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2011年10月21日 第13回社会保障審議会人口部会 議事録
○日時
平成23年10月21日(金)10:00~12:00
○場所
厚生労働省省議室(9階)
○出席者
委員
阿藤 誠委員 | 稲葉 寿委員 | 大林 千一委員 |
加藤 久和委員 | 鬼頭 宏委員 | 佐々木 政治委員 |
白波瀬 佐和子委員 | 鈴木 隆雄委員 | 津谷 典子部会長 |
林 徹委員 | 林 寛子委員 | 廣松 毅委員 |
宮城 悦子委員 | 山田 篤裕委員 |
事務局
武田参事官(社会保障担当) | 鈴木社会保障担当参事官室長補佐 |
高橋社人研副所長 | 金子社人研人口動向研究部長 |
○議題
(1)報告聴取
第14回出生動向基本調査
(2)新推計の基本的な考え方
○配布資料
資料1 | 第14回出生動向基本調査 |
資料2 | 日本の将来人口推計 -新推計の基本的な考え方- |
○議事
○津谷部会長
では、定刻になりましたので、ただいまから第13回「社会保障審議会人口部会」を開催いたします。
お手元の議事、第1番目、第14回出生動向基本調査についてでございます。まず、本日の人口部会をもって公表となります、この調査につきまして国立社会保障・人口問題研究所の金子人口動向研究部長より御説明をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
○金子人口動向研究部長
金子でございます。よろしくお願いいたします。
ただ今、ご案内がありましたとおり、国立社会保障・人口問題研究所では、このほど、第14回出生動向基本調査、夫婦調査の結果概要をとりまとめましたので、御報告をさせていただきます。
結果概要をまとめましたものを資料1として配付させていただいております。こちらをごらんください。
この出生動向基本調査と申しますのは、我が国の結婚、夫婦出生力の動向並びにその背景につきまして、定期的に調査・計量をいたし、関連諸施策等に必要な基礎資料として提供することを目的としたものでございます。実はこの人口部会におきまして御審議いただいております将来人口推計に対しましても、出生仮定の設定に必要なデータの調査をいたしております。
今回の調査は昨年、平成22年6月に実施をいたしました第14回調査でございます。全体は夫婦調査と独身者調査の2つの調査から構成をされておりますが、今回の御報告は夫婦調査の結果についてのものでございます。
それでは、内容の説明に移らせていただきます。
まず、全体像でございますけれども、資料1の表紙に目次を載せてございますので、こちらをごらんください。調査の概要に続きまして、今回、御報告いたします項目が1~6まで示してございます。
1.夫妻の結婚過程
2.夫婦の出生力
3.子ども数についての考え方
4.不妊と流死産
5.子育ての状況
6.結婚・家族に関する妻の意識
という項目になってございます。
調査の概要につきまして、1ページをお開きください。調査の目的につきましては冒頭に述べましたとおりですので、省略をいたしまして、(2)調査手続と回収状況について御報告いたします。本調査は妻の年齢が50歳未満の夫婦を対象とした全国標本調査でございまして、妻を回答者として昨年、平成22年6月1日現在の事実について調べたものでございます。
表1で回収状況をごらんいただきますと、調査客体として9,050という夫婦の中から有効票数にいたしますと、7,847となっており、有効回収率は86.7%でございます。これは前回の13回調査より1%ほど改善をいたしております。
今回の御報告の中では、この中から初婚どうしの夫婦6,705組について集計・分析をした結果をお示しいたします。
2~3ページをお開きください。夫妻の結婚過程についての調査結果を示してございます。表1-1、これは夫妻が初めて出会ったときの年齢と結婚年齢並びに出会いから結婚までの平均交際期間を調査時系列に従って示したものでございます。ただし、対象は各調査から過去5年間に結婚をした夫婦であり、時系列で比較できる形になってございます。
第14回調査の結果がゴシックで強調されておりますけれども、これを見ますと、夫妻が初めて出会ったときの年齢は夫25.6歳、妻24.3歳でございまして、前回に比べますと、ともに上昇をしております。また、平均交際期間は4.26年と、これも長くなっておりまして、交際期間は延びる傾向にございます。この項目の調査を始めました第9回、87年調査と比べますと1.7年、68%も長くなってございます。この結果としまして、結婚年齢は遅くなっており、この5年間、晩婚化が更に進行したということになります。
次に、3ページの表1-3をごらんいただきますと、夫妻が出会ったきっかけについて示してございます。今回14回で最も多いきっかけを見ますと、左から2つの項目となる「職場や仕事で」と「友人・兄弟姉妹を通じて」がともに29%台でございまして、拮抗しております。次いで「学校で」の出会いが11.9%となっており、この上位3つのきっかけが全体の7割を占めております。言わば日常的な場での出会いが多数になっているという結果でございます。
この構図は最近のところは特に余り変わっておりません。ただ、長期的な比較で見ますと、90年代初めまではまだ見合い結婚が比較的多うございました。その後、急速に減少しているということになります。
表1-4でございますけれども、これは夫妻が最終的に結婚を決めたきっかけでございまして、今回初めて尋ねた項目でございます。結果の特徴を申し上げますと、妻の年齢が25歳未満だった夫婦につきましては「子どもができた」ことがきっかけであるということ、そのように回答している夫婦が最も多くて、全体の半数を占めております。
一方で結婚年齢が25歳以上になりますと、「年齢的に適当な時期と感じた」ということが過半数になってまいります。
4ページ、こちらでは3ページほどにわたり、夫婦の出生力についてまとめてございます。まず、夫婦の最終的な出生子ども数を見たものが表2-1でございます。これは結婚持続期間15~19年の夫婦の平均出生子ども数でございますが、夫婦の完結出生児数と我々が呼んでいるものでございます。
今回の結果を見ますと、1.96人となってございまして、これまでの調査で初めて2人というラインを下回ったということになります。集計の対象とした夫婦は1990年代前半に結婚をしたグループということになります。したがいまして、90年代以降の夫婦の子どもの生み方を表す指標でございまして、これまでも途中経過として夫婦の子どもの生み方がペースダウンをしているということがとらえられてきたものでございますが、これが最終的に完結出生児数の低下という形で確定的に裏付けられたという数字になります。
平均値だけではなくて最終的な子ども数の分布を見たものが表2-2でございます。こちらでは子ども0人と1人の割合が増えており、これらを合わせますと、出生子ども数2人未満の夫婦が増えておりまして、初めて2割を超えております。
5ページ、出生過程の子ども数について見ているものでございます。結婚持続期間が進むに従って、どのように出生児数が増えるか示したものでございます。表2-3に示されておりますように途中経過の出生数につきましても、この10年余り減少傾向が見られております。
次の図2-1ですが、これは結婚年齢の違い、すなわち早婚か晩婚なのかによってどのぐらい子どもの生み方が違うかを今回の調査によって見たものでございます。出生の累積のカーブになってございますけれども、結婚年齢が高まるにしたがって、低いカーブになっていっているということで、結婚のタイミングが夫婦の出生力に強く影響していること。特に晩婚の夫婦が増えますと、それだけで構造的に出生力が下がっていくということを示しております。
6ページ、夫婦の出生率の動向を見ております。図2-2は夫婦の出生率と言えると思うのですが、合計結婚出生率というものの年次推移を、おなじみの人口動態統計に基づきます合計特殊出生率の推移と比較して描いてございます。
合計結婚出生率と申しますのは各年次ごと、1年1年の夫婦の子どもの生み方を示す指標でございます。合計特殊出生率が女性全体の子どもの生み方を表すのに対して、こちらの合計結婚出生率は結婚をした女性といいますか、夫婦の合計特殊出生率に相当する数字になります。この長期の推移につきましては、第7~14回調査のデータをすべて用いまして、今回初めて長期にわたっての数字を算出したものでございます。
図をごらんいただきますと、戦後の少産化の時期から夫婦出生率の低下をとらえてございますけれども、とりわけ70年代半ば以降の少子化過程におけます夫婦出生率の年次推移が重要になろうかと思いますが、特徴的なのは80年代まで非常に安定的であったということです。その後、徐々に低下している様子がごらんいただけます。ただ、合計特殊出生率ほどには下がっていないという形になってございます。
また、近年のところ、2006年以降、合計特殊出生率が少し回復をいたしておりますけれども、その背景に夫婦出生率の回復があるということが、この指標からとらえられてございます。これは標本調査から得ているものでございますので、多少、標本誤差を含んでおります。したがいまして、3年の移動平均を主にトレンドを示すために描いております。
7ページ、子ども数についての夫婦の考え方に進めさせていただきます。ここでは夫婦が理想とする子ども数と実際に持つ子ども数について調べておりまして、夫婦の出生意欲を探っております。
