ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会指定難病検討委員会)> 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会(第8回) 議事録(2015年2月13日)




2015年2月13日 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会(第8回) 議事録

健康局疾病対策課

○日時

平成27年2月13日(金)16:00~18:00


○場所

厚生労働省専用第15・16会議室(21階)


○議事

○前田疾病対策課長補佐 ただいまから、「厚生科学審議会疾病対策部会第8回指定難病検討委員会」を開催いたします。委員の皆様にはお忙しい中お集まりをいただきまして、誠にありがとうございます。本日の出席状況ですが、飯野委員より御欠席の御連絡を頂いております。また、本日は、染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群について御議論いただきますので、小崎健次郎慶応義塾大学医学部臨床遺伝学センター教授に参考人として御出席いただいております。

 カメラ撮り等はこの辺りにしていただいて、以降は千葉委員長に議事の進行をお願いいたします。

○千葉委員長 まずは、資料の確認をお願いいたします。

○前田疾病対策課長補佐 次第から始まる資料です。1枚めくっていただいて座席表、本日の委員会名簿、本日、参考人として御出席いただいている小崎先生のお名前です。資料1-1は、第8回指定難病検討委員会において検討する2-1「結節性硬化症」から2-43「脆弱X症候群関連疾患/脆弱X症候群」の疾病リストです。個票のページも記載しておりますので、適宜、御参考にしていただければと思います。資料1-2は、御議論いただきます指定難病として検討する疾患、個票です。参考資料1は、前回の第7回と同じです。「指定難病の要件について(追記の案)」です。参考資料2は「指定難病(第二次実施分)として検討を行う疾病の一覧」という形で用意しております。不足等ありましたら、事務局までお申し付けください。

○千葉委員長 それでは本日は、前回に引き続いて個別の疾患について委員の先生方に御議論いただきたいと思います。お話がありましたように小崎教授におかれましては、参考人として議論に参加いただきたいということですので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局から説明をお願いします。

○岩佐疾病対策課長補佐 資料1-1及び資料1-2です。お手元の個票ですが、2-1「結節性硬化症」から2-9「弾性線維性仮性黄色腫」についてです。「結節性硬化症」ですが、遺伝子異常によりましてハマルチン、チュベリンの複合体の機能不全により、てんかんや精神症状、上衣下巨細胞性星細胞腫などの過誤腫を全身に生じる疾患です。治療は対症療法が中心となり、抗てんかん療法や腫瘍の切除手術などを行っておりますが、生涯にわたって加療が必要となります。したがいまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

 診断基準に少し誤植があります。「DefiniteProbableを対象とする」と記載しておりますが、ここはDefiniteのみで、Probableを消していただく形でお願いいたします。遺伝学的診断基準を満たす場合、若しくは臨床的診断基準の中で大項目の2つ、または大項目1つ及び小項目を2つで、Definiteを対象とすると考えております。

5ページに重症度分類を記載しております。当疾患の重症度分類を用いまして、いずれかの1項目についてグレード3、若しくは2項目以上についてグレード2以上の場合を対象とすると提案しております。

6ページは、「色素性乾皮症」です。当該疾患は、日光過敏症状を呈し、露出皮膚の乾燥、色素沈着を呈しまして、皮膚がんを高率に発生する遺伝性疾患です。8つのサブグループに分けられ、タイプにより様々な神経症状を来すこともある全身疾患とされております。治療法としては、いまだ確立されておらず、多診療科の医師がチームを組んで対症療法を行うとされておりますが、生涯にわたって遮光を余儀なくされQOLが著しく低下し、長期の療養が必要となる疾患です。したがいまして、要件の判定に必要な事項は全て満たすと考えております。

 診断基準です。遺伝子検査でXP関連遺伝子の病的変異が同定された場合、若しくはAの症状の123全てを満たす場合、さらには疾患特異的検査で異常を認める場合ということで、診断をするという形で考えております。

10ページは、重症度分類です。重症度評価のための指標ということで、皮膚症状及び皮膚外症状を組み合わせてスコアリングをして、ステージ2以上を対象とすることを提案しております。

11ページは、「先天性魚鱗癬」です。先天性魚鱗癬は、先天的異常によりまして、胎児のときから皮膚の表面の角層が非常に厚くなり、皮膚のバリア機能が障害される疾患です。以下の4つの細分類を含む概念で、ケラチン症性魚鱗癬、道化師様魚鱗癬、道化師様魚鱗癬以外の常染色体劣性遺伝性魚鱗癬、魚鱗癬症候群です。根治療法はなく、対症療法のみということで生涯にわたり症状が持続するため、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

13ページ以降に診断基準があります。その中で主症状、及び特徴的な病理所見、さらにCの鑑別すべき疾患を全て除外いたしまして、診断を行います。更に遺伝子異常がありますと確実性が高まるとされております。

15ページは、重症度分類です。魚鱗癬重症度スコアシステムを用いまして、重症例を対象とする形にしております。さらに18ページに、水疱形成が著しい場合、及び道化師様魚鱗癬の場合については重症例とするとしております。また、他臓器病変併存例という形で幾つかの項目を挙げて、これらも対象としてはどうかとしております。

21ページは、「家族性良性慢性天疱瘡」です。当該疾患はヘイリー・ヘイリー病とも言われております常染色体優性遺伝を示す先天性皮膚疾患です。生下時に皮膚病変はなく青壮年期に発症することが多いとされております。腋窩などの間擦部に皮膚所見を認めることが多いのですが、より広範囲に皮膚病変を形成することもあるとされております。これら様々な対症療法が試みられておりますが、根治療法は見いだされておりません。したがって、長期にわたり寛解、再燃を繰り返すことが多いとされておりまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすのではないかと考えております。

23ページは、診断基準です。症状及び病理所見、又は症状プラス病理所見及び遺伝子検査という形で診断したものを対象と考えております。

25ページは、重症度分類です。研究班作成の重症度分類を用いまして、重症の部分を対象としてはどうかということで提案しております。

26ページは、「類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)」です。表皮基底膜構成タンパクに対する自己抗体(IgG)によりまして、表皮下水疱を来す自己免疫性水疱症です。全身の皮膚や粘膜に水疱やびらんを生じる疾患です。類天疱瘡には、主に皮膚に症状がある水疱性類天疱瘡と、粘膜類天疱瘡の亜型が存在します。後天性表皮水疱症は、水疱性類天疱瘡と、臨床症状及び病理学的所見、蛍光抗体法等からは完全に鑑別することが難しいところもありまして、現時点では同一の疾病として取り扱うのが適当ではないかということで御意見を頂いております。

 治療法は、副腎ステロイドの全身投与や免疫抑制薬の使用、血漿交換、ステロイドパルス療法などを行っておりますが、難治性の場合は再燃を繰り返す場合等があり、長期にわたる治療が必要となっております。したがいまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えており、提案しております。

28ページは、診断基準です。臨床的診断項目として皮膚所見を1つ、また、病理組織学的診断項目及び免疫学的診断項目のいずれかを満たす場合、さらに鑑別診断で除外した場合について対象としてはどうかという形で提案しております。

 重症度分類は、類天疱瘡のスコアリングシステムでありますBPDAIを用いまして、中等症以上を対象とするということで提案しております。

31ページは、「特発性後天性全身性無汗症」です。高温、多湿の環境下におきましても発汗がみられない疾患を無汗症と言います。そのために熱中症を容易に発症し、発熱や脱力などの様々な症状を来す疾患です。無汗症自体には先天性、後天性とありますが、先天性無痛汗症については先日、御議論いただきましたところで扱っております。後天性の全身性無汗症に関しては、様々な原因で起こるとされておりますが、原因不明の特発性の後天性全身性無汗症がありまして、その部分を今回資料として出しております。

 治療法は、ステロイドパルス療法などが行われておりますが、十分に確立されているとは言えず、長期にわたり熱中症を繰り返すことがあると考えておりまして、要件の判定に必要な項目を全て満たすと考えております。

 診断基準です。後天性に広範な無汗/減汗を呈する症状、及び温熱発汗試験で全身の25%以上の範囲に無汗/減汗領域がみられるということで診断されることにしております。

35ページは、重症度分類です。当該疾患は症状の変動があるため、更新時にも温熱発汗試験を施行していただき重症度の評価をして、重症以上を対象にするとしております。

36ページは、「眼皮膚白皮症」です。当該疾患は出生時より皮膚、毛髪、眼のメラニン合成が低下ないし消失することにより、全身の皮膚が白色調で視力障害を伴うなど様々な症候を来す遺伝子変異による疾患です。治療法として確立されたものは全くなく、それぞれに随伴する症状に対する対症療法等が必要となっており、長期療養が必要な疾患とされております。そのため、要件の判定に必要な事項に関して全て満たすものと考えております。

