ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会)> 第42回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録(2015年7月28日)
2015年7月28日 第42回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録
職業安定局建設・港湾対策室
○日時
平成27年7月28日(火)10:00~12:00
○場所
中央労働委員会 第606会議室(6階)
(東京都港区芝公園1-5-32)
○出席者
公益代表
鎌田座長、柴田委員 |
労働者代表
勝野委員、小倉委員、曾根崎委員、時枝委員 |
使用者代表
大木委員、鈴木委員、福田委員、土屋委員 |
参考人
深澤建設経済研究所研究理事、長福国土交通省労働資材対策室長 |
事務局
広畑雇用開発部長、谷建設・港湾対策室長、富永建設・港湾対策室長補佐、佐藤建設・港湾対策室長補佐 |
○議題
(1)建設業の現状と今後の見通し
(2)その他
○議事
○富永補佐 定刻となりましたので、ただいまから第42回「労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会」を開催いたします。
まず、配付資料の確認をお願いいたします。資料は、資料1と資料2となっております。もしお手元に足りない資料がありましたら、お申し出いただければと思います。
また、前回委員会の配付資料を参考までに青い紙ファイルにとじて席に置かせていただいております。今後配付資料を順次とじ込んでいきたいと思っております。資料はお持ち帰りいただいても結構ですし、そのまま置いていただければ、そのまま紙ファイルにとじていこうと思っております。
続いて、本日の委員の出欠状況の報告をさせていただきます。本日は、公益委員の大橋委員から欠席の御連絡をいただいております。
それでは、以後の進行は座長からお願いいたします。
○鎌田座長 どうもお暑い中、ありがとうございます。
前回は第9次建設雇用改善計画の策定に向けて、策定スケジュールや建設労働者を取り巻く状況等について、事務局から説明を受けたところでありますが、今回は建設業の現状と今後の見通しについて、お二人の専門家の方に御説明をいただくことにしております。
お一人目は、一般財団法人建設経済研究所の深澤研究理事でございます。
○深澤理事 よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 よろしくお願いします。
お二人目は、国土交通省建設市場整備課労働資材対策室の長福室長です。
○長福室長 長福と申します。本日はよろしくお願いいたします。
○鎌田座長 きょうは、お忙しいところをおいでいただき、まことにありがとうございます。
それぞれ30分ほど御報告をいただいて、その後、若干の質疑をさせていただきたいと思っております。
それでは、初めに深澤理事に御報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○深澤理事 改めまして、建設経済研究所の深澤と申します。本日は十分なお話ができるかどうかわかりませんけれども、私どもの研究所の成果も含めてお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
お手元の資料1を使いまして御説明をさせていただきたいと思います。本日お話しさせていただきますのは、建設業、改めて申し上げるまでもございませんけれども、中長期的に現場の職人の方、技能労働者の不足というものが懸念されております。人材確保・育成というものが大きな課題となっているということでございますので、それに関連いたしまして建設投資のお話と建設技能労働者の将来推計、あるいは建設労働市場の構造的課題といったことについて、お話をさせていただきたいと思います。
1枚目の下でございますけれども、本日の内容、ちょっと細かく分け過ぎたかもしれませんが、大きく5点ほどに分けて御説明をさせていただきたいと思います。
まず、1点目は「建設投資の推移等」ということでございます。こちらにつきましては、前回、国土交通省の資料にも出ておりましたものですので、簡単にしたいと思いますが、もう一度確認の意味で見ていただければと思います。こちらの資料にございますように、建設投資と、建設業の許可業者と就業者の推移でございます。建設投資額は、名目の数値でございます。本来実質の数値で見るべきものかもしれませんけれども、ここでは名目の数値をグラフにしているということでございます。グラフの右側にそれぞれのピーク時からの減少割合が書いてございますが、建設投資がピーク時に対して約4割減っているのに対して、許可業者は2割減、就業者は約4分の1減ということで、投資が減っている割に許可業者とか就業者数は減っていないという状況でございます。
5ページをごらんいただければと思います。就業者の中をもう少し細かく見たのが左側のグラフということでございます。その内訳を見ますと、現場で施工管理を行う技術者の方、現場の職人の方、技能労働者も就業者と同様に減少ということでございます。
技能労働者は、一番下の橙色の棒グラフのところをごらんいただきますと、就業者全体と同じような減少ということで、ピーク時から約4分の1減っているということでございます。
しかしながら、平成22年を底に、平成26年にかけて建設業をめぐる状況も少し好転ということもございますし、また、後ほど国土交通省から詳しい説明があるかと思いますけれども、官民挙げてのいろんな取り組みということもございまして、平成22年以降は少しずつ増加をしているという状況でございます。
データはございませんが、国土交通省が毎月発表している建設労働需給調査を見ましても、昨年3月に現場の不足感というのが一番強かったわけでございますけれども、その後、上がり下がりはございますが、不足感は弱まりつつあるということでございます。
何が問題かというのは、右側のグラフでございますが、建設就業者では、高い年齢層の方が多くて、若い年齢層の方が他産業と比較しても少ない。現在というよりも将来の担い手不足という中長期的な課題、問題だということかと思います。
6ページをごらんいただきたいと思います。建設投資は回復基調だということは、先ほどの3ページのグラフを見ていただくとおわかりいただけるのですけれども、今後、中長期に建設投資なり建設市場というものがどういうふうに推移していくだろうかというところが、世の中の関心事項だと思います。その予測はなかなか難しいわけでございますが、本日も委員で参加されておられますけれども、日本建設業連合会が今年3月、中長期ビジョンを発表されておられます。私ども研究所もお手伝いをさせていただきましたが、その中で建設市場の中長期予測、今後どう推移するだろうかというものを出しておりまして、それを参考に載せさせていただいております。国土交通省が発表しているいわゆる建設投資に民間建築部門の維持修繕も加えて推計を行ったということでございます。
ちょっと小さい字で恐縮でございますけれども、下の注2のところをごらんいただければと思います。内閣府で年に2回「中長期の経済財政に関する試算」というものを出しておりますけれども、7月にもっと新しいのが出ておるのですが、ことしの2月の段階の中長期試算というもので経済再生ケースとベースラインケースというものを設定してございます。経済再生ケースというのは、中長期的に経済が成長するケース、ベースラインケースは、そこまで成長しないケースということでございますけれども、それの数値を使いまして2025年度までの市場規模を予測したものでございます。
囲みのところにもございますように、現在、経済・財政一体改革という取り組みが、政府で先日、骨太の方針の中で閣議決定されました。政府建設投資については歳出改革ということで、2020年度に向けてプライマリーバランスを黒字化して、長期的にはGDPに占める借金の割合を減らしていくという目標があるわけでございます。
民間部門については、「デフレ脱却・経済再生」ということをきちんと目指していこうということでございますので、民間建設投資というのは、経済の動きに大きく左右されるということでございます。
また、住宅投資については、今後2020年から25年の間に人口だけではなく、今度は世帯数というものも減少するということになってございますので、住宅投資をする世帯数が増加するという要因が今後なくなっていくということも踏まえて考える必要があるということでございます。
結果については、そこに名目値、実質値が書いてございますけれども、いずれにしろ建設市場も経済あるいは財政の今後の動向によって左右される。当たり前の結果で申し訳ありませんが、そういうことが言えるということでございます。
数字だけ見ていただきましても、2020年。2020年と言うと、東京オリンピック・パラリンピック大会ということでございますけれども、それ以降も一定の市場規模はあるわけでございます。また、建設業に期待される防災あるいは災害時の対応、また、インフラだけではないのかもしれませんけれども、維持管理、国民の生命・財産、また、生活・経済を支えるという役割、こちらをきちんと果たしていくために、現在ではなく中長期に建設業の人材を確保していかなければいけないということが言えるのではないかと考えております。
7ページでございます。引き続きまして、国勢調査あるいは労働力調査をもとに技能労働者の将来推計を行ったものがございますので、それをごらんいただければと思います。
まず、8ページをごらんいただきたいと思います。これは2010年の国勢調査のデータでございますけれども、青い線が全産業でございまして、赤い実線が建設技能労働者の年齢構成ごとのシェアを示したものでございます。建設業の赤い線をごらんいただきますと、55~64歳までの山、これは60~64歳のところに団塊の世代が含まれているわけでございますが、35~39歳の山、これは団塊ジュニアの世代ということが言えるかと思いますけれども、2つの山ができている。M字型が特徴ということでございます。高い年齢層の方の割合が高くて、15~29歳までのところをごらんいただきますと、シェアが低いということが技能労働者の特徴ということかと思います。
9ページをごらんいただきたいと思います。一口に技能労働者と申し上げたわけですが、同じ国勢調査で職種別に年齢構成別のシェアを見たものでございます。左が型枠大工でございます。これは就業者全体と同様のカーブということが言えるかと思いますけれども、右側のとび職を見てみますと、高所での作業を伴うということかと思いますが、若い年齢層の山が極めて高い。45歳以上になると激減しているという状況でございます。これは材料の持ち運びを行う鉄筋作業従事者と同様の年齢構成ということになっているところでございます。
下の10ページをごらんいただければと思います。こちらは左官と大工さんでございます。
これは高い年齢層、右側の山が極めて高い。これは熟練が必要な仕事だということかと思われますけれども、技能労働者と申しましても、職種によって年齢構成が異なるということがございます。建設の現場での作業、仕事というのは、単独の職種が行うものではございませんで、それぞれの職種が力を合わせて協働チームで行う訳でございます。どの職種が今後なくなってしまうという訳にはまいりませんので、人材をきちんと確保、育成していくという取り組みが、業界全体も含めてでございますけれども、各専門事業者ごと、職種ごとに必要だということが言えると思います。
11ページをごらんいただきたいと思います。ここで将来推計を行ったものがございます。囲みの前提のところに書いてございますが、2005年~2010年の2回の国勢調査で技能労働者の変化率が10年以降も継続しているという推計、いわゆるコホート分析をしたものでございます。
その結果でございますけれども、ちょっと御注意申し上げたいのは、先ほども4ページ、5ページで建設投資なり就業者の状況を見ていただきましたが、2005年~2010年の間というのは、建設投資なり技能労働者を取り巻く環境が非常に厳しく、一番減っていた時期で、その減少率が今後続くという仮定で計算したものでございます。平成22年以降、技能労働者も少し増えているということを先ほど申し上げましたけれども、それは織り込んでいない推計で、国勢調査を前提とした上での計算ということですので、その点を御留意いただきたいと思います。