表3-1は平均理想子ども数並びに平均予定子ども数の変化を示してございますけれども、時系列変化につきましては、その下の図3-1をごらんいただきたいと思います。後ろ側にある棒グラフが各回調査における平均理想子ども数を表しております。手前にある2色のパターンになっている棒が平均予定子ども数を表しています。
いずれも近年のところで緩やかな減少傾向が継続していることがわかります。夫婦全体とした見た場合、結婚意欲がやや減退といいますか、縮小しているということが伺えるわけでございます。
しかし、理想子ども数につきましては今回の最も低い値を見ても2.42という水準にございます。これは先ほどごらんいただきました実際に生んだ子ども数1.96人に比べれば格段に高いものでございます。
では、なぜ理想と現実にこれだけギャップがあるのかということについて調べたものが9ページ、表3-2にございます。実際に持つつもりの子どもの数が理想の数を下回る夫婦について、その理由を聞いた結果でございますけれども、一番多い理由は「子育てや教育にお金がかかるから」ということで60.4%となってございます。前回調査より若干は減ってございます。逆に前回調査よりわずかですけれども、増えているものといたしましては「欲しいけれどもできないから」あるいは「健康上の理由から」というものがわずかに増えてございます。
中身につきましては表3-3をごらんいただきますと、「経済的理由」を挙げている夫婦は調べてみますと、理想が高い夫婦に非常に多い。すなわち理想が3人以上という、現在の状況で言うと、かなり多めの理想を掲げて、それがなかなか実現できないと言っている夫婦におきましては「経済的理由」を挙げているものが多くございます。逆に理想子ども数は非常に低い設定をしているのですけれども、これが実現できないと考えている夫婦では「年齢・身体上」の理由が各段に多くなっております。
したがいまして、全体として見たケースと少しブレイクダウンをして見たケースでは少しイメージが違ってくるかなと思います。
11ページ、不妊と流死産の状況について調べてございます。表4-1の表頭に不妊を心配したことがあるという項目がございますけれども、この欄のすぐ下をごらんいただきますと、31.1%となっております。すなわち全夫婦の約3割が過去に不妊を心配したか、あるいは現在、心配していることになります。前回調査では25.8%でしたので、5ポイントほど増加をいたしております。
また、不妊を心配した夫婦のうちの半分に当たります16.4%が実際に検査や治療を受けた経験があると出ておりまして、これも前回調査と比べますと、3ポイントほど増えております。
12ページ、流死産を経験した割合について調べてございます。これも算出するのは今回が初めてとなりますけれども、全体の夫婦で16.1%の夫婦が流死産の経験があると結果が出ております。そのうちの3.4%は2回以上の流死産を経験している。不育症ということが課題になりつつありますけれども、そういったものに対する結果ということになろうかと思います。
13ページ、子育ての状況に進みたいと思います。まず、子どもを生んだ女性の就業率について見てみたいと思うのですが、図5-1でございます。3つのブロックに分かれておりますけれども、左側のブロックには現在、子育て中で更に子どもの追加予定のある妻の就業状況を調査の時系列にして比較をしております。
一番下の黒い部分が正規雇用でありまして、砂模様がパート・派遣などの非正規と呼ばれる雇用でございます。灰色が自営業でございまして、縞模様が無職を表しております。近年、パート・派遣などの非正規就業が増えているということがおわかりになろうかと思います。
真ん中のブロックでございますけれども、これは最後の子どもを生んで、末子が2歳になるまでの妻の就業状態を表しております。就業者全体の割合が縮小しているというのが、ごらんいただけるかと思います。子どもが小さい間、就業率が縮小しているということです。
一番右のブロックは、末子がもう少し成長しまして、3~5歳になった妻でございまして、無職が減り就業者全体の比率がぐんと増えてまいります。
この3つのブロックのパターンについて、時系列的に比較をしますと、余り変化をしていないということがわかります。この3つのブロックに分けてありますのは、実はいわゆる女性のM字型パターンと言われる就労パターンの、M字の後ろの半分の段階について相当するステージを描いておるわけですけれども、端的に言うと、M字の谷の部分とその後の上昇の部分に相当するステージでございます。これを結婚した女性について見ているわけでありますが、彼女らについて見る限りはM字型就労パターンは時系列的にほとんど変化を示していないということがわかります。
14ページ、図5-2は結婚の前後で妻の就業状態がどのように変わるかというものです。結婚をした年の時系列で比較をしているものでございます。砂模様で示しました結婚退職が減りまして、就業を継続している割合が徐々にではございますけれども、増えてございます。
図5-3は同様に第1子の出産前後での就業変化を時系列比較したものでございます。この図ですと、就業継続者は下の2つのパターンに相当しますけれども、これが全体として増えて見えるのですが、実はそれは出産以前に就業していた人自体が増えているということもありまして、もともと就業していた人の中での割合は余り変わっていない。そのことが下の表5-1に示してございます。
2つ目の「第1子前後」と書いたカラムをごらんいただきますと、時系列で38~39%台、就業していた人が出産を経て継続をする割合は余り変わっていないということになります。ただ、正規雇用に限定しますと、20年余りにわたりまして12ポイントほど増えているということが見てとれます。
15ページ、表5-2に参ります。第1子が3歳になるまでに利用した子育て支援制度や施設を見ております。全体の利用率すなわちどれかを利用した割合は41.9%でございますけれども、妻が出産後も正規雇用を継続している場合には92.3%ということになります。特に多く利用されておりますのは、産前・産後休業制度や育児休業制度、認可保育所などとなっております。いずれの利用率も時系列的には増える傾向にございます。
16ページ、祖母からの子育ての支援の状況を調べてございます。図5-5は第1子の子育ての際に祖母から支援を受けている割合を夫婦全体と就業している妻についての時系列を見たものでございます。90年代以降、最近のところにつきましては、どれも余り変化をしておりませんけれども、面白いかなと思うのは内訳を見ますと、妻方の祖母からの支援が増加しているということがわかります。
図5-6は先ほど見ました支援制度、施設と祖母からの支援というものを両方合わせて見たものでございますけれども、例えば左側の2つ、結婚持続期間0~9年のものをごらんいただきますと、全くの白抜きになっている部分が親の支援も制度、施設利用もどちらもないという夫婦を表しておりますが、妻が就業を継続している場合には、そういう夫婦ではこの部分はほとんど見えません。こうした支援が全く得られないという場合には恐らく就業継続が難しいのではないか。就業継続型から右の専業主婦型のパターンに移行しているのではないかと伺えるデータでございます。
時間の都合上、17ページは省略をいたしまして、最後に18ページをごらんいただきます。こちらでは結婚、家族、男女関係などに関する妻の考え方を調べております。調べた項目は表6-1にございます11項目でございます。
ここで注目をいたしたいのは、19ページの図6-1に示しましたように、時系列的な意識の変化が90年代以降ずっと継続しているという項目と2000年代に入ってから変化の方向が反転をしたという項目に分かれてきているということでございます。
変化が継続している項目は、左側のグラフの方で時系列を示してございますけれども、例えば一番左マル3の「愛情があれば婚前交渉を認める」という考え方についてでございまして、2番目について見ますと、マル8「結婚をしたら子どもを持つべきだ」という項目でございます。このグラフは保守的あるいは伝統的と一般に考えられる考え方をする割合を縦軸にとってございます。
したがいまして、時系列的に保守的な考え方、例えば婚前交渉を持つべきではないというのが高さになっておりますので、それが減少している。すなわち持っていいという方向に一貫して変わってきているということになります。
これに対して近年の変化が反転した項目を右側のグラフに示しておりまして、例えば生涯独身であることはよくないという考えが一旦、減少していたのですけれども、2005年調査以降、増加に転じております。すなわち右のグラフの項目では保守的、伝統的と言われる考え方、具体的には結婚や家族を支持する考え方が復調している、戻ってきているという形になっております。
これらの解釈は大変難しゅうございますけれども、すべての項目が同じように反転を示しているというわけではございませんので、単純に意識が保守回帰をしているということではございません。恐らく90年代の世代は保守的規範をはねのけなければならなかった世代だと思うのですが、それに比べまして新しい世代ではそういったプレッシャーが弱まってきて、むしろ中立的な立場から結婚や家族というものの価値を見直しているのではないかと見ています。
少々長くなりましたけれども、私の説明は以上でございます。
○津谷部会長
金子部長、ありがとうございました。
それでは、今の御説明につきまして御質問などございましたら、御自由にお願いいたします。お手をお挙げください。
山田委員、どうぞ。
○山田委員
非常に興味深い御報告をありがとうございました。