38ページは、診断基準です。皮膚所見及び眼所見で診断しまして、遺伝子検査で更にその診断の精度を上げるという形になっており、それら両方を対象とする形で考えております。

40ページは、重症度分類です。当該疾患は主として視力の低下があるということで、これについても少し誤植があります。矯正不能な視力障害という所で、「両眼視力がそれぞれ0.3以下」と書いてありますが、これはWHOのロービジョンの定義を用いることとして、良いほうの眼が0.3未満という形になりますので、ここの「以下」の部分を「未満」と読み換えていただければと考えております。若しくは症候型に特徴的な症状を認める場合ということを対象としてはどうかと考えて提案しております。

41ページは、「肥厚性皮膚骨膜症」です。当該疾患は、ばち指、長管骨を主とする骨膜性骨肥厚、皮膚肥厚性変化を3主徴とする遺伝性疾患です。様々な対症療法が試みられておりますが、今のところ発症を遅らせる治療法はないとされております。多岐にわたる合併症に対しまして、長期の療養を要する疾患です。したがいまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

43ページは、診断基準です。完全型として、144つの症状を全て満たす場合、不全型として、13の症状を満たし、2次性の基礎疾患を表1ということで次のページに記載しておりますが、これらを除外した場合、初期型として、症状の13を満たし遺伝学的検査が陽性のものを対象としてはどうかということで提案しております。

45ページは、重症度分類です。それぞれの症状の組合せで、以下の場合として示されている認定基準で示している部分を、対象としてはどうかと考えております。

46ページは、「弾性線維性仮性黄色腫」です。当該疾患は、弾性線維に変性・石灰化を生じ組織障害を引き起こします。そのために、皮膚、眼、心・血管、消化管に多彩な症候を呈する常染色体劣性の遺伝性疾患です。各臓器症状に対する対症療法が主となりますが、進行性の経過をたどり長期の療養が必要であるということから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

48ページは、診断基準です。皮膚所見及び網膜所見で診断をします。除外すべき疾患についても除外するという形にしております。更に疑い例として、皮膚所見のみ、網膜所見のみがある場合についても、遺伝子変異が証明できた場合には、確実例ということで診断が可能としております。

50ページは、重症度分類です。当該疾患の重症度分類を用いまして、それぞれの症状において、いずれかの病変で重症のところを呈するものを対象とすることにしてはどうかとしております。2-1の結節性硬化症から2-9の弾性線維性仮性黄色腫についての説明をいたしました。以上です。

○千葉委員長 まず最初の9つの疾患について説明いただきました。今回は、皮膚症状を呈する疾患群が多く含まれております。いかがでしょうか。ただいまの説明について何か御意見はございますか。

○錦織委員 結節性硬化症ですが、小児慢性特定疾患にも入っていると思うので、成人例はDefiniteだけでいいと思います。小児に関しては、小児慢性特定疾患に準じるという形でしていただくのはいかがでしょうか。私は小児慢性を余りきちんと見てこなかったので。

○岩佐疾病対策課長補佐 その辺りについては、それぞれ診断基準として、どのような形で対象にするのが適切なのかというところで、もし研究班から、更に新しい形で御提案いただくということでありましたら、そこはもう一度調整をしたいと思います。

○錦織委員 ありがとうございました。

○千葉委員長 ほかはいかがですか。よろしいですか。既に研究班、学会等で検討していただいた上で出していただいているわけですが、今のような御意見について、再度よろしくお願いしたいと思います。

○錦織委員 2-6の特発性後天性全身性無汗症です。全身性無汗症ですけれども、基準としては25%以上の無汗又は減汗ということでよろしいのでしょうか。

○岩佐疾病対策課長補佐 診断基準としては、そのような形で頂いております。ただ、ここに関しては、多少、減汗/無汗の症状を呈する部分が、先天性の場合は神経が全然ない状況ですので変動はないと聞いておりますが、割と変動することもありうると聞いておりますので、重症度分類の所で、全身性の症状が非常に強く出て、日常生活や社会生活に支障のある方を対象とする形で規定させていただいております。3335ページになっております。申し訳ございません。

○錦織委員 重症度のほうは、重症度以上で私も了解していたのですが、定義のところでどうなのかと思っただけです。

○千葉委員長 よろしいですね。

○直江委員 色素性乾皮症ですが、重症度分類で見ますと10ページぐらいですかね、XP重症度スコアとXP重症度分類があって、少しここが分かりにくいということが1点です。

2つ目は、我々の知識では、非常にUVに対する感受性が高いのでDNAの修復がなかなかできないということで、皮膚がんを非常に起こしやすい。これまでも、この委員会でがんと難病の切り分けの問題で、がんになりやすいとか、部分症としてがんもできるということは、これは難病であるということできましたですよね。この場合に、例えば10ページの皮膚症状で、読み方が分からないのですが、皮膚がんがもし多発すれば5ということで、それだけでもうステージとしてはどうなのですか。要するに言いたいことは、部分症ではなくて、そういう方がいらっしゃるかどうかは私は分からないのですが、がんが多発したということで重症度が満たされてなった場合に、そういうものも認めていくのかという考え方です。

○岩佐疾病対策課長補佐 この件に関しましては、この委員会の中でも様々、議論になってきました。当該疾患に関しましては、当然、皮膚がんを発生しやすい疾患ですが、そのほかにも様々な神経症状やいろいろな症状が出てくるというところで、指定難病としてはどうかと考えております。その上で、先生の御指摘は、重症度分類としてがんが発生したらということで対象になるのはどうなのだということかと思います。疾患としての評価は、悪性腫瘍がその疾患の本体でないかどうかという所を御確認いただくと考えております。

 一方で、重症度というところで見ますと、その疾患がどれくらい影響を及ぼしているのかということを評価するのに当たって、皮膚がんが多発して発生するような状況は、病気として全体的に重症度が高いのではないかというところからすると、そういった評価、指標を重症度分類の中に用いていることは必ずしも不適切ではないと考えており、こういう形での提案となっております。

○直江委員 10ページのスコアと重症度分類は、要するにスコアを組み合わせて重症度を4段階に分げているということですか。

○千葉委員長 これは、そういうことですね。重症度スコアを足すことで、重症度分類のステージ1からステージ4にはめ込んでいっているという、そういう形ですよね。

○前田疾病対策課長補佐 少し今回の指定難病の認定とは別口ですが、基本的に、こういう条件を満たして、それをバックグラウンドとして様々な症状が出てきて、それに対する医療が必要ということであれば、これは当然、対象になると思っておりますので、そういう形で言えば、色素性乾皮症という疾患に着目した場合であれば、がんに至る前の療養もありますし、その後の重症度の中で、非常に日常生活、社会生活に支障のある程度ということであれば、それに対する医療についても支援の対象になるということですので、そういう整理で御議論いただければ、よろしいかと思っております。

○千葉委員長 結構、がんの比率が重症度のスコアとしては多くなってくるというところの問題だと思います。しかしながら、それプラス、いろいろなところを含んでいると総合的に判断してということだと思います。

○錦織委員 皮膚科医として少し補足説明いたします。XPという患者さんにおいて、皮膚がんがマルティプルにできるというのは、要するに無数にできるということで、それだけで非常にDNA修復能が低いということです。神経症状がある場合もない場合もありますが、なくても普通にしていれば10歳以下で皮膚がんで死んでしまうという状況です。それを防ぐために非常に苦労されて、皆さん生まれてすぐに診断されたら完璧な遮光をされているわけですが、そもそも通常ないといけない太陽を浴びることなく、ずっと遮光をして、なおかつ、少し漏れ出た光でも少し出てきているというのは、かなり重症レベルであろうということ。色素斑ができているということもかなりレベルが高いということだし、皮膚がんが1つ出てきたら、もうその後は必ず1年に1個くらいの割合で次々出てきますので、そういう意味で、ある1つの閾値を超えてしまうと、皮膚科的にはかなり重症と考えています。

○前田疾病対策課長補佐 もう1点加えますと、重症度分類の見方は、スコアを付けて最後にスコアの合計で評価する形になっています。基本的には、おそらくXPを診ておられる先生からすると見やすいと思っております。どういう形で表現すると一番分かりやすいかをもう一度相談して、大概ほかの方が見ても分かりやすい形で整理ができるかどうかを確認したいと思います。

