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2013年3月22日 平成24年度第3回医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録
○日時
平成25年3月22日(金)13:00~15:00
○場所
三田共用会議所 大会議室(B~E)
○議事
医道審議会 医師分科会 医師臨床研修部会
日時 平成25年3月22日(金)
13:00~
場所 三田共用会議所大会議室(B~E)
○臨床研修指導官 定刻となりましたので、ただいまから医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、委員の異動がありましたので、御紹介いたします。小川秀興委員、冨永委員、三上委員の任期満了に伴い、国民健康保険平戸市民病院長押淵徹委員に御就任いただいております。もうお一方、日本医師会常任理事の小森貴委員ですが、少し遅れているようです。押淵先生、よろしければ一言御挨拶を頂戴できればと思います。
○押淵委員 前任の冨永先生に代わりまして、私がこの任を受け取りました、平戸市民病院長の押淵です。何分初めてですので、どうぞよろしく御指導のほどお願いいたします。
○臨床研修指導官 なお、本日は清水委員、吉岡委員から所用により御欠席との連絡をいただいております。また、本日の議題に関連して参考人の先生方にお越しいただいておりますが、後ほど改めて御紹介させていただきます。日本医師会常任理事の小森貴委員に新しく就任していただいております。到着早々恐縮ですが、一言御挨拶をお願いいたします。
○小森委員 遅れまして御無礼をいたしました。日本医師会の小森です。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○臨床研修指導官 また、文部科学省医学教育課からは、渡辺企画官に今お越しいただきました。以降の議事運営については、桐野部会長にお願いいたします。
○桐野部会長 それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○臨床研修指導官 お手元の資料の確認をお願いいたします。まず、議事次第等の束です。右側は、事務局提出資料1「基本理念と到達目標等に関する論点」、事務局提出資料2「各論点に係る参考資料の概要」、事務局提出資料3として、カラー刷りの1枚ものです。事務局提出資料4「今後のスケジュール(案)」です。また、委員の先生方には参考資料としてワーキンググループで行いました「論点整理」一式と、私どもの施行通知、局長通知の一式を別ファイルで綴じております。このファイルは、今後毎回使用いたしますので、大変恐縮ですがお帰りの際はそのまま置いておいていただきたいと思います。
また、横に資料が置いてあるかもしれませんが、國土先生からの提出資料、外科学会の資料は、一応紙で机上に置かせていただいております。不足等ありましたら、お申し付けください。
○桐野部会長 議事に入ります。本日の議題は3つあります。関係団体にお出でいただいておりますので、ヒアリングをさせていただくこと。2番目に、基本理念と到達目標について御意見をいただくこと。それから、その他となっております。議事を進める前に、参考人の取扱いについて御了承いただきたいと思います。本部会での参考人の出席の取扱いについては、事前に事務局を通じて部会長の了解を得ること及び当日の部会において承認を得ることによって、参考人として参加をしていただき発言をいただくことになっており、本日の会議においては4名の先生方にお出でいただいております。日本外科学会理事長の國土典宏先生です。日本麻酔科学会理事長の森田潔先生です。日本麻酔科学会副理事長の澄川耕二先生です。また、全国医学部長病院長会議からは、相談役嘉山孝正先生がお出でになる予定ですが、少し遅れるということです。この先生方の出席をお認めいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○桐野部会長 ありがとうございます。それでは、議題1「関係団体等からのヒアリング」です。まずは、國土先生にお話をお願いしたいと思いますが、よろしいですか。
國土先生が少し遅れるかもしれないということで、まず最初に日本麻酔科学会の森田先生、澄川先生よりお話を頂戴したいと思います。よろしくお願いします。
○森田参考人 日本麻酔科学会の理事長を務めさせていただいています、岡山大学の森田と申します。本日は、医道審議会医師臨床研修部会において、臨床研修制度に関するヒアリングに麻酔科を呼んでいただきまして、ありがとうございます。15分という時間をいただいておりますので、15分間で我々日本麻酔科学会としての卒後臨床研修制度に対する意見を述べさせていただきたいと思います。時間が短いので、早速進めさせていただきます。
まずは、結論から述べさせていただきます。ここに書いてありますとおり、麻酔科はプライマリ・ケアの基本的能力であり、全身管理が身に付く研修に最適な診療科であることを私たちは認識しております。そういった意味で、医師臨床研修制度においては、麻酔科は必修研修科目としていただきたいというのが、まず1つのお願いです。そして、研修期間は最低3か月としてほしいというのが、私たちの意見としての結論です。まず、この結論を述べさせていただき、この理由を順次述べていきたいと思います。
麻酔科臨床研修の現状ですが、麻酔科を研修する研修医は結構たくさんおりまして、その麻酔科を研修している選択の方法は、1つは現在では選択必修科目として1、ないし2か月選択すること。それから、必修科目の救急の一部として、研修を麻酔科に回ってきて挿管なりを麻酔科で習得する場面もあります。それから、2年目の専門科目として、数か月麻酔科を研修して、そのまま麻酔科に来る方もおりますし、そのままよその科に行く方もおります。いずれにしても、この3つの選択方法で現在麻酔科は研修をしております。
全国の調査は、なかなか短期間ではできませんでしたが、私の大学の実情を示しております。私は、平成21年までは病院長でして、私自身の考えは、卒後臨床研修は大学病院は向いていないと思って、大学では卒後研修医をそんなに集める努力をしませんでした。私の思いで、それは卒後研修というのはプライマリ・ケアが主ですから、一般病院で研修をしていただいて、そのあと後期研修で帰ってきていただいたらいいという主張を、私は当時はしておりました。ただ、その主張をしておりますと、かなりいろいろな方面からバッシングを受けまして、大学病院でもしっかり集めるようにということを言われまして、特に当時の学長等から強いお叱りを受けて、平成22年度から方針を転換いたしました。大学病院は、大学病院なりの研修を始めようということで始めました。そういった中での研修のスタートで、ほぼ9割近い充足率で現在もやっておりますが、その中でもほとんどの8割近い人が、選択ないし先ほど言いました専門のときを使って麻酔科を研修してくれております。これは、麻酔科の重要性をそれなりに研修医たちは知っているということです。そういった者に現在の麻酔科研修の問題点をヒアリングして、私自身聞いてまいりました。特に、麻酔科を勉強しようという思いの人はもちろんいいのですが、希望科以外の研修というものが実際にはおざなりになって、時を過ごすだけになっているという傾向が1つです。もう1つは、麻酔科の研修は3か月では短いと。麻酔科が1、2月では、もうただ挿管を学ぶのみと。挿管は別に麻酔科医が教えることではないと、私自身はそう思っています。ですから、麻酔科に挿管を学びにくるという発想自体が、私は間違っていると考えております。現状では当直業務がありませんので、私たち麻酔科、いわゆる救急も含めてですが、当直を研修医に課さないと、医療の全てを研修したとはいえないというような形で、私たちの全てを教えることができないという現状もあります。
最後に、麻酔科の研修というのは、救急医療研修の一部ではないということです。よく、よその診療科の先生方は、麻酔科は救急の一部だから1か月回ってこい、挿管だけ学んでこいということを言いますが、それは大きな誤りです。麻酔科研修で得られる効果は、ここにありますように、麻酔科というのは全身管理を毎日やっているわけですから、2番目にあるように全身管理のシミュレーションを体験できるということです。全ての患者の状態を、私たちは現実に手術場の中で体験しているわけですから、ほかの診療科におけるいろいろな場面を手術場の中で研修医は体験できる、それに対応することを身に付けていくということです。そういう意味でシミュレーションをするという機能、人形ではない、実際の胃の中でシミュレーションをするという麻酔科の特徴があります。そういうことをいかすべきであると考えています。
もう1つの麻酔科の大きな特徴は、自分の科だけで患者を診て患者を退院させるわけではありません。全て、よその診療科から来た患者を診療して、他の診療科、コメディカルと共同して医療を行うという作業をやります。ですから、そういうコミュニケーション能力も身に付くという臨床現場です。
4番目に、麻酔科医不足の解消につながるということです。麻酔科を実際に体験しますと、麻酔科の重要性を彼らは認識しまして、多くの研修医が麻酔科医を将来専門として選んでくれる場になるということです。麻酔科に3か月いるというのは、ここに書いてありますが、麻酔科というのは実地医療ですから、知識、座学だけでは身に付かないというか、意味がありません。ですから、どうしてもある程度の期間をもって臨床実習をしないと、麻酔科を学んだ意味がないということで、少なくとも3か月はほしいのです。これを言い出すと、どこの診療科もそうかもしれませんが、麻酔科は特にそういう意味で期間がほしいということです。これは、麻酔科医になる人が増えてくるということはありますが、皆さん現実にデータを見たことがあると思いますが、麻酔科を実際研修で経験しますと、そのあと麻酔科の重要性を認識して、非常に多くの者が麻酔科を専門として選んでくれているという現実があります。つまり、143人の者が237人ですから、ほぼ5割近い人が増えてくるという現象があります。それだけ、麻酔科というものを実際に現場で体験しますと、その重要性を分かってくれるということです。
逆に救急ですと、多くの研修医の人たちは救急を学び、今は必修ですからやりますが、現実の救急の場に行ってみて、実際、そのあと減っている現状があります。麻酔科は、救急の一部ではありません。むしろ、私自身は救急が麻酔科の一部であると考えております。ですから、麻酔科を体験することが救急を体験することにもなりますし、その後の展開にもいい影響があることだろうと思っております。どの診療科が役立ったかではなくて、どこの診療科も、実際に回ることは役に立つことで、そう差はありません。
これが、麻酔科学会臨床研修制度が始まって以後の麻酔科医の増加率です。卒後研修制度が始まって、ガタッと一度、数年間手痛い目にあいました。かなり麻酔科医が不足して、外科医が手術できないということで、私たち自身もある意味バッシング的なことも受けましたが、現実には、今、麻酔科は増えていっております。
現在は、日本麻酔科学会が毎年400名以上の新入会員を獲得していっておりますので、麻酔科医は現在ももちろん圧倒的不足の状態ではありますが、順調に増加をしています。これが麻酔科学会の会員数ですが、2012年で1万2,000人まで増えていっております。これは、辞めていった人を加算していますので、当然増えていきますが、順調に増えているには間違いないと思います。現在、日本麻酔科学会の会員は1万2,000人おります。ただ、実際には地域分布は大きな差があります。特に、都会は大学も多いですから麻酔科医は多いのですが、地域によっては圧倒的不足に悩むという状況もあります。大体麻酔科医は、西が多く、東北は苦労しているという現状は皆さんよく御存じだと思います。これが現状で、研修制度というものがこの麻酔科の分布偏りの解消に役立ってくれたらと思っております。
最後にもう一度結論を言いますと、私たち麻酔科はそういう意味でプライマリ・ケアで全ての臨床科において必須といいますか、身に付く最適な診療科ですので、必修科目としていただきたい。最低3か月の期間は取っていただきたいというのが、私たち麻酔科学会の意見です。御質問がありましたら、お答えしたいと思います。ありがとうございました。
○桐野部会長 委員の先生方から御質問、御意見等はありますか。麻酔科学会として、現在の専門医の数が6,000人ぐらいですか。このまま4.何%でいくと、恐らく7,000か8,000人ぐらいになるのではないかと思うのですが、どのぐらいの数ですと大体よろしいというお考えでしょうか。
○森田参考人 現在日本で行われている手術の麻酔件数のうち、どれだけ麻酔科医が現在コントロールしているかといえば、まだ6割ぐらいです。4割は、外科系の先生方、ないし地方では看護師がコントロールしている状況もまだ存在しています。今は6,000人ですから、私たちはもう5割増しは必要と。理想的に全ての麻酔医療を麻酔科専門医がコントロールする状況下は、もう5割の人数が必要だと試算をしています。ですから、もう3,000人ぐらいの専門医が必要ではないかと考えております。
○神野委員 私も本来は外科医なのですが、30何年前の医師1年目に3か月間麻酔科へ行って研修させていただいてから、全身管理等について身に付いた経験を持っています。今、私どものこれまでのワーキンググループを含めての議論の中で、医学部の卒前教育でやれることはやってもいいのではないか、というような御意見がたくさんあるのですが、あえて医学部卒前教育ではなくて、卒後臨床研修で麻酔科をしっかりやることの必要性を確認させていただきたいと思います。
○森田参考人 麻酔科の教育の一番の利点は、臨床現場において患者が寝ている、意識がないということは、教育の面ではある意味メリットがあると考えています。シミュレーション効果というか、そういう意味で申し上げたのですが、私たち多くの麻酔科医は教育に非常に熱心ですというのは、患者の前でいろいろなことを喋れますから、全てのことを教えることができます。それから、実地に点滴なり何なりをすること、かなりの医療法で許される限りのことは、医療現場では可能です。ですから、あとは医療法との兼ね合いだけの問題で、私たちは学生の時代からそういう医療を教えることには何ら抵抗もありませんし、やるべきだと考えています。現実的に、今の状況を申しますと、学生時代の麻酔科の期間はどんどん短くなっています。その分が後ろにきているのが現状で、卒前教育の改革も含めてやれば、ある意味では可能だと考えます。
○神野委員 あえてお伺いしますが、今3か月という御提案ですが、卒前教育に何か月かかければ、卒後の臨床研修では3か月は必要ないということでしょうか。