結果を見ていただきますと、青い実線からだんだん下に山が崩れていくグラフになってございます。青いところが2005年でございますが、右側の高い年齢層、団塊世代を含めます年齢層の山が徐々に技能労働者から退職されていくので、年が経つごとにここが崩れていくというのがおわかりいただけると思います。紫の点線が2020年でございますけれども、2020年に向けてはかなり崩れていくというのがおわかりいただけると思います。
結果の2025年のところはグラフになくて恐縮でございますが、単純にこのままの勢いで行くと、2025年には2010年の半分近くに減ってしまうという厳しい結果になっているということでございます。
投資額がどう推移するかは、経済の動きによって違うと思いますけれども、このまま放っておくと、防災・減災ですとか災害対応、インフラの維持管理といった建設業に託された役割、責務というものをきちんと果たしていく上で支障が生じるおそれがあるということが言えるかと思います。
12ページをごらんいただきたいと思います。このスライドは、労働力調査で最近、技能労働者の数が増加しているということを申し上げましたけれども、その伸びで国勢調査の技能労働者の数を伸ばした上で、ケース➀とケース➁と書いてございますが、15歳~24歳までの若年層の入職が今後少し改善する、あるいは25歳~64歳までの真ん中の年齢層の伸びも少し続くというような2つのケースを置いて推計してみたものです。
ケース➀よりケース➁のほうが若者の入職率あるいは中堅の年齢層の伸び率が高いというケースを置いて推計をしてみたものです。具体のケースは、表の中をごらんいただきたいと思います。
その結果をあらわしたものが次の13ページでございます。入職率や中堅の年齢層の伸びが続くという前提で、ケース➀よりはケース➁のほうが今後の減少スピードが緩和されるという結果になるわけでございます。それでも今後2030年に向けては、ケース➁の場合でも今の人数を下回ってしまうというような結果が出ているということでございます。
下の14ページは、同じ推計でブロック別に分けた結果でございます。赤い点線で囲みました北海道、東北、北陸、中国、四国、九州といったところをごらんいただきますと、例えばケース➀の場合、東北では2030年が2010年に比べて32%減、四国では31%減。3人に1人が建設市場からいなくなる。関東、中部、近畿あたりの数字はそれでも20%台前半の減少にとどまっているわけですけれども、地域によって技能労働者の将来の数値もかなり差がある。地方では特に深刻だということになる。
要因としましては、地域ごとの技能労働者の年齢構成に差があるということかと思います。そこをごらんいただきたいと思いますのが15ページでございます。
15ページが関東ブロック、16ページが東北ブロックでございます。関東ブロックをごらんいただきますと、高い年齢層の山とともに団塊ジュニア世代の山が比較的高いということで、高い年齢層がリタイアした影響が比較的少ないというのが大都市圏の代表としての関東でございます。
下のほうが東北でございますけれども、高い年齢層の山が高いということでございます。その年齢層が今後リタイアしていくわけでございますので、技能労働市場全体の減少に大きく関係してくるということでございます。働き盛りの中堅の技能労働者層が大都市圏のほうに多く集まっているということから、こういった結果になっているということでございます。
職種だけではなくて、その地域ごとにもいろいろと工夫をしながら、技能労働者の確保・育成に努めていかなければいけないということが言えるのではないかと思います。
17ページ以降でございます。3点目でございますが、当研究所で昨年から今年にかけまして専門工事業者の方々にヒアリングをさせていただきました。技能労働者の確保ですとか雇用形態、生産体制についてのお話を聞いたものがございますので、それを御報告させていただきたいと思います。
ヒアリングの対象は18ページにございます。本日御出席の皆様方は、ヒアリング対象にさせていただいたところもあろうかと思いますし、またお詳しいかと思います。大都市圏は東京を含む1都3県と兵庫、大阪、それから地方ということでは北海道、青森から九州の福岡、長崎、23~24社ずつということでございますので、必ずしも業界を代表したものではないということでお聞きいただければと思います。特に人材不足が深刻化しているとび・土工、鉄筋、型枠の建築の躯体3職種の専門工事業者、1次下請業者に2次下請業者も含めたお話を聞いたという結果でございます。
19ページをごらんいただきたいと思います。大都市圏と地方を比較した形になってございます。
まず、1点目が1次下請業者についてでございます。大都市圏の1次下請業者は、特定のゼネコンに対する専属性が強いというのに対して、地方の1次下請業者は、専属性が比較して低くて、複数のゼネコンと取引をしているということでございます。
2つ目でございますが、大都市圏では建築専業、大型の案件を請け負うという業者が多かったのに対して、地方では元請自身が公共、民間工事、両方受注しますので、専門工事業者のほうも土木、建築両方請け負うということで、規模についてもかなり幅広くこなしているということでございました。
3つ目でございますが、大都市圏の1次下請業者は、労務を2次下請以下に外注しているということに対して、地方のほうでは常時雇用する業者が多くて、自社施工比率も比較的高い。大都市、地方で違いが見られたということでございます。
20ページは、2次下請業者についてでございます。大都市圏では2次下請業者が1次下請への専属度が強いということでございますけれども、地方のほうでは仕事量が少ないために、1次下請への専属度は比較的低いということが特徴でございます。
また、大都市圏の2次下請業者は日給制で、社会保険への未加入も大半ということでございましたが、地方では公共工事比率が高いということもあり、2次下請業者レベルでも社会保険の加入率が高いという違いがあったということでございます。
繁閑の調整についてでございます。これについては大都市、地方、基本的には同じということでございまして、1次下請業者を通じて2次下請以下の技能労働者を応援という形で繁閑の調整をしているという実態がありましたということでございます。
21ページをごらんいただければと思います。技能労働者の確保に関してでございます。大都市圏では2次下請業者、社長(親方)が縁故あるいは求人誌を使って募集するということでございましたけれども、地方のほうでは、1次下請の社長みずからが高校を回ったり、新規採用に取り組んでいる。また、社会保険に加入しているということかと思いますが、2次下請業者がハローワークも活用しているということが違いと言えるかと思います。
技能労働者の常時雇用につきましては、大都市の1次下請業者はなかなか厳しいという否定的な意見が強かったわけでございますけれども、地方のほうでは社員として採用しないと技能労働者が確保できないということで、そういった取り組みを行っているという声があったわけでございます。
最後、社会保険の加入につきましては、先ほども一部お話ししましたが、今の請負金額では社会保険への加入は難しいという意見が大半でございましたけれども、地方のほうはもともと公共工事比率が高いということで、社会保険の加入率が高いという実態がある。技能労働者の方の雇用とか就業環境も大都市と地方で少し違いが見られるということでございます。
22ページは4点目、建設労働市場の構造的課題ということです。これは文章だけになってしまいますけれども、23ページをごらんいただきたいと思います。建設労働市場というもの、そのベースには建設生産体制というものがあるということでございます。建設生産体制は、戦後の直後は元請が労働者直用という形でスタートしたということでございますが、その後、長い時間をかけて、1980年ころ、下請率がほぼ5割に達したということで、元下生産体制への移行がほぼ完成したということでございます。
こういった建設の生産体制ができ上がった背景としまして、ここに2つ書いてございます。改めて申し上げるまでもございませんけれども、建設業の産業特性ということで、そこに5つほど挙がってございます。それから、建設需要の発生が不安定ということで、景気ですとか、公共工事の会計上の要因、あるいは季節、地域、いろいろな要因があって、需要が大きく変動するということがございます。こういったことから下請組織が発達して、分業・専門化が進んで、弾力的な生産体制によってリスクを分散してきたということで、重層下請が必然的に発達してきたということが言えるかと思います。
こうした生産体制が、バブル後、建設投資が右肩下がりで減少してきたところで建設労働にどのような影響を与えたかというのが24ページに書いたものでございます。これは、上のほうから発注者、元請、下請という形で書いてございます。低価格・高品質といった要求、工事量の減少が低価格受注、安値発注になり、最終的には技能労働者との雇用解消とか、あるいは賃金の低下に結び付いた。その結果として低労働条件、低福祉といったことになり、それで若年入職者の減少、高齢化が進み、建設労働問題の深刻化を招いていったということが書いてございます。
次の25ページは、建設需要が回復基調にある現在は、建設生産体制にどういう問題が起きているのか、今度は2次下請から出発してございますが、1次下請、元請にどういう影響を及ぼしていたかといったことを書いているところでございます。
職人、技能労働者の方を賃金の引き上げによって引きとめて施工体制の維持を図る。また、将来の建設需要の縮小のリスクを回避するために、施工体制の拡大には慎重ということで、元請は協力会社などを使って下請技能労働者の囲い込みを進めている。その結果として技能労働者の逼迫感とかコストの上昇を招き、それが入札不調とか工事の遅延といったものにつながったというところを書いてございます。
建設生産体制の各階層ごとに、建設投資の減少期、回復期、それぞれ自分にとって一番最適な行動をとった結果として、いろいろな建設労働問題とか、建設労働を取り巻くさまざまな課題が生じてきたということでございます。
今、お話しした点をもう一度整理したものが26ページでございます。現在の技能労働者不足というものをさかのぼっていきますと、ページの中ほど、建設業の産業特性あるいは工事量の変動といった建設業の産業的特質といったところに最終的には行き着くということでございます。
こうした問題の解決策もなかなか見出せないまま、建設業界としては、景気のいいときには賃金の上昇によって人手不足を解決してきた。また、景気が悪くなると請負代金のカット、賃金を下げる、あるいは人員整理といったことで解決してきたということで、その結果、労働条件ですとか福祉といったものの根本的な解決、改善が先送りされてきたということかと思います。こういった問題の根本的な解消に向けて、一番下の行でございますけれども、建設生産体制を支える各階層が、全体として建設生産体制あるいは工事量の変動といった産業的特質までさかのぼった対応、時間はかかるのでしょうけれども、きちんと対応していくということしかこういった問題は解決できないのではないかということでございます。
最後、「建設業の総合的な人材確保・育成対策」ということでございます。この辺の中身は、この後、国土交通省のほうから詳しいお話があろうかと思います。昨年、官民一体でこの問題に取り組むために、国土交通省と元請、下請、それぞれの建設業の団体、学識経験者をメンバーとした建設産業活性化会議というものが設置されて、そこにございます1から6、建設生産システムの効率化・高度化なども含めました対策に一体的に取り組んでいこうということで、昨年6月、中間取りまとめということでさまざまな取り組みが行われているということでございます。
なかなか一朝一夕ですぐに成果が出る、すぐに見えるというものではないと思いますけれども、こういった取り組みをきちんと確実に実施していく、進捗もきちんと管理していくということ、こういう地道な取り組みで技能労働者の人材確保・育成というものに取り組んでいかなければいけないということかと思います。
人材の不足というものが課題になっておりますのは、建設業だけではございませんで、運輸業ですとか小売、外食産業、あらゆる現場を抱える産業で人手不足ということです。各産業で今後労働力人口が減少していく中で、産業間での人材確保の競争が始まっているということでございますので、建設においてもきちんとした人材確保・育成の取り組みが必要だということかと思います。
雑駁な話でございましたけれども、私からは以上でございます。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。大変興味深いお話を伺いました。
