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2013年1月16日 第12回社会保障審議会生活保護基準部会議事録

社会・援護局

○日時

平成25年1月16日(水)13:00~15:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
庄司 洋子 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
林  徹 (委員)
道中 隆 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・生活保護基準の検証について
・その他

○議事

○駒村部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第12回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
 まず、本日は桝屋厚生労働副大臣がお見えになっておりますので、一言御挨拶をいただきたいと思います。
○桝屋厚生労働副大臣 それでは、最初に御挨拶を申し上げたいと思います。
 このたび厚生労働副大臣を拝命いたしました桝屋敬悟でございます。本日の部会を開催するに当たりまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 委員の皆様におかれましては、大変お忙しい方ばかりでございますけれども、一昨年より本部会の委員という重責をお引き受けいただいておりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。部会では大変明確かつ具体的な検証手法をお示しいただいていると伺っております。
 生活保護制度は国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットと言われております。近年の経済的困窮あるいは社会的孤立といった生活困窮者をめぐる問題は大変深刻化しております。生活保護受給者は、御案内のとおり、一昨年7月に過去最高を更新して以来、毎月増加しているわけであります。国民の関心も非常に高くなっております。我々も前回の選挙ではさまざまな声を聞いてきたところでございます。
 委員の皆様方におかれましては、基準部会における報告書の取りまとめに向けて引き続き御尽力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 ありがとうございました。
 副大臣より「明確で具体的な検証」というお言葉をいただきました。
 今回の検証は扶助の体系にかかわるものですので、給付の引き上げにつながる部分もあれば、引き下げにつながる部分もある。さまざまな要素があると思います。世帯によっても効果はさまざまになると思いますけれども、しっかりと部会のほうでは議論したいと思います。
 それでは、事務局からきょうの委員の出欠状況について御報告をお願いいたします。
○伊沢補佐 本日の委員の御出席の状況は、全員御出席でございます。
 それでは、部会長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 これまでの基準部会では全国消費実態調査の特別集計データを用い、現行の生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費実態と適切に均衡が図られているかどうかを検証するために、現行制度や検証方法を詳細かつ専門的に議論してきました。前回の部会では具体的な検証方法について詳細な資料を事務局より示してもらい、部会としての方針も固まっております。
 それを受けて事務局には具体的な計算をするようにお願いしておりまして、本日、その結果やこれまでの部会における委員の皆様の御意見を盛り込んだ部会報告書案を用意しています。
 このため、本日は、事務局から提出された報告書案等について検証結果も確認しながら、委員の皆様に御議論いただきたいと思います。
 まず、事務局から資料1、参考資料1、参考資料2について、あわせて御報告をお願いいたします。
○伊沢補佐 では、資料1、参考資料1及び参考資料2について、あわせて御説明させていただきます。
 まず、参考資料を先に説明させていただきます。
 参考資料1「東日本大震災に伴う被災者からの保護の相談等の状況把握について(平成24年10月及び累計)」でございます。
 平成24年10月一月で生活保護の相談件数は全国で90件、申請件数は全国で43件、保護の開始世帯数が32世帯となっております。
 資料の下の方に月ごとの推移について書いております。相談件数、申請件数及び開始世帯数はそれぞれ徐々に落ちついてきている状況です。
 震災発生から累計で見ますと、相談件数は5,271件、申請件数が2,017件、保護開始世帯数が1,425世帯という状況です。
 続きまして、参考資料2「生活保護の動向(速報)」です。
 被保護人員につきましては、昨年7月に過去最高でした昭和26年の204万6,646人を超え、その後も増加傾向が衰えておりません。過去最高を更新し続けているという状況です。
 平成24年9月の時点で被保護者数が213万人を超えています。保護率は1.67%。対前年同月の伸び率で見ますと、被保護人員は3.3%の伸び、被保護世帯は4.0%の伸びとなっています。なお、被保護人員は前月より2,894人増加している状況です。
 引き続きまして、資料1について説明いたします。
 前回の部会で、第1・十分位の世帯を用いる妥当性につき検証する上で、的確であると思われる手法を事務局から御提案をさせていただきましたが、手法にのっとり分析した結果がまとまりましたので、説明させていただきます。
 2ページ以降、隣接する十分位間の世帯の消費につき分散分析、Chow testといった統計解析を行っております。
 まず、2ページです。夫婦と子供1人世帯について生活扶助相当支出の分散分析を行っています。
 隣り合います年収十分位、例えば第1・十分位と第2・十分位、第2・十分位と第3・十分位という十分位間で消費水準がどの程度違うのか、各分位の平均消費水準で比較しまして、その違いの度合いを評価するというやり方です。
 第5・十分位以下の分位ごとで夫婦と18歳未満の子1人からなります有業世帯の生活扶助相当支出を見ますと、下位の分位ほど支出が低い状況が見てとれます。分散分析によりこの有意差の度合いを調べたところ、真ん中にございます表のような結果が得られました。
 この表におけますF値は、隣接いたします分位間の生活扶助相当支出の有意差の程度をあらわしているものです。この結果によりますと、第1・十分位と第2・十分位の間で消費の変化が一番大きい状況が確認されたところでございます。
 3ページでございます。全世帯の生活扶助相当支出について行いました計量分析の結果をお示ししております。
 級地間の較差を検証する際に定式化いたしました生活扶助相当支出に関する回帰式、いささか細かくなりますが、資料2の21ページでお示ししております部分が今回の検証手法を詳細に説明している部分でございますが、上のほうの表で示しています係数を回帰式に落とし込みます。これを1級地の2に居住する世帯の例で説明をしております。回帰式はそのページの下半分のような式になります。
 この表では、第1・十分位の係数のみを示していますが、第2・十分位以降の分位についても同様に係数を算出しておりますので、その係数を代入しました回帰式が分位ごとに定式化可能ということになります。その分位ごとの回帰式を第1から第5まで推定しまして、その回帰式の構造の変化をChow testで確認したということでございます。
 この方法で隣接する分位間の回帰式の構造変化の程度を確認したところ、表のような結果になりました。この結果によれば、全世帯の場合についても第1・十分位と第2・十分位の間で消費の変化が一番大きい状況が認められたという状況でございます。
 なお、このChow testで年齢階級や世帯人員別ではなくて、級地間較差の検証で定式化した回帰式を使用しましたのは級地のみ、1類費と2類費の消費を合算したもので検証しておりまして、より消費の実態を反映しているという判断をしたためです。
 次に4ページをごらんいただけますでしょうか。
 平成19年の検証におきまして、これまで比較の対象としてまいりました夫婦と子1人世帯の第1・十分位の消費水準が第3・5分位の大体7割に達しているということを踏まえ、19年検証では第1・十分位の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達しているという判断をいたしました。その結果から生活扶助基準額は第1・十分位の消費水準と比較することが妥当であるという御判断をいただいたという経緯がございます。
 今回の検証におきましても第1・十分位の消費水準が平均的な所得階層であります第3・5分位の消費水準のどの程度までをカバーできているのかを検証いたしております。
 4ページの表は5種類の世帯類型で検証した結果を提示しております。ごらんのとおり、おおむね6割に達していたという状況でございます。
 以上が資料1の説明でございます。
○駒村部会長 そうしましたら、ただいまの事務局の説明について質問等があれば、よろしくお願いいたします。特に資料1については、今回初めて出た資料でございますので、いろいろと御質問とかコメント等があるかと思います。
 山田委員、お願いいたします。
○山田委員 3ページの「全世帯の生活扶助相当支出に関する計量分析」の部分は、やや駆け足での御説明でしたので、同じ説明で結構ですのでもう一度ゆっくり繰り返していただけないでしょうか。大変恐縮ですが、お願いします。
○伊沢補佐 3ページですか。
○山田委員 3ページのChow testのところでございます。
○伊沢補佐 計量分析の結果をお示ししているページでございまして、級地間の較差を検証する際に定式化した生活扶助相当支出に関する回帰式を使用いたしまして、済みません、先ほどの資料2のほうにも入ってよろしいでしょうか。
○駒村部会長 そうですね。ここは資料2のところに重なるので、資料2の説明は後ほどお願いするとしても、かかわるところを例示しながら、要するに資料2は補強の資料になると思いますので、使っても結構です。
○伊沢補佐 先ほど申し上げました点を繰り返させていただきますけれども、資料2の21ページの上の表でお示ししております係数をこの回帰式に落とし込む。このページの下のほうで1級地の2に居住する世帯の例で御説明をさせていただいております。そのページの下半分のような式が第1・十分位の係数のみでお示しをさせていただいておりますが、これにつきましては、第2・十分位以降の分位につきましても同様の係数を算出しておりますので、その係数を代入した回帰式が分位ごとに定式化が可能となるということでございます。
 定式化されました分位ごとの回帰式を第1から第5まで推定して、その回帰式の構造の変化をChow testを使いまして確認しているということでございます。
 この方法で隣接する分位間の回帰式の構造変化の程度を確認したところ、先ほどの3ページのような結果になったということでございます。
○駒村部会長 では、今の件にかかわる話をお願いいたします。