幾つかテクニカルなところでお教えいただきたいのですが、これは50歳未満の有配偶女子が本調査の客体となっているということで2つ質問があります。
1点はそれに関して5ページ目の図2の方で妻の結婚年齢別と夫の結婚年齢別で見た場合に、妻の方がカーブが下がっているというか緩やかに下がっている一方で、男性の方は相対的なものですけれども、妻と比較すれば、結婚年齢によって相対的にはカーブの下がり方が緩やかなのは、なぜかというのが1点目の質問になります。
あと、今回は調査内容の御報告ということで要因分析まで踏み込んではいないということだと理解しておりますけれども、16ページの図5-5で、これも大変興味深いと思ったのですが、公的でも民間でもいずれにしろ保育サービスが入手できない場合に重要となってくる父母からの子育ての手助けということで、要するに、内訳が変化しているという御報告があったのですけれども、それは仮説としてはどういうことが考えられるのかを教えていただきたいというのが2点目でございます。
以上です。
○津谷部会長
では、金子部長、よろしいでしょうか。
○金子人口動向研究部長
1点目でございますけれども、妻の結婚年齢による出生力の違いに比べて夫の結婚年齢による出生力の違いが余り大きくない、小さいという理由でございますが、いわゆる出生力、夫婦の持つ子どもの数は女性側の年齢的な制約を直接に受けているということが1つの大きな理由ではないかと考えられます。
男性の場合ですと、子どもを持つことに関して明確な年齢的、生理的な制約はそんなに強くない、女性の方が大きい。それがこの違いに出てきているのではないかと考えられます。
それから、祖母の子育て支援で妻方の支援が増えていることに関する仮説でございますが、常識の範囲内で仮説というほどではないですけれども、妻が育児をする場合に自分の実家の実の母親の方が支援を受けやすいという傾向が次第に強くなっているのではないかと思われます。伝統的には夫の親と同居したり、あるいは夫側の姓を名乗るということで古い見方をすれば、家的な考え方、伝統的な考え方がある程度残っていたものから、次第にそういったものが希薄化をして、実際に支援を受けやすいパターンの方に移っているのではないか。あくまでも常識的な範囲の考え方でございます。
○津谷部会長
山田委員、よろしいでしょうか。
では、順番に加藤委員、鬼頭委員、白波瀬委員でお願いいたします。
加藤委員、どうぞ。
○加藤委員
どうもありがとうございました。
手短に3点ですが、1つは流死産の件ですけれども、流死産が今回15.3%ということで、これは大体想定されていたことなのか。初めて集計されたということですが、今までの推計の中でも流死産については、いろいろと見られていたと思うのですけれども、想定外か、想定内ぐらいだったのかというのが1点。
14ページの図5-3で、第1子出生年別に見た第1子出産前後の妻の就業変化の箇所で、育児休業取得が増えているのにもかかわらず、全体の就業継続が増えていないということに関して、これはどういうふうに考えていいのか。育児休業そのものが就業継続を後押ししたと見られないと考えられるかどうかというのが2点目。
最後が19ページの意識調査の中で、これはどう解釈していいかわからないのですが、母親は家にという保守的な考え方は減っている一方で、伝統的な家族観で妻は家にというのが反転して増えている。これはどう整合的に考えればいいのか、お答えいただくのは難しいのかもしれないですけれども、何かお考えがあれば教えていただきたいです。
以上です。
○津谷部会長
では、金子部長、よろしくお願いいたします。
○金子人口動向研究部長
流死産の割合が想定内外かというお尋ねですけれども、一定の割合で流死産が含まれているということは当然わかっていたわけですが、どちらかというと比較的多いかと、この数字を見て思いました。最近、問題視されてきていますが、不妊だけではなくて不育症についても十分検討しなくてはいけないのではないかという数字になっていると感じました。
それから、14ページの図5-3、育児休業の利用は増えているけれども、就業継続は必ずしも増えていないということについては、育児休業制度は就業を継続すると決めている人にとっては大変利用価値のある、支援になる制度であったので、利用が拡大していると理解できるのですけれども、実際の子育ての期間等を考えますと、退職をして育児に専念をしたいという期間との兼ね合いでどうなのかなというのが1つの論点になろうかと感じております。
辞める人の割合が余り変わらないというのは、育児休業制度があってもなくても育児に専念をしたいという考え方が一定程度強い。それに見合うだけの支援がないと、それを覆すのは難しいのかなと。そこまで言えるかどうか、勇み足かもしれませんけれども、そのように感じております。
あと、意識の点につきましては、これは項目の9番に相当する「少なくとも子どもが小さいうちは、母親は仕事を持たずに家にいるのが望ましい」というのが90年代以降、そうではなかろうという方向に進んでいる。簡単に言ってしまいますと、3歳児神話と言いますが、子どもの小さいうちに母親が常にそばにいないと、子どもの発育に影響があるのではないかという考え方に関係するものだと思います。そういった神話と言われていますけれども、余り根拠のはっきりしないことについて、それを信奉するような割合が引き続き減ってきているということを意味しています。
一方の「夫は仕事、妻は家庭を守るべきだ」というのは、家庭内での男女の役割分業の意識をとらえているものでございますが、反転はしていると言いましても非常にわずかな面もございまして、はっきりとその意識が役割分業の方に向いたかと言われると、まだはっきりしないところがございます。ただ、変化が止まっていることは間違いないです。
ですから、ある程度、家庭を維持する上での役割分業についての考え方の変化がここで少し止まっている。家庭を維持するためにどうしたらいいかということについて従来のやり方をまだ保持している。
余りいい答えにはなりませんでしたけれども、以上です。
○津谷部会長
では、次に鬼頭委員、お願いいたします。
○鬼頭委員
それでは、私からも今の図6-1の読み方について金子さんのおっしゃったことに少しコメントさせていただきたいと思います。
実はこの調査と同様の独身者調査について毎年、自分の担当している人口学の授業で同じ調査をやっておりまして、それと全国の値と比較するということをやっています。数が多くないので研究材料になるほどのものではないのですが、大体動向は一致しているかなと思っております。
私の印象ですが、最初のパラグラフの最後の「伝統的な考え方の支持が増加している」というのは、もう少し慎重な表現をされた方がよろしいかなと思います。どういうことかと言うと、(1)変化が継続している項目は男女間あるいは夫婦間に対しての新しい規範がずっと進んでいるのではないかということが1つ。
2番目は、変化が反転した項目でマル7以外は家族を持つということは、いいものだということを言っているのだと思うのです。ですから、この2つを矛盾なく説明することはまだ難しい段階だと思いますけれども、結婚はした方がいいんだ、だけれども、男女間は平等であるとか、お互いに犠牲を払っても一緒にいることが大切なのだという新しい夫婦観間に移行しつつあるのではないかという印象を私はもっています。
その中でマル7夫は仕事、妻は家というのは、妻に聞いていることです。男性は入っていない。そのことを考えると、部会長がかねがね最近の学生の動向はとおっしゃっているように、就職状況が余りよろしくないので、それなら専業主婦しようかという方にいっているのかなという印象を受けないでもない。ただ、これはまだよくわりません。
もう一つ、マル6結婚に犠牲は当然だという点。いつも学生と議論になるのですが、妻が自分のことを言っているのではなくて相手にも言っているというメッセージとも受け取れる。そう考えると、夫婦観については新しい規範が動き出していて、結婚しない方が新しい動向だと考えている先輩たちと違って、今の若い人たちは保守的、伝統ではなく、社会の持続可能性という意味からいったら、言い過ぎかもしれませんけれども、人口減少を食い止める健全な方向に向かっているかなという印象を持ちました。あくまでも私の感想でございます。
○津谷部会長
ただ今の鬼頭委員のご発言について、何かコメントがございますか。もしございませんようでしたら、よろしければ、次の質問に移りたいと思います。よろしいでしょうか。
では、次に白波瀬委員にお願いし、その後に阿藤委員、お願いします。
○白波瀬委員
大変詳細かつ貴重な報告をありがとうございました。
3点ほどあります。
まず、1点目は9ページの結果についてです。表3-3「欲しいけれどもできない」からと答えているというのが「理想1人以上予定0人」の間で60.2%います。もともと「理想1人以上予定0人」の該当者数自体が少ないので、この6割以上という数値の解釈には注意を要しますが、少子化を不妊治療等の医療の観点から捉える必要を訴える基礎資料となりうると考えます。高齢出産、不妊の問題を提示するという意味でも、このような調査結果は大変意味があると思います。
2点目ですけれども、13ページの図5-1のところで、「子どもの追加予定あり」と「末子0~2歳」の働いていない人の割合を一番直近の第14回調査で見ますと「子どもの追加予定なし」の方が無業率が高くなっています。子どもがもっと欲しいので、しばらく仕事を控えるという状況が1つ想定されますが、ここでの結果はそれとは逆です。子どもの追加予定がないと答えたものと、予定ありとしたものの間の年齢の違いが考慮されていないのが、子どもの追加予定なしの無業率の高い背景にあるのではないかと考えました。無業かどうか、あるいは子どもの追加予定はどうかに、年齢が密接に関連していますから、年齢別の結果を出していただけるとよいのではないかと思いました。
