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2012年9月20日 第37回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録

職業安定局建設・港湾対策室

○日時

平成24年9月20日(木)17:00~19:00


○場所

厚生労働省職業安定局第一会議室(12階)
東京都千代田区霞が関1-2-2


○出席者

公益代表

鎌田座長、柴田委員、大橋委員

労働者代表

古市委員、諸澤委員、山下委員

使用者代表

加藤委員、才賀委員、福田委員、山内委員

事務局

黒羽職業安定局次長、福士建設・港湾対策室長、佐藤建設・港湾対策室長補佐

オブザーバー

国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課 東谷労働係長

○議題

(1)新助成金の創設について
(2)建設労働者の雇用の改善等に関する法律第14条第1項の規定による実施計画の変更認定等について

○議事

○鎌田座長 第37回 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会を開会します。まず、本日の委員の出欠状況についてご報告します。本日は、野村委員が欠席です。
 では、議事に入ります。本日の議題は2つです。1つ目は「新助成金の創設について」、2つ目は「建設労働者の雇用の改善等に関する法律第14条第1項の規定による実施計画の変更認定等について」です。なお、2つ目の議題については、その審査につき、個別事業主の資産状況等に関する事項を扱うこととなりますので、「審議会等会合の公開に関する指針」の「審議会等会合の公開に関する考え方」のうち「個人に関する情報を保護する必要がある」及び「公開することにより特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」場合に該当するため、非公開の取扱いとします。
 まず、1つ目の議題「新助成金の創設について」ですが、7月24日に開催された第36回建設労働専門委員会において、建設事業主から徴収している1,000分の1上乗せの雇用保険料収入を活用した新たな助成金の創設について議論し、その制度の方向性について当委員会として了解したところです。今般、その新たな助成金について具体的な制度内容が策定されましたので、その考え方や内容について事務局より説明していただきます。それでは、事務局から説明をお願いします。
○佐藤補佐 前回7月24日の建設労働専門委員会において、新たな助成金の制度の大枠についてご了解をいただきました。その際、条件として、新たな助成金制度の目的や背景などを明確に提示すること、また、それを踏まえて新たな助成金のネーミングについて併せて検討すること、助成金の効果把握や検証を行うことが提示されました。今日の委員会においては、これらの条件についてお答えする形で、資料に沿ってご説明します。それから、8月末に財務省に平成25年度の概算要求書を提出しましたので、これに基づいて助成メニューの主要なものの助成率や限度額についてご説明します。
 資料1と資料2をご覧ください。資料1において、現状のデータに基づき新たな助成金の創設の背景や目的をフロー図の形でまとめました。資料2の1頁に、その概略を文章で記載しました。それでは、資料1に沿って、新助成金創設の背景や目的を説明します。
 まず、資料1の上段に「技能労働者の現状と将来推計」を示しています。左上の部分、技能労働者の現状ですが、就業者全体が減少する中で、特に技能労働者の減少は顕著です。建設投資のピークである平成4年から比べ、平成23年は20%の減少、技能労働者数のピークである平成9年から比べると、平成23年は30%の減少となっております。一方、営業職を見ると、逆に増えている状況であり、建設業界では技能労働者が減って営業職が増えている現状が見られます。
 中央上の部分ですが、就業者の高齢化が進展し、若年層が非常に減少していることがデータでわかります。全産業と建設業で比較すると、55歳以上の就業者の割合が全産業で28.6%に対して、建設業では32.8%です。若年労働者に至っては、他産業との差が非常に大きく、就業者に占める若年者の割合が全産業で17.3%、一方の建設業では11.8%で、若年労働者が1割程度しかいません。
 右上の部分は、「建設産業の再生と発展のための方策2011」や「同方策2012」で示されている国土交通省の将来推計ですが、建設投資額が平成22年と同額との想定で、このまま推移した場合、技能労働者が平成42年度では約58万人の不足となります。また、今から8年後の平成32年では約22万人の不足となっており、懸念が非常に大きいということです。このままいけば、建設業自体の持続可能性についてはもちろんのこと、建設技能労働者にとっても、過度に仕事の負担が集中したり、雇用管理が行き届かなくなったりといった問題が発生することが懸念されます。