○阿部委員 前回から時間がたっているので、なぜこれを出してくれとお願いしたかということをもう一遍確認するということです。これはあくまでも第1・十分位を使うことの妥当性について統計的にきちんと示してくださいということの中の1つで出てきたということで、今、出していただいた結果を見る限り、やはり第1・十分位とその上の階層の間には構造的な変化があるということ。ですけれども、第1・十分位は平均的な第3・5分位、日本社会全体の平均的な真ん中の人に比べて約6割の消費水準に達しているということで、後ほど報告書のところに出てくるかと思いますけれども、第1・十分位を使うことについての妥当性がある程度確保できるということで出していただいたということですね。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 山田委員、よろしゅうございますか。
○山田委員 はい。
○駒村部会長 岩田委員、お願いいたします。
○岩田部会長代理 今の御説明について特に何か問題があるというわけではないのですが、そもそも生活保護を受ける層がどうやって析出されてくるかという場合の考え方は、これまで2つあったかと思います。
 1つは貧困層プール論というのがありまして、第1・十分位のように第2と第1の間に明確な落差があるような層がまず形成されて、そこから生活保護層が出てくるという考え方です。
 もう一つは、実はかなり上の層から一気に落ちてくる、そういうこともあり得るのではないかということがある時期言われたことがあるのです。
 もう一つは第1十分位と第2十分位の落差が生まれる境界をどう考えるかですが、つまり、第1と第2の間の値なのか、第1の平均なのかというのは相当意味が違ってきまして、この辺は今後もかなり研究していくべきことかなと思うのです。つまり、今、貧困というのが一体どこからどういう経路でできてくるのかということの検証が背後にないと、統計的には所得階層の、第1・十分位と第10・十分位がはね上がっているわけですけれども、その質的相違をどういうふうに考えるかというのは大きな問題です。今回のことは、ここまできてしまっておりますので、仕方がありませんが、今後はかなり大きな社会経済変化が予想されますので、どこから貧困が生まれてくるのか、生活保護層がどうやって形成されてくるのかということを考えておかなければならないのではないかと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 ほかの委員はいかがでしょうか。
 今のお話の蛇足になりますけれども、4ページのほうで第1・十分位は第3・5分位の6割程度であると確認し、さらに第1・十分位は消費の構造的な差があるということも確認した。ただ、岩田先生から御指摘があったように、そういう構造的な差がどこから来ているのかというのは、構造的な差のチェックだけではわからないということで、そういう部分については今後さらに研究が必要ではないか、検証体制のさらなる開発が必要ではないかと思いました。
 山田委員、お願いいたします。
○山田委員 今、岩田委員がおっしゃったように、第1・十分位の平均なのか、それとも第1・十分位と第2・十分位の境目なのか、どちらなのかという考え方は非常に重要だと思います。
 と申しますのも、第1所得十分位というのは何かと考えた場合に、OECDの相対的貧困基準で見ると、全消の個票データによると相対的貧困率というのは下のほうの10%になっているわけです。OECDのほうは等価可処分所得ということですし、こちらの第1所得十分位は収入で見た第1所得十分位なので厳密には異なっていますけれども、ざっくりと言って第1所得十分位というのはOECD基準の相対的貧困線以下の人がすっぽり入っているということで、第1所得十分位というのは、今、お示しいただいているChow testとかそういったものからしても1つの区切れ目ですし、相対的貧困線というものを考慮しても1つの区切れ目になると思います。そういった意味で、第1所得十分位の平均なのか、それとも区切れ目なのかということについて言えば、その区切れ目というのは相対的貧困線とも重なっているということ。
 もう一つは、第1所得十分位というものを1つのまとまりで考えた場合に、これ以上分割するというのは、相対的貧困線以下の人たちがすっぽり入るということからもわかるように、社会的な観点からは分割不可能なぎりぎりのラインではないかと思います。
 こうした点も報告書で追加していただければと思います。
 私からは以上です。
○駒村部会長 ほかの委員はいかがでしょうか。
 阿部委員、お願いいたします。
○阿部委員 議論が先行しているような気がしないこともないのですけれども、今、第1・十分位を比較の対象とすることについて議論が続いているので、この点について述べさせていただきます。
 このような検証方法は、あくまでも相対的貧困論の中から出てくるもので、貧困というのは相対的に決められるものだという考え方だと思うのです。
 ただ、相対的貧困論というのは、比べられる対象の人たちが貧困でないという想定のもとにあるものですので、例えば4ページに書いてある第3・5分位の6割という水準が本当に憲法25条で保障するような生活を持たされているのかどうかという議論はまた別の問題であって、これについての検証というのは、今後はしていく必要があるものではないかなと思うのです。
 現在においてそれがどこになるのかというのは非常に大きな問題で、数カ月で出るような答えではないですし、相対的貧困率というのがOECD等でも使われている貧困基準でありますので、この方法は妥当性があると思います。ただ、今後もずっとこれでいいのかどうかということは、次の検証のときにもう一度ここの点を確認していただきたいと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 資料2のほうにも入っていかなければいけないわけですが、構造的な違いがあって、しかし、分割し過ぎていくとかなり問題もある。あるいはデータ上もこれ以上分割していくと安定性もなくなってくるのではないかと思います。
 ただ、あくまでもデータ分析上の相対的な話をしているわけであって、阿部さんがおっしゃるように、価値論、そうあるべきだという議論まではしていませんので、この辺については、本部会はその前の段階、つまり、分析にとどまっているということを御理解いただきたいと思います。
 栃本さん、お願いいたします。
○栃本委員 一番最後の部分が価値論かは別にして、「価値論」という表現が適切なのかというのはよくわからないのだけれども、今までの十数回に及ぶ議論の中で第1・十分位というもので見る。ただ、それについてはいろんな観点があるということだけれども、部会としてはこうだなという形で皆で認めていったものだから、それはそういうものであるということの上での話であるというふうに理解しています。そういうことでいいですね。
○駒村部会長 そういうことについてデータで検証したということであります。
 そうしましたら、資料2について事務局から御説明をお願いいたします。
○伊沢補佐 では、続きまして、資料2について御説明をさせていただきます。
 前回の部会では事務局から御提案させていただきました検証手法案に基づきまして活発な御議論をいただきました。御議論の中でいただいた具体的かつ詳細な御指示に基づきまして事務局で計算を行った結果がこのほどまとまりましたので、これまでの部会におけます委員の皆様の御意見等も盛り込んだ形で報告書案を御用意させていただきました。
 この報告書案に基づき、御指示いただいた検証の結果についてもあわせて御報告させていただきたいと考えます。
 それでは、資料2の報告書案をお開きください。
 報告書の概要部分を私のほうから読み上げさせていただきます。
 1.基準部会の役割と検証概要
 (1)基準部会の役割
  ○高齢化や厳しい社会・経済状況も相まって、生活保護の受給者数は平成23年7月に過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加している。その一方で、最近の傾向を見ると新規受給者数の伸びは一貫して低下傾向にあり、その伸びはリーマンショック以前の水準に戻りつつある。
   このことは、生活保護制度が国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットとして有効に機能していることを示すものと言えるが、同時に制度を取り巻く社会・経済状況等に影響を受ける傾向があるとも言える。生活保護制度が、今後とも、本来の役割を果たし続けられるよう、制度の在り方や生活保護基準の水準について適宜適切に見直していくことが必要である。
  ○生活扶助基準の水準については、生活保護制度の在り方に関する専門委員会が平成16年12月にとりまとめた報告書において、「一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか、5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。」とされた。
  ○平成19年の生活扶助基準に関する検討会における検証に引き続き、平成23年2月に、学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会に常設部会として生活保護基準部会が設置され、国民の消費動向、特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら検証を行った。
  ○なお、社会保障全体の在り方の見直しが課題となってきている中、昨年8月に成立した社会保障制度改革推進法においても「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」とされている。
 (2)検証方針と検証概要
  ○平成19年検証の報告では、生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本として用いて、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当であると指摘されている。
  ○今回の検証においては、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として、年間収入階級第1・十分位を設定した上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人員、地域別の基準額が一般低所得世帯、すなわち第1・十分位の消費実態を十分反映しているかについてより詳細な検証を行うことにした。その際、仮に第1・十分位の世帯全体全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。
 2.検証に使った統計データ
  ○検証では国民の消費実態を世帯構成別に細かく分けて分析する必要があるため、「平成21年全国消費実態調査」の個票データを用いた。
  ○今回の検証は、様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。第1・十分位の世帯を用いた理由は以下のとおりである。
   ?指数を全分位の所得階層等から算出することも可能だが、平成19年検証に倣い、生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと
   ?必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること
   ?全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の減少傾向と比べて今のところ大きな差異は見られないこと
 3.検証手法
 (1)今回の検証方法に至る経緯
  ○生活扶助基準の水準はその時々の経済的・文化的な生活状況や国民の社会通念などの影響を受けるものである。また、国民の消費実態との関係で相対的に決まるものと認識されている。
  ○現行の生活扶助基準は、世帯人員別にみると必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したスケールメリットとなっていないため、体系の設定及び算定方法について見直しを検討する必要があるとの指摘があった。
  ○平成19年検証の結果、年齢階級に応じて設定された第1類費が消費実態からやや乖離しており、世帯人員別にみると世帯人員4人以上の多人数世帯に有利、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られるとされた。また、級地間の消費水準の差については縮小している傾向が見られるとされた。
  ○こうした指摘を踏まえ、今回の検証では、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。
 (2)生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)
  ア 年齢階級別の基準額の水準
  ○平成19検証の考え方では、各年齢階級の単身世帯のデータを用いて、各年齢階級別の平均消費水準を分析したが、全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため、10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった。このため、今回の検証では10代以下の者がいる複数人世帯のデータも用いて、10代以下の者も含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法である回帰分析を採用した。
  ○分析に際しては、スケールメリットが最大に働く場合と最小に働く場合のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。
  イ 世帯人員別の基準額の水準
  ○第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化し、現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し、世帯人員による影響のみを評価できるようにした。
 (3)生活扶助基準の地域差
  ○平成19年検証の考え方を用いて集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化したものと、現行の基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお、指数化に当たっては、年齢の影響を除去するとともに、世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差による影響のみを評価できるようにした。
 4.検証結果と留意事項
 (1)検証結果
  ア 年齢階級別(第1類比)の基準額の水準
 結果は8ページの【参考】の上の左側の折れ線グラフをごらんいただきたいと思います。
 読み上げさせていただきます。
   0~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11歳が1.12、12~19歳が1.37、20~40歳が1.31、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上が1.06となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1.08となっている。
   このように、年齢階級別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比べると、各年齢階級間の指数に乖離が認められた。
  イ 世帯人員別の基準額の水準
 結果は8ページの【参考】の上の右側及び下の左側の折れ線グラフをごらんください。
   第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.54、2.01、2.34、2.64となっている。
   このように、第1類費と消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるにつれて乖離が拡大する傾向が認められた。
   第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人世帯が1.36となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、1.34、1.67、1.75、1.93となっている。
   このように、第2類費と消費実態による指数を比べると、世帯人員が増えるに連れて乖離が拡大する傾向が認められた。
  ウ 級地別の基準額の水準
 結果は8ページの【参考】の下の右側の折れ線グラフでございます。
   1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の指数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっている。他方、生活扶助相当支出額では同じ順に1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっている。
   このように、消費実態の地域差の方が小さくなっている。
  エ 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準
  ○検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別、級地別の指数を反映した場合の影響は、例えば現行の基準額と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べて△2.9%、世帯人員による影響が△5.8%、地域による影響が0.1%、これらを合計した影響が計△8.5%となった。同様に、夫婦と18歳未満の子2人世帯では順に△3.6%、△11.2%、0.2%、計△14.2%となった。60歳以上の単身世帯では順に2.0%、2.7%、△0.2%、計4.5%となった。ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では順に2.7%、△1.9%、0.7%、計1.6%となった。20~50代の若年単身世帯では順に△3.9%、2.8%、△0.4%、計△1.7%となった。
   このように世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組み合わせにより、各世帯への影響は様々である。
  ○厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する歳には、本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で、他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば、それらについても根拠を明確にして改定されたい。なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。
 (2)検証結果に関する留意事項
  ○今回試みた検証により、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組み合わせによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細かな検証が行われたことになる。
  ○しかし、年齢、世帯人員の体系、居住する地域の組み合わせによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間には、世帯構成によってさまざまに異なる差が生じうる。こうした差についても今回の検証では分析を試みようとしたが、金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかし、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて小数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかったが、合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つの考え方である。
  ○今回の手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な方法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。
  ○生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への影響にも配慮する必要がある。
  ○加算制度及び他の扶助制度については、統計データの収集方法、検証手法の検討等について引き続き検討を行うべきである。
 5.勤労控除の在り方及び生活扶助基準におけるスケールメリット等
  ○特別控除については、臨時的就労関連経費の補填という制度創設当初の目的、役割はすでに終えているとの意見があった。
   仮に新たな就労促進のための仕組みが創設された場合には、施行後、その成果について検証していくべきものと考える。
  ○期末一時扶助にもスケールメリットをきかせることは合理的であると考えられる。
 以上が生活保護基準部会からいただきました報告書案の概要になります。
 報告書案では、この後、部会長から御指示がございました検証の再現が可能になるようにということで、手法について詳細な説明を載せさせていただいておりますが、この場では割愛をさせていただきまして、後ほどごらんいただければと考えます。
 資料2についての説明は以上でございます。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの事務局の説明について質問がありましたら、よろしくお願いいたします。
 栃本委員、どうぞ。
○栃本委員 私は所用があって早目に退席しますので、本来であればこの後、議論に参加したいのですけれども、後半で議論すべきことについてもお話しさせていただきます。
 まず、今回の結果ですけれども、今、説明を受けた部分は初めてお聞きしたわけです。前回の資料にもありますように、各十分位、区分けしたものについて経年的に見ますと全体が下がっているわけです。いろいろな議論がありましたが、十分位の中の低い層についても下がっている。日常的な言い方をすれば、その中でやりくりをしながら生活し、つつましく生活をしているという部分で、全体的なものが下がっている中で、このデータから出た以上、先ほど読み上げた中の1ページ目に「学識経験者による専門的かつ客観的な検証を行うため」ということが記されているわけですから、きちっとこのデータというものを尊重するということが重要だと思うのです。
