ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第5回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録
2012年3月30日 第5回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録
年金局
○日時
平成24年3月30日(金)15:00~17:00
○場所
経済産業省別館11階 1111号会議室
東京都千代田区霞が関1-3-1
○出席者
吉野 直行 (委員長) |
植田 和男 (委員) |
小塩 隆士 (委員) |
小野 正昭 (委員) |
川北 英隆 (委員) |
駒村 康平 (委員) |
武田 洋子 (委員) |
西沢 和彦 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
米澤 康博 (委員) |
○議題
(1)最近の経済の動向について
(2)積立金運用について
(3)その他
○議事
○吉野委員長 それでは、御予定の皆様は御出席でございますので、ただいまから第5回「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」を開催させていただきたいと思います。
皆様、お忙しい中をお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
今日はすべての委員が御出席で、武田委員が遅れて御出席で、植田委員ももうすぐ来られると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に入らせていただきますので、カメラの方は恐縮ですけれども、御退席をお願いしたいと思います。
(報道関係者退室)
○吉野委員長 事務局の方から、資料の御説明をお願いいたします。
○原口大臣官房参事官 参事官の原口でございます。私から資料の確認をさせていただきます。
本日の資料ですが、資料1-1「経済財政の中長期試算」
資料1-2「経済財政モデルの概要」
資料2-1「国民経済計算について」
資料2-2「国民経済計算における平成17年基準改定の概要」
資料3-1「負債に配慮した管理運用について」
以上はいずれも最初のものを除いて、横とじの資料となっております。
資料3-2「厚生年金及び国民年金における純支出のデュレーション及び平成21年財政検証の諸前提」
資料3-3「賃金上昇率と金利の推移について」、1枚紙でございます。
資料3—4「キャッシュアウトへの対応」、1枚紙で、第2回の専門委員会での提出資料です。
参考資料1「『平成22年度国民経済計算確保(平成17年基準改定値)」に係る利用上の注意について」
横遣いの資料が2つあります。
参考資料2「平成22年度国民経済計算確保(平成17年基準改定値)(フロー編)ポイント」
参考資料3「平成22年度国民経済計算確報(平成17年基準改定値)(ストック編)ポイント」
最後にもう一枚「小野正昭委員提出資料」です。
不備がありましたら、お申し出下さい。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
資料は右の上の方に振ってありますので、皆様、こんがらがらないように、右の上の資料番号を見ながら、議論を進めさせていただきたいと思います。
それでは、まず議題に入らせていただきたいと思います。(1)最近の経済動向につきましては、内閣府計量分析室の丸山雅章参事官、岩田安晴企画官のお二人に来ていただいております。
本日は資料1につきましては、内閣府の方から御説明を受けたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○丸山参事官 内閣府の丸山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。着席して説明させていただきます。
中長期試算の関係につきましては、資料1-1ということで1月に公表しました中長期試算の資料本体をお配りしておりますが、これは必要に応じて、後でご覧いただければと思います。
今回説明させていただきますのは、資料1-2「経済財政モデルの概要等について」でございます。こちらの資料をお手元に御用意いただければと思います。
1ページ「経済財政モデルの概要」。経済財政モデルは、マクロ経済だけでなく、財政、社会保障を一体かつ整合的に分析するためのツールということでございまして、政府の審議・検討に寄与するためにつくられた中長期の分析用の年次のマクロ計量モデルでございます。
一番下のポツに書いてございますように、基本的な構造について申し上げますと、技術進歩(外生)、労働(外生)、資本(内生)からなる供給面と需要面、それぞれ推計をしておりまして、この両者の乖離、GDPギャップが、物価や金利等の調整メカニズムによって徐々に縮小していく、こういう構造が基本的な構造となっております。
2ページ、経済財政モデルは大きく4つのブロックに分かれております。人口構造・労働供給ブロック、マクロ経済ブロック、財政ブロック、社会保障ブロックの4つでございます。
まず、人口構造・労働供給ブロックの基本的なイメージでございます。社人研の将来人口推計をベースにいたしまして、外生的に与えます労働参加率、マクロ経済ブロックから推計されます失業率などから、将来の労働力人口、就業者数などを推計する。そういうブロックでございます。
次に、マクロ経済ブロックでございます。ここには消費、投資、輸出入といった需要面、先ほど申し上げました資本、労働、技術進歩で決まってまいります供給面の項目が入っておりまして、需要面、供給面のギャップが調整され、縮小していく仕組みとなっております。
財政ブロックでございます。マクロ経済ブロックで与えられる所得、物価、金利等が用いられまして、歳入、歳出が推計されます。また、社会保障ブロックで推計される医療・介護・年金などに関する公費負担の値も財政ブロックの中で用いられるということでございます。他方、この財政ブロックで推計されます歳出は、政府消費あるいは政府投資としてマクロ経済ブロックの需要項目の一つになるということでございます。
最後に社会保障ブロックでございます。人口構造・労働供給ブロックにより与えられます人口、あるいはマクロ経済ブロックから決まってまいります賃金・物価などによりまして、医療・年金・介護などに関わる国民の負担・給付を推計するブロックでございます。
このようにそれぞれのブロックの中で計算された項目が他のブロックで用いられるという形で、経済、財政、社会保障が一体的、整合的な姿で試算される。そういうモデルになっているということでございます。
3ページで、前回いろいろと御議論のあった長期金利と賃金上昇率について、このモデルでどのように決まっているのか、その概要について、御説明をさせていただきます。
まず、長期金利でございます。下にイメージのフローチャートのようなものが付いておりますけれども、これを御参照いただきつつ、お聞きいただければと思いますが、短期的にはインフレ率の変動にも反応しつつ、短期金利に一定のリスクプレミアムを上乗せした水準に向かうように定式化しているということが基本でございます。
このうち短期金利につきましては、インフレ率やGDPギャップによって調整されるテイラールール型を取ってございます。リスクプレミアムにつきましては、公債等残高GDP比によって決まるということで、公債等残高GDP比が高まってまいりますと、長期金利を時間をおいて押し上げていくという定式化になってございます。
4ページ、こちらは1人当たりの賃金の決まり方のイメージでございます。大まかに申しまして、賃金・俸給の総額を雇用者数で割ったものを1人当たりの賃金としてございます。
右の方にあります、雇用者の決まり方でありますけれども、先ほど申しましたように、社人研の将来人口推計値を用いておりまして、それに外生で置いている労働参加率をかけまして、これは年齢階層別にかけ合せて労働力人口を求めております。その労働力人口にGDPギャップで決まってくる失業率がかかって、就業者数が求められる、さらに、就業者数と雇用者数がパラレルに動くということで、雇用者数が決まってくる、というイメージでございます。
賃金・俸給総額の方でございますけれども、こちらはマクロ経済ブロック全体でGDPが決まってまいりますが、名目GDPから定義的な関係で国民所得が決まってくる、この国民所得に労働分配率をかけて、賃金・俸給総額を求めるという定式化でございます。
労働分配率につきましては、過去の平均的な水準に回帰していくという長期的な関係に、景気変動によって、例えば景気後退期には労働分配率が高止まりするといったような短期的な変動を織り込んでいるということでございます。
以上でございます。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
今、御説明いただいた資料1-2からいきますと、ここで重要なのは3ページの長期金利がどう動くか、4ページの賃金の動きがどうか。あとはインフレのところですから、2ページにいきまして、マクロ経済ブロックから出てくる総需要と総供給から物価が決まる。こういうモデルという御説明がありました。
3ページ、4ページは、全体のモデルに対する御質問というよりは、できれば3ページの長期金利、賃金の動き、物価の3つの変数が我々の計算にとって一番重要ですので、御質問があれば、なるべくそこを中心に内閣府の方に御質問をしていただければと思いますが、いかがでしょうか。
では、西沢委員、お願いいたします。
○西沢委員 2つあります。1つは3ページの長期金利のリスクプレミアムですけれども、今もGDP比で200%くらいあるのに、金利が1%となっている状況はどう説明されて、4%に上がっていくという長期金利の予想だったと思いますが、対GDP比は何%公債残高が挙がるとリスクプレミアムが何%上がるようなモデルになっているのかということをお伺いしたいと思います。繰り返しまして、今の状況はどう説明されるのか。このまま上がっていったときに、どういう影響を想定されているのかということが1つ。