○森田参考人 私は、少し意味は違うと思います。というのは、学生のときにやる医療と、実際医師免許証をもらってからの医療は、習得、ラーニングスピードは圧倒的に違うと思います。ですから、学生のときに3か月やったことと、いわゆる卒後研修になってから3か月やったことのラーニングスピードは、かなりの差があると考えます。
○神野委員 ありがとうございます。私も同意見です。
○小森委員 私も、35年前に麻酔科でいろいろと全身管理を学ばせていただいたことを貴重に思っている1人として、あえてお聞きします。各科それぞれ不足感は当然あると思います。ただ、今の麻酔科を志望される方々が、新しい科でもありますし、かなりいらっしゃる。しかも、研修後というお話ですが、その内訳は、御無礼な言い方ですが、比較的夜間の救急については明確に分離、分担をされていて、そういった意味で女性で出産、育児等を想定しておられる方にも比較的続けていきやすいというような選択肢もかなり含まれているのではないかという認識をもっています。その点について、いかがでしょうか。
それから、少し重複をいたしますが、全身管理ということですので、いわゆる学生医としての卒前教育には少し向かない面があると思っています。それでも、限られた2年間の中であえて麻酔科に3か月というのは、本当にどうしても必要なのかと。確かに3か月あれば、相当のレベルというのは理解できますが、いわゆる後期研修等に併せて3か月というようなことは、お考えとして、選択肢として全くないのかをお聞きします。
○森田参考人 まず1つ、麻酔科の増えている理由としては、女医の率が確かに高いのです。麻酔科の診療の一番の特徴は、1日で完結する医療ということです。私たちはICUをやっていますが、ICUでやらない限り完結します。ですから、そういう意味で夜間や昼間だけ働くことももちろん可能です。しかし、それは麻酔科医の利点であって、それを何も私たちは麻酔科医を増やす手段として考えたことは一度もありません。研修医なり新しく医師になった人たちが働きやすいということで選択する、それはいろいろな診療科によって全て違うと思います。ですから、それは麻酔科が夜働かなくてもいいということはまずありません。私は、週に7回当直していましたが、麻酔科は夜はしなくていいということは全くありません。ただ、そういった当直しなくても働ける場が存在するのは事実ですので、それは利点だと思います。
それから、3か月をあえて必要かということですが、逆に言えば、3か月来ないのなら1か月来ても意味がないというのが私の意見です。澄川先生、いかがですか。
○澄川参考人 結局今までの議論の中では、麻酔科研修というものが非常に技術的観点から見られていると思うのですね。どのような技術が学べるのかと。しかし、全身管理というのは、そこに任されて、その患者の命を預かっているのだという実感がないと、本当の研修にならないと思うのですね。ですから、今のように大学病院等で手厚くバックアップしているような状況では、研修医は必ずしも満足しないというか、本気にならないのですね。かなりしっかりと任される場面が必要だろうということなのです。テクニックだけを覚えるのでしたら1か月でいけるのではないかという議論になると思いますが、全身管理というのは、基本的に自力生存ができない人を管理するといった観点ですので、そうするとやはりそれだけのレベルになっておくことは、将来的に様々な状況でしっかりした対応ができる、あるいは自信ができることになるのだろうと思います。それを、3か月は必要だろうという1つの根拠にしているのです。
○桐野部会長 よろしければ、時間の関係もありますので、次に移りたいと思います。森田先生、澄川先生、本当にありがとうございました。日本外科学会の國土先生からお話をいただきたいと思います。
○國土参考人 東京大学の國土です。本日は、日本外科学会の理事長の立場から一応お話をするつもりですが、ヒアリングのお話をいただいてから余り時間がなくて、外科学会としての意見をなかなか集約できませんでした。ですので、前半は今週の火曜日に行いました理事会での代表的な意見を御紹介します。後半は、ローカルな話で大変申し訳ありませんが、私の大学病院の外科教授としての立場、それから医学部の教務委員長としての立場も交えて、後半は私の私見であるということをお断りしたいと思います。
まず追加のスライドですが、一番端的なデータだと思いますので最初にお示しします。これは日本外科学会の毎年の入会員数の推移です。研修制度が始まった2005年の直後に大きく落ち込みました。これには制度上の変化、つまり、それまでは卒後すぐ外科学会に入会していた外科志望者が、2年間の初期研修を終えてから入るようになったことが影響しています。しかし、それだけでは説明できない大きな落ち込みになりました。つまり、初期臨床研修制度開始が外科医減少傾向に拍車をかけたと解釈しています。それが、やっとここまで、年間入会者数1,000人ぐらいのところまで持ち直してきたのが、現状かと思います。外科学会の総員が4万人弱ですが、今年は200人ほど減っております。ですので、何とか現状維持というのが、会員数のデータから見る傾向です。
理事会での意見をお話いたします。このような発言の機会をいただいたことを本当に感謝しなければいけないのですが、大変恐縮ながら、最初に申し上げる意見として、この研修部会に是非外科学会の代表者も入れていただきたいということを申し上げます。複数の理事から本日発言してほしいと依頼されましたので、これをまず申し上げたいと思います。それから、外科学会の総意として申し上げたいことは、外科が準必修になっていることに対する反対意見が非常に多いということであります。外科を必修に戻していただきたいと要望いたします。内科学とともに外科学は臨床の大きな体系の1つであるという観点からすれば、外科学という臨床体系を学ぶということは、やはり臨床医として必須のことではないかという意見がありました。
救急は必修になっているわけですから、救急の処置や、小外科と言っては非常に失礼な言い方かもしれませんが、縫合をしたり結紮したり、小さい傷が処置できることを習得することは現研修制度でできることになっています。しかし、それが外科研修の本質ではないということを強調したいと思います。外科治療体系を学ぶこととは、やはり手術という侵襲を受けた患者、あるいは外傷を受けた患者の全身を管理できると、言うことだと思います。ですから、それを学ぶ外科研修という場が研修医には必要であろうという意見です。
続いて申し上げますと、初期研修の2年間だけを抜き出して検討するのは、やはり問題であろうという意見がありました。特に、最近の卒前教育では本格的参加型臨床実習が各医科大学で取り入れられ、臨床実習はかなり強化されておりますので、その成果を利用すべきです。後期研修については、これから第三者機関ができて専門医制度も変わろうとしております。専門医研修のスタートが卒後何年目からになるのかも大きな問題ですので、そういったものを含めた連続した修練制度として検討していただきたい。そのためには、厚労省と文科省の間で是非連絡を取っていただきたい、という意見がありました。
あとは個別の意見をご紹介します。まず、現制度では自由選択期間が11か月ありますが、ここで専門領域を定めず細切れにいろいろな科を回るのは好ましくないという意見です。早めに、やはり専門、志望科目を決めて、できるだけ早く専門研修を始めてほしいという意見がありました。それから、これもネガティブな意見で恐縮ですが、今の初期研修制度について外科側から見ると、否定的な意見も多いのも事実です。ここまでが、外科学会の理事会で出された意見です。
後半の話に移ります。初期研修制度が外科にどういうものをもたらしたかという問題です。研修医の身分も意識も変わり、待遇もかなり良くはなったと思います。ただ、指導医や大学の医局との関係も変わりました。余りここで精神論は言いたくないのですが、外科医としての師弟関係の醸成過程が変化してしまったのではないかと危惧しています。私どもの大学の外科研修制度はこのようなタイムテーブルになっております。全国平均からそれほど離れてはいないと思います。初期研修は2年間で、東大病院と関連病院の襷掛けをやっております。外科であれば、3年目から外部の関連病院へ出て多くの手術を経験します。その後、卒後5-6年で外科専門医を取るというのが、大体のタイムテーブルです。外科専門医は、350例ぐらいの手術症例を経験しなければいけませんので、外の研修病院で修練する必要があります。
外科から見た課題と思われることを列挙してみました。やはり、外科ローテ中の研修医は労働力ではないと教えられておりますが、ではクラークシップなのか。実際の外科臨床の現場で、どのような立ち位置で研修医が動くべきなのかについて、まだいろいろな議論があります。
もう1つ大きな問題は、東大病院は外科を必修として研修プログラムを組んで続けているわけですが、研修医全員がmajor外科の研修に耐えられないのではないかという意見もあります。特に、精神的な問題、あるいは無断欠勤など、一部ですが、そのような研修医がいるのも事実です。もう1つは、ローテーションが細切れになってしまうという問題です。先ほど、麻酔科は3か月最低という話がありましたが、外科としても3か月はほしいところです。本当は半年ぐらいいてほしいのです。それで、やっと人間関係ができて、信頼関係ができて、本当の意味での研修の実が上がると考えております。細切れ研修では人間関係が希薄になってきます。外科の生の力といいますか、臨床医として必要な胆力を伝えられるようなメンターが、そのような細切れのローテーションでは見つけられないのではないかと感じます。そして、外科志望者が減っていって、更に労働環境が悪化するという悪循環が起きています。これを、中堅外科医の頑張りで何とか今食い止めているのが現状かなと思っております。
それから、非常に悲観的な意見で恐縮ですが、このような意見もありました。外科研修は、一部の研修医にとっては非常に負担であるということです。言葉が適切かどうかわかりませんが精神的な問題などの顕在化が外科をローテーションしたときに起こってしまうことが結構あるのが現状です。配付資料ではあえて、パーセントは消しましたが、研修対応の教員はこの問題に非常に苦慮しているのが現状です。医学部でも5%以下ですが、必ずそういう問題を抱えた学生がいます。冒頭にお話しましたように、学会としては外科研修の必修化を希望いたしますが、そういう問題をかかえた、あるいは抱えるかもしれない医師をどのように成長させるのかを考える必要はあるかと思います。
事前にいただいた資料を拝見して気が付いたのですが、産科、小児科は卒前の参加型臨床実習などで学べば十分との意見があるが、「国民の視点」からはそうではないと書いてあります。私は、この「国民の視点」というのがどういうものなのかが非常に疑問であると思います。私自身の経験から考えますと、私がもし今の研修制度で産科を回って分娩を1か月診たからといって、そのあと外科医になって医者としての全キャリアの中で赤ちゃんを取り上げることは一回もあり得ないわけです。これから参加型臨床実習で卒前教育が充実すれば、そういう見学に近い1か月回るような細切れのローテーションはもうなくすことができるのではないかと考えております。
最後のスライドも、私の個人的な意見ですが、できれば必修化するとともに、最低限コンパクトな研修にしていただいて、外科志望者であれば外科の研修を早く始める、できれば2年目から始められるような制度が望ましいと思っております。
○桐野部会長 委員の先生方から、何か御意見はありますか。
○山下委員 國土先生のお話と、森田先生のお話にも関わるのですが、要するに初期臨床研修の大きな到達目標として全身管理ができますと。そうすると、今は何科に行って、何科に行ってという発想なのですね。実際には、厚労省もそれを今取っ払って、到達目標さえできればということで選択必修にしたわけです。結局、外科も麻酔科もやはり全身管理をする、我々もそのような医師を求めているわけです。もう1つのファクターは、國土先生がおっしゃった、なるべく長い期間ある所にいてもらって、到達目標はここですよと。そういうときに、例えば外科と麻酔科がうまくタイアップして、1つの大きなプログラムを作っていただくことは可能なのでしょうかということなのです。到達目標として、もちろん経験する症例はいろいろ違うと思いますが、そうしないと、あれが入る、これが入るといって、國土先生がおっしゃったように1か月半とか2か月でぐるぐる回って、プログラムとしてはすばらしいのですが、実際にそれをやるほうも指導するほうも、すごいストレスになっていることは、やはり現実問題としてあると思います。
もう1つは、終わってからの専門医研修にどうやってつなげていくかを考えた場合に、いわゆる基本的な考え方をもう少し考えられないかと。森田先生、國土先生がおっしゃったような全身管理をするために一体どのようなプログラムができるか、一緒にそれを考えていただくことが可能なのでしょうかという質問です。
○國土参考人 外科の立場から申し上げれば、是非そうあるべきだと思いますし、何とかなるのではないかと思っています。麻酔科が、意識もない、呼吸もできない状態の人間を生かしておくことができる技術だとすれば、例えば外科は1か月も1年も食事もできない、あるいは腹水が1日に3L、10L出る人間を生かす技術なのですね。ですから、そういう基本的な生命を維持するようなことを体系的に学ぶということであれば、麻酔科と外科共同でいろいろと考えることはいいのではないかと思いました。
○森田参考人 同感です。ただ、今言われたように全てを2年間で研修するとなると、どうしてもたくさんのプログラムになってしまうので、私としては例えば外科系を目指す人、内科系を目指す人という大きな区分けをして、その中で外科と麻酔科が1つのプログラムを組むというようにしないと。産科、小児科を回って、そのあとと。私も、麻酔の専門医、外科の専門医になる人が産科や小児科は回る必要はないと思います。麻酔科の中で専門医になっても、小児科は必ずやりますから、麻酔科のキャリアプランの中に小児科はいくらでも勉強する機会が後ほどあるわけです。ですから、もう少し大きな区分けをして選択をして、外科と麻酔科が一緒にやることは十分考えられると思います。
○山下委員 私は、非常に大賛成です。やはり、将来何をやるかによって、研修内容は当然変わってくるべきだと思うのです。それによって、教えるほうも意識が変わってきます。皆同じように幕の内弁当を食べさせているというような状況を変えていかないといけないと思いますので、本当に大賛成です。
○小森委員 それぞれの科の方々が自分の所は必修にしろということになると、細切れにならざるを得ないです。しかし、一方でこの臨床研修制度の基本的な理念は、基本的診療能力を身に付けるということであるとすれば、余りに初期に、つまり22、3歳の者に自分の診療科をおおむねであっても決定させるというようなことがよろしいのか。そして、もう1点お聞きしたいのは、平成22年に見直しをされて、たとえば外科に行きたいという方についての自由なプログラム選択は、以前から見ると増えたわけですが、まだまだ足りないとおっしゃいました。一方では、それぞれが必修ということになると、元に戻せという話になるので、先生方の本来の御主張はどちらなのかということを、1回お聞きしたいと思います。