○千葉委員長 スコアリングはされる形になっているわけですが、もう少し分かりやすくということですね。よろしいですか。ほかにいかがですか。

 続きまして、マルファン症候群から説明をお願いします。

○岩佐疾病対策課長補佐 それでは、続いて2-10の「マルファン症候群」から、2-20の「モワット・ウイルソン症候群」までを説明いたします。

 「マルファン症候群」は、大動脈、骨格、眼、肺、皮膚、硬膜などの全身の結合組織が脆弱になる遺伝性疾患です。結合組織が脆弱になることによって、動脈瘤や動脈乖離、高身長、側弯等の骨格変異、水晶体亜脱臼、自然気胸などを来すとされております。手術を含めて対症療法等を行われていますが、根治療法はありません。各種合併により、長期の療養が必要とされており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

54ページは診断基準です。これらの遺伝子異常を伴うような疾患については、かなり特徴的な顔貌であるとか、体型などを有していることもあり、ある程度、主要臨床徴候等で診断ができるような形にもなっています。マルファン症候群については、主要臨床症状の3つのうち2つ以上を満たす場合、またはその1つと遺伝子異常、若しくは家族歴がはっきりした場合には、診断が可能という形にしております。

 重症度分類については、これから出てくる疾患の多くのものは小児慢性特定疾病の対象でもあるというところですので、一部、18歳未満ですが、小児例について、小児慢性特定疾病の状態の程度に準ずる形で重症度分類を出させていただいているものもあります。なお、成人例については、別口で重症度分類を付けさせていただいておりますので、留意いただければと思います。成人例としては、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくは大動脈基部病変がZスコアーで2以上が認められる場合を対象としてはどうか提案しております。

 続いて、2-11「エーラス・ダンロス症候群」です。エーラス・ダンロス症候群は、皮膚、関節、血管など全身的な結合組織の脆弱性に基づく遺伝性疾患です。その原因と症状から、6つの主病型とされておりましたが、最近見いだされた新しい病型もあるという御報告をいただいております。基本的には、コラーゲン分子又はコラーゲン成熟過程に関与する酵素の遺伝子異常に基づくものとされており、タイプにより各種異常パターンが定められております。症状としては、皮膚の脆弱性、関節の脆弱性、血管の脆弱性などを認めるとなっており、基本的には対症療法という形になり、各種を行っても進行性の経過をたどるというところで、大血管を含む臓器破裂などを来し、長期の療養を必要とされる疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

58ページは診断基準です。各病型ごとに確定診断されたものを対象とするという形にしており、症状及び遺伝子検査により、確定診断するという形で規定しています。

61ページに重症度分類を記載しています。小児例では、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例では、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくは、当該疾患が原因となる解離や梗塞などの動脈合併症や消化管を含む臓器破裂を1回以上発症した場合、若しくは患者の手掌大以上の皮下出血が年間5回以上出現する場合を対象としてはどうかという形で提案しております。

63ページは、「メンケス病」です。メンケス病は、銅輸送ATPase1つであるATP7A遺伝子の異常で、X染色体の劣性遺伝性疾患です。したがって、患者は原則男児という形になっております。腸管での銅の吸収障害を認め、それによって重度の中枢神経障害などを認める疾患です。現在、ヒスチジン銅の皮下注射が行われていますが、それにより一定程度、神経症状の予防ないし軽減はできますが、必ずしも十分ではないとされており、重い合併症で命を落とすことも多いとされております。したがって、要件の判定に必要な事項は全て満たすものと考えております。

65ページは診断基準です。頭髪異常を含む症状の2項目以上と、検査所見及び特殊検査、遺伝学的検査の中で、特殊的な所見が得られるような場合に診断されるという形にしております。重症度分類としては、運動障害が主として出てくるというところもありますので、Barthel Index85点以下を対象とする形で御提案しています。

67ページは、「オクシピタール・ホーン症候群」です。本症はATP7A遺伝子異常症で、先ほど説明した遺伝子異常疾患であるメンケス病の軽症型とされておりますが、これまで症状中心の疾患単位という考え方で別々の疾患とされてきていた経緯があり、現段階では、まだこの両者を統一的に取り扱うような見解が医学的には整理されていないというようなところで、今回は別々の疾患として御提案させていただいております。今後は、まとめられる可能性もあると考えていますので、その辺りは今後の研究を待ちたいと考えております。基本的には対症療法を中心としており、徐々に筋力低下が進行するような疾患で、長期療養が必要な疾患だと考えております。したがって、要件の判定の必要な事項を全て満たすものと考えております。

69ページは診断基準です。筋力低下などの症状を認め、特徴的な検査所見の2項目以上を満たし、鑑別診断で除外して診断します。遺伝子異常を満たすと、その診断が更に確実になるというようにされています。70ページに重症度分類がありますが、Barthel Index85点以下を対象としてはどうかと提案しております。

71ページは、「低ホスファターゼ症」です。低ホスファターゼ症は、骨の低石灰化、くる病様変化がみられ、血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値が低下するということが特徴の遺伝性疾患です。ALP酵素補充療養というものが開発されつつあるとされていますが、対症療法が中心になっており、特に、発育の時点で障害があるものを含めて長期の療養が必要となる疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

73ページは診断基準です。主症状が1つ以上と、ALP値の低値から本症を疑いまして、遺伝子検査を行って確定診断されたものを対象とするという形で規定しています。

74ページは重症度分類です。こちらのほうは、modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価のスケールを用いて、いずれかが3以上を対象としてはどうかという形で提案しております。

76ページは、「VATER症候群」です。VATER症候群については、Vは椎体異常、Aは肛門奇形、TEは気管食道瘻、Rは橈骨奇形及び腎奇形という、それぞれの徴候の頭文字を組み合わせて命名されている先天異常症候群です。当該疾患も対症治療が中心となり、各種合併症に対する長期療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

78ページは診断基準です。先ほどのVATER5徴のうち、主要な症状を3徴以上満たし、更に他疾患を除外した場合に診断する形でしております。5徴については、以下のようにそれぞれ定義しております。

 重症度分類は、79ページからです。先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくはmodified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上、さらに、腎:CKD重症度分類ヒートマップが赤の部分の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかと提案しております。

82ページは、「那須ハコラ病」です。那須ハコラ病は、多発性骨嚢胞による病的骨折と、白質脳症による若年性認知症を主徴とする常染色体劣性遺伝性疾患です。症状は、ほぼ年代に比例するような形で種々の症状を来し、20歳代では骨症状、30歳代で精神神経症状、40歳代以降に進行性の認知症を呈するような疾患になっています。いずれも対症療法が主体となっており、進行を止める治療はありません。生涯にわたって療養が必要ということもあり、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

84ページは診断基準です。それぞれ細かく定義をしていますが、骨症状、精神神経症状、遺伝子変異の3つのうち、2つ以上を満たすような場合に対象にすると提案しております。

 重症度分類は、Bianchinらの分類でステージ2以上を対象としてはどうかという提案をしております。

86ページは、「ウィーバー症候群」です。当該疾患は、出生前からの過成長、特徴的な顔貌、骨年齢促進、軽度から中等度の発達の遅れを呈するような常染色体優性遺伝様式の症候群です。当該疾患も対症療法が中心となり、様々な合併症に対する長期療養が必要とされており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

88ページは診断基準です。主要臨床徴候の全てを満たす場合、若しくは特異的な遺伝子変異を認める場合に診断が可能という形で提案しております。

 また、重症度分類については、小児例では、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例は、難治性てんかんの場合には、主な抗てんかん薬を単剤で2から3種類、あるいは多剤併用で、かつ十分量で2年間以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障を来す状態、これは日本神経学会の定義ですが、これを満たすような場合、若しくは先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、さらに、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器の使用などをしている場合。これらのいずれかに該当するような場合を対象としてはどうかと提案しております。

91ページは、「コフィン・ローリー症候群」です。当該疾患は、精神発達の遅れ、特徴的顔貌、小頭症、先細りの指などの骨格型の特徴を有し、様々な刺激で脱力発作を伴うような疾患です。対症療法が中心とされていますが、脱力発作であったり、心疾患、呼吸症状に対して長期の療養が必要とされており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

93ページは診断基準です。主要臨床症状3つの全てを乳幼児期から認める場合、若しくは遺伝子診断を行うことによって診断が可能としています。

94ページは重症度分類です。小児例は、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例は、難治性てんかんの場合、先天性心疾患がありNYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくは気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかとしております。

96ページは、「有馬症候群」です。有馬症候群は、乳児期早期から重度の精神運動発達遅滞、先天性視覚障害、嚢胞腎、眼瞼下垂、小脳虫部欠損などを来すような疾患群です。適切な治療を行わなければ、小児期までに死亡する常染色体劣性遺伝疾患です。現在のところ根本的な治療方法はなく、対症療法のみとなっており、長期療養が必要であり、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

98ページは診断基準です。主要症状を全て満たし鑑別診断を除外にしたもの、若しくは、症状及び検査所見17のうちの4項目以上を満たして除外診断したものの、いずれかを対象としてはどうかと考えております。