もう一つは、賃金上昇率で総報酬、賃金・俸給総額の中には社会保険料の事業主負担が入っていると思いますけれども、これも含め1人当たり賃金上昇率を求めているのかどうかも教えていただけたらと思います。
以上です。
○吉野委員長 まず、最初の現状どう考えるかは、別のところで一生懸命研究しているものですから、日本のこれだけの公債残高でなぜリスクプレミアムが出ないかというのは、簡単に言いますと、国債の需要がちゃんとあるから。つまり、金融機関の貸出しがほとんどないものですから、金融緩和で預金は入ってきます。そうすると貸出先がないので、あとは買うとしたら国債しかない。
ですから、日本とギリシャの違いは、どちらも国債の供給が増えているんですけれども、日本の場合には、国債の需要が非常に顕著に増えていて買えている。ギリシャの場合に破綻になったのは、国債の6割以上を外国人が保有していたんです。このために危機になって、外国人が逃げましたから、金利がどんどん上がってしまった。それが現状だと思いますので、そこは私は説明できますが、今後のリスクプレミアムとして、国債残高をGDPで割った、それをリスクプレミアムに行っているという理解でよろしいでしょうか。
○丸山参事官 そういうことでございます。1点目の御質問でございますけれども、公債等残高と長期金利の関係につきましては、長期的に公債等残高が長期金利を上乗せしていくという関係になっておりまして、非常に大ざっぱに申し上げますと、長期的な関係で申し上げれば、公債等残高GDP比が10%ポイント上がると、おおよそ長期金利が0.2%ポイント上がるというような関係になっております。これは長期的な関係でございますので、すぐにこれが実現するというわけではございません。足下で長期金利が低くなっているというのは、短期金利が低いということも当然影響しているかと思います。
2点目の賃金・俸給総額の定義でございますけれども、この中には今おっしゃいました社会保険の事業主負担分は入っておりません。
以上でございます。
○吉野委員長 ありがとうございます。
米澤先生、どうぞ。
○米澤委員 2点ほどお伺いしたいのですが、1点は物価上昇率です。これは3ページの真ん中辺りに物価が書いてありますけれども、GDPギャップでもって、それが超過需要になれば上がるというのはわかるのですが、長期的にはそのギャップがなくなる方向に行くということだと思いますが、そのギャップがなくなった後はどのような格好で考えていらっしゃるのか。
こちらの方の先行き2020年くらいまでだと、相変わらず1%以上安定して、上昇していくような絵が描かれていますけれども、そこの長期的なところでインフレが続いていくところはどのように裏で考えていったらいいのか。金融的な面で上がっていくと考えていいのかどうか。それが1点目です。それは前回、悩まなかったんですけれども、1%と決めて、うまくいかなかったというのが一つあります。
2点目は、先ほどの金利が何で低いのでしょうかと同じですけれども、超長期的に労働がひっ迫するというのはどこかでも言われて、それでもって成長を抑制するというのが日本経済の超長期的な展望だと言うのですが、足下で失業が増えている、就職も悪いということで、賃金も下がっているわけですけれども、このところをどういうふうに理解していったいいのかということです。要するに賃金上昇率をどのように考えていったらいいのか。
私などは人口が少ないんだから、賃金上昇率が随分上がっていかざるを得ないだろうということを想定していたんですけれども、全く足下はそうではなくて、短期的な需給のギャップでそのまま回復されると見るのか、そうでもないのかということで、その辺のところの考え方。
○吉野委員長 いかかでしょうか。
○丸山参事官 物価につきましては、短期的にはGDPギャップによって変化率が高くなったり、低くなったりするということでございますけれども、長期的には均衡的な物価上昇率に向かって調整をされていくということがございますが、長期的・均衡的な物価上昇は、モデル上は単位労働コストでございますとか、貨幣供給量といったようなもので決まってくる定式化になっております。
2点目でございますけれども、賃金上昇率は、短期的には需給ギャップがございますので、その需給ギャップが解消していく過程で失業率が下がって、雇用者数が増えていくという動きがございますけれども、長期的には雇用者数は労働力人口でほぼ決まってくるということでございますので、大体その1人当たりの賃金は労働力人口の動きを反映したような動きになるのではないかと考えております。
○吉野委員長 米澤先生のおっしゃる、少子化なので労働力が少ないというわけですけれども、それも退職した人たちが再雇用されたり、いろいろしていけば、構造的にも変わると思いますから、そんなに労働力がひっ迫するということでないかもしれないですね。モデルとはちょっと離れますけれども。
物価の方は、「物価-失業率」で表したフィリップス曲線とインフレーション・エクスペクテイション・オグメンティッド・フィリップス曲線(物価、インフレ予想と失業率の関係)いう形だと思います。
○米澤委員 後者の方で長期的なというのが聞き取れなかったんですけれども、安定的なバランスのところで、どういうふうにインフレ率が決まっていったのか。
○丸山参事官 長期的なインフレ率は、モデル上は単位労働コストや貨幣供給量の動き等によって、決まってくるということでございます。
○吉野委員長 では、川北先生、小塩先生。
○川北委員 労働分配率のところを少しお聞きしたいのですが、それが1人当たり賃金のところに影響するわけですけれども、最初の方の説明では、過去の平均水準に回帰していくという説明だったと思います。労働分配率の場合、日本では90年代の半ばくらいまで上がった後、ずっと低下してきている状況にあるので、そのときにどこを平均とするのかによって、かなり水準が違ってくると思います。この点、どういうふうに処理をされているのでしょうか。
○吉野委員長 労働分配率ですね。平均値として、どこら辺を取っているか。
○丸山参事官 推計上は80年代半ば以降、2007年くらいまでの平均を取っております。
○吉野委員長 ですから、ずっと単純平均という感じですね。
では、小塩先生、どうぞ。
○小塩委員 長期金利の決まり方について、丁寧な説明をしていただいて、どのように推計をされているかが大変よくわかったんですけれども、その関連で数字の質問をさせていただきます。
資料1—1の長期試算の結果をまとめたものがありますが、6ページと7ページに計数表がございます。そこで慎重シナリオの場合と成長戦略シナリオの場合でどのように数字が違ってくるかを見開きで比べることができます。そこで、年金運用で一番関心のある名目長期金利について見ますと、2023年という右端の数字は、慎重シナリオの場合だと3.5%となっています。それに対して、成長戦略シナリオを見ると5.0%という高めの数字が計上されています。
この違いはどこから来るのかと思ったんですが、先ほどの御説明だと、1つは物価等のファンダメンタルの要因ですね。もう一つは、リスクプレミアムですけれども、その背後には公債残高の違いがあると思うんです。そこでCPI消費者物価上昇率を見ますと、慎重シナリオが2023で1.2%、成長戦略シナリオで1.8ですね。差は0.6%ポイントですから、そんなに大きくありません。ですから、先ほどの長期金利の差をこれだけで説明するのは、しんどいと思います。
では、もう一つの要因であるリスクプレミアムの背景にある公債残高のGDP比を見ますと、それは真ん中のところにあるのですが、慎重シナリオの場合は2023年でGDP比221%、成長戦略シナリオですと184%なっています。むしろ成長戦略シナリオのほうが財政のパフォーマンスはよくなっているわけですから、リスクプレミアムは低下していておかしくないということです。
そうすると、成長戦略シナリオの5%、慎重シナリオの3.5%という長期金利の差が何によって説明できるのかが気になるわけです。これは年金運用、資産運用で結構重要なポイントだと思います。
○吉野委員長 今、小塩先生で1つ抜けていたのは、短期金利の動きがテイラールールで決まってくるところが大きく違うのではないかと思います。景気がよくなれば、テイラールールの方での金利は低くなりますね。そこのところが出ているのかもしれないです。
○小塩委員 そういう説明だったら結構ですけれども、この1.5%という両シナリオの差はどうでしょうか
○吉野委員長 短期金利のところが多分違うのではないかと思いますが、内閣府の方、いかがですか。
○岩田企画官 基本的には、今、吉野委員長がおっしゃられたように、テイラールールが影響していると思います。成長戦略シナリオの方では、我々はTFP上昇率、労働参加率、世界経済の成長率などを高く見積もっているのですが、これにより、中立的な短期金利の方も高くなっておりますので、そこでベースを押し上げているところも大きいと理解しております。
○吉野委員長 短期金利のところで大分調節ができるということだと思います。
ほかにございますでしょうか。駒村先生、どうぞ。
○駒村委員 せっかくですので資料1-1で、先ほど西沢さんや小塩さんの話にも絡むのですが、単純に資料のお願いです。資料1-1については、10ページ以降の一体改革がない場合の計数表は付いていないようですが、発表されていないのか。これもさっきの残高との関係で、リスクプレミアムがどう変動するかを見せていただきたいと思ったのが1点。
13ページの成長戦略シナリオの?労働力率の動きですけれども、どういう想定を置かれているか。ここをもう少し細かく教えてもらえますでしょうか。
○吉野委員長 お願いいたします。
