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2011年9月27日 第5回社会保障審議会生活保護基準部会議事録
社会・援護局
○日時
平成23年 9月27日(火)14:00~16:00
○場所
厚生労働省専用第12会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
庄司 洋子 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
林 徹 (委員) |
道中 隆 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・委員からの報告
・その他
○議事
○駒村部会長 ほぼ定刻になりましたので、ただいまより第5回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催します。
まず、このたび事務局側で人事異動があり、新たに山崎社会・援護局長、古都総務課長、古川保護課長が就任されましたので、一言ずつごあいさつをいただきたいと思います。
なお、山崎局長は遅れて御出席される見込みとのことですので、後ほどお見えになってからお願いしたいと思います。
では、古都課長からどうぞ。
○古都社会・援護局総務課長 総務課長の古都でございます。
2年前は保護課長をさせていただいていましたけれども、また御一緒に仕事ができるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○古川社会・援護局保護課長 保護課長の古川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の委員の出欠状況について事務局よりお願いいたします。
○古川社会・援護局保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますが、本日は全委員の御出席をいただいているところでございます。
それでは、部会長、以後の議事進行をよろしくお願い申し上げます。
○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
まず、事務局より、本日提出された資料1、参考資料1及び参考資料2について併せて御報告をお願いしたいと思います。
○古川社会・援護局保護課長 まず、資料1をごらんいただきたいと思います。「第4回部会における委員の依頼資料」でございます。前回指摘をいただきました点を資料にまとめたものでございます。
まず、2ページでございます。これは栃本委員から御指摘をいただいた「世帯類型別、精神疾患の有無別被保護者自殺者数」でございます。
例えば平成22年の数字をごらんいただきますと、高齢者世帯でありますと精神疾患ありの方が76、精神疾患なしが138で、精神疾患なしの方が多くなっております。
それ以外の母子世帯、傷病・障害者世帯、その他の世帯の22年を見ますと、合わせますと精神疾患ありが608、精神疾患なしが223になっていて、高齢者世帯につきましては、精神疾患のない方が多い傾向にありますが、一方、高齢者世帯以外につきましては、精神疾患のある方が多い結果にあり、20、21、22年を見る限りは同じ傾向を示しているところでございます。事実として御報告をいたします。
3ページでございますけれども、これは道中委員、山田委員の御指摘を踏まえて資料を修正したものでございます。前回は基礎控除部分のみで資料を出させていただきましたけれども、特別控除分も配慮すべきではないかという御指摘がありましたことを踏まえて、一番上の薄い紫の線が付いてございますが、基礎控除プラス特別控除をした結果、可処分所得がどうなるかを示したものでございます。特別控除が上乗せされました分、上に上がっておりまして、結果的に保護廃止の額が右の方に移ることになっております。
金額的には前回お示しいたしました基礎控除のみの場合ですと、保護廃止の段階での水準が16万4,490円ということでお示しさせていただきましたけれども、今回基礎控除プラス特別控除といたしますと、保護廃止の段階は17万7,555円になるというところでございます。
併せまして山田委員から、保護廃止になった以降、税・社会保険料などの負担がかかることを、脱却に向けての取り組みの中で問題点として意識すべきではないかという御指摘がありましたので、折れ線グラフを入れてみたところでございます。
現実問題このように保護廃止になると、税・保険料などがかかってくることで一旦下がることになるわけでございます。これは国と地方の協議などにおきましてもこの取扱いをどのようにしたらいいかという提起をされているところでございまして、私どもも一つの課題と認識をしているところでございます。
4ページでございますけれども、「要否判定における基礎控除の取扱」、これも道中委員から御指摘をいただきました。保護開始時の要否判定の際には、総収入を見る際に控除額が基礎控除額の70%になっているということ、それから、※印になりますけれども、脱却時の段階においては控除額全体を判断に用いている、この取扱いの差異についてというところでございます。
確かに開始判定の段階では基礎控除の70%を加味しているということでございますけれども、この理由といたしましては、制度制定当初の段階での基本生活費、これは基本的に就労されておられない方の生活を念頭に置いていたということでございまして、就労によって必要となる食費なり被服費などを考えますと、就労によって得られた分の中からある程度控除をすべきだということから控除していたということでございますが、制度の見直しをいたしました61年段階で、1類経費を見ましたときには既に食費、被服費等も含めて一定程度対応されているという判断があり、二重になってしまうという観点から、食費相当の分につきましては見直しをしたということです。それが30%相当ということで現在基礎控除の70%を控除額として見ているというようになっているわけでございます。
※印のところでございますが、繰り返しになりますけれども、保護脱却時におきましては控除額が多いほど脱却後の安定した生活の確保につながるであろうということで控除額全体を判断に用いているところでございます。
5ページでございますけれども、「就労収入のある被保護世帯の就労収入(平成21年度)」というところでございます。