○森田参考人 1つは、はっきり申し上げまして、例えば麻酔科の専門医を目指す人に、1年目から小児科を回ったり、産科を回ったりする必要は全くないと思っています。ただ、外科などの別の所を回ることはまた意味があるかもしれません。それはどうしてかといいますと、麻酔科専門医になってから外科にせよ、産科麻酔もありますが、そういうキャリアの中で1、2か月勉強するプランは、いくらでもでき得るわけですね。ですから、専門医を目指すのに、例えば卒後研修を2年やってから麻酔科になって10年経った医者と、最初から麻酔の専門コースに入ってやった医者と、何ら私は差がないと思っています。専門医になる人のコースと別のコースに、はっきり分けるべきだと思います。全身的な医療をする人と専門医を目指す人は別のコースがあるべきで、その中で外科系のコースを選ぶ人もいれば、内科系のコースを選ぶ人もいればという選択肢を、もう少し卒後研修の段階から作るべきだと思っています。
○桐野部会長 國土先生に伺いますが、今のお話と関連するのですが、鉄は熱いうちに打てというのは、医師免許を取得したら早めに外科の修行をしたほうがいいというお考えなのか、それともとにかく年齢が若いうちに外科の修行をスタートしたほうがいいのか、どちらなのですか。
○國土参考人 これは、私の個人的な意見かもしれませんが、医者になってできるだけ早い時期、最初の1、2年がその人の医者としての人生が決まるような体験をする時期ですから、そういう時期に細切れのローテーションをするのではなくて、外科を志望するなら最低でも2年目ぐらいから外科を始められればいいのではないかという意味です。
○桐野部会長 よく分かりますが、例えば米国は4年4年の26歳から、どんなに早くても外科の修行を始めるのです。日本は、昔のダイレクト入局制度ですと24歳から始めると。2年の違いが決定的に外科医としての将来を決めるかどうかは、やはり教育の仕方やプログラムでいろいろ違ってくるのではないかと思うのですが、先生の御趣旨は、医師として仕事をするようになった最初の数年が重要であるという趣旨ですか。
○國土参考人 そうです。
○小川委員 山下先生、小森先生の御意見とほとんど同じなのですが、今の2つの麻酔科と外科のお話を聞きますと、やはり科ごとにこだわって、うちの科は必修にしてほしい、もっと長くしてほしいということになると、先祖返りですよね。5年前に、制度5年のときに見直した前にまた戻ってしまう。そこで、やはり山下先生がおっしゃったように、科にこだわるような研修では駄目だと思います。要するに、例えば先ほどの全身管理などは、科を超えて研修すべきです。
○森田参考人 2年間の研修のうちに麻酔科を自由選択にしてほしいのです。100人の人が自由に麻酔科を選べれば、恐らく私は100人近い人が麻酔科を選んでくださると思います。
○小川委員 制度の問題を言っているわけではなくて、どちらかというと理念の問題を申し上げているわけです。要するに、理念として科にこだわって、うちは必修でも選択でもいいのですが、そのようにしてほしい、長くしてほしいと言っていたら、全ての科がそうなってくるわけです。そうではなくて、先ほど到達目標という話がありましたが、要するに診療科を超えて教育をするのだということになると、例えば、全身管理は救急の先生も脳外科の先生も外科の先生も麻酔科の先生も、病院の総力を挙げて研修するのだというような発想にもっていかないと、まずいのではないかと思うのですが。
○國土参考人 理念は私も賛成です。ですから、全身管理ができるという到達目標の下に外科だけ増やせとは申しません。ただ、外科的な臨床体系は大きな2大体系の1つではないかという意味で、外科という名前を申し上げたということです。
○森田参考人 先祖返りしてほしいとは、私は決して思っていません。ですから、麻酔科をもっと自由に選択できるようにしてほしいという意味です。ですから、全員コース分けにして、私自身は、これは学生教育になってしまうかもしれませんが、全ての研修医が麻酔科を経験するのが、いい麻酔科、いい医師を作ると信じていますから、必修化にしてほしいという意味です。ですから、そこに選択をする余地をつくってほしいという意味です。
○神野委員 今お話になられた國土先生も森田先生も、大学の先生です。恐らく、多くの医局員がいらっしゃって、いろいろと関連病院に医師を派遣することもやっていらっしゃると思います。例えば、早いうちから専門だけをおやりになるドクターたちが、都内の大きな病院や岡山市内の大きな病院はよろしいかと思うのですが、例えば石川、岩手、山形などの地方の病院に行って実際に当直等をするときに、1人当直や外科系当直、内科系当直といったような人数で当直をするときに、果たしていろいろなプライマリ的な、子どもの熱やお産はできなくても、妊産婦の風邪引きなどが想定されるわけです。それから、高齢者が増えてきていますので、複数の病気を持っている人も地方に行くとたくさんいらして、その方々を先生方の医局員が診なければいけない場合が想定されます。今の専門を先鋭化していくとするならば、その方々は地方の関連病院へ行って、私たちは外科の専門だから内科的な疾患は診ないのだとならないかということを、非常に危惧します。それは、教育の問題ですし、私は外科の専門医ですが、もちろん診ましたが、今の若い人たちにそういう流れができないかと心配します。
○國土参考人 先生も外科医ですから、私も余り反論できませんが、やはり今の日本の救急医療の多くを担っているのは、外科だろうと思います。外科の専門医は専門医と名が付いていますが、外科学の広い範囲のトレーニングを受けるのですね。全臓器の外科のトレーニングを受けます。当然そこでは内科的なことももちろん修練されると思いますので、外科のできるジェネラリストが外科専門医には形成されていると思います。そういう意味で先生の御懸念は余り当たらないのではないかと思っています。むしろ、2年間スーパーローテをしたからといって内科も外科も広く診療できる医師になるとは限らない、と個人的には思っています。
○桐野部会長 それでは、全国医学部長病院長会議の嘉山先生においでいただいておりますので、今度は嘉山先生にお話を頂きたいと思います。
○嘉山参考人 全国医学部長病院長会議の相談役をやっております嘉山でございます。今日、新臨床研修制度で、要するに、良い医者を作るにはどうしたらいいかということの観点からお話をさせていただきます。
過去を振り返らなければ現在もないわけで、未来もないわけです。従来は、何歳でも私はいいと思っているのですが、例えば、注射1つにしても、18歳でやるか、19歳でやるか、20歳でやるかというのは、その人間にとっては最初のことですから、それは知識と危険度とか、そういうことがあれば、いつやってもいいと思うのです。
これはどこでもいいです。例えば、イギリスでは国家試験がないので、ここは大学で認定されればこれで終わりですから、ちゃんとした学力、技術、スキルがあればいいわけです。専門医も、本当はどこでも引いていいのです。専門医だからと言って、手術がすごく上手なわけではないですが、最低限の知識を持っているのが専門医ですから、これはどこでもいいのです。
日本の場合には、ここから始まって、ずっとこれは屋根瓦式で、先輩が教えてくれるので、開業の先生も含めて、日本の医療は世界一です。それはWHOが紹介しているように、従来の日本の医師養成システムは、世界一の医療を国民に提供した優れたものであったと。
これは10年前のWHOのレポートです。当時から、日本は第1位で、いわゆる日本人の医療レベルがアメリカより劣るというのは、先進医療と日常医療を履き違えているからです。日常医療では、圧倒的に日本が1位です。アメリカは15位です。最近の2009年版のレポートでは、トータルでも1位です。唯一、不幸なのは自分のアセスメントで、日本人は一番世界一長寿にもかかわらず、がんの5年予後も世界一です。乳がんが第2位ですが、それ以外、がんは世界一です。
かわいそうなのは、日本人はねじれていて、自分たちは健康ではないと思っているのです。世界一の長寿で、世界一の安い医療費でやって、それだけの教育をやってきたのです。アメリカは、レジデント教育までは非常な努力とお金をかけますが、そのあとは、アメリカは多民族国家ですから、スパニッシュがいたり、アングロサクソンがいたり、コンペティションです。自分の弟子にポジションを奪われないために絶対教えません。私はドイツ留学ですが、ドイツはドイツで、日本と同じように屋根瓦式で教えていました。アメリカは10年前より更に落ちて16位です。先端医療という、お金をかけたり、あるいは社会的な、囚人を罪とともに役に立たせてもらったり、先進的というのはリスクが高い医療ですが、まだ平常化していないのです。そういうことを日本人は間違っているのではないかと思います。こういう医者をつくってきたわけです。新しい制度が何年か前に入ったわけです。例えば、私は吉利和先生の本を読んで、鑑別診断をしました。私は昭和50年卒です。鑑別診断をやって、しかし、医行為はできないので、これは卒後研修をやれということです。これがプライマリ・ケアです。ケアですから、トリートではないのです。トリートはできないのです。卒後研修では、プライマリ・ケアを教えているのです。それはケアであって、看護に近いのです。トリートは、国民に聞けば、先ほど全部を診れるのか、診れないのかというお話がありましたが、全部を診れて、全部をトリートできる医者は世界にはどこにもいません。そこでやれることはトリアージなのです。先ほど地方へ行ったときに、外科医がどうするかといったら、私は全身状態を診れますが、そのときに、これはまずいなと思ったら、日本は30?以内には全部専門家がいます。脳外科医ですら、北海道ですらいます。そういうふうな密度の濃い医療をやっているのです。
開業の先生はどういう道を通ってきたのかというと、やはり、ちゃんときちんと1つの専門性を持って、そのあとジェネラルに開業していっているのです。ですから、日本の開業医は世界一なのです。これはとんでもない病気と分かるから大病院に送るのですが、アメリカのジェネラルフィジシャンというのは、社会的地位も最もあれですし、インカムも一番低い。それはなぜかというと、トリアージしかしていないからです。
今度の新制度はどうかと言うと、これは私が学部長になったときですが、国家試験の獲得目標とモデルカリキュラムと卒後研修を比べました。これがモデルカリキュラムというか、学生のうちにやりなさいよと、高久先生が中心になって作られました。診察しろとか、全身状態を把握しなさいとか、触診しなさい、バイタルしなさい、血圧測定しなさい。これを学生時代にやりなさいと。
これが医道審が決めた卒後臨床研修制度です。ほとんど中身はダブっています。もちろん、医行為で、医者でなければできないような行為もありますが、ほとんどがダブっている。今の新制度で卒後臨床研修制度がどのぐらいで獲得できているか、これは我々が評価したわけではなくて、EPOCで評価しますと、赤いのは、前川基準というのは学生時代にできますよと。卒後研修で卒業してからやっていることですが、ほとんどが9カ月以内で経験をしてしまっているのです。プライマリ・ケアというのは、そういう意味では学生時代にできる内容であるということです。
これは診察です。こちらは検査です。これは手技・治療法です。これは医者でないとできないので、例えば、輸液や薬はできませんが、そのほかのほとんどの項目は、先ほど挙げたものは全部できてしまうのです。こういうことがエビデンスとしてあるということです。医療の記録や診療計画も、前川基準で全部できてしまう。
これはできない。これは幾ら何でも医者にならないとできませんが。
つまり、問題点としては、これは平成16年に入りました。これはあとから述べますが、研究者が大幅に減りました。これは全員強制です。ですから、基礎研究に行かなくなったのは当たり前です。地域における偏在は、当然、促進されたわけです。大学が全部良いとは私は思いませんが、いわゆる大学を中心に循環型の医師の派遣をしていましたが、それが崩れてしまった。診療科の偏在が起きている。これはエビデンスとして起きているわけです。
大学院、これは1つの例ですが、平成19年に急激に落ちています。これは全国です。
これは東京大学です。東京大学こそ、基礎研究をやるべき大学だと私は思います。東大の清水医学部長から、桐野先生のあとの医学部長から頂いたデータですが、ここでゼロです。東京大学ですら研究者がゼロです。これはエビデンスとして、この制度を評価する1つの大きなファクターになると思います。
これは、小川先生がやっている帰学率というのは、大学にここまでは70%。大学が全部いいとは言いません。ただし、これが、今まで世界一の医療を提供していた制度だったのです。もちろん、満点の制度なんてないですから、それを更に悪くしたのではないかと、私は思っているのです。
これは50%です。研究者もいなくなってしまった。中小というのは、50万人以上の所です。私がいる山形県には50万人以上の街がない。宮城県には仙台があります。これが、こういう状態であったのが、これをずっと並べますと、同じように、大都市圏、関東。私のふるさとは神奈川県ですが、東京を含めた神奈川、千葉、埼玉。埼玉は人口当たりは少ないですが、患者さんは東京に来ています。この地域の偏在は全然解消はされていない。
診療科も減っているのは内科です。手間がかかる所は、今の学生は嫌がってしまったのです。鉄は熱いうちに打てというのがありましたが、最初から先輩よりも高い月給をもらって、先輩よりも早く帰れるという職業をやってしまった。これは日本の最高の誠意がある医者のモラルを壊してしまった。外科は大幅に減っています。國土先生には申し訳ないのですが、50年後には、盲腸の手術ができる外科医が1人もいなくなる可能性があるぐらいの数字です。桐野先生も前におっしゃっていました。我々脳外科も大幅に。最近は少し平常状態になりましたが、つまり、手間がかかる所は全部減ってしまったのです。これはエビデンスです。
これは朝日新聞の全国版ですが、今から10年以上前に、私はまだ病院長だったのです。当時、木村厚生労働省副大臣に「この制度はどうですか」と言われたので、「これはパンドラの箱を開けることになるから、地域医療は崩壊します」と私は言ったのです。「この責任は取っていただけますね。科も偏在しますよ」と言ったにもかかわらず、このとおりにやってしまったのです。エビデンスとしては、今や医療崩壊が更に進もうとしています。
