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2015年2月18日 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会(第9回) 議事録
健康局疾病対策課
○日時
平成27年2月18日(水)16:00~18:00
○場所
厚生労働省専用第15・16会議室(21階)
○議事
○前田疾病対策課長補佐 定刻より若干早いのですが、委員の先生方がおそろいですので、ただいまから平成26年度第9回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会を開催いたします。委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の出席状況について御報告いたします。委員の先生方は全員御出席です。なお、本日は内分泌疾患及び呼吸器疾患を御議論いただくということですので、島津章独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター長、巽浩一郎千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学教授に参考人として御出席いただいております。
なお、事務局のお詫びですが、疾病対策課長は所用で本日は外させていただきます。この3人の事務局の体制で進めさせていただきたいと思いますので、お許しを賜りたいと思います。
では、ここからは千葉委員長に議事をお願いしたいと思います。
○千葉委員長 それではまず、資料の確認をお願いいたします。
○前田疾病対策課長補佐 資料ですが、次第の次が委員名簿です。その後、本日参考人として御参画いただくお二人のお名前です。座席表に続いて、資料1-1は「第9回指定難病検討委員会において検討する疾病リスト」です。机上の配布のほうはのり綴じですが、資料1-2として、「指定難病として検討する疾患(個票)」ということで、3-1「総動脈幹遺残症」から3-50「脂肪萎縮症」までを冊子の形で御用意しております。以降は参考資料です。横紙で第6回指定難病検討委員会の資料の再掲ですが、参考資料1が「指定難病の要件について(追記の案)」、参考資料2として、こちらも同じですが、「指定難病として検討を行う疾病の一覧」という形で御用意しております。不足等ありましたら事務局まで御指摘いただければと思います。
○千葉委員長 本日は前回、前々回に引き続き、個別の疾患について委員の先生方に御議論いただきたいと思います。島津先生、巽先生におかれましては、参考人として議論に御参加いただきたいと思っております。
それでは事務局から説明をお願いします。
○岩佐疾病対策課長補佐 それでは、各個別の疾患の個票についての説明をさせていただきます。まず、3-1「総動脈幹遺残症」から3-14「間質性膀胱炎(ハンナ型)」までを説明いたします。
3-1「総動脈幹遺残症」ですが、実は当初、検討するための610の疾患のリストの中に名前がありませんで、これは事務局側のミスです。情報は頂いていましたが、リストのほうに載せることができておりませんでしたので、最後に整理をする段階でまた改めて示させていただく形にいたします。
総動脈幹遺残症ですが、これは先天性心疾患になります。一般的に、大きな心室中隔欠損を有し、左右両心室から単一の動脈に血液を駆出するということで、大動脈、肺動脈及び冠動脈に血液を供給するような形の先天性心疾患です。Collett and Edwardsの分類で1型から4型まで分類されている形になっています。症状としては、新生児期又は乳児期早期に重篤な心不全症状で発症することが多いとされています。外科的な治療等を試みられていますが、根治に至る例は非常に少なく、長期の療養が必要な疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。
診断基準ですが、出生後の心エコー若しくは心臓カテーテル検査のいずれかにおいて当該疾患に特徴的な所見を満たす場合について総動脈幹遺残症と診断するとしております。
重症度分類ですが、NYHA分類で2度以上、若しくは、100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下という形にしています。特に先天性心疾患においては、慢性の低酸素血症を来していまして、ただ、85%以下になるような状況では、それなりに日常生活や社会生活に支障があるのではないかというようなところで、こういった基準を示させていただいております。
続いて「大血管転位症」です。大血管転位症については、完全大血管転位と修正大血管転位が含まれる疾患です。完全大血管転位は右室から大動脈が、左室から肺動脈が起始している先天性心疾患です。また、修正大血管転位症に関しては、解剖学的な左右の心室が入れ替わって、解剖学的な右室が体循環を担うこととなり、成人期には解剖学的右室の心不全が発症する疾患です。症状としては、完全大血管転位症に関してはチアノーゼを認めることが多く、修正大血管転位症では、徐々にチアノーゼ若しくは心不全等で発症してくることが多いとされています。治療法としては、外科的治療が様々に試みられていますが、それでも十分とは言えず、長期の療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、完全大血管転位症、修正大血管転位症それぞれに対して特徴的な所見を心臓超音波検査、若しくは心臓カテーテル検査で認めた場合に診断されるとしております。
重症度分類については、NYHA分類で2度以上、若しくは、100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下ということを基準にしてはどうかとしております。
9ページの「単心室循環症候群」です。単心室循環症候群とは、体循環、肺循環の双方を機能的に1つの心室のみに依存するような血行動態を有する先天性心疾患の総称です。重度の慢性低酸素血症等の心不全症状を呈するような形になっています。手術を含めて、根治療法はありません。重度の慢性低酸素血症や、フォンタン型手術が中心になりますが、後の循環破綻によって死亡することが多い疾患と言われています。フォンタン型手術を行った患者さんでも、20年生存率で成績が良好なところでも69%とされており、長期の療養が必要な疾患となっているため、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
11ページが診断基準です。三尖弁閉鎖、心室中隔欠損を合併しない肺動脈弁閉鎖、左心低形成症候群、単心室の総称という形になっており、それぞれ診断の基準を示しておりますが、いずれも特徴的な画像所見を認めるということで診断する形となっています。
重症度分類は14ページです。NYHA分類で2度以上、又は100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下ということで対象にしたいと考えております。
15ページは「ファロー四徴症類縁疾患」です。ファロー四徴症類縁疾患については、ファロー四徴症に類似の血行動態をとる疾患群で、ファロー四徴症及び心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖、両大血管右室起始症が含まれるとしております。これらの疾患については、高度肺動脈低形成のために心内手術ができない場合であったり、心内修復術後であっても、成人期以降に右室不全、左室不全が存在する場合があるなど、外科的治療を含めて根治療法が確立されておらず、長期の療養が必要となっております。そのため、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、ファロー四徴症、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖、両大血管右室起始症のそれぞれについて特徴的な画像所見、心エコー及び心臓カテーテル検査等で診断する形になっています。
重症度分類は19ページです。NYHA分類で2度以上、若しくは、100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下を対象としてはどうかとしております。
20ページは「エプスタイン病」です。当該疾患は、三尖弁の1枚又は2枚の弁尖付着位置が右心室内にずれ落ちるために、三尖弁の閉鎖に支障が生じ高度の逆流を呈する。また、右心房化した右心室の心筋が菲薄化する疾患です。三尖弁逆流と右房化右室のために、右心房は著明に拡大し、機能的な右心室が狭小化し、機能的な肺動脈閉鎖という形の血行動態を呈する疾患です。症状としては、三尖弁の異形成の程度により、臨床像は極めて多彩になりますが、かなり軽症な例から、重症では、出生直後から重篤な心不全を来すものまであります。治療方法としては、内科的治療、外科的治療、双方を行うような形になっていますが、いずれも対症療法が主体となっており、長期の療養が必要な疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、心臓超音波検査において特徴的な所見を満たす場合を診断する形にしております。
23ページが重症度分類です。NYHA分類で2度以上、若しくは、100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下を対象としてはどうかと考えております。
24ページは「アルポート症候群」です。アルポート症候群は、進行性の遺伝性腎炎で、約9割がX連鎖型遺伝形式を示します。重症型では、男性で10代から20代にかけて、末期腎不全に進行する疾患です。皮膚基底膜や糸球体基底膜の4型コラーゲン蛋白の異常を認める疾患で、遺伝性の疾患です。症状としては、血尿から発症し、蛋白尿が進行し、ネフローゼ症候群を呈するとされています。根治療法はなく、長期の療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準は26ページです。主項目として、持続的血尿を認め、副項目である遺伝子変異、免疫組織化学的異常、糸球体基底膜特異的電顕所見のいずれか、若しくは、参考項目として4つの項目のうち2項目以上を満たす場合に診断するとしております。
重症度分類は28ページです。腎機能及び聴力、視力、いずれかの重症度を満たすものを対象としてはどうかという形で提案しております。
30ページは「ギャロウェイ・モワト症候群」です。ギャロウェィ・モワト症候群については、腎糸球体硬化症(ネフローゼ)、小頭症(てんかん、精神運動遅滞)を2つの主徴として、顔面・四肢奇形を合併する症候群とされています。腎糸球体と脳の器官形成プロセスに異常を来すと推測されていますが、原因となる染色体異常や遺伝子変異は見つかっていません。治療法としては対症療法を主体とするもので、根治療法として確立されているものはありません。長期の療養が必要となっていることから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準は32ページです。中枢神経症状及び腎障害の双方を満たし、副症状としての外表奇形若しくは筋症状のいずれかを満たし、鑑別すべき疾患を除外して診断するという形になっています。
33ページが重症度分類です。腎障害及び中枢神経障害に関して、いずれかの方法で治療を行っており、かつ、継続的に実施が必要な場合という形で規定しております。
34ページは「急速進行性糸球体腎炎」です。腎糸球体に急速かつ激烈な炎症が起こり、数週から数箇月の経過で腎機能が急速に低下して腎不全に至る疾患です。腎疾患の中でも最も予後が悪く、治療にも難渋することが多い疾患です。進行の経過自体は急ではありますが、症状の腎不全という状態に関しては、その後も長期に続くところから、長期の療養が必要と考えております。腎糸球体に半月体が形成されることによるものとされています。免疫学的な機序等いろいろ考えられていますが、詳細は不明です。症状としては、血尿及び蛋白尿、それから、機能の急速な低下を認めています。様々な免疫抑制療法等を行いますが、根治療法を確立しておらず、長期の療養が必要となる疾患で、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、尿所見異常及びeGFR、CRPの高値等を満たす場合、急速進行性糸球体腎炎の疑いと診断します。さらに、急速に腎不全が進行し、腎炎性の尿所見を認める場合に診断をするような形となっており、可能な限り腎生検を実施し確認することが望ましいとされております。