○丸山参事官 資料については考えさせていただきます。労働参加率は13ページの2)の?で、例えば30~34歳の女性の労働参加率は、2009年の67%程度から2023年度の75%程度まで徐々に上昇とありますけれども、これ以外にということでしょうか。
○駒村委員 例えば高齢者はどうですか。
○丸山参事官 これは調べさせていただきます。
○吉野委員長 内閣府のモデルもいろいろなブロックをそれぞれの方が担当されているので、すべての方に来ていただくわけにはいかないものですから申し訳ないのですが、ほかにございますでしょうか。
では、米澤先生、追加があればどうぞ。
○米澤委員 具体的な質問ではないのですが、今後ここでもいろいろなことを回帰で推計していくようなことが起きること思いますが、特に日本経済で大きくどこで構造変化がなっていると考えたらいいのか。単純にバブル崩壊後辺りのデータを取っていくのが自然なのか。もっと前から取っていった方がいいのか。ないしは昭和48年ころなのかということで、その辺の知恵があったら。ないしは時系列のデータを用いた分析をしているのですが、データはどの辺から取っていらっしゃるのか。その辺に関して、お教えいただきたいと思います。
○吉野委員長 推計の期間をお願いいたします。
○丸山参事官 ものによって若干違いがありますけれども、大まかに申し上げると1980年以降、2007年辺りまでを基本としております。年次モデルでございますので、そういうことについては、多少ダミー変数を入れたりとか工夫はしておりますけれども、それ以上短くするのは自由度などの問題で難しいのかなと考えております。
○吉野委員長 ほかにございますでしょうか。
では、小野委員、どうぞ。
○小野委員 質問ではなくて、できるかできないか、ある程度お願いになります。このモデルの中でアウトプットが出てくると思います。当然ですけれども、それが経年的に出てくるのではないかと思いますし、年金のシミュレーションの中で、もしこれを利用させていただくということになると、そのまま利用するというケースもあり得るかもというところを考えると、アウトプットの部分を必要に応じて、公開なり御提供いただけるような状態になっていると、こちらの委員会としてありがたいと思っております。
以上でございます。
○吉野委員長 ある程度、これは公開はされているのではないかと思いますが、内閣府の方はいかがでしょうか。
○丸山参事官 基本的に公開をしておりますのは、公表資料の範囲の項目ということでございます。
○小野委員 シミュレーションの批判の中で結構多いのが、賃金上昇率です。これが足下の状態から、かなりでこぼこした状態で、一旦非常に上がって、その後落ち着いてくるようなイメージになっていますが、これが現下の経済情勢を見て、本当なのかというような批判を耳にしているものですから、例えば賃金上昇率について、ここには開示されていないですけれども、その辺りがいただけるとありがたいということでございます。
○吉野委員長 4ページを見ますと、労働の分配率から出してきて、結局それを最後は労働雇用者数で割って、それで賃金を出しますから、先ほどの川北先生の御質問のように、どこで平均を取るかというのが、今の小野委員のところにも効いてくるのだと思います。これも長期で見ているか、トレンドで見るか、非常に難しいところだと思いますけれども、いろいろな見方が出てくるのは仕方ないような気がします。
今日、我々はこの3つの長期金利と賃金上昇率と物価に関して、内閣府の方からの御説明である程度理解することができました。ただ、モデルに関しては細かいところもありますけれども、この3つが今回の我々にところにとっては、非常に重要な変数でしたので、内閣府の方は御説明をどうもありがとうございました。
それでは、内閣府のお二人の方には、これで退席していただいて、安部数理課長から国民経済計算について、引き続き説明をよろしくお願いいたします。
○安部数理課長 それでは、議題の2つ目の資料ということで、資料2-1と2-2をごらんいただきたいと思います。
これまで御説明してきております経済モデルですけれども、元データはほとんどがいわゆるSNA、国民経済計算のデータを使っているわけでございます。この国民経済計算のデータにつきまして、平成22年度の数字が公表になったわけです。あとで御説明いたしますが、国民経済計算というのは大体5年1回基準改定ということで、過去にさかのぼって名目値も動くということを大体5年に1回繰り返してきておりますが、今回はちょうど平成17年基準改定に当たりました。
その結果を見てみますと、この経済モデルで使っているデータなども過去にさかのぼって数字が動いている部分がございました。そういうこともありますので、この機会に一度その実態を御報告して、御説明をさせていただきたいということで、本日資料をお付けしたものでございます。
資料2-1をごらんいただきたいと思います。1ページに書いておりますのは、国民経済計算の概要ということで、どういう性質の統計なのかということを簡単にまとめております。
1つ目の○にございますのは、国連の定める国際基準に準拠して、我が国のものは統計法に基づく基幹統計という位置づけの下で作成をされているものでございます。国民経済計算は大きく分けますと、四半期別のGDP速報と国民経済計算の確報という2つのものからなっておりまして、このうちの確報がフロー面とストック面。ありまして、この両面につきましては、年に1回、内閣府経済社会総合研究所の国民経済計算部で作成し、公表されているものでございます。
この確報ですけれども、基本的に毎年、最新年度の数字を確報ということで公表されますとともに、1年経った後で、新たに利用可能となった基礎統計を反映させて、更に1年さかのぼって再推計が行われて、確々報という形で公表されております。
直近の平成22年度の数字でございますけれども、フロー編については昨年12月に、ストック編につきましては少し遅れて今年の1月にそれぞれ公表されたわけでございます。最初に申し上げましたとおり、平成22年度の国民経済計算から、従来は平成12年基準の数字が公表されておりましたが、17年基準に置き換わっております。これはどういうことかと申しますと、ここにありますように、推計の基礎データとして使用されています産業連関表や国勢調査は大体5年に1回作成をされるわけですけれども、これを取り込むことによって、この推計の基礎データが変わっていくことになります。そのために例えば従来の平成12年基準ですと、この12年の産業連関表と平成12年の国勢調査をベースとして、そこから推計をしていくということをやっておったわけですけれども、それを17年の産業連関表と国勢調査が使えるようになったということで、その数字を反映させる。その結果といたしまして、平成13年以降の数字がさかのぼって、数字が改定をされる。そういうことが大体5年に1回行われております。今回がその17年基準改定に当たっていたということでございます。
基準改定と申しますと、例えば指数をつくるときの基準年度とか、実質の値をつくるときの基準年度が変わるだけかというイメージがございますけれども、名目値も変わるというところは一つ御留意をいただきたいと思います。
また、この注にございますように、同時に名目値は変わりますし、デフレーターなどの基準年度も当然変わるわけです。基本的には、平成13年以降の数字が今回公表になっておりますけれども、その中でも特に支出系列、GDP等といった基本的な系列については、更にさかのぼって平成6年から12年についても遡及改定が行われております。
この基準改定は、基本的には今、申し上げましたように、基礎となる産業連関表と国勢調査のデータを織り込むことによって改定されますけれども、そのタイミングで概念の変化とか推計方法の見直し、そういったものも併せて行われることが多く、今回特にストックの数字が大きく動いておりますが、実はこれは推計方法の見直しが行われた結果でございます。これは詳しくは資料2-2で御説明を申し上げます。
過去の基準改定の動きを見ますと、GDPで見ましても2~3%は動いております。また、その内訳を見ますと、物によってはもっと大きく5~6%は動いたりというようなこともあるようでございます。具体的な数字を2ページ以降でごらんいただきたいと思います。
2ページ、左に名目GDP、右にストック統計の有形固定資産。これをそれぞれ従来の平成12年基準と今回公表された17年基準を並べております。まず、名目GDPでございますけれども、ごらんいただきますと下に図もお付けしておりますが、極端に変わっているわけではございませんが、2005年、平成17年より前につきましては、大体1~2%くらい上方に改定されております。平成17年以降はほとんど変わっておりません。微妙に零コンマ何%マイナスというところですが、そんなに大きく変化はございません。
問題になりますのは、右側にありますストック統計の有形固定資産です。これをごらんいただきますと非常に動いておりまして、大体プラス25~30%くらい上方改定をされております。これは通常の基準改定というだけではございませんで、今回は推計方法が大きく変わっております。これは後で資料2-2で御説明いたしますけれども、こういう結果となっております。
3ページには、今度は総固定資本形成と固定資本減耗について、同じく12年基準と17年基準を並べております。こちらの方は特にストック統計のように大きく動いているわけではございませんが、±数%くらいの動きというのはございます。総固定資本形成を見ますと、マイナスの方ですと大体-3%くらい、プラスですと+1~2%くらいの幅で数字が変更になっております。右の固定資本減耗の方も同程度でございますけれども、-4%くらいから+4%くらいの幅で数値が変動いたしております。
4ページ、雇用者報酬と営業余剰を同じように並べております。雇用者報酬の方は全般的なマイナス改定、下方改定になっておりまして、改定幅としましては大体1%台から2~3%くらいの程度のマイナスの幅になっておるわけですが、最後の営業余剰の方は上方改定で、しかもその幅がかなり高くなっております。大体15~20%くらいの上方改定になっております。