 このような状況を踏まえて、主な課題について中段部分に整理しました。主な課題として5つ提示しております。課題の一つ目は、低賃金です。平成23年度の賃金状況を見ると、全産業で年間給与が470万円余りなのに対して、建設業では、男性が400万円余りです。製造業と比較しても、製造業自体リーマンショックなどの影響から落ち込んではいますが、それでも建設業より50万円ほど高いデータとなっています。課題の二つ目は、長時間労働です。建設業の労働時間が年間で2,000時間を超えているのが現状で、他産業と比べ非常に長いです。現場の方のお話を伺うと、土曜日あるいは祝日にも働くことが多い。日曜日はお休みですが、土曜日には現場に出ている状況が続いていることが、データに反映されているものと思います。
 課題の三つ目は、社会保険等の未加入企業が多く存在する点です。国土交通省の平成23年の公共工事労務費調査において、年金・医療・雇用保険の3保険とも加入している企業の割合を見ると、主に技能労働者を雇用している下請企業では、1次下請で55%、2次下請以下で44%の加入率というデータとなりました。製造業では7割程度の企業が社会保険等に加入していると言われていますが、それから比べるとかなり低いと言わざるを得ません。
 課題の四つ目は、労災事故の発生率が高い点です。建設業の就業者数が全産業の就業者数に占める割合7.8%に対して、全産業における建設業での労働災害での死亡者数の割合が33.4%と、特に重大事故の発生率が高くなっています。
 課題の五つ目に、技能継承に問題がある事業所が多く存在する点です。これは職業能力開発局の能力開発基本調査の結果ですが、建設業では約半分の事業所が、技能継承を進めるに当たって問題があると回答しております。例えば、業務が忙しすぎるとか、高齢化によりOJTをする機会が減っている、受け継ぐ若年者がいないなどの要因が考えられます。
 これらの課題が、実際に若年者の雇用にどのような影響を与えているかを示すデータを中段右側に示しています。若年入職者の減少ですが、新規学卒者のうち建設業に就職した者の割合は平成8年度が8.2%でありましたが、平成23年度は4.9%にまで落ち込んでいます。先ほど、建設業の就業者数が産業全体に占める割合として7.8%と示しましたが、それに比べても新規学卒者のうち5%以下しか入職していない現状は、若年者の全体の割合が減少を続けていることを示しています。若年労働者の高い離職率とありますが、これは34歳以下の離職率を製造業と比較しておりますが、建設業の離職率が高いことがわかります。
 このように建設業における課題やその影響を分析しており、国土交通省においても「建設産業の再生と発展のための方策2012」の中で技能労働者の不足が深刻で、技能労働者の確保・育成が非常に大きな課題とされています。国土交通省と連携して、「方策2011」に掲げられた社会保険等の未加入問題対策を行っていますが、これも技能労働者にとって魅力ある職場環境を実現するという目的からの取組です。今般、国土交通省と建設業における課題とその対策について協議を重ね、「若年労働者の確保・育成」「技能継承」を両省共通の重要課題としてとらえることとし、その政策の方向性として、新しい助成金の創設を提案しました。対策の具体的な内容については後ほど説明しますが、先ほど申し上げた課題にそれぞれ対応した新たなメニューについて、資料1の下段でまとめています。
 また、前回の専門委員会では、効果検証をしっかりと行うべきとのご指摘がありました。資料1の下段の右側のとおり、この助成金の内容を具体化していく中で、どのような項目で効果検証すべきかを検討してまいります。助成金受給者の全数とはいかないと思いますので、部分的なサンプルから効果を検証していく手法を取っていきたいと思います。以上が新助成金の目的、創設の背景及び効果検証など、前回の指摘を踏まえた説明です。
 次に、具体的な助成メニューの内容について、資料2の2枚目と3枚目に示しております。前回も大まかな内容をお示ししましたが、今回、平成25年度概算要求の内容に関連し、助成率など具体的な中身について説明します。2枚目が事業主への助成、3枚目が団体への助成という構成ですので、まずは事業主に対する助成を説明します。