15分ほど質疑をしていただきたいと思っております。皆さんから自由に御質問なり御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。どうぞ。
○柴田委員 ちょっと質問です。9ページと10ページのところの職種別比較を大変興味深く拝見したのですが、例えば左官や大工の仕事は高齢のほうが多くて、若い世代ではとび職のところが多いのですけれども、これは建設の業務の内容、例えば左官の仕事とか大工の仕事自体が作業量として減っていて、若い人の需要が余りなかったということもあるのかなと思ったのですが、もしそうなら、大工や左官は、職種構成として今までと同じ人数は必要ないということではないのかなと思ったので、そこを質問させていただいていいですか。
○深澤理事 私ども、そこまでの分析を十分できていないのですけれども、おっしゃるとおり、例えば左官さんの仕事というのは、昔などに比べますと、例えば室内の最終的な仕上げなどはクロスで仕上げるというところも増えていると思います。必ずしも以前と同じだけの左官の職人さんが必要だということではないというところは、おっしゃるとおりかと思います。
ただ、外壁の仕上げとか、一定程度の左官さんの仕事というのはやはり必要かと思います。その中で左官の方のボリュームが必要かというところは、私、何とも申し上げられませんけれども、左官さんあるいは大工さんの必要な数、仕事と、それに対応して仕事の効率を上げていく取り組みが今、いろいろと行われていると思います。そういったものを踏まえて、今後、若手も含めてどのくらいの数の入職者が必要か、また、どういった訓練をして育てていくかということを、業界全体だけではなく、職種ごとに考えていく必要があるということかと思います。
○柴田委員 そうですね。私も拝見して、職種別の必要人数みたいなのを少し整理していかないと無駄になってしまうなと感じました。もう一つは、団塊ジュニアの層は大都市圏に多く、高齢のほうは地方のほうに多くいらっしゃって、地方のほうは比較的社会保険にも入っておられるけれども、大都市のほうは、2次下請などになってしまうと社会保険に入れない。この団塊ジュニア層は建設業界にとって、とても重要な人なのに、社会保険をはじめいわゆる労働条件の悪さが際立っているということになると、大都市圏、かつ大企業、大手のゼネコンも含めて、本当に真剣に考えないと大変な問題になるなというのを改めて強く感じました。
○鎌田座長 どうぞ。
○深澤理事 大都市のほうが特に団塊ジュニア世代を含めて多くいるというのは、2010年の国勢調査の結果を見ても明らかと思うのですけれども、それは仕事が大都市のほうが地方に比較して多いということかと思います。また、先ほどヒアリングの結果を少し発表させていただきましたが、大都市にいらっしゃるこういった団塊ジュニアの技能労働者の方は、社会保険料を徴収されるよりも、手取り、自分の腕一本できちんと稼ぎたいという意向もかなり強いというようなお話も出て来ておりますので、そういった意識も関係している。しかも、1次下請の社長さんなどにお聞きしても、自分の社員を抱えるよりも、請負で出したほうが職人さんの稼ぎもよくなるし、腕も上がるというようなお声も聞かれました。我々などから見ると、きちんと社会保険が必要だ、加入してもらうことはベースとして必要だとは思うのですけれども、技能労働者の方の意識としては、先ほど申し上げたように現金でたくさん欲しいとか、そういう意識が強いというような実態もあるという声をお聞きしたところでございます。
そういったところを変えられるのかわかりませんけれども、そういった点も含めてきちんと対応していくということが必要ではないかと思います。
○柴田委員 請負なのですね。一人親方ですか。
○深澤理事 一人親方ということですね。
○柴田委員 私、もう一つすごく気になったのは、一番最初のところで、投資がどんどん減っていますが、投資に比べて業者や労働者は減っていないということです。小さくなったパイを多くの人で分けているという感じです。むしろ一人一人の生産性を上げること、人数はふえないのだけれども、効率化で収入をふやすという、製造業ではすでにやっていることを、建設業はできないものなのでしょうか。建設を知らない人が言う質問で申しわけないのですけれども。
○深澤理事 そこがまさに建設業の抱える大きな問題ということです。先ほど私も余り説明能力がなくて、後ほど長福室長から詳しく説明があると思いますが、28ページに建設産業活性化会議での取りまとめということで、官民を挙げてまとめた人材確保・育成対策というところがございます。28ページの右側の6のところに書いてございますが、一番関係するのは建設生産システムの効率化というところなのですが、生産効率を上げていかなければいけない。それは1人当たりの投資額、稼ぎということにも対応いたしますが、高齢者層が今後やめていくという中で、若い人に入っていただくにしても、他産業との競争というのもあり、なかなか簡単ではないという中で、生産の効率が、製造業みたいに機械化、情報化ということで単純に進むものではない。対策の中ではここが一番難しいところかと思いますけれども、生産性を上げるというところについても機械化、ロボット化、あるいは人の配置というものも含めて取り組んでいこうということで対策が始まっているところかと思います。ただ、具体的に非常に頭を悩ますところかなと思います。
○柴田委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 どうぞ。
○福田委員 柴田さんの御意見はすごく根本的なところをついていると思います。何で生産性が上がらないのか。本当は上げたいのです。ただ、労働者というか、日給月給みたいな人が多い。だから、土曜日も休まないで働いて、その分賃金をもらう。月給制だったら、効率をよくして休むことを考えるかもしれない。効率性を高めるよりも、明日また出て給料をもらったほうがいいと。根本的にそういう労働条件の問題があるので、なかなかそれが改善できないのかなと。だから、月給制になれば違うと思いますけれども、ずっと日雇いというか、そんな感じの給料が支払われているので、そういうのが根本にあるのではないかなと私は思うのです。それで、勝野さんは、どうお考えですか。
○勝野委員 難しいですね。日給月給制というお話がありましたが、正確には日給月払いということだと思うのです。月給制ということでなくて、日給のものを月で計算して月払いをしていく。こういうのは雇用関係で明確でないというところから来ていると思うのです。
そういう意味で、今、社保の加入の取り組みが進んでいく中で、私どもの組合の調査でも雇用保険の加入者というのは確実にふえております。一方で、労災保険の特別加入の人もふえているということでありますので、今まで非常に曖昧だった雇用関係のところが一点明確になってきている。そういう傾向は確かにあると思います。
もうちょっと詳しい調査が必要だと思うのですけれども、その際に、では、どういう人たちが雇用関係を結んできているのか、どういう人たちが労災の特別加入に入っているのかというところをもうちょっと調べていかないと、今後の対策としてどういった方策が必要なのかというところが出てこないのかなという感じがいたします。
○鎌田座長 どうぞ。
○福田委員 先ほど社会保険の話があったのですけれども、国交省の長福室長のほうからまたお話があるかもしれませんけれども、社会保険の未加入者というのは、地方のほうは加入している人が多い。地方は公共工事が多いわけで、公共工事は社会保険料が払われているので、それは当然です。
大都市圏は民間工事が主体で、民間工事が多いわけです。これは非常に褒められた話ではなくて、大手を中心にして、社会保険に入っている率が低いという実態が出てきたのですね。それは何かといったら、重層下請に問題があるのです。元請が下請にきちんとお金を払っていても、どんどん下請になるに従って末端には適正な賃金が行き渡っていないのかなと。改善しそうで改善できていないという実態が明らかになったので、これは日建連もきちんとしていかなければいけないのかなと思います。
○柴田委員 きっと自分のところの下請の労働条件に責任を持つということを法律化しないとだめですね。例えばセキュリティーの問題で個人情報が漏れましたという場合には、自分のところの下請で漏れたとしても、元請の責任として謝らなければいけないですね。
だから、それと同じように、下請がやっていないからといって責任逃れができないようにしないと。元請の責任は、下請も含めて全部の工事、関係の労働者の労働条件に責任を持つぐらいにしないと。これからは特にそれが必要なような気がしますね。
○福田委員 当然元請に責任があります。元請から1次下請に指導する。1次から2次下請ぐらいまではそれが通るのかもしれないけれども、その下になると雇用がはっきりしていないというか、その辺が実態としてあるので、その辺にメスを入れていけば、また変わってくるのかなと思います。
○柴田委員 でも、難しいですね。請負でやっている一人親方は日給労働者でなくて請負業者になるのですね。
○福田委員 そうです。
○柴田委員 だから、そこら辺がすごく曖昧で難しくなると思うのです。個人事業者になるわけですね。
○福田委員 そうです。
○柴田委員 そこが微妙。
○鎌田座長 法律論で教えていただきたいのですが、御存じのように、労災保険に関しては元請加入責任ですね。当然下請事業者においても、その現場ごとに元請が労災保険についての管理をしなくてはいけないとなっていて、保険料もそのような取り扱いになっているわけです。今のお話で、私の想像ですけれども、本来は現場ごとに全部下請事業者、そして下請事業者のもとで働いている労働者については管理しなければいけないことになるのですね。ところが、今の話だと、全部管理していないということが起きているということですか。
○福田委員 労災事故に関しては管理しているということですかね。賃金に関しては管理するのは難しい。
○勝野委員 適用の時点で、言ってしまえば現場で働いている方が現場でけがをしたときに、いわゆる労災法がそこで適用されるのかどうかというのは、現状からすると微妙なところがありまして。
○鎌田座長 それは身分の問題ですか。
○勝野委員 そうです。雇用関係。
○鎌田座長 やはりそこになる。
○勝野委員 はい。労働者性が問われる、そういった雇用関係が裁判にもよくなるケースでありますので、なっていると。
ですから、労働者の立場からすると、いざというときに労災保険が適用されないと困るわけですから、せめてものフォローとして特別加入をしておく。第二の保険として加入しておく。そういうことが行われていると思います。
○鎌田座長 そうすると、事故が起きた場合、では、その人は誰で、どんな身分なのかというのがその場で議論になった場合には、裁判ということになるのはわかるのですけれども、そもそも保険の関係ですから、事前に知っていなければいけないわけですね。現場に入ってくる人間がどういう立場の人間か。いわゆる個人事業主として入ってきているのか、とりあえず労働者として入ってくるのかということは、保険のたてつけからすると、事前にわかっていないと機能しないわけですね。要するに、それが曖昧なまま進んでいるということなのですか。
○福田委員 そうですね。事故が起きると、すぐそれが赤裸々になるわけです。2次下請の人だと台帳には書いてあるのだけれども、実際は全然そうでなかったとかそういうのが、事故が起きると判明するわけですよ。だから、その辺の入門管理がずさんな部分はあるのかなと。
○鎌田座長 労災の具体的な行政の取り組みなどにもかかわるのですけれども、その場合、保険料というのはどういう形で徴収されるのですか。
○福田委員 保険料は、請負金に労務費率というのを掛けて、それで何%といって、全体で納めているのです。
○鎌田座長 そうですね。そのときのいわゆる積算の根拠になる現場の労働者数みたいなことというのは。
○勝野委員 それはないのですよ。
○鎌田座長 ないのですか。
○土屋委員 工事の種類によって労災保険料はもう決まっていますから。
○鎌田座長 そうなのですか。
○土屋委員 トンネルがあって、ダムがあり、一般建築物があり、いろいろありますので、それで出されていますから。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでわかりました。
○勝野委員 ですから、現場で作業している一人一人に幾ら掛けているということではないのですね。現場全体に掛ける、そういう仕組みになっているものですから。