内閣府の担当に、この営業余剰がかなり動いている理由を聞いてみましたところ、営業余剰というのはGDPが基にあって、そこから例えば雇用者報酬とかを引いていって、残差という形で推計をしているそうですけれども、この規模として見たときに、GDPとか雇用者報酬に比べますと、営業余剰は比較的小さい。そのために先ほどもごらんいただきましたGDPも1~2%動いておりますし、雇用者報酬も数%動いているのですが、それぞれで見ますと数%程度の動きですが、絶対額としては結構な額になる。それが最後、この営業余剰のところに残差ということで出てきておりますので、変化率で見たときにはどうしても大き目に出てしまうというような事情があるようでございます。
数字につきましては、以上のような基準改定による変化が起きておるわけでございます。
5ページには参考ということで、現在使っておりますモデルに今、御説明した計数がどのように使われているかということを参考としてお付けをいたしております。
資料2-1は以上でございます。
続きまして、資料2-2を使いまして、特に今回大きく変動いたしまたストック統計の有形固定資産がなぜこのように大きく変化したのかということを中心に御説明を申し上げます。
1ページ「『基準改定』について」ということで、この基準改定とはなぜ起きるのかということをまとめております。これは先ほど御説明したとおりでございます。基礎となる産業連関表、国勢調査など、これを新しく5年ごとに更新していくということと、2つ目にございますけれども、そのときに併せて推計方法などの見直しなどを行うということ。この2つの要因によって名目値そのものが動くということでございます。
今回、特にストック統計の数字が変わったわけですけれども、これは2ページにございますとおり、平成21年3月に公的統計の整備に関する基本的な計画が閣議決定をされております。その中のいろいろな面について、指摘事項がこの基本的な計画の中にあるわけですが、その中の一つとして、国際比較の可能性の向上等の観点から、このストック統計の見直しが一つ課題として挙げられていたということでございます。
その指摘事項を踏まえまして、担当の方でずっと検討した結果、今回、推計方法を見直しを行ったということで、「(1)資産推計の充実・改善」のうちの1つ目ということで、有形固定資産ストックの推計方法の精緻化、及び固定資本減耗の時価評価の導入といったことが今回行われたということでございます。
3ページ、ストック統計の推計方法が終変わったということで、どういうふうに変わったのかということでございます。
○吉野委員長 今日配っていただいている資料だと4ページですね。
○安部数理課長 失礼いたしました。ページ数の文字が薄くて大変申し訳ございません。4ページでございます。
そもそもストックを把握する、ストックが日本国全体でどれくらいあるかということを把握する方法には幾つかございまして、一番シンプルなのは、例えば人口における国勢調査のように、基準時点は何年と決めて、一斉に調査を行って把握するという方法が一番シンプルになるわけです。ただ、全数は大変ですので標本調査とかいうことになると思いますが、いわゆる直説法と呼ばれておりますが、そういう方法が一番シンプルで、実はかつてわが国でも国富調査という名前で、直接ストックの実態を把握する調査が行われておりました。
戦後、昭和30年、35、40年、45年の4回行われていたんですけれども、45年を最後にこの調査は行われなくなっております。それ以降、どのようにして、このストック統計を推計してきたということですけれども、これが従来はここで書いております国富調査を用いるベンチマークイヤー法という方法で推計が行われていたとのことでございます。
これはどういうものかと申しますと、過去に行われました国富調査の実績がありまして、それを基準として、それ以降の投資された額を加えて、減耗は減っていった額を引き算をする。足し算、引き算を繰り返していくことによって推計を行うという方法で推計が行われていたそうです。
ただ、国際的に見ますと、この方法をとっている国はほとんどないそうでございまして、国際的には、恒久棚卸法で推計するということが国際標準になっているという実態があったということで、それを踏まえまして、先ほど閣議決定された計画にもあるように、国際比較可能性の向上といった観点から、我が国でも恒久棚卸法を導入するということで、何年かかけて検討されてきていたとのことでございます。
この恒久棚卸法といいますものは、基本的には過去、毎年投資されたものを基準として、それがどれくらい減耗していくのかという減耗率を、人口でいいますとコーホートで追いかけるようなイメージですけれども、30年前に投資されたもの、29年前に投資されたものと時系列を追うことによって、どういう割合で減耗していくのかという減耗率を推定いたしまして、それをずっとかけていくことによって、現時点での残っているストックがどれくらいになるかというものを推計する。そういう方法と伺っております。
これを推計するためには、減耗率をかなり正確に推計する必要があるということで、5ページにありますように、そのために民間企業投資・除却調査という調査を新しく始めて、その結果に基づいて、償却率を設定した。そういう準備を重ねて、今回、平成22年度の実績値を推計するに当たっての基準改定に合わせて、このストックの推計についても恒久棚卸法を導入して推計を行う。その結果として、先ほどごらんいただきましたように、推計結果がかなり上方改定をされたということでございます。
大きく上方改定されたことの理由でございますけれども、この改定に当たりましては、内閣府に統計委員会というものがございまして、その中に国民経済計算を担当する部会、更にその下にストック統計のワーキンググループといったものが議論を重ねていったわけですが、それらの議事録などを見てみますと、今回このように大きく上方改定された大きな要因は償却率のようで、これが今回、資本財ごとに先ほど申しました調査をベースにして、かなり細かく設定をされました。
5ページの真ん中に表がございまして、従来使っていた償却率と新しく今回、新推計で使った償却率というものが並んでおりますけれども、この中で一番上にあります住宅、1つ飛んでいただいて、その他の構築物。この数字を見ていただきますと出てまいりますけれども、かなり従来使っていた償却率よりも低い償却率を使うことになったと。これは上記の調査の結果から推定された数字ですけれども、そういった償却率が低くなったということが、情上方改定の大きな要因であろうと。議事録などを見ますと、そういうことが言われております。
以上のように、今回22年度の数字が出るに合わせて基準改定されて、特にストックのところなどを中心に数字が動いております。しかも、大部分の数字につきましては、平成13年度までしかさかのぼって数字が出ておりません。GDPなどは平成6年までさかのぼっています。ですので、このモデルなどを検討していくに当たって、具体的なデータをどのようにして使っていくのかといったことも、今後検討していかなければいけないと考えておりますが、本日は取り急ぎ、こういう実態になっているということを御報告するということで、今回資料をお付けしたものでございます。
以上でございます。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、何か御質問があれば、いかがでしょうか。
先ほどの恒久棚卸法を使ったというのは、諸外国で使っているとコメントをおっしゃいましたけれども、こちらの方が楽で、ストックの統計が要らなくて、フローと償却率だけで出せますから、これの楽ですから多分各国がやっているのだと思います。本当はベンチマーク法でやれれば一番いいのではないかと個人的には思いますけれども、内閣府の方でそう決めてしまったので仕方ないと思いますが、皆様の方で御質問はありますでしょうか。
私から先に質問させていただきますが、資料2-1の2ページで有形固定資産がこんなふうに大きく違ってきていますと、総供給の生産側からいくと、数字が大分違ってくるような気がしまして、これも先ほどの御説明の恒久棚卸法でやったか、ベンチマーク法でやったかによって、大きくこれが違ってきたのだと思います。やはり手法を変えると数字が相当違ってきてしまうので、年金の計算のときには影響してくるような気がします。ここで申し上げてもしようがないかもしれませんけれども。
○安部数理課長 まず、このように数字が動いたことによって、どのように影響があるのかということを今後分析していかなければならないと思っております。
先ほど申しましたように、経済前提を設定するために使用していますモデルはかなり古い時点からのデータを用いて、推計するということをやっておりますので、今回はそれほどさかのぼった数字がないものですから、それを今後どうしていくのかということを頭を痛めております。今回の設定によって利潤率なども大きく変わってしまうことになるのですが、あのモデルでは利潤利の絶対値を使っているわけではなくて、変化率を使っているわけですが、変化率を出そうにも過去の数字がないと出せないといったことがありますので、今回こういった実態を踏まえて、どうしていったらいいのかということは、引き続き検討してまいりたいと考えております。
○吉野委員長 利潤率が変わるのも、結局、有形固定資産の2ページの分母で割っていますから、この数字が変になれば、利潤率が動いてくるのは当然だと思いますので、すべてこの2ページの有形固定資産の数字に大きく依存していると思います。それはストックから求めてくるのではなくて、フローから減価償却だけ引いて、ずっと過去までさかのぼるというやり方で、その方が各国とも楽なんですね。ですから、そっちに行っているのだと思います。