 1つ目のメニューは、「雇用管理改善制度の導入支援」です。これは、中小建設事業主が若年労働者の入職や定着を図るために、例えば就業規則や労働協約を変更することによって、雇用管理改善につながる制度を導入し、実際にその制度を適用した場合に助成する、いわゆる、導入支援を設けました。項目が3つ示されていますが、左から「評価・処遇制度」「研修体系制度」「健康づくり制度」となっております。助成額は基本額として、評価・処遇制度の導入に40万円、研修体系制度と健康づくり制度の導入に30万円で検討しています。さらに、若年労働者の採用等に重点的に取り組む事業主に対して、10~20万円の上乗せ助成することを想定し、検討を進めている最中です。支給要件としては、制度を導入し、実際に適用することで助成の対象となります。単純に導入しただけでは助成金は支給されないのでご留意ください。
 2つ目は、「若年者に魅力ある職場づくり支援」です。これは、中小建設事業主が若年労働者の入職や定着を図るための「魅力ある職場づくり」につながる取組を実施した場合に助成するものです。先ほどの1つ目のメニューは導入支援ですが、これは取り組んだ結果に対する助成です。資料のとおり、中小建設事業主が建設雇用改善法に基づいて行う雇用管理責任者の研修を実施する場合、事業所見学会などやインターンシップを行って、若者に建設業の魅力を伝える取組を実施した場合などに助成することを考えています。助成率は経費の3分の2、上限額を200万円と想定しています。
 3つ目は、「建設技能の向上支援」です。これは、事業主における若年労働者の育成をはかり、また熟練技能の維持・継承を図るため、キャリアに応じた訓練を実施した場合に助成するものです。具体的には、職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を実施した場合や労働安全衛生法に基づく技能実習などを実施した場合に助成するものです。助成額について、認定訓練の実施に対して経費・賃金ともに助成額の定額化を検討しています。また、技能実習等の実施に対しては、経費の7割を定率助成、賃金助成の定額化を検討しています。現段階で、定額とする賃金助成は7,000円程度を想定しています。以上が助成内容の1、2、3として、若年労働者の確保・育成、技能継承に対し、重点的に支援を進めるメニューとして構成しています。
 4つ目は、それ以外の政策課題への対応として、「新分野進出への支援等」への助成メニューとして構成しています。まず新分野進出への支援ですが、公共事業など建設投資の減少によって市場縮小が今後も見込まれる中で、建設事業主が建設業以外の新分野へ進出するために従業員に訓練を実施した場合、経費の3分の2を助成し、賃金について定額の助成を行うことを考えています。定額となる助成額は先ほどと同様に7,000円を想定しています。次に、被災三県における作業員宿舎等の確保への助成です。被災三県において震災により民間の宿泊施設が倒壊流失したことに加え、復興工事の増加で宿泊施設が不足している状況に鑑みて、被災三県の建設現場に設置する作業員宿舎や作業員施設をリース、レンタルで整備する場合に、経費の3分の2を助成することを考えています。以上が事業主に対する助成です。
 3頁目をご覧ください。こちらが団体に対する助成です。先ほどの事業主に対する助成の2番目の項目と同じですが、団体として「若年者に魅力ある職場づくり支援」に取り組む場合に助成します。例えば、2つ目の「○」の人材確保、職場定着に係る諸問題の改善を図る事業、その成果・ノウハウを普及させる事業に対して助成します。助成率は、経費の3分の2とし、団体の規模に応じて上限額を1,000万円から2,000万円と考えています。地域団体の場合に上限額1,000万円、都道府県団体や全国団体に上限額2,000万円を想定して検討しています。3つ目の「○」の「職業訓練促進事業」ですが、いわゆる事業主団体ではなく、富士教育訓練センターのように、建設工事等に関して他県を含めた広域的な職業訓練を実施する団体が、若年労働者のスキルアップを促進する事業を実施する場合、内容に応じて経費の2分の1または3分の2を助成することを考えています。以上が、助成率などを含めた助成メニューの内容です。ご説明した内容についてご議論いただき、制度の主要メニューや仕組みについてご了解いただければ、さらにメニューの詳細について事務局で具体化を進めてまいりたいと考えています。
 それでは前回の専門委員会でも説明しましたが、再度確認の意味を込めて、現行の「建設雇用改善助成金」の助成メニューとの関係を改めて説明します。現行の「建設雇用改善助成金」のパンフレットをご覧ください。この裏面に、助成メニューの一覧が記載されています。現行の建設雇用改善助成金のメニューについては、「若年労働者の確保・育成」「技能継承」に特化したかたちで新助成金に盛り込むものもありますが、現行助成金の廃止とともに、新助成金に盛り込むことなくスクラップするメニューがございます。
 1つ目は、支給実績の低調なメニューです。パンフレットの裏面?「建設広域教育訓練」に「受講援助」ですが、広域教育訓練を受講する際の旅費への助成です。支給実績が低調なことからスクラップします。