最後に3点目ですけれども、今、結婚・家族に関する妻の意識の変化についていろいろ議論がでていますけれど、本調査が50歳未満の結婚をしている夫婦であることを忘れてはなりません。本調査対象者の全体分布をみても、30代後半~40代が大半を占めています。最近、30代に至っては未婚率が高くなっておりますので、言いかえれば、結婚をしている調査対象者そのものが、全体社会においてある意味で偏った集団の傾向にあるともいえます。
つまり、結婚しないで、非常に革新的な意識を持っている女性は、本調査から外れているのです。本調査の対象とする既婚女性とはいわゆる伝統的な価値観を持つ傾向にあり、さらには調査時点で結婚が継続している場合であるという意味でも、晩婚化・未婚化が進み離婚が増えている現在、意識の上で偏りがある集団と捉えることができるのではないでしょうか。ですから、そこを考慮しますと、新しい世代が結婚に対して中立的になったとか、あるいは逆に保守的になった、実は健全になってきたのだという知見も、今一度注意し検討した方がよいと考えます。
以上です。
○津谷部会長
では、金子部長、2番目と3番目の御意見、御質問に対し、もしコメントがございましたら、お答えいただければと思います。
○金子人口動向研究部長
図5-1、末子を持った後の方が就業率が低くなっているという点です。1つは子どもの追加ありという場合では、次の子どもまでの子育ての期間を全部含んでおりますので、出生後の間隔が長くなっている夫婦も含まれている。それと御指摘のとおり年齢の違いは、はっきりと違いがあると思います。その辺については、いずれ報告書の方でしっかりとコメントを生かしたいと思います。
妻の意識についての部分の解釈のところに関して貴重な御意見をいただきました。確かにこれの背景といいますか、解釈について軽々に論ずるべきではないと思いました。確かに御指摘のとおり、結婚をした人たちというセレクトされた人たちの意識でございます。独身者調査を同時に実施してございまして、そこでも全く同じ項目で意識を聞いております。それを比較することによって、その辺の違いが出てくるのではないかと期待されます。また、それも御指摘を受けて、そのような方向で分析をしたいと思います。
ありがとうございました。
○津谷部会長
では、阿藤委員、どうぞ。
○阿藤委員
大きい質問と小さい質問を取り交ぜてございますけれども、第1点は回収率ですが、この回収率はあくまでも国民生活基礎調査を100として有効票が何割という形になっているんですか。つまり、国民生活基礎調査そのものの回収率がまずあり、そこで回収された調査対象者が母集団になっているのかどうか、その辺はどうなのかということをお聞きしたいなと思いました。
もう一つは、独身者調査に私は大変関心を持っているので、そういう意味ではこれは推計に間に合うような発表になるのか、それとも発表そのものはもっと後になるのかというスケジュールの問題ですけれども、お伺いしたいと思います。
表に入りますけれども、3ページの表1-4で夫妻が最終的に結婚を決めたきっかけというのは、例えば「年齢的に適当な時期だと感じた」というのは、答えているのはあくまでも妻ですね。夫側のことも含めているのか含めていないとか、そういう辺りの区別がつきにくいものもあるような感じがあるのですが、その辺をコメントいただければと思います。
4ページは全くの感想で、ついにきたかという印象です。何となく夫婦の出生力が下がっているという言説はいろいろあったのですが、何しろまだ途中経過であったということで、出産の繰延べというかポストポーメントが起こっていると見ていたのですけれども、ついに最終的にそれが完結として出たときに、下がっていることがはっきりしたというのは大変ショッキングでもあり、重要な事実だということを再確認させていただきました。
9ページ、ほかの表でもあるのですが、表3-2とそれ以外に「複数回答」とあるのは幾つでもいいというのか、あるいは2つまでとか限定付きのものなのかということを伺いたかったです。
10ページ、表3-4は多分新しい設問ではないかと思うのですが、実際の出生子ども数、理想子ども数はもともとあって、私自身が現存子ども数プラスintendedという意味で追加予定子ども数を加えたものを予定子供数と名付けたことがあります。そのときにアメリカの質問表でintendedではなくてexpectingとかexpectedとか、「そういうつもりなのだけれども、客観的にこうなるだろう」という指標も別にあったのですが、とても日本ではそんなのは無理だろうと、そこまでは指標を考えませんでした。
この質問というのは、かなりそれに近いことなのかどうか、その辺を確認したいんです。予定はこうなのだけれども、更に客観的に見てそうなるかならないかという二段構えの設問になっている感じがするものですから、それを伺いたかったということであります。
14ページ、図5-2なのですが、先ほどから就業継続の点で育児休業があまり効果がない感じなのですけれども、それとは別に図5-2で一番上の白い方「結婚前から無職」という人が徐々に増えているという辺りは就職難とか、そういうことを反映したものなのかどうか、伺えたらと思いました。
最後ですけれども、16ページの図5-5なのですが、母方、父方祖母の支援があるなしですけれども、一番上のものは両方を足したものではなくて、どちらかの支援があるということで、下の方は片方しかないという区別でよろしいんですか。
○津谷部会長
大変たくさんの点についてご発言がありましたが、御質問の部分にだけ手短に御回答いただければと思います。
お願いいたします。
○金子人口動向研究部長
回収率、回収状況のことでございますけれども、御指摘のとおり、この調査は国民生活基礎調査を親調査としてございまして、その抽出されたものの中から再抽出をするという方式でございます。
ただ、一応その回収率の分母となりますものが客体数でございます。これは無作為に抽出した調査地区において事前に把握した夫婦の組数、これが客体数となってございます。その中で回収した有効なものということで算出をいたしております。
それから、独身者調査のスケジュールのお尋ねがございましたけれども、これは正確な予定はまだわからないのですけれども、鋭意作業中でございますので、結果が出次第、早急に御報告をいたしたい、できるだけ、この人口部会に御報告をいたしたいと思ってございます。
3ページの表1-4、これは妻の回答でございますので、夫側が把握しているきっかけは、なかなかとらえにくいというのは御指摘のとおりでございます。また「年齢的に適当な時期だと感じた」というものが最終的なきっかけというのも、わかりにくい面もあるかもしれないのですけれども、ほかの項目で交際期間が延びている、出会ってから結婚するまでが非常に延ばされているということもありますので、実際に結婚したときに一体何が決め手になっているのだろうかという観点から、こういった項目を今回入れさせていただきました。まだ、そういう面で結果を見て洗練すべき項目である可能性はあろうかと思います。
複数回答につきましては、そう記したところは数の制限がないものがほとんどでございます。今、確認しましたが、すべて数は限定してございません。
10ページの表3-4、予定子ども数。こちらは説明を省略させていただいたのですけれども、確かに我々も今回初めて入れまして注目しているものの1つでございます。
予定子ども数というのは実際に持つつもりの子ども数ということで聞いておりますが、持つつもりという形でこれまでも時系列的に調べておりますが、実際の子ども数がどうもそれに達していないのではないかという疑いがありまして、そうであるとすると、これはその点について非常に重要な要素が含まれているのではないかという観点から新たに予定を実現できない可能性があるのか否か。そして、その可能性があるとすると、どういうことがネックになっているのか、これも初めて入れたものでございます。
新しい予定子ども数という、先ほどintendedとexpectedの違いを御指摘いただきましたけれども、必ずしもそういうところまでは考えておりません。実際に夫婦たちが自分たちの持つつもりの子どもの数について、どのぐらい実現性を考えているのかということを知りたかったということでございます。
14ページの図5-2、結婚前から無職が増えているということについてですが、この調査からはまだどうして増えているのかというのは分析できておりません。一般的な傾向から見ますと、やはり一般の雇用状況の変化がここに表れているのかなと思う次第であります。
16ページの図5-5、祖母からの支援を妻方と夫方を別々に示してございますけれども、一番上のライン、これは単純に足したものではございません。両方から支援を受けているという重なった部分がございますので、足したものよりは低くなるということになってございます。
以上でございます。
○津谷部会長
ありがとうございました。
時間が押しておりますので、議題の第2番目に入りたいと思います。申し訳ございません。実は25分予定が超過しております。大変活発な御議論をいただいてありがたいと思いますが、2番目の議題の御説明を聞きませんと先に進めませんので、ご理解とご協力をお願い致します。
第2番目に移らせていただいてよろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○津谷部会長