37ページが重症度分類です。初期治療時及び再発時、維持治療時を別々に判定し、初期・再発時に関しては急速進行性糸球体腎炎の診断基準を満たす場合、維持治療期に関しては、慢性腎臓病重症度分類で重症に相当する部分、若しくは、蛋白尿0.5g/日のものに関して対象としてはどうかと考えております。
39ページは「抗糸球体基底膜腎炎」です。当該疾患は、腎糸球体に急速かつ激烈な炎症を起こす疾患で、タイプとしては、先ほど御説明しました急速進行性糸球体腎炎のような形で発症する疾患です。ただ、当該疾患が先ほどの疾患と異なる点としては、記載が少し分かりにくい部分がありますが、例えば肺胞出血を来すであったりとか、緩徐に進行するようなタイプがあったりするということで、基本的には異なった疾患だと考えられており、今回、別々に出しております。症状や治療法に関しては、ある程度、急速進行性糸球体腎炎に似ているところはありますが、肺胞出血等に対する治療も必要など、長期にわたる療養が必要となるところから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、先ほどの急速進行性糸球体腎炎の疑い及び、急速進行性糸球体腎炎の診断基準に係るものに近い部分がありますが、さらに2の3)のところで、血清抗糸球体基底膜抗体が陽性であるということをもって、当該疾患であることを診断するとしております。
重症度分類ですが、先ほどと同じように、初期、再発時及び維持治療時という形で分けさせていただき、いずれの腎機能であっても蛋白尿が0.5g/日の場合を対象としてはどうかとしております。
44ページは「一次性ネフローゼ症候群」です。ネフローゼ症候群は、大量の糸球体性蛋白尿を来し、低アルブミン血症や浮腫が出現する腎疾患群です。このうち、原因疾患があるものについては二次性、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群としております。病型により様々な対症療法を行っていますが、根治療法のための確立された治療法はなく、長期の療養を必要とすると考えております。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準は46ページです。成人及び小児において、それぞれ蛋白尿、低アルブミン血症のそれぞれの基準を満たし、二次性ネフローゼ症候群の原因疾患となる疾患を全て除外した場合に当該疾患だと診断するという形にしております。
重症度分類としては、一次性ネフローゼ症候群の診断がされたもののうち、現時点でネフローゼ症候群の基準を満たしている場合、ネフローゼ症候群診断後、一度も完全寛解に至らない場合、ステロイド依存性、頻回再発型の場合、また、CKD重症度分類で赤色の場合、若しくは、蛋白尿が0.5g/gCrという形で持続している場合のいずれかを満たした場合という形にしております。
49ページは「一次性膜性増殖性糸球体腎炎」です。膜性増殖性糸球体腎炎は、糸球体係蹄壁の肥厚と分葉状の細胞増殖病変といった特徴的な組織病理像を呈する糸球体腎炎です。その形態から、1型、2型、3型という形で分けられています。様々な形の腎障害を来し、一次性と二次性のものに分けられるという形になっています。治療法としては、ステロイドパルス療法などを試みられていますが、再燃を繰り返すなど、徐々に進行する腎機能低下を来すというところで、長期療養を必要とする疾患となっています。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準は51ページです。Aの病理診断という形で1から6、それぞれ幾つかのタイプがありますが、それらのいずれかに該当する場合であって、ネフローゼ症候群の診断基準を満たし、二次性の疾患を除外した場合を対象とするという形にしております。
重症度分類は53ページです。CKD重症度分類の赤色の部分の患者、若しくは、ネフローゼ症候群の基準を満たしている、さらには、免疫抑制療法を行っても寛解に至らない、若しくは、持続的な低補体血症を伴う場合のいずれかを満たす場合に対象としてはどうかと考えております。
54ページは「紫斑病性腎炎」です。当該疾患は、血管性紫斑病の1症状として見られる腎炎という形で、紫斑病に伴い、糸球体にIgAが沈着することを特徴とする糸球体腎炎です。紫斑病性腎炎の病因としては、いまだ明らかになっていませんが、IgAを含む免疫複合体の関与する全身性疾患であるとされています。治療法としては、ステロイド治療を中心としたものとなっていますが、再燃することも多く、腎機能が徐々に低下するというところがあり、長期療養を必要とする疾患になっています。
診断基準は56ページです。米国リウマチ学会における血管性紫斑病の診断基準を満たし、さらに、腎生検における病理組織学的診断においてIgAの沈着を伴う所見を認めた場合に確定診断されるとしております。
重症度分類ですが、紫斑病性腎炎の組織分類でGrade3b以上の場合、若しくは、慢性腎臓病重症度分類で赤のところに該当する場合、さらに、蛋白尿が0.5g/日以上の場合を対象としてはどうかと考えております。
59ページは「先天性腎性尿崩症」です。当該疾患は、腎臓の腎尿細管細胞の抗利尿ホルモンに対する感受性が低下し、尿の水分の再吸収が障害される疾患です。そのため、尿濃縮障害が惹起され、多尿を呈する遺伝性の疾患です。治療法はなく、対症療法が中心となり、合併症を含め長期の療養が必要となることから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
61ページが診断基準です。症状として口渇、多飲、多尿、いずれかを満たし、検査所見として特徴的な5項目全てを満たし、Cを除外し遺伝子診断されたもの、若しくは、乳幼児期発症の場合には、こういった遺伝子診断なしでもProbableとして対象にしてはどうかと提案しております。
62ページが重症度分類です。バソプレシン投与後の尿浸透圧600mOsm/kg以下を対象としてはどうかと提案しております。
63ページは「間質性膀胱炎(ハンナ型)」です。間質性膀胱炎については、「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」とされています。その病型としては、ハンナ病変を有するハンナ型と、有しない非ハンナ型と大別されています。ハンナ型については、特に、内視鏡的にも病理学的にも明確な異常所見を有し、症状的にもより重症という形にされています。原因は不明で、膀胱粘膜の機能障害、免疫学的機序というものが想定されています。頻回な排尿や膀胱の痛み等による苦痛から生活の質が大きく損なわれ、確立した治療方法もなく、対症的な治療が長期に必要と考えております。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
65ページが診断基準です。症状として、頻尿・尿意亢進などの症状があり、膀胱所見でハンナ病変を認める、さらに鑑別診断として、他の疾患や状態がないということを全て満たして診断されるとしております。
重症度分類ですが、66ページにある間質性膀胱炎の重症度分類において重症の部分を対象としてはどうかと考えております。以上、3-1「総動脈幹遺残症」から3-14「間質性膀胱炎(ハンナ型)」までの説明をさせていただきました。取りあえずは以上です。
○千葉委員長 まず最初は、先天性心疾患が並んでいまして、その後は腎疾患ということですが、いかがでしょうか。先天性心疾患については小児からの継続の疾患群ということです。
○宮坂委員 3-8の急速進行性糸球体腎炎、RPGNですが、これは一次性のものもあれば二次性、症候性のものもありますよね。ネフローゼなどは一次性だけに限っているのですが、ここでは症候群ですから何でも入ってきますよね。特に原因疾患で、例えば、ANCAが出現するものなどは、ANCAのほうで指定難病になるわけですよね。これは、あえて分けないで、症候性も入れているのは何か意味があるのですか。
○和田委員 ありがとうございます。先生のおっしゃるとおり、原因は大きく3つあります。ANCA関連血管炎を含むpauci-immune型が最も多く、免疫複合体型が続きます。いずれの病因においても、病態は極めて進行性であり、腎病理所見も共通病変をとります。したがって今回は、1つの症候群として扱うというこの提案は私も妥当ではないかと思っております。
○千葉委員長 よろしいでしょうか。3つの群があって、ということですが、症候が非常によく似ていて進行性であるので、症候群として今回は3つまとめて扱ってはどうかという御意見でしたが、よろしいですか。
○大澤委員 腎疾患のところで、例えば37ページの重症度分類のところですが、血清クレアチニンがスコアとして入っているのです。以前にも申し上げたことがあるかと思うのですが、筋ジストロフィーや先天性ミオパチーやダウン症候群、脊髄性筋萎縮症など、筋肉量が少ない方たちでは、正常のクレアチニンの量が非常に少なくなっていますので、そこを配慮していただく必要があります。それは、腎疾患の関係で、この表が出てくるところ全部です。
○和田委員 ありがとうございます。私が代わって御説明いたします。先生のおっしゃるとおりです。この場合、血清クレアチニン値の限界というのがどうしてもあります。その場合には、シスタチンCなどを用いて代用することがガイドラインにも記載されています。そういったものを総合的に勘案してこの表を使うということになろうかと思っております。
○千葉委員長 そうすると、何らかの記載をしておいたほうがいいかもしれませんね。
○和田委員 はい。
○岩佐疾病対策課長補佐 先ほどの和田先生の御意見等もありますので、その辺りについて、どういう形でさせていただくのがいいのかというところについては、研究班等とも相談させていただきたいと思います。
○千葉委員長 クレアチニンは全ての腎疾患に共通することですので、全体として少し検討してもらうということになります。ほかはいかがでしょうか。
○直江委員 2点あります。先天性の心疾患で、重症度分類の基準として、本当にこういうものが要るのかどうかというのが、私の素朴な疑問の1つです。もしそれが必要だとしても、NYHAの2度以上はいいとしても、乳児ですから、100%酸素投与下でも経皮酸素飽和度が85%以下というのは、これは何か無茶苦茶厳しいじゃないですか。ちょっと、ほかの疾患の重症度の感覚と合いませんね。こういうものが本当に要るのかということ。
○千葉委員長 大きく2つあったかと思います。1つは酸素飽和度の話です。それから、そもそも重症度分類として必要なのかという御指摘ですが、どうでしょうか。
○岩佐疾病対策課長補佐 まず、重症度分類が必要か否かというところです。例えば、先ほど申し上げました単心室循環症候群においては9ページから記載をしております。例えばこういう疾患ですと、フォンタン型の手術というものが、ある程度、一定の形として確立されつつあると。ただ、当然、そこに至るまで非常に厳しい道のりがあることも事実です。一方で、ある程度そういった治療が奏効した場合には、通常の日常生活や社会生活を送れる時期もある。ただ、それが長期間続くわけではないというところも聞いております。では、そういった中で、一応、これまで難病の考え方では、日常生活や社会生活に支障がある方を対象としますというふうに言っている中で、これらの疾患については、日常生活や社会生活について、必ずしも支障がなくてもいいのではないかというようなことであれば、それは1つの御意見としてあるのではないかとは思うのですが、事務局側としてはそういう形で整理をさせていただいたということです。