 そういうことで、数字から示された以上、引き上げることを検討しなければいけない部分もあれば、下げなければいけない部分もあることは客観的な事実であります。公平の観点です。
 また、既にこの部会において小山進次郎さんの文献などを引用しながら、この委員会は、当初より部会長や部会長代理からお話がありましたように、あくまで生活保護基準の中の生活扶助というものを基軸にして見ていくということでありますけれども、たびたび申し上げましたように、生活扶助基準の引き下げ、引き上げ等のみをもって生活保護のいわゆる最低生活の水準というものを見るべきではないということは既に議論されているわけです。
 また、医療扶助等議論がありますが、やはり医療が保障され、介護が介護保険によって保障され、また教育というものが保障されている中で、全体的な観点から見定めるということが必要であろうと思います。
 そういう意味で、専門的かつ客観的な検証というのが行われたわけですから、それを最大限尊重するということがまず第一点です。
 しかしながら、よくロールズなども言っていますように、その社会の中で最も不利益をこうむっている方々に対して不利益が生じないような形で対応することが求められているのは、社会的公正の観点から特に社会保障制度であるとか生活保護制度において留意しなければいけないことであります。恵まれない方々にとって利益が足らざるところをさらに不利益になるという形での施策であってはいけません。
 特にストックを持たず、いわゆるブルデューが言うところの文化的資本とか社会関係資本、経済的資本、つまり、資産ですが、それら3つのストックをそもそも持ち得ていない方々と、高齢者でも年金でつましく生活をされているけれども一定の資産とかそういうものがあるという方々と比較して、極めて純粋に被保護者として正当な受給権を持っている方々が、今、申し上げたようなストックというものを全く有しない中で生活をされているわけですから、そういう方々に対してそれなりに対応がなされるべきであり、それは社会的公平、社会的公正の観点から取り扱いがなされるべきだというふうに考えます。
 特に近年、社会のしわ寄せをこうむっている方々に一番厳しい取り扱いをするということ、よく言われる富の偏在であるとかそういうものの中でどういうふうに考えなければいけないのかということは、比較において妥当性を考えなければいけないということです。
 数字の差は重要でありますけれども、今、述べたように弱者に対して温かい社会が文化的社会、文化的国家でありますから、ここの会議では、専門的かつ客観的な検証にはいろいろな限界があったということは、我々がそれぞれ共有しているわけですが、その上で、文化国家、また倫理水準が高い社会はどういうものかということを考えて今後議論をしていただきたいということです。
 数日後に次回の部会が開かれるかもしれないとお聞きしております。今回、この後、議論される中で追加とかいろいろあると思うのですが、このような報告書は歴史の中で読まれるものでありますので、見識とか識見が問われるということだと思います。そのことを考えて、事務局案としてこのような形で示されている、また、専門的かつ客観的な検証というものが我々に与えられた使命でありますけれども、歴史的文書でもありますので、事務局案をうのみにせず、文言等を修正し、見識を示していただきたいということを帰る間際に言おうと思っていました。
 以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 きょう、これからお話しするのが一番重要なところで、もうその展開に入っております。
 先ほど事務局からお話があったように、11ページ以降は細かい計算プロセスについてです。ただ、この計算プロセスを示すことによって透明性のある検証を行うということを確認させていただきたいと思っているわけでございます。
 栃本委員、現時点でお気づきの点、例えば文言修正等、御希望がありましたら遠慮なく御指摘いただければと思います。
 ほかの委員も議論を始めていただいて結構です。
 栃本委員はどこから質問していただいても結構です。
 資料2の3ページの3.前までについて何かございますでしょうか。
 山田委員、お願いいたします。
○山田委員 3ページの1つ目の○について質問というか、コメントです。
 期末一時扶助についてスケールメリットを考慮すべきことについておおむね異論はなかった。確かにおおむね異論はなかったのですけれども、具体的にどのようなスケールメリットにするかということについてはまだ議論していないと思うのですが、それについてはそういう理解でよろしいでしょうか。
○駒村部会長 事務局からここの部分はお答えをいただきたい。つまり、スケールメリットは具体的にどういうものを使うのでしょうかということで、たしかもう一回スケールメリットというのがありました。
○山田委員 11ページの(2)でスケールメリットを慎重に考えるべき、というところです。
○駒村部会長 3ページの一番最初の○で期末一時扶助のスケールメリットについて言及があり、これは考慮していい。しかし、どの程度のものにするかは示されていないのですけれども、事務局はどういうふうに整理されているか、説明をお願いします。
○伊沢補佐 部会での御議論を踏まえまして、私どものほうで平成18年から22年までの5カ年の家計調査の結果をプールいたしまして、そこから生活扶助相当品目、食料とか光熱とか水道といったものから、他扶助で支援されております品目、例えば家賃等といった生活保護の対象外の品目、この中には自動車関係も含まれますけれども、そういったものを差し引いた生活扶助相当品目の11月から12月への消費の増加分を比較するということを今、調整しているところでございまして、これで単身世帯から2人、3人、4人、5人といった形で人数がふえることにどういう影響が出るのかというのを今、確認しているところでございます。
○駒村部会長 それは部会に提出されましたでしょうか。
○伊沢補佐 現時点ではまだ提出させていただいておりません。
○駒村部会長 今のお話は次回あたりにお示しいただけますか。どうしましょうか。
○伊沢補佐 出す方向で努力いたします。
○駒村部会長 わかりました。
 スケールメリットは、今、事務局からお話があったような根拠でお示しするということでございます。
 山田委員、よろしゅうございますか。
○山田委員 はい。
○駒村部会長 阿部委員、お願いいたします。
○阿部委員 今の点ですけれども、今までさんざんいろんなやり方を検証してきたわけですが、議論していないところが結構あって、それについて全部次回でやるというのは、2日後ですので難しいこともありますし、今後どのような体制でやっていくのかというのはやはり御検討いただきたいなと思います。
 具体的には、期末一時扶助のスケールメリットもそうなのですけれども、9ページの最後の留意事項のところで「加算制度及び他の扶助制度については、生活扶助の年齢区分の在り方も含め、統計データの収集方法、検証手法の検討等について引き続き本部会において検討を行うべきである」。全くそのとおりだと思うのですが、やはり加算の部分とか扶助の部分というのは生活に直結する。生活扶助もそうですけれども、今、実際に生活保護の基準、例えば高いところもあるし、低いところも出るというような結果が出た中で、やはり一緒に検討しなければいけないところだと思うのです。ですので、このところの検討をぜひ今後も続けていただきたいと要望したいと思います。
○駒村部会長 今回の報告書は扶助基準本体に関する分析でありましたけれども、今、御指摘がありましたように、期末一時扶助については、次回、関連資料が出てくるというふうにお聞きしましたが、加算あるいは控除については今回は触れていなくて、今後の検証課題になっているということです。事務局、この点について今後どういう予定で進めていくかというのがもし決まっているならば教えてください。
○伊沢補佐 現時点で申し上げますと、加算制度等につきましては、統計データの収集方法の検討に時間を要するものと思っております。
 また、検証手法についても既に確立されたものがございませんので、常設部会になっていますこの部会の中で検証手法についても御議論をいただきながら検証を進めてまいりたいと考えております。
○駒村部会長 栃本委員、お願いします。
○栃本委員 今のお話で常設部会ということですから、速やかにこの議論を始めていただきたいと思います。当初の生活保護制度が、我が国の社会保障制度のその後の発展の中で、その時々で加算というものがつけ加えられてきたわけだけれども、加算はあったほうがいいに決まっているということはあるのだけれども、その一方で、いろんな社会保障制度の組み立てが拡大し厚みを増す中で、その機能というものが公平に見直しをされるということは必要なことです。そのほうが生活保護制度に対する信頼は高くなるというふうに私は思います。もちろん、必要な加算はあります。
 もう一つは、8つの扶助というものと加算との機能論的なというか、相互関係です。形だけの議論ではなくて、その部分の本質について議論をぜひしないといけない。つまり、歴史的な経緯、社会保障制度の発展の中で、その時々で反映させるということは必要なことです。それについて反対する人は誰もいないと思うのです。
 誤解を与えないように申し上げますけれども、それらをみんな廃止しろということを申し上げているのではありません。
 歴史的経緯の中で社会保障制度というのは拡大、発展し、サービス化していくわけだから、その中で公平に見るというのは我々の責務です。そしてその中で妥当性というものを速やかに検討していただきたいということです。
○駒村部会長 岩田委員、お願いいたします。
○岩田部会長代理 3ページ「2.検証に使った統計データ」の2番目の○の?の3行目のところに「平成19年検証に倣い」という書き方があるのです。25ページに平成19年のサマリーみたいなものもありますが、平成19年あるいは平成16年の検証と今回の検証の手法は相当違うのです。つまり、平成19年は結構大胆なこともやっています。
 25ページに書いてあるように、夫婦と子1人という従来の標準世帯と単身世帯というモデルをつくって、その第1・十分位と第1・五分位の両方を使っている。場合によって第1から第3・五分位までの平均を使った検証もしているのです。しかも、60代以上については資産、貯蓄、平均余命という要素も使って非常に複雑なことをやっているわけです。
 どうしてやるたびに手法が違うのかということが大変大きな問題で、先ほど言いましたように、第1・十分位を使った理由というのは、差し当たりは一番最初の御説明でいいと思うのです。だから、ここで「平成19年検証に倣い」と書かないほうがよいと思います。
 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、昭和59年の水準均衡方式というものは、要するに、格差縮小はもうしなくていい水準ですよと言ったにすぎなくて、何か新しい検証方法がそこで開発されたわけでは決してないのです。
 水準の中身の1類、2類というのは、昔のマーケット・バスケット、エンゲル方式をそのまま使っているわけです。しかも、標準世帯方式というのも、5人、4人、3人と変わってきていますけれども、それを基礎に、そこでともかく均衡していれば、そこから展開する。その展開のやり方は、年齢だと栄養、世帯人員についても割合スケールメリットが緩いということで来たために実態と非常に乖離ができてきてしまった。