○鎌田座長 普通の労災というのは、個々の従業員の賃金台帳を基本にしてやるから、そういう問題は全然出てこないのですれども、いわゆる元請責任だから、そういう便法をやっているのですね。つかまえ切れないということで。
○福田委員 そうです。
○土屋委員 あと、先ほど一人親方などはどうかということで、元請としては、必ず新規入場者のときに、あなたは誰から給与をもらっていますかという表をつくって、一人親方でしたら、もしこの人、組合だったら、では、一人親方の保険に入っていますかと。それは問いかけで必ず入場させていますから。決して水際が何もやっていないわけではなくてね。それは後々問題がありますのでね。
○鈴木委員 それもいわゆる性善説なので、下請業者がこうですよと出してきて、本人に確認して。下手したら本人確認もできないわけですね。では、免許証を出しなさいとか、そういうあれで確認しませんから、あなたですよねと。では、あなたは一人親方ですか、では、特別加入に入っていますか。実際に事故が起きたら、一人親方でなくて労働者性が強かったと。下請が出してきたやつを、こちらはちゃんと本人とその会社には確認するのですけれども、そこでおしまいですから、実際はどうかというのはなかなかわからないです。
○鎌田座長 要するに、自己申告制なのですね。
○鈴木委員 そうです。
○鎌田座長 信じるしかないということですね。
○鈴木委員 ただ、入場するときにちゃんとそういう確認はしていますから。
○鎌田座長 なるほどね。
どうぞ。
○勝野委員 先ほど柴田委員がおっしゃられた現場で働く労働者の最低限の労働条件について、それなりに縛りが必要なのではないかというお話がございましたが、法律ではないのですけれども、条例としては、賃金の下限額を定めた条例というのが今、全国の16の自治体で制定されておりまして、公契約条例という言い方をしているのですが、そういったものもあるわけですので、ぜひ一度この場でも公契約条例についてちょっと論議をしていただければなと思っております。
○鎌田座長 法律家の立場だと非常に興味深い条例なので、相当議論が起きることではないかと思いますが。
○柴田委員 最賃とは別に。
○鎌田座長 そうそう。いろいろな工夫の中の一つとしてね。
どうぞ。
○曾根崎委員 最初の柴田さんの話にも関係あるかなと思うのですけれども、8ページのところのグラフで強いM字が特徴だということがありました。女性の就業率をよくM字カーブ、M字カーブと言っています。それは原因がはっきりしていて、結婚したらやめる、子供ができたらやめるということでM字を描く。原因がはっきりしているので、今、女性の就業率をふやすために、それをなくすようにどうしようかということで、みんなで取り組んでいると思います。
そうすると、建設業におけるM字というのがここで何で落ちるのかということも、先ほどの業種ごとのところにもちょっと関連してくるかもわかりませんけれども、そこを少し考えて、これが落ちないようにしていくということも非常に大事なポイントなのかなと思います。それと、若年層のところで下回っているので、下回っているところを上げていくという工夫。両方があれば多少の改善には向かっていくのかな。今、説明を聞いていて、そこも一つポイントになるのかなと思いましたので、一言述べさせていただきました。
○鎌田座長 今の点について、深澤さんのほうで何かコメントございますか。
○深澤理事 まさに先ほど申し上げたいろいろな労働条件ですとか、社会保険も含めた処遇の関係があって、若い人がなかなか入ってこられない。それから、建設投資全体が減る中で、若い人と年齢層の高い方の中であれば、高い年齢層の方のほうがそのままいて、比較的若い世代の方が労働市場から出ていったということがこういう結果になっているのだと思います。
特に若い方に今後入ってもらうというところが最大の課題、対策として必要だというところかと思います。
あと、建設業でなぜM字カーブが強いのかというのをよく聞かれて、私も十分分析できていないのですけれども、右側の高い山の60~64歳のところが団塊の世代なのです。2010年で申し上げれば、35~39歳のところが団塊ジュニア世代なのです。その世代が中学ですとか高校を卒業して社会に出るといったとき、非常に好景気で建設投資が非常によかった時代であるのです。団塊世代でございますと、昭和40年から始まった景気、建設投資も毎年10%から20%伸びている時代でございましたし、団塊ジュニア世代のほうも、バブル景気のころがちょうど社会に出る時期ということで、その中で腕一本で稼げるということで建設の技能労働者、職人さんになったということも、この2つの高い山になっている影響なのかなと。十分分析できてはいないのですけれども、そんなこともいえるのではないかと思っております。
○鎌田座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○小倉委員 資料の6ページ目「建設市場の中長期予測」というのが書かれておりますが、この中で実際活字にもなっておりますが、「住宅投資については今後の世帯数の減少を勘案する必要がある」。こちらの実際の表を見ますと、民間投資、2014年度と例えば2025年度を比較すると、あまり数字として変わっていないわけです。もちろん、十数年後どういうふうになっているかというのは非常に難しいところであるわけですが、例えば住宅投資で申し上げますと、現在、住宅の長寿命化というのが施策として図られているということ。もう一つは、新築からリフォームに市場が大きくシフトしていくとなりますと、住宅投資は、どのように考えても減少していくというふうに考える必要があると思うのです。
そうすると、現状で出されている資料だと横ばいとなっていますので、楽観的な数字になってしまっているのかなと。その点をどういうふうにお考えになっているかというのをお聞きしたいのが一つ。
なぜこの話を今、させていただいたかと申し上げますと、10ページのところに国勢調査、先ほど来M字型の話が出ていますが、左官と大工については、国勢調査の職種単体で申し上げますと、今後最も減少するというふうに言われている職種の代表的なものになっております。大工で申し上げますと、2030年には、最悪の場合には現状より40%減少すると言われておりまして、そうすると、例えば住宅投資が横ばいで推移をするとなれば、いかに生産効率を上げたとしてもその4割分を埋めることはできませんので、極めて深刻な事態になるということも考えないといけない。
先ほど柴田委員が職種ごとにどれぐらいの必要数になるのかという話をされておりましたが、その前提になるのは、建設投資がどういうふうに動向していくのかということと、生産性の効率というのがありますので、ぜひその点について見解をお伺いしたいと思っております。
○鎌田座長 どうぞ。
○深澤理事 6ページの建設市場規模の予測でございますけれども、ここに書いてございます民間建設投資の中には民間の住宅と、それから民間の非住宅ということで民間の建築と民間の土木も入っているということでございます。その兼ね合いもあって民間建設投資はほぼ横ばいというような形になっているかと思います。
内訳で見ますと、私どもの考え方としては、民間の非住宅のほうは、今後の経済の動向によって、この前提、経済再生ケース、ベースラインケースも名目で申し上げると、中長期で3%以上、または1%半ばくらいの成長ということで見ておりますので、非住宅のほうは土木も含めて一定程度の推移をしていくだろうということで見ております。
住宅のほうにつきましては、先ほど長寿命化という話もございましたけれども、建ててから壊すまでの耐用年数が長くなっているというデータも入れてはおりますが、やはり新築戸数が世帯数の減少の影響が大きくて、かなり減っていくという予測で、足し算をして全体の民間建設投資ということになってございます。住宅のほうはある程度減っていくという予測にしてございます。
ただ、中長期的な経済成長率が楽観的と言われれば楽観的なのかもしれません。横ばいになったのは、民間の非住宅のほうがある程度効いているということかと思います。
そういった中で、10ページのほうで今後の大工さんの減少というのがかなり大きいというのは、2010年のグラフを見ても、今後高い山が減っていくのは間違いないと思います。今後高い年齢層の方がリタイアすることによって、かなり減っていくということはもう間違いないということかと思います。ただ、それに見合った住宅投資がどのくらいなのかとか、大工さんが今後必要とされる仕事ということも見ながら、将来予測というのはなかなか難しく、国がどこまでそこに絡むかという問題はありますけれども、将来どのくらいの仕事が必要かということも踏まえて、業種ごとの対応といったことも必要になるのかなと考えます。答えになっていないかもしれませんけれども、そんなふうに考えます。
○鎌田座長 ありがとうございました。
よろしければ、もうひと方ヒアリングの御予定がございますので、そちらのほうに移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
深澤理事につきましては、本当にありがとうございました。
それでは、引き続き長福室長に30分程度で御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○長福室長 ただいま御紹介いただきました国土交通省の建設市場整備課で労働資材対策室長をしております長福と申します。
本来であれば課長の屋敷という者が担当するはずで、本日はこの場で発表させていただくべきところでございますけれども、昨日付で人事異動がございまして、かわりに私のほうから説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
お手元の資料2ということでございまして、21単位の資料を用意させていただいております。
1ページ目が、先ほど建設経済研究所さんのほうからできた引き継ぎでございます。先ほど御質問がありました、投資額が4割減少しているが、許可業者数が2割ということでございますが、これは恐らく一番最初建設業、経営者の立場から見ると、人よりは、まずは機械のほうを保有からリースに変えていって、しのいでいったというのがあると思います。その中でパイがさらに減っていく中で、従来の従業員だった方々をいわゆる雇用という形から請負という形にシフトしていった部分があるのではないか。その結果、30人以下のような中小零細企業の建設業の割合がふえてきたのかなというのが、投資額と見合いと比較した建設業許可業者数の推移の違いなのかなと思っております。
同様に就業者数もこのような数字になっております。これについては詳細な分析はできておりませんけれども、恐らくバブル期、平成9年のときに、もう既に建設業の中では中年、中高年齢者の割合が非常に高かったような職種ではないかと思っております。そういう職種の方々は、同業他社で移ることはございますが、なかなか他業種に転職というのは難しい。同じ建設業で働く中で、パイの奪い合いの中で賃金の低下とか処遇の悪化が進んできている。そういう現状がデータの中にも示されているのかなというふうに推測しているところでございます。
2ページをごらんください。2ページも同じように建設経済研究所さんからの取り組みでございますが、補足させていただきますと、左側のグラフ、技能労働者の数でございます。平成21年の331万人から平成26年341万人と10万人ふえております。原因としてはいろんな要素があると思います。投資額そのものがふえてきたこと。東日本大震災ということで、建設業が一つの職種として地位が向上したような現象がある。そして、官民挙げての担い手確保・育成の取り組み。各建設業におかれましては、インターンシップということで、夏休みに就業体験をしていただくとか、現場見学会、出前講座、いろんな取り組みをさせていただいております。そういうさまざまな取り組みが功を奏したということもございまして、この5年間で建設技能労働者の数が10万人ふえたということでございます。
また、右側のグラフでございます。特に29歳以下の割合が年々減少しているというのが深刻な課題かと思っておりますけれども、平成25年から26年でございますと、10.2%から10.7%と若干改善の兆しも見えてきているということでございます。我々、これを「ラッパ」とか「ワニの口」と呼んでおりますが、ワニの口が閉じるように若者の入職促進を図るということが非常に大きな課題ではないかなと思っております。
3ページ目が昨年6月に可決、成立させていただきましたものでございます。品確法と建設業法・入札契約適正化法の一体改正、これを「担い手3法」と呼んでおりますが、その改正をさせていただいたところでございます。
