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2015年8月19日 第5回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成27年8月19日(水)9:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

委員

永井部会長 内山部会長代理 斎藤委員 祖父江委員 花井委員 深見委員 福井委員 藤川委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立がん研究センターの中期目標期間実績評価について
(2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの中期目標期間実績評価について
(3)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの中期目標期間実績評価について
(4)その他

○配布資料

【国立がん研究センター】
資料1-1 中期目標期間実績評価書(案)
資料1-2 中期目標期間実績評価説明資料
【国立精神・神経医療研究センター】
資料2-1 中期目標期間実績評価書(案)
資料2-2 中期目標期間実績評価説明資料
【国立長寿医療研究センター】
資料3-1 中期目標期間実績評価書(案)
資料3-2 中期目標期間実績評価説明資料

○議事

 

○医政局医療経営支援課長補佐

 それでは、皆さんおそろいですので、ただいまから「第5回高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。

 本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。

 まず最初に資料の確認をいたします。

 がん研究センター、精神・神経医療研究センター、長寿医療研究センター、この3センターの実績評価書、それと評価説明資料というのがセットで3センター、1-1~3-2までお配りしております。よろしいでしょうか。

 それでは、永井部会長、よろしくお願いいたします。

○永井部会長

 それでは、国立がん研究センターの第1期中期目標期間実施評価について御議論をお願いいたします。評価項目の1-1~4-1に係る業務実績及び自己評価について、法人から御説明をいただき、その後、御議論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長

 それでは、最初に理事長の堀田から、アウトラインについてお話をさせていただきます。

 5年前に独法化いたしまして、国から非公務員型の独立行政法人に移行しました。この移行当時、政治主導ということでいろいろな大きな動きがございました。その中で、トップダウンのガバナンスというのを非常に強調するということがありまして、官僚主導から政治主導という動きの中で、厚労省とのパイプが切れた形でスタートしたという少し変わった歴史をたどってございます。

 その中で、いろいろな必要な改革を進めてきたわけであります。その中で組織や人事の体制を整えて、この5年間、いろいろな紆余曲折はありましたが、今日に至ったわけでございます。この5年間につきまして、自己評価を全体として考えてみますと、評価軸が昨年から少し変わってございます。それも踏まえて研究・開発に関する事項につきましては、120%という数値目標ではなくて、どちらかといえば世界あるいは日本の中でどのようなインパクトを与えるような業績を出してきたかということが主軸になると考えております。その点で、研究・開発につきまして、後で詳細は紹介いたしますけれども、Sとつけさせていただきました。

 医療の提供につきましては、日常診療の質の向上ということが基本でございますので、特段に何か量的に物すごい成果を拡大するということではありませんので、その辺は私どもとしてはAという判断にさせていただきました。

 一方、人材育成あるいは均てん化・情報発信、政策提言といったところにつきましては、情報センターを中心に国の委託を受けまして、国ががん対策を行うものを委託を受けてやらせていただいているということで、十分な成果を上げたものと理解してございます。

 効率的な業務運営につきましては、そもそも独立行政法人は営利企業ではありませんので、利潤を目標としているわけではなくて、収支相償ということを目標に、そのために必要な投資も行いつつ、経常収支100%を目標とするという本来の姿を追求してまいりました。そういった意味では、120%という評価基準は、本来の独法の趣旨とは反する基準だと考えてございます。もし、そのようにいたしますと、研究環境の整備など適切な投資あるいは必要なところに費用をかけないで、十分な成果を上げ切らないということに陥るのではないかと懸念します。ともあれ、私どもは新しい基準に基づいて自己評価をいたしましたけれども、これ自体はこの評価がよいのかどうかというのは十分に御検討いただきたいと存じます。全般を通じまして、私どもとしては総合評価Aという判断をさせていただいた次第でございます。

○国立がん研究センター理事

 それでは、引き続き私から実績について、資料1-2をもとに説明いたします。

 評価項目の1~3、研究・開発に関する事項です。

 まず、評価項目1、資料の3ページになります。臨床を志向した研究・開発の推進。これは研究所と病院が基礎研究から開発・研究、さらには臨床展開ということで、シームレスな展開をするためには、そのための体制の整備あるいは連携、基盤整備、そういうものが求められるわけですその中の幾つかとして、例えばセンター内の連携強化、1番としては、まず、早期・探索臨床研究センター(EPOC)を設立した。これは非常に大きなポイントであります。

 臨床側と基礎研究者が常に意見交換をし、臨床側のニーズを把握し、それに対応した研究を計画するというところでの臨床家と研究者が常に会って話をするようなリサーチカンファレンス、これを年に8回、定期的に開催しています。

 さらには、産学の連携による共同研究も積極的に実施しこの具体的な基礎研究、臨床研究の新規共同研究の数に関しては、右側に書いていますが、毎年20件から45件ということで、昨年度は特に90件と急速に伸びてきたわけで、これも基盤 整備があってのことだと考えます。

 左側に戻って4ですけれども、研究、看護研究等全ての研究を一元的に管理・支援する研究支援センターを設置して、より効率的にシームレスな研究が推進できるような体制をとった。その成果として、5、6にあるように、例えば創薬開発の機能評価システムになるような正常細胞の長期培養化、不死化というものを世界で初めて成功した。核酸医薬についても挑戦的にトライしていまして、現在、医師主導治験という形で中央病院のほうで、先ほど言いました早期探索研究センターを中心に、世界初の新薬開発としての治験を始めているという状況です。

 2番目の研究基盤に関しても、これは独法化以降ですけれども、新たな包括同意書に基づいて、新患の患者に対しては研究に協力いただくための研究採血あるいは手術等の余剰検体をバイオバンクという形で整備しているということであります。

 4ですけれども、6NC全体のバイオバンク事業としてナショナルセンターバイオバンクというものを整備しまして、こういうものもがんセンターがリードする形で運営にかかわっているということです。

 5、研究所内においては、その基盤整備としては高速シークエンサー等を整備して、研究の一括的な技術支援、そういうものも体制を整えた。こういうことによって効率的に研究が推進できるようになったということです。

 4ページです。先ほど言いましたバイオバンクへの新規保存件数に関しても、年間中期目標としては1,200件以上を目標としたわけですけれども、毎年1,500件ぐらい。昨年度は1,776件と中期目標の150%以上の達成をしているという状況です。

臨床研究の推進のための中核機能としても、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会に臨床試験部会を設置しました。

 2ですけれども、都道府県拠点のCRC配置の現状についても調査を行い、がんセンターだけではなくて、その関連の中核病院等でもこういう体制が十分とれるような形で指導と支援基盤の強化の提言をしてきたということです。

 4ですけれども、多施設共同研究等を実施する、さらにはモニタリングをして監査等の共通ガイドラインを作成し、他のグループ、施設での活用をできるような形で公開した。中期目標期間中にガイドラインへの採用件数として中期目標は5件を目標にし、下の表にありますが、この5年間の合計として58件という形で、当初目標の10倍以上の実績を上げたということであります。

 先ほど言いました訪問監査、これはセンターだけではなくて、こういうことが広くできるような形で、さまざまながん診療連携拠点病院を訪問しているわけです。これも当初目標に比べて百数十%、150%以上の実績を上げているという状況です。

 やはりシームレスな早期開発に関しては産学、官学の連携が非常に重要で、知財等での関係、シンポジウムを通した情報交換ということも行っています。

 4、5、6には、産学の共同連携の成果としては、例えば島津製作所と共同研究をして、組織中の薬物分布濃度の可視化は世界初です。抗体濃度の非常に簡便でユニバーサルな血中濃度モニタリングを確立しました、肺がん、消化器がんを対象とした全国規模のゲノムスクリーニングネットワーク(SCRUN-JAPAN)を構築し、日本全体でゲノム情報に基づいた臨床試験、治験が行われるように体制を整えた。

 最後の6番では、血液からの早期診断システムとして、マイクロRNAというがんに特異的なものを指標とした新しい診断システムの開発にも取り組んだということで、今年度中には乳がん、大腸がんについては実際早期診断の性能試験も行うという状況になっています。

 5ページですけれども、研究・開発の評価体制についても整え、同時に発生する知財のほうも整備することが開発・研究を推進するのに非常に重要です。知財に関しても専門性を持った人材を配置し、知的財産の適切な管理を行ってきた。

 リサーチアドミニストレーターという制度において、戦略的に大型研究費を獲得する、あるいはセンター内のプロジェクト型研究支援をする、こういうことも体制を整えた。特許収入に関しては、グラフにありますけれども、顕著に伸びていまして、特筆する点は、支出に対して特許収入が大幅に上回っている、そういう実績を続けています。その成果として共同研究、治験実施件数、国際共同研究等、右上のグラフに示されますように、当初目標を150%あるいは200%、大幅に上回る実績を上げています。

 6ページです。さらには、病院における研究・開発の推進。これはどうしても推進するのに病院側の体制整備は非常に重要なわけですけれども、臨床研究機能の強化として、1番ですが、診療科横断的なPhase Iチームとして、EPOCの中に先端医療科というものを設けました。これによってFirst In Humanの研究が横断的に進みますし、そういう状況でFirst In HumanFIH)というものを中期目標期間中に19件と非常に多くの新規課題を実施しています。

 こういう開発的な治験をするときにCRC、クリニカルリサーチコーディネーターの増員とか、その常勤化は非常に重要なわけですけれども、CRCの職員数も当初31名から40名、さらに特筆すべきは、その常勤化を大幅に図ったという実績です。

 生物統計に関しては、これはそのデータの信憑性を担保するときに非常に重要であり、当センターには生物統計家を6名配備し、手厚い支援体制を整えている。

 先ほども申し上げましたが、研究センター内の基礎研究、臨床研究、疫学、社会学研究等が一元的に研究管理・支援する体制、研究支援センターを設置したのが非常に大きなポイントです。こういうこともありまして、治験申請から症例登録までの期間を117日と、当初の中期計画の130日以内ということに比べて、その達成率、日数の減少、200%以上を達成したというところです。

 右のほうで、こういう背景を踏まえて、米国FDAから、東病院が実施していたある治験に関してですけれども、実地調査が2件入りました。そのときの評価としては、世界トップクラスの質が保たれているという評価を受けております。こういう臨床研究を推進するに当たり、倫理性、透明性の確保が非常に重要ですけれども、2、臨床研究の内部監査の実施体制をとったということで、四半期ごとに監査結果をまとめて、指摘点を分析、理事長に報告しているとか、4、研究倫理審査の効率化・迅速化と審査記録の一元管理ということで、ウエブの研究倫理審査申請システムを昨年10月から導入しています。これによって審査の迅速化あるいは公平化、公正化が図られているということであります。

 7ページです。評価項目3ですが、ここからは担当領域の特性を踏まえた戦略的な重点的研究・開発の推進ということで、少し専門的になってきますが、幾つか項目について代表的な事例を説明します。

 まず、1番、がんの原因、発生・進展のメカニズムに関しては、1にありますように肺がん等の転移・浸潤を制御する新しい分子の同定で、現在CDCP1と分子に関しては、ここで標的とした創薬開発、これも実際に企業との連携で進められています。

 2には、肝臓がんの全ゲノム解析をする、これは世界に先駆けてすることによって、日本人の肝臓がんの特徴というものをゲノム解析から解析する。これは2、5、6、11というようにその規模は、毎年解析数を増やしてきました。世界をリードする形で肝臓がんの領域においてはさまざまな成果を出していて治療標的あるいは最終的にはゲノム解析の結果から日本人特有の背景、ウイルス感染にプラスする環境要因を示唆するようなフィンガープリント、そういうものも見えてきたという状況です。今後、肝臓がんの予防という観点からも重要なインパクトがある仕事かと思います。

 戻って3で、肺腺がんの解析から新しい分子標的を見つけ、治療、臨床試験へと展開している。肺腺がんに関してはがんになりやすさという遺伝的な素因、こういうものも同定し、今後はこういうものを踏まえた高リスク群の掌握による予防戦略、そういうものへの展開が可能であろうと考えます。

 肺腺がんに関して新しい悪性化の分子、TSPAN2という分子を同定しまして、これに対する新しい分子メカニズムに基づいた治療標的、治療薬開発も進めています。

 8ページですが、さらに乳がんに関しても、これは術後、長期たった後に転移をするということが大きな問題になっているわけですけれども、これに関しても骨髄中で乳がん細胞が長く生き続ける、そのシステムとしてエクソームあるいはそこから得られるマイクロRNA、そういうもののメカニズムを解明し、今後そういう休眠状態への打破、そういうものに展開していきたいと思います。

 2番、がんの実態把握、疫学研究でも、従来から続けている2、大規模コホート研究の疫学研究、その成果として、この5年間で90本以上という成果を科学誌に発表し、日本人の新しいエビデンスを構築したわけです。加えて3、これはがん以外にもこういう多目的コホート、JPHCの基盤の整備の成果として、がん以外の循環器疾患、糖尿病、精神疾患などもコホート研究に基づいた新しい日本人のエビデンスが構築されている、そういう状況です。

 5、これは日本だけではなくて国内外のコンソーシアム研究にもこのデータは貢献していまして、国際的な共同研究というものでも大きく貢献をしているという状況であります。

 3番、がんの本態解明に基づく新しい医療の開発、標準医療の向上に資する診断・治療技術の開発の点においても、2、理研との共同でHER2陽性乳がんに関しては新しいPET診断システム、抗体を使ったPET診断システム、そういうものの開発を行いました。

 それから、アスピリン等による大腸がんの予防、これも国内初めてですが、これを国際誌に投稿したもの。

 日本人に多い難治がんの1つである胆道がんに関して4です。これも新しい融合遺伝子を見つけて、これに関する新規の治療戦略、臨床試験、こういうものが含まれています。

 5、乳房に関しても従来のマンモグラフィーよりも非常に診断が向上することを確認した方法として乳房の断層撮影というものの最適化の基盤整備を行っています。

 さらには、最近のニュースにも出ましたけれども、6、腎細胞がんの予防診断法で、予後の悪い腎臓がんとそうでないがんはDNAメチル化から診断し、さらにそれを小型診断機器装置の開発ということに着手しております。

 それから下に行って4番目、医薬品医療機器の開発等においても、さまざまな手技を開発し、レーザー光搭載の内視鏡システムであるとか、切除不能ながん等の新しい「TAS-102」の臨床試験の開発も行っています。

 9ページです。ここでも同様に島津製作所との共同研究での新しい質量顕微鏡を用いたDDS系の開発、それから、融合遺伝子の開発による肺腺がんの治療の開発等々が行われています。大腸カプセル内視鏡も日本初で導入しました。

 東病院が開発の中心となった先ほどのTAS-102に関しては、グローバル第III相試験を行いまして、これはNew England Journal of Medicineという世界最高峰の臨床医学雑誌に掲載されたという状況で、このようにさまざまな成果を出して臨床研究実施件数も中期計画の目標の約2倍近いものがこの間にできている。

 5番目、がんの医療の質的向上・均てん化に関して、後ほど若尾から説明があると思いますけれども、こういうものにも積極的に取り組んでおり、6番、情報発信手段に関してもさまざまな手法を用いて、新しい手技・手法、情報の均てん化あるいはその情報への普及に関しても貢献している。がん対策に大きく貢献したものとしては、当初、中期目標期間中に10件以上ということを目標としたわけですけれども、30件と300%程度の達成をしている。