 これを平成16年も指摘したし、19年も指摘し、なおかつ19年は大胆に1類、2類の区分をやめて生活扶助相当額全体の比較をやったのです。
 では、それに対して今回は何をやったかということですが、平成19年は単身世帯と3人世帯のモデルを崩さずにやりましたから、年齢に関しては単身世帯の世帯主年齢しか使えなかったわけです。
 5ページの最初の○の2段落目に書いてありますけれども、10代以下の単身世帯がいなかったということよりも、世帯の中に含まれているいろんな年齢層の抽出ができなかったということのほうがむしろ大きいわけです。
 ですから、今回はそれを全部やめたといったら変ですけれども、完全に年齢別、世帯人員別、級地別の展開の仕方が実態とどのぐらい乖離してしまっているのかということを検証しようということを徹底してやったわけです。そういう意味では、級地を含めた相対比較方式をかなり徹底して試した。
 「指数」という言葉を平成19年も使っているのですけれども、今回とは意味がちょっと違うのです。
 今回は世帯類型別の第1・十分位ではなくて、単純な年収第1・十分位と1人当たり十分位の真ん中をとってやっていますので、平均指数法というような方式を試みたということではないかと思うのです。
 これは国民に対して説明するときに非常にわかりにくいので、どう言ったらいいかわからないのですけれども、「倣って」と言うと、ずっと連続しているように思えるのですが、私の理解では結構断絶があって、そのときそのときで大変苦労してやった。
 今回のよさは徹底して相対比較に持ち込んだということだと思うのです。
 では、それで今後もやるのかというのが次の問題になってきます。
 それは9ページに「将来の基準の検証手法についてはさらに検討していく」と書かれていますが、検討というよりは、どうやって水準均衡なるものを、あるいは相対比較をするかという手法こそ基準部会が「開発」すべき対象だろうと思うのです。
 基準部会というのは、生活保護部会ではなくて基準部会なので、この「開発」が主要テーマであって、手法と手続を一般の人にもわかるように説明していくということが今後求められているだろうと思うのです。
 ですから、私は、「平成19年に倣い」というのは取ってしまったほうがいいのではないかということと、9ページに出てくる「検討」というのは、「基準部会は責任を持ってそれを開発していくのだ」というような文言に変えていただいたほうがより正確ではないかなと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 栃本委員、お願いいたします。
○栃本委員 先生の御指摘のとおりだと思うのですけれども、その一方で、かなりの繰り返しの中で、19年というのは極めて重要な、かなり深掘りしたものであったから、それとの比較というとあれですが、断絶しているかどうかというのはいろいろ議論があると思うのだけれども、それを踏まえて書くとまさによくわかるのですが、その一方で、比較しながら、この部分はこういう形でしたのだよということの説明をもう少しわかりやすくするということだと思うのです。断絶しているからだめというわけでもないわけです。
 もう一つは、この議論の中で、私も指摘したことですが、実際に夫婦と子供1人というものを標準的にとって、それを操作的に展開する、指標化するという形でやらざるを得ないという形になっているわけだけれども、現実の生活保護の被保護者の世帯類型であるとかそういうものは全く違うわけです。それは前から指摘しているところです。前回はいろんな形でされたというのは、もちろん承知しております。
 そういう意味で、議論の中でそういう議論もしたわけですから、今回の結果は極めて重たいものですから、それについて疑念を湧かせるようなものであってはいけないと思います。要するに、今回の結果が持つ意味というのも大きいわけだから、その上で今後検討すべきものとしてもう少し子細に書く。全消では夫婦と子供1人というものを軸にしてやっているのだけれども、実際に高齢化し、単身化している実態からすれば、展開するもととなる基軸の部分を何にするかということは、まさに今、岩田部会長代理が「検討」でなくて「開発」ということをおっしゃったけれども、それも含めて今後議論していくべきだと思います。
 以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 今、2つ重要な御指摘がありまして、まだ若干修文が必要なところもあるようでございます。
 1つは、控除もそうかもしれませんし、加算の話は、広く言うと先ほど栃本委員からお話のあった他の控除との関係も含めて考えなければいけない。
 基準部会としては、データに基づく検証というのがひとまずの守備範囲でございますので、他の扶助との有機的な関係性については基準部会の守備範囲としてどうなのか。ただ、そこを無視していても議論はできません。
 そこで、少なくとも栃本委員からお話があった加算ほか控除の検討については、「速やかに」というところを強調されたと思いますので、どこかに「速やかに」というような文言を一言入れるということでよろしいでしょうか。
○栃本委員 もう少し工夫していただいて、数日後、期待しております。
○駒村部会長 わかりました。
○栃本委員 ちなみに、先ほど申し上げたように、形式論というと語弊があるのだけれども、加算制度であるとかそういうものの本質的機能論というものから見たら、基準部会において、形式論としての議論もあるのだけれども、やはり本質的な機能と生活扶助と他の扶助との関係は入れ子関係があるわけだから、それを抜きにして議論というのは絶対できないはずですから、与えられた領分というものを踏まえつつ議論はなされるべきであると思います。
○駒村部会長 わかりました。
 では、具体的には9~10ページぐらいのところで今、言った本質論と「速やかに」ということを反映したい。
○栃本委員 社会保障の歴史的発展の中でということです。
○駒村部会長 わかりました。
 では、これは事務局と御相談したいと思います。
 あと2つなのですけれども、3ページの「平成19年検証に倣い」という表現は相違があるだろう、相違を明確にしたほうがいいのではないか、「倣い」というのは非常に不正確ではないかというのがお二人のお言葉だったと思います。この辺は、作業時間の関係もありますけれども、工夫するように事務局にお願いしたいなと思います。
○栃本委員 「倣い」と比較しながらということです。
○駒村部会長 そうですね。「倣い」と比較しながら、相違があるわけです。同じ部分と違う部分があるということを少なくとも明確にわかるようにしなければいけない。
 もう一点は9ページの最初の○です。検証方法が今回大きく異なっているという御指摘が岩田委員からありました。この辺のところで、部会の役割としても検証の手法のスキルアップ、開発ということがあるべきではないかという御意見がありました。
 これについて、ほかの委員はいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 山田委員、お願いいたします。
○山田委員 細かいところにこだわるわけではないのですが、3ページの?の「平成19年検証に倣い」というのは、なぜ第1所得十分位をとってきたかということについてかかっているだけで、多分手法の問題ではないのではないか、という気がします。手法は、先ほどからいろいろな方が御指摘のとおり、生活保護基準の構造自体を徹底的に検証したというところにある。そういう意味では、岩田委員がおっしゃったように、「平均指数法」とも名づけられるぐらい徹底的にやったという理解だと思います。
○駒村部会長 この辺も明確にわかるように表現したほうがいいだろうということで、山田さんの今の御説明でいいかと思うのですけれども、方法が変わってきているというのもちゃんと意識していただかないといけないと思います。
 そのほか、データにかかわること、効果測定の問題もあると思いますが、3~9ページあたりに今、集中しています。
 では、山田先生、お願いします。
○山田委員 その後の話にも関連することですが、生活保護基準の見直しとか勤労控除の見直しなどの影響を今後モニターするためには、見直し前の個人の行動と見直した後の個人の行動、要するに、同一個人を追跡調査するようなデータの整備が必要で、見直しが終わってしばらくしてからデータをとればいいのではなくて、実は速やかに前のデータをとっておかなくてはいけない。そうしたデータ整備などが必要になってくるのではないかと考えています。つまり、なるべく早くデータ整備などについて考える必要がありますし、また、そうした行動変化の影響といったものを恒常的に分析するような体制も速やかに必要になってくるのではないかと考えています。
○駒村部会長 検証方法の開発ということや、他の扶助との関係で有機的に見た加算の意義の評価、さらにそれに関するデータ収集、あるいは今お話があったように、今回の変更に伴うさまざまなデータ、消費行動なり就業行動の変化、こういったものは変化前と変化後を見ないとその効果がわからないわけですので、そういう意味では、データ整備をきちんと行う。だから、政策を行ってからやるのではなくて、政策を行う前からきちんとデータ把握をしておかなければいけない。そういう統計的な体制を確立しなければいけないということ。時間的にも直ちにやるべきところもあるでしょうというお話があったかと思います。
 ほかの委員はいかがでしょうか。
○阿部委員 もう3ページ以降に入っていますか。
○駒村部会長 全部有機的につながっていますので、全てについてお願いします。順番にやりたかったのですが、栃本委員がそういうことだったので、ここは全部乗り越えて好きなところからどうぞ。
○阿部委員 だんだんこの部会のアフターの話になってきたので、その前にまず結論の話をしたいと思います。
 7ページのところで、世帯類型別に今回の検証の結果を仮に保護基準に当てはめた場合、現行基準とどれぐらいの差があるかという結果が出ています。これを見ますと、単身の高齢者とか高齢の夫婦のみの世帯であれば上がる、プラスになっているということで、そのほかの夫婦と子1人とか2人とか、20~50歳の単身世帯では逆に下がる、マイナスになっているということで、上がる世帯もあって、下がる世帯もある。これはあくまでも平均値ですので、見ていただければわかりますが、級地とかそのほかにもいろいろ影響してきますので、例えば夫婦と子1人のカテゴリーであれば一律に全員△8.5%というわけではなくて、その方々を平均すると△8.5%になるということだとテクニカルには理解しております。
 現行の生活保護制度では半数以上の方が高齢者の方々なのです。ですので、その方々についてはそれより高くなっているという事実がある一方で、でも、多人数世帯というのは子供のある世帯が多いですから、それについてマイナスになっているというのは、もし仮にこの結果をそのまま保護基準に反映するようなことがあれば、貧困の連鎖ということが今までの社会保障の改革の中でも何遍も言われてきておりますし、私は午前中に生活困難者のための特別部会に出てまいりましたけれども、そこでも貧困の連鎖による子供の貧困は絶対に防止しなければいけないことだというふうに言われている中で、子供のある世帯についてマイナスに出るというのは非常に懸念すべきだと思うのです。