 重症度分類は、modified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上、若しくは腎障害でCKD重症度分類のヒートマップが赤の場合、さらに、視覚障害で良好なほうの目の矯正視力が0.3未満の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかと考えております。

101ページは、「モワット・ウイルソン症候群」です。当該疾患は、特徴的な顔貌、重度から中等度の知的障害と小頭症を3主徴とする症候群です。遺伝子の異常によって発症し、通常、発語は見られず、歩行開始も3歳以降という形になっています。そのほか、てんかんや腸管疾患等の合併症が見られるとされており、それぞれの対症療法を行っていますが、長期療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

103ページは診断基準です。Major Criteriaとして3項目ありますが、その3項目を全て満たす場合、若しくは2項目プラスMinor Criteriaとして7項目の中の3項目以上を満たす場合で、鑑別診断を除外し、診断するという形にしています。遺伝学的検査を行い、更にその診断の確実性は高まるという形にしています。

105ページは重症度分類です。難治性てんかんの場合、先天性心疾患がありNYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくは気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器を使用の場合の、いずれかを満たした場合について対象としてはどうかとしております。以上、2-10のマルファン症候群から、2-20のモワット・ウイルソン症候群までを説明いたしました。

○千葉委員長 先天性疾患が多く含まれていましたが、いかがでしょうか。先天性疾患ということで、参考人として来ていただいている小崎先生、特別に何かありませんでしょうか。

○小崎参考人 遺伝子診断が診断基準の参考として重要であるという記載が、多くの疾患に含まれておりますが、現在、遺伝子診断が幅広く行える状況には必ずしもない点は考慮を要するものであるかと考えております。

 一方で、確実な診断を行うというのは、この難病の決まりの中の大きな原則ですので、臨床診断基準だけでは不十分な場合もあるので、その重み付けと兼ね合いが難しいと考えております。

○千葉委員長 ジェネラルな御意見だと思いますが、正にそこは、今後、指定難病の診断基準を考える上で極めて重要になってくるところですね。今後、原因遺伝子がどんどん分かってきて、更に遺伝子診断が進んでくれば、そこの重みというのは重要性が増すわけですが、現実問題として、今はまだ制度的な問題も含めて遺伝子診断というのが確立されていないので、そこをどう入れ込むかということは非常に難しいです。厚労省として、何か基本的な御意見はありますか。

○前田疾病対策課長補佐 これは原則論で申し上げますので、個々の疾患は個々で御指摘を賜ればと思っています。基本的には、症状なり検査データで、ほかの鑑別が付くということであれば、それで診断基準として敷居がしっかりしているということだと思います。

 他方、本日御議論いただくものが、基本的には染色体に変化を伴うものであるとか、遺伝子に変化を伴うものが本体というところですので、特に複合的な症状を呈するもので、決定的なところが、それでもう判断せざるを得ないという形が今の御判断ということであれば、今回の指定難病の基準としては、そういう形で含ませていただいた上で、当然、この診断基準自体は、医学の進歩なり、先生方の御意見をまた頂いて改めるということも当然ありますので、実態の動き等をまたそういう形で御評価いただき、改めてこういう辺縁であれば、こういう領域であれば診断しても差し支えないというものを御提案いただいて、また改めて診断基準を御議論いただくという流れでお認めいただく形と思っています。

○千葉委員長 そういう意味では、例えばメンケス病とオクシピタル・ホーン症候群は、同じ遺伝子で、同じ研究班で検討されておりますが、今の時点では、一応別の疾患として、別に乗せてくるという、そのような説明がありましたが、phenotypeが違うということですけれども。

○宮坂委員 今の話で、例えば厚労省の難治性疾患実用化事業の中でも、非常にこれは問題になっています。各研究班がその患者さんの診断をしたくて確定診断をしたいときには、やはり遺伝子診断が必要になると。その遺伝子診断を請け負ってくれる所はコマーシャルラボではないので、特定の医療機関がサービスでやらざるを得ない。だけれども、その特定の医療機関もマンパワーの問題とか、お金の問題があって、なかなかうまくできない。実用化事業の中では、福島先生が中心になって大きな遺伝子解析ラボの人たちを集めて、例えば幾らにしたら検査を請け負うことができるのか、あるいは検査を請け負うためには何が必要かということを検討したりしているのです。ですから、こういうところで最終的には症状だけがそろえばいいというわけにはいかなくて、時の流れとともに、絶対に遺伝子診断は必要になってくると思います。その遺伝子診断ができる仕組みというのも実用化事業の人たちと連動し、今はいいとしても、今後はきちんとしておかないといけないと思います。

○千葉委員長 そうですね。その辺りは、それこそ小崎先生が中心になってやっておられますけれども、今後、指定難病等、診断基準というものを充実させていくために、連携というのは非常に重要だというジェネラルなお話を頂いたと思います。ほかにありますか。

○大澤委員 臨床の立場から言うと、先ほど前田様がおっしゃったように、遺伝子診断がなければならないという状況になると、実際の患者さんがお困りになるという状況が現時点ではかなり起こってくる可能性が高いのです。また、研究も進んでしまうと、その研究者はもう遺伝子を必ずしも検査しなくてもよくなるので、やっていただけないという現状は実際には起こります。

 宮坂先生がおっしゃったように、システムがきれいにできればよろしいのですが、実際には現場が困るという現実が起こりうるので、その辺りが難しいところかと思います。よろしくお願いします。

○千葉委員長 正に、そこは今後の課題ということだと思いますので、よろしくお願いします。ほかはよろしいでしょうか。

○岩佐疾病対策課長補佐 それに関連して、診断基準、それから重症度分類は、今回は非常に大きなテーマかと思います。また、それだけではなくて、検査所見もここに入ってきます。例えば、2-11のエーラス・ダンロス症候群等では、検査所見の生化学所見で3型プロコラーゲンの産生異常が58ページに出ております。また次ページでも、1型プロコラーゲンプロセッシングの異常といった言葉も検査の所に出てきます。是非、こういった所も、今後こういった形になれば、標準化であるとか、そういったところも順番に進めていく必要があるのではないかと思いますので、整備のほどよろしくお願いいたします。

○千葉委員長 タンパクも同じですね。なかなか難しいところだと思います。ほかはよろしいでしょうか。

○大澤委員 2-13のオクシピタル・ホーン症候群ですが、これは後角というのが英語で、それをカタカナにしている病名なのですけれども、これはこれでいくのでしょうか。

○前田疾病対策課長補佐 これは今、実際にお出ししている病名ですが、できれば、可能な限り日本語であるカタカナで表記して告示という形にさせていただきたいと思っております。それが大原則ということです。オクシピタル・ホーンについては、既に小児慢性特定疾病で指定されているということがあり、正にこの病名を使われていることがありますので、先住者特権になってしまっているのですが、そういう意味では、特に病態として差がないということであれば、同じ用語を極力使わせていただくという形でお願いをしたいと思っています。

○千葉委員長 病名のこともいろいろ言うと議論が尽きないと思いますが、こういった中には、日本語にないというか、日本病名がないようなものも恐らく入っているのではないかと思いますので、難しいですね。小児慢性のほうで、この病名が使われているということですので、よろしいでしょうか。

○前田疾病対策課長補佐 事務局から1点、特に御指名してお尋ねするのも変ですが、2-10のマルファン症候群とエーラス・ダンロス症候群は結合組織の話ですので、錦織先生から何かもしコメントがございましたら、頂ければと思いますが、特に何かございますでしょうか。

○錦織委員 先ほど、小崎先生がおっしゃったので、それでよろしいかと思いますけれども、私がこれをザッと見せていただいたときには、診断基準の所で、特にエーラス・ダンロス症候群とか、マルファンもそうですし、遺伝子検査でかなり表現形としてはっきり分かる部分がありますので。我々が臨床で使っているような判断ですと、関節の過伸展の度合いとかが図示入りの写真であって、何度以上が屈曲できるとか、そういったものでスコア化されていて、何点以上は陽性として取るというようなことをして、エーラス・ダンロスかなと思ったときには、実際にはそれをやっておられる先生の所にお願いすることが多いのです。それで、その先生の所でタンパクとか、電顕の所見とか、遺伝子検査までそろえていただくのですが、特に大きな遺伝子検査ですと、やってくださらないし、遺伝子だけを見付けても、研究が廃れた分野になって論文にならないということになると、結局は持ち出しで、なかなかやってくださるところは少ないです。それでいて、患者さんは結構、子どものときに既にはっきりとした症状も出てくるので、そういう意味では、ある程度、臨床的な診断がきちんとできるような診断基準というものも少し備えておいていただけると、現場の医者にとっても、患者さんにとっても楽なのではないかとは思います。その辺をよろしくお願いします。