 最後、811番は論文に関する具体的な成果を表にしたものですけれども、簡単に説明しますと、論文数、被引用数に関しても堅調に伸びている状況で、昨年度は700の論文があって1,300件以上の引用があった。国内のほかの医学系研究機関と比較しますと、論文数、被引用数に関しても臨床医学、青いバーです。赤いバーは腫瘍学ですけれども、臨床医学に関しても主要大学に次ぐ論文数でありますし、特に腫瘍学に関しては日本最多であります。被引用数に関しても同様の傾向で、臨床医学に関しては日本で第4番目、腫瘍学に限定すると最多を誇っている。

 右のグラフで、論文総数、被引用数をほかの運営費交付金をいただいている研究機関との比較ですけれども、交付金で除した場合の率としては非常に多くの効率のよい研究成果の最大化という意味では成果を出しているのではないかと思います。

11ページですけれども、引用論文の中でも高被引用論文、これは世界でトップ1%に入る引用論文の数をトムソン・ロイターのデータに基づいてまとめたものですけれども、日本の研究機関の中で22分野、全体で20位です。高被引用論文の割合は理研に次いで1.79で2位です。

 横の2番目ですけれども、分野別のものでも臨床医学に関しては高被引用回数が80ということで、これは日本の中で2位というものを示しています。

 下の3番目には、ほかの研究機関の中で高被引用論文の数に関して、そこで言いましたトータルで80という数は東大に次いで非常に多いですが、その中で腫瘍学は62と断トツに多い。加えて、下のほうに小さく書いていますけれども、筆頭著者あるいは責任著者のいずれかががんセンターの者というのがその80のうちの36論文ということで、半分近いものがそういう論文であるということです。加えて、ここには数字は示していませんけれども、国内あるいは国外の研究機関との共同研究の大部分も主体的なプレーヤーとして貢献しているという実績があります。

○国立がん研究センター中央病院長

 それでは、続いて評価項目の4以降、中央病院長、荒井が御説明させていただきます。

 資料の12ページをごらんください。

 ここは高度先駆的医療のみずから行ったものということを13ページに書いてございます。項目がただ羅列してありますので多少まとめてみますと、まず、いわゆる提供した高度先駆的医療としまして、機器関係、技術関係といたしましては、1の陽子線治療、4の網膜芽細胞腫に対するルテニウムの小線源治療あるいは7のサイバーナイフ、10はまだスタートしておりませんが、着々と準備を進めているホウ素中性子療法、BNCT等が挙げられます。

 そして、内視鏡治療といたしましては、12に書いてありますけれども、いわゆるEMRESD2,000件ということで、これは件数的には世界のトップクラス。次に13のところに、IVR、画像下治療です。これも件数にすると4,500件ということで、これも世界的に見てもトップクラスと言ってよろしいかと思います。

 一方、薬剤開発関係につきましては、例えば5の化学療法抵抗性膵がんに対するGBS-01の医師主導治験。6のRET融合肺がんに対する全国、いわゆるSCRUM-JAPANで、それに対し、さらに新規分子標的治療薬の医師主導治験を行うこと。あるいは9のATLに対するインターフェロンαとジドブジンの臨床試験。さらには10の小児の神経芽腫の抗GD2抗体の医師主導治験を行った。さらには11で、これはアクセス制度を用いたものですけれども、前立腺のカバジタキセルの医師主導治験等々を行っているということを挙げさせていただいております。

13ページに移りまして、そこに幾つか2番、3番、4番と分けてありますけれども、診療体制としましては、総合内科の充実、ICUの増床等を行い、さらには先ほど申し上げた画像下治療、IVRのセンターを開設しまして、ほかの施設からの患者さんにも提供を行うということを始めております。さらには、昨今、非常に注目されております希少がんセンターをつくりまして、これはもう診療科横断的な組織としまして取り組んでいくこと、さらには外部からのホットラインを受けて、これが件数で1,800件を受けております。

 3番目のいわゆるエビデンスづくりですけれども、先ほどお話ししましたように、ガイドラインの作成に関しては、ガイドラインに寄与する臨床試験の件数が58件引用されているというような状況があります。もちろん臨床的にはそこで得られたガイドラインにあわせた治療をちゃんと提供して、標準的治療を提供していることがあります。説明・同意文書はほぼ完全に準備されておりまして、これに基づいて診療を行っているということ。

 さらに4番目は、定量的な数値的なものを挙げさせていただきますと、先進医療、そして右側に行くとファーストインヒューマン試験、そして医師主導治験ということで分けておりますけれども、先進医療ではごらんのとおり、Aが青、Bが赤で書いてありますが、明らかに増えている。平均値から申しますと136%が昨年度の実績であります。

 右側に行きまして、ファーストインヒューマン試験につきましては、これは右側の表をごらんいただくとわかると思いますけれども、25年度が13件、26年度が10件ということで、非常に多くのものが行われている。これも平均と比べますと154%、そして、3番目の医師主導治験ですけれども、これにつきましては、平均との比較ですけれども、297%というのが一番最近の実績ですし、これはトータルで継続している試験でございますので、新規の試験といったことで、年度ごとの新規試験で分けた場合でも右下のように、平均に比べて182%ということになっています。

 ちなみにその下は、小さく書いてありますけれども、いわゆる医師主導治験として届けられました全国での治験が118件で、そのうちのがんセンターは5分の1以上のものを行っていると御理解いただいてよろしいかと思います。

 以上をもちまして、この領域につきましては、自己評価としてAをつけさせていただいております。

14ページですけれども、ここは患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということで、大きく下のほうに1番、2番、3番、4番、5番、6番と分けております。ごくごく簡単に御説明させていただきます。適切な治療の選択につきましては、がん相談対話外来、いわゆるセカンドオピニオン外来を積極的に展開しております。先ほど申し上げましたように、説明・同意文書の標準化を完璧に行うということ。そして、いわゆる患者さんの患者教室。最近、特に4ですけれども、就労支援ということに力を注いでおります。ハローワークあるいは社会保険労務を含めての対応を展開しております。

 2番目につきまして、患者参加型の医療ということにつきましては、そこで2に挙げましたけれども、患者支援団体との交流あるいは患者満足度調査、その結果に応じての対応、そして、その結果の公表といったことを行っております。

 チーム医療の推進につきましては、これを今さら挙げること自体がもう既に時流から当然のことではありますけれども、ほとんど全ての専門職種からなる、多職種からなるチーム医療をほぼ全ての疾患に対して展開しているという状況がございます。

 右の4番に移りまして、入院時からの緩和ケアを見通した医療の提供という点につきましては、なかなか評価は難しいのですけれども、例えば外来の化学療法につきましては、着実に数をふやしておりまして、これは右の図のような状況で中期目標計画に対する達成率は150%弱という状況になっております。

 安全管理体制の充実につきましては、医療安全の管理部署を充実させまして、毎年マニュアルを作成する、あるいはインシデント事例の作成、そして医療安全対策の講習会等を積極的に行っております。

 6番目につきまして、客観的指標ということで、これは一番正しい指標とは言えないかもしれませんけれども、下の2に書きました病院機能評価をたまたま昨年受けることがございました。ということで、同評価を受けた一般病院の中の82病院中で、東病院が総合で3位、中央病院が総合6位であったということで、ある程度これは客観的に病院の現在の診療の状況を御評価いただける数字ではないかということで出させていただいております。

 最後に15ページに移らせていただきます。

 ここはその他の政策ということを挙げさせていただいています。大きく分けて3つございます。これは緩和ケアチームのかかわりですけれども、いわゆる早期からの診断時からの緩和の介入ということで、まず緩和チームの件数はそこの右にグラフで、これは増え方としては緩やかに増えているということで、達成率は120%ですけれども、1に書いてありますが、そのうちの7割の方が、いわゆる治療を行っている、積極的な抗がん治療を行っている段階から緩和ケアチームが入っている、介入しているという点で、いわゆる早期からの介入ということが実際に行われているというのを御理解いただけるかと思います。

 2に挙げました緩和ケアホットライン。これは非常に今、混んでいる状況ですけれども、こういったものをつくりまして、患者さんがいつでもアクセスできるような体制を組んでおります。

 その下に行きまして、東病院ではがん患者さんとその家族1,000組を対象とする大規模な対面による聞き取り調査を行いました。

 右のほうに行きますと2点、1つは、いわゆる外見的なところ、アピアランスと呼んでおりますけれども、そういったところに対してもきちっとサポートをして、よりよい生活を送っていただくということでアピアランス支援センターを全国で初めてつくりまして、これを積極的に展開しております。既にほかのがん専門施設でもこれを追従して、こういった施設を開設する動きが出ていると聞いております。

 最後に、これも繰り返しになりますけれども、ハローワーク、社会保険労務士と連携して、いわゆる就労支援について積極的に展開しております。以上のような点を踏まえまして、先ほどの評価項目5並びに評価項目6につきましてもAという自己評価をつけさせていただきました。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 続きまして評価項目7、8、9について御説明いたします。

16ページをごらんになってください。まず、評価項目7、人材育成に関する事項です。

 その1つ目としましては、リーダーとして活躍できる人材の育成ということで、レジデント。レジデントは3年間のレジデント、及び2年間のがん専門修練医、さらには3カ月から2年までの、それぞれ科によって違うのですが、短期レジデント、これらの医療者、医師及び薬剤師などを受け入れて、センターでこの期間をかけて育成し、それを多くの拠点病院等に輩出しております。実績につきましては表のとおりです。

 2番目としまして右側に行っていただいて、モデル的研修・講習の実施です。こちらは拠点病院の医師、看護師、薬剤師等の医療者及び相談支援センターの相談員、院内がん登録の実務者などを対象に専門的研修を数日間からこれも3カ月間までありますが、行っております。

 こちらにおきましては、下に表がございますが、中期計画では毎年、各年度16種類以上、さらに累計で4,500人以上ということで計画を出させていただきましたが、その上の表にありますとおり、最大でプログラム数では25年度28種類、さらには26年度受講者数では1,300人を超える受講者で平成18年度からの累積受講者数ではトータル6,386人でした。もちろん、このような受講者がふえたということで、当時の計画よりは多くのコストがかかるということで、このコストのことは2にございますが、途中から実費相当の受講料をいただくということで研修を受けたいというニーズになるべくお応えする形で、受講料をいただきながら多くの受講生を受け入れたということがございます。

 次のページ、評価項目8です。医療の均てん化と情報収集・発信に関する事項ということで17ページをごらんになってください。

 1つ目は、ネットワークの構築というのが大きな役割になっていると考えております。まず、その1つ目としまして、1、都道府県がん診療連携拠点病院の連絡協議会、都道府県拠点が全国に51ございますが、そちらの連絡協議会へ毎年開催しました。それらの協議会の下に、がん登録部会、臨床がん研究部会、情報提供・相談支援部会、緩和ケア部会と、それぞれのテーマに応じた部会を設置し、各部会等でも部会ミーティング等を年に数回行いまして、各課題の意見の取りまとめ等を行っております。

 2としましては、診断のコンサルテーション等を行っております。その中でも病理診断コンサルテーション、もともとの目標としましては、年間250という目標を立てたのですが、そちらの表にありますとおり、22290から23400を超えるような相談コンサルテーションに対応しております。

 こちらの23年度で417と急激に増えておりますが、これはちょうど震災のあった年で、震災の影響でもう一つ、このような病理診断のコンサルテーションをやっておりました病理学会のコンサルテーションが停止してしまいました。病理学会が停止した分をこちらで吸収したという形で想定外の増加となっています。その後、病理学会のほうを復活したのですが、こちらのほうが使い勝手がいいのか、こちらのほうに利用者が集中したということでずっと増えているという状況になっております。

 もう一つ、3のところでは、地域相談支援フォーラム、ワークショップの開催ということで、こちらは全国で10ブロック、10回のブロックフォーラムを行っております。これを行うことで、各拠点病院と都道府県、地方公共団体との連携をつくったり、あるいは拠点病院間の連携なども大きくつくりまして、地域の相談支援の発展に貢献しております。

 2番目、情報の収集・発信では、院内がん登録、地域がん登録データの収集とございますが、院内がん登録は拠点病院の院内がん登録が始まって毎年集計を出しております。地域がん登録、それまで各都道府県の自主的な事業ということで、全ての都道府県で行われておりませんでしたが、今回の中期計画の間に平成24年、全47都道府県での地域がん登録が実施できるよう、さまざまな支援、標準化あるいは標準システムの提供などの支援を行わせていただきまして、全県で達成、行われるようになりました。それに基づいて後ほど御説明します全国がん登録などにもつながっていると考えております。

 ウエブサイトとしましては、がんの情報、がん情報サービスのコンテンツの追加やデータを更新するとともに、さまざまな手段で広報しまして、現在、1万4,000ページで大体月間240万ページビューのアクセスが来ています。インターネットを使えない方もいらっしゃいますので、この間に56冊の冊子を作成しまして、拠点病院等で配付しております。その冊子なのですが、6にございますが、交付金が減る中で冊子を多くの方に届けるために、がん情報サービス刊行物発行システム、発注システムというのを導入しまして、その結果、拠点病院からその冊子を買っていただくという形で、この間に311万部の冊子を全国に対して提供させていただいております。

 8で、相談支援センターの普及のためにロゴを作成し、相談支援センターの紹介カードをつくるとともに、全国ワンストップの窓口でありますがん情報サービスサポートセンターというのも開設しまして、全国の相談支援センターの御案内などもさせていただいております。

18ページです。評価項目9をごらんになってください。国への政策提言に関する事項ということで、まず、その1番で科学的根拠に基づいた専門的な政策提言ということで、3をごらんになってください。先ほどの地域がん登録の標準化あるいは普及も関連しますが、がん登録推進法の成立にも寄与しました。あと、これにはさまざまな今までのがん登録に関するノウハウなども提供させていただいて継続的な支援を行わせていただいております。

 4です。研究班のほうで第3次対がん総合戦略についての取りまとめを行いました。そちらに基づいて、新たながん研究10カ年戦略につながっていると考えております。

 さらに、先ほど御紹介しました拠点病院の連絡協議会からは、拠点病院の制度に関する提案なども行いまして、実際の整備指針などにも反映されております。

 6です。これはがん対策推進基本計画の評価ということで非常に注目されているものだったのですが、前任の研究班で途中でそれを諦めて取りやめてしまったものを途中から、非常に時間のない中、引き継ぎました。これは政策的に実施しないといけないということで、非常に短期間で無理な形で引き継いだのですが、指標をまとめて、さらに全国拠点病院134施設の患者さんに対する患者体験調査1万4,000人対象の調査を行って、その結果をがん対策推進基本計画の中間報告に反映していただきました。さらに希少がんのワークショップを行うとともに、8のところにございますが、各スタッフががんの専門家としてさまざまな審議会、委員会等に参画しまして専門的な政策提言を行っております。

 2番、政策提言を恒常的に実施するための組織ということで、1は理事長のシンクタンクとして企画戦略局というのを設置するとともに、さらにさまざまな政策に関係する研究を行うための政策科学研究部、これも新たに設置していただきまして対応させていただいております。

 国際貢献としましては、米国国立がん研究所、マサチューセッツ総合病院、フランスの国立がん研究所等も覚書を締結しまして連携しております。

○国立がん研究センター理事長特任補佐

 続きまして、評価項目の10番以降を私から御説明させていただきます。

 まず、19ページでございますけれども、効率的な業務運営体制に関する事項ということで、1番のところに、この5年間でさまざまな効率的な体制を構築するためのエポック(EPOC)の設置などの組織体制整備ということについて記述してございます。