その上で、酸素飽和度についてなのですが、特にこういう疾患に関しては、出生時から低酸素血症の状態を続けているような方がかなり多くて、かなりそういう状態に慣れているというようなところで、日常生活や社会生活に支障があるのは大体どれぐらいのラインなのかを専門の先生にお伺いしたところ、こういう形で答えが返ってきたということです。その辺りについて、もう少し緩めてもいいのではないかということでしたら、そこはもう一度やり取りをした上で、再度検討することもしていきたいと考えております。
○直江委員 要するに2度以上ということと、私たちの感覚では85%以下というのが、ちょっと合わないものですから、特殊な疾患ですから、そこを確認していただきたい。
もう1つは、47ページで、一次性のネフローゼの重症度分類なのですが、「以下のいずれかを満たす場合を対象とする」ということで、(1)にネフローゼ症候群の基準を満たしている患者さんということになっているのですが、これは診断時に一次性ネフローゼということが確定された患者さんにおいて、治療を行っても軽快が得られないという意味ですね。
○岩佐疾病対策課長補佐 基本的には軽快が得られない、若しくは、再燃するような場合になろうかと思います。当然、診断をされた際には、ネフローゼ症候群の基準を満たしている状態ですので、まだ治療が行われていない状態も含むと考えております。
○直江委員 この書きぶりだと、今の御説明では、治療後であれば(2)に入ってしまいますよね。ということは、この前提として、一次性ネフローゼ症候群の確定診断がなされたということで、もはや(1)というのは、前提条件か(2)に含まれてしまっているわけです。多分、同じことを考えているとは思うのですが、私が言っているのは書きぶりというか書き方なのです。
○前田疾病対策課長補佐 もし和田委員から補足があれば是非と思うのですが、今の書き方としては、実は(2)のほうが、例えば更新のときに受診をしていただいたときに、ネフローゼの症状が改善されていた場合に、大体、過去、診察から1年なり6か月という状況をお尋ねして、過去にそういうエピソードがあったかというところも確認して評価をしようというコンセプトがありましたので、正に診断を受けられた瞬間にネフローゼ症候群の基準を満たしている方で、正に更新の診察を受けられたときに、もう軽快はしているのだけれども、その数箇月前なり1年前のエピソードを聞くと、そういう状況があったという方も含めて対象とするという書き方で、こういう文面で御提案したのですが、もしそこのコンセプトでよろしければ、それを分かりやすい文章に直すような形も検討させていただきたいと思います。
○和田委員 確かに少し分かりにくい文章になっているかもしれません。今、前田課長補佐と岩佐課長補佐のお二人からもお話いただいた点もふまえまして、この文章はまた少し検討できればと思います。ありがとうございます。
○千葉委員長 ちょっと書き方の整理をお願いいたします。ほかはいかがでしょうか。
○飯野委員 3-7のギャロウェイ・モワト症候群の重症度分類で、33ページです。ほかの腎疾患がほとんど腎機能も加えているのですが、これだけは治療だけの重症度分類になっているのです。これはほかのものと少し整合性が付かない気がするのですが、何か理由があるのでしょうか。
○千葉委員長 ここはいかがでしょうか。和田先生は御専門ですが。
○和田委員 臓器区分Aの項目2のほうで、腎代替療法というところが腎機能を反映した形になっているのではないかと思います。この症状の場合、進行性であることもあって、こういう書き方がされていると理解しております。
○飯野委員 項目1か2のどちらかを満たせばいいということなので、1のほうはどのような意味でしょうか。
○和田委員 1の場合は、いわゆるCKD重症度分類かということだと思います。基本的にCKD重症度分類は18歳以上の方を対象にしていることが原則です。したがって、それに相当する小児の重症度分類をここに当てはめるかどうかということが、議論になるかと思います。この点は、また研究班の先生に確認が必要だと思います。ありがとうございました。
○千葉委員長 そうですね。この疾患が腎臓だけでなくて、てんかん等神経症状等の組合せの疾患であるところが、ほかの腎疾患とは少し違いますよね。ですから、重症度分類が少し異なってくることは十分あり得ると思うのですが、それと、ほかのようなピュアな腎疾患との整合性というところで、もう少し御検討いただけたらというところになります。
○錦織委員 ちょっと質問なのですが、3-12の紫斑病性腎炎について、患者数が1年に400例から640例というのが、ほかの疾患は全て患者数という、実数になっています。実際にこういう表現の仕方は教科書にも載っていますし、我々もよくするのですが、人口の0.1%以下が要件になっています。このぐらいだったら、ざっと感覚的に考えると要件は満たす患者数だろうとは思うのですが、その辺りはどうなのでしょうか。
○和田委員 ありがとうございます。2つの点があるかと思います。1つは、患者数の推定という点と、この記載方法の点だと思います。症例数の推定に関しましては、研究班の調査や腎臓学会のレジストリーに拠っています。腎生検によって診断した方、腎生検しなくても診断した方、2つのレジストリーを日本腎臓学会では運用しております。そこから推定した数字ということになっています。記載方法に関しては、また検討が必要であると思います。
○千葉委員長 55ページについては、年度で切ったときにこれだけの数がいるという意味ではなくて、発症数という意味ですか。
○和田委員 そうです。
○千葉委員長 これは難病全体に関わる問題で、御承知のとおり、各班によって調べ方が違うので、こういう形で提出してこられる研究班もあれば、全体で患者数何人という形で出してこられる研究班もあったり、調査の仕方が各研究班によって、今のところ違う辺りがここに出てきているのだと思うのです。ですから、それは本当に、今後の難病研究全体の問題にはなると思うのですが、何かありますか。
○前田疾病対策課長補佐 書き方については、また少し工夫させていただきたいと思うのですが、基本的に、患者数自体は人口の0.1%程度を目安に御議論いただければと思っておりますので、大きな関門としては、そこを目安に御検討いただければと思っております。
最終的にどれぐらいの患者様が利用されるかというところは、我々事務局としても非常に関心のあるところではありますので、実際にこの制度に入った場合にどれぐらいかという形は、最終的にまた数字として収集していきたいと考えております。
○千葉委員長 最初の先天性疾患については、直江先生が御指摘になったように、私も少しびっくりしたのですが、これは恐らく小児から大人へと移行してこられた患者さんについて、多分、長年患ってこられた状況でこういう辺りになっているという御説明だったと思います。この点については、もう一度確認をお願いしたいと思います。よろしいですか。
それでは、次をお願いいたします。
○岩佐疾病対策課長補佐 それでは、続いて3-15の「オスラー病」から、3-27の「ビタミンD依存性くる病/骨軟化症」までを説明いたします。
67ページは「オスラー病」です。鼻出血、舌・口腔粘膜・指・鼻等の末梢血管拡張、内臓病変、家族歴を特徴とする疾患です。様々な血管奇形に対して血管塞栓術であったり、外科的摘出等及び出血に対する対症療法等を行うような疾患です。各種合併症があり長期の療養が必要となっていて、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
69ページは診断基準です。症状の2項目及び検査所見の2項目、全体4項目のうち3項目を満たして、鑑別がなされたもの、若しくは遺伝学的検査で陽性所見が出たものを対象としてはどうかと考えております。
70ページは重症度分類です。自覚症状及び動脈血酸素分圧、肺内シャント率、脳脊髄動静脈奇形の程度、肝臓動静脈奇形の程度、消化管出血の程度、鼻出血の程度等を用いて重症度3以上を対象としてはどうかと考えております。
72ページは「閉塞性細気管支炎」です。当該疾患は、特発性若しくは様々な原因によって末梢気道である細気管支の不可逆的閉塞を来すことにより呼吸不全を呈する疾患です。臨床症状としては、乾性咳嗽や労作時の呼吸困難が主となっており、進行性の経過をたどります。確立された治療方法はなく、長期療養が必要な疾患となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
74ページは診断基準です。症状として、労作時呼吸困難、咳嗽、喀痰のいずれかを満たし、病理所見で特徴的な所見を認め鑑別すべき疾患を除外したものを対象としてはどうかと考えております。
75ページは重症度分類です。閉塞性細気管支炎症候群の病期分類を用いて、BOS3を対象としてはどうかと考えております。
76ページ、番号が抜けております。3-17「肺胞蛋白症」です。自己免疫性、先天性というように記載されています。肺胞蛋白症は、サーファクタントの生成、若しくは、分解過程に障害により肺胞腔内を主として末梢気腔内にサーファクタント由来物質である好酸性の顆粒状の蛋白様物質の異常貯留を来す疾患の総称です。当該疾患に関しては、自己免疫性、続発性、先天性、未分類にそれぞれ分けられますが、今回は自己免疫性と先天性を対象とするような形で考えております。症状としては、労作時の呼吸困難、咳、喀痰などが主となっております。治療法としては洗浄療法等が行われておりますが、これらも根治療法ではありませんので、長期の療養が必要とされております。要件の判定に必要な事項に関しては全て満たすものと考えております。
診断基準については80ページ及び81ページで、少し複雑な形になっていますが、アルゴリズムが81ページにありますので、それを基に診断していくような形で考えております。基本的には、画像所見及び病理所見それぞれの項目を満たした場合に診断されるという形になっております。それぞれの所見について、細かく書いているのが78ページ、79ページです。その上で、アルゴリズムに従って自己免疫性及び先天性の診断をして対象とすると考えております。
82ページは重症度分類です。肺胞蛋白症の重症度、難治例を考慮して、管理区分重症度というものを計算して、管理区分重症度が3以上を対象としてはどうかと提案しております。
83ページは「肺胞低換気症候群」です。肺胞低換気については、様々な病態で起こり得ますが、二次性の肺胞低換気を除いて、肺胞低換気症候群として今回提案させていただきました。呼吸器系の異常はなく、肺機能検査上も異常がないにもかかわらず、肺胞低換気を呈する病態です。呼吸の自動調節機能の異常と考えられております。根治療法は確立されていません。対症療法が中心となって、長期療養が必要な疾患となっております。要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
85ページは診断基準です。症状として3つの項目のうち、1項目以上及び動脈血液ガス分析において、慢性の高度の高二酸化炭素血症を認めるというようなところがあります。さらに、鑑別疾患を除外して診断するというような形にしています。Bの3のポリソムノグラフィーを加えて、更に診断の確実性が高まるというように考えております。
87ページは重症度分類です。自覚症状、動脈血液ガス分析、治療状況を組み合わせて、重症度3以上を対象とするという形で考えております。
88ページは「α 1 -アンチトリプシン欠乏症」です。AATDについては、AATの欠乏により若年性にCOPDを発症する疾患です。肺の防御因子であるAATが減少することによって、COPDが発症するというようにされておりますが、通常のCOPDとは異なって、喫煙等、その生活習慣の影響というものをほぼ考慮から外せる疾患というようなことで伺っております。症状としては、労作時の呼吸困難、慢性の咳嗽、喀痰等があり、進行すると酸素吸入や人工呼吸が必要となる疾患です。進行性の経過をたどり長期の療養が必要な疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
90ページは認定基準です。症状として1と2のいずれか、及び検査所見を満たして、鑑別診断を除外したものというような形で診断されるということです。