○岩佐疾病対策課長補佐 その辺りについては、もう一度研究班のほうとも相談の上で、また必要があれば改訂案という形で出させていただきたいと思います。

○千葉委員長 よろしいですか。全体的な診断基準と、臨床症状と遺伝子の話の組合せのことについて御議論いただきましたが。それでは、続いてお願いします。

○岩佐疾病対策室長補佐 続きまして、2-21「ウイリアムズ症候群」から2-31「プラダー・ウィリ症候群」まで続けて御説明いたします。「ウィリアムズ症候群」ですが、特徴的な妖精様顔貌、精神発達の遅れ、大動脈弁上狭窄及び末梢性肺動脈性狭窄を主徴とする疾患群です。染色体7q11.23微細欠失が病因となっております隣接遺伝子症候群という形で規定されています。それぞれの症状に対する様々な対症療法を行いますが、各種合併症を来すということで長期の療養を必要とする疾患群です。したがいまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えています。

 診断基準は108ページです。乳幼児期から特徴的な所見を満たして、そういったことで疑い、遺伝子FISH法により7q11.23の微細欠失を認める場合にウィリアムズ症候群と確定診断されます。

109ページの重症度分類ですが、小児例は小児慢性特定疾病の状態の程度に準ずるとします。成人例は、先天性心疾患がありNYHA分類で2度以上に該当する場合を対象としてはどうかと提案しています。

110ページの「ATR-X症候群」です。ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群ですが、X染色体に局在するATRX遺伝子を責任遺伝子とするX染色体連鎖性精神遅滞症候群の1つとされています。男性で発症して、重度の精神運動発達遅滞、αサラセミアなどを来します。対症療法が主体となり、集学的な治療が必要となりますが、合併症を様々来して長期の療養が必要となっています。したがいまして、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えています。

 診断基準は112ページから示しています。その中で、必発症状としてA3つを全て満たしてATRX遺伝子の変異がある場合をDefinite、更に必発症状を全て満たしてヘモグロビンHの封入体を持つ赤血球を認め、監別すべき疾患を除外した場合についてはProbableとし、その両者を対象としてはどうかと提案しています。

114ページに重症度分類を記載してありますが、小児例は小児慢性特定疾病の状態の程度に準ずるとしています。成人例については、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があって、NYHA分類で2度以上に該当する場合、更にmodified Rankin Scale(mRS)、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とするという、いずれかを満たす場合に対象としてはどうかと提案しています。

117ページの「症候群性頭蓋縫合早期癒合症」です。頭蓋・顔面骨縫合早期癒合を来す疾患群で、遺伝子の異常を原因とする疾患です。代表的な疾患は、クルーゾン症候群、アペール症候群、ファイファー症候群、アントレー・ビクスラー症候群などが挙げられています。当該疾患に関しても対症療法である外科的治療が主体となり、複数回手術を要し、10回以上手術を行うこともあります。それでも各種合併症等によって長期療養が必要になると考えられており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

119ページから診断基準がありますが、それぞれの症候群において確定診断された例を対象としています。例えばクルーゾン症候群については、症状及び検査所見から疑い、遺伝学的検査によって確定診断されると考えています。

 それぞれ疾患ごとに規定しており、重症度分類は122ページです。この中で重症度分類は、以下のいずれか、modified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上、若しくは視覚障害が2つ書いてありますが、良好なほうの目の矯正視力が0.3未満、聴覚障害として高度難聴以上のものを対象としてはどうかと提案をしております。

 続きまして124ページの「コフィン・シリス症候群」です。当該疾患は、重度の知的障害、成長障害、特徴的な顔貌、手足の第5指の爪及び末関節骨の無~低形成を主徴とする先天異常疾患です。当該疾患も根治的な治療はなく、各種対症療法が中心となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

 診断基準は126ページにあります。乳幼児期よりAにある臨床症状の大基準の3項目を全て満たした場合には臨床診断とし、更に原因となる遺伝子変異があるということで確定診断とされ、その双方を認める形としてはどうかとしています。

127ページは重症度分類として、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たした場合について対象としてはどうかと提案しております。

128ページの「ロスムンド・トムソン症候群」です。ロスムンド・トムソン症候群は、小柄な体格、日光過敏性紅斑、多形皮膚萎縮症、骨格異常、若年性白内障を特徴とする常染色体劣性遺伝の遺伝病です。類縁疾患として、RAPADILINO症候群、バレー・ジェロルド症候群がありますが、これらは同じ遺伝子座に異常を認めるということで、現時点では当該疾患に含めて取り扱うことが適当ということで、御意見を頂いています。対症療法が中心となり、各々の症状を緩和させる治療が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

130ページに診断基準があります。症状として19がありますが、それらを複数認めて、Cの鑑別診断を除外して、遺伝子異常を認めた場合に確定診断し、確定診断された例を対象とすることとしてはどうかと提案しております。

132ページに重症度分類を示していますが、modified Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上の場合を対象としてはどうかと提案しております。

134ページの「歌舞伎症候群」です。患者は切れ長の目を持つ顔貌が歌舞伎役者の隈取りに似るというところから歌舞伎症候群と命名されています。当該疾患も遺伝子異常を伴う疾患で、特徴的な顔貌、骨格の異常、精神発達遅滞、成長障害等を認める疾患です。当該疾患も対症療法が中心となり、長期療養が必要であることから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

136ページに診断基準があります。乳幼児期から主要臨床徴候3項目の全てを満たす場合、若しくは1の症状から疑って遺伝子異常を認める場合を、当該疾患と診断して対象とすることとしてはどうかと提案しております。

137ページは重症度分類です。小児例に関しては小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例としては、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、若しくは気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の、いずれかを満たす場合を対象とすることとしてはどうかとしています。

139ページの「内臓錯位症候群」です。当該疾患は内臓が左右対称性に形成される右側相同、若しくは左側相同を呈する症候群で、無脾症、若しくは多脾症とも言われています。この中には内臓が左右完全に反転するような内臓逆位は含まないこととしております。無脾症では、通常脾臓が欠損しておりまして、先天性心疾患を合併することが知られています。また、多脾症では通常は脾臓が分葉して複数認められ、先天性心疾患を合併することが多いとされています。根治療法はなく、心疾患に対して治療を行い、その他合併症に対する様々な対症療法を行っておりますが、予後不良な疾患で、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

141ページに診断基準がありますが、無脾症の診断基準としては、先天性心疾患を認めて、Bの検査の1項目以上を満たす場合。更に、多脾症の場合についても同様に診断をするとしております。

142ページに重症度分類がありますが、NYHA分類を用いて、2度以上を対象とすることとしてはどうかと提案しています。

143ページの「鰓耳腎症候群」です。当該疾患はBOR症候群とも呼ばれますが、頸瘻などの鰓原性奇形、様々なタイプの難聴、腎尿路奇形の3主徴を認める常染色体優性遺伝形式の遺伝性疾患です。特異的な治療方法はなく、各種対症療法が中心になっており、難聴であったり、腎障害等が残存して、長期の療養を必要とする疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

145ページに鰓耳腎症候群の診断基準を記しております。家族歴がない患者では、主症状として4つの項目のうち3つ以上、若しくは2つ以上で遺伝子診断されたものを対象とする。さらに、一親等に家族歴のある患者では、主症状1つ以上でかつ遺伝子診断されたものを対象とすることとしてはどうかという提案をしています。

 重症度分類は146ページです。聴覚で高度難聴以上、若しくは腎でCKD重症度分類のヒートマップが赤の部分の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかと提案しています。

147ページの「ウェルナー症候群」です。当該疾患は常染色体劣性の遺伝性疾患で、思春期以降に白髪、白内障など、様々な老化徴候が出現することから、早老症候群の1つに数えられています。根治療法はなく、対症療法を行っておりますが、老化自体を止めることができるものではなく、長期療養が必要となっています。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えています。

149ページに診断基準があります。Definiteとして、主要徴候の全て、若しくは3つ以上の主要徴候に加えて遺伝子変異を認めるもの。更に、Probableとして、主要徴候12に加えて、主要徴候やその他の徴候から2つ以上を満たすような場合。その双方を対象としてはどうかと提案しています。

150ページはウェルナー症候群の重症度分類を記しております。この中で3度以上を対象とすることとしてはどうかと提案しています。

151ページの「コケイン症候群」です。コケイン症候群は紫外線性DNA損傷の修復システムの異常による常染色体劣性遺伝性の早老症という形になっています。根治的治療方法はなく、対症療法が中心となっておりますが、様々な各種合併症によって、長期療養が必要になるとされています。したがって、要件の判定に必要な事項に関しては、全て満たすものと考えています。