20ページをごらんいただきまして、収支改善ということでございます。1番のところをごらんいただきますように、5年間で医療機器や施設整備への必要な投資を計画的に行いながら、運営費交付金が36億円、当初の中期計画予算に比べて減額される中、5年間累計で経常収支率100.9%、約21億円の黒字となってございます。もし、運営費交付金の減額がなければ57億、102.3%ということになるということでございます。

 冒頭、理事長からもお話し申し上げましたが、経常収支率について120%というような話がございますけれども、当法人について、例えばこの経常収支率120%ということはどういうことなのかというのを計算しますと、5年間で485億円の黒字、経常収支のプラス。毎年97億、約100億の黒字。運営費交付金よりもはるかに多い金額の黒字ということを意味するわけでございまして、正直申しまして、そんな法人があったとしたら真っ当な法人運営だとは思えないわけでございます。そういう意味で、基準は基準として機械的に当てはめるのではなくて、実態もよく見ていただきたいと思います。

21ページ、評価項目の12でございます。内部統制の適切な構築ということで、1でございますけれども、月に1回、幹部職員が一堂に会する全体運営会議というのを独立行政法人になって開催するようになっております。

 さらに8でございますけれども、電子入札システムの導入による研究者発注の廃止などを行っているというところでございます。

 続いて、評価項目の13、自己収入の増加などでございますけれども、ここに書いてございますように、共同研究、治験あるいは新たに始めたSCRUM-JAPANなどで外部資金の導入に努めているということでございますし、債務残高は中期目標期間中に新規で91億円借りておりますけれども、償還が約100億円あるということで、債務残高は約10億の減となっているということでございます。

 最後、評価項目の14でございますけれども、23ページ、1番は施設整備に関して、この間、これだけのものをやってきているということでございますが、2番の3、4のところをごらんいただければと思います。幹部職員の任命は公募を基本として、さらに診療科長等については任期制を導入したということと、26年度にクロスアポイントメント制度を導入してございまして、ここでは東大との一件ということでございますが、27年度に入ってさらに他の大学ともクロスアポイントメントを具体的に行っているというような状況にございます。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

○祖父江委員

 どうもありがとうございました。

 全体の5年間の伸びといいますか、非常に見えてきたのではないかという感じがしておりまして、すばらしいと思います。ただ、これは評価について見てみますと、一覧表で、中期目標の期間の実績というような一覧表になっているのですが、がんセンターが全体の中で結構評価としては悪い。先ほど理事長先生からも評価の問題が出ましたけれども、例えば数だけですが、Sは下から3番目ですし、Aは6センターの中で最低ですね。逆にBが標準ですけれども、これが上から2番目ということで、全体の評価、トータルするとかなり真ん中以下という感じなのです。これは何でかと。

 私の印象としては、がんセンターというのはナショナルセンターの中でも非常に強いリーディングポジションをとっていて、ナショナルセンターは非常にお手本的な目指すべき姿を出してきていただいていると思っているのですが、この評価は途中で評価軸がずれたりとか、Bを標準にする、Aを標準にするという議論があって、では、この5年間をトータルして何をもって評価するのかというところが、軸がいろいろ議論とともにずれてきてしまっているのですが、これをどう考えるかということをがんセンターからお話しいただきたいというのが1点です。

 あと1つ、2つ、ございます。

○国立がん研究センター理事長

 その点に関しては、私から少しだけコメントさせていただきますと、これはあくまで絶対評価だと私どもは理解してございます。要するに、がんセンターが日本の社会の中で果たすべき役割あるいは期待される役割に対してどこまで達成したかの評価であると受けとめておりますし、そのようにと説明を受けております。したがって、相対評価ではないので、私ども粛々と受けとめてやっているという状況です。いただいた指摘や評価を次の計画の中に、あるいは実践の中に生かしていくということが重要であって、Sをもらうか、Aをもらうかが本質ではないと考えてございます。

 ただし、世の中的にはそのようにはとられていませんで、がんセンターはサボっているねとなるということであります。しかし、相対評価で言えば私どもとしては、はっきり言って断トツだと思っています。

○祖父江委員

 大変すばらしいお答え。

○花井委員

 今の議論にも通じるのですけれども、目標が高ければ高いほど損をするという評価になっていて、絶対評価するとおっしゃるところだとは思うのですが、と言いつつ、がんセンターはそれだけの期待がされていて、評価するほうも世界基準で考えるというところで、S評価の基準が来ていて、特に顕著なということが書いてあるわけですが、例えばいろいろ今も御説明いただいたけれども、すごい特に顕著だと素人的とには思うのですが、Sに値するほどの成果はどれかということが社会的には問われるということだと思うので、例えばどう聞いたらいいのですか。ガイドラインなどというのは、ガイドラインに載るだけでもそれはかなり顕著だと思うのですが、例えば日本のがんセンターがなければ世界のこのところはもうがんの治療レベルがおくれたのではないかみたいな成果はこの中でどれなのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長

 例えばがんの標準的治療の開発と進展ということにつきましては、1990年から日本で初めてデータセンターを持つ多施設共同がん研究グループ、これはJCOGと言っていますけれども、欧米に比べますと残念ながら30年おくれておるのですが、いずれにしても日本で医師が手作業でやっていた臨床研究を、データセンターを構築して研究の質の向上に努めて日本の標準にしたという実績があります。これは日本の臨床研究を世界に近づける大きな足跡になったと考えております。それがベースで今の日本の多くの臨床研究グループが育ったと思っています。

○祖父江委員

 今のと関係するのですが、がんセンターはここでも書いてございますように、例えば14万人のJPHCでは20年間以上追跡したとか、コホートあるいはレジストリでは世界に伍す、あるいはリードしてきていると思うのです。今後、ほかのナショナルセンターで国際的なレジストリあるいは高度スタディーというのが研究的に立ち上がろうとしているのですが、がんセンターはそのリーディングポジションにあるという、1つは法律があって、非常にレジストリなどがやりやすいという追い風があるのではないかと思いますが、共通のどうしたらいいかというノウハウをかなり蓄積されていると思うのです。ですから、今後のナショナルセンターのレジストリシステムとか、そういうものについて、そこをサポートしていくようなお立場をぜひとっていただけるといいなというように思っている次第でございます。

○深見委員 

大変この5年間でいろいろな改善があったということは非常によくわかったのですけれども、治療において、がんの患者さんが非常に多い中で、いろいろな治療法、診断法もいろいろ進歩しておりますね。

 私、お薬のほうからお伺いしたいと思うのですけれども、低分子化合物から分子標的に基づいた抗体医薬というものがたくさん出てまいりました。たくさんの抗体医薬が出てきましたし、また今回は核酸医薬ということで、新しい第3世代のお薬も開発に成功したということも非常に評価していいことなのだろうと思います。そういった中で、やはりがんセンターだったらたくさんのこういう抗体医薬、分子標的薬がある中で、患者さんに合ったお薬をどうやってしっかり選んでいくのか。遺伝子多型とか、ウイルス等々では調べているようでしたけれども、そういったお薬の効きやすさというようなところをしっかり調べることによって、現場に還元していく。実際の研究と現場をしっかり結びつけるようなシームレスなお薬の選び方というようなところが余り見えてこない。お薬がたくさん出てきたという中にあって、実際のお薬を選ぶというところに対してどういう方向性を持っているのか、そういうところを少し教えていただけたらありがたく思います。

○国立がん研究センター理事長

 まさに、そこが大変重要なポイントでありまして、アメリカでもオバマケアの中で提唱されているPrecision Medicineといって、遺伝子多型とか、あるいは遺伝子変異などのゲノム情報に基づいて治療選択をしていくという世界の流れがあります。それに遅れないように日本もやっていかなければいけないということで、がんセンター東病院が中心になりまして、SCRUN-JAPANというシステムをつくりました。これは全国の研究者が200施設ぐらい集まって患者さんを登録していただいて、そのゲノム情報を一気に解析する。今までの解析というのは、1つの遺伝子に対して1つの検査をやるというものですから、それを百数十のパネルでもって一気に薬の効きやすさあるいは副作用の出やすさも含めて解析するようなプログラムをスタートさせました。これは2年間で4,500例を解析するということで、モデル的にことしの2月からスタートしたところなのです。これはぜひ全国の拠点を幾つかつくって、もっと広いスクリーニングにすべきだと考えています。これが世界の潮流で、もう既にフランスとかでもその動きはございます。日本はこれにおくれてはならない。

○本田委員

 がんセンターに対しての評価が厳しいとかいろいろあると思うのですけれども、私はこれまでの5年間で患者、国民の視点を取り入れた形で、がんセンター自身の取り組みももちろんですけれども、国内のがん医療の体制整備、基盤整備、治験とかの整備、情報発信、均てん化を含めて、全体を見渡しての取り組みとしてはセンターの中でもそういう視点を強く持っていただいて大変感謝したいと思いますし、厳しい中で取り組んでくださったことに本当にありがたく思っています。

 1つだけ質問なのですけれども、医療の均てん化、情報発信のところでいつも研究とかに比べて評価がとても難しくて、何をもって世界トップクラスと言うのかというのがとても難しい判断になると思うのですが、がん登録、法律の整備などもあったとは思うのですが、例えばがん登録の仕組みとか体制とかというのは世界のトップクラスと比べてどういう状況にあるのかというのを、研究とかは世界初だとかいろいろ言えると思うのですが、その辺はどういうように見たらいいのでしょうか。それとも今後、次の6年へ向けての課題なのでしょうか。

○国立がん研究センターがん対策情報センター長

 残念ながら、がん登録につきましては、日本は後進国です。先進国でしっかりとがん登録は行われている中、今までがん登録は行われていなかったという状態を、ようやくそこを世界に追いつくような体制まで上げたというのが今回のこの時期のアプローチだと考えてください。まだまだこれから追いついて、さらに制度とかについては今後世界のトップを目指していくという段階だと考えております。

○国立がん研究センター理事長

 1つだけ補足しますと、地域がん登録は、決して日本はスタートが遅れていなかったのです。1950年くらいからスタートしていますが、残念ながら法的根拠はないので、努力目標で終わってきたのです。海外は既にそれは法的枠組みの中でやられてきたという大きな違いがあります。ようやく日本は法律ができたというところで、これから本格的なスタートだと思います。

○藤川委員

 2点あるのですけれども、1点目は、今回は5年間の評価ということで、やはり仕組みをつくってどんどん活性化していくという5年だと思うのですけれども、特に評価項目3などは非常にたくさんの成果が出ているということはよくわかっているのですが、これが後半に向けて、特に26年度で開花していると、基盤整備したことが開花しているというところが、余りそこら辺がよくわからない部分もあったので、それはどのように捉えればいいのかという点が1点。

 もう一点が、4ページ目で、訪問監査をしているというように出ていたのですが、他のNCと比べて、他のNCもほかの日本中のところに対して指導とかいろいろなセミナーを行うとか、均てん化も行っているというのは聞くのですけれども、訪問監査という言葉は非常に強い内容だと思います。監査ということによって、何かだめ出しをするとか、そういう部分もあるのかどうかというのはよくわからなかったので、これは何人ぐらいで監査を何日ぐらい行って、どういう成果を出しているのかというあたりを教えていただけますか。

○国立がん研究センター理事

 では、まず1点目の体制を整備して、その結果、指数関数的に増えてきたのかというところが見えにくかったところなのですけれども、確かにその点を明確に示すようなデータとしては提示をしていないのですが、10ページ目の資料は論文あるいは高被引用論文で、世界的に非常に注目されている成果だと思うのですけれども、こういうものが論文数にしても確実に増えている。さらには、引用数はなかなか数字として難しいのですけれども、それも確実に伸びています。やはり今回さまざまな指標として調べたときに、高被引用論文数、全体の1%以下に入るような非常に高引用のものが特に臨床医学の領域において、あるいは腫瘍学の領域においては確実に伸びているという状況は、こういう体制整備が整って、臨床と基礎が一体化したような研究が推進された成果だと思います。もちろん、それはまだ5年という期間は短いのかもしれません。今後6年間において、これがさらに一層加速的に増えていくような努力は継続すべきだと考えます。

○国立がん研究センター企画戦略局長

 あと訪問監査のところですけれども、これはオーディットと言いまして、多施設臨床試験というのは先ほど理事長が言ったようにJCOGがやっているのですが、そのJCOGに参加している施設に対して大体3~4人ぐらいのチームを組んで訪問して、IC文書が存在しているかとか、カルテのデータがCRFという症例票にちゃんと転記されているとか、そういうものをチェックするものでありまして、治験のように非常に厳しいことは言いませんけれども、IC文書が行われているとか、適格基準に、そういった患者さんがエントリーされているかというのを確認する。去年の人を対象とする医学研究に関する倫理指針で日本でも監査ということを臨床試験でやりなさいという状態になりましたけれども、このJCOGの体制は15年ぐらい前からやっておりまして、一時、独法化の前に予算不足で中断していたのですが、独法化以降はもう一度復活して、今は恒常的にきちっとやられていて、臨床研究をやめなさいとかということをアドバイスするところまでは強制力はないのでしませんけれども、かなり臨床研究の品質担保には役立っていると思います。

○内山部会長代理

 この評価項目の中で研究・開発に関する事項、医療の提供に関する事項等、理事長もおっしゃいましたように、ナショナルセンターの中でも突出した成果を上げていると認識しております。ただ、一般国民の立場から見ると、すばらしい研究・開発、医療の提供をされていて、では、具体的に自分ががんになって入院したらどんなアウトカムがあるのか知りたいと思います。ステージなども違い、単純な比較は難しいと思いますが、ほかの病院に比べてがんセンターに入院したらこんながんが助かるとか、5年間でがんの治療がどのように進歩してきたのか、評価の中に入っていないのですが、一般国民としては極めて関心が高いところだと思いますので、機会がありましたら、よろしくお願いしたいと思います。

○永井部会長

 最後に私から1点。以前、内科疾患とか循環器疾患を抱えた方のケアがなかなか難しいところがあって、大学病院と連携されながらやっていましたけれども、それは少しは改善されましたか。

○国立がん研究センター中央病院長

 がんセンターの中で、オールインワンで全てを全うできない状況がございますし、合併症を持った患者さんに対しまして最近ですと具体的な名前を挙げさせていただくと、慈恵医大あるいは極めて近い東京都済生会中央病院などと連携しまして、非常に今、活発に実際の診療上のコラボレーションを進めております。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

 それでは、国立がん研究センターにつきましては以上で終了いたします。

 事務方から、これからの流れについて御説明をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 本日御議論いただきました期間評価につきましては、この後、各委員の御意見等を踏まえまして、厚生労働大臣の評価を行います。決定した内容につきましては、後日、委員の皆様方にお送りいたしまして、法人のほうに通知いたします。

○永井部会長

 それでは、どうもありがとうございました。ここで4~5分、休憩をとらせていただきます。

 

(休  憩)

○永井部会長

 それでは、時間になりましたので、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの第1期中期目標期間実績評価に係る意見について御議論いただきます。

 1-1から4-1の評価項目について、最初に全て御説明いただきまして、その後、質疑応答という形にいたします。

 それでは、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 よろしくお願いいたします。理事長の樋口でございます。