ポイントは、御案内のとおり、品確法というのは公共工事の品質確保ということで、これまでは個別工事の品質を確保するために、例えば総合評価落札方式を積極的に導入していこうということを推進するための法律でございました。
ただ、品確法の改正のところの赤字にございますとおり、将来にわたる公共工事の品質確保とその担い手の中長期的な確保・育成というものが基本理念として追加されまして、その下にございますとおり、そのためには発注者として、単発の工事だけではなくて、将来にわたる工事の品質確保、その担い手の確保というものを中長期的に確保、育成するために、発注者としての責務が課されたということでございます。
具体的には、予定価格については適正にその時々の最新の単価で積算するとか、市町村におかれましては、低入札価格調査基準を適切に設定するとか、設計変更があったときには、それに適切に応じるというような責務等が設けられたところでございます。
これを基本方針、運用指針ということでだんだんブレークダウンしまして、本年4月から本格運用をしているところでございます。国と県のほうですと発注関係事務、しっかりしているところがございますけれども、特に市町村につきましては、発注体制のところは脆弱なところがあります。そういうところへの支援ということが大事かと思っております。
一つの最初の取り組みといたしましては、左下にございますとおり、入契法の改正の中の適正化指針の中に「歩切り」という表現があるかと思います。これは予定価格、例えば1億5,500万だったところを、ちょうどいいところで1億円に切るということでございますが、いわゆる歩切りということは厳に慎むべきということでございまして、特に市町村の首長さんのほうにも建設業のトップの方、また、我々のほうからも働きかけを行っておりまして、歩切りというのを根絶していこうというところからまずスタートしたということでございます。
4ページをごらんください。本来はA3の資料にすべきところでございましたけれども。ことしの5月に建設産業活性化会議ということで、国土交通省だけではなくて、建設業関係の5団体、建設経済研究所、学識経験者を踏まえまして、単に2020年だけではなくて、それ以降も見据えた中長期的な担い手確保の対策を取りまとめているところでございます。
一番上、四角で囲んでございますとおり、建設業におかれましては、高齢化等により技能労働者が大量に離職することが今後見込まれるだろう。将来にわたる社会資本の品質確保、そして適切な機能維持を図るためには、建設産業の将来を担う若者をいかにして入職させて、訓練させて、定着を促し、そして人材確保というのはやはり重要な課題ではないかということでございます。
ただ一方で、先ほど建設経済研究所のほうから労働力人口の減少という推計がございました。日本全体で見ますと、労働力人口の減少というのは避けられないと思っております。そういう中で、我が国の経済発展に資する社会資本を効率的に整備するには、人材確保と並びまして、先ほど議論もございましたとおり、生産性の向上というのが必要ではないかということでございます。
このため、まずは若者にとって魅力ある建設業を目指していこう。そのためには、処遇改善を中心として、若い人を中心とした担い手の確保、育成、訓練、定着という取り組みを強化するということがまず一点としてございます。
それと同時に、新技術、新工法、そして重層的な下請構造の改善など、建設生産システムそのものの生産性の向上に資するという取り組みを行っていかなければいけない。大きく分けて2つの柱を立てたところでございます。
具体的には、字が小さくて恐縮ですが、左側のところが「処遇改善を中心とする担い手の確保・育成」、右側が建設生産システムそのものの生産性を向上するための取り組みということでございます。
ポイントは、国土交通省の取り組みだけではなくて、業界団体の取り組みということもまとめて記載したというところでございます。この手の国土交通省が主催する会議というのは、どうしても行政がこれをやるべきということをうたわれていたところがこれまでの経緯でございますけれども、官民挙げてやっていくということで、業界団体として取り組むべき事項ということもしっかりと盛り込んだという形になっております。
詳細は、左側から項目だけ紹介させていただきます。
処遇改善の徹底ということでは、適切な賃金支払い、そして社会保険の加入を徹底していくことが必要ではないか。
また、ダンピング対策の強化、歩切りというのを根絶して、まず積算の段階でしっかりと予定価格を適切に組むということが必要ではないかということでございます。
また、建設業における休日の拡大ということで、今、御案内のとおり、土曜日はほとんど休みがとれていないという中で、若者を見ますと、学生時代、週休2日というのを前提に過ごした方々から見ると、週休2日を目指して、まずは4週6休とか、そういうものを実現していくことが必要ではないか。
そして、業界の方々とお話しすると、安定的・持続的な建設投資の見通しの確保ということでございます。特に今後も建設投資につきましては下がることがない、そういう見通しをしっかりと行政として示すということが非常に大事だということでございます。
また、若者の早期活躍の促進、教育訓練の充実強化ということで、例えば建設業の関係ですと、いろんな技術検定と資格がございます。できるだけ高校生の段階から資格を取れるような取り組みを行うとか、また、教育訓練の充実強化という目で見ますと、地元で採用され、建設業に入職した若者が地元でしっかりとした初期の教育訓練を受ける。そういう取り組みを各地域ごとにやっていくという取り組みを行っております。
そして、女性のさらなる活躍ということで、日建連のほうがきっかけでございますけれども、業界と行政を挙げて今後5年間で、女性の技術者、技能者それぞれを倍増していくための目標を定めまして、官民挙げた行動計画を作成したところでございます。
また、右側が「建設生産システムにおける生産性の向上」ということでございます。
まずは施工の標準化・省力化・効率化ということで、新技術、新工法をしっかりと活用していこうということ。そして何といっても適正な工期の設定、工程管理の円滑化ということで、現場にいる元請、専門工事業、それぞれがそれぞれの工程をしっかりと共有化して、工程について無駄がないような取り組みを行うという取り組みです。
そして、人材・資機材の効率的な活用のためには、施工時期の平準化ということでございます。4月-6月は工事量が少ない、そして年度末に工事量がふえていく。それをどうやってならしていくのかということが、逆に担い手確保、育成、定着ということにもつながる仕組みかと思っております。
公共工事におかれましては、債務負担行為等を活用いたしまして、できれば3月末までの工事、例えば川の工事ですと、出水期である6月まで延ばしていいとか、そういう取り組みを行っていたり、また、右側にございますとおり、技術や技能・経験等に応じた人材の配置ということで、現場配置技術者の効率的な活用ということを行っているところでございます。
そして、重層下請構造の改善ということで、どうしても建設産業の特性として下請構造が出てくるということは避けられないところでございますが、いわゆる行き過ぎた重層化を回避していこうということの取り組みとして、例えば日建連におかれましては、平成30年度までに可能な分野、今後5年間で2次以下という目標を立てているところでございます。
次は5ページでございます。骨太の方針のほうで建設関係、どのような記載があったかということでございます。
社会資本を支える技術者、技能労働者等が不足することなく、中長期的な担い手として役割を果たせますように、技術者、技能労働者等の処遇の改善、そして教育訓練を充実強化して、定着していくこと。そして、若者や女性の活躍を推進していくこと。それだけではなくて、新技術・新工法を積極的に導入していくとか、資材とか人材の効率的な活用という意味では、施工時期の平準化。そして、後ほど御説明いたしますけれども、各技能労働者の技能とか経験に応じた効率的な人員配置を可能にするためのITを使ったシステム。というような建設生産システムそのものの省力化・効率化ということを技能労働者の処遇改善とあわせて柱とし、政府全体の方針としても掲げられているところでございます。
6ページをごらんください。公共工事設計労務単価でございます。御案内のとおり、公共工事設計労務単価は、発注者のほうで労務費部分を積算するための基準ということでございます。平成9年から16年、連続で公共工事設計労務単価、減少し続けておりました。設計労務単価というのは、毎年10月ごろに全国16万人の方々を対象といたしまして、賃金台帳等を突合いたしまして、51職種ごとに金額をはじくということでございます。
平成24年から25年は15%、25年から26年は7%、26年から27年は4%ということで、それぞれ引き上げております。
その結果、上のほうにございますとおり、全国ですと1万6,678円ということで、26年2月比4.2%、24年度比からは28.5%、被災3県におかれましては、24年度比39.4%というような引き上げ措置を行わせていただいております。ただ、この数字は、平成9年の数字と比較しますと、右側にございますとおり、約87%という水準でございます。
7ページをごらんください。実際の厚生労働省さんのほうで行っております賃金構造基本統計調査に基づく職別工事業の賃金の比較でございます。
左側にございますとおり、製造業の男性生産労働者と職別工事業の男性生産労働者を比較しております。職別工事業の男性生産労働者というのが、参考の※印の一番下に小さく書いてございまして、恐縮でございますが、「大工・型枠・とび・鉄筋・左官・板金・塗装等」ということでございまして、いわゆる技能労働者の中の主要な部分はカバーしているのかなと思っております。
製造業と比べますと、約12%低い水準ということでございます。金額に直しますと50万近くということでございます。年間稼働率200日といたしますと、1日当たり2,500円上げていく取り組みが必要ということでございます。
一方で、伸び率という目で見ますと、製造業の男性生産年齢人口と比べまして、やはり高い伸びが示されているところでございます。設計労務単価を上げてやって、そして処遇を改善していくというところが水準のほうでもあらわれてきつつあるのかなと感じているところでございます。
8ページをごらんください。国土交通省といたしましても、技能労働者の処遇改善に向けた取り組みということで、さまざまな取り組みを行わせていただいております。
まずは「技能労働者への適切な水準の確保」ということで通知文を出させていただきましたし、それだけではなくて、設計労務単価、三度ほど引き上げさせていただいておりますけれども、そのたびごとに国土交通大臣みずから、副大臣、政務官のほうから建設業団体のトップの方々に適切な水準確保の要請を行ったり、社会保険の適切な加入促進ということをトップのほうからも要請させていただいております。
真ん中にございますとおり、業界団体のほうでも反応していただいております。おもだった団体といたしまして、日建連、全国建設業協会、全中建、建専連、それぞれ賃金の確保ということについて、しっかりと調査を行うとか、しっかりと上げていくということについての決議もなされているところでございます。
このような動きがどんどん加速化していくことによって、まずは技能労働者の賃金をいかにして向上させていくのかというところが課題ということでございます。
そして、賃金と同様に大事ということでございますが、9ページ、いわゆる社会保険の未加入対策でございます。一番下にございますとおり目標を定めております。平成24年からスタートした取り組みでございますが、実施後5年間、平成29年度を目途に、企業単位では建設許可業者の加入率を100%目指していこう。
そして、労働者単位では製造業相当、90%の加入状況を目指していこうということでございます。
では、なぜ建設業部局が社会保険未加入対策を行っているかということでございますが、「これにより」と掲げておりますが、まずは技能労働者の処遇を改善していく。そして、建設産業の持続的な発展に必要な人材、いわゆる若者を確保していくということでございます。先ほど説明がございましたとおり、社会保険に加入していなければ、ハローワークにも求人票を出せないというところもございます。また、我々も工業高校の先生方とお話をさせていただく機会がございますけれども、やはり社会保険に入っていないようなところというのは、まさに面接すらできない。そういうことは論外だと言われています。そういう見方も、若者が入っていくためには社会保険に加入というのを徹底していく必要があるということでございます。