新推計の基本的な考え方についてでございます。
それでは、このことにつきまして、また金子部長より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○金子人口動向研究部長
よろしくお願いいたします。
時間が押してきましたので、若干省略する部分が出てこようかと思いますが、全体は大きく分けて2つのテーマのお話をさせていただきます。
(PP)
1番としまして、新推計の手法に関する考え方というものでございます。主に仮定設定についての基本的な考え方を前回推計以降の人口動向を踏まえまして御審議をいただきたいと存じます。
2つ目のテーマとしましては、将来人口推計の課題ということで、本日は東日本大震災の影響ということが1つの課題となっておりまして、今回につきましては死亡仮定に関する部分について少し考えたいと思います。課題のもう一つとしましては、将来人口推計におけます社会経済の変動のとらえ方というものについて簡単にお話をしたいということでございます。
(PP)
3ページ、新将来人口推計の基本的枠組みと基準人口についてどのように考えたらよいかというものを示してございます。
推計の枠組みでございますけれども、これは推計の期間であるとか、年齢幅、年齢区分、対象の人口といったものでございますが、これにつきましては、各方面からの要請にこたえられるものとしてこれまで少しずつ変わってきておりますが、これらについては前回推計で特段の問題を認識しておりませんので、これらを踏襲したものを新しい推計の枠組みとできたらと考えております。
推計期間につきましては、2011年から2060年の50年間。参考推計としましては、その後の50年間。2110年という長期のものになります。更に年齢区分につきましては、前回と同じ0~104歳、105歳以上を一括ということです。並びに対象については総人口についての推計を行うということでございます。
次に、基準人口でございますけれども、これは平成22年の国勢調査に基づくということは同じでございます。
実を言いますと、来週26日に全国人口の昨年の国勢調査の確定数の公表になる運びとなっております。これを受けまして、基準人口というのは年齢不詳、国籍不詳を按分補正したものです。今回に限りましては、補正法が変更になる可能性もございまして、確定数が出て、速やかに情報を得て、同じ方法を用いて基準人口をつくることといたしたいと考えております。
(PP)
4ページ、出生の仮定設定でございます。
前回までに御説明をいたしました参照コーホート、最終コーホート、特に分析の対象とするコーホートを前回よりも5年先送りをしまして、95年生まれのコーホート、最終コーホートを2010年生まれのコーホートと考えております。
また、出生率を総人口と日本人人口に分けて投影をするという方式を踏襲したいと考えております。
(PP)
次に、出生仮定の設定に際しまして、近年の動向を少し見ておくことが必要になります。
こちらは、合計特殊出生率の年次推移を示しておりますけれども、ごらんいただけますように、2005年、1.26という史上最低の値を境にしまして、その翌年から出生率が回復をいたしておりまして、2010年につきましては1.39となってございます。
これは、2010年、国勢調査の確定数が得られるまでは概数でございますけれども、こういった回復が見られるということでございます。
(PP)
反転という部分が非常に重要になりますので、詳細に見たいということで、月別の細かい変化を観察したいと考えました。
年次推移に月別推移を重ねたグラフを示しておりますけれども、意外に季節変動が大きいというのがおわかりかと思います。
実際の分析に際しましては、これに対して季節変動を除去したトレンドというものを統計手法によって用いるということにいたしました。
(PP)
出生率の回復している部分について拡大したものでございます。
4つ図がございますけれども、左上が全体の合計特殊出生率の月別推移。季節変動の調整をいたしまして、トレンドに直したものが実線でございます。
上の右側が第1子についての出生率、左側の下が第2子、下の右側が第3子以上ということで、出生順位別に変化を見てございます。
まず、左上、全体の合計特殊出生率をごらんいただきますと、2005年に非常に特異な落ち込みが観察されます。
ちなみに、この図の真ん中に破線が縦に引いてありますけれども、これより左のデータが前回の18年推計に用いられたデータでございます。これより右側のデータというのはその後に得られたデータということになります。前回は出生率が底になったところまでのデータを用いて推計を行ったということになります。
その後も細かい変動がございます。2006年中に急激に反転を示しておりますが、2006年半ば以降はほぼ直線的に、勾配は緩みますけれども、変動しながら増加を示している。ただし、その途中で2009年のところで少したるみがございます。これは第2子、第3子、下のグラフの方をごらんいただきますと、より大きく出ております。これはちょうどリーマン・ショックに相当する時期でございます。そういった要因による変動の影響が疑われるところでございます。
ここで重要なのは、勿論いろいろなフェーズに実は分かれるということも1つ重要ですけれども、どの出生順位も同調している。同じ時期に上がったり下がったりしているという一定の傾向が見られるということから、一時的な社会経済変動に伴う出生行動の変化というものの存在が認められるだろうと思われます。これがコーホート的な変化でございますと、それぞれの出生順位の変動時期がそれぞれ出生間隔の分だけずれることが想定されますので、全く同時に起きているということは、それぞれの出生順位に対して同じ効果をある時期に受けているということが疑われるわけでございます。
(PP)
次の8ページでございますけれども、こちらはそれを少し分析いたしまして、左側のグラフが合計特殊出生率全体でございます。右側はそれに対して出生順位別と初婚率の推移を足したものでございます。
2005年以降のところにつきまして3つございますけれども、1つは実績です。丸のマークがすべて実績となっております。
実線になっているものが前回の18年推計の中位仮定でございます。このような形で、1年だけ少し回復の兆候が見られましたので、仮定値においてもそういったことを反映させておりますけれども、その後につきましては、コーホートの推移から得られる年次推移に戻ってございます。
真ん中に見られる破線のグラフでございますけれども、これは何かと申しますと、2005年の年齢別の出生のハザード率というものがございまして、これを一定にした場合にどのような推移になったであろうかというものをシミュレーションしたものでございます。
これはどういうことかといいますと、ハザード率、すべての年齢で生む確率が同じであれば、2005年で固定されて、同じ値で推移するのではないかと思われると思うのですけれども、実を言いますと、出生の先送りがありますと、その分だけ高い年齢に子どもを生んでいない人たちが残るわけです。ですから、一人ひとりは同じ確率で生んでいても、もし先送りした翌年は、その年齢では生んでいない人がたくさんいるわけですから、その分だけは増えるということになります。
生み戻しと一般に言われるものですけれども、これが若干増加しつつ推移をしているということでございます。2005年に先立つ期間にかなり出生の先送りがあり、その分の積み残しがこの時点で生じていた。それが実際に出生率の回復にもつながっている。しかしながら、それ以上に実際の変化は高まっておりますので、そういった構造的な変化プラス何かがあったということになります。
その分解をしたものが左のグラフの中にある要因分解のグラフになっております。
この構造的な部分とそうでない部分。構造的な部分が少し薄い色の部分でございまして、それ以外の行動変化の部分というものが濃い色ですが、こちらがかなり多い部分になってございます。
(PP)
これにつきまして9ページに行きますと、これのコーホート的な変化についての考え方というものでございます。
一番上の黒いマークのラインというのが最終的な各コーホートの出生率になりまして、白抜きになっている部分が前回の推計以降に得られた実績値でございます。
50歳までのコーホートのTFRにつきましては推計のラインに沿って推移をしておりますけれども、問題は若い方でございまして、やはり出生率の回復を受けまして、例えば35歳までのラインをごらんいただきますと、推計のラインよりも少し上に外れてきていると。ですから、これが新しい推計でどのように反映をするべきかということになります。
(PP)
10ページ、新推計におけます出生仮定設定につきましては、次のように考えております。
近年の出生動向のまとめでございますけれども、将来推計の出生仮定を設定する観点からしますと、2006年以降の出生率の回復というのは、この表に示しました4つの要素に分けて考えるのがよいのではないかと思います。
それぞれ構造要因、行動要因、期間効果、コーホート効果に分類してございますけれども、1番が先行する期間の出生率の低迷に対するリバウンド。これが先ほどのグラフで破線で示した、シミュレーションで示した効果ということになります。2番目として、コーホートの晩婚・晩産化終息によるテンポ効果。これはちょっと難しくなりますが、欧米で見られています現在の出生率回復というのがございますけれども、これは押しなべて、このメカニズムによって年次の出生率が回復をしていると言われております。3番目としましては、景気変動やブームなど、社会経済変動に伴う一時的な出生行動変化。これはどちらかというと、一過性のものです。4番目としまして、コーホートの完結出生力が上昇しているのではないか。この4つの要素が重要になってきます。