91ページは重症度分類です。自覚症状及び動脈血液ガス分析、呼吸機能検査を組み合わせて判定し、重症度2以上を対象としてはどうかと考えております。また、別途、AATの濃度を測定した場合には、それも用いる形にしてはどうかという提案をしております。
92ページは「カーニー複合」です。当該疾患は、粘液腫、皮膚の色素斑、内分泌機能亢進状態を合併した症候群です。クッシング症候群や先端肥大症、女性化乳房等の内分泌疾患の合併が多く来す遺伝性の多発性腫瘍症候群となっております。治療法としては、それぞれの内分泌異常に対して外科的切除であったり、ホルモン療法を含む治療を行うことが必要となっており、長期療養が必要であるというように考えております。要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
94ページは診断基準です。主要徴候としては1~12まで様々ありますが、そのうち2つ以上を認められた場合、これについては、1以外のものについては病理診断で確定されたものとしております。若しくはその1つと遺伝子異常、若しくは家族歴があるものという場合に診断されるというようにしております。
95ページは重症度分類です。手術適応者若しくは術後1年以内の患者さん、若しくはホルモン異常の重症度分類を満たす患者さんを対象にしてはどうかと考えております。
96ページは「ウォルフラム症候群」です。当該疾患は、若年発症の糖尿病が初発症状となり、更に視神経萎縮により視力障害を来す。この2つの特徴を来す疾患群です。内分泌代謝系、精神神経系を広範に障害し、そのほかにも尿崩症や難聴、尿路異常等々を来す疾患群になっております。治療法としては、対症療法、支持療法が基本的ですが、根本的な治療は確立されておらず長期の療養を必要とすることから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
98ページは診断基準です。診断例を対象とするものと考えております。主要項目の1~3として示すもののうち、2つ以上を満たすことにより診断するとしております。
重症度分類は、視覚障害として、良好のほうの眼の矯正視力が0.3未満、若しくはmodified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象としてはどうかと提案しております。
101ページは「ペルオキシソーム病」です。当該疾患の所の3-22の番号がありません。当該疾患は、副腎白質ジストロフィーをもともと含む疾患概念ですが、既に指定難病として対象となっていることから、副腎白質ジストロフィーを除くほかの疾患について、ここに示させていただいております。細胞内ペルオキシソームに局在する酵素・蛋白の単独欠損症、及びそれらの蛋白をペルオキシソームに局在させるために必要なPEX蛋白の遺伝子異常によって起こる疾患群です。15の疾患に分類されますが、ペルオキシソーム形成異常症として、ツェルベーガー症候群など4疾患、更に単独欠損症として、副腎白質ジストロフィーを含むβ-酸化系酵素欠損症などが挙げられております。治療法としては、多くの疾患では根治療法は確立しておらず、対症療法が中心となっております。食事療法等を行いますが、長期の療養が必要となっております。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、103ページから各タイプによって記載しております。大体の内容としては、症状、代謝産物、免疫染色、更に遺伝子異常等を組み合わせた形で診断させていただき、各それぞれの診断基準を満たした場合に対象としてはどうかと考えております。111ページまでがそういったような形の記載となっております。
112ページは重症度分類です。modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とすることとしてはどうかと考えております。
114ページは「副甲状腺機能低下症」です。当該疾患は、副甲状腺ホルモンの分泌低下によって、PTH作用障害から低カルシウム血症であったり高リン血症が惹起され、主として低カルシウム血症による症状が問題となる疾患群です。症状としては、低カルシウム血症による様々な症状、更には白内障や大脳基底核の石灰化等々、多彩な症候を示す疾患です。治療法としては、カルシウムの投与、活性型ビタミンD3 製剤投与等の対症療法が行われますが、根治療法はなく長期療養が必要となります。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
116ページは診断基準です。検査所見として1~3に示しているもの全てを認めた場合で、117ページにフローチャートがありますが、そちらに従って診断する形になっております。さらに、その上で、二次性の疾患及びマグネシウム補充によって治癒する場合、これはマグネシウム欠乏というような形ですので、除外することとしております。
重症度分類は、当該疾患の重症度分類を用いて、中等症以上を対象としてはどうかと提案しております。
119ページは「偽性副甲状腺機能低下症」です。当該疾患は、PTHが正常に分泌されているにもかかわらず、副甲状腺機能低下症のような症状を来す疾患群です。更にオルブライト遺伝性骨ジストロフィーといったものの症候を合併するようなことがある1a型などの幾つかのタイプに分けられております。治療法としては、低カルシウム血症に対する活性型ビタミンD投与等により治療を行います。また、他のホルモンの欠乏等を来すこともあり、それらに対する補充療法等も行っております。これらは根治療法ではなく、長期の療養が必要というように考えており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
121ページは診断基準です。症状を1つ以上満たし検査所見全てを満たし、他の疾患を除外した場合に診断するという形で考えております。
重症度分類は、当該疾患の重症度分類を用いて重症の部分を対象としてはどうかと提案しております。
123ページは「副腎皮質刺激ホルモン不応症」です。当該疾患は、ACTH不応症とも言っておりますが、先天性の要因によってグルココルチコイド及び副腎アンドロゲンの低下を認めますが、ミネラルコルチコイドについては保たれている状態です。無涙症、アカラシアを合併することがあり、それはTripleA症候群という形で示されているものになります。治療法としては、他の副腎不全を来す疾患と同様に、生涯にわたってグルココルチコイドの補充というものが必要となり、長期にわたって療養が必要な疾患となっております。要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
125ページは診断基準です。臨床症状のいずれかを満たし、検査所見として挙げられているもの、1、2、3を全て満たすということが必要というように考えております。さらに、遺伝子異常で、いずれか1つの遺伝子異常を認める場合に確実例として対象としてはどうかと考えております。
126ページは重症度分類です。他の副腎不全、110の中に入っているものと同じような形で、「血中コルチゾールの低下を認める」場合、「負荷試験への反応性低下」、「何らかの副腎不全症状がある」、「ステロイドを定期的に補充している者」のいずれかを満たす場合を対象としてはどうかと考えております。
127ページは「ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症」です。当該疾患は、別名、低リン血症くる病/骨軟化症と呼ばれる疾患です。成長軟骨帯閉鎖以前に発症する場合は、くる病、それ以降に発症するものを骨軟化症としております。ビタミンD欠乏性のくる病や骨軟化症とは異なり、天然型ビタミンDにより完治しないというのがこの疾患の特徴です。治療法としては、リン製剤と活性型ビタミンD3 製剤が使用されておりますが、これらも含めて、対症療法が中心となっており長期の療養を必要とする疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
129ページは診断基準です。当該疾患は、まず、くる病、若しくは骨軟化症の基準のいずれかを満たして、131ページの所にあるチャートの中で、ここではFGF23関連低リン血症という形で書いていますが、ここの部分が当該疾患に当たる部分となりますので、これらの所に当たるものを対象とするというように考えております。
132ページは重症度分類です。当該疾患の重症度分類を用いて、中等症以上を対象とすることを考えております。
133ページは「ビタミンD依存性くる病/骨軟化症」です。先ほどビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症ということでお示ししましたが、当該疾患も天然型ビタミンDに対する抵抗性を示すようなものですが、先ほどのものに関しては低リン血症を主体とする疾患、当該疾患に関しては、ビタミンDの活性化であるとか、ビタミンDの作用が障害される疾患ですので、この両者は異なる疾患であるというようなところで頂いております。治療法としては、活性型のビタミンD投与が中心となりますが、様々な症状を来すというところから、継続的な治療が必要となり、長期の療養を必要とする疾患です。要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
135ページは診断基準です。ビタミンD依存性くる病/骨軟化症は、1型と2型があります。それぞれ7項目ありますが、全て満たすような形のものを対象としてはどうかと考えております。その診断のチャートも含めて、137ページの所に示しております。
138ページは重症度分類です。当該疾患の重症度分類を用いて、中等症以上を対象としてはどうかと考えております。以上、3-15「オスラー病」から、3-27「ビタミンD依存性くる病/骨軟化症」までを説明いたしました。
○千葉委員長 最初の部分は呼吸器疾患が入っていて、後半部は内分泌疾患ということになりますが、いかがでしょうか。御質問等はありますか。
○大澤委員 3-18の肺胞低換気症候群ですが、これはオンディーヌ症候群なども含まれると考えてよろしいでしょうか。
○巽参考人 はい。いわゆるオンディーヌ症候群が一部入っております。
○大澤委員 87ページの重症度分類の所に、息切れを評価する修正MRC分類グレードという形になっておりますが、例えば生後間もなくから症状が出ているような症例などの場合には、労作そのものができない症例もありますが、そういう症例はもちろん対象となるということでよろしいのでしょうか。
○巽参考人 対象となりますが、その場合は動脈血の血液ガス分析で重症度が判定できますので、自覚症状はもちろん先生が御指摘のように分かりませんが、重症度の判定ができれば、指定難病の認定はできるというように考えております。
○千葉委員長 ほかはいかがでしょうか。
○錦織委員 3-20のカーニーコンプレックスですが、診断はデフィニットでしょうか、プロバブルでしょうか。Aの主要徴候の1の点状皮膚色素沈着というのが、恐らく英語を訳されたのかと思いますが、普通、これは” lentigo ”でして、基底層のメラノサイトが少し増加し、メラニンの合成も高まるというような病理組織学的なきちんとした所見があります。これは遺伝子学的にシグナルのメラノサイトの増殖とメラニン合成のシグナルが入っていることで、そうなっているのではないかと推測されていて、一連のものなので、恐らく皮膚科医が診れば、多発性のレンチジンで、これはカーニーコンプレックスとすぐに分かるかと思いますけれども、ほかの科の先生の場合、点状皮膚色素沈着と書くと、どのようなものをイメージされているのかが分かりにくいのではないかと。そうすると、A項目のうち2つ以上の、1と、例えば心臓の粘液腫になると、割と甲状腺がんとか、粘液腫とか、それぞれの疾患が比較的に頻度の高いものですので、その辺りをもう少し絞り込むというか、診断がはっきりするような言い方をしていただいたほうがいいのでは。カーニーコンプレックスそのものは難病だと思いますけれども。以上です。
○島津参考人 ありがとうございます。皮膚の所見は、病理組織のほうのしっかりとした基準がありますので、ここも病理組織診断でいく。やはり確定は皮膚生検までするのかというのはまた別ですが、きちんとした皮膚科医で診ていただくということは必要だという先生の御意見には賛成です。
