けてふえる可能性があるものですから、しかも財政負担を伴うわけですから、これは何らかの形で説明に入れていただきたい。
同様に、同じ年金局の所管で障害者特別給付金もありまして、先ほどの生活支援金も実は障害者に対して大変な改善になっているわけですね。ですから、この辺は年金局が狭い年金にとらわれないで、幅広く目配りをしておられるということだと思いますので、出していただきたいということでございます。
それから、5年ごとに財政検証を繰り返すことによって、ちょっと財政的な影響があるはずでございます。つまり、前回、95年後に積み立て度合いが1.0になるはずであったものが、今回の財政検証で若干高目になっていますね。その影響を財政検証ではどのように考えて分析されたのか。
それから、一元化の効果がプラスの効果、あるいはマイナスの効果、両方あるというのですが、それぞれの財政的な影響についても数字が欲しい。これは、我々はこれから作業をしなければいけないので、出せるものなら出していただきたいということでございます。お答えできる範囲内で一言で結構でございます。できなければ文書でお願いしたいと思います。
○武藤数理課長 もうお時間ですので、最後に一言だけですけれども、今、最後に部会長よりおまとめいただきまして、大変重要な指摘があるものと認識しております。今いただいた課題というのは大変重要な話だと思いますし、すぐに対応できるものと、そうでないものがあるのかなと思いながら聞いておりました。
いずれにしても、短期的にできるものは、宿題事項の回答とあわせて数理部会で追加で出させていただき、それ以外のものは、それ以外のものとして長期的にじっくり考えていきたいと思ったところです。
以上です。
○山崎部会長 田中委員、まだ次の議題がありますから、一言でお願いします。
○田中委員 では、短い質問ですが、先ほどの野上委員の関連質問なのですが、マクロ経済スライドの停止あるいは再開ということもあるのか、事実を余りよく知らないので教えていただきたいということです。先ほど私学共済の方に御質問したときに、今、制度は分立して動いているのですが、今度一元化されますね。そのときにルールとして積立金、それぞれの運用利回りがかなり違うけれども、合算して大きい厚生年金として発動なり停止なりを考慮されることになるのか。それから、今後は新厚生年金全体としての財政検証を行うことになるのか、この点を教えていただきたい。
○武藤数理課長 被用者年金一元化法の成立に伴いまして、従来の一般民間サラリーマンの方を対象とする厚生年金から、公務員ですとか私学職員の方を含む大きな厚生年金に変化したということでございまして、法律上の規定も、その大きな厚生年金で収支の均衡を図るということになっておりますので、マクロ経済スライドの発動停止についても、その大きな厚生年金全体で考えていくということになります。その中に従来の実施主体、実施機関が残るということになりますので、それぞれの区分の内訳があるという構造になっているところです。
以上です。
○田中委員 そうしますと、運用主体がそれぞれ違うので、もちろんパフォーマンスが変わってくるのですが、幾ら頑張っても結局全体に吸収されてしまいますので、つまり、私学共済は利回りが非常に高いというように努力をされても余り意味がないということになりかねない。その辺はどのようにお考えですか。
○武藤数理課長 それは、財政的には一体で考えるということになっておりますので、それぞれの実施機関が努力された結果は全体に還元されるということになります。
○田中委員 インセンティブ上は問題あると思いますが、お考えはわかりました。
○山崎部会長 それでは、厚生年金保険及び国民年金(基礎年金)の財政検証についてのヒアリングを終了いたします。
武藤課長、どうもお疲れさまでございました。
次に、その他の議題ということで、資料2について事務局から説明をお願いいたします。
○清水首席年金数理官 部会長と御相談の上、今年度につきましても、セミナー形式の年金数理部会を開催したいと考えております。本日の資料2をご覧ください。
セミナー形式の年金数理部会の趣旨でございますけれども、数理的な視点を中核としながら、幅広く正確な情報を発信することにより、国民の皆様方、とりわけ年金財政に関心のある方々に、公的年金財政に関する御理解と、年金数理部会の活動に対する理解を深めていただくという趣旨でございます。
日程でございますが、11月30日月曜日の14時から17時、場所は、全国都市会館の大ホールということで予定いたしております。
テーマは「被用者年金制度の一元化と今後の年金財政」というものでございまして、進め方といたしましては、一元化の内容の紹介、宮武先生からの御講演と委員の皆様のなかでの意見交換、さらには、会場の参加者からの意見も募って双方向性を確保してまいりたいと考えております。
以上でございます。
○山崎部会長 このセミナーにつきまして、皆さんからいかがでしょうか。
それでは、今、提案のありました形式の数理部会を開催させていただきたいと思います。
宮武部会長代理には大変お世話になります。よろしくお願いいたします。
それでは、本日の審議を終了いたします。
次回の日程等につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○清水首席年金数理官 次回の年金数理部会では、国家公務員共済組合と地方公務員共済組合から平成26年財政再計算について、財務省と総務省から説明を受ける予定といたしております。
開催日程につきましては、追って御連絡させていただきます。
○山崎部会長 どうも御協力ありがとうございました。ほぼ時間どおりに終わりました。
それでは、これで終了いたします。
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