153ページに診断基準を記しております。主徴候として、成長障害、精神運動発達遅延、早老様の特徴的な顔貌、日光過敏症状の4つのうち、2つを満たす場合にはコケイン症候群を疑って、更に遺伝子検査で異常を認める場合、若しくはDNA修復試験で異常を認める場合に、コケイン症候群と確定診断します。更に、(1)(4)の主徴候全て、及び副徴候(5)(7)のうち2項目以上を満たすような場合に加えて、その他の疾患を除外できた場合、若しくは同胞が同様の症状からコケイン症候群と確定診断されている場合については、コケイン症候群と確定診断できるという形で、そのいずれかで提案をしております。

155ページに、コケイン症候群の重症度分類を示しております。様々な症状を組み合わせたもので、グレード2以上を対象とすることとしてはどうかと提案しています。

156ページの「プラダー・ウィリ症候群」です。当該疾患は15番染色体長腕の異常による視床下部の機能障害のため、満腹中枢をはじめ、体温、呼吸中枢などの異常が惹起される先天異常症候群です。治療の根幹としては食事療法、運動療法、ホルモン補充療法等となっていますが、いずれも対症療法となっており、コントロールが難しい合併症等によって、長期の療養が必要な疾患です。したがって、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えています。

158ページに診断基準を示しております。診断時年齢、DNA診断の適応基準という形で、それぞれの症状を規定しています。これらを満たしつつ、FISH法、若しくはメチレーション試験で異常が確認されるような場合について、プラダー・ウィリ症候群と診断されます。

159ページに重症度分類を示しております。小児例では小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例では、コントロール不能な糖尿病若しくは高血圧、更には睡眠時無呼吸症候群の重症度分類において中等症以上の場合のいずれかを対象としてはどうかという形で提案しています。以上で2-21「ウィリアムズ症候群」から2-31の「プラダー・ウィリ症候群」についての説明を終わらせていただきます。

○千葉委員長 ありがとうございました。プラダー・ウィリ症候群まで、御説明いただきました。いかがでしょうか。

○前田疾病対策課長補佐 冒頭、事務局から御説明しましたが、本日御欠席の飯野委員から1点、疾患の中で御指摘がありましたので、御紹介させていただきたいと思います。155ページのコケイン症候群の重症度分類です。本来、あらかじめ文書か何かで御用意いただいて、資料として御提供すればよかったのですが、私から口頭で御説明するという形でお許しを賜ればと思います。

 先生から頂いた御意見としては、「2-30のコケイン症候群の重症度分類の視覚、聴覚の重症度分類ですが、眼鏡の使用の有無、補聴器の使用の有無で点数化されております。他疾患のこれらの重症度分類との整合性から、視力・聴力の値で重症度の点数化をしたほうがよろしいと思いますが、いかがでしょうか」という形で御提案を頂いておりますので、特に先生方から御異論がなければ、通常、視力でいきますと、両眼のいいほうで0.3という形で、聴力では70dB等を境目にしてという形で御提案をしているということがありますので、そういうのを踏まえられるかどうかということで研究班に確認をするという形にさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。

○千葉委員長 視力・聴力については、基準というものを一定化することは必要だと思います。

○錦織委員 実はXPも、聴力のところで補聴器が有り無しというところでさせていただいたのですが、知能発達遅滞を伴う児童の場合、聴力テストは実際問題として不可能です。そのときの気分にも非常にむらがありますし、ちゃんと答えてくれるときと、答えてくれないときもあります。「うちで後ろからお母さんが話しかけたら振り向きますか」とか「テレビをちゃんと分かって見ているようですか」などということを聞きますし、きちっとした検査が必要なときにはABRを行っています。ABRというのは麻酔的に眠らせますので、XPとコケインと細胞学的にはちょっと似ている部分がありまして、麻酔からの覚醒も少し遅いという文献などもあって、あまり頻繁にABRを行いたくないということもあって、XPのときはそうさせてもらいました。コケイン症候群については私は知りませんが、研究班にその辺も御確認いただいたほうがいいのではいかと思います。

○千葉委員長 確かにそうですね。はっきりと客観的に聴力・視力がチェックできるか、できないかというのは、もちろん非常に重要なポイントだと思います。研究班に一度検討してもらってください。

 ほかにはいかがですか。2-23は「症候性」ではないですか。

○宮坂委員 症候性ではありませんか。症候群が集まっているのです。

○千葉委員長 そうですね。その後ろの所に症候性と書かれていたと思うのてすが、症候群性でいいのですか。119ページなどは「症候性頭蓋縫合早期癒合症の診断基準」と書かれてあるので、どちらが正しいのかと。

○岩佐疾病対策室長補佐 その辺りはもう一度確認をさせていただきます。

○千葉委員長 よろしくお願いします。ほかはいかがでしょうか。この辺も遺伝子のことがたくさん出てきましたね。既にポピュラーになっている遺伝子検査と、本当の専門家の方だけがやっている遺伝子検査とがいろいろ混じっていたように思いますが、そこについては先ほど御意見が出たところで、全般的に見直していただくというか、検討していただく必要もあるかもしれませんね。よろしいでしょうか。

 それでは、次に「ソトス症候群」からお願いします。

○岩佐疾病対策課長補佐 それでは、160ページの「ソトス症候群」から最後まで御説明いたします。「ソトス症候群」ですが、NSD1遺伝子の機能異常により、大頭、過成長、骨年齢促進、発達の遅れ、痙攣、心疾患、尿路異常、側彎などを呈する先天異常症候群です。それぞれに対して対症療法を行いますが、合併症が残存するところもあり、長期療養が必要になります。したがって、要件の判定に必要な事項を全て認めると考えております。

 診断基準は162ページです。14全てを満たす場合に本症候群と臨床診断され、さらに、遺伝子異常が認められる場合には遺伝子診断される形になります。

163ページが重症度分類です。小児例に関しては、小児慢性特定疾病における状態の程度に準ずるという形にしております。成人例は、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合、腎不全を伴う場合の、いずれかを満たす場合に対象としてはどうかと提案しております。

165ページの「ヌーナン症候群」です。当該疾患は、細胞内のRas/MAPKシグナル伝達系に関わる遺伝子の先天的な異常により、特徴的な顔貌、先天性心疾患、体型の異常などを示す常染色体優性遺伝性疾患です。当該疾患も対症療法が中心で、長期の療養が必要となっており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

 診断基準は167ページです。症状の組合せにより、確実なヌーナン症候群という形で診断をさせていただいております。さらに、遺伝子変異が同定された場合については確定診断という形になり、その両者を対象とするという形で提案しております。

 重症度分類については、小児例は、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例は、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合を対象としてはどうかとしております。

169ページの「ヤング・シンプソン症候群」です。当該疾患は、特徴的な顔貌、精神発達遅滞、眼症状、骨格異常、内分泌異常、外性器異常等を特徴とする先天異常疾患です。当該疾患も対症療法が中心となっており、生涯にわたり医療管理が必要とされているため、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

 診断基準は171ページです。主要臨床症状のうち、13を必須として4項目以上を満たす場合にヤング・シンプソン症候群と臨床診断します。原因遺伝子に変異を認める場合に確定診断をされ、その両者を対象としてはどうかと提案しております。

172ページが重症度分類です。難治性てんかんの場合、さらに、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかと提案しております

173ページの「1p36欠失症候群」です。1番染色体短腕末端の1p36領域の欠失によって起こる染色体異常症候群です。成長障害、重度精神発達遅滞、難治性てんかんなどの症状を来します。当該疾患も、根本的な治療方法はなく、対症療法が中心となり、長期にわたって療養が必要となる疾患ですので、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

175ページが診断基準です。大症状として、精神発達遅滞、特徴的顔貌を満たし、染色体の1p36領域の欠失を認めたものをDefiniteとし、Definiteを対象としてはどうかと提案しております。

176ページが重症度分類です。難治性てんかんの場合、modfied Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合の、いずれかについて該当する場合を対象としてはどうかと提案しております。

178ページの「4p-症候群」です。当該疾患は、4番染色体短腕に位置する遺伝子群の欠失により引き起こされる疾患で、重度の精神発達の遅れ、成長障害、難治性てんかん、多発形態異常を主徴とする疾患です。当該疾患も対症療法が中心となり、長期療養が必要となっていますので、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

180ページが診断基準です。下記の主要臨床徴候を全て認め、染色体検査により第4番染色体の4p16.3領域が欠失している場合に、4p-症候群と診断するという形にしております。

181ページは重症度分類です。小児例は、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例は、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、薬物治療、手術等によってもNYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たす場合を対象としてはどうかと提案しております。

183ページは「5p-症候群」です。5p-症候群は、5番染色体短腕の部分欠失に基づく染色体異常症候群の1つです。小頭症、小顎症、発達の遅れ、筋緊張低下を主徴とする疾患群です。当該疾患も根治療法はなく、対症療法が中心となり、長期療養を必要とするところから、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