 ただいまから、評価に関する説明を担当者よりさせていただきますが、その前に私から自己評価一覧・目次を用いて、その概要を説明させていただきます。黄色で囲ったところをごらんいただければと思います。

 1-1~4-1までございますけれども、その全般の1のところ、すなわち研究・開発、医療の提供、そして、人材育成、情報発信、政策提言と並んでおりまして、この中で1-1臨床を志向した研究・開発の推進に関しましては、全体を通して期間評価といたしましてもS評価とさせていただいております。

 1-3、これが担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進ということでありまして、これが1-1とかなり連動しておるところでございますが、これに関しましても、これまでの年度評価の評価がいずれもS評価を頂戴してきたということがありまして、S評価とさせていただきました。

 もう一つ、1-9、国への政策提言、その他、我が国の医療政策の推進等に関する事項を今回はS評価とさせていただいております。この理由につきましては、後ほど担当から説明をさせていただきます。

 そして、残る1の課題に関しましては、全てA評価とさせていただきました。

 一方、2の運営体制、経営関連、業務運営等々に関してでございますが、これはいずれもB評価とさせていただいております。それが全体の概要でございまして、これからそれぞれ説明をいたします。よろしくお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 それでは、最初に評価項目の1-1~1-3につきまして、神経研究所長、武田から説明させていただきたいと思います。

 最初が評価項目1-1、臨床を志向した研究・開発の推進ですが、2ページ目をごらんいただきたいと思います。

 上段に中期計画の概要を、下段に取り組み状況を書かせていただいておりますが、数値目標の達成状況につきまして、3ページ目をごらんいただきたいと思います。

 研究所と病院との共同研究の実施、バイオリソース登録検体数、治験実施の症例の総数、他の研究機関との共同研究実施数並びに職務発明委員会審査件数、いずれにつきましても、年度に従いまして増加がありまして、数値目標を達成していると考えることができます。

 その内容につきましては、顕著な例といたしまして、4ページ目をごらんいただきたいと思います。

 特に、先ほどお示しした研究所と病院の共同研究を反映いたしまして、研究所におけるシーズを病院の、後ほど説明がございます専門疾病センターにおいて展開した結果、2件のFirst in human試験を中期計画の5年間の間に実施させていただき、なおかつ、無事に終了しております。

 左側に示しておりますのは、これから何度か触れますけれども、筋ジストロフィー患者さんの遺伝子変異に基づくエクソンスキップという新しい治療でございまして、First in human試験を医師主導治験として行って、無事終了し、現在、製薬企業に対して導出を行いまして次相の検討を行っております。

 右側は、やはり難病でございます多発性硬化症の全く新しい治療薬OCHに関するものでございますが、医師主導治験により、健常者の治験を終了し、現在は患者対象の試験に移行をしておるところでございます。

 これが取り組み状況のうちの1、研究所と病院、センター内の連携強化でございましたが、2に進みますと、この期間にTMCを設置していただきまして、その結果として多くのバイオリソースの収集が進んでおります。その成果として、例えばうつ病患者の一部で脳脊髄液フィブリノーゲンの上昇があることは26年度の報告の中で申し述べております。

 また、IBIC、脳画像センターをつくらせていただいておりまして、そのIBICを利用してホットラボをGMP化することにより、収入の増加に結びついたことが特筆されます。

 3の産官学等との連携強化につきましては、職務発明規程、利益相反マネジメント規程などさまざまな規程を準備させていただいておりまして、企業との連携の上でそうしたことが意味を持ちまして、治験の実施症例数が大幅に増加したということを先ほど申し述べました。

 4の研究・開発の企画及び評価体制の整備に関しましては、ガバナンスのためのシステムができまして、より研究を進める上で大きな力になったと考えております。

 5の知的財産の管理強化及び活用推進に関しましては、ビジネスディベロップメント室を設置し、アドバイザーを持つことによりまして、特許出願の件数が年々増加していることは先ほど申し述べたとおりでございます。こういった成果をもとに、数値的にも十分クリアをし、特記すべき成果が上がったことから、自己評価としましてSを書かせていただいておるところでございます。

 次に、評価項目1-2に進ませていただきます。病院における研究・開発の推進でございますが、これにつきましては、上段に示しておりますように、数値目標といたしまして臨床研究コーディネーターを常時10名以上勤務させておりますし、また治験の申請から最初の症例登録に至る、いわゆるFirst Patient Inまでの期間を平均100日以内とする目標を十分クリアしておるところでございます。

 成果といたしましては、取り組み状況の1に臨床研究機能の強化と書いておりますが、臨床研究の体制を整備することによりまして、2つの大きな成果がございました。1つは、患者登録制度の整備でございまして、もう一つが医療機関を結ぶ臨床試験ネットワークの形成でございます。これについては、いずれも筋ジストロフィーにおいてそれを実現したものでございますけれども、この制度を均てん化し、あるいは普遍化するということが大きな目標でございました。筋ジストロフィー患者登録制度の均てん化につきましては、効果的な研究費の投下、国立病院機構との協力、患者団体との連携等を背景に、国内での均てん化ができております。また、国外のネットワークとも連携ができているということを申し述べたいと思います。レジストリとネットワークをつくりました成果として、First  in humanで臨床試験を行うことができました。これは特記すべきことと思われます。

 普遍化という意味では、筋ジストロフィー以外の疾患にレジストリとネットワーク制度を広げる必要がございまして、実際にパーキンソン病であるとか、あるいは精神疾患の第II相治験ネットワークの構築を開始し、順調に経過しているところでございます。

 次に、2といたしまして、倫理性・透明性の確保が重要でございまして、これについても利益相反委員会あるいは臨床試験審査委員会の整備を図ってきたところでございますけれども、1つ申し上げるべき事項として、厚労省の倫理審査委員会認定制度が臨床研究の新しい進展に基づきまして整備されましたが、私どものNCNPの倫理委員会は、その認定を受けておりまして、そのコピーを示させていただいております。

 こういったことから考え、十分な目標のクリア、内容の充実をもって自己評価としてはAを挙げさせていただいているところでございます。

 6ページ目、評価項目1-3、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について、説明させていただきたいと思います。

 これにつきましては、やはり数値が大事でございまして、以下のページに示しておりますが、臨床研究及び治験の実施件数が年を追うごとに増加して、十分その目標を達成していることを示しております。

 もう一つ大事なことは、8ページ目に示しておりますけれども、どのように原著論文等を発表しているかでございますが、英文と和文の原著論文及び総説の発表総数、また下に書いておりますように、インパクトファクターが付与された学術論文、学術雑誌収録論文の数及びその論文がどのように引用されたかという数を見ますと、年々順調に増加しておりまして、私どもから出しました論文が高い評価を受けているということが言えます。その具体的な内容につきまして、2点、申し述べさせていただきたいと思います。いずれも5年間の間の実績です。

 9ページ目を見ていただきますと、視神経脊髄炎と申しまして、難病ですが、多発性硬化症の類似疾患でございます。その疾患について、IL-6阻害療法が有効であることをまず2011年に理論として発表することができました。その後、3年以上臨床研究を行いまして、IL-6レセプター抗体が臨床的に有効であることを示しております。

 左の下を見ていただきますと、左のほうに赤い点がたくさんございます。ところが、右のほうでは赤い点が激減しております。このように、投与を行いますとはっきり発作の回数が減ることを示すことができております。これは2014年の論文でございまして、ただ、最近は、多発性硬化症の一部の症例についても、IL-6レセプター抗体が効くことを実証中でございます。

 もう一つ、大きな成果がございまして、それは10ページ目を見ていただければと思います。これはRNAにも自己分解があるという全く新しい概念を2013年に発表したところでございます。その後、どのような仕組みでRNAが自己分解を起こすかということを追求したわけでございますけれども、最近になりまして、このRNAを標的とした自己分解が幾つかの神経疾患と関係が深いことを明らかにできております。ここには、筋萎縮性側索硬化症の例を挙げさせていただいておりますけれども、最近では、どうやらパーキンソン病とも関係があるというデータが出だしております。これは中期計画中の顕著な成果でございまして、これから5年、さらに伸びて神経疾患及びほかの疾患とRNautophagyという現象が関係するということを明らかにできると考えております。

 戻っていただきますと、1-3の6について、これまで疾病に着目した研究についてどんな進歩があったか代表例を挙げて説明させていただきました。

 1枚めくっていただきますと、今度は均てん化に着目した研究の成果がございます。この中では、例えば量が多いということがよく知られている睡眠薬の適切な使用と休薬のための診療ガイドライン、これも量と投与量が問題になっております抗精神薬減量法ガイドライン、さらに26年度成果でも述べておりますけれども、筋ジストロフィーガイドラインを作成することができました。これは医療の均てん化のために重要と考えております。

 情報発信手法につきましては、また後ほど御説明があるかと思います。

 このように1-3につきましては、数値目標を十分クリアしておりますし、顕著な業績が上がったことから、自己評価としてSとさせていただいているところです。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 それでは、引き続き、医療に関する項目についての説明を病院長、水澤から説明させていただきます。

 まず、2-2の資料の11ページをごらんください。評価項目1-4、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供でございます。

 中期計画といたしましては、高度先駆的な医療並びに医療の標準化を推進するための最新の科学的根拠に基づいた医療の提供というように分けて説明させていただいておりますが、実質は一体化して行っていると言うことができると思います。

 以下に主な取り組みを掲げてございます。

 4点挙げさせていただきましたけれども、まず、第1点が光トポグラフィ検査を用いた鬱症状の鑑別診断補助の治療でございまして、平成21年の129件から416件と増えていることと、この間に昨年度保険収載されたということ。その条件といたしまして、我々のセンターの講習会を受けることが定められておりまして、そのことでもその貢献をわかっていただけるかと思います。

 前の委員会で御質問がございまして、これから多施設を含んだ形でのバリデーションをやっていくということになりますけれども、我々の施設だけでの症例の中で少し検討いたしまして、鑑別の目的で152例の検討を行いまして、診断の不一致率が54%ございました。これは例えばうつ病という診断の方で光トポグラフィをやりますと双極性障害といった違う波形が出る、不一致であるということでございます。

 それによって治療を変更したというのが38%ございまして、40%近い方がそれによって治療を変更して、しかも、それによって改善した率が71%ということでございまして、こういう診断方法を用いることによりまして、鑑別診断が進んで治療の改善が得られるという1つのデータになるのではないかと思っております。

 2番目が薬剤血中動態モニターに基づく高度先駆的医療でありまして、これはパーキンソン病の治療でございまして、パーキンソン病の治療ではレボドパが基準でございますけれども、その血中濃度を測定することによりまして、病気が進んだ段階でウェアリング・オフと言われる症状の非常に大きな変動が見られます。体が固まって動かなくなる状態から、体が動き過ぎてジスキネジアと言われる状態、あるいは精神症状を示す状態になりますけれども、そういう変動が血中あるいは脳中のレボドパの濃度に依存するということがわかっておりまして、それをきめ細かく測ることによりましてきめ細かい治療をするというものでありまして、これは行えば必ず効果があるという形のものでございます。

 なぜそれが普及しないかということに関しましては、一検体当たり、多分今では1万円くらいかかるということでございます。我々の施設では投与する前と後、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間と7回にわたり採血を行い、その血中濃度を測って、そのような難治性の方々に対してこういう医療を提供しているということでございます。効果に関しましてはそのように御理解をいただければと思っております。これも56件、59件から3倍以上の180件というように増えております。

 そのほか3番目が反復経頭蓋磁気刺激装置によりますうつ病の治療でございまして、うつ病の治療はお薬だけでは単剤では30%台、複数用いましても60%程度の効果しかございません。一方、電気けいれん療法は非常に有効ですけれども、全身麻酔が必要であるとか、副作用として認知障害があるとかといった問題がございまして、この磁気刺激療法が非常に期待されているところでございます。我々は、この期間におきまして、それを準備してまいりまして、昨年度、専任の医師の配置を決定いたしまして、採用してこれを進めているところでございます。

 4番目が認知行動療法でございまして、これは認知に働きかけて精神症状を緩和するという一種の精神療法でございますけれども、平成23年度にCBT、認知行動療法センターを全国に先駆けて設置いたしまして、これまで研究を進めてまいりました。25年度の1,000件という数から、26年度は2,000件と2倍以上の数に増えておりまして、効果が確認されておりますうつ病等以外にパーキンソン病等の身体疾患あるいは患者さん以外の患者さんを介護する家族の方々への適用も拡大してきて効果を確認しているところでございます。

 2番目の医療の標準化を推進するための最新の科学的根拠に基づいた医療の提供につきましては、次のページにございます7つの専門疾病センターの御紹介をさせていただきたいと思います。

 我々は病院、研究所が一体となって、研究と診療を進めるという方針で取り組んでおりまして、先ほど御説明がありました病院をもとにした研究というものと同時に、高度先進的な医療を行っております。そのためにこのような7つの専門疾患センターをつくってございますが、多発性硬化症と筋疾患につきましては、今、御説明がありましたので割愛させていただきますが、例えばてんかんにつきましても、希少難治性のてんかんのレジストリを開始してございます。

 また、事件がございましたけれども、てんかん診療の1つの問題点は、一般のかかりつけの先生から神経内科、精神科、脳外科等の神経の専門家、そして、さらにてんかんの専門医に至るネットワークが不十分という点が1つ挙げられております。そういうことに対する地域診療の連携のネットワークシステムの構築を進めております。また、日本のてんかん医療の展望に関しまして「てんかん医療アクションプログラム2015」というのを作成いたしまして公表してございます。

 パーキンソン病につきましては、今、申し上げましたことのほかに、パーキンソン病が長く進んでまいりますと、非常に変わった姿勢、強い前屈とか側屈等が出てまいりますけれども、そういうものの原因筋を同定して、それを局所麻酔剤あるいはリハビリで治療するという新しい方法を発見いたしまして、これは特許も申請しておりますが、効果を上げております。

 また、患者さん参加医療ということでも重要でありますけれど、パーキンソン病の患者さんが自発的に参加する臨床研究、治験のためのグループ(Team JParis)というものを構築いたしまして、これも多くの参加を得ているところでございます。また、パーキンソン病の進行に伴うバイオマーカーを求めるという国際研究であるParkinson's Progressive Markers InitiativePPMI)の日本担当責任者として革新脳からの外部資金を得て研究をやっているところでございます。

 さらに、地域精神科モデル医療につきましては、多職種のアウトリーチ活動を特に重点的に行いまして、厚生労働省に資料を提出することにより、26年度の診療報酬改定におきます精神科訪問看護等アウトリーチ関連の加算の新設につなげることができました。また、デイケア室では就労支援を行い、100名を超える方の一般企業への就労者を輩出しているところでございます。

 睡眠障害センターにつきましては、24年度の設立でございますけれども、睡眠学会認定医によります専門外来を開設して、平成22年度の219名から26年度の469名と倍増する患者さんを診察しておりますし、認知行動療法に加えて、高照度の光療法を中心とした時間生物学的な入院治療プログラムを開発いたしまして、治療成果も挙げているところでございます。

 また、そのための高度な検査も行っておりまして、これは39件から345件ということで10倍に増えているところでございますし、一般の方々が参加できる睡眠障害診断のプラットフォームを作成・開発いたしまして、ホームページ等に掲載しているところでございます。