 2つ目は、プレハブの作業員宿舎や簡易トイレなどが工事現場に安価に広く普及している現状を踏まえ、これまでのハード面への助成をスクラップします。具体的にいうと、パンフレット裏面?の右側の「助成率及び限度額」欄の「作業員施設などの整備等雇用改善の事業に要する経費の2分の1、200万円を限度」をスクラップします。ただし、先ほど申し上げたとおり、被災三県のみ、被災地対策として継続していきたいと考えています。
 3つ目は、資料1で他の産業と比べ、建設業が長時間労働で低賃金であることを説明しましたが、労働時間内において事業主の責務として能力開発を促進させることが、今回掲げる「若年労働者の確保・育成」のために進めるべきと考え、労働時間外の訓練への助成メニューをスクラップします。具体的には、パンフレット裏面?の「通信教育訓練」です。以上、現行の建設雇用改善助成金で今回スクラップするメニューを再度ご確認ください。
 資料3をご覧ください。これが前回の委員会で、新助成金の名称について改めて検討すべきとご指摘いただいたので、本日3案を提示します。前回提案しました案1の「建設雇用安定助成金」に加えて、案2の「建設労働者確保育成助成金」、案3の「建設雇用環境向上促進助成金」を追加提案します。「○」が根拠で、「●」がデメリットあるいは課題を記載しています。案1と案2については、資料3の2枚目に建設雇用改善法の抜粋を付けていますが、基本的に助成金はこの法律に基づいていますので、名称がこれに則る必要があると考えています。案1と案2は、法律上の文言としてストレートに出てくる部分を下線で提示しております。案3は、一部分の記載はありますが、ストレートとまでは言えないと考えます。
 また、案1は、若年労働者の確保・育成、技能継承がもたらす最終目的が技能労働者の雇用の安定ですから、まさに最終目的に則った助成金の名称と言えると思います。案2は、今回、若年労働者の確保・育成に主眼をおいた助成金として創設しますので、それに直接的につながる印象の名称であると考えます。案3は、昨年度の検討委員会における調査結果でも、最近は日給月給制が増加し、労働者の処遇が低下していると言われており、処遇を向上しなければならない観点で、雇用環境向上を目指すという名称を提示しました。資料3の内容を踏まえ、後ほどご議論をいただいた上で決定されればと思っています。以上、資料1から資料3まで説明しました。
○鎌田座長 いまご説明いただいたことを一括で議論します。質問や意見など、自由にご発言をお願いします。
○山内委員 資料2の2頁の「2 若年者に魅力ある職場づくり支援」ですが、非常に結構だと思うのですが、資料1にもあるとおり、魅力があるためには他産業との差、低賃金、長時間労働、若年者の不足など、この辺の課題の改善が大前提になると思うのです。
 たしか、昨年度のみずほ情報総研委託のアンケート調査でも、賃金の安定、仕事の確保、安全の確保が重要であると、技能労働者の方たちが言っています。資料1の上段の中央の表で、若年者29歳以下が、建設業から減って高齢者が増えていますが、資料1の中段の左側の賃金の表にあるとおり、賃金が産業全体で減っているので、建設業も減るのは当然ですが、下がり方の勾配が急な部分、例えば平成13年から平成14年、平成18年から平成19年、平成21年から平成22年のところで大きく下がっています。そして、若年層の減少を見ると、全産業から見て勾配がきついのです。賃金は労働者全体の平均で出ていますが、若年層で見ればもっと低いと思います。やはりこういうことが一番問題ではないかと思います。
 資料2の3頁の団体助成の「2 若年者に魅力ある職場づくり支援」の中で、具体的な支援項目として、月給制や完全週休2日制導入促進に係る啓蒙活動や啓発活動と書いてあるのは非常に結構なことと思いますが、こういう措置を実際に実施するのは個人事業主ですよね。そういう意味で、助成と連動するためには、月給制の導入などに大きく助成するとなると、「1雇用管理改善制度の導入支援」の就業規則や労働協約等の変更などにもリンクすると思いますが、1と2を合わせて定額30万円から60万円の額では、とても就業規則等を変更してもらえるとは思えないのです。もっと、大きく重点を置いてはどうかと思いました。
○鎌田座長 いまのご質問の趣旨はお聞きのとおりですが、とりわけ、いま事業主助成のところで、「月給制や完全週休2日制導入促進に係る啓蒙活動」とありますが、基本的に事業主自身がこういう改善を行うのであるから、事業主に対する助成の観点からいうとこれで十分か、という趣旨と思いますが、ご回答がありますか。
○福士室長 この部分、特に事業主助成の「1雇用管理改善制度の導入支援」は、取組内容により、それぞれ40万円、30万円の助成額を想定していることを説明しましたが、こちらの助成金ではそれに上乗せする形を考えており、基本部分は他の産業でも中小企業に対して、同様の制度を導入していく予定です。