人口の長期的な推計について重要なのは4番目になります。米印の方に記載してありますけれども、コーホートの完結出生力の上昇と書いてありますが、正確に言いますと、前回推計時の仮定された推移と比較してそれが高い推移になっているのか、そうではないのかというのがポイントでございます。この5年間の出生の回復がコーホートの最終的な出生力につながっているか否か、これが1つのポイントになってくるということをここでは言っています。
したがいまして、新推計における対応につきましては、出生仮定、設定の手法的な枠組みを大きく変えることはなく、1つは手法の洗練をする必要があるか。2つ目は参照コーホートの仮定値の再検討、精査を行う必要があるかということでございます。
具体的には、その下にあります期間変動に関する不確実性の表現方法を何とか取り入れられないか。前回の経験を踏まえますと、いきなり反転をするということがございましたので、そういったことを不確実性として取り入れた出し方を考えるということでございます。
2番目としては、テンポ効果。欧米で見られる回復が日本でどの程度当てはまるのかということを足掛かりにしたコーホートの完結出生力の精査を行いたいということでございます。
(PP)
次に、死亡の仮定に進みます。
これにつきましては、基本的な枠組みは11ページのようになってございます。
(PP)
12ページで近年の動向との比較をしてございますけれども、死亡に関しましては、仮定値に沿った実績値の推移というものが見られてございます。
グラフをごらんいただきますと、5年以降のところが仮定値と、マークが実績値でございますけれども、おおむね同調した形で進んでいるということがわかります。
3本に分かれておりますのは、前回から導入しております高位、低位の平均寿命ということになります。
(PP)
次の13ページと14ページは一緒にごらんいただければと思います。
これは年齢別の実績と仮定値の比較をしたものでございます。
13ページの方が2008年と比較したもの。
(PP)
14ページの方は2010年、仮定を設定してから5年を経過したものでございますが、どちらも右側のグラフをごらんいただきますと、差を年齢別に描いておりますけれども、年齢の低いところで変動が大きいことがごらんいただけますが、この部分は死亡率の低い部分です。それがベースになっておりますので、余り推計に大きな影響を与える誤差ではありません。
問題になるのは高年齢の部分でございますが、ここにつきましては比較的、誤差の幅が小さく、また、体系的な誤差というのが認められません。ですから、前回の手法というのは比較的うまく実現値と合っているのかなと判断されるところでございます。
(PP)
15ページ以降につきましては、年齢別の変化を対数出生率で示してございます。15ページが実績でございます。このような変化をしております。
(PP)
16ページにつきましては、これを死亡率の改善のパターンとするために、最新の出生率からの隔たりと差を描いてみたものです。要するにこれは死亡率の改善の年齢パターンを表しておりまして、山が高いということは、改善の度合いが大きいという年齢のところを示しておるものでございます。
60歳以上ぐらいのところで高まりがあるんですけれども、この頂上が右側、高年齢側に斜めに移動をしているという点に注目をしておいていただきたいと思います。
(PP)
17ページは、前回に御説明をした標準的なリー・カーター・モデルの姿でございます。
(PP)
18ページは、標準的なリー・カーター・モデルを日本の推移に当てはめたモデル的な死亡変化というものを描いております。
通常のリー・カーター・モデルを用いますとこのような形で、ゼロの線より上が過去の実績、ゼロより下の部分が将来への投影ということになりますけれども、こういう形で投影がなされるわけです。
(PP)
ところが、先ほど実績のところでごらんいただきましたピークの右への移動というのはこれでは全く表現されません。標準的なリー・カーター・モデルでは表現ができない。そこで、こういった言わば老化過程の遅延といいますか、死亡の過程の遅延という、世界最先端の死亡水準を持っている日本ならではの傾向を生かすための修正を加えてございます。
19ページは、修正リー・カーター・モデルによる相対的な死亡の変化というものを描いておりますが、これによって高年齢での死亡率のシフトが表現されているということです。
(PP)
20ページにつきましては、この方法論についての説明でございますけれども、横軸が年次、縦軸が年齢ということになっていまして、それぞれ死亡率の改善の方向を矢印で示しております。
真横に矢印が行っているということは年齢のシフトが起きていないということを示しています。少し斜めになっている矢印は年齢のシフトが起きているということを示しています。年次によって多少違いますけれども、総じて高年齢の方においてシフトが起きているということが観測されている。
こういった、いわゆる接ベクトル場とここで呼んでおりますけれども、数学的に統一的な手法を使うことによりまして、手法自体が非常に使いやすいものになったということが言えます。
(PP)
21ページに死亡の仮定についてのまとめをしております。
近年の死亡動向につきましては、おおむね仮定に沿った動向である。したがいまして、新推計におけます対応につきましては、今、ごらんいただきました手法の数学的な洗練というのは1つございますけれども、大きな改変はいたしませんで、実績値が追加されますことに伴います仮定値の微調整というものにできればと考えております。
(PP)
次は、国際人口移動でございます。
(PP)
これにつきましては、23ページ、これは総人口、すなわち日本人も外国人も合わせた入国超過数についての実績と仮定値を描いております。
これは前回もお示ししたと記憶しております。
ただ、2005年以降の新しい部分をごらんいただきますと、1つ大きな現象がございます。これはリーマン・ショックに対応する時期の入国超過数がマイナスでございまして、出国が大幅に超過をしていたという実態でございます。
(PP)
次の24ページを見ますと、こちらが外国人だけに限定した入国超過でございます。
こちらでも、おおむね増加をする推移、趨勢を示しておりまして、前回の仮定値では赤いラインになってございますけれども、その後、リーマン・ショックの影響と見られる国際人口移動がごらんのように大きく起きてございます。
(PP)
これを国籍別に見たものが次の25ページでございます。
特にブラジル国籍の変動が大きい。ブラジルからいらしていた労働者をはじめ、いらしていた方々の帰国が大きく変動にかかわっていると見られております。
(PP)
次の26ページに行きますと、こちらは日本人に限定した国際人口移動でございます。
こちらでは、出国超過が増えるのではなくて、入国の方向に変化が起きているということがとらえられています。
(PP)
非常に難しいとらえ方になると思うんですが、次の27ページにその全体像についてまとめてあります。
近年の国際人口移動の動向につきましては、世界的な経済不況によります変動が非常に大きかった。外国人労働者の帰国でございます。これは全くまだデータはございませんけれども、本年におけます東日本大震災に際しての外国人の出入国についても大きな変動が伝えられております。これを考慮する必要があろうかということが1つあります。
新推計における対応につきましては、外国人、日本人という形での仮定の設定という枠組みは変えずに、国籍別の移動の動向を、先ほど言いましたように、例えばブラジル国籍が特異な動きをしているとか、そういうことがございますので、国籍別に詳細に分析をした結果を反映したい。
短期的には震災の影響を含めて現状の趨勢を反映させて、長期的には過去からの趨勢を反映させたいという考え方をいたしております。
(PP)
次に、2つ目の大きな課題としまして、将来人口推計の課題のうちの最初の話。東日本大震災の影響をどのように取り入れるかについてご説明いたします。
(PP)
これにつきまして、今回は死亡仮定についてお話をさせていただきます。
29ページの方に死亡にかかわらず、震災の影響をどのように考えるかということの基本方針が1と2ということで記述の中にございます。
人口推計というのは、実績値を将来に投影するものであり、一方でまた定期的に見直しを行うものであるという基本からいたしまして、基準人口、すなわち今回におきましては、2010年以前のデータが対象となります。しかしながら、今回のように特別な事態が起きまして、かつデータも信頼できるものが得られるということであれば、これを反映する方向で考えるべきであろうということでございます。
死亡について見ますと、警察庁のとりまとめている死亡数のデータがございます。
(PP)
これを使いまして、30ページの方では少し試算をいたしました。
死亡率に対する本年、2011年の死亡の全貌、特に被害の全貌が明らかになっておりませんことから、2つのケースの試算を行ってございます。
1つは、警察庁のとりまとめました死亡数を2010年の死亡数に対して付加してどのような生命表になるか。試算Bとしましては、これは考え得る最悪のケースということで、警察庁のまとめております死亡数と行方不明者数を合わせたものについて、これを生命表に加えて試算をしたものが30ページの右側の死亡率です。