それぞれの症状のほうも、割と見るのですが、ただし、例えば副腎の病変などは、ここは非常にまれな病変ですので、この副腎の病変を見ただけで、カーニー複合ということにもなりますので、この2つ以上というのは、ずっと経過を見ていて異時性にいろいろ出てきますので、なるべく早く拾ってあげるという意味で、今2つというように、多分、班のほうで決めたのだと思っております。
○千葉委員長 これは、皮膚科の先生が診られれば、生検なしでも分かりますか。
○錦織委員 かなり多発するので、一見すれば。内分泌とか、心臓とかを調べなければいけないというような感覚ではありますが、ある程度は分かると思います。
○千葉委員長 ほかの疾患でもそうですが、生検をするかどうかはしばしば問題になることがありますので、そこのポイントですね。ほかはいかがですか。
○和田委員 確認です。3-17の肺胞蛋白症の重症度分類ですが、77ページの要件の判定に必要な所の6では、重症度2以上と書いてあります。82ページのほうの重症度分類では、3度になっていますが、これはどちらが正しいのでしょうか。
○前田疾病対策課長補佐 これは3です。資料として訂正させていただきます。申し訳ございません。
○千葉委員長 これは訂正ということですね。ほかはいかがですか。呼吸器の疾患が並んでいますが、巽先生、特にコメント、あるいは追記等々はありますでしょうか。
○巽参考人 厚労省のほうで十分御検討いただきまして、特に追加はございません。ありがとうございます。
○千葉委員長 ほかはいかがでしょうか。101ページのペルオキシソーム病というのは、これは今まで幾つか言われてきた疾患群を合わせた病名という、そういうことでよろしいのですね。
○島津参考人 個々の疾患にすると非常に数が多くなるので、ある程度、同じような項目でまとめられるものはまとめていただいたというように理解しております。
○千葉委員長 それから119ページ、偽性副甲状腺ですが、偽性偽性も同じ遺伝子異常ですけれども、これは症状がないというところで、偽性というところでよろしいという、そういうことですね。
○島津参考人 偽性副甲状腺機能低下症は、ホルモン受容体障害の代表的なものです。もう1つは、これとよく似た偽性偽性というものがありますが、そちらのほうは、全く臨床所見はホルモン障害がないということです。
○千葉委員長 ほかはいかがでしょうか。
○錦織委員 1つよろしいですか。3-26のビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症ですが、この原因のところの最後のほうに少し書かれている「Phosphaturic mesenchymal tumor,mixed connective tissue variantなどの良性の腫瘍よりFGF23が過剰産生される」うんぬんと書かれておりますが、この疾患にもそういう産生や腫瘍性の二次的なものも含まれるのか含まれないのかというのが、ちょっとこれを読んだ限りでは分かりませんが、それも含めてということなのでしょうか。短期間のものであれば、恐らく血清学的な電解質異常は起こるだろうと思いますが、その辺、二次性のものが入っているかどうか。いかがでしょうか。
○島津参考人 私からお答えいたします。FGF23は日本で発見されたもので非常に注目を浴びていますが、実はFGF23産生の腫瘍性のものがくる病のかなりの部分を占めるであろうというように考えられております。ただ、実際に腫瘍は非常に小さくて、実はそれを発見するまで、ものすごく長い時間がかかっていたり、例えば四肢の局所とか、それから軟部組織の部分とかが原因します。はっきり大きな腫瘍があってホルモン産生がみられるといった、ほかの多くのホルモン産生腫瘍とは異なり、この疾患に関しては、非常に小さいものでも活性があってなかなか局在診断が付きにくい。この腫瘍性、成人のくる病/骨軟化症を疑うときには、FGF-23も測定し、いろいろな部位での採血をして、濃度ステップアップがあるかということも検索します。なかなか治療まで至らないという側面もあります。腫瘍性骨軟化症の診断がついて治ったとすれば、それで良いのですが、是非、対象疾患に入れて、いろいろ検索して治療していかなければいけないという意味では、腫瘍性ではありますが、難病のくくりで考えてはいかがかというように思います。
○千葉委員長 今の議論は、これでよろしいですね。
○水澤委員 腫瘍を取ると、かなりよくなるのではなかったでしたか。
○島津参考人 完全によくなれば寛解という形になります。
○水澤委員 重症度でそこは捉えているからよろしいという考えですか。
○島津参考人 そうですね、ソマトスタチン受容体シンチなど検索手段を駆使して腫瘍が見つかって、ここが原因だということがはっきり分かって、手術までもっていっていただくというところまでは対象になるのかということです。
○水澤委員 1例経験がありますが、報告をするくらいの珍しさですよね。そして、腫瘍を摘出して治りました。確かに腫瘍を見つけるまでが難しいところなのですが、完治するのでイメージが難病というと少し抵抗があります。
○島津参考人 見つかるまでが大変だということ。
○千葉委員長 恐らく今後、一般化されるというか、知名度が高くなってくると、ひょっとしたらひょっとして、難病というところから外れるのかもしれませんね。
○水澤委員 多分、どこかに書いてあるのですね。というのは、ほかの疾患でもありますが、いつも問題になる腫瘍性のところです。パラネオプラスティックのものはいろいろあるわけですけれども、ほぼ同じ症状で特発性のものがあります。腫瘍性のものをちゃんと調べていただいて、治るものは治し、悪性のものはそちらの治療をしなければいけない訳ですが、特発性と思ってしまって、もう難病だからいいというようにとどまるのが一番危険だと思っています。
○島津参考人 一応、皆さん、腫瘍を探しにいきます。
○千葉委員長 ここは、今、正に見つかってきたところですね。今後、この疾患自体の展開もあるでしょうし、これは1つのパターンというか、今後、難病の中にこういうものが出てくるであろうという、そういうことだと思いますが、今までの難病の概念として妥当であるというところで、入れていただくということでよろしいかと思います。ただし、そういう認識は必要ですね。ほかにはよろしいでしょうか。
それでは、次をお願いしたいと思います。
○岩佐疾病対策課長補佐 それでは続きまして、3-28「フェニルケトン尿症」から3-39「複合カルボキシラーゼ欠損症」まで、続けていきたいと思います。フェニルケトン尿症については先天性アミノ酸代謝異常症の一種で、フェニルアラニンの代謝経路の障害によって引き起こされる疾患です。新生児・乳児期の脳構築障害等による様々な症状を来すという疾患であり、新生児期において早期にフェニルアラニンの投与量を適切に制限していく必要性があるという形になっています。さらに、その後も厳しい食事療法等を必要とする疾患で、一度その脳神経症状が発症しますと不可逆的になるというところもあり、長期療養が必要な疾患となっています。したがって、要件の判定に必要な事項は全て満たすものと考えています。
診断基準としては141ページです。アミノ酸分析で高値を認めて、プテリジン分析、若しくはDHPR酵素解析を行い、特徴的な所見を認めたものを確定例として対象としてはどうかとしています。
142ページ、先天性代謝異常症の重症度分類という形で示しています。先天代謝異常に関しては、同じような重症度分類を使っていますが、薬物などの治療状況、それから食事栄養治療の状況、それから検査異常、更に精神運動発達遅滞等、それから臓器障害、生活の自立度等を総合的に評価し点数を付け、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして、144ページ「高チロシン血症」です。当該疾患、1型、2型、3型という形にしていまして、チロシンの代謝経路の異常により、血中チロシンが高値を来すような疾患群です。進行する肝障害と腎尿細管障害が特徴で、様々な進行度を示すような疾患です。食事療法を含め対症療法が中心となっていますが、根治療法ではありませんので長期療法が必要となる疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
146ページ、診断基準ですが、それぞれアミノ酸分析などで特徴的な所見を認めるものを対象とする形で診断基準を1型、2型、3型で示しています。
147ページ、重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度分類を用いて、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして、149ページ「メープルシロップ尿症」です。当該疾患は、分枝鎖アミノ酸由来の分枝鎖ケト酸の酸化的脱炭酸反応を触媒する分枝鎖ケト酸脱水素酵素の障害に基づく先天代謝異常疾患です。様々な神経症状を認め、治療が遅れると重篤な神経後遺症を残したり、死に至るというような疾患です。対症療法を中心とした治療を行っており、長期療養を必要としている疾患で、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、151ページ、診断の根拠となる検査として、血中・尿中のアミノ酸分析、及び有機酸分析、又は酵素活性のいずれかを満たすものというのを確定例として、対象としてはどうかとしています。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
154ページ「プロピオン酸血症」です。当該疾患はプロピオニオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下により、プロピオン酸を始めとする有機酸が蓄積して、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を示す常染色体劣性の遺伝性疾患です。新生児から乳児期にかけ、重度の代謝性アシドーシス等を来す疾患で、その後も呼吸障害や中枢神経障害などを認める疾患となっています。食事療法を含む対症療法を行っていますが、根治療法はなく長期療養が必要となる疾患群です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準については、血中アシルカルニチン分析及び、尿中有機酸分析で特異的所見を得られたものが確定診断として、これらを対象とするのはどうかと考えています。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして159ページ、「メチルマロン酸血症」です。当該疾患は、メチルマロニルCoAムターゼの活性低下により、メチルマロン酸を始めとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種症状を呈する遺伝性の疾患です。典型的には新生児期から乳児期にかけて、ケトアシドーシスや高アンモニア血症等が出現し、各種神経症状を伴い、その後も呼吸障害、中枢神経障害等を来す疾患です。食事療法を含めた対症療法が中心となっていて、長期の療養を必要とする疾患となっておりまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
161ページに診断基準がありますが、血中アシルカルニチン分析及び尿中有機酸分析で特異的所見があり、ビタミンB12欠乏症等を除外することができた場合に診断するとしています。
重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価を用い、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続いて164ページ、「イソ吉草酸血症」です。当該疾患はロイシンの中間代謝過程で働くイソバレリルCoA脱水素酵素の障害により生じる疾患です。強い代謝性アシドーシスや高アンモニア血症、低血糖等がしばじは認められ、食事療法、薬物療法を含む対症療法を行いますが、治療は生涯継続する必要性があるとされています。このため、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準、166ページですが、症状を1つ以上認め、血中アシルカルニチン分析が陽性で疑診となり、尿中有機酸分析で特徴的な所見を認めた場合に確定診断されたものを対象としてはどうかと考えています。