 最後になりますけれども、統合失調症の早期診断・治療センターというものも25年度に設立いたしまして、これは患者さんからの参加を求める患者参加型の治療ということで、後にも触れますけれども、「患者手帳」を開発いたしました。そして、患者さんのセルフモニタリングの教育にそれを活用するということで成果を挙げております。また、患者さんのレジストリを開始いたしまして、認知リハビリテーションを含む多施設共同研究を開始したところでございます。

 以上、さまざまな成果を挙げることができまして、この期間の評価といたしましてはAということで自己評価させていただいております。

13ページに評価項目1-5の患者さんの視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということでございます。中期計画といたしましては、そこに5項目挙げさせていただきました。その主な取り組みでございますけれども、患者さんの自己決定の支援ということに関しましては、医療観察法病棟におけます患者会、通常の精神科におけるケア会議等を開催いたしております。また、24年度には、説明と同意及び説明書同意書に基づく基準、そういうものをつくりまして、病態に応じた説明文書を患者さんにも提供するというようになっております。セカンドオピニオンの実施件数は次の14ページを見ていただきますと、年々増えているということがわかっていただけると思います。

 また、その次の患者参加型医療の推進でございますけれども、23年度よりは患者満足度調査を実施するとともに、医療サービス検討委員会でその結果を検討いたしまして、その調査結果に基づくサービスの改善を実施しているところでございます。先ほど申し上げました統合失調症のセンターにおきましては「患者手帳」、これはEDICS NOTEと名前をつけてありまして、右側に絵がございますけれども、こういうものを開発して患者参加型の医療を進めているところでございます。

 チーム医療の推進につきましては、既に少し触れましたけれども、先ほど申し上げました全ての専門疾病センターにおきまして、モデル的なチーム医療を実施しております。また、厚生労働省が実施するチーム医療の委託事業を受託いたしまして、精神科の多職種チーム医療を実施しております。

 後でまた触れますけれども、特に医療観察法の病棟におきましては、全例に対してこういうチーム医療を行っているところでございます。また、電子カルテを導入いたしまして、全ての情報を多職種で共有できるようにいたしておりますし、そのケースカンファレンスは年間で150件以上を実施しているところでございます。

 4番目でございますが、入院時から地域ケアを見通した医療の提供ということでございまして、最初に挙げておりますことは、登録医療機関制度を実施しているということでございまして、その連携医療機関数は年々増加いたしまして125施設から378施設に増加しております。また、紹介率、逆紹介率は下のほうにグラフがございますけれども、いずれも目標を大きく超えて達成しているところでございます。

 3番目でございますけれども、保健所や市役所等と連携した医療ということで、訪問看護を極めて重視しております。これは平成21年度371件から3,827件と10倍以上にふえております。また、デイケアセンター、先ほど少し申し上げましたけれども、これによりまして100名以上の方に就労支援を行っております。そういうことで、25年度のデータによりますと、このデイケアセンターを利用することによりまして、平均入院回数、入院日数ともに著明に減少していることがデータとして出ております。そういうことを踏まえまして、精神科領域の訪問看護ステーションを設立することを決定いたしまして、今年度からそれを運営しているところでございます。

 5番目の医療安全管理体制でございますけれども、医療安全の研修会、感染症関連の研修会を、そこにございますように非常に多数開催いたしまして、医療安全に努めているところでございます。

 最後の客観的指標を用いた医療の質の評価でございますけれども、これは特に行動制限の量をできるだけ少なくする、最適化するというための指標の開発、システムの開発でございまして、従来、eCODEということでやっておりましたけれども、昨年度、日本精神病院協会あるいは厚労省等との話し合いの中で、新しい指標も含めまして改訂を行いましまして、PECOという新しいシステムを使って、これから質の評価を進めていこうということでございます。

 最後になりますが、病院全体といたしましては、平成23年度に日本医療機能評価機構の機能評価を受けまして認定を受けていただいているところでございます。

15ページです。評価項目の1-6でございます。そのほか医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供ということでございまして、中期計画といたしましては、医療観察法対象者への医療ということと、重症心身障害児あるいは障害者への医療の提供ということでございます。医療観察法対象者につきましては、我が国で最初かつ最大の医療観察法病棟といたしまして、また、唯一の身体合併症医療対応ができる病棟といたしまして、全国の31の指定入院医療機関の牽引役としてこれまで活動してまいりました。

 例えば透析など身体合併症を地域医療機関でも行うといった新しいモデルをつくりまして、それを提供しておりますし、外来診療につきましても重層的、包括的な多職種によるチーム医療モデルを構築いたしまして、それを実施して成果を挙げております。

 最後のポツを見ていただきますと、先ほど申し上げました多職種によるプログラムといたしましてケアプログラムアプローチを実施しておりますが、現在は既に全対象者について行っておりまして、平成25年度は268件、平成26年度は250件の達成を見ております。

 重症心身障害児あるいは障害者への医療の提供につきましても、在宅または他施設で治療困難と言われた患者さんに対しまして、外科、歯科、栄養あるいは褥瘡といった多方面からのサポートを実施できる体制を整えておりまして、60床の患者さんは常に満床という状態で運営しております。在宅支援病床を確保するというレスパイト入院の数も平成22年度の115名から平成26年度の566名ということで、約5倍の増加ということでございます。したがいまして、こちらにつきましても期間評価としてAという評価をさせていただきました。

 以上、医療について御説明申し上げました。ありがとうございました。

○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長(企画戦略室長)

 引き続きまして、評価項目1-7~1-9まで、精神保健研究所の福田より御説明申し上げます。

 お手元資料、16ページをごらんください。評価項目1-7の人材育成についてでございます。

 主な取り組み状況として、リーダーとして活躍できる人材の育成ということで、臨床研究推進のための臨床研究研修制度、こちらを整備いたしまして、その数、そして内容ともに充実してきております。

 特に、システマティックレビューからメタアナリシス、そしてEBMを踏まえた、いわゆる研究計画の作成といった点につきましては、内容を充実させて取り組んできているところでございます。

 また、その下、モデル的研修、講習の実施についてでございます。先ほど御説明がございましたが、CBT、認知行動療法等のモデル研修、これはここで研修が始まるまでは、国内において適切な、いわゆる指導を得てCBTを行える方はほとんどおりませんでした。ここでまず実施者の確保という部分と指導者の確保というようなところに重点を置いてモデル的な研修を実施いたしております。

 また、光トポグラフィ研修につきましては、こちらもお話がございましたように、診療報酬で保険収載された際に当たってのいわゆる算定基準として位置づけられているなど、非常に重要な位置づけを占めているところでございます。中期目標に掲げました数値目標等を全て大幅に上回る実績を上げておりまして、数値的にも上回り、内容的にもその成果を上げているということで、この期間の評価としてAをつけておるところでございます。

17ページをごらんいただきたいと思います。評価項目1-8、医療の均てん化と情報の収集・発信についてでございます。主な取り組みをごらんいただければと思いますが、ネットワークの構築の推進ということで、我が国で最初の医療観察法の指定入院機関、そして、我が国で唯一の合併症対応を持つ医療観察法の指定入院医療機関であります。そこを持つセンターといたしまして、いわゆる医療観察法の、特に入院医療を中心としたデータ、そして、その分析というもののネットワークの中心になっております。

 また、自殺対策、厚生労働省が設置・運営します薬物依存に対する全国拠点、同じように厚生労働省が重点課題として新たに検討して設置しております摂食障害、これの全国基幹センターというような形で幾つかの重要課題につきまして、その医療、研究、そして情報発信のネットワークの全国的な中心として位置づけられ、また、活動を進めているところでございます。

 また、それらの情報の発信ということが非常に重要でございまして、これらにつきましては、まず、18ページをごらんいただければと思います。これも過去の評価で一時的に評価いただいておりますけれども、いわゆる情報発信でホームページを通じた発信につきましては、特に研究関係の情報発信というものが平成24年よりかなり充実してきている状況でございまして、全体としての目標を大きく上回る充実した内容になってきてございます。

 また、精神・神経・発達障害・筋といった研究領域、医療領域につきまして、国民の皆様方にも広くその成果を周知し、また研究の恩恵を理解していただくということの重要性に鑑みまして、昨年度からでございますけれども、メディア塾と申しまして、いわゆるマスメディアの方々、こういう方々でいわゆる科学記事を中心に担当しておられる方々に丸一日缶詰とか、また2日間泊まりがけというような形で、私どもの医療の成果、そして、研究の成果、これからの方向性、全国的な展開といったようなさまざまな課題について情報発信をさせていただいております。

 こういったことも通じまして、広く国民の方々に私どもの研究成果を理解していただくとともに、さらにそういったシステム化の取り組みが進むことを期待しているということでございます。こういったことで、数値目標、内容ともに当初の目的を多く上回るということで、期間評価といたしましてはAとつけさせていただいております。

 評価項目1-9でございます。19ページをごらんいただければと思います。

 国への政策提言、その他、我が国の医療政策への推進等ということでございます。こちらにつきましては、20ページに危険ドラッグ関係の取り組みについて、いわゆる特出しで例としてお示ししてございます。

 まず、我が国で初めて危険ドラッグにつきまして全国調査をきちっと行ったということがございます。そして、これが厚生労働省、文部科学省、法務省、警察庁を初めとして、その対策の端緒となったということでございます。

 アラートを発するだけではなくて、それに対するどういう対応をすべきかということでありまして、これにつきましては、従来のそういった危険薬物の指定のあり方を大きく考え方を変えるということで、包括指定の枠組みを提案し、また、その包括指定の枠組みに沿った形でのいわゆる薬物の危険評価、毒性と依存性というものを評価する。そして、そのデータを提出するという形で、新しい危険ドラッグの法的な対応というものについて、法的体制の枠組みとその具体的な内容について貢献をしてきたというようなことでございます。

 また、薬物依存につきましては、その治療ということで、実際にそういった形で依存症になった方々につきまして、どのような治療法を行ったらいいのかということにつきましても、米国のモデルを改良した形で日本風に改めましてワークブックを作成し、これも全国に均てん化を進めているという状況です。

19ページをまたごらんいただきますと、そのほか、いわゆるその時々の厚生行政の重要課題につきまして、適切に制度を提案し、またはデータを提案することでそれぞれの政策の対応に貢献をいたしてございます。

 例えば発達障害や高次脳機能障害、これらが法的に整備をされまして、その対応を進めるに当たって障害者手帳の内容が必ずしも十分でないということがございまして、そういった診断項目等に対する基準というものの改訂に貢献をいたしております。これは23年のことでございます。また、24年には自殺の大綱の見直しがありまして、このところでは、いわゆる地域の対応モデルというものをきちっとつくっていく必要性ということも含めまして、大綱の見直しの方向性に大きな貢献をいたしてございます。

 また、東日本大震災を踏まえた形で、心のケアのあり方につきましては、DPATという枠組みを提案し、その具体的な対応マニュアルというものの案を作成し、これは厚生労働省の通知、そしてまた予算的なシステムとしても運用されているという状況でございます。

 そのほか、診療報酬関係につきましては、実態調査、ガイドラインの作成等を通じまして、これも一部政治的な議論にもなっておりますけれども、薬物の使い方、精神療法の重要性といったことにつきましては、エビデンスとともに提案も進めてきているというような状況でございます。

 そのように、各政策分野につきましては、一つ一つ地味のものではありますけれども、各年度適切に内容を重ねてきているという点、さらには、内容によりましては、大きく政策の方向性を動かして対応を進めたという点を踏まえまして、期間評価といたしましては、自己評価Sということでつけさせていただいております。

○国立精神・神経医療研究センター財務経理部長

 財務経理部長の中澤です。よろしくお願いします。

 私からは、資料の21ページから説明させていただきます。

 まず、効率的な業務運営の取り組み状況でございますが、副院長複数制導入につきましては、臨床研究の推進及び経営改善の担当と教育研修及び情報を担当する特命副院長を設置いたしました。

 事務部門の改革につきましては、効果的、効率的な運営体制となるように22年度から1局4課制から3部5課制といたしました。また、事務職員定数につきましても削減、広報の活動の体制強化、出張旅費の一元管理など事務の効率化を図ってまいりました。

 ガバナンス強化では、監事による施設長面談を実施しております。

 また、研究につきましては、研究プロジェクトのあり方の見直し、組織の垣根を越えたプロジェクトを立ち上げ、研究開発費の集中、選択を実施いたしました。

 これらのことを評価いたしましてB評価とさせていただきました。

22ページの効率化による収支改善、電子化の推進でございます。

 最初に、給与水準の適正化につきまして、職務給の原則に従いまして給与の制度の見直しが行われ、調整額につきましても勤務実態に応じた見直しが行われました。

23ページの表で収支について御説明させていただきます。

 まず、22年度から26年度までの5カ年を累計としまして、経常収支率は97.5%となりました。24年度の新病棟のオープンに伴いまして減価償却などにより経常収支率に影響が及んでしまいました。しかし、下の表のとおり、医業収支につきましては、26年度は少々落ちましたけれども、全体的に年々改善しておりまして、収益につきましても確実に増加しております。

24ページの材料費の節減では共同入札を実施し、経費節減を図り、SPDによる在庫管理により、棚卸資産残高の減額及び材料比率の減少を図りました。また、一般管理費の節減は、21年度と比較して、中期計画を上回ることができました。

25ページの建設コストの適正化につきましては、建設単価を民間ベースの単価を基準にして、工事の投資についても効率化を図りました。

 次に、収入の確保でございますが、医業未収金対策としてクレジットカード決済を導入し、滞留債権の回収に当たっても督促手順のルール化を図り、年々減少させ、26年度は0.011%となりました。その他、新たな施設基準を積極的に取得し、査定率についても26年度は0.24%とほぼ毎年減少している状況でございます。

26ページの電子化の推進でございますが、センターの通知等のペーパーレス化、申請課題、患者登録事業の電子的受け付け、アンケートの取りまとめなどの効率化を図り、セキュリティーにつきましても、新たに情報セキュリティー規程を制定し、対策を講じたところでございます。これにつきまして評価はBといたしました。

27ページでございます。法令遵守と内部統制の適切な構築でございます。

 まず、コンプライアンスの推進を図るために、24年4月よりコンプライアンス室長と監査室を設置して内部監査を実施しております。さらに、契約監視委員会、契約審査委員会を設置し、契約状況の点検、方法等について審査等を行っております。

 また、研究者が財団法人等から交付を受けた研究費についても、発注担当と検収担当を分離し、内部牽制等を強化して、研究不正への対応としても、研究不正防止規程を制定いたしました。これらを評価いたしましてBとさせていただきました。

28ページの財務内容の改善に関する事項につきまして、自己収入全体といたしましては表のとおり、総計では22年度と余り変わらない結果になってしまいましたが、外部資金につきましては積極的に受け入れをしておりまして、ほぼ年々増加している状況でございます。

 資産及び負債の管理につきましては、22年から26年までは新規の借り入れはなく、財産処分も特にございませんでした。これらを評価いたしましてB評価といたしました。

 最後に29ページのその他運営に関する重要事項につきまして、人事システムの適正化で役職職員の医師及び研究者に年俸制を導入し、そのほかの職員につきましては、業績評価制度を導入いたしました。また、国、国立病院機構、その他、ナショナルセンター等々、人事交流を積極的に推進し、女性の働きやすい環境整備のために規程の整備等を行いました。人事に関する方針といたしまして、離職防止のため、職場満足度調査を実施いたしまして、職員の募集につきましては公募を原則として採用しております。