 診断基準は185ページです。乳・幼児期から下記の主要臨床徴候を全て認めて、染色体検査を行うことにより、確定診断となります。

186ページに重症度分類があります。小児例は、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例は、難治性てんかんの場合、先天性疾患があり、NYHA分類で2度以上の場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たした場合を対象とすることとしてはどうかと提案しております。

188ページの「第14番染色体父親性ダイソミー症候群」です。14番染色体父親性ダイソミー症候群ですが、患者さんの14番染色体が、ともに父親由来であることにより生じる疾患群で、羊水過多であったり、小胸郭による呼吸障害、腹壁異常、特徴的な顔貌を示す疾患です。治療方法は未確立で、対症療法が中心となり、長期の療養が必要となり、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

190ページが診断基準です。乳・幼児期から特徴的な小胸郭を認めるなど、下記の症状を様々認めることにより疑いを持ち、14番染色体インプリンティング領域内のメチル化可変領域において高メチル化を認めることで、14番染色体父親性ダイソミー症候群と診断するとしております。

191ページが重症度分類です。難治性てんかんがある場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たす場合に対象としてはどうかと提案しております。

192ページは「アンジェルマン症候群」です。当該疾患は、15番染色体q11q13に位置する刷り込み遺伝子の機能喪失により発症するとされています。重度の精神発達の遅れ、てんかん、失調性運動障害などを来すような疾患群です。当該疾患も基本的には対症療法が中心となり、長期的な療養が必要となる疾患群ですので、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

 診断基準は194ページです。15番染色体の特異的な領域に欠失・片親性ダイソミー・インプリンティンク異常のいずれかを認める場合、若しくは、原因遺伝子となる部分に変異を認めるなどがあり、下記の症状の特徴的な顔貌、精神発達遅滞を認めるような場合についてアンジェルマン症候群とさせていただいております。

195ページは重症度分類です。小児例では、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例では、難治性てんかんの場合、若しくは、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器使用の場合の、いずれかを満たした場合としてはどうかと提案しております。

196ページは「スミス・マギニス症候群」です。17番染色体短腕の中間部欠失による先天異常症候群です。特徴的な顔貌、精神発達の遅れ、先天性心疾患、難治性てんかん、自傷行為等を来す疾患群です。当該疾患も、対症療法が中心となり、長期療養を必要とすることになっていて、要件の判定に必要な事項を全て満たすとしております。

198ページが診断基準です。臨床症状により、スミス・マギニス症候群を疑い、責任遺伝子を含む17番染色体短腕に欠失を認める場合か、若しくは、原因遺伝子の部分に点変異を認めるような場合に、スミス・マギニス症候群と診断します。

199ページが重症度分類です。小児例は、小児慢性特定疾病の状態の程度に準じます。成人例では、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合、気管切開、非経口的栄養摂取、人工呼吸器の使用の場合の、いずれかを満たした場合について対象とするという形で提案しております。

201ページは「22q11.2欠失症候群」です。22q11.2欠失症候群については、先天性心疾患を合併し、胸腺発達遅滞・無形成等による免疫低下、特徴的顔貌等を主徴とする疾患群です。染色体の微細欠失を認める症候群で、根治的な治療方法はありません。対症療法が中心となり、長期療養を必要とするとされており、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

203ページが診断基準です。特徴的な症状を複数認めるなどで当該疾患を疑い、染色体検査でFISH法にて22q11.2欠失を認めるものを当該疾患と診断します。

204ページが重症度分類です。NYHA分類を用いて2度以上を対象とすることを提案しております。

205ページは「エマヌエル症候群」です。当該疾患は、特異顔貌、口蓋裂、小顎症、先天性心疾患、精神運動発達遅滞を呈する先天異常症候群です。22番過剰派生染色体症候群、11/22混合トリソミーなどとも呼ばれており、染色体転座に由来する22番派生染色体を47本目の染色体として過剰に持つことが原因であると言われています。当該疾患についても、現時点では対症療法のみとなっており、長期の療養が必要となる疾患であり、要件の判定に必要な事項を全て満たすものと考えております。

207ページが診断基準です、子宮内発育不全等を含む特徴的な症状を満たし、染色体検査で22番派生染色体を認めるような場合に診断するとしております。

208ページが重症度分類です。modfied Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とする、若しくは、難治性てんかんの場合、先天性心疾患があり、NYHA分類で2度以上に該当する場合の、いずれかを満たした場合に対象とすることとしてはどうかと提案しております。

211ページは「脆弱X症候群関連疾患/脆弱X症候群」です。当該疾患は、X染色体長腕末端部のFMR1遺伝子に存在する3塩基(CGG)の繰り返し配列が、代を経るごとに延長するトリプレットリピート病の1つです。50200CGG繰り返し配列を持つというようなところで、脆弱X随伴振戦/失調症候群という関連疾患を発症し、また、この配列が200を超えると、脆弱X症候群という形で発現してきます。症状としては、脆弱X症候群関連疾患では、50歳を過ぎてからの進行性の小脳失調、パーキンソン様症状、認知障害等々を来すとされています。一方で、脆弱X症候群については、発達障害や重度の知的障害を幼少期から来すという形になっています。治療法としては、根治的な治療方法はなく、対症療法が中心となるということで、長期の療養が必要となり、要件の判定に必要な事項を全て満たすと考えております。

213ページが診断基準です。脆弱X症候群関連疾患については、症状及びMRI所見を認め、Cの鑑別すべき疾患を除外して遺伝子異常を認める場合に診断します。また、脆弱X症候群に関しては、特徴的な症状及び遺伝子の変異を証明して診断されるという形にされています。

 重症度分類ですが、modfied Rankin Scale、食事・栄養、呼吸のそれぞれの評価スケールを用いて、いずれかが3以上を対象とするとしてはどうかと提案しております。以上、最後のところまで説明させていただきました。

○千葉委員長 やはり、先天性疾患がずっと並んできておりますが、いかがでしょうか。

○大澤委員 2-32のソトス症候群です。162ページの主要臨床症状の1番と2番に「乳・幼時期の大頭症」、「乳・幼時期の過成長」とあります。これは実際に、子供の頃は大きいのですが、大人になると普通の大きさになってしまうのです。小児期のことを御存じない方が成人を御覧になったときに、ここを見誤る可能性があるので、成人期になるとほとんど平均的大きさになっているというか、大きすぎることはないという部分を、何らかの形で注釈を入れていただいたほうがいいのではないかと思います。

○前田疾病対策課長補佐 御指摘のとおりかと思います。運用っぽい話になってしまって恐縮なのですが、実際にこれは、診断基準に基づいて、臨床調査個人票という診断書の形で記載していただくのですが、診断基準上見られたものというのは、古くてもいいから当時のことを書いてくださいという形でお願いしておりますので、そこが分かるように、乳・幼時の状況が重要であるというところがはっきり分かるように、また、どういう形で診断されているかということが分かる形で工夫したいと思います。

○千葉委員長 ほかにはいかがでしょうか。この辺りは、先天性疾患ということで、実際に小崎先生の御専門、あるいは、実際に関わっておられる疾患群が結構あったように思いますが、小崎先生から何か御意見はありますか。

○小崎参考人 機会を賜りましたので発言させていただきます。2つあります。1つは、本日、縷々説明がありましたが、多くの疾患は小児慢性特定疾病として取り上げられている疾患で、この患者さんを、成人にどのようにフォローをつなげていくか、ケアをつなげていくかということが、小児科医である私や、小児科学会全体としての問題でしたが、今回、疾病対策課の方々の御尽力を頂きまして、成人にどのようにつなげていくかということが解決したことは、本当に素晴しいことだと思っております。この場を借りて御礼申し上げたいと思います。

 もう1つは、本日、様々な症候群が提示されましたが、多くは特徴的な顔貌であるとか、身体的な特徴をもって診断をされているわけですが、逆に言えば、このような特徴に気付かれない場合には診断をされない。今日の読売新聞でも取り上げられていますが、「syndromes without a name」、診断が付かないという状態で、結局このような助成の制度を受けることができないという問題があります。海外においては、本日後半に示された10個ほどの疾患については、比較的網羅的な検査で、必ずしも身体的な特徴が医師によって認められない場合にも診断を付けられるというような制度、あるいは保険の制度の中で実施されているということが、5年ほど前から実現されているということもありますし、前半に取り上げられた疾患についても、ある程度取りまとめた形で検査を行えるということが、英国の保健医療制度、UKGTNの中では取り上げられているというようなこともあります。何か我が国の医療制度の中にも、そういった形で、医師のスキルに依存しないで診断が行われうるような仕組みが取り上げられていけばと希望いたします。