もう一つが法定福利費。これを適切に負担する企業と負担しない企業の中で、負担しない企業であれば、それだけ身軽になりますので、競争上有利になってしまう。いわゆる正直者がばかを見ないような取り組みということでございます。それによって公平で健全な競争環境を構築していく。こういう目的から、建設業の部局としても社会保険未加入対策にしっかりと取り組んでいるところでございます。
具体的には、上のほうにございますとおり、行政によるチェック・指導ということで、24年7月からは建設業、公共工事に参加する元請の方々は経営事項審査を受けるという形になっておりますけれども、それの減点幅を、これまでは社会保険3保険入っていなければマイナス60点だったのを120点に拡大するとか、また、右に移りまして、24年11月からは行政部局として建設業者に接触する機会、5年に1回の許可の時期、そして経営事項審査のときに加入状況等の確認をいたしまして、指導する。
それに加えまして、立入検査も随時行いまして、加入状況の確認、そして指導に従わない場合については保険当局に通報ということでございます。
具体的には、一度許可とか経審のときに企業単位で未加入ということがわかりましたら、建設業許可部局のほうで指導させていただきます。
4カ月たってもう一度確認させていただいて、まだ未加入ということであれば、2回目の指導をさせていただきます。それで2カ月後、まだ未加入ということであれば、今度は社会保険の保険当局のほうに通報させていただいて、そちらのほうで指導していただく。
保険当局のほうでもなかなか加入というのができないということであれば、逆に建設業許可部局のところに戻ってきまして、今度は行政処分的な扱いをする。そういうルールを構築したところでございます。
また、直轄工事におきましても、平成27年4月からは下請金額の総額が3,000万以上。これまでは、平成26年8月からは下請金額の総額が3,000万以上の工事については、1次下請と元請は社会保険に入っている企業だけという限定をつけております。
また、27年8月からは下請金額3,000万という上限を取っ払いまして、全ての工事についても1次下請、元請は当然でございますけれども、企業単位では社会保険に入った企業に限定するという措置を施行していこうということでございます。
また、単に社会保険への加入促進だけではなくて、原資となる法定福利費が発注者から元請、1次下請、2次下請のほうに流れていくという取り組みが重要でございます。我々といたしましては、真ん中にございますとおり、下請の指導ということで、下請指導ガイドラインをつくらせていただいております。特に27年4月からは、現在、専門工事業団体のほうには、法定福利費、これまでトン幾ら、平米幾らと積算していたものを、その部分の労務費部分を切り出して、法定福利費部分を内訳して明示するということを見積書として元請のほうに提出していただきたいという取り組みを行っておりましたけれども、これをさらに加速化させるために、本年4月からは、逆に法定福利費を内訳明示した見積書の提出を、元請のほうから下請企業に対する見積条件のほうに明示してくれということでございます。したがいまして、下から上のほうに法定福利費の内訳明示を出すという取り組みを、今度は上から下ということで、元請のほうからの注文書・請書の段階から見積条件として明示するということをガイドラインとしてうたっているところでございます。
また、右側にございます法定福利費の確保ということで、今、申し上げたような標準見積書を活用いたしまして、法定福利費、トン幾ら、平米単価というものから労務費部分を切り出して内訳として明示するという取り組みを行っているところでございます。
では、実際数字的にどうなっているかというのが10ページでございます。全産業と比較いたしまして、建設業だけ異常な右肩の伸びをしているということになっております。上のほうでは公共工事の労務費調査ということで、先ほど労務単価を積算するための調査ということを10月に行わせていただいております。したがいまして、公共工事を受注している建設会社と、そこの施工体制の中で働いている労働者ということでございます。民間オンリーの現場の数字はつかめておりませんので、民間のほうではまた低い数字が出ているのが実態かと思います。
ただし、左側で見ますと企業別、右側が労働者別でございますけれども、いずれもこの4回の調査で伸びております。ただし、先ほど議論がございましたとおり、地域差、次数別で差があるというのも実態でございます。
特に企業別の3保険の加入割合を見ますと、一番下の緑色が関東でございます。関東のほうは伸びておりますが、企業単位でも84.3%ということで、地方部と比べますと差が大きいのかなということでございます。
それを次数別で見ますと、元請から1次、2次、3次と行くにつれて加入の割合が低い。低いながらも上っているということでございます。
右側が労働者別の数字でございます。これも全国の企業別と同じような傾向がございます。一番高いのが紫で、北海道ないし北陸です。低いところで見ますと、緑色でございますので、関東、そして近畿というような大都市圏のところが低い状況なっております。
一方で、次数別で見ても、企業別と同じような傾向が出ているということでございます。引き続き社会保険の加入促進に向けた取り組みを推進していきたいと思っております。
次が11ページでございます。外国人というものについて発表させていただきます。御案内のとおり、技能実習制度につきましては、国際貢献を図るということで、実際入国してから3年間技能実習をさせていただきまして、3年たった後は帰国いただくというのが入管法に基づく技能実習制度の原則的な形でございます。
ただし、昨年の4月に閣僚会議で緊急措置ということで取りまとめさせていただきました。考え方といたしましては、復興需要のさらなる加速を図りながら、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催による関連施設の施設整備によります当面の一時的な建設市場が出てくるだろう。そういうものへしっかりと対応するために必要となる技能労働者については、まずは就労環境の改善、教育の充実化などによって、まず国内での確保に最大限努めることが基本ということでございますが、その上で、オリンピック・パラリンピック大会までの当面の一時的な建設需要の増大に対応するための緊急かつ時限的な措置ということで、国内人材の確保・育成とあわせまして、即戦力となり得る外国人材、いわゆる技能実習の3年間を修了した方々の活用促進を図るということを制度化したものでございます。
御案内のとおり、左のほうに「技能実習の流れ」ということで、原則3年で御帰国いただくということでございますが、新たな特別な仕組みということで、これまでは「技能実習生」だったのを「特定活動」という別の活動の目的に変更いたしまして、それによりまして、これまで3年間だったのを5年ということで、もう2年延長できるとか、一旦帰国された方でも最大もう3年引き続き日本で働くことができるという仕組みをつくったところでございます。
ただし、そのためには、外国人技能実習生を迎えますと、しっかりとした監理体制が必要だということでございます。現在の技能実習制度ですと、送り出し機関と監理団体がございまして、それを巡回指導する技能実習制度推進事業実施機関というものがございますけれども、それに加えまして、新たな特別の監理体制を構築しているところでございます。
具体的には赤の四角で囲んでございますけれども、まずは関係者による協議会を設置すること。そして、受け皿となる監理団体、いわゆる外国人技能実習生を受け入れる団体でございますが、それが過去5年間、入管法関係の処分を受けていないなどの要件を付しました優良な監理団体に限定する。そして、元請企業、国土交通の許可部局のほうからも定期的に巡回指導とか立入検査を行っていくということでございます。当然受入企業についても優良な企業ということで、過去5年間の実績がないとか、大事な点といたしましては賃金です。賃金についても、技能実習の段階として、やはり低い賃金ということでございますが、特定活動という形で行わせる外国人技能実習生については、同じ立場の日本人と同等の賃金ということで、具体的には入社3年目、4年目ぐらいの日本人と比較して同等以上の賃金を支払うということを条件にしているところでございます。
このように、外国人技能実習については、まずは国内人材確保という中で、当面の一時的な需要のための緊急的な措置を講じた。そのためには、外国人技能実習生に対する問題ということをしっかりと確保するために、特別な監理体制ということで、しっかりとチェックしていく体制をつくったということでございます。
12ページがそのスケジュールでございます。昨年の4月から閣僚会議等をやっておりまして、いろんなガイドラインを作成いたしまして、本年4月から本措置の対象となる外国人材の受け入れを開始したところでございます。
現在、鉄筋とコンクリート圧送ということで、15人ぐらいの方々が、継続というよりかは、一度帰国されて再入国。受け入れた日本企業の職長さん等が、この方はすばらしいから引き続きということで、一度帰国されてからという場合がどうも多いようでございます。監理団体の計画の数もふえておりますので、今後この数は徐々にふえていくものではないかと考えているところでございます。
13ページをごらんください。先ほどRICEさんのほうからもございました、本年3月に日建連が作成した長期ビジョンでございます。その中で、真ん中にございますとおり、2025年、今後10年間の世代交代の目標という数字を示しております。技能労働者につきましては、団塊世代の大量離職等によりまして、今後10年間で約130万人減少するのではないかという予測でございます。ただ一方で、建設投資はほぼ同水準ということでございます。
そうしますと、今後は、まず130万人につきましては、機械化等生産性の向上、この努力によって35万人をカバーしていこうと。では、残り95万人をどうするかというところでございますが、まずは若者を中心とした新規入職者で90万人、女性ということで20万人、こういう目標をつくっているところでございます。それに向けたさまざまな道筋ということを今、日建連の中で一つの目標、将来推計ということを掲げたところでございます。
14ページをごらんください。女性技術者・技能者を今後5年間で官民挙げて倍増していこうという計画でございます。平成26年度、女性の技能労働者が約9万人、女性の技術者が1万人ということでございますが、これを今後5年間かけて、技能労働者については18万人、技術者につきましては2万人ということを官民挙げて推進していくということでございます。
では、具体的にどんな取り組みを行っているかということでございます。15ページをごらんください。「建設業における女性の更なる活躍に向けて」ということで、まずは官民が協働して「もっと女性が活躍できる行動計画」を策定しております。
具体的に取り組んでいるものでございます。国土交通省の直轄工事については、管理技術者を女性に限定するという取り組みもモデル的に行っております。
また、女性を応援するためのポータルサイトを開設したり、日建連のほうでは「なでしこ工事チーム」ということで、女性によるチームをつくっていただく。
また、その下にございますとおり、マニュアルを作成して働きやすい職場を目指すということでございます。
私も女性の技術者、技能労働者のヒアリングをさせていただきましたけれども、お伺いして必ず出てくるのがトイレと更衣室でございます。育児休暇とか休みの問題というのもございますけれども、ハード的な部分ということで、まずは仮設トイレ、そして更衣所というところが非常に大事なのかなということでございます。
今後官民挙げてさまざまな予算措置、広報、先進事例の水平展開等を行っていきたいと思っております。
16ページをごらんください。いわゆる新技術、新工法の導入を今後図っていこうということでございます。これまでも施工の省力化・効率化ということで、例えば災害の危険箇所につきましては無人化施工ということで、建設機械、人が乗らなくてもできるような工法を選択したり、また、GPSを用いまして建設機械を自動制御するような情報というのもつくっているところでございます。