重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価を用い、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして170ページ、「グルコーストランスポーター1欠損症症候群」です。当該疾患は脳のエネルギー代謝基質のグルコースが中枢神経系に取り込まれないということにより生じる代謝性脳症です。様々な中枢神経系の機能不全を来し、特に難治性のてんかんであったり、発達遅滞、痙性麻痺、運動失調等を来すとされています。食事療法を含める各種対症療法を行っていますが、長期にわたって療養が必要となる疾患で、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、172ページの所です。遺伝子検査、若しくは赤血球3-O-methyl-D-glucoseの取込み試験の低下を認めたものを確定診断例として、これを対象としてはどうかと提案しています。
重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価を用い、中等症以上を対象としてはどうかと提案しています。
175ページ「グルタル酸血症1型」です。当該疾患はリジン、ヒドロキシリジン、トリプトファンの中間代謝過程で働くグルタリルCoA脱水素酵素の障害により生じる、常染色体劣性遺伝の疾患です。この中間代謝産物であるグルタル酸や3-ヒドロキシングルタル酸などの蓄積が中枢神経に影響を及ぼし、様々な神経症状を認める疾患です。食事療法を含む対症療法を長期にわたり行う必要性がある疾患で、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準は177ページですが、幾つかあるその症状の1つ以上を満たし、血中アシルカルニチン分析で特徴的な所見を満たし、疑診、疑いという形にしており、尿中有機酸分析、若しくは酵素活性及び遺伝子異常、いずれかを満たす場合に確定診断され、それらを対象としてはどうかと考えています。
重症度分類については先天性代謝異常症の重症度評価を用い、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして181ページ、「グルタル酸血症2型」です。当該疾患はミトコンドリア内の電子伝達フラビン蛋白及びETF脱水素酵素の先天的欠損によって生じる疾患です。新生児期に種々の奇形や多嚢胞性嚢胞腎を合併するなど、極めて重篤な代謝性アシドーシス等で発症するとされています。成人期に発症し、筋痛、筋力低下を来すような症例まで、少し幅広いような疾患になっています。当該疾患についても、食事療法を含む対症療法が中心となる疾患となっていて、長期療養が必要な疾患群となっています。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
183ページ、診断基準ですが、タンデムマス検査所見により異常を認め、尿中有機酸分析所見、遺伝子解析、酵素診断、脂肪酸代謝能検査の4つのうち、いずれかで特徴的な所見を満たした場合に確定診断をし、確定診断例を対象としてはどうかと考えています。
185ページ、重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして187ページ、「尿素サイクル異常症」です。尿素サイクルは主に肝臓においてアンモニアから尿素を産生する経路で、オルニチン、シトルリン、アルギニノコハク酸、アルギニンの4つのアミノ酸から構成されるものです。尿素サイクル異常症については、これらの尿素合成経路の代謝系に先天的な異常のある疾患で、高アンモニア血症の症状を発症する症候群です。Nアセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、それからカルバミルリン酸合成酵素欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、古典型シトルリン血症、アルギニノコハク酸尿症、アルギニン血症が含まれる疾患になります。治療としては、薬物療法によりアンモニアの低下を図るなどの対症療法が中心となっていて、これに関しても長期の療養が必要な疾患となっていて、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えています。
189ページに診断基準がありますが、症状として1つ以上、さらに、検査データ3項目中2つ以上を満たし、特異的検査において各疾患の特徴的な血中・尿中アミノ酸分析及び尿有機酸分析所見、酵素活性あるいは遺伝子所見を認めた場合に対象としてはどうかと考えています。それらの疾患の特徴について、次の190ページに表としてまとめていますので、これらも御参照ください。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価で中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして193ページ、「リジン尿性蛋白不耐症」です。当該疾患は二塩基性アミノ酸の輸送蛋白の1つであるy+LAT-1の機能異常により、二塩基性アミノ酸の輸送異常を来す疾患です。高アンモニア血症や成長障害等を認めるような疾患でして、それらに対する対症療法が中心となっております。したがいまして長期の療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
195ページに診断基準がありますが、臨床所見としていずれかを満たし、検査所見4項目のうち3項目以上を認めるものを対象としてはどうかと考えています。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象とする形にしてはどうかと提案しています。
続きまして198ページ、「複合カルボキシラーゼ欠損症」です。当該疾患はビオチンを補酵素とする4種類のカルボキシラーゼとして、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼがありますが、これらの活性が同時に低下する複合カルボキシラーゼ欠損症という形になっています。症状としては、筋緊張低下やけいれん等を認める疾患で、根治療法はなく対症療法のみとなっていまして、長期療養が必要になる疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、200ページです。尿中有機酸分析で特徴的な所見を認めまして、栄養性ビオチン欠乏症を否定することにより確定診断を満たすと考えています。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。以上、「フェニルケトン尿症」から「複合カルボキシラーゼ欠損症」までの説明をさせていただきました。
○千葉委員長 はい、ありがとうございます。今のは基本的に酵素異常、代謝異常症を集めた形になっていまして、したがって、重症度分類については、ほぼ全て先天性代謝異常症の重症度評価に基づいて、重症度分類をしているということですね。
○前田疾病対策課長補佐 1点だけ重症度について補足をさせていただきますと、今回やはり、もちろん難病というのは年齢制限を設けていないのですが、成人に達したところが1つのキーになってくると思います。その中で診断基準、特に重症度分類といったところは、大人も含めてどういう形で評価するかは、先天代謝異常学会の先生方にも御尽力いただき、こういう評価スケールという形を御提案いただきました。特にトランジションという話になってきた場合は、同意はどのぐらい頂けているかというのも少しキーになってくるかというところで、作成の経過という形で御案内をさせていただきました。
○千葉委員長 そうすると、これは今回新たに検討して、作成していただいたものということになりますか。
○前田疾病対策課長補佐 もともと評価軸は、ある程度あったとは伺っていますが、こういう重大な疾患、こういう制度というところの中で、どういう形で評価するのがいいのか御検討いただいたと聞いているので、この議論をする中でふさわしいという形で修正していただいていると思っています。
○千葉委員長 分かりました。
○大澤委員 170ページの3-34のグルコーストランスポーター1欠損症症候群ですが、172ページに診断基準がありますが、遺伝子検査で遺伝子変異を確定する、又は赤血球の取込み試験で低下を認めるということが診断基準になっています。確かにそうですが、これを、大学病院の系統であっても実際に行うのはかなり難しく、生化学の教室に頼まなければいけないなどということもあります。それで、その上にあります臨床検査の(1)(2)(3)を見ていただくと、これらを満たしていれば、つまり脳波を撮ったときに、食前と食後では明らかに脳波所見が改善するのですね。それで確定はできると思うので、診断基準を御検討いただけないでしょうか。よろしくお願いします。
○前田疾病対策課長補佐 当然これは、どこまでクオリティを高めるかというところと、どれぐらいで臨床診断すると、ほぼカテゴリーとして間違いはないかというところかと思いますので、これは研究班に確認をさせていただきたいと思います。
○千葉委員長 先生が言っているのは、診断基準の(2)の(2)の取込み試験が、そんなにどこでも行っているものではないというお話ですか。
○大澤委員 あと、(1)の遺伝子もです。
○千葉委員長 もちろん遺伝子もそうですね。
○巽参考人 診断自体は小児でついているわけですよね。その患者さん方が、もし成人に達したときの認定更新は、多分、この基準では駄目ですよね。
○前田疾病対策課長補佐 制度的な御案内をしますと、基本的には診断というときには、例えば提出をしていただいたときが20歳であったとしても、その診断に至る過去の経緯も含めて情報収集をし、新生児期にこういうエピソードがあった、乳児期にこういうエピソードがあったということも踏まえて、最終的にその病気かどうかを判断していただくという形になります。
他方、医療費助成の対象になるという話の場合に、一定程度の日常生活、社会生活に支障のある方ということでお願いをしていますので、これは新規、1年に1度、更新という形で診断書を御提出いただきます。そのとき、正に診断書を書いていただいたときのライブの情報になり、そこで評価ができるかどうかの評価軸を頂戴しています。診断という点に関しては、前段階のところで解決ができていると思います。
○千葉委員長 重要な御指摘で、恐らく今の疾患というものは多くの方は小さなときに診断がついて、そして大人になられてこちらに入ってこられるということですね。一部、成人になってから分かる症例があるということなので、そこの突合せというのは、非常に重要になると思います。運用上は非常に重要になりますよね。
○飯野委員 そうしますと、重症度分類の特に食事栄養治療の状況のところ、2ですけれども、特殊ミルクを継続して使用というのが何か少し違和感があるので、それは前に。
○大澤委員 このGLUT-1欠損症に関しては、ケトン食療法というものを行いまして、特殊ミルクではありませんが、ケトン食療法という、炭水化物ではなく脂肪から脳のエネルギー源を得るという療法を生涯続ける必要があり、それを行いませんと症状が直ちに悪化します。
○飯野委員 全ての重症度に、ミルクが入っているので。
○千葉委員長 そうですね。全てにこのミルクという記載が入っているのはどうか。
○前田疾病対策課長補佐 すみません。今、先生に少しだけおっしゃっていただいたのですが、例えば重症度で2で見ていただくと、「特殊ミルクを継続して使用するなど」という形で、一応数字上は隙間を空けていて、実際その中に何が入るかというと、これは1つ1つ事例を確認して、例えば、こういう食事コントロールをしている場合は該当するかどうかという話は出てくると思いますので、それは通知そのものを書き替えるか、Q&Aみたいな形で補足していくことで対応させていただきたいと思います。