そのあと、高久先生が中心になって、厚生労働省と文部科学省が一緒になった臨床研修制度に対する会があり、これは小川先生も入っていらっしゃいますし、私も入っていて、福井先生、武藤先生、矢崎さんも入っています。こういう所でどういう答申が出たかというと、臨床研修制度の導入以降、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少したと。専門の診療科の決定が遅れたことも影響して、大学病院の若手医師が実質的に不足する状況です。そのため、大学病院が担ってきた地域の医療機関や医師の派遣機能は低下し、地域における医師不足が顕在化・加速するきっかけとなったと。これは舛添厚生労働大臣の下での厚生労働省と文部科学省の正式な審議会です。研修医の募集定員は、病院ごとには一定の基準に基づき管理されていますが、総数や地域別ではほとんど調整が行われていない。そのため、募集定員の総数が研修希望者の1.3倍を超えている。つまり、都市部に多くの受入れ病院があることと相まって研修医が都市部に集中した。これを何とかしなければいけませんよというのが答申だったわけですが、全然そのあと検討はされていません。
そのあと全国医学部長病院長会議では、一体どうなっているのだろうということで、この制度を検証しました。後期研修で大学に残っても、学位の取得の希望は低下しました。先ほど言ったように、若い医師のモラルを壊してしまいましたから。もちろん全員ではありませんが、システムというのは大多数を見なければならない。ある特殊な人、こういう人もいるよではなくて、全体としてこういうのは大事なのですが、やはり、壊れたと思わざるを得ないです。
臨床研修の適切な期間はどれぐらいか学生に聞くと、むしろ、新制度下の研修のほうが短くてもいいと考えているということです。自分が受けた研修制度に満足しているか。必ずしも満足度は高いわけではない。当たり前です。先ほど2年間でコマ切れにやってしまったものですから、教えるほうも、それは本当に素直に考えれば分かることであり、教えるほうも自分の所に来ないのであれば、きちんと教えるかどうかというのは、やはり。教える人もいるでしょうが、制度としては欠点がある制度だと思います。望ましい臨床研修場所はということで、研修先の制限には否定的だと。そのとおりだと思います。
研修病院と改善すべき点ということについては、病床数の少ない研修病院では、研修で熱血漢の指導者がいるという話がありますが、それは特別だからテレビに出たりするわけで、普通はそうはいかない。やはり、700以上のベッドがなければちゃんとした研修はできないと思います。
今後、何年かすると、屋根瓦式がなくなり、開業の先生を含めて、日本の世界一の医療が衰えるのではないかと私は非常に危惧しています。問題点としては、プライマリ・ケア、偏り過ぎた研修、ゆとり教育です。困難例を知らない。つまり、アメリカのレジデントで、ジェネラルフィジシャンは、マニュアルですから、例えば、もっと難しいことができる場所があることすら知らない。ですから、適切に送らない。医工連携を知らないわけです。病診連携もできないわけです。恩師のいない教育、floatingの医者が増加する。自分勝手に動いている医者が、東京には5,000人いると言われています。時間を売る単なる労働者です。我々は5時で帰りますと言う。もちろん、ワーク・ライフ・バランスは大事だと思いますが、それを医者がやってしまったら非プロ化です。
困難な医療の衰退については、エビデンスとして外科と脳外科が減っています。そのほか、内科も手間がかかるので、血液内科は減っています。
選択科の偏在、これは医療レベルが低下する。今はまだ分かりません。我々が何とか支えてますから。これは国民の大きな損失になる。
制度の見直しに関しては、研修医の将来のキャリア等への円滑な接続が図られて、卒前・卒後のシームレスな医師養成を目指した学部教育の更なる充実をして、更に研修の質の一層の向上の観点から、研修医の募集定員及び入局先のあり方を見直す、というのが我々の考え方です。
これが結論です。学部教育も、卒後臨床研修教育も、そこで何かが起きるわけではなくて、同じ人間が教育されているわけです。先ほどお示ししたように、プライマリ・ケアというレベルでは、学部教育でほとんどできるわけです。問題は今の国家試験です。我々の国家試験のときは、ほとんど国家試験勉強はしないで、そのまま実習をやりながら、医者になったものです。今はあまりにも細かいところまで聞く、要するに「何とか学」を聞いてしまっている。大学院生がやるような、「何とか学」を聞いてしまっている国家試験のために、大体、受験勉強に走っている。そういうことがなくなれば、シームレスにStudent
Docterという制度をやればできると思います。今はプライマリ・ケアのみです。某先生がプライマリ・ケアできるようになったと。当たり前です。プライマリ・ケアしか教えていないのですから。ですから、診察ができるようになったというのは、当たり前の話で、こちらは何にもできない。行政官にもなれない、基礎研究者もいない、専門医もいない。アメリカの場合は、先ほど桐野先生がおっしゃったように、卒業してすぐにマッチングというのは、ハーバードの学生はカリフォルニアの脳外科へ行くと。そういうのがマッチングです。これはもちろん残しても構わないと思います。名前は何でもいいのですが、プライマリ・ケア医はもちろんいてもいいと。これを強制してしまったから、すごく問題だと私は思います。Student
Docter制を実質やったのは、山形大学が日本で最初です。これはOSCEとCBTに合格した学生に医行為をさせるということです。ですから、これをStudent
Docterが検査、処置をやりますとできてしまうわけです。今日は時間がありませんので出しませんが、ほとんどできています。
まとめとしては、個々の研修プログラムに弾力化を図って、研修医の将来の種々のキャリアの円滑な接続、研修施設の特色ある研修、卒前・卒後の一貫したシームレスな医師養成システム。これをあそこで切ってしまうからいけないのです。大学病院等の地域への医師派遣、養成機能の強化。これをやらない限り、なかなか循環型になりません。今や、東京に一極集中だけではなくて、例えば秋田県であれば、今の若い人は秋田市に居たくなっているのです。横手に行くのも嫌になっているのです。要するに、この制度の本質がモラルハザードを起こしてしまったのです。この制度を根本的に見直さないと、日本は今、世界一の医療レベルを保っていますが、これから落ちていくのではないかと。事実、ゆとり教育のあと、日本の小学生、中学生の学力レベルは、エビデンスとして落ちたのですから。これから医療が落ちていく可能性は十分あります。臨床研修医受入病院のあり方を見直していくことをやらない限り、良いものはできてこないのではないかと思います。
声が大きい科が必修というような問題ではなくて、先ほど森田先生がおっしゃったように、全身管理をケアできる医者を、学生のうちに作れると思いますので、我々の時代には吉利和先生のトリアージの本を読んで、大体ほとんどできたものです。学生数も増えているということで、学生の質も変化していますが、今、高久先生にCBT(コンピュータ・ベースト・トレーニング)を作っていただいたので、非常に全国の大学の教育レベルはスタンダダイゼーションしていますから、そういう点では私はやれるのではないかと思っています。以上です。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。委員の先生から御意見や御質問はございますか。いろいろ日本の医療の将来について御心配の点は、我々も共有するところがあるのですが、起きるのではないかというのと、本当に起きているのかというのが判然としない。例えば、研修医の都市部への集中ということをよく言われますが、実際は東北地方をとっても、各県の研修医数は、研修制度が始まった以降、ほんの少しですが総数は増えているので、確かに、大学と市中病院とのシフトが起こったことは事実であろうと思うのですが、今度は研修が修了した後に、大学のある都市部に戻ってきているのが、現在の現象です。そのために大学は非常に辛い思いをされたことは事実だと思います。そこは今後徐々に変わっていく可能性があると思いますし、研修制度が研究医の数を激減させたということについても、研究者になりたいという方が減っていることは、既に2000年の初めぐらいからずっと言われていたことで、PhD化が急速に逆の現象として起こっているということです。ですから、確かにいろいろな御心配は本当にもっともだと思います。本当に起きていることと、まだまだ心配だということとは、ちょっと違うことだと思います。
○嘉山参考人 桐野先生は昔から非常に鋭くて、そういうことをおっしゃられて、私もずっと先生とディスカッションしてきました。例えば、地方で少し研修医が増えていると言っても、それは循環型で回っているのではなくて、200とか300ベッドのほとんどが点滴医です。点滴を刺しているだけです。学会にも来ない。もちろん、研修会にも来ない。それだけで生活できるのです。そういう人は増えています。ただし、日本の医療を支えてきたような、1本、内視鏡ができて、別に大学でなくても、市中病院でもいいのですが、そういう医者としてのクオリティーがすごく高い人が開業するわけです。そういう人は、今、若い人の中にはほとんどいません。そのことを数字で出せと言えば、幾らでも出せますが、ただの数字で見ると、先生がおっしゃるようなことになっていますが、そうではない現象が起きているので、私は病院を回っていますから、実感として非常に危険だなと思っています。
○桐野部会長 河野先生、神野先生、お願いします。
○河野委員 嘉山先生の御意見は、個人的な感覚としては非常にもっともだと思っております。例えば、今、臨床研修制度をなくしたとしても、学生たちは、今の配置の問題等で大学には戻らないと思うのです。要するに、彼らの中でまた違った付加的なことが起こっている。そうしますと、先生の最後のところでも、一定の強制力というか、制度的なものがないと、恐らく、現場で困っている問題点の解決にはならないのではないか。確かにこうあるべきであろうという「べき論」は、幾らでもできても、結局、先ほど桐野先生がおっしゃられた心配と、現実で起こっていることを変える力にはなかなかなり得ないように思うのです。そのことについての質問が1点です。
もう1つは、前の議論で、2年間どこの科という議論をしていると、外科や麻酔科が重要なのは申すまでもないことです。これは当たり前ですが、2年間で全てというのは無理ですよね。
先ほどから外科系の先生の御発言が多くて、私は小児科なものですから、今の卒業生に対して見ていると、テクニックなどに走って、病気というものを余り理解していない感じがします。そのときに、全身管理のテクニック的なことを、まず2年間で、最初のプライマリ・ケアでできることを教えるのか、あるいは将来に備えて、病気というものをどうあるべきかということを教えるのか、ある程度視点を定めないと、2年間という期限で全部、いわゆる内科的な病気の考え方、アプローチの仕方、そういうことをしっかり教えるという考え方と、患者が目の前に来たら、病気を分かっていても、何も手が出せないのではしょうがないということは、もちろんあるわけで、その視点をしっかりしないといけないのではないか。
それと、到達のところで、初期研修医というのはある部分はスタートだと思うのです。ですから、外科も麻酔科も、2年間で出来上がるわけではない。私は小児科で、研修医が小児科にも来ますが、初期研修でやった人間が、将来小児科の子どもを診れるかと言ったら、全然診れません。ただ、何らかのところで経験が少しでも役立たないかというレベルだと思うのです。ですから、何を目指すのか。2年間で、もし麻酔科に3か月間行っても、将来、その先生が小児科に来て、1人で麻酔をかけることはあり得ないと思うのです。ですから、その辺りの議論も、順番をちゃんと具体的に設定して、どうするかを考えていかないといけない。これは2年間では議論がまとまらないのではないかと思います。
○嘉山参考人 ちょっと先生がお話をスプレッドされたので、集約していただきたいのですが。まず、大学になぜ戻らないのだろうかと。
○河野委員 先生にお伺いした最初の2つで、まず、今後の実行に移す手立てとして、先生は具体的にどのようにお考えですか。
○嘉山参考人 私は今の制度ではなくて、卒後研修はやらなければいけないと。しかし、それはジェネラルフィジシャンに行ってもいいし、麻酔科へ行ってもいいというコースにすべきだと思うのです。
今のプライマリ・ケアを2年間でやっている内容は、先生も言われたように、小児科に来たからと言っても小児科はできないよと。私の家内も小児科なのでよく分かっていますが、それは小児科をやりながら、小児科で育っていくわけです。しかし、トリアージはできなければ駄目です。ですから、それは今の学生教育の中でできると、全国医学部長病院長会議は考えています。ですから、シームレスに医行為を中に入れていれば、今の2年間よりも、もっと短くてもできるだろうし、やらなくても済む人もいるだろうと考えています。
あと大学に戻らないだろうというのは、子どもたちはメディアの雰囲気で全然変わります。例えば、私が東京に出てくる前は、地方国立大学ですが40人大学に残って、県内に30人残って、全部で70人残ったのです。そういうときもあれば、誰かキャップが「東京へ行ったほうがいいぞ」なんて言うと、ワーッと流れるのです。ですから、子どもたちは判断材料がすごく弱いのです。たった1つ言えるのは、先生も国立大学の教授ですからお分かりのように、ほかの病院と比べると、我々は教育職なので、今、奥さん方は非常に強いから、大学の教官の処遇が悪過ぎるのです。それは大きいです。昔は、そうではないというか、いろいろなことがあったのですが、今は悪過ぎるので、そのことをちゃんと文部科学省が医療職として扱うという立場をとれば。アメリカは逆ですから。ハーバードの教授のほうがずっと高いので集まるのです。そのことをやれば、大学にまた戻るのではないかと思います。2点目は何でしたか。
○河野委員 もう1つが、初期研修の目的として、先ほど言ったプライマリの技術的な部分、医者ですからすごく大事だと思うのです。それを教えるべき2年間なのか。あるいはその次の専門性、いろいろな分野に分かれていて、広域研修のための病気のあり方を、しっかりと全体として教えるべきなのか、ということのお考えはいかがでしょうか。
○嘉山参考人 私は、誰でも最初の2年間で全身管理が全部できるなんて、森田先生も思われていないと思いますし、私も思っていません。ですから、症例で先輩たちから教わって、だんだんと分かるわけで、2年間という期限は、生涯教育ですから別だと思います。しかし、あの2年間でプライマリ・ケアをやる人たちは、研修制度を使ってやればいいわけです。脳外科をやる人は、そこへ行って併せて全身状態を診ます。脳外科の患者さんは特に意識がないですし、外科も動けないので、栄養から何から全部みなければいけないと思います。腎臓から肝臓から、我々もそういうのは勉強します。