 そういう制度の並びの中で、建設業だけさらに助成額を上乗せするというのは、何か特別な理由を考えないと対外的に説明が難しいと思います。
 特に、経団連からは、介護分野もそうなのですが、特別な者に対する助成は基本的にはやめるべきと指摘され、そのような方向性の意見が、雇用保険二事業懇談会などではかなり多く指摘されてきています。ですから、建設業であるから環境が厳しいということで、さらに上積みというご意見ですが、対外的に説明するのが厳しいかと考えます。
○佐藤補佐 もう1点、日給制を月給制にシフトするところに直接的に作用することにはなるかどうかわかりませんが、評価・処遇制度の導入は、処遇に合わせた給与体系を作ることを想定しているので、導入によって労働者の処遇を上げてほしいと考えています。
○山内委員 月給制にしないと、週休2日制にはなかなかならないですよね。
○佐藤補佐 そのとおりです。現実問題として、先ほども言いましたが、土曜日、祝日などは、実際に工事が行われている状況があります。
○鎌田座長 違うテーマでも結構ですので、何かご意見ありませんか。
○山下委員 いまご説明いただいた新しい助成金について、これまでの議論の経過もありますので、この方向でまとめていただいて結構かと思います。少し工夫はしていただいているようですが、活用する側の立場で言うと、具体的な制度設計のなかで、是非使い勝手のいいものにしていただきたいと思います。
 年度ごとに評価の実施をするようですが、新しい助成金制度を開始すれば、もちろんすぐに結果が出るということもあるとは思いますが、そう早くに効果が出ないこともあると思います。人を育てる観点から、評価については、多少長い目で見ることを考慮いただきたい。
 名称ですが、前回、案1が出されて、現行の助成金と少し似ているというご意見もあったと思いますが、今回提示いただいたものも含めると、確保育成の文言が入っている案2がよいと思いました。
○福士室長 使い勝手の部分ですが、これから支給要領等を作っていき、現行の助成金より使い勝手が悪くならないよう、当然我々も努力していきたいと思います。
 制度の評価の点ですが、今後どういう評価をすべきかと考えたとき、まずは新しい助成金が実際にどういう使われ方をされて、どういう影響を及ぼすのかを見定める必要があると思っています。新たな助成金の運用が開始されて、少し実績が出たところで、評価指標の設定や検証方法について、提案したいと思います。
○佐藤補佐 先ほど賃金の定額化などを説明しましたが、なるべく申請者が面倒な計算をしなくてもいい方法を取り入れるなど、少しでも工夫していきたいと思っています。
○柴田委員 「1雇用管理改善制度の導入支援」は、使う人にとってとても難しいと思います。「1雇用管理改善制度の導入支援」のところに、評価・処遇制度、研修体系制度、健康づくり制度の3項目がありますが、その上の説明部分に、「入職や定着を図るため、就業規則・労働協約等を変更することにより雇用管理改善につながる制度を導入し」と記載されています。つまり、評価制度や処遇制度の以前に、就業規則は作らなくてはいけない、そして変更しなければならないですよね。
 その中では、評価・処遇や研修制度でもなく、例えば週休2日制などを入れていくことも対象としてOKになるのですか。
○福士室長 制度設計として、資料ではこのように例示していますけれども、「など」とあるとおり、今後、支給の対象とすべきかどうか検討していきますので、現段階ではある程度広い範囲として考えています。
○柴田委員 いろいろ説明を聞いていると、評価・処遇制度の前に、まずは就業規則が必要ではないかと思っています。たぶん中小企業が本当は作らなければいけないのに、実際にはそれらを作っていないところが取り組むべきものと思うのです。
 新たな助成金を使いやすくするためには、モデル就業規則みたいなものを作ってはどうかと思います。例えば労働時間、休日など、就業規則のパーツとしての理想的モデルをこちらで提示や提供してはどうかと思います。労働基準局が作っているものは、全産業に汎用的ですが、建設労働向けとして、多少手が届くぐらいのモデルを作って、それを事業主が取り入れたら助成されるぐらいにしないと、実際には使いにくいのではと感じました。
 名称については、山下委員の発言がありましたが、私も名称は案2がいいと思う一方で、資料1を見て労働者の確保以前に雇用改善が必要ではないかと思うので、労働者確保の前段階として、「雇用改善安定助成金」との名称はどうかと思いました。未だに雇用改善を頑張らなければいけないという必要性を感じる名称であれば、こんな助成金はいらないと批判されにくいと思もいます。