 その他といたしまして、年度計画につきましては進捗状況を幹部に報告して、全職員に対しては運営改善等の提案窓口を設置いたしまして対応しております。これらを評価いたしましてB評価とさせていただきました。

○永井部会長

 ありがとうございます。

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。

○藤川委員

 1-9の評価ですが、5年間で拝見すると1回だけ4年目にSがついていて、今回、5年間トータルでSという評価をされたというのは、なかなかドラスチックな評価だという気もしなくはないのですけれども、しかも基準の見方として去年までのものを少し低目にという中でもこのように考えられたというのはドラスチックかなとは思うのですが、特に危険ドラッグに関するところというものに注目されているのだろうと思いますし、あと、包括指定というやり方が非常に大きいのかなというように思ったのですが、我が国初の包括指定だったということなので、このあたり、注目されているのであろうと思う中、包括指定というやり方は、世界的には一般的なものなのか、世界的にもまだほとんどなかったものをやったのかというところが素人はわからないので、そのあたりを教えていただけますか。

○国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所長(企画戦略室長)

 我が国の場合は、非常に厳密に一つ一つの物質を規定してきたという経緯がございまして、そういう意味では、諸外国の例に学びながらという部分はあろうかと思います。

 それから、ドラッグ関係につきましては、日本の場合は非常に特異な状況にありまして、欧米諸外国ですと生涯経験率みたいなものは20%から50%ぐらい、規制の幅が広い、対象のものがかなり緩い部分もあったり、場所によるものもあるのでしょうけれども、非常に使っている人が多いわけなのですが、日本の場合は約10分の1ぐらいなのです。覚せい剤等を含めても2%から5%くらいということになっています。こういった実態も含めて、最近は予算がなくなって2年に一度みたいな形になっているのですけれども、全国的にそういった実態把握をきちっとしている。そして、新たな問題対応も含めて、そういった項目を書いている。そういったことも含めて、この部分は私どもセンターが日本で唯一進めているもので、しかも継続的に進めているものであるということで評価しているということでございます。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 追加ですけれども、包括指定にしたことによって、それまで個々の化学構造を持ったものをその都度指定をすると、簡単に構造を変えられて、次に、またそれは網から外れたものとして登場してくる。その後追いをずっとやってきたという経緯があって、やはり包括指定にすることで、それに少しでもとどめを刺そうという狙いということがあります。

○深見委員

 全体的に非常に堅実にやるべきことをやってきているなという印象を持ちました。7つの専門疾病センターをつくって、病院、研究所と一体的な研究を進めてきたというところも評価できると思うのですけれども、実際にまだまだ筋ジスにしろ、パーキンソンにしろ、統合失調症にしろ、怖い病気で治らないという印象を強く持っています。確かにエクソンスキップ等々の新しい医師主導治験等も行ってきているのですけれども、実際に本当に治る病気に貢献できているのだろうかという、そのあたりのところをもう少しお話ししていただけますでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 確かに私どもの担当しております領域といいますと難病が多いということがございまして、なかなか病態がわからない、治療がないということが前提になっております。その中で、御指摘のように新しい治療がでてきているのは事実ですけれども、実は新しい研究は医療の改革も招いておりまして、例えば筋ジストロフィーの場合に、その中心となるデュシェンヌという病気では、この15年ほどで10年くらい寿命が延長しております。確かに筋ジストロフィーの患者さんたちが歩くようになるところまでは行っていないのですけれども、療養等も含めますと、かなりの変化がございます。その背景として研究の進展があって、それが医療の進展を招いてよい結果が出て来ているということがございまして、これが1つの例でございますが、パーキンソン病や神経疾患あるいはより大きな目標である精神疾患についても、そういった流れをつくり出すことが大事である。そのときに御指摘があったように、やはり治療、本当に治るということが目標になるということは重要だと考えております。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 追加でよろしいでしょうか。基本的には同じことでございますけれども、今、筋ジストロフィーの話がございましたが、例えばパーキンソン病等におきましても、多分おっしゃるような根本的治療(完全に治してしまう、病気を進行しなくするという治療)はまだできておりません。これができているものは、神経変性疾患等の難病についてほとんどないと言ってもいいかと思います。ようやく芽が見えつつあるといったところです。

 しかしながら、例えばパーキンソン病も先ほどの筋ジストロフィーと同じでありますけれども、今、使われている、先ほど私が申し上げた、例えばレボドパによる治療につきましても、対症療法ということになりますが、それで症状をよくすることで、例えば生存期間とかQOLを上げるといった形の効果はあります。それが第1点です。

 第2点は、根本的治療ですけれども、これは現在、例えば一番進んでいるのはアルツハイマー病とか、筋萎縮症の領域とだと思いますが、メカニズムがわかってきましたので薬ができつつありまして、根本的に、例えばたまってくるものを除去するといった薬は開発されつつあります。それを現在、治験をして、本当に人に効くのかを試すというような状況になっております。我々が扱っている、もっと難病の患者さんの数の少ないものにつきましては、まだこれからという感じになると思います。

○永井部会長

 先ほどのエクソンスキップの話ですが、本当にどこまで入って、どのくらいそれが変わるかという、実際どうなのですか。導入効率、また発現率。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 今、御質問がございましたエクソンスキップという特殊な治療でございますけれども、動物レベルでの実験結果をもとに臨床試験が現在開始されております。臨床試験では、骨格筋の10%程度の細胞での欠損分子ジストロフィンの発現と機能の改善が目標になっていまして、症状の進行が抑制されることが期待されます。ただ、先生御指摘のように問題がございまして、筋ジストロフィーの場合に骨格筋と心筋が障害されますけれども、第1世代の核酸医薬品では心筋に対する効果は期待できません。

○永井部会長

 人の骨格筋でも10%ぐらい入るのですか。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所長

 核酸自体はもっとたくさんの細胞に取り込まれますが、ただ、10%以上の骨格筋の細胞で新たに遺伝子のスプライシングの過程が制御され、ジストロフィンをつくるということは立証できております。

○祖父江委員

 これはこの前もお話ししたのですが、今後の方針のことです。これはサポーティブな受け取り方をしていただくとありがたいのですけれども、この5年間で恐らくやるべきこと、思いつくことはほとんどやってこられて、今、その仕込みが少しずつ花開いてきつつあるところだと思うのですが、次の6年間、研究型に移行してどうやるのかというところが、どうしても議論を何回でもやる必要があるのだというように思いますが、これは拝見しますと経常収支も医療収支も、いわゆる競争的資金もそんなに伸びていませんね。この前、それをどうするのだというお話を伺ったときに、スクラップ・アンド・ビルドが1つ大きなとおっしゃったのですが、これは今、意見しますと、全部必要で、これを潰してまた回転していくとなると、内向き回転みたいな形になりそうな感じがするのです。これはどうするのかという。多分いろいろなことをお考えだと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

 サポーティブな御発言をいただいてありがたいのですが、まだ私たち、やり残しているところは収支という面からもあると思っております。ですから、収入に関して、何億というオーダー、あるいは何十億というオーダーでこれを上乗せすることは難しいとしても、1億、2億という小さい単位でも、これは収入を上げていくという努力はできる。それは恐らく見通しも立てられると思います。

 一方、どうしても支出のほうが大きいので、幾ら収入が上がってきても支出がそれを上回って出ていくと、これがマイナスにつながっていきますので、どうしても効率化といいますか、できるだけ中での節減といいますか、そこのところを最大限努力して、そこでまず収支をプラスにするということはやる必要があるだろうと思っております。

 おっしゃるように、私たちもスクラップ・アンド・ビルドというのはそんなに軽々にできるものではないと思っております。ただ、やはりそういったことも頭に置かざるを得ない。これはどうしても研究費そのものが、年々少しずつ落ちておりますので、そこをカバーしていくための方策としてとらざるを得ない部分はどうしてもあるだろう。ただ、それは研究の本体にできるだけ影響のないところでやることを考えようと思っています。

○花井委員

 今の祖父江委員の意見と重なるのですけれども、28ページの研究費、外部資金が余り伸びず、かつ、このようないわゆる精神・神経に特化したようなところは、役割としてはすごく期待されている。しかし、外部資金と言っても日本の場合は臨床研究で多分半分以上が民間になっている。民間というのは大体もうかるところにあるのであって、必要である研究をするためには公的資金が必要ですが、AMEDも規模としては期待よりかなり小粒なもののように見えるのですけれども、その中で、こういったセンターが今後国として必要な研究ということを推進するために、国のサポートとしてはどうあるべきという意見を聞いておきたいなという、これは教えてほしいということです。

○国立精神・神経医療研究センター理事長

現在の日本の財政状況というものを考慮せざるを得ないわけですけれども、研究・開発ということを進めようとすると、どうしてもそこには、すぐにそれが利益につながるといいましょうか、そういうものを生み出すとは必ずしもいかないですね。先ほどの筋ジストロフィーの研究もおそらく20年は既にかかって、ようやくそれが今のエクソンスキップを生み出しているという、非常に時間とお金がかかっている。それで初めて患者さんにお役に立てるようなのを生み出せるという、その事実というのは、国にも共有していただきたいというのが一番大きなところでございます。

 ですから、即成果があらわれて、即それが物になって薬になって、それが利益を生んで、それをまた使ってと、製薬会社がそういう方式でやるのだろうと思いますが、そういうものでは全てがいくわけではない。むしろそちらのほうが数としては少ないだろう。5年、10年という単位で得られるものはそれほど多くはないですね。そこのところは、公的な研究費でしっかりとサポートしていただくことによって、将来、10年、20年先に成果が出てくるという、そこのところが一番私たち強調したいところでございます。

○国立精神・神経医療研究センター理事

 一言だけなのですけれども、今、理事長から研究のことが述べられたと思いますけれども、診療も御存知のように同じでありまして、精神疾患、神経疾患の診療領域について、その診療報酬というものは、例えば外科診療とか、そういうものと比べて低く見積もられているように私は感じております。したがいまして、いろいろ努力をしてかなりよくやっているかなと、私自身一般の病院から異動してそれを感じております。多くの普通の総合病院だと赤字の領域だとは思っておりますので、これからも努力をしていきたいと思いますけれども、そういう面でのサポート、診療報酬面でのサポートも考えていただきたいと思っております。

○永井部会長

 よろしいですか。

 それでは、精神・神経研究センターの評価は以上といたします。

 では、事務方から連絡事項をお願いします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 本日御議論いただきました期間評価につきましては、今後、各委員の御意見等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行います。

 内容につきましては、後日委員の皆様にお送りいたしまして、各法人のほうにも通知いたします。

○永井部会長

 それでは、どうもありがとうございました。

 以上で終了いたします。

 では、休憩ということでよろしいでしょうか。

 

(休  憩)

○永井部会長

 それでは、時間になりましたので、国立長寿医療研究センターの第1期中期目標期間実績評価について御議論をお願いいたします。

 最初に法人から、評価項目1-1~4-1に係る実績及び自己評価について御説明をいただき、その後、議論をさせていただきたいと思います。

 それでは、よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター理事長

 先立ちまして、私から2~3分、時間をいただきます。まずは26年度評価に続きまして、期間評価、本当に御苦労さまでございます。

 2ページをごらんいただきます。国立長寿医療研究センターは心と体の自立を促進して健康長寿に貢献するというものでございまして、評価軸といたしましては、臨床志向あるいは重点研究、病院の研究、良質的な医療、均てん化、人材育成、政策提言あるいは効率的な業務などございますけれども、特に、この5年間力を入れました認知症について2ページに示してございます。

 それらは、まず創薬、モデル医療、データベース、情報発信など、認知症先進医療開発センターやもの忘れセンターを立ち上げる等センター内センターをつくりまして、おのおのの職種が、医師、研究者、看護師、または事務職に至るまで、理念を1つにいたしまして、この認知症といったものに取り組んでいく場合に、このような形で5年間の成果が出てきたというわけでございます。このようなものは最終的には人材育成だけではなくて政策提言に結びついて新オレンジプランの政策提言に至ったということでございます。おのおのの業務につきましては、認知症あるいはフレイル、また、その他の研究ベースについては、病院長、研究所長から話があると思いますけれども、一番大切にしておりますことは、センターでしかできないことというのは理念を1つにして、研究者、医師、事務が一体となって任務の業務を遂行することであるということで、そのモデルといたしまして認知症の図を提示させていただきました。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 研究所長の柳澤です。よろしくお願いいたします。

 引き続き業務実績概要資料を用いて説明をさせていただきます。

 3ページをごらんください。評価項目1-1、臨床を志向した研究・開発の推進について説明いたします。平成22年度から25年度まで評価AないしはSを頂戴しております。平成26年度並びに期間評価の自己評価はSとさせていただきました。

 中期計画の作成に当たりましては、研究所と病院と、またセンター内の連携強化、産官学等の連携強化、研究・開発の企画及び評価体制の整備、さらには知的財産の管理強化及び活用推進を主要項目とし、また可能な限り数値目標を設定いたしました。

 4ページをごらんください。主な取り組み状況をお示しいたします。

 右側のグラフにありますように、センター内並びに企業との共同研究数、治験数とも、目標値を大きく超えることができました。赤字でお示ししました3項目目に当たりますが、研究・開発の企画及び評価体制の整備。また、4項目目、知的財産の管理強化及び活用推進に関しましては、それぞれ評価委員会、知的財産管理本部会議を御専門の外部委員を招いて整備し、作業に当たりました。

 5ページをごらんください。この5年間の組織整備をお示ししております。研究所と病院との緊密な連携を主軸としつつ、長寿医療研究センターのミッション達成に向けた事業を効率よく進めるべく、順次複数のセンター内センターを設置、整備し、研究・開発に当たってまいりました。個別の紹介は時間の関係で割愛させていただきます。

○国立長寿医療研究センター病院長

 それでは、6ページをごらんください。病院における研究・開発の推進について御説明いたします。

 評価は22年度Bに始めまして、23年度から25年度まで、そして、26年度と期間評価を自己評価としてAとさせていただいております。

 この主な取り組み状況のところを見ていただきますと、1つ目の点、臨床研究機能の強化というのは、臨床研究推進部が病院所属であったのですが、26年度に治験臨床研究推進センターより改組いたしまして、CRCなども動員され、さらにPMDAからGCP適合施設とされるなど、臨床研究基盤も強化されております。

 また、2つ目の点、倫理性・透明性の確保に関しまして、臨床研究の説明・同意書は利益相反委員会において適切ということを確認された上で承認されており、右の写真にありますように、国立長寿医療研究センター、病院を利用される皆さんのためのハンドブック、これが22年に作成されたのですが、ここには緊急参加の意義、また、その安全、個人情報保護などをわかりやすく患者・家族に周知するために今も配布を続けております。

 7ページをごらんください。これは先ほどの理事長の臨床の御紹介がございましたが、フレイルを一例としたこの5年間の研究の推進の結果ですが、一番上にありますフレイルですが、これは厚生労働省が使っております基本チェックリストでこのフレイルが診断できるということを初めて明らかにいたしまして、その頻度が日本では1011%であるということを報告しております。

 2番目にありますサルコペニア、筋肉の減少症ですが、これも黒抜きのところがアジア診断基準作成とございます。これを私どもの施設が中心になって行ったということでございます。そして、世界的治験の受託に至っております。