そういうことでいいのではないかと思うのです。この制度は残してもいいのですが、強制しないでやっていただきたい。その中でいろいろなバリエーションがあってもいいと思うのです。先生のように、小児科というのは、全てのフィールドがありますよね。これは内科の集まりみたいなものですね。そういう科もあれば、耳鼻科みたいに、これだけに限っている所もあるので、各人が全身状態を一緒に勉強していくということでいいのではないかと思います。ただし、トリアージは内容を見れば、学生のうちにできます。
○神野委員 まず1つは感想的な意見です。今の若いドクターたちが都会に住んで、9時・5時がいいというのは、これは臨床研修制度の問題なのか、それとも医学部以前の問題なのか、そういうところから考えなければいけないと思いますし、同じように、今、研究者が少ないという話も、先生がおっしゃったことは大賛成ですが、これは臨床研修制度の問題なのか、研究者の処遇が悪過ぎるというのが大きな問題なのか、ということをはっきりすべきではないかと思います。
○嘉山参考人 今までも、例えば、我々以外にも、別にアカデミアでなくてもプロフェッショナルな職業はありますが、そういう所でも、将来が見えれば、最初処遇が多少悪くてもそこで修業をします。ところが、最初の2年間で、自分の先生より高いお金をもらって、帰れるのですよ。働かせてはいけないというのが最初の制度ですから。これだけひどいモラルハザードの制度を作ったということは、やはり大きいと思います。
先生がおっしゃるように、ほかの職業も9時・5時で帰って、東京に住みたいという人は多いのですが、それでも日本の医者は、少なくとも数年前までは将来があったので、留学してノーベル賞を取ろうとか、そういうことはあったので、やはり、職業として当然あっても、医療という職業は、みんなと同じではないと思うのです。誠意の固まりですから。そういう意味では、モラルハザードを何とか元に戻していただければ、今よりはひどくないのではないかと思います。
研究職にしては、高等教育の費用は、GDP費で世界最低です。この国は、医療と福祉と教育にお金をかけない国ですから、それを何とか国民にきちんとした情報を与えていただいて、財務省からお金を頂ければ、ちゃんと正常化するのではないかと思います。それは我々の役割だと思います。
○神野委員 同様に、例えば、今、大学病院のほうが教官の数はたくさんいらっしゃいますし、新しい機械もたくさんあるし、あるいは基礎の先生に聞こうと思えば、いろいろなことが聞けるということで、良い面がたくさんあるにもかかわらず、臨床研修医に行かないとするならば、今度は大学の魅力というか、そちらが非常にあるのではないかと思います。
それは、実際に弾力化プログラムが入ったのが平成22年で、今年の卒業生はどうなるか分かりませんが、昨年、2年間の卒業生が出たわけです。その人たちは、弾力化プログラムが始まったのだけれども、大学に残る人が少ないという、平成24年の初期臨床研修の卒業生のデータが出ております。そうすると、大学の魅力というのも、もう1回考えていただかなければいけないのかと思います。
○嘉山参考人 やはり、私はモラルハザードを起こしてしまったのだと思います。イージーなほうに完全に行ってますよね。昔から医者はイージーなほうに行かないで、特に我々の頃は、難しいほうにチャレンジしたのですが、我々、医学部の学生だけではなくて、全部、ほかの分野の子どもたちもイージーなほうに流れています。更にこれが後押しをしたのだと思います。なぜかと言うと、モラルハザードを作ってしまったのですから。もう1回、我々の職業は、本当に人に誠意を尽くしてやる仕事だということの原点に戻るようなことをしないと、やれ月給だ、ワーク・ライフ・バランスのワークではなくて、「ライフ・ライフ・ライフ」になってしまっている。我々は手術を5時に止められませんから、そういう訓練は絶対に必要なのです。それはいいよと言う大人。ここで教育はたじろいではいけないです。たじろがないで、子どもたちをちゃんと教育する。大学が嫌なのは、そういうほかのファクターだと思います。
○森田参考人 大学が卒後研修に向いていないのは、全くそのとおりです。大学は先端医療をやっていますから、大学でプライマリ・ケアを教えるのは、もう不可能に近い。ですから、私は病院長のときは、大学での研修はいらないので外で研修をしてくださいと言ったのです。大学で、卒後研修に関して魅力がないのは当然だと思います。それは提供できないわけですから。しかし、大学は魅力がない、魅力がないと言われましたが、決してそうではないです。それは、この研修制度は何を崩壊させたかと言うと、大学の医療を崩壊させたわけでも何でもありません。大学の医療はきちんとやっていますし、大学の医師数、教官は多いと思います。私の大学でも、卒後研修制度が始まる前の5割の医師が大学で働いています。それは大学にみんな帰ってきて働いているわけです。
それは、何を崩壊させたかと言えば、医局制度を崩壊させた。つまり、今まで全ての卒業生は、医局がほとんどキャリアを管理していました。それが、みんな自由になったわけですから、嘉山先生が言われるように、キャリアに責任を持つ人が全くいなくなったわけです。ですから、大学に帰ってくる人以外は、みんな自分の医師の能力を判定する人がどこにもいません。自由にやっています。ですから、医療が崩壊していったというのは、嘉山先生の主張だと思っております。大学が決して崩壊したわけではありません。大学が崩壊したのは、外にある医局の病院に派遣する医師がいなくなっただけであって、大学は医師が5割増しです。少なくとも、岡山大学では5割増えています。
そういう増えた医師が地方へ行かないから、地方が崩壊していると私は理解しております。研修制度で一番の問題は、モラルの崩壊と、医師のキャリアに対して責任を持つ人がどこにもいなくなった。キャリアに責任を持つのが、本来、アメリカなどでは学会の人ですが、学会の専門医制度はそこまで日本は機能していません。
もう1つ、私の意見を言わせていただくと、医療は文化ですから、何もアメリカ人を私たちは治療するわけではありませんから、アメリカの制度をまねる必要は全くない、日本の医療はこれだけ優れていると嘉山先生が言われたとおりなのに、私たちはなぜアメリカの医療制度を取り入れようとしたのですかと。医局制度の何が悪かったのですかと。悪い面もありましたが、それは直してそれでよかったのです。それを崩壊させたことに問題がある。大学が決して崩壊したわけではありません。それは私は大学人として、是非、言わせていただきたいと思います。
○中島委員 3人の先生方にお尋ねしたいのですが、全体として見たときに、この制度を残すとしたら、外科系と内科系と総合診療医というような形で、ある程度区分けをして、少なくとも2年目からは入っていったほうがいいと。そういう点については、ほぼ一致されているのでしょうか。
○國土参考人 2年目からは、できるだけ志望科に関する専門研修は始めるべきだと思っております。
○森田参考人 少なくとも、今の医療制度を改革するには、それだと思います。
○嘉山参考人 私はないほうがいいと思っているのですが。そういう時代ではないので、最初はジェネラルを少しやって、あとは希望科に。アメリカは全くそうなのですから、アメリカがやっていることをできないことはないと思います。ですから、アメリカのジェネラルフィジシャンは、日本の開業の先生よりレベルは低いです。それをメディアも分かっていないのです。エンドポイント、生存率とかが示しているのです。ですから、これは先生がおっしゃるとおりでいいと思います。医行為を何とか法的に認めてほしいのです。まだ弱いところがありますので、学生時代の医行為をきちんと認めるということです。
○小川委員 ちょっとだけ追加させていただきます。先ほど嘉山先生の発言の中にもありましたが、要するに、4年生から5年生に行くときのCBTと全国教養試験です。それから、6年生を卒業して国家試験を受ける国家試験と、臨床研修制度の到達目標と、この3つは同じなわけです。ほとんど変わらないのです。そういう意味からすれば、大学にいて、CBTもやった、そして国家試験の勉強もやった。そして、あとどこかの教室に入って、専門的な研修を受けるのなら大学に残るのでしょうけれども、それが5年生、6年生の臨床実習と同じに、どこの科にも属さないで、こうやってローテーションするのなら、大学に来ないです。また同じ顔ぶれを見て、4年生、5年生の教育と同じことを、また2年間やるのかということだったら、ちょっと外へ行ってみようかなとなるのは当たり前なのです。
ですから、実際、外で臨床研修をした学生たちが、いろいろがっかりして帰ってくるところはあります。市中病院へ行ったけれども、確かに風邪とか、コモンディジーズを診ることはできたが、やはり、大学でなければできないことはたくさんあるようだと言って戻ってくるわけです。戻ってくる連中はそうです。あとの半分は、先ほど嘉山先生がおっしゃったようなモラルハザードの中で、埋没していって、結局は指導者がいない、かわいそうなお医者さんになってしまう。
○國土参考人 外科志望者の動きを見ていますと、どちらかというと卒業するとすぐ大学から外へ打って出る傾向があります。打って出るのは良いのですが、大学の外科医局からみて今困っていることは彼らの動きが追跡できない、把握できないという問題です。連絡がとれなけでば適切な進路指導をして上げることもできません。できるだけ初期研修を圧縮していただいてその先、外科を志望するのであれば、最初の段階でキャリアをコントロール(指導)してあげる。そういうふうな形で、2年目以降とセットになるマッチングみたいなものがあればいいのではないかと思っております。
○桐野部会長 研修制度が始まる前の段階では、学部長会議も全国医学部長病院長会議も、これは作らなければならない制度であると。先生のように、リスクがあるというふうに言う人もいましたし、私たちも逆に同じように思いましたが、その当時は、この制度自体は必要な制度であるということで作ったわけです。私が新任の頃、全国医学部長学部長会議で、「この制度は副作用もあると思いますが、いかがですか」と言ったら、「君、今頃、そんなことを言っても駄目だ」と言われて、えらく怒られたことがあります。
それは多分、その当時の医学教育で言えば、今、初期臨床研修制度が目指したようなものが不足しているということで、2年間専門家になるスタートラインを遅らせても、これは米国の卒業生の時点と同じ年なので、ここで十分プライマリ・ケアというか、基本的診療能力の獲得をしてからスタートする、ということでいいのではないかという気持ちがあったのだと思うのです。副作用は、予想以上に強かったことは事実です。そういう意味では、そういう意図で作られた制度であって、いろいろあったけれども、ある程度定着しているというか、これは嘉山先生が言われたように、ゆとり教育化してはならないというのは肝に銘じないといけない、先生が言われたようなリスクは多分あると思うのです。
やはり、ある意味ではそういう意図を持って作られた制度であって、それなりに考えられた制度ではあると思います。
○森田参考人 今、医学教育が6年では短過ぎるということは、皆さんも思っていることで、卒業を遅らせたら駄目ですか。学部教育を8年にすると。大学の卒業を延期するとか。今、教養教育でさえ削っていっているわけです。人間性を削りながら、医師をつくっているわけです。
○桐野部会長 むしろ、卒業までには、リベラルアーツとか、そういうほかの教育もできるような形にして、卒業試験の国試の負荷をもう少しリーズナブルにした上で、初期臨床研修制度を接続するものとしてやるという考えもあると思うのです。
○中島委員 飽くまで個人的な意見ですが、私は臨床医になるためには8年間必要だと思います。同じ目標を3度与えられてしまうというのは、小川先生がいつもおっしゃっています。これは同じ目標であっても、チャレンジしてチャレンジして、そしてまたチャレンジする。このチャンスを与えているわけですから、これは良いと思うのです。ただ、8年かけて臨床医になる。基礎の研究に行く人は、6年でよろしいと。こういうふうな全体の大きな制度設計をきちんとしないと、私はなかなかうまくいかないのではないかと思っていたのです。ただ、現在の制度を一応是認した上での2年間ということを考えたときには、今のままのやり方ではちょっとうまくないなと思います。
○森田参考人 現実的に小川先生が言われるように、私どもの麻酔科の教育でも、小さな手術場の中に学生が来ます。その次に卒後研修医が来ます。それから、専門医後期研修医が来ます。3人の教育が違うかと言ったら変わらないのです。同じことを学生と卒後研修医と後期研修医がする。これが現実です。これは是非解消できるような制度にしていただきたいと思います。
○小川委員 先ほど嘉山先生もスライドに出されていたものですが、5年前の第1回目の見直しのときに、臨床研修制度に関する意見の取りまとめが出て、それを受けて、文部科学省で臨床研修制度の見直しを基にした医学教育のカリキュラムの改善に関する報告書が出ているのです。「臨床研修制度の見直し等を踏まえた医学教育の改善について」というのが、平成21年5月に出ています。これはかなり医学生涯教育に原点を持ってきて、臨床実習のうちにできることは臨床実習でできるようにしましょうと。そのためにはCBTを資格化して、5年生、6年生の臨床実習でやれる医行為をもっときちんと拡大しましょうということです。そして、国家試験はCBTと今は同じになっているので、少し変えることを考えなければなりません。そして、初期臨床研修制度も含めて、生涯教育の中で位置付けましょうという、非常に良くできた見直しでした。しかしこのカリキュラムの検討会の意見が出たのですが、これがずっと塩漬けになっているのです。あれから、1つも改善していない。
平成21年からですから、4年間、結局、全く塩漬けで何もされていないのです。ですから、これは厚生労働省と文部科学省が一緒になって作った臨床研修制度の見直しに関する検討会の意見をベースにして、今度は文部科学省のほうに持ち帰って、カリキュラムの見直しをやったわけですから、もう一回文部科学省と厚生労働省が連帯をして、これを具現化するようなことをやれば、かなり改善すると思います。
○桐野部会長 ヒアリングはこの辺りにしまして、議事の2で「基本理念と到達目標について」、これは今、小川先生が言われた内容とも多少関連するし、ほかの、特にヒアリングにお出でいただいた先生方とも関連する内容であります。
まず、事務局から資料の説明をお願いします。
○医師臨床研修推進室長 事務局提出資料1~4まで用意をさせていただいております。これは一通り、簡単に御案内をいたします。