また、今後の取り組み、これからということでございますけれども、施工そのものを省力化・効率化していくということでございます。まずは無人化施工、情報化施工を拡大していくとか、また、プレキャストと申しまして、現場のほうで鉄筋を組んで、型枠をはめて、コンクリートを流し込むというのではなくて、工場のほうでコンクリート二次製品を作製いたしまして、現場のほうでは据えつけるだけというような取り組みを進めていくとか、そして何よりもシステムの見える化というのが非常に大事というふうに聞いております。具体的には、ビルのほうではBIM、ビルインフォメーション・マネジメントが進んでおりますけれども、土木分野でもCIMということで、ガイドラインを作成していっておるということでございます。これによって設計のデータとかも見える化いたしまして、発注、積算、工事管理、工事の施工、維持管理につきまして、劣化の状況とかを見ることによって関係者間で合意形成できるような仕組みを行うということでございます。
CIMの導入・活用促進というのを具体的には17ページのほうに記載させていただいております。調査、設計、施工、維持管理、それぞれの段階で三次元的にモデルを作成いたしまして、その情報を関係者で共有するということでございます。それによりまして、調査、設計の段階での合意形成のスピードアップ化、そして意思決定の速さ、そして設計の段階でも設計変更が容易になるような算出的な根拠を出すとか、施工の中でも、できるだけ現場の中での工事の様子というのが施工者全体でわかるような取り組み。そして、維持管理の中でもそれぞれの構造物、どのぐらいたっているのかということで、定期的なメンテナンスをするための仕掛けにするということでございます。
これからということでございますけれども、そういう仕組みをつくり、建設生産システムそのものをよくしていくことによって省力化、効率化を図っていくということでございます。
18ページをごらんください。これもこれからの仕組みということでございます。先ほど建設の技術を活用いたしまして施工そのものを効率化していくとか、省力化していくという取り組みについて御紹介させていただきましたが、今度は技能労働者のほうにつきましても、「就労履歴管理システム」というものを今後官民挙げて構築していこうということでございます。
御案内のとおり、就労管理システムというのは、民間企業、元請企業のほうでも労務管理のシステム、仕組みがございます。各作業員のほうのいろんな資格とか生年月日という本人情報を作成いたしまして、それによりまして、施工体制台帳とか作業員名簿、そういうものを自動的に作成するという仕組みがございます。それによって、現場に入っている労働者を元請さんのほうである程度把握できるという仕組みがございます。
ただし、現状ですと建設現場ごとの記録でございまして、技能労働者はそれぞれ退職いたしまして、また別のところで登録し直さなければいけないということで、これまでの技能労働者にとって、どの現場で働いていたという工事履歴そのものが蓄積されないという課題もございます。
また、元請側から見ますと、1次下請の方々は作業員名簿に記載してありますけれども、実際現場に入る労働者の数よりも多目に記載しているのが実態でございます。実際に入った方々の就労履歴、実際誰が何時に入って、誰が何時に出たかというような就労管理というのを把握することができないという課題がございます。これに対応するために、建設業全体で共通に使用できる番号を振っていこう。カードを配るかどうかは別問題として、まず建設業全体としてID番号を振っていこうということでございます。それによりまして、労働者単位で番号ができますので、この就労履歴システムが構築されますと、まずは技能労働者の本人確認とか資格のチェックが可能になります。
具体的には、この現場で働いている労働安全衛生法上の免許とか、技能講習を受けているとか、また、技能労働者の力量ということで見ますと、2級ではなくて1級の技能士を持っている、また、登録基幹技能士を持っている、そういうのが可能になります。
また、実際に入退場管理を行いますので、それによって、労働者から見ると現場経験のデータの蓄積が可能なります。この現場で働いたというのが蓄積できますので、例えば同業他社に再就職する際には、私はこの現場で働いていたというのがわかるといった形になります。
また、各システムの情報から現場経験データを統合することによって、技能労働者の技能と経験の見える化が実現いたします。それによって、どの労働者がどの会社に所属して、どういう立場でいつ現場に入って、いつ出たかというデータが蓄積されます。それをやりますと、処遇に応じた職人さんの適正な評価にもつながるという形にしてございます。
また、元請側から見ますと、技能や経験に応じてどの現場に何日間、どういう資格で働いていた人がいるのか、いないのかというのがわかります。そうなりますと、例えば支店間での人員の効率的な配置というのも可能になる。または、この工事に必要なスペシャルな資格を持っている人を検索するということもできます。
こういう仕組みをこれから官民挙げて構築していこうということでございます。目的は、就労管理システムということではございますけれども、まずは職人さん、技能労働者の技能と経験というものがしっかりと見える形になって蓄積されて、実際賃金ということが代表かと思いますが、それが処遇改善につながっていく。そういう仕掛けをこれからつくっていこうということでございます。
きょうの昼過ぎにまずは日本建設業連合会のほうで第1回目の会議、キックオフ会議が開かれるということでございます。
国土交通省のほうでも業界団体を挙げて8月の上旬には、協議会ではなくてコンソーシアムということで、なぜ「コンソーシアム」と名づけたかというと、何をするかを議論するのではなくて、できるために何をするかということを議論するということで、コンソーシアムという形で議論を進めていきたいと思っております。
このように、先ほど申しましたような施工そのものを効率化する仕組み、それと生産性の向上、そして職人さんの処遇改善とあわせまして、技能労働者の経験とか技能というのがしっかりと見える形にしまして、適切な人員配置にも資する。こういう仕組みをこれから官民が連携してつくっていきたいということでございます。
最後になりましたけれども、19ページに新聞記事を掲載させていただいております。これは実際アパレルで働いていた方が土木の型枠のほうに22歳で入職したということでございます。この後に人材不足というのがどうしても出てくるところもございます。ただ、建設投資がふえているということがございまして、これから数年間、非常にチャンスの時期だと思っております。新聞記事、いろいろ書いてございますけれども、やはり社会保険に入っていたというところが入職のポイントだったと述べられております。
20ページでございます。全産業の営業利益率は、ここ数年上がっております。この上がった部分を将来の投資。将来の投資というのは、建設機械を確保するという部分がございますけれども、将来的な人材というものについていかに投資していくかということの非常にチャンスの時期だというふうに我々としては認識しております。
21ページにございますとおり、実際に技能労働者の確保・育成に向けた取り組みというのが全国で立ち上がりつつございます。
上3つを御紹介させていただきますと、岐阜県でございます。工業高校を卒業して建設会社に就職した方々が母校に戻りまして、就職相談、このようなOBサポーター制度。
群馬県のほうですと、緩い連携ということで、これは「ぐんケンくん」と言うのですけれども、そういうマスコットキャラクターを使ったイメージアップの作戦。そして、漫画を使って建設産業をわかりやすく解説するような冊子の作成。
その下は、大林組さんが林友会さんと共同して教育訓練校を開設ということでございます。
同じように、スーパーゼネコン5社のうち、大林組以外でもう二社、直接自分たちの協力会の職人さんを自前で教育訓練する。こういう取り組みがここ一、二年進んでおります。ほかの大手ゼネコンのほうでも広がりつつある取り組みなのかなというふうに思っているところでございます。
また、右下にございますとおり、技能労働者を訓練する総本山でございます富士教育訓練センターにつきましても、再来年度の4月開校を目指しまして、建てかえ工事が進められております。本年9月16日、起工式を迎え、29年4月の開校に向けた取り組みがスタートするということでございます。
雑駁でございますけれども、私からの説明は以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。
時間がそうたくさんはないのですが、十数分ほど質疑をしたいと思いますので、何か御質問があったら、自由にお願いいたします。どうぞ。
○柴田委員 18ページのところにある就労履歴管理システムは、以前にもちょっとお話を伺ったことがあって、これはすごくいいなと前々から思っていました。一方、建設業退職金共済をもらわない人の比率がすごく多かったりするらしいのですね。現住所がわからないので、受給資格がある人にたどり着かないらしい。そういうのにもきっと生かせるのだなと思っているのが一つ。
それから、右側の箱の中に入っている「労働者の適正な評価と処遇につながる」というところは非常に重要なところで、ひょっとしたらそうなっているのかもしれないのですけれども、例えば2次とか3次の下請の人で日給月給で働いている人は、技能がすごく高い人でも高くない人でも同じ単価なのか、それとも技能が高い人はそれなりにもらえているかというところが結構大きいなと前々からちょっと疑問に思っていました。技能が高い人は、製造業でもほかの産業でもそうですが、能力給とか実績給みたいな形で、それだけ生産性を上げたらその分だけお金がもらえて。一人親方だとそういうことがあるのかどうかわからないのですが、技能が高ければ高収入になるのだという例示があれば、品質の高いものに対するインセンティブが湧くと思うのです。
ところが、単一の日給月給で、技能が高くても、金額は変わらないのだったらと。現場のことがよくわからないのですけれども、もしそうだとしたらやりがいも、技能を磨く意欲もうせてしまう。高技能の人にはたくさんのお金が与えられて、スーパー技能者みたいな者に対する憧れがあって切磋琢磨していくみたいな姿が美しいなと思っているのです。
昔、テレビ番組で見たのですが、世界的に有名な左官がいて、その人は芸術の域に達しているから、海外の豪邸の壁塗りを依頼される。その左官屋さんは、地元の土で、他ではできないような艶の壁を塗って、絶賛されていました。技能者の評価が社会的に上がるという工夫もすごく必要だなと。これを見ながら、そういうものに対して就労履歴管理システムが非常にうまくいくといいなと思いました。
○長福室長 ありがとうございます。
確かに建退共、ごらんのとおり、民間工事のほうですと、なかなか普及が進んでいないというのがございます。このシステムが全現場に普及して、全ての労働者、何時に入って何時に出たかというのが蓄積されないとなかなか。建退共というところとの連携をどうするかという問題はございますけれども、可能性としてはあり得ると思っています。
○柴田委員 これは公共事業のところだけでやるという感じですか。
○長福室長 いや、民間工事も含めてやりますが、実際は今の建退共制度、そういう実態があるということでございます。
また、職人さんの処遇改善につながるというのは、まさにそのとおりだと思っています。先ほど私のほうから、男性の生産労働者と比べて年間ですと50万。これは日平均にすると2,500円となります。日建連のほうでも優良技能者評価制度というのがございまして、いわゆるスーパー職長であれば日給3,000円、職長さんの中で特に優秀な方であれば2,000円ということで、それによって460万円ですか、男性生産労働者並みの賃金を出していこうという取り組みを行っています。
このシステムと連携する余地はあると思っておりまして、どの職人がどういう立場で、何時何分に入って、何分に出て、トータル何日間なのかということがわかりますので、そういう優秀な職人さんを把握するための一つの物差しとしても十分機能し得るものなのではないかと思っております。
○鎌田座長 これは作業員で、一人親方とか自営の方というのは対象になるのですか。
○長福室長 なるし、ならないといけないと思っています。
○鎌田座長 そうすると、当然身分もどこかでチェックするということになりますね。
○長福室長 そうですね。できるかどうか検討ではございますけれども、例えばスーパーゼネコンさんのほうで、先ほど御紹介がございましたとおり、新規入場者の際に一人親方なのか、そうでないかということをチェックするという仕組みになっています。