日本の国富統計をずっと見ていますと、日本の国富統計はすごくしっかりしていまして、明治時代は各県に牛が何頭いるかとか、物すごい統計までやっていまして、こんなにすばらしい統計がある国はないだろうなと思っています。ほかの国はそういうことをやっていませんから、こういう恒久棚卸法しかできないんです。
コメントはございますでしょうか。内閣府からの推計などは、幾らここで文句を言ってもしようがないので、こちらはそれを使わざるを得ないということになってくると思いますが、内閣府に対する要求は今おっしゃいましたように、もうちょっとさかのぼってもらわないと、いろいろと推計するときに困りますので、是非新しい手法で我々の年金計算に使えるようにさかのぼってほしいということは言っていただければと思います。
○安部数理課長 その辺りも公表されていなくても、あるのかないのかといったことも確認をしてみたいとは思っております。
○吉野委員長 それでは、先の議論に進めさせていただきたいと思います。
事務局の方から、年金の積立金の運用については、我々にとって一番重要な資料3-1「負債に配慮した管理運用について」、資料3—2「厚生年金及び国民年金における純支出のデュレーション及び平成21年度財政検証の諸前提」、資料3-3「賃金上昇率と金利の推移について」、資料3-4「キャッシュアウトへの対応」。
これについて、ずっと御説明いただければと思います。原口参事官の方からお願いいたします。
○原口大臣官房参事官 それでは、御説明させていただきます。資料3-1以下の資料につきましては、委員の方からデュレーション・マッチング、キャッシュフロー・マッチングといった手法の適用可能性について、議論できるようにとの指摘をいただいておりましたので、これらは第1回の会議で御紹介しました参議院の委員会附帯決議の適切な資産負債管理にも関わる内容ですので、本日このデュレーション・マッチングとキャッシュフロー・マッチングについて、基本的な内容を準備しています。
議論を深めるために御意見をいただきましたり、更に準備する事項を御指摘いただければ、また対応させていただきたいと考えております。
それでは、資料3-1です。負債に配慮した伝統的な管理運用手法として、デュレーション・マッチングやキャッシュフロー・マッチングといった手法があります。例えばこうした手法について、公的年金での適用の可能性を議論してはどうかとの御意見をいただいております。
まず、デュレーション・マッチングです。概要を申し上げれば、資産を債券で運用し、資産の金利感応度(修正デュレーション)を負債の金利感応度に一致させることにより、金利変動による資産・負債の変動を相殺させ、負債に対する資産の積立比率の変動を防ぐことができるという手法です。
例えば金利が上昇すると、資産(債券)の現在価値が下落しますが、同時に、将来の年金給付の現在価値も下落するということです。
2ページに、ごく簡単に事例として書いてあります。資産、負債それぞれ縦に並べていますが、資産、負債それぞれについて、現在の価格が100億円あったとしまして、それぞれの金利感応度が10年ということで、これを金利感応度を併せて保有していたとしますと、金利が1%下落したときには、価格が約1割ほど増加すると資産の方が110億円、負債の方も110億円というふうに現在の価格が変動するということになるわけです。計算の方法は概算でございまして、下に書いてございます。
こうしたことで金利変動があっても、それによる価格の変動による資産と負債の割合の変化が起きないようにして、金利リスクに対処するという手法だということです。このデュレーション・マッチングの手法は、特に負債が名目額で固定している場合において、金利上昇リスクを回避できると言われているわけでございます。
平成21年財政検証におきまして、1つの計算として純支出、支出から収入、収入より運用収入を除いたもの。これのデュレーションの計算をして、参考として公表してございます。
この財政検証は幾つもケースがあるわけでございますが、基本ケースの場合は厚生年金は53.41年、国民年金では55.70年というデュレーションであるという計算結果がございます。この手法についての論点として考えられることでございますが、例えばデュレーションの確実性、先ほど複数のケースがあると申し上げました。後ほど資料3—2で説明をさせていただきます。
公的年金の給付額や保険料額は、基本的に賃金上昇率や物価上昇率にスライドするということで名目額では固定されていないということがございます。現在の金利水準の関係ということもあろうかと思います。
2点目にキャッシュフロー・マッチングです。将来のキャッシュフローが定まっているという債券の特性を生かして、将来の負債のキャッシュフローと一致するように債券ポートフォリオを構築し、将来支払うべきキャッシュフローを保有債券によって用意するという運用です。
この手法を用いると、将来支払うべきキャッシュフローを確保するために、保有する資産をコストをかけて売却する必要性が薄くなるということです。
図示していますが、縦に資産と負債と並べていて、左側の方、時点として現在の時点でそれぞれ資産と負債を有しているという図です。この右側1+r1分のP1と資産、負債ともに書いていますが、ここの部分でございまして、これが期間P1になりましたときに点線でP1と書いたものがございます。T1まで例えば1年ということでございますが、期間が経過いたしますと、その間の金利R+1が収益率だといたしますと、それだけ増加しまして、P1という価格の資産がこのときに現金化されるというふうにして、このときに負債側で必要なキャッシュフローP1と等しくなるように、それぞれ資産と負債の構成をそれぞれの各期間ごとにマッチングさせて保有するという図です。
平成21年財政検証の基本ケースでは、平成30年度までの間に運用収入を除く収入合計額を支出合計額が上回っており、GPIFからキャッシュアウトするということが見込まれます。また、ここ数年はGPIFの運用資産から年間数兆円規模のキャッシュアウトが継続して見込まれるということが第2回の専門委員会のときにも説明をしておりますが、そうした中、市場への影響を回避つしつつ、キャッシュアウトに対応する流動性管理が必要ではないかということが理由です。
論点といたしまして、先ほどと同様に資金需要の見通しの安定性がどうか。また、長期的に効率的な運用を確保する必要があり、その整合性がどうだろうか。現在の金利水準との関係がどうだろうかといったことなど、例えば論点になるのではないかと考えています。
次に資料3-2「厚生年金及び国民年金における純支出のデュレーション及び平成21年財政検証の諸前提」ということで書いてございます。
1ページ、公表したそのままのものでございますが、基本ケースの場合の厚生年金の幾つかのデュレーションを計算したシートでございます。左から見ていただきまして、年度、西暦の隣の経過年数と書いてございまして、ここは年度の中央を取るということで、初年度は0.5年、2年度は1.5年、以下、このように並べております。
支出の合計、次いで収入の合計でございます。収入の内訳として、運用収入があり、収入から運用収入を除いた額。そして、純支出という項目を次に立ててございます。これは支出から運用収入を除いた収入を差し引いた額でございまして、ここの金額が運用期間からキャッシュアウトをされるというような金額ということで、推計をされている形になります。
次が原価率でございまして、現在価値とするための数値でございます。
次にデュレーションの計算式でございまして、いずれも同じ計算の仕方でございますが、支出のデュレーションにつきましては、まず支出の原価。これは支出合計の欄の数値に原価率をかけたものが以下一覧に書いてございます。そして、これらのトータルが下の方を見ていただきますと、?Σ?ということで書いてございまして、この支出原価のトータルが書かれてございます。
上に戻りまして、支出のデュレーションの欄の右側でございますけれども、この?各年度における支出原価のトータルの値で割りまして、これに経過年数をかけるということをいたしております。これを合計して、デュレーションを計算しているという計算の仕方です。支出のデュレーションについては、下の方にありますけれども、Σ?のところで31.52年。以下、同じ計算でございまして、純支出のデュレーションにつきましては、厚生年金の場合53.41年という一つの計算結果になっています。
2ページですが、全く同様の方法で国民年金について計算したものでして、これは同様にデュレーションの欄を見ていただきますと、55.70年となっています。
3ページ、財政検証には複数のケースがあり、先ほどの2つ厚年、国年それぞれの数値は基本ケースの場合の数値です。そのほか、出生、死亡、経済についてのそれぞれのケースの設定ごとにデュレーションをどのように計算されているかという結果だけを一覧にしています。ごらんのとおり、厚生年金の場合で40~50年台という結果になっています。国民年金の場合につきましても、40年台から一番高いものは60年台のデュレーションの長さになっています。
これらのケースの前提につきましては、その後の2枚のページに諸前提を添付させていただいております。これにつきましての御説明は割愛をさせていただき、御参照いただければと思います。
資料3-3「賃金上昇率と金利の推移について」でございます。今回の議題に関しましては、金利または賃金上昇率と関わりが深いということで、1つのデータを配付しています。
以下のグラフ及びデータは、10年国債の長期金利の年平均値、これは各月の値の単純平均です。これと現金給与総額。これは従業員規模が30人以上の事業所で雇用される従労働者の1人当たり平均ということで、1993年以降はフルタイムの数値です。その年平均値の前年比を比較可能な1972年から直近まで示したグラフです。