そうしますと、18年の中位推計の2011年値に対して付加したものでございますけれども、試算Aにおきましては、男性で0.2年、女性で0.3年、試算Bでは、男性で0.3年、女性で0.4年全国の平均寿命が短くなるという試算結果が出ております。
これは1つの参考でございますけれども、こういった形で、2011年に関しては、死亡については1年次についての影響を反映させていきたいと考えております。
(PP)
次に、課題の2つ目でございます。
これは非常に大きな問題でありますけれども、社会経済変動のとらえ方ということでございます。
(PP)
こちらをまとめたものが32ページにございます。
基本的な考え方、私どもの考え方を申し上げますと、社会経済環境の過去の趨勢というものは、観測されました人口学的データの変化に反映をされる。人口学的なデータばかりを使って、推計をしていることから、一般には社会経済の変動を考慮していないのではないかという誤解がございますけれども、そうではございませんで、人口学的なデータが社会経済の変化を反映しておると考えておりまして、将来推計では、そうした人口学的データや指標を投影することによって行うということで、決して社会経済の変化が全く除外視されてしまうというものではございません。
(PP)
33ページは、そのことをチャートで示したものでございます。
(PP)
34ページ、実際に社会経済要因と人口の変数との関係について考えて行きます。
出生、寿命、人口移動などの人口変動要因との定量的な関係。社会経済変化との人口変数との定量的な関係というのは、なかなか明らかではございません。またいろいろな研究から出てきます結果も安定的なものではございません。そういった意味で、1つテクニカルに人口推計に反映させていくことは、現段階では困難というのが1つございます。
もしそれが非常に安定的で定量的な関係が把握できたとしましても、人口推計の前提とする限り、社会経済要因の長期的な将来推計を先に行う必要が出てくるわけでございます。それが実際に可能かどうかという問題がございます。恐らく人口推計以上に難しいのではないかと考える次第です。
したがいまして、社会経済要因を取り入れることによって人口推計の制度というのは向上するとは限らない。また、人口推計というのは、特に公的な推計につきましては、客観性、中立性が非常に重要になります。そういった意味で、実績値の投影ということを重視しておるわけでございますけれども、社会経済要因を推計に取り入れるとなりますと、どの要因を選ぶかとか、どういう研究結果を定量的な関係に使うのかとか、そういった選別によって、恣意性が入ってくるということも考えられます。
(PP)
35ページ、36ページは、いろいろな社会経済変数と、特に政策変数と出生率の関係についての例を幾つか挙げておるものですが、いずれも結果が一定していないということも示してございます。
(PP)
37ページ、こちらは経済変化です。不況によって異なる結果が出ている例ということで1つ挙げてあります。
1990年代の経済不況下における出生率について、スウェーデンとフィンランドの2つは、北欧の、我々から見ると非常に近しい国と見られるわけでございますけれども、90年代の経済不況につきましては、スウェーデンの方はその影響を受けて非常にアップダウンしたという研究結果がございます。一方でフィンランドの方はそれほど反応しなかったということがございます。
(PP)
38ページに本当にそうかということで、スウェーデンとフィンランドの長期的な出生率の推移を描いてございますけれども、確かに90年代における反応というのは違っているということが言えます。
これは、引用しました文献によりますと、フィンランドの方では在宅育児手当の支給という制度がございまして、これが実施されていたために、経済的な変動の影響がさほどきかなかったのではないかという結論になってございますけれども、いずれにしろ、1つの経済的な変化に対して、わずかな環境の違いによって反応の現われ方が違ってくるという1つの例になっていると思います。
それと同時に、38ページの図で表されているのは、もう一つ、上の方になだらかな線が2つありますが、これはコーホートの合計特殊出生率を示しているものでございまして、これが年次の変動と比較していかに違いがあるかということをごらんいただきたいと思います。年次の変動がいかに変動が激しいか。あるいはコーホートの変化が安定的に推移をしているか。
すなわち社会経済変動というものは一時的な年次の出生率に影響を持つことがこの例でも見られますけれども、コーホートの方にどれだけの影響を与えるのかといいますと、これはそれよりはかなり穏やかなものであるということが期待されるわけです。したがって、将来推計におきましては、コーホートの指標を重視して行っているということになります。
(PP)
39ページ、最後のまとめということでございます。
公的な将来人口推計に関しましては、広範な目的に対する基準としての役割を持っています。将来の人口が1つの基準として示されて、それに対していろいろ議論をするという役割がありますので、その際には、客観性・中立性というものが要件になってきます。したがって、人口との関係があまりはっきりしていない社会経済要因であるとか、あるいは目標的な要素を持った政策的な要因といったものを仮定の中に用いるべきではないのではないかと考えている次第でございます。
そういった意味からも、各国の推計をいろいろ調べてみましても、直接に社会経済要因の変化を人口の将来推計に取り入れているという例は存じません。
ただし、1つ申し上げておきたいのは、社会経済と人口の変化というのは社会を理解する上で非常に重要なもので、将来的にこういったものを直接に扱いながら、人口推計あるいは社会経済の将来像を描くという社会科学の1つの夢のようなものですけれども、そのようなものに向かっての関係を分析していく、研究していくということは極めて重要だと思っておりますし、我々もそういった努力をしたいと思っております。
(PP)
残りました部分につきましては、社会経済と出生率の関係についての実証的な分析の事例につきまして若干、サーベイしたものを参考までに付けてございます。
以上でございます。
○津谷部会長
金子部長、ありがとうございました。
実は、この新推計の手法についての御説明の後、約50分間の質疑応答を予定しておりましたが、もうあと15分弱しかございません。ここで質問その他を始めてしまいますと、恐らく1つの質問にお答えするぐらいしか時間がないのではないかと思います。ただ今の新推計についてのご説明は相当テクニカルに難しいものでもあり、本当に申し訳ございませんが、委員の方々からのご質問は次回の部会までお持ち頂くということでいかがでしょうか。そして、次回の御説明の際に、今回ここで明らかでなかったもの、そして更に説明その他が必要だと思われるものについても、ご説明願いたいと思います。つまり、推計実施者である社人研への「宿題」をここで伺いたいと思います。ここで、こういうことを調べていただきたいという要望を伺いまして、次回の人口部会で、今回のこの新推計の手法に関する御説明の残り部分すべて、そして更にここでお願いする追加的な御説明、推計値その他に対しての御説明やお答えをいただいて、それらをまとめて審議をさせていただくということでよろしいでしょうか。そうでないと中途半端になってしまうように思います。
なお、今回の部会でも自分の質問を覚えていられないという方がきっといらっしゃるかと思います。申し訳ありませんが、委員の皆様にはご自分の質問やコメントについて、簡単にメモをとっておいていただき、まとめて次回の部会でご質問下さい。それでよろしいでしょうか。
では、こちらからお願いしたい追加的な計算や推計がございましたらどうぞ。
○宮城委員
産婦人科医師の立場からで、今回の結婚と出産に関する全国調査とこの推計の両方に関連することです。全国調査の表4-2の流死産の経験を、今回公表されて、メディアの方が取り上げられるとすると、最近、結婚の持続期間が0~4年の方の流産・死産の経験率というのが97年調査よりも3%上がっていて、逆に20年以上の結婚持続期間の方の同じ率は18.1から15.3に下がっているというところが注目されると思います。教えていただきたいのが、第1子の出産年齢の変化とこのパーセントの相関が出るかということです。この数字の解釈として重要な点だと思います。
これに関しては、産婦人科では35歳以上の高齢妊娠になれば流産や周産期での異常の率が増えるので、産婦人科医師の立場からすれば、できるだけ20代でお子さんを産んでいただきたいと多くの専門家も考えていると思いますが、逆にメディアの論調は、キャリアデザインとか、むしろ30代での出産を奨励する風潮があるように感じています。
もしも例えばこういうところからの発表が国民というか、女性の結婚とか出産の行動に影響を与える可能性が出ることに発展した場合は、それもこの推計には反映されるのかなというところも教えていただきたいなと思います。
それと関連して、東日本大震災で、今、結婚したい方がとても増えているという報道を聞きますので、もし今年度の結婚の率が大きく動いた場合には、それは反映されるのかということ、2点をお願いしたいと思います。
○津谷部会長
ちょっと確認させていただきたいんですが、先ほどの第14回の出生動向基本調査の流死産に関する数値が、今回の新将来人口推計の出生力の年齢パターンにどのように反映されているかということですか。
○宮城委員