まず、順番が前後して恐縮なのですが、最後の事務局提出資料4、「医師臨床研修部会今後のスケジュール(案)」です。こちらは現段階での今後の見通しで、基本的にはワーキンググループの論点整理の項目に沿って、順次、御議論を賜りたいと考えています。したがいまして、本日はこの枠で囲った部分、本日の日付になっている部分の項目にについて主に御議論いただきまして、次回以降、この枠の部分が漸次、下に降りていく形になります。右上にありますように、「適宜、関係団体からのヒアリングを実施」、とされておりますので、早速、本日、3つの団体のヒアリングを行っていただいたところです。
また、この一番下にありますように7月以降は最終的な報告書の取りまとめに向けて御議論いただいて、できれば8月から9月を目途に少なくとも主立った論点につきましては具体的な方針を固めていただきたいと考えています。
資料、お戻りいただきまして、事務局提出資料1、「基本理念と到達目標等に関する論点」です。本日以降、この資料をもとに、主に御議論を賜りたいと考えています。この資料の体裁ですが、基本的にはワーキンググループでおまとめいただきました論点整理を踏襲しまして、それぞれの論点に本部会での主な御意見を挿入する形で整理をしています。もちろん、最終的には各論点ごとに、主な御意見ではなく具体的な方向性を書き込んでいく形で取りまとめていただくことになりますけれども、現段階では本部会での主な意見、もっぱら前回の部会でのフリートーキングの中でいただいた御意見を記載しているところです。
それでは、その主な御意見を中心に一通り御案内します。まず、1つ目の大きな項目として「基本理念と到達目標について」です。1)基本理念につきましては、このページの下にある本部会での主な意見としまして、卒前教育や専門医研修なども含め、当部会としてどこまでをどういう方向性で議論するのかについて、一定のコンセンサスを得ておく必要があるのではないか。現在の臨床研修制度導入以降、少子高齢社会、在宅や認知症などがこれまで以上にクローズアップされており、また三次救急の病院等に患者が集中し疲弊してきており、これらの問題に適切に対応できる医師の育成が社会から求められている。国民のニーズに応えられる医師の養成が重要であり、臨床研修では、どの分野にも共通する基本的な部分(ベース)は押さえておく必要がある。その意味でも現在の基本理念は外すべきではないのではないか。本来、医師は、一生勉強を続けていくべきであり、どこかがそれをシステムとして担保しておく必要がある。臨床研修は、そのようなシステムの入口であるという意識を持つ必要がある。見直しを議論するにあたっては、臨床研修制度ができた発端を念頭に置く必要がある。臨床研修制度の導入が、大学病院が担ってきた地域の医療機関への医師派遣機能を低下させた、また、研修医が都市部へ集中する傾向があるといった問題を、前回の見直しでは十分に解決できなかったのではないか。
2ページで、医師の偏在は大きな問題であるが、地域枠の設定や地域医療支援センターの設置など都道府県内に定着を図っていく取組が行われており、また、専門医の在り方についても別途検討されている。このような状況の下で、臨床研修制度は、基本的には現在行われている方向で検討することが適当ではないか。臨床研修制度の導入により、地域偏在が加速したという意見を否定するものではないが、だからといって、臨床研修制度自体が悪いとは言えないのではないか。ストレート研修によって非常に専門に特化した医師が増え、日本の医療が少し偏っているのではないかという指摘があって臨床研修制度が始まった。また、研修病院の選択度が高まったことにより、研修医が都市部に偏在していることも事実だと思うが、以前のような大学による派遣体制が世界標準という訳でもない。これらの状況を踏まえた上で、具体的な方策を考えていく必要があるのではないか。必要に応じて、関係者からヒアリングする必要があるのではないか。
2)到達目標とその評価につきましては、3ページの上で、臨床研修の2年間はそもそも「病気」とは何なのかという基本を学ぶべきものという視点が重要ではないか。また、研修修了時に、何が達成できたのかの評価が重要ではないか。ただし、研修制度の見直しの中で医師の配置の話をどこまですべきかを考えるのは非常に難しい。
4ページの3)で、臨床研修全体の研修期間につきましては、特に部会では御意見がありませんでした。5ページの大きな2つ目の項目として、「基幹型臨床研修病院の指定基準について」です。1)研修プログラム、?の研修診療科につきましては、中ほどに本部会での主な意見として、今回の制度の見直しにあたっては、前回(平成21年度)の見直しの評価をした上で議論する必要がある。例えば、前回の見直しによりプログラムの弾力化なども行ったが、結果的に大学に行く研修医は増えなかった。現在は、マニュアル化されていて患者の気持ちが分からない医師が出てきたという面もあり、精神科の研修が足りないことによるものであるため、精神科を必修科目に戻すべきである。
6ページの?各研修診療科の研修期間については、特に意見がありませんでした。
ここまでが今回、主に御議論をいただきたい項目でありますけれども、これ以降の項目につきましても関連する項目も含め言及いただいて差し支えないため、一通り御案内をします。
2)必要な症例につきましては、7ページ中ほど、プライマリ・ケアや診断能力を高めるためには、現在の指定基準にあるような必要な症例数という数の話ではなく、研修医が、様々な病気を様々なフェーズで診られるような状況を作ることが重要ではないか。
8ページの3)指導・管理体制につきましては、その中ほどです。現在の臨床研修は、様々なところをローテーションするため、ヒューマンコンタクトが希薄になっている。どこかが長期に渡って責任をもって育てるようなシステムを作る必要がある。臨床研修制度上は、責任を持って研修を行うためのプログラム責任者という役割が位置付けられており、このような仕組みを成熟させていく必要がある。
4)募集定員の設定につきまして、?募集定員の設定方法につきましては、特に御意見はありませんでした。
10ページの?地域枠への対応につきましては、11ページの一番上の部分です。地域枠も様々なタイプがあるが、その取扱いについて、きちんと設計しておく必要があるのではないか。
11ページの下、5)研修医の処遇等の確保につきましては、前回、特に意見はありませんでした。
12ページ、6)その他、そのうちの?臨床研修病院群の形成につきましては、前回は特に御意見はありませんでした。
13ページ、?第三者評価につきましては、その少し下の部分ですが、第三者による評価をどのようにしていくかについても念頭に置いて議論する必要があるのではないか。
14ページ、?都道府県の役割につきましては、中ほどの部分ですが、本部会での主な意見として、都道府県の役割について議論する必要がある。
15ページ、?制度運用上の問題については、特に御意見はありませんでした。
それから下の大きな3番目で、「中断及び再開、修了について」ですが、これは16ページの中ほど、本部会での主な意見といたしまして、中断者、特に女性の中断者の扱いについて丁寧に議論する必要がある。女性医師への対応、妊娠、出産後の育児のサポート等は大変重要である。出産等に関連して現在の休止期間(90日)との関係も議論が必要ではないか。研究医との関係も踏まえると、中断を積極的に行う場合を想定し、一定期間は基礎研究へ行って、再び研修に戻ってくることができるような制度設計も考える必要があるのではないか。中断に関連して、ローテーションで環境が変わるときに、適応しやすい人と全く適応できない人がいる。環境に適応できない人が必ずしも医師に向かないという訳ではないため、何らかの検討が必要ではないかと。
17ページ、4の「その他」、1)地域医療の安定的確保について。この項目につきましては他の複数の項目に通底をします。考え方としての性格でありますから、いわば各項目に横串を刺す形になります。したがいまして、御意見も全てこれまでの再掲として整理をさせていただいており割愛させていただきます。
18ぺージ、2)研究医養成との関係につきましては、前回、特に御意見はありませんでした。
19ページ、3)関連する医学教育等につきましては、一番下の部分で、現在は、医学部でのCBT、国家試験及び臨床研修の到達目標の内容が同じで、ある意味、同じ評価が3回行われている。卒前教育との連動、臨床研修後の生涯教育との連動についても議論が必要ではないか。主に以上のような御意見を前回、賜ったところです。
続きまして事務局提出資料2です。「各論点に係る参考資料の概要」です。参考資料につきましては大部に渡るため、今回から、御案内したとおり別冊のファイルを各委員にお配りしています。このファイルは毎回、部会終了時に回収させていただきまして、繰り返し同じファイルをお配りしたいと思っています。また、各論点に関連する資料について、その都度、御覧いただくということになると非常に煩瑣になりますので、事務局のほうでこの当該資料やデータにつきまして、その趣旨を端的にこういうペーパーとしてまとめてみたものです。詳しい中身については、それぞれの項目の末尾に括弧書きで付記をしておりますので、そちらを御覧ください。
1.基本理念と到達目標につきましては、1)基本理念、2)到達目標とその評価につきまして、全体の満足度につきましては、入院患者における研修医への満足度については、入院患者のおおむね90%前後が「とてもよい」「まあまあよい」と回答しております。特に年間新規入院患者数が3,000人以上の病院、あるいは6都府県所在の病院において有意に満足度が高い傾向にあります。それから、研修医における臨床研修の満足度につきましては、5点満点で4.0(大学病院3.9、臨床研修病院4.2)でして、前年度の調査に比べて全体的に増加傾向です。指導医における臨床研修の評価につきましては、約半数が臨床研修制度を「おおむね良い」と回答しています。改善を要する項目としては、「研修科目、期間設定」「基本的診療能力を身に付けるように見直す」というのが多くて、大病院に偏らず多彩な経験を積むことに重点を置くものと、早く専門研修を開始することに重点を置くものという2つの方向性が見られています。
到達目標の達成度につきましては、EPOCのデータによりますと、平成22年度、すなわち弾力化後の研修医につきましては、平成20年度、すなわち弾力化前の研修医に比べまして、行動目標及び経験目標Aの達成率に低下は見られなかった。小児科、産婦人科関連の経験目標の履修率が低下した。臨床研修病院では、一般外科関連の項目も低下をした。精神科に関連する項目は低下が見られなかった。大学病院、病床数601床以上の病院で満足度が向上した等の結果が見られています。
次ページの「継続プログラム」(7科目必修)と「弾力化プログラム」(7科目必修以外)を比較したところ、基本的臨床知識・技術・態度について「自信を持ってできる」「できる」と答えた研修医の割合は、98項目中12項目で継続プログラムのほうが有意に高いものでした。また、経験症例数は、85項目中11項目で継続プログラムが有意に高かった傾向があります。
EPOCの利用状況につきまして、EPOCは全国の6割の研修医が利用していますけれども、利用していない理由としましては、「入力が煩雑」「リアルタイムに入力できない」等があります。
評価方法につきましては、大学病院及び臨床研修病院において、採用している研修医の評価方法は、「指導医による評価」「レポート」「コメディカルによる評価」の順に多く、「口頭試問」「実技試験(OSCE)」「患者による評価」等は少ない傾向にあります。レポートについて書式を定めている病院は60%です。研修プログラムについて、有効と思われる評価方法は、「履修した研修医による評価」「第三者機関による評価」「個々の病院による評価」「ピア・レビュー」の順に多いです。アメリカ、イギリス、フランスの臨床研修制度においては、研修医、指導医、研修プログラムに対する評価が、コンピテンシーを踏まえ多角的に行われており、特に英国はインターネットの活用が進んでいる。
臨床研修全体の研修期間については、指導医における最適な研修期間に関する評価としては、「2年以上で1年程度必修」というのが約半数と最も多かったです。
それから指定基準につきまして、まずは研修プログラム中の研修診療科についてですが、研修医に、「研修を行った各診療科が、基本的な診療能力の習得に役立ったか」と尋ねたところ、全診療科の平均は、5点満点中4.2点でして、必修科目につきましては、内科系4.4ポイント、救急4.3ポイント、地域医療4.1ポイント、選択必修科目は、外科系で4.2ポイント、麻酔科4.3ポイント、小児科4.1ポイント、産婦人科3.9ポイント、精神科3.8ポイントでした。指導医における必要と考えられる研修科目につきましては、地域医療、救急、総合診療科、内科の割合が高く、病理科、眼科は低い傾向にありました。
研修前後における将来希望する診療科につきましては、研修の前後での変化は、内科系、麻酔科、精神科では、研修修了後に希望者の割合がやや増加する傾向です。一方、外科系、小児科、産婦人科、救急科では研修修了後に希望者の割合がやや減少する傾向にありますけれども、30代医師、あるいは全医師数における各診療科の医師の割合と比較すると多い傾向にあります。それぞれの診療科を選んだ理由としては、「やり甲斐がある」「学問的に興味がある」「何となく相性が合う」の順に多く、1年前の調査と比べて大きな変化は見られません。
各研修診療科の研修期間につきまして、ローテート期間につきましては、7科目必修であった1年前と比べ、必修科目である内科、救急、地域医療がやや増加する傾向にあり、選択必修である外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科はやや減少する傾向にあります。指導医における最低必要と考えられる研修期間の評価につきましては、3か月とするのが最も多く、内科、外科、麻酔科、救急科、総合診療科で期間が長い傾向にありました。
続きまして最後、「資料3の研修プログラムの状況について」、カラー刷りです。これまで本部会において御指摘ないし御要望のあったデータのうち、本日までに用意できたものをお示しします。上のほうは弾力化後のプログラムの内容について各都道府県ごとの内訳を集計したものです。制度の見直しによる弾力化後も7科必修としているものと、弾力化を踏まえて必修科目を減らしているものの割合については、都道府県によって大きく異なります。一番左ですが、全国的には7科必修と3科必修、それ以外がちょうど3分の1ずつとなっておりますが、例えば中ほど、富山県では90%以上が3科のみの必修になっていたり、一番右側、沖縄県では80%近くが7科必修となっています。