○鎌田座長 柴田委員の発言は、新助成金の名称は「建設雇用改善安定助成金」にしたらどうかというご提案と理解すればよろしいですか。
○柴田委員 はい。「雇用改善」の文言を入れたほうがよいと。
○鎌田座長 現行の助成金は「建設雇用改善助成金」ですから類似しますね。新たに助成金を創設するので、看板の掛け替えの印象になるのはまずいだろうと思料しますが。
○福士室長 柴田委員のご意見はごもっともです。しかし、現行助成金を廃止せよと言われているので、現行の助成金と類似する名称は避けるべきかと思います。
○柴田委員 わかりました。
○福田委員 前回も申し上げたのですが、一つの会社あるいは団体が受ける助成金額が少ないのではないかと思います。福士室長がそれになりに多額であるとおっしゃっていましたが、導入支援の40万円、30万円では少ないと思います。山内委員の発言もありましたが、本気できちんとした取組を進めるとなったら、会社としては外部の人材や助言を受けて就業規則など作っていくことも多いので、この金額で取組が進むのかなという気がしています。
 先ほど柴田委員の発言もありましたが、せっかく取り組んだけれども助成金を受ける要件を満たせなかったということになる建設会社が多くなるのではとも思います。日々の仕事が忙しくて、事務手続きに手が回らない状況ですので、何かモデルのようなものを作ったうえで、それに合わせて取り組む形としたほうがよいと思います。申請したら、もう一度やり直してこいと指導されれば、そんなことなら40万円ぐらいの額なら要らないと考えてしまわないか心配しています。
 それから、先ほどの名称ですが、私は案3の「建設雇用環境向上促進助成金」がいいと思います。いかにも雇用環境を向上していかなければならない強い思いが出ている気がします。
○福士室長 1つ目の助成額が少ないのではとの指摘ですが、前回もご指摘がありましたので調べたところ、東京労働局管内で建設雇用改善助成金の支給を受けた1事業主当たりの支給額の平均は30万円弱でした。助成金の予算枠が、1,000分の1の雇用保険料上乗せ分の収入を財源に、今年度は総額47億円です。昨年度は、予算額に対し執行額が9割を超えているのです。一件あたりの支給額を拡大した場合にいちばん危惧しているのは、この財源の範囲内で納まるかどうかという点です。我々はそこを非常に心配しています。
 ですから、1つの方策として、来年1年間の運用実績を見てみて、予算に余裕が出てくるのであれば、助成額を一部増額するなど見直しを行っていきたいと思っています。
○福田委員 予算額で40数億円というのはそれなりに多いなと感じますが、建設業界に対象になり得る業者が多すぎるということもあるかと思います。
○才賀委員 規模の大きな企業はこの助成金を使っていないのではないかと思うのですが。
○福士室長 そうです。この助成金は中小企業を対象にしています。
○才賀委員 専門工事業者でも、30万円、40万円くらいの額ならばもらわないで自力でやろうというところがある一方で、小さな業者であれば助成金を使うと思います。
 名称については、これから若年労働者が少なくなってく課題を踏まえた案2がいいと思います。
 もう1点ですが、資料1の中段の「賃金」で、「建設業(生産・男)401万8,000円」とありますが、どういう基準で調べたかわかりませんが、実態としてこんなにもらっていないのではないかという印象です。全国建設労働組合総連合の組合員なども専門校事業者の我々と同じだろうと思いますが、一般労働者だと、いいところ250万円から300万円以下の割合が6~7割だと思います。400万円という額は、建設業で上位の2~3割はそうかもしれませんが、ほとんどの労働者はもっと下回るのではないかと思います。
○佐藤補佐 分類として現場作業に従事する者が対象となっておりますが、従業員5人以上の事業所を対象にしています。ですから、小規模零細の事業所が除かれています。
○才賀委員 できたら小規模零細では賃金がこんなに低いということを世間にわかってもらったうえで、助成金の額として、もう少し多く出してもいいのではないかと思います。
 それから、社会保険等の加入率の数値は、2次下請け、3次下請けになると、もっと低いのが現状であると思います。
○加藤委員 いまの資料1の中段の「社会保険等への未加入企業が存在」というところで、企業別では、大企業、中小企業全部含めて、いわゆる企業単位で考えて3保険とも加入している割合が84%ですが、これに対して、労働者単位で考えると、これが全部84%より下回っているのはなぜかと考えていたのですが、1社の中で、例えば層分けされてしまって、被保険者が1人でも3保険に入っていれば、企業としては加入していると答えてしまうので、企業別でいくと、高くなるかもしれないのですね。実態の数値は企業別で見るよりも、労働者別で考えないと、問題の根本解決にならないという気がします。