 心配なのは、保護基準がそのほかのいろいろな制度に連動している可能性が非常に高いということなのです。もちろん、就学援助費とかもありますし、そのほかにも各種自治体等でやっている制度に連動してきています。そうしたときに、今、保護を受けないで頑張っていらっしゃる世帯の方々にこの引き下げが影響してきて、彼らの状況が非常に悪くなる。彼らの状況が悪くなることによって被保護に転落してしまう場合もあり得るということまで考えなければいけないと思うのです。
 ですので、影響というのは、私たちの部会としてはデータを客観的に見るということで、今、実際に第1・十分位の方々のデータというのはこうなっていますので、それについては何も異論を挟むことはないですし、私たちは学術的にも一番信頼性が高い、妥当性が高いやり方と思われるやり方で検証しておりますので、数値については言うことは何もございませんけれども、これを保護基準に反映する際にはそこのところをぜひ考慮していただきたいということを部会としても言っていきたいなと思います。
 8ページの一番上のところは結論なのですが、「なお、その際には現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい」というところに、特に子供の貧困の連鎖を防止するという観点から「子供のある世帯には特別な配慮が必要である」というふうにぜひ書き加えていただきたいと思います。
 8ページの一番上の【参考】の前のところの部分と同じような文面が「留意事項」のところに出てきますので、そこのところにもぜひ書き加えていただきたいと思います。
 例えば就学援助を受けている子供たちは、子供の15~16%ですから、その世帯への影響、そのことによって就学援助を切られてしまう世帯が出てくる。ほかのところが管轄している制度であるかもしれませんけれども、低所得者対策という大きなフレームワークで見ていくことが必要で、そこのところでぜひ配慮を御検討いただきたいと思います。
○駒村部会長 今のところは今回の検証の心臓部分に入っているわけでありまして、6ページ、7ページがまさに心臓部分で、それぞれのファクターについての指数が出てきた。7ページで指数変更の影響を推計して、その推計の平均値を出してみよう。これはあくまでも推計の平均値でありますので、そういう意味では、望ましいとか望ましくないとかいうことでなくて、検証して出てきた結果を指数に反映して、それを推計した。それの平均値。ここには望ましいか、望ましくないかでなくて、こうなっているということだけであります。
 いずれにしても影響が出てくる可能性はあるかもしれない。その際には、7ページから8ページにあるように一般低所得世帯、つまり、生活保護の基準というのはほかの制度にも波及する可能性がある。ただ、この部会は、例えば課税最低限や最低賃金あるいは就学援助、こういったものは守備範囲にはなっていないのですけれども、十分な配慮をすべきではないかという阿部委員の意見であります。
 では、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 私も全く同じところについて非常に気にかかっていました。諸外国と違うのは、日本の場合には生活保護基準というものがいろいろな制度に参照されるような形になっているということで、要するに、例えば課税とか保険料免除とか就学援助とか最低賃金など、ほかのいろいろな最低限度、いわゆる参照基準の大もととなっているというところが諸外国とは違うわけです。ほかの国は別の制度がそういう参照基準になっていますけれども、日本では生活保護基準がその参照基準になっているという点は非常に注意しなくてはいけないところだと思います。
 そういった意味で、生活保護受給世帯への影響だけではなくて、何か改革が起こった場合に、ほかの制度を通じた一般低所得世帯への波及というのもモニターして、何か悪影響を及ぼしていないかというのは十分気をつける必要がある。そのためには、もちろんデータなどもとっておかなくてはいけないということです。
 阿部委員も気にかけているように、生活保護基準の改定次第では、今、単に指数を当てはめて、こうなりましたという結果を7ページに出しているかもしれませんけれども、これから政府のほうでどういうふうにするかということについては、単に指数を当てはめた以外のところがいろいろと出てくると思うのですが、その結果、一般低所得世帯の可処分所得に影響を及ぼして貧困の連鎖を起こすということがあってはならないということで、今、特に世帯人員が多い人に非常に影響が及ぶことになりそうだ。どういうことかというと、先ほど阿部委員がおっしゃったように、特に子供のいる世帯に影響が非常に大きく及びそうだという懸念を私も共有しています。
 特に子供のいる世帯への特段の配慮。これは生活保護受給世帯だけではなくて、生活保護基準に何らかの見直しもしくは変更を加えることによって一般低所得世帯で子供のいる世帯への波及状況を考えなくてはいけない。
 この点に関しては、社会保障担当参事官室で「社会保障制度の低所得者対策の在り方に関する研究会」というのがありますので、制度横断的にこうしたものを考えるというのは非常に重要です。
 場合によっては、厚労省内だけではなくて、全担当部局によってこうした影響がどういうふうに及ばないようにするのかというのを真剣に考えていく必要というのが求められていると思います。
 私からは以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 こういう検証をして政策に反映された場合に、波及効果については確かにこの部会の責任範疇ではないというものの、これは同じ厚生労働省にかかわるテーマがかなりたくさんあるわけでございます。今、山田先生から御指摘いただいた研究会というのは、たまたま僕と岩田先生がメンバーでありまして、これは制度横断的な低所得者のことについて考慮するという検討会だったと思います。
 厚労省側としては、この検証を考慮して基準に反映する。その後、波及効果を出すか出さないかもあるかと思いますし、所管の分野もあると思いますし、政府全体で対応しなければいけない分野もあると思います。巷間言われているように最賃にも影響を与えるのではないかと言われていますけれども、現時点でこの辺は何か考えていらっしゃるのでしょうか。
○古川課長 今、御指摘いただいた問題意識は、まさにこの報告書案にも「慎重に配慮すべき」あるいは「一般低所得世帯への影響に配慮する」という文言を入れさせていただいていますとおり、共有しております。
 各制度をどうするかというのは、それぞれ各制度の所管が責任を持って考えるということではありますけれども、この問題意識を共有した上で、検証結果につきまして関係当局と情報を共有するということも含めまして、丁寧に議論をいただくように申し入れをしたいと思います。
○駒村部会長 ぜひとも省を挙げて、あるいは政府を挙げてそういう影響、波及効果に関しての考慮をしていただきたいと思います。
○岩田部会長代理 私もそれは大変大事なことだと思います。
 あちこち行って恐縮ですけれども、また別の件です。8ページの(2)の最初の○は、先ほど申し上げたような、今回の平均指数法、モデルからおりないで単純な年収第1・十分位と1人当たりの年収第1・十分位を使ってやったわけです。
 次の○に「しかし」と書いてあって、これは今までと違うやり方なので、水準が上がった、下がったという結果にならないわけです。当てはめてやると、ある世帯は下がるし、ある世帯は上がるという先ほど言ったような結果になっていくわけです。
 仮にそういう世帯ごとの消費実態とこの指数により補正した基準とを比べると、さらに差がある可能性がある。でも、それを十分説明ができなかったので、9ページに「合理的説明がつく要素については、それを勘案することは一つの考え方である」とあるのですけれども、私の質問は、どういう要素のことをおっしゃっているのかということです。
 私の意見は、平成19年のように標準3人世帯と単身世帯というモデルをつくって、そこから指数をつくっていくというやり方をしませんでしたので、今度世帯類型別に年収第1・十分位と比較しても、当然そこに乖離が生まれるのです。それを説明し切れないのは、ある意味では当たり前で、やり方が違うわけです。
 もう一つの理由は、第1・十分位というのは非常に分散の大きなグループなので、平均値をとったとしてもいろんな世帯が含まれている。昔、先ほどの貧困層プール論ではないのですけれども、例えばエンゲル係数一つとっても非常に分散している層だということが強調されたことがあるのです。
 ですから、例えば私たちが隣のAさんと比較して高いわ、低いわということを言ったりするわけですけれども、そういうことをやっていると切りがなくて、できないわけです。
 あくまで一つのモデルを推計しながら適当と思われる水準を決めていくしかないわけで、全部の国民の生活と一々照らし合わせて検証するなどということはそもそも不可能だし、合理的説明などというのはできないだろう。
 だから、今回こういう平均指数的手法をとったとすれば、2番目の○は要らないのではないか。
○駒村部会長 2番目の○とおっしゃいますのはどれですか。
○岩田部会長代理 8ページです。
 要らないか、あるいは「分析、説明には至らなかった」で終わる。
 それとも、事務局のほうであらかじめ合理的説明がつきそうな要素というのを何かお考えなのでしょうか。
○駒村部会長 「合理的説明」というのは2カ所ほどあって、7ページと9ページにあるのですけれども、この辺について、事務局からどういうことを意図されているか御説明いただけますでしょうか。
○古川課長 合理的説明云々の話でございますが、今回、3要素で明確に検証の方法も含めて手法をお示しいただいて、数字を出させていただいたということでございます。しかし、それを加味してもなお、一定の差があるというのも事実でございますので、その差をどう評価するかということがまず基本としてはあると思っております。
 その際に、消費に及ぼす影響がいろいろある中で、まさに合理的な説明がつくということであれば、それを加味するということは一つの考え方であろうということで、8ページの○につきましては、一般的な考え方としてそうしたものを考慮することは一つの方向性としてあるだろうと書かせていただいているということでございます。
 それとは別に、もう一カ所、7ページのところでございます。一般的に合理的説明が可能であれば、消費に影響を及ぼす因子を加味するということは一つの考えであろうけれども、しかし、何をもって合理的かということについても様々な考え方があるだろうという中で、例えば政府が発表している経済指標とか、誰が見ても数字として固まっているものを加味するということについては、オーソライズができるだろうということです。加味するに当たっては相当程度皆様から合意が得られるものでなければいけないだろうという意味合いにおいて、例えばということで「経済指標など」と書かせていただいているというところでございます。
○駒村部会長 とても大事な御指摘がありました。
 では、岩田委員、山田委員の順でお願いいたします。
○岩田部会長代理 要するに、今回のやり方が今までと違ってモデルからおりていないものですから、一般に理解されがたいと思うのです。
 それを前提にして8ページから9ページにかけての文章を読むと、では、どういう差がどのぐらいあるのかということになってしまう。つまり、そういうやり方をしていないのに誤解が生まれてしまうのではないかというのが私の危惧です。