また、2面にはこれを表でデータを付けています。これを見ていきますと、第1次及び第2次オイルショックの時期においては、現金給付総額の大幅な増減に対して長期金利の動きが鈍いという状況がありますが、それ以外の時期においては長期金利と賃金上昇率はおおむね同様のトレンドをもって変動しているという様子がうかがえます。
なお、このオイルショック以降からリーマンショックまでの期間において、金利変動に対する賃金変動のタイムラグを考慮しながら、長期金利1%の増加に対する賃金上昇率の増加を求めると、この期間の平均では0.8%となる。金利が1%上がると賃金が0.8%上がるという相関を持って動いているのではないかということです。
最後に資料3-4は、これは右上に書いてございますとおり、第2回の専門委員会においてGPIFの三谷理事長から説明いただいた資料の1ページです。キャッシュアウトについての実績、23年度のみこの時点の見込みということで書いてございまして、この時期には、かなり大きな金額のキャッシュアウトが見込まれるということです。
私からの説明は以上でございます。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
資料の後ろの方に小野委員提出資料が1ページございますが、関連のするところであれば、お願いできればと思いますが、よろしいでしょうか。
○小野委員 ファイナンスの先生がいらっしゃる中で、このような稚拙なものなので恥ずかしい気もしますが、私からこういった考え方について、整理した方がいいのではないかという御提案を申し上げましたので、私も結論としてはよくわからない部分もあるのですが、考え方をまとめさせていただいたものです。
今の資料をごらんいただいたとおり、純支出のデュレーションを計測するという話になっています。最初の定義の部分は省きまして、2つ目の「責任準備金のデュレーション」と書いてあります。責任準備金というのは、将来のキャッシュアウトの現在価値から、将来のキャッシュインの現在価値、つまり、給付現価から保険料の収入現価を引いたものです。これに関する金利感応度を取るということと、基本的に同じことをやっているのではないかと思いました。
企業年金をやっていますと、53年というデュレーションは非常に長いと思っていまして、通常、企業年金ではデュレーションは15年程度と言われているわけですが、それからすると通常の考え方と定義が違うのではないのかと考えまして、見てみましたら、恐らくこういうことをやっているのではないかということで、それを前提にお話し申し上げます。
御承知のとおり、おおむね100年のキャッシュフローを使うということで、その現在価値として責任準備金ということで定義をいたしますと、(1)は計測の妥当性ということです。通常、企業年金の責任準備金はこういった等式を使いまして、基本的には責任準備金が積立金になるような保険料率を求めた結果として算出されます。
ですから、逆に想定する予定利率、金利を変えるということになりますと、それによって変わるのは、結果的には保険料ないし公的年金の場合には給付の調整ということになるかと思います。その意味で、金利が変わっても、結局、責任準備金は変わらないという考え方もあり得るのではないかというのが(1)で御指摘申し上げたい点でございます。
(2)は、計測対象者の被保険者の話です。これは簡単に言うと、100年間でキャッシュフローをぶった切っていますので、例えば60年後に入ってくる被保険者は、保険料収入はカウントするけれども、100年後以降に想定される老齢給付のキャッシュアウトは想定しないよということになるわけです。これは通常は企業年金の数理からすると、想定されていることではありません。
特に問題かと思うのは、(3)です。ここでは式を書いていますが、イメージとしては、現在、積立金を50持っています。10年後に保険料収入が50あり、これで20年後のキャッシュアウトの100をファイナンスするとします。
こういう、一旦収入超過があって、それから給付が出ていくというような想定で考えます。この収入超過の時期がありますと、裏面で計算していますが、責任準備金の金利感応度は、今のケースでいくとキャッシュアウトT2で、20年に相当しますが、これよりも結果的には長い期間が算出されます。
これは収入超過の時期があることが影響しているということになります。もし資産運用に使うというであれば、通常は今、持っている50は期間20年のゼロクーポン債になるし、10年後に入ってくる保険料50は期間10年のゼロクーポン債にすればよいと思います。そういった考え方からすると、定義されたデュレーションの結果は役立たないのではないかということになります。
(4)は、先ほどの御説明の中にもあったと思いますけれども、金利が変わるというとは、それに応じていろいろな環境が変わりますので、キャッシャフロー自身が変わるということもあり得るかと思います。
仮に金利と賃金上昇率と、正の相関関係があったとすれば、その分デュレーションは縮まってしまうという話になろうかと思います。こういうことを考えますと、少し慎重に検討した方がよいかと。そもそも53年という半世紀先のキャッシュフローを一定の前提を置いた上でのシミュレーションで計算して出しているという話ですし、それは要するに50年間制度が変わらないという前提で物事を考えているわけですので、それにいかほどの意味があるか、という点は留意すべきと思います。
3つ目ですが、企業年金的に考えるとどうなるかということですが、企業年金としては過去の給付に対応する債務の現在価値として評価するという話になります。使えそうな数字ということで、平成21年度の財政検証の結果から持ってきますと、過去期間に対応する給付現価、国庫負担控除後で見ますと、金利4.1%の場合には640兆ですし、2.5%の場合には790兆ということです。ですから、簡単な計算によって、ごく概算で求めますと、これは11.9年くらいになるということが、一番下の行に書いてございます。これは先ほどの53年と比べますと、大分違うという話になろうかと思います。
そういうことで、私自身はこの結果をどう使うかという話になりますと、結論は持っていないのですが、ただ言えるのは、まとめに書いてございますとおり、一口にデュレーションと言っても、それぞれステレオタイプ的に思ってしまうものはあるでしょう。ただ、やはり定義とか特徴を確認した上で、その用途にかなうものであるか、慎重に検討していく必要があるのではないかというのが、現時点での私の意見でございます。
以上でございます。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
それてば、ただいまの御意見も含めまして、皆様から御質問あるいはコメントをいただければと思いますが、米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 小野委員の御意見は極めて重要だと思いますが、全体を正しく理解していないところで答えて、もし間違ったら教えていただきたいんですけれども、この責任準備金的な発想は公的年金にはないのだとどこかに書いてあって、キャッシュフローとキャッシュアウトのずらりと長いものがありますね。単なる機械的にあれだけがあるということで、あれは勿論、一定の賃金上昇率と金利の下で出てきているわけです。
何を言いたいかというと、その下で単にデュレーションを計算するということでいいのではないだろうかというのが、企業年金と違って公的年金の理解ではないかと思います。それが制度的にいいかどうかというのは、責任という発想はないということなので、先に保険料率が決まっていて、片や給付も決まっていて、その差額を積立金のあれで調整するという、何かばらばらででてきたところが今の制度ということなので、その責任何とかというところか切れてしまっているという理解ではないかと思います。
ですので、要はもう機械的に、今日お示ししていただいたような格好で計算をするのが、一つこの方法でしかないのではないだろうかと思います。要は最終的にその負債に対して、どのような資産を持ったらば、いろいろなリスクに対して、どこまでヘッジできるかということがわかればいいわけですね。とりあえずは金利変動に対して、仮に計算をしたら五十何年ということなので、もしデュレーションが五十何年というのがあれば、それがいい。いいというのは、特にその金利が減少した場合には、それで付いていく。上昇した場合には合わせる必要がないけれども、減少した場合には、少なくともそれでやれば、負債が増加した分、結構資産で追い付いていけるよというようなことができるということと理解しています。
ただし、小野委員の言ったように、賃金上昇率が金利に関して、どのくらいのインパクトで影響を与えるかというのは、負債の方は定義によって賃金上昇率が上がれば、金利もそれと同じだけ上がるとなっていますけれども、資産の方はどのようなものを持っていたらいいかというときには、これはデータでもって、どれだけ対賃金上昇率に対してヘッジ能力があるのか。対金利に対してヘッジ能力があるのか。両方同じルートを取ることもありますので、そこのところを計算しておいて、少なくとも金利だったら、なるべく長いものという格好で、単に計算をしていけばいいのではないだろうかというのが私の感想です。ですから、五十何年でいいのではないかと思っています。
○小野委員 ありがとうございます。定義としては、責任準備金という言葉を使ってしまったのは、私が企業年金のアクチュアリーだからと点もあります。公的年金もバランスシートが出ておりまして、これは給付現価から保険料収入現価を引いたものが現在の厚生年金の積立金となるというような格好に一応割引率4.1%のケースですが、この場合にはなっているということです。