○佐藤補佐 そのとおりです。
○才賀委員 調べるなら、事務や営業などの社員と現場の労働者を分けて調査しないと、事務等の社員が加入していれば、「加入しています」と手を挙げてしまう。ですから、国土交通省の調査でも84%の数値が出るのはそういう理由からです。実際に調べてみると、1次下請けで働いている現場の労働者の加入率は20~25%、2次下請けは、もう10%を切る数値になります。
○加藤委員 名称の件ですが、いままでの助成金からの流れを断ち切るという意味からいうと、案2の「建設労働者確保育成助成金」というのが、ストレートではないかと思います。
○古市委員 いま才賀委員から賃金の話がありましたが、賃金構造基本統計調査の対象は従業員5人以上の企業なのです。建設業は国土交通省の調査結果でも、5人未満の事業所が55%を占めているので、賃金は実態を反映した数値ではないと思います。
 私のところ、全国建設労働組合総連合の組合員12万人に調査したところ、年収は平均で300万円割れでしたので、現実としてとても400万円には届かないと思います。
○福田委員 社会保険等の未加入対策として、国土交通省のガイドラインに沿った計画を日本建設業連合会として各会員企業に送付するのですが、1つ大きな議論になっているのが、社会保険等に加入している割合です。
 先ほど加藤委員の話にも出ましたが、企業として従業員100人のうち1人や2人でも加入していればいいという逃げ道があるのかもしれないとのことですが、国土交通省の調査も従業員の過半数とは言わなくても、かなりの人が加入していなければ「加入している」とはならないなどの縛りがないと、実効性がないのではと感じます。
○東谷係長(国交省) 確かに、資料1の中段の「社会保険等の未加入企業の存在」では、公共工事設計労務単価、あくまでも公共工事の中で企業別で見た場合に、従業員の誰かが3保険に入っていれば、加入しているという分類にしています。平成24年度調査として、内容を精査したうえでこの秋にかけて行っているところです。
○山内委員 話は変わりますが、資料2の2頁の「3 建設技能の向上支援」です。このメニューの活用は、おそらく各事業主の意思、意欲によって、非常に左右されると思います。技能講習、特別教育の助成の条件は、有給もしくは振替休日をきちんと取らせてというのが前提ですよね。
 去年の話ですが、事業主が従業員に対して講習経費の補助を結構多く出していました。しかし、有給扱いとしているところは本当に少なくて10数%ぐらいでした。ということは、多くの事業主は、講習経費を出しても有給扱いにしないので、おそらくこの助成金は使えないと思います。現行の助成金もあまり活用されないのではないかと思います。またある事業主からは、手続きが非常に面倒だという声もありました。
 来年度からすぐというわけにはいかなくても、将来的にもっとこの助成を受けるためのハードルを下げられないかなと感じています。例えば、技能労働者が講習を受けに行くときは、雇用保険の資格通知書を持っていけば助成金を受けられるとか、助成金を事業主に対して支給するのではなく、講習を実施する機関や外部団体へ助成金を支給することによって、受講料を大幅に下げれば裾野が広がって、いろいろな労働者の方が講習を受けやすくなるのではないかと思います。
 新助成金の名称については、私は案3がいいと思います。その理由は、資料2の1、2、3、4の助成メニューは、雇用の確保・安定という目的に対する手段であると思うのです。手段に対する助成なので、私は「雇用環境向上促進」がよいと思います。
○福士室長 資料2の2頁の「3 建設技能向上支援」ですが、先ほど認定訓練などの説明がありましたが、現行の助成金としていちばん利用されており、予算の8割ぐらいを占めています。例えば、事業主が労働者に認定訓練を受けさせると、キャリア形成助成金と併せて現行の建設雇用改善助成金から賃金助成される仕組みになっています。申請事業所にもよりますが、賃金助成の合計で1万1,000円ぐらいになることもあります。
○佐藤補佐 このように賃金助成が出ているので、事業主は労働者を時間外ではなく勤務時間中に訓練に出しやすいのです。新たな助成金では、技能実習であれば1日7000円定額の賃金助成を想定しています。
○山内委員 講習会の経費への助成はどうなっているのですか。
○福士室長 技能実習であれば、事業主に対して現行の助成金が支給されています。
○山内委員 いろいろありますよね。労働安全衛生法の特別講習とか、技能講習とか。
○佐藤補佐 現行の助成金ですが、助成対象となる労働安全衛生法上の技能実習の一覧表があります。その一覧表に合致すれば、訓練経費も賃金も両方助成できます。
○山内委員 賃金助成と講習会の経費の参加費の一部ということですか。