○千葉委員長 先生がおっしゃられた、まとめた検査というのは、基本的には遺伝子検査ということですね。

○小崎参考人 はい。

○千葉委員長 先ほども御議論いただきましたが、厚労省としては何か御意見はありますか。

○前田疾病対策課長補佐 また、役所のように縦割りのような話をして申し訳ないのですが、今回、指定難病を選んでいただくという形で、指定難病検討委員会という形にさせていただいているということがあります。他方、指定難病検討委員会というのは、難病法に基づく医療費助成を選ぶというプロセスですので、難病法自体は、難病の患者さんをどうやって支援していくかということで、医療体制などを正にこれから議論して、基本方針という形で固めていくというミッションがありますので、そのときの医療体制という形の中で、今の御意見等もどういう形で書き込めるか、また検討させていただきたいと思います。

○大澤委員 2-40のスミス・マギニス症候群なのですが、概要のところの2行目に、「行動異常を呈する。レム睡眠の減少や欠如による睡眠障害を認める患者もいる」、あとは、自傷行為があるというようなことも書かれているのですが、実際に、199ページの成人例の場合の「いずれかに該当するものを対象とする」というところでは、難治性てんかんの場合が認められていて、あとは先天性心疾患うんぬんということになっているのです。でも、実際に患者さんで、自傷行為や行動異常やレム睡眠の減少などの問題がある方の場合に、必ずしもてんかんの問題ばかりではなくて、そちらのほうが、かなり大きな問題になる可能性もあります。成人でそういう問題を引っ張っていた場合には、かなり日常生活が困難で、施設に入るのも難しいというような現象が起こると思います。

○前田疾病対策課長補佐 今、スミス・マギニスについて御指摘を頂きましたが、ほかの全体的な重症度分類の作りというか、構造という形で少し御報告をさせていただきますと、基本的には、複数の症状が出る疾患、先天異常で症状が出るというところが多いのです。基本的には、日常生活、社会生活に一番支障が出るのが何かと。例えば心疾患が一番キーだというような話で頂くと、心疾患である程度重症の方を対象にする。それでは補いきれないものがあれば追記をしていってくださいというような形で、例えば、心臓が元気でも腎臓が悪い人がいればそうだとか、視力だけ悪い人がいるケースもあると言えば、そういうもので追加してきたという形で、研究班とやり取りさせていただいて固めたというところがあります。

 ですので、恐らくスミス・マギニスについても、そこのやり取りが少し不十分だったところもあるかと思いますので、その辺りは、本日頂いた御意見を踏まえまして、もう一度研究班のほうに御意見を頂きたいと思います。

○直江委員 2-31のプラダー・ウィリ症候群、156ページです。これは私も知らない症候群ですが、原因のところに、「15番染色体長腕の刷り込み遺伝子の障害で」と書いてあるのですが、後で158ページを見ると、どうもインプリンティング領域のメチレーション試験で異常、つまり、ハイパーメチレーションが起こっているということですと、恐らく原因は、「15番染色体長腕の遺伝子の刷り込み異常で」というのが正確なのではないかということ。

 それからもう1つは、「メチレーション試験」という言葉が2回出てくるのですが、メチレーション試験という試験はなくて、メチレーション状態を解析したことで確定診断が可能だというのが正しいのではないかという、言葉のことですが、確認の上で修正していただければと思います。

○千葉委員長 これは班にきちんと確認していただいてということですね。ほかはいかがでしょうか。

 先ほどの小崎先生の御発言にもありましたが、実際に多くが確定診断を遺伝子検査に頼っている疾患が多かったのです。したがって、これはそれぞれ、今の現実でどうなのかというのを教えていただきたいのですが、例えば本日上がってきたような疾患群については、例えば遺伝子異常のチェック、それから、染色体欠損等によるFISH法については、国内で一応、基本的にavailableというようなことなのでしょうか。その現状を小崎先生にお話いただければと思います。

○小崎参考人 2-43の脆弱X症候群、それから、今、直江先生に御指摘いただいたプラダー・ウィリ症候群のメチル化の解析、それから、2-39のアンジェルマン症候群については、既に臨床検査会社によって恒常的に検査が提供されているのですが、こちらのほうが健康保険の制度に認められていないために、自費あるいは研究費で実施されているという状況があります。これは、クオリティのコントロールもきっちりしている検査ですので、もし我が国でもそういった制度に乗ることができればということを強く希望する疾患群です。

2-35以降の染色体の欠失症候群については、FISHによる検査が可能で、保険で検査が実施できている状況です。以上です。

○千葉委員長 ですから、逆に言うと、まだきちんとそういう形で検査が簡単にできないものもあるということですね。

○小崎参考人 はい。海外と比較をすることが適切かどうかは分かりませんが、ドラッグ・ラグと同じような、テスティング・ラグというものが存在するのが現状だと認識しております。

○千葉委員長 したがって、ここで遺伝子異常を診断基準とするといった場合に、やはり現実問題のところが生じてくるということがあり得るということですね。

○宮坂委員 先ほど厚労省の難治性疾患の実用化事業の話をしましたが、あれはあくまで研究であって、研究をするときに、診断が確実なものを絶対に対象にしなければ駄目だということで、それは何とか、ある疾患を疑ったときの遺伝子異常を検査できるシステムを構築しようという、それはあくまで研究上の話なのです。

 こっちはそうではなくて、臨床診断で、確かに大澤先生がおっしゃるように、現実面を考えれば、症状の組合せでやるということになるのですが、でもやはり、最終的な確定診断ということになれば、やはり遺伝子異常ですから、せっかくここまで来れば、その遺伝子の異常を解析できる仕組みもこの中で考えていくべきだろうと思います。

○水澤委員 是非考えていくべきだと思うのですが、なかなかすぐには難しいかなと思います。まれな疾患ですので、ある程度、研究としても使えるというか、診断を付けて、それを研究に持っていくといった形のものがありますので、我々がやっている研究班では、中で割り振りをして、遺伝子診断もやるというようにしています。小児の場合は、そういったシステムは何かできていないのでしょうか。あるいは作れるというか、これはどこの施設がやっている、こちらの遺伝子はどこの施設がやっている、ということで、1か所で集めて、その割り振りをするみたいなやり方をしてもいいのではないかと思ったのですが、どうでしょうか。

○小崎参考人 分野ごとに、ある程度の割り振りはありまして、本日提示させていただいたような疾患の一部は、自施設でも実施しておりますが、やはり、制度としての持続可能性ということと、それから、研究費の継続性ということとは少し異なるものであるのではないかと認識しておりますので、本日、宮坂先生がおっしゃった御議論に賛同するものです。

○千葉委員長 非常に重要なポイントだと思いますが、ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。全体を通じて何か御意見はありますか。よろしいですか。ありがとうございました。

 今の最後のディスカッションを受けて、やはり、まだまだ十分ではないということは我々も認識するわけですし、厚労省のほうも、そこのところは既に御認識いただいているわけです。ただ、この動きは、制度化しようというところで話が先に進んできていて、そこは極めて重要で、評価すべきで、ここまで来たということ自体が素晴しいと私自身は思います。ただ、それに、この非常に細かい部分が、必ずしも付いて行けていないということであって、それはやむを得ない面も、現時点ではあろうかと思います。

 例えば、今の遺伝子検査の話もそうですし、小児から成人への移行については、そういった疾患をここに入れてくるということが大前提で話をしてきたわけですが、それに伴って、まだまだ不十分なところが当然、見つかってくるわけであって、そこは今後、一つ一つ、本日のように、問題点を挙げていただいて改善していくことが極めて重要であるということで、何も、この制度に水を差す話ではないと認識しております。ですから、今後、御意見を頂くことが極めて重要だろうと思います。

 それからもう1つは、先ほどの遺伝子のことについては、是非、そういう制度化のための研究班というか、何かそういったものを組んでいただいて、特にこの難病に指定された疾患について、まとまって検査ができるようなシステム構築を考えていくような専門家集団というか、研究班の構築が重要ではないかと感じた次第です。これは最後に意見として申し上げておきたいと思います。

 それでは最後に、厚労省のほうから連絡事項等をお願いいたします。

○前田疾病対策課長補佐 委員の皆様方、ありがとうございました。次回の指定難病検討委員会の日程ですが、第9回としまして、218日水曜日の16時から開催を予定しております。ですので、少し短い期間での開催ですが、よろしくお願いしたいと思います。事務局からは以上です。

○千葉委員長 それでは、まだたくさん残っておりますので、今後も引き続いてよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会指定難病検討委員会)> 厚生科学審議会 疾病対策部会 指定難病検討委員会(第8回) 議事録(2015年2月13日)

ページの先頭へ戻る