それをあらかじめ登録という形にしますと、その辺のチェックをしなくて済みまして、逆に一人親方であれば、労災保険の特別加入に入っているか、入っていないかというところが事前にわかる。そういう区分というのも主の仕組みになるかなと思っております。
○鎌田座長 それは随分画期的な制度のような気がしますけれども。
○柴田委員 なかなか壁が厚いのですね。
○土屋委員 壁が厚いのです。
○柴田委員 具体的にはどんな壁が。
○土屋委員 結局、維持管理する、データを打ち込む人間、どこがやるかという話になってしまうわけですよ。今、例えば除染の場合ですと中央、要するに、放射線管理部、あそこがあるから、こうやって持っていけば、全部またリターンできるよと。そういうやつができれば、元請としては、来た人に対しては、全部入力してデータを送っていけば、またリターンしてくれる。ただ、今度は業者さんがみんなそういうのをちゃんとやってくれるかどうか。例えば健康診断を受けた、社会保険に入ったとか、みんな入っていって、全てこれを満足しないと、きれいに機能ができていかない。そうすると、マンパワーをかけてやらなければだめですから。これを日建連で今、始めますから、また徐々にふえて、伸びていくという状況かと思います。
○鎌田座長 いわゆる実施めどというか、見通しみたいなのはまだ全然立っていないのですか。
○長福室長 そうですね。まさにきょう事務的なものを含めて。
○福田委員 2年後ぐらいをめどにやっていきたいのですけどね。でも、いろんな方面からいろんな話があって難しい。一つは個人情報がこれで漏れるのではないか、そういうことを言う人もいるので、簡単にすぐいくのかなと思います。どこまで情報を入れるのかなというのが一つ大きな問題。履歴だけだったらいいのだけれども、いろんなものを入れたいとなると大変かな。
例えば国立競技場が来年着工するにしても、例えばいろんな縛りをしたい。一番怖がっているのは、テロ対策だと思うのです。完成前に爆破されてしまったりとか。そうすると、そういう人を締め出したいというか、そういう部分もあるので、そういうのも入れていくとなると、なかなか難しい部分もあるのかなと。
○柴田委員 テロ対策のためにIDカードで。
○福田委員 入場管理して。ただ、犯罪履歴とかそういうのも入れたほうがいいとか、病歴も入れたほうがいいとかいうことを言う人もいるわけです。そうすると、なかなか難しい部分も出てくるかなと。
○鎌田座長 勝野委員、どうぞ。
○勝野委員 この就労履歴は、私たちも非常に大切な取り組みだというふうに認識しておりまして、そういう意味で、付番をする以上はカードを発行するという形になるかと思うのですけれども、その際、住宅なり民間を含めて、現場従事者がカードを発行、申請できるインセンティブといいましょうか、直接的なインセンティブを何か付与していかないと、カード発行が住宅なり民間を含めて広がっていかないなと思っておりまして、そういう点からも、先ほど柴田先生から出された建退共等についても重要なインセンティブになると理解しておりますので、ぜひそういった取り組みをお願いしたいというのが一つ。
もう一つは、今、福田さんがおっしゃいましたが、そういう側面が出てくる懸念というのはあるかと思うのですけれども、労働者のほうからすると、「管理システム」という名称を使われると、どうしてもそういうイメージがつきまとうのです。ですから、このシステムの基本的な目的は、労働者の適正な評価と処遇のためにというところをまず第一に考えていただきたいと思います。そういう意味で、名称等もぜひ考慮をお願いしたいと思います。
○長福室長 御意見ありがとうございます。
これからの制度ということで、そもそもカードが必要なのかどうかとか、カードにかわって生体認証という形であれば、カードは要らなくなると思いますが、では、本人を登録する際に指紋までとるのか。それによって本当に番号を振れるのか。そういう費用対効果と、あとは普及です。そういうものを目指して、番号は振りますが、それを担保する手段、どういうのができるのか。
例えばイギリスのテスト、職人さんにカードを配っていますが、NVQという国家資格は9段階で、一番上がプラチナで、一番下は現場作業員に赤と。クレジットカードみたいにだんだんグレードが上がっていくようなこと、それが一つのステータスになっている。そのカードの色によって処遇も随分違ってくる。そういう仕組みもございますので、参考にさせていただきたいと思っております。
また、上から目線な名前だということ、そういうことを言われましたので、まさに目的は労働者処遇改善、それにつながるような親しみのある名前を検討していきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 これから御議論されると思うのですが、先ほど誰が管理し、「管理」という言葉はよくないかもしれないけれども、コストを負担するのかということで、例えば賃金台帳とかさまざまな問題、いわゆる法令上の義務づけが行われた上でやっているので、そういったところがはっきりしているのですが、これは、いわゆる法令上の義務づけとか、そういうことも含めて御議論されようとしているのでしょうか。それともいわゆるシステムとして、要するに、現場での、便利だよねという感覚でやろうとしているのか。
○長福室長 まず、ニーズです。どんな情報を入れるのか。それを管理する主体。国が認定した一主体、単一な主体ということを想定しておりますけれども、どんな情報を入れて、誰が管理するのか。個人情報との関係をどうするか。それによって、法律というのはいじる必要があるのか、ないのか、そんな議論が今後出てくる可能性はあると思いますが、基本は、今ある既存の仕組みということをいかにして効率的に統合して、市場原理を活用しながら、できるだけ安価な仕組みをつくっていくというのが基本ではないかなと思っております。
○鎌田座長 わかりました。
時間が来たので、本当はお聞きしたいことがたくさんあるのですけれども、そのほかお一人ぐらい、どうですか。鈴木さん、どうぞ。
○鈴木委員 社会保険未加入対策、国交省さんがかなり強力に出されて、日建連、全建もそれに対する推進要綱というのを出して、各社、かなり強力に取り組んで、いつまでにという期限を決めてやっているのですが、では、次、若年者が入職、定着するのはどうしたらいいのと。先ほど室長がおっしゃったように、やはり賃金と休日だと思うのです。その辺を、いろいろ試行工事とか、設計労務単価を上げていただいて、いろいろあると思うのですけれども、そこを今度どう強力に推進していくか。根本的にやるのは、重層下請を解消しなければなかなか難しいというのはわかるのですが、国交省の室長として、次、賃金がちゃんと払えているの、休日がとれているの、試行工事でなくて、それをいつまでに、この賃金だけ払わなければいけないよとか、そういう強力なあれをお出しになるお考えは、国交省さんとしてはあるのですか。
○長福室長 非常に難しい質問をいただきまして、ありがとうございます。日建連さんのほうで賃金については40代で600万、そういう目標を立てています。また、社会保険未加入対策については、昨年の12月、要綱をつくっていただいて、あれが相当きいていて、現場のほうでも本年4月からは、法定福利費を内訳明示した見積書を出すだけではなくて、実際その金が流れ始めているという話も伺っております。そういうのを強力に推進していくことがまず大事なのかと。
賃金の問題と休日の問題は、構造的な問題とリンクしております。学校の先生から話を聞くと、賃金というのは大事だけれども、安定したものが必要だということのようです。また、休日のほうは賃金より重要な要素らしくて、最低限4週6休というのが大事だと。とはいっても、現状ですと日給月給制という感じになる。ただ、日給月給制、そして労働者の働き方として、自分のところで雇って、資格を取って、独立させて専属的に使う。そういうビジネススタイルは、否定はしません。これからもビジネススタイルとしてあり得ると思います。そういう中で、一方で、社会保険へ入って、社員として迎え入れた中で、しっかりと雇用体制を維持していく。そういういろんなビジネススタイルのやり方があるかと思います。
どれがいいのかというのは、多分解はないと思いますけれども、御存じのとおり、そのための目的は、生産性を向上することと重層下請構造を改善していくというところの取り組みとセット、いわゆるパッケージでやっていかなければいけない施策ではないかなと思っております。
中途半端な回答でございますけれども、官民挙げてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
○鎌田座長 どうぞ。
○広畑雇用開発部長 今後どう育てていくのかということで、我々もハローワークを通じていろんなことをやっていまして、求人票を書いていただくときに、今までほとんど求人票を出したことがない人が来るのですが、社会保険加入は必須と。それから、雇用管理改善と難しく言っても、多分親方はわからないでしょうから、最低限の休みはどうなっているのということと、あとは10年たったらどうなるのと。例えば職長さんになれるのかとか、それぐらいはせめて求人票に書けるようにしていただけませんかというような指導をしていこうということで、いろいろ国土交通省とも打ち合わせをしているのですけれども、業界団体にお話をするときにも、最低限それぐらいは入れていただかないと新卒を採れませんよという運動をしていこうかなと。今もやっておるところです。ちょっと紹介まで。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。
私の進行がうまくなくて、既に予定時間に達しておりました。
本日の議題は以上でございますが、今後のスケジュールについて御相談をしたいと思います。前回の委員会で承認を得ましたけれども、スケジュールによりますと、次回、次々回においては業界団体と労働組合からのヒアリングとなっております。使用者側委員からは、業界団体からのヒアリング対象団体について御推薦、御意見がありますでしょう。ちなみに、5年前は、業界団体として日本建設業団体連合会と建設産業専門団体連合会から御推薦がありました。また、労働者側団体としては日本建設産業職員労働組合協議会、建設連合、全国建設労働組合総連合から御意見を伺っているということでございますが、このような形で進めてよろしいでしょうか。これについて何か御意見ございますか。どうぞ。
○土屋委員 全国建設業協会は2万社持っていて、支部があるので、ここからもぜひ聞いていただけませんか。専門性、これもいいと思うのですよ。あと、やはり全建さんを入れていただいたほうが間違いないかなと思いますので。
○鎌田座長 そのようなことで推薦をいただいたということで、では、次回の業界団体からのヒアリングにつきましては、日本建設業団体連合会、建設産業専門団体連合会と全国建設業協会、次々回の労働組合からのヒアリングにつきましては、日本建設産業職員労働組合協議会、日本基幹産業労働組合連合会と全国建設労働組合総連合会から御説明をいただくというふうに予定にしておりますが、このようなことでよろしいでしょうか。何かありますか。
○勝野委員 労働側は次々回ですね。
○鎌田座長 組合のほうは次々回ですね。次回は業界ですけれども。
○福田委員 ちょっと日程的なこともあるので、そちらのほうは山本常務に話していただこうかなと思っていますけれども、ただ、今までの話とかなりダブる部分、例えば長期ビジョンの話となると、ダブる感じもあるので、その辺は了解してもらえればいいかなと思うのですが。また同じ話かよなどと言われてしまったらあれかなと思って。
○鎌田座長 事務局と御相談いただきながら進めていただきたいと思いますが、一応ざっくりと次回と次々回についてはこういうようなことでよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○鎌田座長 では、そのように御協力のほどお願いいたしたいと思います。
それでは、本日の委員会はこれで終了いたします。
最後に、本日の会議に関する議事録の署名委員につきましては、労働者代表は時枝委員、使用者代表は土屋委員とさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日は、どうもありがとうございました。また、長福さんもどうもありがとうございました。
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