下のほう、臨床研修修了者アンケートの調査結果ですが、前回の部会におきまして、弾力化の前後における各診療科の平均ローテート期間につきまして円グラフでお示ししてきましたけれど、体裁上、非常に見にくいため、改めて棒グラフで同じデータをお示しするものです。上、平成23年が平成21年4月から平成23年3月までの研修ですので、弾力化前の7科必修のときの研修医の関係です。下、平成24年、これが弾力化後の3科プラス2科選択必修にした場合のローテート状況です。色分けをしておりますので、これを参考に御覧いただければと考えています。事務局からは以上です。よろしくお願いします。
○桐野部会長 前回もお話があったように、論点については、堀田先生を座長とする卒後臨床研修の評価に関する委員会でかなり長時間に渡って議論されている内容がまとめられたものでして、その議事録も10回に渡って公開されており、読むのも大変ですけれども、かなり様々な問題について議論されたものをまとめていただいたということです。最終的にはここで部会の意見としてまとめていかなければならないということですので、まず、基本理念について御意見を頂きたいと思います。
○山下委員 基本理念に関連して、資料のことですが、桐野先生が班研究されたものは、この中に入っているのですか。要するに、それを評価するというときに、桐野研究班では、ある程度終わって専門をやっている人たちの検証をしたというものを、厚生労働省はプライマリなデータとしてお持ちのはずです。実は私は入れていただいたので把握しているのですけれども、例えば到達目標の考え方、臨床研修の期間の考え方というのは非常に重要なポイントがありますし、並行して全国医学部長病院長会議でも同じようなことをやっております。これは情報として非常に大事ですので、最終的な扱いは桐野先生の御判断だと思いますが、提案いたします。
また、基本理念のことで、ちょっとはみ出た議論をして申し訳ないのですけれども、先ほどの参考人の先生方の考え方というのは、基本的には到達目標にどのように到達するか、どのように実現させるかという議論を、もうやりなさい、変わっていますと、小川先生も同じようなことをおっしゃいましたし、先ほど小森先生や中島先生も全部同じようなことを言われたのですけれども、何とかの科という考え方でいうと、うちも入れてで2年以上になってしまうという非常に不毛な議論になって、あとの議論に全部響いてくるのです。到達目標は理念とペアになっているものだと思いますので、私の基本的な意見を述べさせていただくと、全身管理がきちんとできる、トリアージといいますか、きちんとした臨床的な判断ができる、そのようなことを目標にする。
そのためには、例えば脳外科にいても、外科にいても、麻酔科にいてもいいですから、いろいろな症例を経験する。森田先生からもあったように、小児の麻酔もできる。入院中の人の精神的なケア、今、眼科では高齢者が非常に多くて、結局は精神科の先生と一緒でないと診療できないのです。ですから、そういった症例に、ベースにオリエンテッドで到達目標があって、それによって基本理念としてはプライマリ・ケアでいいのですけれども、そのような考え方で積み上げていかないと、恐らくあとの議論が全部続かなくなってくる。プログラムも続かなくなってくるし、どのような病院で何を経験するかという議論も条件闘争のようになってしまいますので、まず、そのようなことを提案したいと思います。
○河野委員 ただいまのことは大事な点だと思います。先ほど述べたことに関連して、今のプライマリ・ケアについて教えていただきたいのですが、プライマリ・ケアの定義といいますか、例えば小児科のプライマリ・ケアと脳外科のプライマリ・ケアは違うわけですから、いろいろな議論が出てきてしまうわけです。今、どのように表現していいか分からないとか、全身管理といったようなことは、もう少し具体性を持った言葉にしないと、各科ごとにプライマリ・ケアが必要ではないかという議論が、どうしても繰り返されるように思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。先ほど先生がいろいろと議論されて、プライマリ・ケアの定義というか、その辺も議論されたのではないかということも含めてお聞きしたのです。
○山下委員 私はそれは変えるべきだと、河野先生のおっしゃるとおりだと思います。例えば、何々科のプライマリ・ケアと言い出すと、それを積み重ねてきたのが今までですから、そうではなくて、例えば全身管理をする、嘉山先生が言われたトリアージができると。その時点でどのような専門医に、どのような形で診せればいいのか、このことができるようになれれば、その後いろいろな科に行っても全部使えるわけです。私は眼科ですから、かなり狭い範囲を診療しますけれども、初期臨床研修を通ってきた人たちは、これは小児科に必ず診せなければいけないなどの判断ができるようになるわけです。私が思っている、いわゆるプライマリ・ケアの考え方は、やはり全身管理がきちんとできる、全身を診ることができて、しっかりとした診療、判断ができるような能力を持つことを目指すべきであり、それに到達目標がくっ付いていくべきだと思っております。
○河野委員 プライマリ・ケアというのは非常に使いやすいのですが、漫然として分かりづらい言葉なのです。そこに何かもう1つ付加する、コメントを付けるか、解説をしたほうがいいように思うのです。
○中島委員 山下先生が言われていることはごもっともですが、それプラス、患者さんとのコミュニケーション能力がなかったら、幾らトリアージができても、幾ら紹介できても駄目なのです。必ず不満が起こってくる、ここがポイントですから、このことを外さないようにやっていく必要があるのではないかと思っております。
○桐野部会長 基本理念自体は、先生が言われたようなことも含めて、随分議論されてきたことだと思うのです。前回の見直しのときも、基本理念についてはいろいろ検討があって、確かにもう少しうまい言い方はないかと思うこともないわけではないですけれども、それなりに磨かれた文章であって、先生が言われたようなことも、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応するためには、ある意味では全身的な知識がどうしても必要になるし、そのような意味では全体をぼんやりとカバーしている文章ではあると思うのです。見直しのときは、この文言自体は一応置いておいて、到達目標の議論をしたほうがいいのではないかという感じだったのですが、いかがでしょうか。
○小川委員 先ほど述べた臨床研修制度の取りまとめの意見の中に、「医師の臨床研修制度は、より良い医師の育成を図るために、医師としての人格のかん養とプライマリ・ケアの基本的な診療能力の獲得を基本理念として、平成16年に義務化された」とあります。平成16年に義務化されたときの、その基本理念は「医師としての人格のかん養とプライマリ・ケアの基本的診療能力の獲得」という文言なのです。ですから、そこにこれが出てくるのは当たり前なのですが、先ほど河野先生や皆さんが言われたように、プライマリ・ケアと言っても、多分、ここにいらっしゃる先生方全員がプライマリ・ケアに対するそれぞれのイメージを持っていて、それが全部違いますから、この段階で定義をしないとまずいのではないかと思うのです。また、中島先生が話されたことに関してですけれども、「より良い医師の育成を図るために、医師としての人格のかん養」というところに、結局コミュニケーション能力も全部入れられていたわけです。それを具体的に表現するか、しないかということだと思うのです。
○桐野部会長 そうでしょうね。これを文章としてもう少し具体化するかどうかというのは、細かく言うと、結構大きな作業になってしまって、どうでしょうか。
○小川委員 そうです。大変なのです。
○桐野部会長 もちろん、今日1回で決める必要もないですし、今の小川先生の意見も含んで、これからそれほど著しく飛び離れた文章になるとは思えないのです。
○小川委員 そうとは思えないですね。
○桐野部会長 改善点については、仮に具体的な提案があって、こういうのも考えてはどうかというのがあれば議論することにして、1つずつ進めていかないと回りませんので。
○小川委員 提案ですけれども、ここで議論していても回りませんので、このカギ括弧の間の文言について、どのような文言を入れればいいか、このままでいいかどうかなど、次回までに委員の皆様からアンケートを取ってはどうでしょうか。
○桐野部会長 そうですね。「医師としての人格をかん養し」というのも、実に不思議な文章で、先生が言われたことは、多分ここに意図として十分入っているのだろうと思うのです。
○小川委員 入ってはいるでしょうね。
○中島委員 もうそれでいいのではないですか。
○神野委員 下のほうの診療能力のところに、態度もあります。
○桐野部会長 態度もありますね。
○山下委員 ちょっと質問してもよろしいですか。資料の中に「臨床研修の基本理念」というのが書いてありますが、ここにはプライマリ・ケアという言葉はなくて、こっちに書いてあるのです。要するに、この資料のずっと後ろ、到達目標というタグが付いている2ページです。プライマリ・ケアという言葉を外したのは非常にいいなと思って見ていたのですけれども、これはミスですか、それとも意図しているのでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 基本理念には言い方として2段階ありまして、1つは厚生労働省令で、正確に法令としてうたっている言い方と、それを踏まえて局長通知、施行通知でうたっている言い方と、同じでないところが若干あります。省令では今の部分がどのように書いてあるかと言いますと、「医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず」云々とあって、「一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付けることができる者でなければならない」ということで、プライマリ・ケアという言葉は使っておりませんが、これを施行する際の施行通知の中では、提出資料1の「現状」にあるように、「一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身に付けることのできる者でなければならない」としております。
○桐野部会長 これは実際に現場で教育をする先生方に対しての理念の文言としては、どちらがバリッドであるか。つまり、どちらを使うことになっているのでしたでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 基本的には施行通知のほうで、中は制度の解釈を分かりやすくお示ししているという趣旨ですから、先生方あるいは現場の先生方は、まずは施行通知で、制度も解釈も含めて御覧いただくということです。
○桐野部会長 そうすると、基本理念の原案というか原文はこちらであって、その解釈を含めた文章は、こちらだと。
○山下委員 確か、これは国会の議論か何かで入ったのですよね。それは承知しているのですけれども、はっきり言いますと、このプライマリ・ケアを入れたからこそ、分からなくなるのです。小川先生が言われたように、皆さんのプライマリ・ケアに対する概念は全部違うのです。これを議論するというのは、制度の基本に関わることなわけです。要するに、2ページに書いてあるほうがすっきりしているのです。これがベースであって、どのように到達目標を決め、病院でどのようなことをやらせるかを考えるときに、なぜだか分かりませんけれども、訳の分からない言葉が入ったのです。嘉山先生が言われた言葉なのですが、私は昔から「ファースト・エイド」が一番いいと思っているのです。プライマリ・ケアという言葉にしても何にしても、それを付けることによって、かえってみんなが非常に混乱するので、この際変えられるのであれば、こちらに変えたほうがいいと思っております。
○小川委員 こっちというのは、どちらですか。
○山下委員 プライマリ・ケアのないほうです。基本的な診療能力というのは、それもぼんやりしていると言えばぼんやりしているのですけれども、変に箍をはめない分、いろいろな議論ができるように思います。プライマリ・ケアに合うものか、合わないものかということで到達目標を決めていくとなると、かえって議論が矮小なものになるような気がします。
○小川委員 そのとおりだと思います。こちらの基本理念の、「頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう」というところが非常に重要なところで、いわゆるトリアージがきちんとできるということでもあるし、ここにファースト・エイドなど全て入っているので、ある意味、こちらのほうがはっきりしています。
○神野委員 山下先生、この括弧はどうしますか。括弧の態度、技術などは。
○山下委員 これは到達目標で議論すべきであって、基本理念に入れるような言葉ではないと思いますから、外せばいいのです。
○桐野部会長 いずれにせよ、現状でもプロトタイプで、それに対してこちらが説明を加えた文章になっているということであって、代表の文言というか文章としては、施行通知のほうを一応は使うということですか。
○医師臨床研修推進室長 資料1は、「現状」で施行通知を中心に後ろまで一貫して整理をしております。省令委譲のように法令に限定をすると、具体的な数や名称などが全部入っていない場合があるので、そこの部分も含めて御議論いただくために、「現状」は施行通知レベルで整理しているのです。その関係で、今述べたように省令の正確な言い方と、1対1対応を全くしていない部分も一部あります。そのような意味でも、ここは場合によっては省令の文言を入れて整理することも可能だと思っておりますが、今はそういうことではなくて、施行通知の文言で整理をしているだけの話です。
○桐野部会長 そのような2つのタイプがあるという前提で進んでいって、場合によっては、小川先生が言われたように、文言について御意見があれば、次回ということに。ただ、簡潔な修正があればということでよろしいですか。
本当は終わらなければいけないのですが、30分ほど頂きまして、次に到達目標の議論をしておかないといけないのです。これについては検討会でも、かなり直していかないといけないという意見がありました。ただ、直していくに際して、ここで具体的項目について直していくのは現実的でないし、漸進的、つまり少しずつ手直ししながら進んでいくというやり方でやれないかという議論をした上で、それでいいということであれば、適切な比較的早い時期に、これを検討するワーキンググループを作っていただいて、そこの意見を入れて変えていく。少しずつ手直しをしていくということでどうかという意見ですが、この到達目標については、議論がかなりいろいろあったように聞いております。何か御意見はありますでしょうか。