 もちろん、統計的な制約とかいろいろあるわけですし、例えばモデルをつくるといっても、どういうモデルをつくり得るのか。モデルから展開してほかのものをどうやって説明できるのかということ自体も平成16年からずっと議論されてきた点なので、私が申し上げたいことは、今回の手法の特徴を混乱させるような書き方はなるべくしないでいただきたいということだけです。
○駒村部会長 山田委員、お願いいたします。
○山田委員 私の理解では、多分7ページの下の○に書かれている「合理的説明が可能な経済指標」と8ページから9ページにかけての○に書かれている「合理的説明がつく要素」というのは、別個のものと理解しておりました。
 後者の「合理的説明がつく要素」というのは統計的な差みたいなものを意味していて、7ページのほうは「合理的説明が可能な経済指標」ということで、言葉を変えていることもありますけれども、この報告を考慮して実際に政策に移していく段階で何か別の要素が入ってくるという意味で別物と考えていたのですが、まず別物と考えていいのかということ。
 また先ほど経済指標というふうにおっしゃったので、多分考えられているものが幾つかあると思いますので、例としてはどういうものがあるのかというのを教えていただければと思います。
 私も、9ページの「合理的説明がつく要素」については、少し意味が不明瞭であれば、誤解を与えないように削除するというのも一つの考え方ではないかと思っています。
○駒村部会長 当部会では3要素の効果測定は行っている。
 それ以外の部分。一つは、山田さんがおっしゃったような、まだ見切れていないファクターがあるという意味での合理的要素、あるいは経済全体の指数に関する合理的説明可能な経済状況、こういうのがあるという解釈をされていますけれども、その辺をもう一度課長のほうで整理して今の山田さんの質問にお答えいただけますでしょうか。
○古川課長 基本的に山田委員の御理解を私も共有しております。今、部会長がおっしゃいましたように、一般的に説明し切れない差があるという中で、もしいろんな手法が開発されて合理的に説明できる要素があるというのであれば、そうしたものをできる限り加味していくというのは一つの考え方ではないかということで、後ろのほうは書かせていただいております。
 前段につきましては、従来から基準のあり方を議論する際の報告書などにおきまして、例えば消費者物価指数、あるいは賃金の動向などが出てくるということでございますので、そうした要素は従来から考慮してきているということで、例示を挙げろという御指摘でありますれば、そうしたものは考え得る対象となるのだろうと考えております。
○駒村部会長 山田委員、どうぞ。
○山田委員 そういうことで理解いたしましたけれども、先ほど部会長からありましたとおり、こちらでは年齢、人員、級地という3要素しか議論しておりません。この部会では今、例示で挙げられた消費者物価指数とか賃金の動向については何も議論していないということを明確にしていただければと思います。
 これも懸念なのですけれども、直面する物価指数は、御存じのとおり、全国レベルの物価指数というのもございますが、実は地域によって、あるいは高齢世帯かどうかという世帯類型によって、さらに所得階級によっても異なっている可能性があるわけです。要するに、消費品目で物価指数というのは全く変わってきますから、そういったことも留意する必要があります。
 部会では物価指数ということについては何も議論していないということと、全国一律の物価指数を当てはめることになれば、健康で文化的な最低限度の生活を具現化している生活保護基準というのは、先ほど言ったようにいろいろなものに参照されているという性質を考えた場合、非常に慎重に考えなくてはいけないというのが私の意見でございます。
 以上です。
○駒村部会長 では、阿部委員、お願いいたします。
○阿部委員 私も同意見ですけれども、7ページの議論と8ページの議論は別にしなければいけないと思います。
 8ページの2つ目の○について岩田先生が挙げられたコンテクストの中で、先ほど山田委員もおっしゃったように、この部会の中で合理的説明がついたのは級地と年齢と人員数のみなのです。ですので、それ以外については合理的説明がつかなかったということなのです。
 ほかにどういうものが合理的説明がつくかというのを私たちはこの部会の中で議論していないのでわからないですということで、合理的説明がついた要因についてはもちろん勘案していただきたいのですが、それ以外については勘案しないということで、それはかなりクリアになっていることだと思います。
 7ページのほうは、おっしゃったように全く議論をしていないところです。私たちは平成21年のデータを使って見ているだけですので、物価の状況とかも全く見ておりませんし、議論していない中で、先ほどの事務局側の御説明では、誰にでも納得できるような指標があればということですけれども、誰にでも納得できるというのを誰が判断するのかといったときに、それは部会で判断したことではないということは明確にしていただきたいと思います。
 その中で、7ページの最後の文面「それらについても根拠を明確にして改定されたい」と書いているのはかなり強い文言で、例えば9ページの上では「それを勘案することは一つの考え方である」とすごくやわらかい言い方なのに、ここは「改定されたい」と書いてあるのです。議論していないことを改定されたいということは、やはりできないというふうに思います。ですので、ここのところは部会の委員としては非常に気になるところです。
○駒村部会長 2つの合理的説明の話があって、9ページについてはちょっと意味が異なる合理的説明要因で、部会で説明し切れないところが最後に出てくるのはどうかということです。この「合理的説明」については事務局と考えさせていただきたいと思います。
 ほかの委員、9ページのところについてはいかがでしょうか。道中委員、どうぞ。
○道中委員 いろいろ科学的な検証ということでありますけれども、パーフェクト、完全なものはなかなかありませんので、合理性ということですけれども、「妥当性のある」とか「より妥当である」というような形で少し幅を持った表現形に変えていただくということ。
 それから岩田先生が先ほど来お話しいただいているように、これまでの手法とは経緯が似ても似つかぬところがあるということなのですが、本制度そのものが非常に複雑な包括型の制度設計になっていますので、今回の検証の結果を国民に説明するときは非常にわかりにくいだろうと考えられます。できましたら例えば「相対的消費指数方式とか、何か新しいネーミングでその解説を考えていただくようなことをしていただいたらどうだろうと考えます。
 7ページに改定の方向性というようなことが書かれているわけですけれども、阿部委員のご指摘のように、特に子供さんがおいでになるひとり親世帯は、就学前、就学後も含めまして生活実態が非常に厳しいということがあります。生活保護の8つの扶助の中に教育扶助がございますけれども、そこではこれまでも教育的配慮、例えば学習支援費とかそういうところで制度設計がなされていますので、そういったところも含めて特段の御配慮をいただくように検討いただければというふうに考えます。
○駒村部会長 前半の部分ですけれども、これだけぎりぎりと計量分析をやってきて、まだ説明し切れていない部分が残っている。そこに「妥当」と名前をつけるとさらに皮むきみたいになってしまうので、その辺の表現、書きっぷりは、また事務局と相談させていただきたいと思います。
 7ページのほうについては、先ほど山田先生、あるいは阿部先生、岩田先生からもお話がありましたけれども、経済的指数というものはあるのだろうと思いますが、当部会ではこれについてはぎりぎりと検証してきていない。
 経済的指数といってもさまざまなとり方があり、今、山田先生がおっしゃったように、直面している消費構造によっても効果が違ってくるだろうというお話もあったと思います。
 ここについては政府のほうできちんと合理的説明が可能なものを国民向けに出して対応していただきたいと思います。
 「改定されたい」というのは、部会がぜひともそうしてくださいと言っているというふうにとられるのではないかと阿部委員がおっしゃったので、最後の文の言いっぷりについては訂正させていただきたいと思います。部会でやっていることを抽出した部分による効果とマクロ構造全体の効果を識別した上での議論になっているということだと思います。
 ほかの委員はいかがでしょうか。次回があるとしても、次回はきょう直したところに関する文言修正が中心になってしまうのではないかと思いますので、林委員、庄司委員からもぜひともコメントをいただきたいと思います。
 庄司委員、どうぞ。
○庄司委員 1つは、16年の検証、特に19年の検証、そして今回私たちがやっているところの関係で、ここの部会が何を課題にしてきたのかということと、その課題がどこまでこなせたのか、あるいは次に持ち越されるのか、つまり、課題として残されたことは何なのかというのをもう少し明快に書ければ、先ほどから何回か出ている国民にわかりやすいとかそういう意味でもまとめの意味がはっきりしたのではないかと思って、何度かこれを読み直してみたのです。
 「基準部会の役割」と冒頭のところに書いてありますが、特に常設された部会というのは今回が初めてですから、そこで何が求められているのかというのが、先ほど岩田部会長代理が御指摘されたように、「倣い」というふうに言われると、そうではないのではないか。実はここら辺はとても重要な気がしました。
 私は、前の部会にも関係してこられた岩田先生などと比べて理解が十分でない、どちらかというと理解力は一般国民寄りと何回か申し上げたのですけれども、そういう者からこれを見たときにどういう形が一番わかりいいか。何せ時間がもうなくて、そこまでできないという面もあるでしょうけれども、でも、先ほどの岩田先生からの御指摘が出ないぐらいのまとめに冒頭のところもしておかなければいけないかなと思います。
 大変御苦労ではあると思うのですが、16年、19年、そして今回は何が一番大きく違っているのかというのをもう少し明確に冒頭のところで書いていただければ、後のほうの読み方の構えが少し違ってくるのではないかなというのが一つ感じたところです。
 もう一つは、全消の分析を私たちはじっくりやりたいという構えでずっと臨みながら、なかなか結果が出なかったために、あらというほど急に区切りが一つついて、報告書段階になる。そこのところがちょっと厳しいところで、これも予算に反映できる部分があればというところが当然あるかと思いますが、でも、この結果で、では、ここを下げようとか、ここを上げようとか、そういうものを私たちが出してきているわけではないというふうに思うのです。
 この報告書が違う読み取られ方をされ、どこかでひとり歩きして使われたりしないようにするために、冒頭のところと最後のところで、はっきりとさせることができなかったことはできなかったというところをきちっと書く。御苦労でも事務局と部会長、部会長代理で最後のチェックをお願いしたいというのが私の意見です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 大変重要な御指摘で、今回の改定、検証の方式は一体どういうものか一言で言えというと、確かになかなかいい表現が入っていない。この会をずっとやっていて、設計自体がかなり古い経済指数、消費構造データに基づくところがあったのではないか。したがって、低所得者世帯の消費行動の構造までさかのぼって実態の低所得者世帯の構造はどういう構造になっているのだろうか、年齢が上がるあるいは世帯規模がふえるとどうなっているのだろうかというところ、そのエッセンスを抽出した結果がこうなっているのであるというところにとどまっている。