その意味では、企業年金のアクチュアリー的に言うと、給付現価から保険料収入現価を引いたものなので、責任準備金ですねということで、それを用語として使ってしまったという面があります。そうは言っても、企業年金の定義と違って、(1)とか(2)のような、いろいろな違いがありますよねということですので、特に責任準備金があるかどうかという話と受け取っていただく必要はありません。この定義式の中に内包されている問題点という点で考えると、特に私は(3)が気になっておりまして、キャッシュフローを見ていますと、やはり2020年から2030年ちょっとにかけて、収入超過の時期がございます。
ここの部分が53年という数字に少なからず影響しているとすれば、53年でデュレーション・マッチングをしても、それは余り意味のないことではないかということです。
○吉野委員長 植田先生、ありますか。
○植田委員 非常に単純には、例えば公的年金の積立金を100年で使い切ってしまうというふうに額を決めたとして、そうしたら、ある前提の下で、ここにもありますように、将来の保険の支払と保険料収入の両列を予測させて、そのネットを計算させて、その割引顕在価値が現在の積立金に合っていれば、ちょうどプライマイナスゼロになるわけです。
基本的にはそういう計算をなさっているのだと思いますけれども、合っていない場合には、一つのやり方は割引率を調整して、この割引率は例えば3%ではだめだけれども、X%なら合うようになるので、X%がこのシステムの要求割引率だという計算ができると思いますが、そういう意味で、ここでやられているようないろいろな議論と大まかには、ベースは似ているというか、同じようなところに有用性はあると思います。では、それはデュレーションという言葉にして、デュレーションのマッチングをすれば、いろいろなリスクがある場合に不確実性が除去できるかというと、将来のキャッシュフローが事務局の資料にもありましたように、名目で固定していない。インフレ率や賃金の上昇率に非常に複雑な形でディペンドしていますので、簡単なマッチングができないんだと思います。
ですから、大ざっぱな考え方には有用性があると思いますけれども、デュレーションに余りこだわり過ぎてもという感じはいたします。
○吉野委員長 そうですね。デュレーションのところの不安定性と運用というか、支出の分の変動は随分あるわけですから、そこの不確実性が入ってきてしまうわけですね。
米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 前もこういうふうにやっていたので整理しますけれども、実はこの負債の方は少なくとも前回設けていただいた、このような検討課題は一切議論をされなくて、GPIFに行っても負債の方は、正面からは議論されていないんです。要ははっきり言うと、運用に関して今まで負債の方は、デュレーションも含めて正面から議論をされていないと私は理解しているので、それがいいかどうかということで、今回は第一歩でここのところが入ってきたというふうに理解しています。それは非常にいいのかなということで、これがスタートだと理解しております。
今まではいい意味でも、悪い意味の方が多いのでしょうけれども、負債の方はアドホックにはいろいろ考えていたんですけれども、正面的には基本ポートをつくるときには、負債のことは余り考慮していなかったということだけ、議論のスタートとして位置づけていただきたいと思います。
○吉野委員長 ほかにございますでしょうか。
○植田委員 さっき申し上げたように計算した場合に、それくらいあれば、運用利回りがつじつまがあるんだけれども、という色彩が結果的にはあると思います。それはリスク次第ですけれども、ある程度の常識的なリスクを考えた場合に実現できるかどうかは別の問題という辺りを求めるんだと思います。
○吉野委員長 企業年金のように、先ほどの小野委員のように、保険料率と給付が一つの変数として内生で決められれば、こちらの公的なところも、本当はもっと違った計算ができるはずですね。それを全部割引率というか、運用のところだけやろうとすると、4点とかそういうことになってしまうわけで、自由度が物すごく少なくなっているところが違うと思います。
ほかにございますでしょうか。川北先生、いかがでしょうか。
○川北委員 ざっと見ていたんですけれども、植田委員がおっしゃったように、積立金を100年で使い切るという前提なのか。それとも50年なのか。それによってもデュレーションは全く変わってくるわけですね。かつ100年先まで、この制度がもつと考えることは難く、どこかで制度改正があるはずなので、そこで支出と収入がころっと変わってしまいます。ということで、資料のように100年間を計算してデュレーションが50年ですよというので、その50年に合わせて運用しましょうということが全然安定的ではないように思います。
もちろん、こういう計算をしました、計算した結果、こういう値になりましたという意味では、参考数値にはなると思いますけれども、参考数値とするときに、その扱い方をどうするのかという意味では、先ほど小野委員からあったような観点も考慮しないといけない。なかなか数値として使いにくいのではないかと、私自身は思いました。
○米澤委員 それは全くそのとおりですけれども、例えば金利が上昇したら、この年金はたちまち破綻してしまうよとかいう議論がありますが、実は金利が上昇すると、仮にこの50年というデュレーションが正しいとしますと、負債の方がうんと減ってくるわけです。資産の方も減りますよ。でも、資産の方は国債を持っていてもせいぜいデュレーションは10年弱ですね。資産のレベルよりか負債のレベルの方がうんと大きくなるので、年金財政上は極めてよいことになる。そういう目星を付けるためだけかどうかわかりませんけれども、そのようなことには役立つのかなと思っております。
○吉野委員長 負債と運用の両方の側のディスカウントの数字が違ってきますからね。
それでは、植田先生、川北先生。
○植田委員 GPIFで教えていただいた外国の調査の結果の中で、こういうのをもっと突き詰めてやっている姿はどういうものかを記憶の範囲で申し上げれば、給付と保険料収入ですね。それはさっき申し上げたようなインフラ率とか賃金上昇率とか、そういうものに依存するわけです。
ですから、マクロの前提として、いろいろなケースを考えて、モンテカルロシミュレーションみたいにタイムパスを何百通りとか何万通りとか出してやって、それでそのときのネットの差額の時系列を出してやって、同時に金利もそういう中で内生化されていますから、積立金がどういうふうに動いていくかもその中で出てくる。現在の残高から出発して、悪いケースにはゼロとしてなくなってしまうということになる。
いろいろなケースを見て、積立金がゼロになってしまうような確率をX%以下に抑えるという中で、何らかの意味でリターンを最大化するようなポートを選ぶというようなやり方でポートフォリオを決めている。どれくらい本当にそれがちゃんとできるのかはあれですけれども、考え方としてはそういうのが非常に突き詰めたケース、負債を非常にきちんと意識した上での運用というようなことかと思ったのを覚えています。
○吉野委員長 GPIFの方でこういうシミュレーションみたいなものをやられているのでしょうか。教えていただければと思います。
○清水室長 調査の件は、カナダのCPPIBが、そういう意味での先進的なことをやっていると理解しているところでございまして、先ほどの関連で申し上げますと、デュレーション・マッチングあるいはキャッシュアウト・マッチングというのは、ある意味、単純な一つのALM的な手法としてあると理解していますが、財政との連携といいますか、リンケージというものを突き詰めれば、先ほど植田先生がおっしゃったような、さまざまな形でシミュレーションを行い、そのときにどういったリスク指標、例えばそれをダウンサイド・リスクとするのか、そういったことを含めて検討することが大切ではないかと、これは日ごろ実際にGPIFの運営に携わっている者として感じているところでございます。
○吉野委員長 先ほどの小野委員のコメントに関しては、GPIFとの違いみたいなところでもし何かコメントがあれば。
○清水室長 小野委員の御指摘のとおり、やはり企業年金との違いというものを十分に押さえておく必要があるのだろうと。具体的には、名目額の給付が確定している企業年金と、あくまでも賃金あるいは物価に保険料も給付も連動するという公的年金の性格の違いといったことを踏まえて、あるべき運用の姿というものを考えていくことが大切だろうと考えております。
○吉野委員長 川北先生、どうぞ。
○川北委員 先ほどの米澤委員の御意見と関連しますが、現状をとらえると、そもそも負債の価値の方が大きいような資産運用の中で、金利がこれ以上下がるとは思えない。上がる確率の方がはるかに大きい。このような状況において、デュレーション・マッチングをするという意味が、そもそもよくわからないんです。別にマッチングをしなくてもいいのではないかと。どういう論理の中でデュレーション・マッチングをやりましょうとか、キャッシュフロー・マッチングをやりましょうという意見が出てきたのでしょうか。この辺りはどなたにお聞きしていいのかよくわからないですけれども。
○吉野委員長 米澤先生にお聞きするのが一番いいかもしれません。
○米澤委員 それは全く同感です。ただ、そうは言いながら、金利が1%割れているとかいうことで、またまた下がっています。上がるだけと思っていたのがもう10年くらいになりますので、位置づけは頭からデュレーション・マッチングではなくて、今、川北先生の言ったのはそのとおりですね。もう少し上がる方が確率は高いとなりますと、むしろマッチングをさせる必要はなくて、もう少しほかの方法を考えていく必要があると思います。
恐らく事務局も負債のことを考えなくてはいけないというときのイロハのイとして出してきたのではないかという理解ですので、そういう位置づけで我々も理解をすればいいのかなと思っています。
○吉野委員長 それでもし将来シナリオが金利が上がってきたと仮定すると、デュレーション・マッチングではなくて、ほかの目標関数では何をすればよろしいですか。