当時の方たちの初産年齢と今の5年未満で結婚している方たちの初産の年齢がどれぐらい動いているかというデータと、この動きというのが何か関連がある可能性もあると思います。
○津谷部会長
済みません。もう一度お願いいたします。
○宮城委員
ただ、第1子だけでは勿論結論が出ないので、非常に大変な統計になってしまうと思うんですが。
○津谷部会長
流死産について、ちなみに1つだけ金子部長にお伺いしますが、コーホート出生力の将来推計に反映されていない、つまり流死産した子どもは生まれていないわけですので、出生力に反映されていないということではないのでしょうか。
○金子人口動向研究部長
結果としての出生力という形で、流死産が増えていきますと出生力が下がるという形でとらえられますので、あくまでもそういう形で使っております。
○津谷部会長
わかりました。
では、廣松先生、どうぞ。
○廣松委員
まず最初に、今日の説明の中で、特に31ページ以降、社会経済変動のとらえ方に関して大変詳細に考え方をまとめていただきました。これは前回、私が言ったものですから作業をしていただいたと思いますが、私はこれで十分積極的だろうと判断できますので、これからの推計作業に関しては、この基本的な考え方で進めていただければいいのではないかと思います。その意味では、感謝申し上げたいと思います。
それ以外に、次回の部会でお願いをしたいというか、あるいはこれは当然のことかもしれませんけれども、来週、国勢調査の確定数が出ます。それに基づいて実際にいよいよ推計作業に入るわけですが、そのとき先ほどの出生動向基本調査の結果の中で、大変注目すべき点はやはり合計特殊出生率がそうですし、平均予定子ども数を見ても、少し回復しつつある。それをどう将来に投影するかということが1つ大変大きな今回の推計作業のポイントではないかと思います。その辺に関して十分吟味をしていただいた上で、推計を行っていただければと思います。
同時に、出生力、特に近年の出生率の動向のところでリーマン・ショックの影響とか、さらにはまさに東日本大震災の影響などが考えられます。短期と言えば短期ではありますが、これをどういうふうに今回取り込むのか。その点に関して基本的なお考えを是非明確に次回御説明いただければと思います。
以上です。
○津谷部会長
ありがとうございました。
その他、「宿題」としてお願いしたいことはございますか。
どうぞ、林委員。
○林(寛)委員
出生動向基本調査に関連することですけれども、これは法律的な婚姻関係にある夫婦の調査だと思うんですが。
違うんですか。
○津谷部会長
自己申告だと思いますが。戸籍をチェックしているわけではないと思いますが。
○林(寛)委員
そうですか。事実婚やそれ以外の動向調査についてはどうなっているのかなという質問ですので、次回お答えいただければ。
○津谷部会長
これについては、ここですぐにお答えいただけるのではないかと思います。金子部長、どうぞ。
○金子人口動向研究部長
こちらは、言ってみれば事実婚、御本人たちが結婚をされていると考えておられる人がその調査票を受け取っていただいているということになります。一方で、独身者調査。例えば独身者として同棲という形で一緒に住んでいるという認識をされている方には、独身者の調査票が行くことになっておりますので、いずれにしろ、どちらかでとらえられるという形にはなっております。
○林(寛)委員
わかりました。
○津谷部会長
ありがとうございました。
今回は2つの非常に大きな御説明がございまして、委員のみなさまからたくさん御意見をいただきたかったのですが、時間がなくなり、本当に不手際で申し訳ございません。ただ、次回の部会がございますので、次回にできる限り公平に皆様の御意見を伺うようにさせていただきたいと思います。
今回の部会でご説明のあった1つは第14回出生動向基本調査の結果概要についてで、この調査はクロスセクション、つまりピリオドの調査です。一方、将来人口推計はコーホートでプロジェクト、つまり将来投影していくものです。御存じのとおり、クロスセクション(ピリオド)のデータはタイミング的なもので非常に大きく動いたりいたしますので、それをコーホートで将来投影するときにどのように、どれぐらいのウェートをかけて、どのような考え方で反映させていくのかという非常に難しい課題があります。金子部長を始めとして、国立社会保障・人口問題研究所のスタッフの皆様の御健闘を期待して、次回につなげていきたいと思います。
本日、まだあと時間が若干ございますけれども、他に次回への宿題はございませんでしょうか。
○鬼頭委員
次回の質問ではなくて議事録の修正をお願いしたいんですが。
○津谷部会長
どうぞ。
○鬼頭委員
先ほど私が金子部長に対する質問の中でちょっと誤解を受けるような発言をして、白波瀬先生からも御注意をいただいたと思うんですが、そこの部分は削除していただくか、言い替えるかして、後で修正させていただきます。
つまり、「今の若い人たちは結婚志向が強まっているような印象を受けたけれども、それが社会の持続可能性にとって、~健全な方向」というような言い方をしたんですが、「健全」というのは誤解を受けると思いますから、これは出生動向にどう反映されるかわかりませんけれども、プラスになる材料という程度のことで置き換えていただきたい。
ここにいらっしゃる、聞いた方には是非ここでお伝えしておかないと議事録のところまで見ていただけないと思いますので、よろしくお願いいたします。
【鬼頭委員からの補足コメント】
まず、「今の若い人たちは結婚志向が強まっているような印象」という部分については、大学の授業での調査結果(調査客体が独身であり、かつ、20歳代前半)も念頭においてお話ししたが、当日示された調査結果(夫婦調査(調査客体が夫婦であり、かつ、大多数が30~49歳))では判断できないことはご指摘のとおり。今後、社人研が実施した独身者調査の結果を踏まえて判断する必要がある。
また、「(結婚志向が強まっていることが、)社会の持続可能性にとって、~健全な方向」という部分の「健全な方向」は、当日も申し上げたが、「出生動向にとってプラス材料となる方向ではないか」という意味であり、結婚観に対する評価ではない。
○津谷部会長
どうぞ。
○阿藤委員
27ページの国際人口移動の動向で日本人の趨勢ですけれども、これは男女込みでたしか出されたと思うんですが、恐らく男女別に見ると大分傾向が違うのではないか。この趨勢が前回推計では水準が変化しないという仮定なのですけれども、全体の趨勢の中身はどう見ても下がり気味というふうにも見えなくもない。その辺はもう少し分析が可能であればお知らせ願えればと思います。
○津谷部会長
では、次回の部会で、男女別の日本人の国際人口移動について集計値をお示しいただきたいと思います。
その他よろしいでしょうか。
○鈴木委員
ちょっと1点だけよろしいですか。
○津谷部会長
どうぞ、鈴木委員。
○鈴木委員
本当にどうもありがとうございました。
震災のことで、先ほど津谷部会長からも出ていましたけれども、クロスで見たときに、今年度の震災による死亡者数がわかるわけですから、そうすると平均寿命というものが計算できると思うんですが、問題は将来推計のときにこれを見ると、例えば女性の中で15~20歳のところの死亡ピークで高くなっていますね。この影響というのはどう考慮されるのかということです。長いトレンドで見た場合にこういった中位推計の平均寿命というのは変わらないのか、それとも変わるのか。この辺のところももしわかれば教えていただければと思います。
○津谷部会長
金子部長、よろしいでしょうか。もし何か一言コメントがありましたら。
○金子人口動向研究部長
死亡に関しましては、実際に本年において死亡数等を把握しましたものを2011年の仮定値としまして用います。しかし、来年以降のものにつきましては、これまでの仮定値の方法を使って行っていく。したがって、1年のみの反映ということを考えております。
○鈴木委員
ということは、今回の震災における、例えば高齢者がたくさん死んでいるけれども、女性の若いところ、出生率にかかわるような方々が失われたということをコーホートの枠組みにはあえて入れないということで理解してよろしいんでしょうか。
○金子人口動向研究部長
いえ、要するに分母が変わってきます。人口が変わってきますので、出生率がそれによって影響を受けます。それを使いますので、そういう意味では、反映をさせるといってよろしいかと思います。
○鈴木委員
わかりました。ありがとうございます。
○津谷部会長
つまり、死亡率については、この震災の影響が直に反映される。そして、出生力については、当然生む人が死んでしまうわけですから、分母が変わってくるということで、出生力にも震災の影響が間接的に反映されるということでよろしいんでしょうか。
○金子人口動向研究部長
言いそびれましたけれども、出生と国際人口移動についての震災の影響につきましては、次回にお話をしたいと思っております。
○津谷部会長
さらなる詳しい御説明をいただくということでございます。
本日は大変ばたばたいたしまして申し訳ございませんでした。
是非今日言いたかったこと、尋ねたかったこと、コメント、その他についてメモなどを残されまして、次回の部会で必ずよろしくお願いいたします。
本日はどうもありがとうございました。
これにて閉会させていただきます。
なお、次回の人口部会の開催日程につきましては、事務局の方から改めて御連絡を申し上げ、調整をして皆様に御連絡をしたいと思います。
本日はこれで終了いたします。
ありがとうございました。
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