 7ページのエに書いてあるように、推計値の平均は出してみました。この推計値の平均が理想だからという意味のものはないわけであります。この辺は誤解されないような読み方をしなければいけない。そういう意味では、入り口のところでもう少しきちんとした意義づけ、役割。最後のところで限界。限界も、第1・十分位を使うに当たってのさまざまな問題点やインパクトに対する留意点を9ページなどに書いてありますけれども、その辺がもう少しわかりやすくなるように、あるいは国民向けの要約みたいなものも考えなければいけないのかなと思います。重要な御指摘だったと思います。
 ただ、時間もかなり切迫している状態で、次回が18日ということでございますので、要約の部分は少し用意させていただいておくとして、今の評価の特徴とか限界についてはなるべくどこかで書き込むような形にしたい。事務局とまた相談したいと思います。
 林委員はいかがでしょうか。
○林委員 それでは、もし修正されるのであればということで、3つほどコメントを申し上げます。
 1番目は年齢のブロックです。これは前にも気になったので申し上げたのですけれども、6ページの(1)のアのところです。8ページの左上のグラフは「70~」というところで1つの区切りになってしまっているのですが、この部会の第1回のときにいただいた資料を見ると、70歳以上がとてつもなく急カーブで人数がふえているということで、70歳以上を全部ひとくくりにするのでなくて、80歳以上とか、あるいは75歳以上とか、区切りはわからないですけれども、そこをもうちょっと検討する必要があるのではないか。何か一言あったらいいかな。そうしないと最初の部会の資料と整合性がとれないのではないかというのが1つ目です。
 2つ目は8ページの右下のグラフ、級地です。ところが、7ページのウを見ると3行しかなくて、「小さくなっている」というのは間違ってはいないのですが、そうであるなら級地区分そのものの見直しにも踏み込む必要があるかもしれないということを、そんなに長く書く必要はないと思うのですけれども、せっかく検証したのに3行ではもったいないような気がします。
 あと一つは、栃本委員も御指摘されていたのですけれども、ほかの制度との体系的な分析ないし検討をどこでするのかということです。もし盛り込むとすれば、9ページの下から2番目と3番目の○、3行、2行となっていますが、この辺のところにほかの扶助とのかかわり合い、まだ踏み込んでいない、体系的に考える必要があるということを入れる。
 なぜそれを申し上げたかというと、2ページの一番上のところで医療扶助のことが指摘されていますけれども、ここで終わってしまっているのです。だから、どこかで締めたほうがいいと思うので、2ページの一番上で触れているのであれば、この文言を9ページの下のほうでどこかに一言入れておけば首尾一貫するかなという気がしました。
 以上です。
○駒村部会長 御意見をどういうふうに反映させるか、事務局と検討してみます。
 なかなか時間が足りなくて、まだ取りこぼしたところがあると思います。
 岩田先生、お願いいたします。
○岩田部会長代理 ちょっと繰り返しになりますけれども、今回は手法が変わっているわけです。事務方がこれまでとは変わったと言いにくいというお気持ちはよくわかるのです。その都度違うことをやってきたということになりますので。でも、それは水準が均衡したと言ったときに、その後どうやってその均衡を検証するのかについて、余り考えないで来てしまったのではないか。
 その後、加算問題のときに最初の検証が入って、それから平成19年の検証になったので、その都度何とかしなければという先ほどの宿題、マーケットバスケット時代と相対比較時代の齟齬の問題を、あれこれやったと思うのですが、今回は、それをさらに徹底してみるとこういうやり方なので、大分今までの出方とは違いますよということがよくわかっていただけるような書き方を全体的に少し考えていただいた上で、私たちが読んでも結構大変なものですので、要約版のようなわかりやすいものをぜひつくっていただければと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 阿部さん、お願いいたします。
○阿部委員 最後の結論のところで世帯類型別に影響の度合いを書いてくださっているのですけれども、母子世帯について書いていないのです。ですので、ぜひここは母子世帯についても書いていただきたいと思います。
○駒村部会長 事務局、いかがでしょうか。母子世帯について、準備のほうはよろしいですか。
○西尾補佐 準備させていただければと思います。
○駒村部会長 3ページの2.の?あたりについて、阿部先生から簡単に御説明いただければと思います。
○阿部委員 説明ということで、ちまたには2番がきちんとした理由になっているのかという疑義のようなものが回っていますので、学術的な背景をきちんと説明させていただこうと思います。
 まず、ここで重要なのは必需的な耐久財の消費を見ているということで、「必需的な」というのが不可欠な形容詞なのです。なぜかといいますと、そのほかのいろいろな耐久財は、所得階級によって全て保有率に差があります。例えばテーブルセットであってもそうですし、家の中にあるほとんど全てのものがそうだと思います。それが全て悪いと言っているわけではない。
 ただ、必要不可欠なものについては差があってはいけないだろう。例えば冷蔵庫が生活するのに不可欠なのであれば、冷蔵庫はどの世帯階級でも同じぐらい保有されているべきだというのが、相対的剥奪によって貧困を判断する方法として今、国際的にも認められている方法なのです。
 ですので、ここで比較するのは必需的な耐久財でないといけない。何が必需的なのか、何が必需的でないものなのかというのを誰が判断するのかということを選定するために、一般市民の過半数が絶対に全ての人が持つべきだと思うものについて調査をしており、その調査結果をもとに選ばれたもののみに、この資料にある「必需的な耐久財」という言葉を使っていただいております。
 そこで、第1・十分位と第2・十分位に差がないというのは、ある意味では第1・十分位がほかの分位に比べて特に貧困であるという証拠が見つけられなかったということで、ここで出すのは妥当だというふうに考えられると思います。
 逆に必需品以外のものを比較して、ほら、こんなに差があるのではないかと言っても、第1・十分位は他の分位と違うという根拠にはならないですし、同じだという根拠にもなりません。
 解説でした。
○駒村部会長 どうもありがとうございます。
 では、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 コメントです。この後にこの報告書を考慮していただきながら具体的な政策のプロセスに入っていくと思うのですけれども、そのときに2つ考えていただきたいのは、冒頭で栃本委員がおっしゃったように、ロールズ的な社会正義に立てば、価値判断ということになれば、所得再分配というのは、最も恵まれない人を考慮に入れて、そうした人の厚生を高めるものとしてあるべきだという考え方がありますので、そういった価値判断、どういうものをとるかというのをよく考えていただきたいということです。
 2点目は、具体的にその政策のプロセスに移った段階で、一旦形成された消費構造、暮らしを調整するというのはかなり難しい。今回の検証の重要なところは、相対的平均指数法みたいなものを使えば上がるところと下がるところ、両方が出てくるということなのですけれども、消費水準が上がる場合に消費構造を調整するというのはそれほど難しくないということはすぐわかるのですが、消費水準が下がった場合はそうした調整にかなりの時間がかかるということも簡単に予想されるわけです。
 阿部先生が先ほどからおっしゃっているように、例えば子供に注目すれば、子供のための習い事などを諦めなくてはいけないとか、そういった事態はなるべく防がなくてはいけないわけですけれども、そうした何らかの政策にこの報告書を考慮して反映していただく場合には、一旦形成された消費構造、暮らしのあり方を調整することがいかに難しいか、時間がかかるかということについても十分に配慮していただければと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 今回使ったデータは21年ということで、時間もずれている、あるいは大きな調整が出てくる可能性があるとしても、9ページに出てくるようなさまざまな分析上の課題も一方であり、今、山田先生がおっしゃったような生活調整の時間もかかるということで、ステップ・バイ・ステップで丁寧に時間をかけて、再度追加検証をしながらやっていただきたいという御意見だったと思います。
 私のマネジメントが非常によくなくて、どこからでも好きにと言われたので、たくさん出てきて、結局、参考資料のほうの検証方法についての解説部分が、皆さん、読んでください程度になってしまって、まだ不足している部分、特にフロアの方には十分な解説ができていない部分があるのではないかと思いますけれども、きょう設定した時間にはもうなっておりますので、きょうのいろいろな御意見、中にはちょっと重たいものもありますが、なるべく尊重して報告最終案には反映したいと思います。
 ただ、具体的な検証結果についてはデータで行ってしまっておりますので、数字の部分については、誤読があるかどうか非常に心配なところでありますけれども、部会としては了承したいと思います。
 きょうの席上のさまざまな御意見を反映して最終案を事務局から提出していただきたいと思います。
 栃本さんから格調高くという難しい要求もあったと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 最後に次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
○古川課長 座長、1点よろしいですか。
○駒村部会長 どうぞ。
○古川課長 きょう、いろいろと御指摘をいただきましたので、それらを踏まえまして次回に向けて修正をさせていただきたいと思います。きょうの議論について確認をいたしますと、今回私どもが基準部会に御検討をお願いしたものは、手法も含めて3要素はどういう影響があるのか、消費の実態と基準というものに乖離があるのかないのかという事実関係を合理的に説明できるかということを検証していただいたということであって、それを踏まえて、例えば基準を具体的にどうするとかいうところまで基準部会の御判断をいただいているものではないということでございます。
 政府として、社会保障審議会生活保護基準部会として報告を最終的にいただいたという前提に立ちますれば、当然にそれを考慮して判断をするということであります。
 ですから、ここの【参考】にある数字もあくまで全国平均ということでありますし、それが何かを示唆するものではない、いわば傾向を示すものであると我々は理解をしているというところでございます。

○駒村部会長 では、次回の御案内について、よろしくお願いいたします。
○伊沢補佐 次回は明後日、1月18日金曜日の10時から、場所は省内の9階にございます省議室で行われます。よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。
 御多忙の中、大変ありがとうございました。


(了)

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