○千葉委員長 そうですね。
○岩佐疾病対策課長補佐 少し追加させていただきます。この重症度分類の一番最後のところに注意書きがあり、食事栄養治療に関しては、ガイドラインに準拠した形でとなっていて、実は先天性代謝異常症に関しての食事療法のガイドラインを出していただいています。非常にそこは、疾患によってはかなり厳密なものをやらなくてはいけない状況ですので、そういう細かいものについては、ガイドラインを参照してくださいと示していますので、基本的には、そういうもので考えています。
○千葉委員長 余り個別に細かく1つ1つ書くよりも、こういった形にして、それぞれ特殊な例については、ちゃんと対応できるようなシステムにしておくほうが分かりやすいような気はしますね。いかがでしょうか。ほか全体を見ていただいて。これは、ある意味で酵素欠損、代謝異常ということで。
前回の先天疾患と違い、酵素異常ですので、代謝物で見ることで診断がつくのが多いので、遺伝子診断が必須というわけではなく、あるいは酵素による代謝物の異常がほとんど診断基準に入ってきているということですね。
○水澤委員 今のことですが、確かにそうで、正確に測れるのはいいのですが、やはり私の経験では、あちこち調べて小児科の特殊な所にお願いしないと、なかなか診断がつかないのです。遺伝子の検査と同じような状況があると思うのですが、これはどこかの学会に頼むとすぐできるような感じにはなっているのでしょうか。
○岩佐疾病対策課長補佐 その辺りについても、前回の議論と同じような所があると思っていますので、状況等を踏まえて、どのような形で進めていくのがいいのかは、今後の課題としていきたいと思います。
○千葉委員長 こういう所で診断できますよという情報が、全国各都道府県に伝わっているということが非常に重要だと思いますね。疑ったときにどこで診てもらったらいいのか分かるようなシステムの構築が極めて重要だと思います。
ただ一方で、その先生や施設にドカッと症例が集まると、逆にある意味で大変ですので、その辺のサポートなども一緒にしていかないと。あそこに送ったらお終いということだと困ると思うので、そこは是非、御検討をよろしくお願いしたいと思います。
よろしいでしょうか。それでは次、お願いします。
○岩佐疾病対策課長補佐 それでは、203ページの「筋型糖原病」から最後の所まで御説明申し上げます。糖原病は先天的なグリコーゲンの代謝異常でして、肝型と筋型という形に大別できます。肝型糖原病については様々なタイプがありますが、206ページの所の診断基準の中で、それぞれのタイプごとに表を示しています。症状としては、筋型のものについては筋症状が中心でして、さらに様々な合併症を認める形になっています。根本的な治療法はなく、酵素補充療法があるような疾患もありますが、それらも含めて長期療養が必要となっていて、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準、205ページですが、遺伝子検査及び酵素活性測定で確定診断するような形になっていて、次ページの表を御参照いただければと思います。
重症度分類については、先天性代謝異常症の重症度評価を用いて、中等症以上を対象とするという形にしています。
209ページ「肝型糖原病」です。先ほど申し上げた筋型に比べまして、当該疾患は、肝を中心に症状を来す糖原病で、これも様々なタイプの疾患になっています。当該疾患においても食事療法を含めた対症療法が必要となっていまして、長期の療養が必要で、要件の判定に必要な事項を満たすと考えています。
診断基準ですが、211ページからです。症状及び検査で疑いまして、酵素活性や遺伝子異常等で確定診断するような形になっていて、それぞれのタイプごとに示しています。
重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価を用いて、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして217ページ、「ガラクトース1リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症」です。当該疾患は、先天的にガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼが欠損して、ガラクトースやガラクトース-1-リン酸の蓄積を生じる疾患です。新生児早期から、様々な消化器症状や低血糖、尿細管障害、肝障害等を認める疾患でして、食事療法を含めた対症療法が中心となっています。したがって、長期の療養を必要としまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準が219ページにありますが、診断の根拠となる特殊検査として、ボイトラー法及び酵素法の双方を満たしまして、鑑別診断がなされているものを確定診断例としています。
重症度分類ですが、先天性代謝異常症の重症度評価を用いて、中等症以上を対象としてはどうかと考えています。
続きまして223ページ、「レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症」です。当該疾患はLCAT欠損症とも呼ばれておりまして、まれな常染色体劣性疾患です。コレステロールのエステル化に重要な酵素としてのLCATが欠損しておりまして、遊離コレステロールやレシチンが増加して、HDLコレステロールの著明な低下及び血清コレステロールエステル比の低下を認める疾患です。進行性の腎障害を来して、末期腎不全に至ったり、角膜混濁等を来すような疾患とされていまして、遺伝子治療等も試みられておりますが、未だに治療は確立されておらず、長期療養が必要な疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、必須項目として、血中HDLコレステロール値が10mg/dl未満という形、さらに、症状として1、2のいずれか、及び鑑別診断を除外して診断します。さらに、遺伝子検査を行いまして、その確実性を高めるという形になっています。
重症度分類としましては、食事療法や薬物療法を行っても、血中HDLコレステロール値が10mg/dl未満になるものを対象としてはどうかと提案しています。
続きまして227ページ、「シトステロール血症」です。当該疾患は、常染色体劣性遺伝をとる遺伝性脂質代謝異常でして、果物や野菜等に含まれるシトステロールの排泄低下によって血中にこれらが蓄積する疾患です。根治療法はなく対症療法のみとなっていまして、そのため様々な治療が必要で、長期療養が必要な疾患でして、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準、229ページですが、症状として、皮膚・腱黄色腫及び早発性冠動脈疾患のいずれかを満たして、血清シトステロール濃度の上昇を認めるということで診断がされます。さらに、遺伝子診断でその確実性を高めるという形にしています。
230ページ、重症度分類ですが、薬物療法を行ってもシトステロールのコントロールが困難で、できないものを対象としてはどうかと考えています。
231ページ「タンジール病」です。当該疾患は、血清HDLコレステロール・アポリポ蛋白A-1濃度が著しい低下を示す常染色体劣性遺伝疾患です。そのほかにも肝脾腫や角膜混濁等、様々な症状を来す疾患です。当該疾患も根本的な治療はなく、対症療法のみとなっております。したがって、長期の療養が必要となっていまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、必須項目として、1)、2)、3)の3項目全てを満たして、症状のうち2項目を満たし、遺伝子異常を認める例をタンジール病と診断する形にしています。
重症度分類としましては、食事療法や薬物療法を行っても、血清HDLコレステロール値が10mg/dl未満を対象としてはどうかと考えています。
続きまして、235ページです。「家族性3型高脂血症」ですが、アポ蛋白の異常遺伝子型を基盤として発症する疾患でして、高レムナントリポ蛋白血症を来すような疾患です。当該疾患につきましては、動脈硬化性疾患や黄色腫を症状としまして、それらの根治的な治療方法はなく、食事療法や薬物療法を中心とした対症療法を継続することが必要で、長期療養が必要な疾患であると考えています。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準ですが、大項目として3項目あって、それらを全て満たしたものを確診例として対象としてはどうかと考えています。
重症度分類ですが、治療後の空腹時血中トリグリセリド値を用いて、以下の重症度分類3以上ということで、500mg/dl以上を対象としてはどうかと考えています。
239ページ「原発性高カイロミクロン血症」です。当該疾患は、カイロミクロン代謝に必要な酵素の欠損等により起こる疾患でして、カイロミクロンの蓄積を来して、著明な高トリグリセリド血症を来すような疾患です。当該疾患において、血清トリグリセリド値が1,000を超えるような場合も多々ありまして、急性膵炎の発症リスクが高まるような形になっています。食事療法を中心とした対症療法が中心となっていて、これらも長期療養が必要な疾患です。要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。
診断基準ですが、241ページです。必須項目として、(1)及び(2)を満たして、鑑別診断として、次のページのDの所にあるものが除外されるという形になっています。さらに、主症状としていずれか、若しくは特異的な検査所見のいずれかを満たすことで診断するとしています。
重症度分類ですが、先ほどのものと同様に血清トリグリセリド値を用いて、500以上を対象としてはどうかと考えています。ただ、確実な急性膵炎の既往がある場合には重症度分類を1つ上げて対応する、という形で考えています。
続きまして244ページ、「脳腱黄色腫症」です。当該疾患は、シトクロムP-450の遺伝子異常によりまして、CYP蛋白である27-ヒドロキシラーゼの活性が低下する遺伝性の疾患です。神経組織や腱組織に脂質成分の蓄積を認めて、進行性の神経障害を認める疾患です。当該疾患も対症療法が中心となる疾患でして、長期の療養が必要です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準としましては、症状として1~3のうち2つ以上を満たして、検査所見として、(1)の血清コレスタノール濃度及びそれ以外の1項目を満たしまして、鑑別診断を除外したものとなっています。さらに、遺伝子異常を認めた場合には、その診断の確実性は高まるとされています。
重症度分類ですが、進行性の神経症状を来すこともあって、神経疾患と同じような形でmodified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸の、それぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象としてはどうかと提案しています。
続きまして249ページ、「無βリポタンパク血症」です。当該疾患は、著しい低コレステロール血症と低トリグリセリド血症を来すような、まれな遺伝性疾患です。アポB含有リポタンパクであるカイロミクロンやVLDL、LDLが欠如しているという形になっています。根治的な治療はなく、対症療法のみという形になっておりまして、特に脂溶性ビタミンの長期大量投与が必要となっています。予後として、未治療では30歳前後に歩行障害など著しい障害を来すこともありまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
診断基準は251ページですが、必須項目として、血中トータルコレステロールが50未満、血中トリグリセリドが15未満の双方を満たすことを必須として、症状及び検査所見の組合せで、鑑別診断を除外して診断をしています。さらに、遺伝学的検査を認めた場合には、その診断の確実性は高まります。