○山下委員 今日ヒアリングをした3人の方々は、全部同じようなことをおっしゃったように思います。結局、この到達目標を何々科で何々をする、実はこの前からので外れていて、そうはなっていないのですけれども、それを言われたように思います。取りあえず省令にしても、通知にしても、基本理念としては基本的な診療能力ですから、それに応じた形で、ある研修プログラムを想定しながら作っていただくことが必要になるかと思います。やはり命に関わることが大事です。どのようなプライオリティからやっていくか、命に関わることからやっていく、そのためにどのような疾患を、どのようにという、やはり全身管理だと思いますし、トリアージで緊急なのか、どうなのか。ある1つの戦略というか方向性を決めないと、これは必要、あれは必要ということでずっと積んでいくと、結局元のとおりになって、ちょっとずつ変わって、どこが変わったのかという話になってしまいます。
結論としては、1つの方向性、要するに全身管理、ファースト・エイドにしても、プライマリ・ケアにしてもいいのですけれども、ものすごく大事なところだけをガバッとやるように変えてほしい。中島先生が言われたコミュニケーション能力、この頃の若い人はコミュニケーション能力が非常に低いので、どのような研修を提案するのかというのをその中に入れてもらえばいいと思うのです。精神科に行けばいいというのではなく、精神科に行って何を勉強するかということのほうが大事だと思うのです。実際問題として、入院している患者さんにしても、外来にしても、コミュニケーションがとれない人はたくさんいますから、どのように解決していくかというのを提案したほうがいいと思っております。
○桐野部会長 何か御意見はありますでしょうか。
○神野委員 ワーキンググループ等でやるということに関しては、大賛成です。今、このEPOCがいいかどうか分かりませんが、いろいろなシステムがあるわけでして、あとで評価する段になったら、評価システムが違うから評価ができないということもありますから、是非、国としての標準化といいますか、統一システムということで御諮問をいただければと思います。
○桐野部会長 これは具体の話になり過ぎるかもしれませんが、仮に検討を始めるとして、ワーキンググループを形成したとして、1回目の改善案のようなものが出てきて、それを実際に実施するとなると、今度の見直しは平成27年4月からの研修医のグループとなりますが、いつ頃から、その2年後ぐらいからでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 中身の見直しの大きさにもよるのでしょうが、今は平成27年4月からを前提に、先生方には議論していただいております。逆算しますと、実は非常に時間がなくて、ぎりぎりなのです。一方で、到達目標を変えて、細かいことも含めて検討するということになると、少なくとも平成27年4月からは物理的に難しく、間に合わないのではないかと思っております。その場合、見直しの中身によっては1年後あるいは2年後、つまり5年ごとの見直しにこだわらず、1年ないし2年後の研修医から適用することを想定して議論していただくことが可能かと考えております。
○桐野部会長 余り小刻みですと作業が大変ですので、次の5年間の間ぐらいに1回はこの到達目標の大きな改訂を含んで考えた上で、それも相当考えてやる。つまり、これまでのプログラムのいろいろな評価をした上で、数についても今のままでいいという意見もあれば、少しコンパクトにして質を高めたほうがいいという意見もありますので、その辺のところを検討していただくということでしょうか。何か御意見はありますか。
○山下委員 先ほど小川先生が言われたように、文部科学省と厚生労働省と全国医学部長病院長会議で既に三者会談を始めていて、何回かやっておりますので、何人かの方からのお話から、コアカリキュラムとか到達目標が大分ダブっているから、それを考えましょうということをやっているはずです。そのこともワーキンググループには勘案していただかないと、コアカリキュラムをやっている方で、どなたかは忘れましたけれども、またやるのかという話になってきて、全然進歩していないと言われると思います。厚生労働省でも当然そのようなデータは持っていると思いますので、ワーキンググループにはそのようなことも踏まえて、医学教育の進歩のためにここまでやってくれと、むしろ要求するぐらいのほうがいいと思います。
○桐野部会長 いろいろな臨床研究や遺伝子研究などの指針の検討などは、文部科学省と厚生労働省が合同で検討しているということもあって、委員の先生方からは、卒前教育と卒後の臨床研修との間の検討が必要だという意見は確かにありますので、その辺も含めて、文部科学省のほうもお考えいただければと思います。もちろん、今日、御意見を頂いたことはまた戻ってきますし、これで全部終わりというわけではありません。
○中島委員 途中から入ったものですから、私が分からないのは、いわゆる5年前の見直しが一体どのような経緯で、どのように行われたのかというのがつまびらかでないということです。話が順調にいっていたかと思っていたら、突然変わったように外からは見えてしまうのです。その辺りのことについて、やはりきちっとした検証が必要ではないかと思います。また、そのことについての報告もなく、過去の話をいろいろとされても、全く分からないというのが実情ですので、よろしくお願いいたします。
○桐野部会長 平成21年の見直しについては、当時、医療の崩壊が進行しつつあるという危惧があって、それに対して、言ってみれば副作用の治療をしないといけないところがあったので、どちらかというと、スタートしてから比較的早めに手直しをしてしまったということがあったのです。その結果がどうであったかというところまでは、現時点では確実に把握されていないのです。まだ時期が短いですし、平成22、23、24年と、まだ3学年ですので。それについては、いかがですか。
○医師臨床研修推進室長 参考資料としてお配りしてある冊子の、論点整理の参考資料のインデックスの4枚目のスライドに、「臨床研修制度に関する経緯」という1枚紙が入っていると思います。こちらには昭和23年から始まって昭和43年の旧制度の創設、平成16年の新制度の施行から、これは平成22年度の研修医から適用ですけれども、平成21年度の臨床研修制度の見直しに至った経緯が簡単に整理されております。これに関連して、平成21年度の臨床研修制度の見直しの中身についても、ワーキンググループの中では御案内をして議論していただいたところですので、次回、平成22年度の改正に至った経緯とそのときの考え方について、また改めて御案内させていただければと思います。
○中島委員 かなり医学教育的な、専門家的な問題から、突然、政治問題に変わったような感じがするのです。
○桐野部会長 それについてはいろいろあるのですが、事実として、従来の研修方式を踏襲している県もあれば、新しい方式を主としている県もあって、県のいろいろな事情や考え方、病院の特性、大学との関係など、様々なファクターでこのようにばらけているので、なかなか難しい状況かなという感じはします。
○中島委員 結構です。
○桐野部会長 いろいろな議論をするのはもう無理かもしれませんが、研修期間と研修をする診療科や研修各科の期間については平成22年から見直しになって、内科6か月、救急3か月、地域医療1か月で、残りの5科から選択必修という形に今はなっております。組替えや必修の割り振りの変更などをやるかどうかというのは大議論でして、今日のお話を伺っていても、河野先生が言われたように、各学会の要望に全部従っていると、7科目が必修になってしまうのです。
○神野委員 もっと増えます。
○桐野部会長 そうですね。2年では足りないという議論になり兼ねないという話もありますね。7科目必修でやっているところもたくさんあるのですが、それがいいという意見もあれば、良くないという意見もあって、これは急激に一定の方向に議論するのは難しいかなという感じはしますが、いかがでしょうか。まず、研修期間は2年間ということですが、現状では、かなり義務的なところが11か月で、残りはそれぞれのプログラムの工夫という形になっています。
○小川委員 先ほどの到達目標との関連ですが、そして、先ほど麻酔科の先生や外科の先生方に申し上げたこととも連動するのですけれども、要するに、到達目標があって、それが例えば外科とか麻酔科ではなくて、全身管理ができるというのだったら、麻酔科も外科も脳外科も全部、病院全体でやってくださいと。先ほど山下先生が言われたことが非常に印象的で良かったのですけれども、例えば眼科で診ていても、精神的な問題があるため、精神科の先生と一緒に診なければできないと。5ページにあるように、「現在は、マニュアル化されていて患者の気持ちが分からない医師が出てきたという面もあり、精神科の研修が足りないことによるものであるため、精神科を必修科に戻すべきである」という意見があるのですが、これもまた同じことだと思うのです。
つまり、精神科を必修化するのではなくて、内科の患者を診ているときに、精神科の力が必要であると。内科の患者さんでも、眼科の患者さんでも、耳鼻科の患者さんでも何でもいいのですが、精神科と連動して診なければならないといった形の整理の仕方をすれば、7科に戻すとか10何科になるとか、そのようなことはないのではないか。臨床研修制度に関しては、各科の固まりで考えるのではなくて、到達目標があると考えて、それを複数の科が連動して教育するという整理の仕方をするのが妥当だと思います。
○山下委員 本当にそのとおりです。結局、将来に渡ってそのような考え方、いわゆるチーム医療ですけれども、全ての科が患者を中心にして協力し合う。また、そのようにしないと、高度な医療には対応できなくなっていますから、そのようなことを研修医のときからたたき込んでおく。要するに、病院にしても何にしても、科の壁が一番まずいので、それを研修医のときからぶち壊しておけば、隣に専門家がいたら、すぐ聞きに行く、自分で止めない、それを教育するだけでも十分ですし、特に高齢者や認知症が出てきて非常に悩んでいるので、精神科にコンサルトができるとなると、我々はものすごく助かるのです。それを最初から見せればいいのです。
○中島委員 山下先生や小川先生のような方ばかりが大学にいらっしゃるならば、問題はないのです。ところが、そうではないから、そこが問題なのです。また、精神科というのも、落ち着き切った慢性の患者さんを診ても、何の意味もないのです。
○山下委員 おっしゃるとおりです。
○中島委員 やはり、急性期の精神科の患者さんを診なければ意味がない、そのことをきちっと言っていないのです。むしろ、そこが問題だと思います。もう1点、嘉山先生がモラルハザードについてしきりに言われていましたが、労働者と規定してしまった、これはせざるを得なかったからしたのだと思いますけれども、しかし、これが非常に足かせになって駄目になったと思うのです。当直の翌日仕事をする、などというのは当たり前ではないですか。以上です。
○河野委員 私の個人的な考えとしては、資料3にもあるように、今の制度は多様性が非常に出てきて、自由度が高まって良かったと思うのです。また、先ほどのヒアリングでも専門性についての様々な意見がありましたが、個人的な印象としては、当時どのように変わったのかというところで、地域における医師の偏在、診療科の偏在等々という現実的な問題があって、それに対するある部分の対応というのもあったと思います。しかし、現実問題としては、それが今回の改正でそれほど改善されていないのです。それが今、不満として出てきている。ただ、今お話にあったような本質的なところを共通理念としてもう少し持つことができれば、解決できる問題ではないかと思います。逆に言えば、それをしないと、スタートのときの問題点というのは、まだ残っていると言えば残っていますから、常に同じ話が繰り返されるような気がいたします。
○神野委員 弾力化プログラムの場合の3科のときに、先ほどの精神科とか小児科、産婦人科という話がないということで、いろいろなところで問題になっているわけです。先ほど来の話のとおり、確かに到達目標のところで、小児のこんな疾患を診ることができるとか、認知症のこんなのも診ることができる、統合失調症の人が来たらどうするか、妊婦さんのこういう症状を診ることができるといった到達目標を規定した場合、山下先生のように、プログラムをきちんと管理される方がいればいろいろな組合せができるかもしれないですが、到達目標を作って示した段階で、多くの病院は、やはり産婦人科へ行ってこい、自分たちでは管理できないから小児科に行ってこい、精神科に行ってこいというような形に、恐らくなっていくと思います。そこで、今、私どもが議論しなくてはいけないのは、到達目標としてこんな小児を診ることができるか、こんな認知症を診ることができるか、こんな妊婦さんを診ることができるかということであって、7科か3科という議論は横に置いてもいいかもしれないと思うのです。
○桐野部会長 時間ですので本日の議論はここまでにいたしますが、まとめますと、到達目標の文章についてはプライマリ・ケアという文言が入ったものと入っていないものがあることはあるのですけれども。
○医師臨床研修推進室長 到達目標ではなくて、基本理念です。
○桐野部会長 失礼いたしました、基本理念です。基本理念について御意見があれば、次回までにお願いしたいと思います。できるだけ簡潔な変更の検討であればいいのですが、全部書き換えるとなると、これは大事になってしまいます。また、到達目標自体は、漸進的に変更する準備が必要であろうと。やらなければならない点については、既に検討委員会でもそのような御意見ですので、どのような方向で検討するかについて御意見があれば、また考えないといけないのではないかと思います。それから全体の研修期間2年間を、ここで大幅に変えようという意見はなかったように思います。
診療科については、恐らくやり出すときりがないでしょうが、平成22年からスタートした制度が前の状態で根付いている県もあれば、そうでない方向で根付いている県もあって、これもなかなか大変ですが、当面はこの方針のままでいくと。したがって、各科の研修期間は6か月、3か月、1か月の選択必修という形で、あとはプログラムで工夫していただいて、嘉山先生の言葉をお借りしますと、この期間をゆとり教育の期間にしないようにということだろうと思います。次回にまたこの議論を続けていきますが、議論自体はステップバイステップで進んでいきませんと終わりませんので、次回以降について事務局よりお願いいたします。
○医師臨床研修推進室長 事務局提出資料4のとおり、今後のスケジュールを想定しております。次回は4月を予定しておりますが、詳細が決まりましたら、追って御案内いたします。
○桐野部会長 以上で、本日の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
※ 照会先
厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室
直通電話: | 03-3595-2275 |
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