○米澤委員 負債の方は大きく減るわけですから、金利に感応度がないようなセットを持てばいいわけですね。金利が上がっても価値は下がらないような、短いようなものを持てば、資産の方は余り減らない。負債の方はぐんと下がってくれるということなので、差額としてのあれは非常に楽になるわけですので、金利感応度が低いものを持ってくればいいのではないかと思います。デュレーションの短いものです。
○吉野委員長 金利感応度が低い資産はどんなもものがありますか。
○米澤委員 キャッシュとか。
○吉野委員長 そうしたら運用しなくていいということになってしまうではないですか。
ほかにございますでしょうか。西沢委員。
○西沢委員 このキャッシュフロー・マッチングというのは、私は重要だと思います。例えば今回、基礎年金の交付国債をもらってもどうしようもないですから、売るか何かをすることになると思いますが、これが例えば国債なり一般会計からもらっていれば、また流動性がありますから違いますが、交付国債をもらっても一般会計からお金をもらえますよというメモくらいの価値しかないわけであって、それによってGPIFの方で何か給付用のキャッシュを準備することが必要になると思います。
それは3ページに書いてあるように、コストをかけて売却するというカテゴリーに入ってくると思いますが、そういう意味で一般会計から入ってくる国庫負担や保険料を正確に予測していくというのは、売却計画なりを立てていくために非常に重要なことだと思います。例えば今回は交付国債になってしまったがゆえに、GPIFとしてもコストが実はかかっているんですと。マージナルなものなのかどうかはわからないですけれども、そういったことを本当は示していくことによって、GPIFに入ってくる保険料と一般会計からの国庫負担が不正確であると。極めて流動的になっている状況がマイナスだということを示していくことが必要だと思いますが、例えば交付国債とかは、どんなコストがかかってしまうのでしょか。
○大江審議役 交付国債につきましては、国の予算におきましては、来年度2.5兆円分の年金交付国債を私どもに交付される内容になっております。したがいまして、それは今、西沢先生がおっしゃったように、市場で売却ができない譲渡禁止の債券でございますので、その分は来年度にそれだけ私どもが現金を用意しなければいけないという仕組みになってくるわけでございます。
そこで資料3-4の○の3つ目でございますけれども、今どうやっているかといいますと、「キャッシュアウトについては、市場に影響を与えずに利用可能な財投債満期償還金を活用」とございますが、この財投債は歴史的には財投改革が行われた際に、法律に基づきまして、財投債を引き受けるという格好にしており、満期までは保有をするというような特別な仕組みで保有をしているものでございます。そういったものがここ数年でも毎年数兆円でございまして、そういったものをまず活用しております。したがって、その分は売却をしなくても済むということでございます。
また不足する分は、市場運用資産を売却することになりますが、「市場の価格形成等に配慮して、時期を分散して回収する」とございますけれども、ここにつきましては、私どももできるだけ額を少額に複数回に分けて売却をしていく、あるいは市場の状況を見て売却をしていくということで、できるだけマーケットに配慮をして行っています。
そのためには私どもも、現在こういうキャッシュアウト局面に入っておりますので、一定額のキャッシュを持っております。
○西沢委員 例えばキャッシュで持っていなくていけない部分がGPIFのコストになっていると思います。本来はキャッシュで持たなくてもいいところまで、そのキャッシュアウトが不確定であるがゆえに、本来はもう少し高い金利のもので持てるのがキャッシュで持ってしまっているがゆえに、その差額はコストかなという気がしました。
○吉野委員長 シャドウコストは借換費用になっていませんでしたか。
○大江審議役 私どもは現時点で突然にキャッシュアウトの局面になったというよりは、もともと財政計算上はキャッシュアウトの局面になるということで、一定のキャッシュを保有して、そういったキャッシュアウトに備えるということが想定されておりまして、そういったことも国から示されている目標にも書いてございます。
そういった意味では、私どもの基本ポートフォリオは前回理事長が御説明いたしましたように、国内債券は67%などとございますが、その中で短期資産は5%程度ということが想定をされております。私どもはそういった中でキャッシュアウトが急に出た話というよりは、もともとそういうことを想定して、目標を与えられております。ただ、当然、今後もキャッシュアウト額はいろいろな状況に応じまして変動いたしますので、しっかりそこを対応していく必要があるとは考えておりまして、そういった面で委員の方々にも御議論をいただいて、いろいろなことを御指摘いただければと考えております。
○吉野委員長 関連ですけれども、GPIFは短期借入は可能なのでしょうか。
○大江審議役 はい。
○吉野委員長 そうすると借入れをうまく組み合わせた方が、常にキャッシュを蓄えているよりはいい場合が出てくると思いますけれども。
○大江審議役 短期借入は金利が発生いたします。その分は勿論、費用になります。それとの見合いということでございますけれども、短期借入は年度中にまた償還をしなければいけない、その償還のために一定の資産売却が出てまいります。今の第2期中期計画から、キャッシュアウトのために借入れをすることができる仕組みを導入いたしておりますが、これは逆に言うと、市場でしっかり売却が可能な場合は勿論対応していくわけですけれども、仮にできないような状況になった場合に万が一に備えて、最後のラストリゾートとして設けているものであり、私どもはそういう仕組みを持っております。基本的にはもともと想定されている中で、最後は程度問題でいろいろと御議論があると思っておりまして、そういった中でしっかり対応していくものと考えております。
○吉野委員長 原則は借入れができなくて、できたとしても1年以内で返さなくてはいけないので、最後のところでは結局また資産を売らなくてはいけなくなるということでよろしいわけですね。
○大江審議役 はい。原則できないというよりも、もともとラストリゾートとして、そういう仕組みを設けておりますので、それを使う場合は極めて限られている状況だとは考えております。ただ、高齢者の方々の年金給付でございますので、それがないと逆にそれも困るということで、ラストリゾートとして、そういう仕組みを置いているというところでございます。
○吉野委員長 ほかにございますでしょうか。武田委員、どうぞ。
○武田委員 デュレーションの話に関して質問がございます。そもそもデュレーションを正確にはかることは名目額で固定されていない以上、なかなか難しいというのはそのとおりだと思いますし、仮に、一定の目処として計算したとして、果たしてその資産を債券で運用して、デュレーション・マッチングをしていくことが、現在の国債管理政策とか国債の発行上可能なのか、そういうことを現実的に行おうとすると、規模感では国債市場に与える影響は相当大きいのではないかと想像致します。仮にデュレーション・マッチングに近い運用をイメージしたときに、国債市場に与える影響という点をどのようにお考えか御意見を伺えればと思います。
○吉野委員長 国債市場に関しては、私は少し知っていますけれども、今のところは40年債しかないんですね。この50年に持っていこうとしたら、まず財務省に50年とか60年という長い国債を発行しろということを言わないと、ここまで国内にある債券では持っていけないです。アメリカの債券も一番長いのが50年ではないですかね。ですから、これは相当無理ではないですか。
○米澤委員 今はまた逆になんですけれども、一時期はインフレ連動債みたいなのは、プラスのインフレがあるときに、本来こういうところが需要すべきだということで、そういうのは財務省の方に言っていく必要があって、今は逆で、しかもちょっと前までは元本保証ではなかったので、だれからも見向かれなかったんですけれども、もし本当に長いものが必要だったら、主張していく手はあるかと思います。一つはかつてのインフレ連動債。
○吉野委員長 そう言われて、私は委員でインフレ連動債を出したんですけれども、結局だれも買ってくれなくて、デフレだったものですから、米澤先生が要求したら買ってくださればいいんですけれども、それでインフレ連動債があるんですが、非常に表現が悪いですね。現実ではそういう難しい問題がありました。
ほかにございますでしょうか。結論はすぐに出るわけではないですけれども、デュレーション・マッチングというのも一つですが、そればかりではなくて、いろいろと不確実性もありますということで、今後の進め方ですが、もしGPIFの方でカナダのそういうのをお調べになったのがあるのであれば、一度ここで御説明いただいて、諸外国でどういうふうにやりながら、これをやっているかがわかれば、是非我々の勉強になりますし、そこから日本に対してどういうレッスンがあるかを是非勉強したいと思いますので、次回でももしやっていただけるのであれば、諸外国のものをお調べになったのがあれば、一度御報告をいただければと思います。
少し時間が早めでございますけれども、大体今日の御議論を踏まえまして、また今後この議論を引き続きやらせていただきたいと思います。
それでは、原口参事官、次回の予定などにつきまして、お願いしたいと思います。
○原口大臣官房参事官 日程につきましては、改めて調整をさせていただきたいと考えておりますので、後日また改めて御連絡をさせていただきます。ありがとうございました。
○吉野委員長 それでは、これで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
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