 4番目の転倒・骨折予防でございますが、これはプロテクターでありましたり、転倒予防ガイドラインというものを世に送り出しております。

 その下、フレイルへのロボットの活用です。この右のほうにあります各種のロボットを活用してフレイルに対処しております。また、同等の機能も在宅医療支援、回復期リハ、地域包括ケアと、フレイルの機能を考慮した病棟機能を整備しておりました。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 8ページをごらんください。評価項目1-3、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について説明いたします。

 平成22年度から25年度まで評価AないしはSを頂戴しております。平成26年度並びに期間評価の自己評価はSとさせていただきました。

 中期計画の作成に当たりましては、重点的な研究・開発戦略の中で、特に認知症並びに運動器疾患を主要課題に設定するとともに、9ページの中段に赤字でお示ししていますように、具体的な方針として高齢者医療の均てん化に注力いたしました。

10ページをごらんください。主な取り組み状況をお示ししております。右側のグラフにありますように、学会発表数並びに論文数とも目標値を超えております。

11ページの右下のグラフをごらんください。臨床研究実施数をお示しておりますが、こちらも目標値を大きく越えることができました。

12ページをごらんください。高齢者医療の均てん化の成果をお示ししております。

 まず初めに、第一線の認知症の臨床の現場では大変大きな問題となっている異常行動等とのBPSDの初期対応ガイドラインを発刊いたしました。また、高齢者が寝たきりとなる最大の要因である転倒の予防のためのガイドラインも発刊いたしました。加えて、認知症の介護に当たる家族支援を目的とした小冊子も複数作成いたしました。

13ページと14ページには、この中期計画期間内における研究・開発の具体例として、アルツハイマー病に関する成果をお示ししております。

 まず、13ページの左下をごらんください。アルツハイマー病の脳内におけるアミロイド形成の開始点に働くアミロイドの種を発見することができ、現在、これに選択的に結合し、アミロイドの形成をピンポイントで阻止し得る薬剤、私どもはASIMと呼んでいますが、この開発を目指し、この5年間、A-STEP等の助成をいただきながら、独自に探索研究を進めてまいりました。幸い、昨年度までにアドバンストリードを獲得することに成功し、昨年度だけで2点の物質特許を出願いたしました。

14ページをごらんください。島津製作所との共同研究により、今後のアルツハイマー病の治療薬開発に大きく貢献すると期待されるアルツハイマー病の発症前診断を可能とする血液バイオマーカーの開発に世界で初めて成功いたしました。

○国立長寿医療研究センター病院長

 それでは、15ページをごらんください。

 高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供を御説明申し上げます。

22年度から25年度までA2つ、S2つで、26年度及び期間評価の自己評価はSとしております。その下の主な取り組み状況のところの1つ目の点、高度先駆的な医療の提供は、アルツハイマー病の診断に関しましては次に説明いたしますが、先ほどお示ししましたサルコペニアとか骨粗鬆症、また感覚器、歯科などの実績が上がり、脊柱管狭窄症や加齢黄斑変性、難聴などに最新の科学的根拠に基づいた医療の提供がなされました。

16ページをごらんください。最初の上のほうにありますが、国立研究開発法人で求められております研究成果の最大化の具体的な項目であります先進医療開発を達成いたしました。当センターが長年取り組んできましたPETによる認知症画像研究の豊富な経験と実績のもと、真ん中にあります先進医療B「FDGを用いたポジトロン断層撮影によるアルツハイマー病の診断」として承認され、組み入れを開始しております。

 また、下のところですが、従来の脳血流SPECTに比べて高精度で認知症診断が可能で、治療方針決定や早期病変にすぐれ、FDG-PETの効能効果追加と保険収載を目指しております。

17ページをごらんください。下半分のところですけれども、病院での臨床研究の進展のうち、歯科、感覚器、皮膚の高度先駆的医療の例をお示しいたします。

 右の下のところにペンライトのような機器がありますが、これはノーベル賞受賞者の天野先生の技術で、紫外線LEDによる口腔滅菌装置です。その下にありますのが、光干渉断層画像、OCTと言われる方法で、PMDAとの相談もあり、実用化に近づいております。それによって打ち出された絵として、左のほうに緑色のきれいな画像がありますが、これは口唇腺のCTによる高解像度3次元画像です。このような形で画像化されたのは初めてということでございます。

 真ん中ありますのは、褥瘡の表面スメアで、細胞外タンパク解析を用いた病態診断です。

18ページをごらんください。患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供について御説明いたします。

22年度から25年度、自己評価はAで、期間評価もAとしております。

19ページをごらんください。最初の点ですが、患者の自己決定支援に関しましては、認知症を患う人を支える、家族の方へなどのような平易な言葉で丁寧な説明に努めまして、患者等の参加型医療あるいは多職種でケースなどを実施いたしましてチーム医療を推進しました結果、グラフですが、これは患者満足度でございます。入院はほぼ右肩上がりに毎年平均を上回って、外来も26年度を除き、同様でございました。

 チーム医療につきましては17ページの上の図ですが、これが褥瘡対策チームであるとか栄養サポートチームの連携のさらなる状況ですが、真ん中にあります赤丸で囲む認知症サポートチームというのは、認知症に対するサポートチームというのを日本で初めて私どもが立ち上げた多職種共同のチーム医療でございます。

 それでは、20ページをごらんください。その他、医療政策の一環として、センターで実施すべき医療の提供について御説明いたします。

22年度B、その後はAで、26年度の自己評価と期間評価、自己評価はAとしております。

21ページをごらんください。そこの主な取り組み状況ですが、最初の点、認知症に関する医療及び包括的支援は、利用者、介護者、家族などを交えましたカンファレンスは26年度に235回と対21年度230%と増加しております。

 また、2つ目の点、モデル的な在宅医療支援は、登録制の在宅医療支援モデルを展開しまして、6年間で登録患者数は75から172名、登録医は12名から107名とふえておりまして、在宅死亡率は地域平均の3倍、33%でございました。

 そして、3つ目の点、モデル的な人生の最後の段階における医療は、エンド・オブ・ライフ・オブ・チームの活動がこの5年で8件ありまして、そのうち非がんは40%と全国の3%より著しく高く、グラフでお示ししましたが、その主な依頼は家族ケアと意思決定支援が7割ということで、がんとの大きな違いを示しております。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 それでは、評価項目1-7、人材育成に関する事項について御説明いたします。

 自己評価、期間評価Aとしております。

22年度Bとしておりましたが、それ以降は26年度の自己評価に至るまでAをいただいております。

 中期計画の中身が2点ございまして、リーダーとして活躍できる人材の育成とモデル的な研修講師の実施ということでございました。

 まず、リーダーとして活躍できる人材の育成につきましては、例えばレジデントとか連携大学院を通じた育成に加えまして、次のような事項 -若い医学生を対象とした老年学生、セミナーの実施。あるいは先ほどお話がありましたけれども、当院で実施した終末期医療への人材育成の成果を利用して、日本全国のモデル医療機関に対する人生の最終段階における医療、意思決定支援に携わる人材の育成というのを私どものセンターで実施したというような大きな成果がありました。

 モデル的な研修としては、何と言っても高齢者医療あるいは在宅医療に関する総合的な看護研修の実施がございます。そのほか、特別なモデル的な研修・講習として口腔ケア、重複しますが認知症サポート医、特有のものとしては薬剤師に対する褥瘡の薬物治療実習、こういったさまざまな特別な研修の実施をしております。1-7については以上です。

○国立長寿医療研究センター病院長

 それでは、23ページをごらんください。

 医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項について御説明いたします。

22年度Bで始まりまして、23年度から25年度A、26年度は自己評価でSをして、期間評価としてはSといたしました。

 下の枠の中の主な取り組み状況ですが、医療の均てん化は、認知症サポート医養成研修を担当して、22年度は404名でありましたが、右下のグラフのように右肩上がりで増加し、26年度は642名を数え、累計3,874名と29年度に4,000名というオレンジプランを前倒しで達成できる見込みとなり、新オレンジプランでは、それを踏まえて目標が5,000人に引き上げられるという状況になっております。

 さらに認知症初期集中支援チームの専門医師の要件にサポート医が必須となるなど、このサポート医の重要性も高めてきたところがございます。ほかに先駆けまして、全国に出て養成研修をするという活動を拡大、継続してまいりました。

 また、情報収集・発信はマスメディア、インターネットを通じて行いましたが、ホームページは最終年度に全面リニューアルに至り、アクセスは110万件に増加いたしました。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 次に、めくっていただきまして、評価項目1-9、政策提言に関する事項でございます。

 期間評価としてはSとさせていただいております。

 中期計画の中身は大きく3つあります。国への政策提言、公衆衛生上の重大な危害への対応、国際貢献、この3つでございます。

 まず、政策提言に関する事項ですけれども、柱が大きく2つございます。

 1つは、在宅医療推進会議、もう一つは、認知症医療介護推進会議が私どもの大きなツールになっています。これらはセンターのみならず関係の学会、医師会など関係の事業者の団体、それから厚生労働省にも参加していただいて、それぞれのテーマについて検討し、政策提言を行っていくツールでございます。

 これらの成果として、まず、在宅医療につきましては、平成22年度、もう独法化の直後でございますけれども、在宅医療推進会議における検討、取りまとめを経まして、医療計画がちょうどそのころ見直しになっておりましたけれども、この際に、在宅医療を今後どう推進するかといった意見提言を行いました。具体的には、厚生労働省の医療計画の見直しに関する検討会におきまして、在宅医療体制構築に係る指針を提言いたしまして、鳥羽理事長が出席して意見を交わしております。これらの提言が花を咲かせまして、現在、その後の厚生労働省における在宅医療の推進の展開について大きな反映をされております。

 具体的には、拠点事業の評価を当センターで担う。あるいは今年度の介護保険法の見直しで医療、介護の連携というのが盛り込まれましたけれども、そういったことに根幹部分が盛り込まれております。

 もう一つ、この5年間の極めて大きなトピックとして、認知症に関する政策提言があります。認知症については、特に26年度、期間評価、これまでずっとAでしたけれども、26年度については自己評価Sにさせていただいております。この極めて画期的なところは、まず、昨年度、認知症サミットの日本後継イベントについて、厚生労働省と私どもとの共催で実施をいたしました。世界各国のさまざまな研究者あるいは政策担当者が集結いたしまして、今後の認知症施策の世界的な動きについての検討がなされております。

 この中で総理が出席されて新オレンジプランをつくるべしという指示が大臣宛てにありましたけれども、その策定に当たりまして、今後の認知症に係る提言を私どもに出しました。その後、内閣総理大臣との意見交換に招かれ、鳥羽理事長から今後の進め方について、研究の立場からの意見陳述をいたしました。

 また、国際貢献になりますけれども、ことしの3月、前年の末ですが、WHOで認知症に関する保健大臣会合が初めて開催されております。この中でも特に日本の得意なケアの分野について鳥羽総長から世界に向けた発信をしております。

 3つ目の点、認知症についてさまざまな研究報告などを通じた政策提言があります。その中でも認知症初期集中支援チームについては、そのチームの立ち上げ、モデル事業、研修、評価、こういった全ての過程にセンターが集中的な役割を果たしておりまして、今回も医療介護総合確保法の中でも平成30年度までには全市町村で実施するといったようなことになっております。このように26年度は、これらの政策提言が大きく結実した年である。こういったことを全体として期間評価としてSをつけさせていただいたところでございます。

 次に、評価項目2-1でございます。効率的な業務体制。ここからは管理のほうに移ってまいります。

 中期計画の内容としては、効率的な業務運営体制ということで、人的・物的資源の有効な活用とか、あるいは各部門の再編等を柔軟にやっていくといったことが記載されております。

 センター内センターの設置については、これまでの説明の中でも申し上げましたけれども、下段にございますように、認知症先進医療開発センター、もの忘れセンターなど、当初から設置するとともに、2つ目の点になりますが、治験・臨床研究推進センター、あるいは長寿医療研修センター、こういった間接支援部門を強化することによって、研究成果の最大化に資する体制をとったところでございます。

 その他、複数院長制などの課題について着実に実施しております。

 次に、評価項目2-2、収支改善の項目でございます。

 中期計画の内容は、収支相償の経営を目指すということ。

 5年間累計の損益計算で経常収支率が100%以上となるよう経営改善に取り組むというのが最大の課題でございました。

 1ページ飛んでいただきまして、センターの運営管理等というグラフのページがございます。

 左上に経常収支率のグラフがございます。最初の年、22年度については御心配をおかけいたしました。経常収支率は98%ということで赤字になってございましたけれども、その後、4年間については黒字を確保しております。26年度については交付金の減少あるいは診療報酬の見直し等、各センターとも極めて厳しい環境であったと思っておりますけれども、その中でもとりあえず黒字を確保できたということは大きいことだと思います。

 その下の利益剰余金にもございますように、期間を通じまして13億弱の利益剰余金を確保いたしまして、目標であります5年間を累計した損益計算100%以上ということを大きくクリアしたところでございます。

 その下の評価項目2-3に移っていきたいと思います。法令等内部統制の適切な構築ということでございます。これについては、4年間Aとして、26年度は特に何か悪くなったわけではないのですがBということにしておりまして、全体としてもBという自己評価にしております。

 法令遵守等内部統制の適切な構築の項目でございます。競争的な契約の確保、内部監査等の組織の構築等について着実に実施しております。

30ページでございます。評価項目3-1、予算、収支計画、資金計画のところでございます。

 期間評価として自己評価Aということにしております。初年度はBでございましたけれども、あとは26年度の自己評価も含めましてAということにさせていただいております。

 中期計画の中身としては、自己収入の増加が大きな項目であるかと思います。

 恐縮ですが、1ページ戻っていただきまして、先ほどのグラフのページにお戻りをいただきたいと思います。

 右のほうに自己収入に関する項目がございます。研究収益につきましては、26年度は若干減っておりますけれども、期間を通しまして右肩上がりに増加させております。一方で、寄附金については26年度に大きく増加しております。ホームページとか院内掲示などを通じまして、また、当センターの取組みが一般的にも非常に高く評価されたことで、当院とは必ずしも関係のない、当院の患者さんではないところからの大きな寄附もいただけるようになってきたというのが非常に大きな実績でございます。

 当センターの実績の評価ということは、その下の共同研究の獲得状況のグラフにもあらわれております。これは収益ベースではなくて契約ベースでの数字ではありますけれども、22年度は民間企業等との共同研究が2件ということでございましたが、逐年ふえてまいりまして、26年度では16件ということで、2億余りの契約が可能になってきております。多くの民間企業の中でも長寿の研究能力あるいは研究実績というのを評価していただきまして、こういった共同研究の獲得の増加とつながっているものだと思います。

30ページに戻っていただきまして、以上のような実績を考慮いたしましてAとしているところでございます。

 次に、最後の項目ですが、評価項目4-1、その他主務省令で定める業務運営に関する事項でございます。これについては、期間評価をAとしております。各年度Aでございます。