○福士室長 賃金助成と講習会の経費の3分の2、委託による講習であれば7割となります。
○山内委員 経費と賃金の両方に出るのですか。
○福士室長 はい。
○才賀委員 我々が言っているのは、1日7,000円では少ないのではないかということです。もう少し何とかならないかという話です。
○佐藤補佐 お言葉を返すわけではないのですが、若者や入職間もない方に是非訓練を受講してほしいと考えて、そういった若者などが通常の勤務でもらう日当を考えた上で、助成額としては7,000円程度を妥当な額として想定しています。助成額の増減などは、実際に新たな助成金を運用した上で予算額や執行状況などを踏まえて検討を進めることになると思います。
○福士室長 先ほど山内委員から、訓練機関に対して助成金を直接支給して、それで労働者が安価に訓練などを受講できるようにしてはどうかとのご提案があったのですが、訓練機関に直接支給した場合に不正受給などの温床になる可能性があります。訓練機関がみんな健全なところであれば問題はないのでしょうが、実際に訓練が実施されているのか、訓練内容が経費に見合うものなのか、疑義が生じるケースが多々あります。仕組みとして難しい部分もあるので、やはり事業主自身が責任をもって、どの労働者が実際にどのような訓練を受けて経費がいくらかかったのかをハローワークに申請していただくことを原則と考えています。
○鎌田座長 そろそろ議題1についてのまとめに入りたいと思います。今までいただいたいろいろなご質問・ご意見については、今後制度の細部を作る上で参照していただきたいと思います。ここで決めなければいけないものとしては、新助成金の名称です。現在のところ、案2を3名、案3を2名が支持されているという状況です。発言されていない方で、名称にご意見があれば伺いたいのですが。
 事務局の説明では、基本的には建設雇用改善法に、とりわけ目的の中で言及されている文言などを1つ基準としたい意向のようです。その観点からは案1と案2が当てはまり、案3はストレートに目的の中に定められていないということでした。私たちが決めた新助成金について、多く活用していただくため、わかりやすいネーミングを作るということは、大切なことです。
 新たなご意見もないようですので、私にご一任させていただくことでよろしいでしょうか。それでは、3人の委員が支持されていることと、法律の目的の中に文言があることを勘案して、案2でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○鎌田座長 僭越ですが、新たな助成金の名称は「建設労働者確保育成助成金」ということになりますので、この名称が少しでも早く定着するように、労使の方におかれても周知などご奮闘をお願いしたいと思います。
 議題1の議論の中で、細かいことですがいくつかご意見がありました。私の記憶で申し上げれば、「雇用管理改善制度の導入支援」のところで、各種の支援措置の中身として、いろいろなメニューがありますが、就業規則などのモデルを作成して事業主が使いやすいように協力することが効果的であること、メニューごとの助成額がやや低額であること。
 また、建設業の大半を占める小規模零細企業などで働く労働者のデータなど、建設業の実態を一層反映するものを今後お示しいただければと思います。
 効果検証について、実績がしっかりと捉えられる検証方法を取っていただきたい。
 社会保険等の未加入問題に関して、当委員会で議論すべきかは別として、ご意見がいくつかありました。こういったことを念頭に置きながら、さらに細かな制度の仕組みを作っていただきたいと思います。
 では、新たな助成金の制度の内容について、名称も含めて、本委員会としては了解することでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○鎌田座長 ありがとうございます。
 次の議題に移ります。2つ目の議題は、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律第14条第1項の規定による実施計画の変更認定等について」です。これについては、冒頭で申し上げたとおり、非公開とさせていただきます。恐れ入りますが傍聴されている方はここでご退席をお願いいたします。
(傍聴者退席)
○鎌田座長 以上をもちまして、第37回 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会を終了します。本日の議事録の署名委員について、労働者代表は諸澤委員、使用者代表は山内委員にお願いいたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。


(了)

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