重症度分類ですが、食事療法や薬物療法を行っても、血中トータルコレステロールが50未満、若しくは血中トリグリセリド値が15未満を満たす場合に対象としてはどうかと考えています。
最後ですが253ページ、「脂肪萎縮症」です。当該疾患は、全身性あるいは部分性に脂肪組織が消失する疾患でして、脂肪組織の消失とともに重度のインスリン抵抗性糖尿病であったり、高中性脂肪血症、又は非アルコール性の脂肪肝炎など、様々な異常を来す疾患です。当該疾患に関しましては、遺伝子異常による先天性のものと自己免疫性による後天性のものが存在して、それぞれ全身性と部分性という形で分けられております。現在のところ、脂肪萎縮そのものに対する治療法はなく対症療法が中心となっていまして、長期にわたる療養が必要となっている疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。
255ページに診断基準がありますが、画像診断及び除外診断という形で、AからDまで、先天性全身性及び後天性全身性、さらに、家族性部分性、後天性部分性というふうな形で診断基準を示しています。その中から、薬剤性のものや二次性のものを除外した形で対象としてはどうかと考えています。
重症度分類ですが、インスリン抵抗性を認めて、糖尿病であったり、高インスリン血症又は高中性脂肪血症を有するような脂肪萎縮症という形で対象としてはどうかと考えています。
以上、3-40「筋型糖原病」から3-50「脂肪萎縮症」までの御説明をさせていただきました。
○千葉委員長 40から50までですが、糖質・脂質代謝異常の疾患ですが、いかがでしょうか。
○巽参考人 すみません。指定難病の認定とは関係ないのですが、3-43の「古典型LCAT欠損症に対して、LCAT遺伝子導入前脂肪細胞移植による遺伝子治療臨床研究が厚労省により認定されている」と書いてあるのですが、これをすればよくなると厚労省は認めたということでよろしいのですか。
○岩佐疾病対策課長補佐 すみません。ここは記載が余り確実な形ではありませんので、少し見直しをいたします。今、そういう臨床研究は行われているという程度で考えていただければ結構です。
○直江委員 私も全く同じ所を指摘したいと思っていたのです。恐らく、これは遺伝子の審査の部会で承認されたという辺りではないかという気がするのですが。あと、ちょっと誤字もありますので、また直していただければと思います。次の質問は、3-46の家族性3型高脂血症なのですが、個人的に思うのは、難病というところとボーダーラインの病気かと。いわゆる症状がリスクであるということと、あと、ちょっと引っ掛かるのは、重症度分類が、治療後のトリグリセリドが500以上ということだけですので、最低でも食事療法や禁酒をある程度やっていただかなければいけないのではないかという気はします。しかも、結構いらっしゃいますけれども、ほかの先天性の酵素異常をずうっと聞いてきて、ここへ来ると、これは議論しておいたほうがいいのではないかという気もするものですから。少なくとも重症度分類は、これでは生温過ぎる気がします。
○千葉委員長 幾つかポイントを含んでおられたと思いますが、いわゆる重症度というか、難病そのものがリスク疾患としての難病というイメージですね。だから、今、自覚症状として生活に支障を来しているわけではない方も含んでくる可能性がある、そういう御指摘だと思います。
○岩佐疾病対策課長補佐 これに関しては研究班の方にもいろいろと御意見を頂きました。その中で、ほかにも様々な疾患がある中で、これらも含めて、基本的には遺伝的な背景等によって酵素異常を来す疾患であること、それから、「長期的に」と「リスク」というところが当然主となってくるのですが、それを抑えるために継続的に治療を行わなくてはいけないこと。かなり重症系になると様々に特殊な治療も必要になることもありまして、今回はそういうふうな疾患の一部として対象としてはどうかという形で提案しています。
○直江委員 難しいところだと思うのですけれども、要するに先天異常というのか、ある程度多型性の中といいますか、いろいろなことが分かってくると、どうしてもハイリスクの方はいろいろな病気、特に成人病ではいらっしゃるという中で、ここら辺も、ある程度高脂血症で予防もできるし、食事療法で適切な、予防医学といいますか、そちらの面も大事だということで、これを僕らが難病として、この会で言うのかどうかとなると。例えば、本態性の高血圧はどうなのだとか。もちろん患者の数にもよりますが、非常に難しいところに入ってくるのかという気がするものですから、あえてお聞きしました。
○前田疾病対策課長補佐 事務的な整理でございます。今、提案したのは岩佐から申し上げたとおりなのですが、もしそういう情報が不十分であれば、これを1回預かって、研究班からもうちょっと子細を聴取して、難病の5要件という形を満たしているかどうかを確認するという取扱いに。まだ検討の途上ですので、そういう形にさせていただいても、そこは御判断だと思いますので御意見を賜ればと思います。
○千葉委員長 希少という所で、入ってくることは入ってくるわけですね。それから、先ほども言いましたが、現在、生活に支障を来しておられるかどうかというところでは、ほかの疾患と少しニュアンスが違うと。ただし、放っておくといろいろ重篤なことが起こってくると、そういう疾患ですね。それから、食事療法や薬物治療を行った上での脂質のレベルで大体重症度を切っているわけですが、そこら辺の考え方、ある意味で一種の統一というか、そういうことも必要かと思いますし、一度検討していただいて。
○和田委員 私も重症度のことについて確認させていただければと思います。合併症予防というこの種の疾患の特色とも関連があるかと思います。例えば、226ページ、43のレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症の重症度、234ページ、45のタンジール病の重症度に関してです。先ほどの家族性3型高脂血症とは疾患の概念、ニュアンスが違うかもしれません。生活の支障、社会生活の支障を考えますと、例えば角膜混濁とか腎障害といった、それぞれの症状があります。こういった重症度分類をこれまでの疾患の様にここに当てはめることはいかがなのでしょうか。
○岩佐疾病対策課長補佐 その辺りについては1つ議論があると思います。1つは、治療を行っても血中HDLコレステロールが10mg未満という形になりますと、状態としてはかなり悪い状態ではないかと考えておりますので、そういうものを1つの指標としてはどうかということです。当然、実際に出てきた症状を指標にするという考え方もあろうかと思います。その辺りについて、どういう形がより適切なのかについて、我々としてももう一度確認をしてみたいと思います。
○千葉委員長 そうですね。この症状が脂質代謝異常に付随してというか、それと並列で出てくる症状か、あるいは、この脂質代謝異常が持続することでもって出てくる症状かで、たぶん考え方が違うと思います。基本的にはそこまで至らないようにするのが一番大事であって、その間を難病として捉えるのかどうかと、そこのポイントになりますので、本当は、患者さんにとっては、とにかく症状が出てくるのを予防することが最も重要な観点ですね。そこをどう捉えるかです。
○前田疾病対策課長補佐 委員長に御指摘いただいたとおりでして、重症度を個々の疾患について御検討いただくときに、症状そのもので御評価いただくパターンと、あとは、転帰が非常に明瞭で、症状の進行性とかを評価することで、症状が出る前から介入していくもの、あとは、特定の指標を用いると、ほかの日常生活、社会生活の支障の程度も、一定程度代表性がある物差しで、ある程度超えている人だったらほかの症状も大抵出ているので、満たすものという形で、大きく3パターンぐらい御提案を頂戴していると思います。今回のものとしては、後半の2つのものの要素が強いこともありますので、どの程度のものかはしっかり確認して、御了解いただけるような形でお示しをしたいと思います。
○千葉委員長 一方で、重症度分類においては、食事療法である程度コントロールできるかが1つのポイントでしょうね。
○大澤委員 3-40、筋型糖原病です。207ページに重症度分類があります。肝型の糖原病の場合には食事療法でかなりコントロールできる部分があるのですが、この筋型糖原病に関しては、高蛋白食がよいとかいうのはあるのですが、こうやったほうがいいというのはまだ明確ではないような気がします。今回、この先天代謝異常の関係で、この重症度分類で、食事療法とか、入っているものを出していただいていて、それは事務局のすごい御努力だと思いますが、むしろ周期性四肢麻痺のときに出たような重症度分類のほうが、筋型糖原病の方には合っているような気もします。研究代表者の杉江先生に確認していただけないでしょうか。
○千葉委員長 御指摘ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
○巽参考人 和田先生の御指摘、実は極めて重要だと思います。酵素欠損症において、酵素欠損の蛋白発現レベルと症状が必ずしもパラレルではないですね。そうすると、酵素欠損による蛋白発現レベルとしてどの程度障害されているのか、その重症度を判定しないと重症度分類にならないのではないかと。診断はいいと思いますが、重症度はあくまでも、酵素欠損による何らかの症状がどの程度、どういう形で出ているのか。それを酵素欠損においては判断したほうが、指定難病としてはよろしいのではないかという気はします。
○千葉委員長 ありがとうございました。重要というか、これは検討課題ですよね。
○水澤委員 私も今の一連の御議論に賛成です。特に委員長が後のほうでおっしゃった、ならないようにする治療が非常に大事なわけですね。これまでの経験で言いますと、これは難病だからということですぐに難病に認定してしまって、治療が十分に行われない可能性が非常に高いと思います。ですので、症状が出たらもちろん、残念ながら難病として救うのがいいと思いますが、それまでは必死で努力して治療するのが一番患者さんにとって幸福ですね。ですから、研究班の方々と、もう1回検討していただいたらいいのができるような気がします。
追加すると、先ほどのアポE2のホモは、たぶん患者さんの数としては少ないのかもしれませんけど、御存じのように、アポE4のホモではアルツハイマー病になりやすいのです。もちろんアルツハイマー病は患者さんが多いのですが、ホモの方としてはそんなに多くないかもしれません。一方は全然違う疾患として難病とは何も関係なく、E2のほうは難病というのはなかなか理解し難いかもしれないので、ここも是非、遺伝的リスクファクターという点も含めて検討していただいたらいいかもしれないと思います。
○千葉委員長 よろしいでしょうか。ですから、今の御意見全体をまとめますと、酵素の欠損といったようなもの、あるいは脂質のレベルといったようなもの、特に脂質のレベルですね。そういうようなものに加えて、何らかの症状を重症度分類に加味できればしていくことにしてはどうか、という御意見が幾つか出ていたように思います。それから、また繰返しになりますが、それが並列で出てきているのか、脂質代謝異常が続くことでもって出てきているのかで、重症度分類の中で症状をどう位置付けるかという、そこら辺ですね。研究班のほうにも話をしていただいて、検討していただければと思います。
よろしいでしょうか。今日は50疾患でしたか、検討させていただきました。それでは、事務局にお願いします。
○前田疾病対策課長補佐 ありがとうございました。次回の日程の御案内を差し上げたいのですが、現在、調整中ですので、委員の先生方と御相談をした上で、また改めて開催の案内を差し上げたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。事務局からは以上でございます。
○千葉委員長 ここまで、100を超す疾患について検討を重ねてまいりましたが、まだまだありますので、是非よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
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