 中期計画の概要としては、人事システムの最適化、人事に関するさまざまな方針、その他の事項等ございまして、ここに掲げてありますように着実に実施しております。本件について特に申し上げたいのは、その他の事項のところにございますけれども、一番上ですが、老朽化した病院施設の更新整備に着手することになったということでございます。先ほど患者さんの満足度調査の中でも外来についても評価が今年度初めてナショナルセンターは平均よりも下回っておりますが、施設全体の老朽化がなかなか厳しい状況にございます。国立時代にはまだ施設の更新ということについての意思決定がなされておりませんでした。独法になって初めて、最初、当年度は赤字からスタートいたしましたけれども、その後、経営の改善等を見まして、今なら更新整備に着手できるという意思決定ができたというところでございます。

 最後のページに建替計画についての概要を載せておりますけれども、右下のスケジュールにございますように、今、実施設計を実施しております。昨年末には財投の資金を借り入れることができるという決定もいただいておりまして、今年度内には着工して、2911月には第1期の外来棟の完成、34年には第2期としての病棟部分の完成が予定されております。こういった意思決定ができたということが非常に大きな成果であったと考えておるところでございます。説明は以上でございます。

○永井部会長

 ありがとうございました。

 それでは、御質問をお願いいたします。

 これは建てかえで財投はどのぐらい借入される予定ですか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 建てかえの全体規模が100億弱というようなところでございまして、約90億近い借り入れになります。

○永井部会長

 それを返還する見通し、計画はきちっと立てられているわけですね。

年間何億円ぐらいずつ償還することになるのですか。

○国立長寿医療研究センター財務経理部長

 これからでございますが、一番最大になるのが大体4億5,000万から5億ぐらいの返済ということになろうかと思います。

○花井委員

 着実に5年間、本当に成果を挙げられたと評価したいと思うのですが、一応研究独法として、この5年間でS評価、トレビアンなアウトカムにというお達しがありまして、これはいわゆる認知症なりそういう高齢者医療において、この成果が1つのブレークスルーだという成果はどれに当たるのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 私から説明させていただいた13ページ、14ページになるかと思うのですけれども、それが1つだと思います。

 御案内のように、認知症、アルツハイマー病が主要対象でありますけれども、根治的な予防薬、治療薬というのは世界に一薬ともまだ開発されていないのです。さまざま理由があると思うのですけれども、1つは、今まで余りにも製薬企業の論理といいましょうか、方法論といいましょうか、それに頼り過ぎていたところがあると思うのです。私たちアカデミアも製薬企業と伍して協力体制をとっていくことが必要だろうと考えます。そういった意味で、私どものセンターに今から3年前に、初めてナショナルセンターで治療薬探査研究部という専門の創薬科学者をリクルートしてまいりまして部をつくりました。それまでのシーズを短期間の間に、先ほど申し上げたように物質特許出願まで展開できたことは確かな成果と考えます。もちろん、それが即お薬になるわけではありませんけれども、今までの独法前の状況とは相当変わったということが1点です。

 世界的にアルツハイマー病の根治薬の開発がなかなかうまく進まない理由の一つが、適正な臨床試験の対象者をリクルートする、探索するところに失敗していると思うのです。そういった意味で、これは私どもというよりもむしろ島津製作所との共同研究の成果ですけれども、血液でアルツハイマー病の病変を、発症のかなり前に検出することができたということは大変特記してよろしいことかと思っております。

○国立長寿医療研究センター理事長

 つけ加えますと、老年学・社会科学研究センター、世界で2番目でしたけれども、デュアルタスクという運動と知的作業を加えることによって、MRIで脳の萎縮や認知機能の低下を予防できるというコグニサイズというのを発表して、これについては研究論文になっただけではなくて、その後、健康増進活動に日本中に広まったということで、トピックの一つではないかと御理解いただければと思います。

○国立長寿医療研究センター病院長

 もう一つ、またよろしいでしょうか。病院のほうですと16ページ、先ほどと繰り返しになりますけれども、米国のほうでは大分前から認められているFDG-PETによる診断が日本で認められてこなかったというところに私どもその寸前まで来たというところが大きな業績の一つになっております。

○斎藤委員

 数値ですが、ほかのセンターは厚生労働省がおっしゃっているように、例えば120%達成ということは、A割るBでその数値を使っているのですけれども、こちらの長寿のほうでは増加分だけをここに出してらっしゃるので、ひょっとして120%の解釈の仕方が違っているのかなというのが心配になったのでお伺いいたします。

 例えば64.7%増というのが書いてあるのですが、これはほかのセンターとのやり方あるいは厚生労働省のやり方だと164という数字になるわけですが、そこはよろしいのですか。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 表記の問題だと思うのですけれども、この5年間の中期期間の始まる前の平成21年度の実績に対して何%の増加を目指すかというものを設定しました。それを増加分として%表示するか、トータルで100を足して%表示するかの違いかと思います。いずれにしましても当初設定した目標値を超えることができたということかと思います。

○祖父江委員

 非常によく頑張っておられて、成果が出始めているというように思いました。特に、いわゆるいろいろな施設というか組織をつくられて、これからの体制づくりを非常にやられて、それに基づく成果も幾つか見られているなという感じを受けました。

 ただ、恐らく、これは背景にはいろいろな問題点があるのだと思いますが、ほとんど書かれていないので、そういう問題点を踏まえてどう展開するかということが恐らく今後の本質的な評価としては非常に重要なポイントになってくるだろうと思いますが、この5年間はそういう形になっておりませんので、これでよいかと思います。

 1つお聞きしたいのは、先ほど来、シーズの話が幾つか柳澤先生からもお話がございましたけれども、おそらく次の6年間は、治験とかヒューマンへの橋渡しということが非常に重要なミッションになってくると思うのですが、その体制もつくられていると思うのですが、現状と展望という観点から、例えばFirst in humanとか、医師主導治験とか、そういうものが今どんなふうかということと、今後の見通しといいますか、その辺をお教えいただけるといいなと思います。

○国立長寿医療研究センター研究所長

 ありがとうございます。

 アルツハイマー病を対象として説明させていただければと思うのですけれども、確かに基礎研究だけを一生懸命やりましたと、論文を書きましただけではナショナルセンターは許されないと思うのです。当然のことながら、創薬研究に関しては、今後、臨床試験を前提として非臨床試験に持っていかなければいけない。しかし、これはそう簡単なことではないと思うのですが、先ほど申し上げたように、幸い、この5年間の間にアルツハイマー病で申しますとアミロイドとタウという2大標的に対して、それぞれの臨床試験の前の非臨床試験に持っていく開発候補品候補が複数とれたということは事実でありまして、ただ、それをさらに進めるためには、私どもの研究費、開発費だけでは難しいと思います。現在、どういう段階にあるかというと、AMEDの御協力が得られそうな段階になってまいりまして、具体的な協議を始めているところです。私どもの希望に沿った形でいけば、年度内にアミロイドに対するものの開発の展開がAMEDと私どものセンター一緒に展開できる段階になると思います。ありがとうございました。

○国立長寿医療研究センター病院長

 今から6年の間の長い期間ですから、なかなか予測も難しい面もあるのですけれども、一番認知症に対してやれたらいいなと思って準備をしかけているのは、再生医療からのアプローチであります。これはまだ基礎実験の結果も見ながらですので時間はかかると思いますが、医師主導治験に関しましては、循環器系統の薬剤でそこの効果を見るというものに関しては、私どもも参加する予定でございます。それは今年度あるいは来年度の前半でできる予定と思っております。

○本田委員

 意見と質問、1つずつです。

 私も基礎研究の開発の部分で今後に期待ができるものが出てきたということで、大変興味深く期待しているところです。現状で国際共同治験なりFirst in humanなりというものをどれだけできる体制になってきているのか、もしくは今後どれぐらいできていけるのかということをもう少し書いていただきたかったなというのが1つ意見です。後で伺いたいです。

 1つ質問ですけれども、一方で、そういう研究・開発の部分はとても大事だということですが、それに加えて、そういう治験、そういう考え方、もしくは技術を広く国内に提供していく、普及していくこともとても大事な役割だと思うのです。例えば認知症サポート医とかかかりつけ医の向上研修とか、いろいろ養成をすごくやっているとは書いてあるのですけれども、今、診断の問題だったりとか、ちゃんとしたケアにつながれていないとか、例えば認知症ですけれども、認知症が治ることがなかなか難しいという現状の中で、そういうことをやるということも国民の不安とか満足とか、そういうところにつながってくると思うのですが、こういう研修養成がそれにどのようにつながっているのかとか、そういう数字的なものとか、そういうものというのは出されているのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター理事長

 患者さんベースまでの満足度といったものはまだ十分ではないのですが、かかりつけ医の実際にどのような業務でやっているかというところまでは押さえてあります。

 もう一方、インターネットあるいは私たちのホームページでかかりつけ医の人、特に苦慮するであろう周辺症状への対応といったものに関しては、十分ホームページで公開しておりまして、それらのアクセス数といったものではある程度反映はわかるのですけれども、それの満足度調査はこれからの課題でございます。

 もう一つ、先ほどの御意見をいただいたところは、レジストリシステムを現在インフラは補正予算で整備したところでございますけれども、実際のシステムづくりは現在AMEDにオールジャパンの海外の治験も受け入れる体制を申請中でございまして、今週ヒアリングがございますので、それを待って今年度の成果として、20以上の医療機関、3つのコホート含めて、世界規模の治験に対応できる体制は既に準備は整っていると申し上げたいと思います。

○深見委員

 研究・開発、そして社会貢献と着実に改善してきているのではないかと思います。お伺いたいことは小さなことなのですけれども、28ページに研究収益の伸び、寄附金の受け入れ状況というグラフがございます。その下に共同研究状況もありますけれども、シーズ等が出てきたというところだけですと研究費は獲得できるのではないかなと思うのですが、寄附金は伸びるというのは、少し時間的なずれがあるのではないかという気がするのです。

26年度にホームページの充実というお話もありましたけれども、特に個人の寄附金が非常に大きな伸びを示しています。ホームページだけでこんなに伸びるのかなという、不思議な数値というか、グラフが不思議な感じがするのですけれども、そこに関して特に個人の寄附金が伸びたというところは何か理由があるのでしょうか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

 寄附金の件でございますけれども、実は4,567万円という個人からの寄附も、相当部分はお一人の方の寄附でございます。もちろんほかにもあるのですけれども、4,500万だったと思いますが、1人の方からです。その方は当院の患者さんとか関係の方ではなくて、亡くなられたのですけれども、その方の遺言執行人の方が、認知症研究に役立ててほしいという故人の御遺志を経て、その遺言執行人の方がどこに寄附しようかということをいろいろ調べた結果、長寿医療研究センターが一番いいのではないかということで当院に寄附していただいたということでございます。

 我々は寄附金を基金にして、研究者の海外留学とか、そういったものに役立てていこうということに使っております。ホームページだけでとはなかなか申しませんけれども、実績をちゃんとアピールしていくことによってこういった動きも少しずつ起きてくるのかなという、そういう印象を強くしたところでございます。

○深見委員

 そうしますと、継続的なことは余り期待できないという理解ですか。

○国立長寿医療研究センター企画戦略局長

27年度に同じ額が保証されているかというと、もちろん保証されてはいませんけれども、こういった動きがつながっていけばいいなと思っております。

○祖父江委員

 先ほど話が出ましたレジストリのことでございますけれども、これはぜひオールジャパンで組んでいただいて成功させていただけるとありがたいなと思っているのです。

 このレジストリを何のためにやるかというところです。今、理事長先生おっしゃったように、あるいは前にも議論が出ましたように、創薬に向けて適正な患者を探すとか、バイオマーカーを見つけてデザインをきちっととれるようにするとか、特に創薬に向けてはいろいろなものがあると思うのですが、もう一つ、非常に重要なのは、こういう認知症のような非常に長期にわたる疾患、神経変性疾患は全体がそうだと思うのですが、最近の動きとしては、5年、10年のトゥルーエンドポイントをきちっと見る。それを前向きのレジストリから発展させていくという、それをナチュラルヒストリーとお薬を入れた患者さんで10年ぐらい見ていくというような、そういう一種のコホートですけれども、そういう形のレジストリシステムが特に欧米では盛んにつくられてきていて、恐らくそういうところは非常に重要なアウトカムとして大事になってくると思いますので、ぜひその辺も考慮といいますか、念頭に置きながらつくっていただければと思います。

○国立長寿医療研究センター理事長

 まさに私も同じ考えでございまして、縦断的な登録システムで、健常から認知症まで10年、20年のコホートレジストリというものを考えております。さらに、このレジストリは、もちろん薬剤治験といったものを第一義的には考えておりますけれども、それが手おくれというか、認知症になった方も症状緩和薬あるいは最新の生活習慣指導、最終的に周辺症状の最新のケア技術の提供で、レジストリに参加された方がどの段階から参加されても恩恵を受けられるような、新しいオレンジプランにのっとった、名前はオレンジプラットフォームと一応名前をつけさせていただいているのですが、そういうレジストリを構築させていただいております。先生の教えに沿って、より頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○藤川委員

 まず、全体に5年間の評価ということで、図とかを使っていただいて、流れといいますか、こういうことを最初始めて、26年で開花しましたみたいな、そういう説明が多かったので、それは非常にわかりやすかったので、今後とも次の5年、6年のときはそのように心がけていただきたいなとも思いますし、毎年の評価のときも、前に比べてどうだったのかというところをお示しいただけるとありがたいなと思いました。

 1-8の評価ですが、23ページ目、ここで修了者数が累計3,874と書いてあるのですが、22年からの5年間を足すと2,601なので、差額が1,273あるというのは、それより前のものが入っているということでよろしいのですね。

○国立長寿医療研究センター病院長

 これは17年から始まっていますので、その分は国立時代の数も入っております。

○藤川委員

 そうすると、新プランで5,000名に引き上げられたということで、割と達成が容易な人数ではあった部分があるのかなというように思ってしまったのです。それでここの1-8の評価がB、A、A、Aで最後Sで自己評価されて期間評価Sとされているのですけれども、このメーンは、ここのオレンジプランの達成というところが非常に大きく評価されているのではないかなと思う中、Sはどうかなというようなイメージを持ったので御反論があればと思った次第です。

○国立長寿医療研究センター理事長

 そこは多分御指摘を受けるだろうと思って、サポート医の研修体制は、病院の中の医者がボランティアで交代でやっているものであります。学会とかほかの大学の力をほとんど得ないで中の者だけでやって、全国各地飛び回ってやっている。今回から初期集中支援チームの研修も2倍にふえてやっております。ですから、確かに数だけではかれないところは一般の研究業務と病院業務に加えて、均てん化業務を土日、年に何回もやって、それで評価されたということで、同情票があればSをお願いしたいと思います。

○永井部会長

 よろしいでしょうか。

 それでは、以上で国立長寿医療研究センターの議論を終了させていただきます。

 事務局から今後の計画、予定について御連絡をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長

 予定の前に一言御挨拶だけさせていただきます。

 委員の皆様方には、御多忙中、また、お暑い中、7月22日から5回にわたり評価部会にお集まりいただきました。ありがとうございます。御専門の立場から御意見、御助言をいただきまして、改めて御礼申し上げます。

 当部会において委員の皆様からいただきました御意見を踏まえまして、厚生労働大臣の評価を検討させていただきたいと思います。委員の皆様には、引き続き当部会の御協力をお願いするとともに、ナショナルセンター、6法人への御指導を賜れれば幸いでございます。

 本日はどうもありがとうございました。

○永井部会長

 それでは、以上で終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国立研究開発法人審議会(高度専門医療研究評価部会)> 第5回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会(2015年8月19日)

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