これは全体でどのくらいあるのだろうかというところでございます。真ん中に総額が書いてございますけれども、高齢者世帯、母子世帯、傷病・障害者世帯、その他世帯それぞれございまして、トータルとしてここに書いてございます1,136億ということになっているところでございます。これを1世帯の月額にいたしますと右にあるとおりのそれぞれの金額となっているところでございます。
参考資料1の「東日本大震災に伴う被災者からの保護の相談等の状況把握について(7月)」でございます。
生活保護の相談件数は全国で230件、申請件数は全国で87件、保護の開始世帯数が66件となっております。
月ごとの推移を下の方に書いてございますけれども、例えば相談件数ですと、4月の1,049件から、5月が603件、6月が412件、7月が230件ということで、徐々に落ち着きを見せている状況にあると見てとれます。
参考資料2をごらんいただきたいと思います。「生活保護の動向(速報)」でございます。
被保護人員につきましては5月の速報値でございますけれども、203万1,587名になっているということを御報告させていただきます。
以上でございます。
○駒村部会長 それでは、ただいまの事務局の説明について質問等があったらお願いいたします。
山田委員。
○山田委員 資料を御用意いただきましてありがとうございました。
3点ほどテクニカルなことについて質問させていただきたいと思います。
資料1の3ページの方で、限界税率を計算していただきましてありがとうございます。1点目は、注2の可処分所得なんですけれども、税・社会保険料を可処分所得に考えているということなんですが、具体的には税・社会保険料の中身はどういったものを入れているのかということです。
2点目についてです。これは前回保護廃止時の限界税率は100%を超えているということでありますけれども、100%を超えているというのは大体どれくらいの数字になるのかということです。
3点目は、同じく資料1の5ページ、一番最後のページになります。これは単なる確認ですが、1世帯当たりの月額を算出していただきましたけれども、この1世帯当たりというのは就労収入のない世帯も含めての平均なのか、それとも就労収入のある世帯のみの平均なのかについて教えてください。
以上です。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 ただいまの山田委員の御質問にお答えいたします。
まず1点目でございますが、今回3ページでお示ししました資料で想定しておりますのは、保護脱却後に正規雇用になりまして、所得税・住民税を納めていただいて、協会けんぽに加入し、厚生年金を適用されているというケースを想定しております。
2点目でございます。保護脱却直後の限界税率が100%を超える、具体的にはどれくらいかということにつきましては、厳密に申し上げれば保護廃止直後に1円でも収入が増えれば税・社会保険が一気に発生するわけでございますが、今回お示ししたのはモデル的なものでございまして、基礎控除の算定のブラケットの幅でございます4,000円刻みで就労収入を見てございます。その結果、この4,000円の増加に対しまして手取り収入の減少額ということで見てございますので、800%を超えるオーダーとなっております。
3点目でございます。5ページ目の1世帯当たりの月額につきましては、御指摘のとおり就労収入のある世帯に限って平均を見たものでございます。
以上でございます。
○駒村部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがですか。
栃本委員。
○栃本委員 今、資料1で一番最初の2ページ目と一番最後のデータを出していただきましてありがとうございました。
2ページ目の高齢者、母子、傷病・障害、その他の精神疾患ありと精神疾患なしの部分で、その他の世帯で精神疾患ありというのは手帳を持っていない人ということになるわけですね。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 傷病・障害者世帯に該当しないということでございますので、そうでございます。
○栃本委員 それともう一つ、このデータは実際に亡くなられた方についてもこういう形での整理というか、分類なわけですが、一般的にというと変なんだけれども、これは勉強不足だからなんですが、その他世帯などでこのようなカテゴリー、精神疾患ありなしとか、そういうデータはとれていないですね。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 被保護者全国一斉調査というものをしておりまして、そちらに各世帯ごとにございます。
○栃本委員 わかりました。それと一番最後のページで出していただいた「就労収入のある被保護世帯の就労収入」というのは、先ほどの総収入の部分ですね。5ページ目のそれぞれの被保護世帯の就労収入の総額、一番最後は1,136億円になっていますけれども、これは4ページ目でいうところの総収入ということになるのかな。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 総収入のうち就労収入に相当する部分ということでございます。
○栃本委員 ありがとうございます。
○駒村部会長 庄司委員、お願いいたします。
○庄司委員 資料をありがとうございます。
5ページの資料について質問させていただきたいんですが、1世帯当たりの月額というのは当然世帯数で割った平均ですが、これの各カテゴリー別の分布もわかっているんでしょうか。大体どの辺に山があるのかとか、そういうようなものも資料としてはわかるんでしょうか。単純な平均ですとイメージがちょっとわきにくいんです。どの辺が一番多そうなのかとか。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 申し訳ございません。もしお手元に第4回の資料がございましたらごらんいただきますと。
○庄司委員 これは収入のある人についてそれを出していただいていたのでしたか。失礼しました。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 第4回の資料2の「生活保護制度における勤労控除等について」の中で4ページ目にグラフをお示ししておりますけれども、これは世帯員の単位でございますので、世帯丸ごととは若干異なりますが、このような状況になっております。
○庄司委員 わかりました。ありがとうございました。
○駒村部会長 すみません、今のところを確認させてください。もう一度説明をお願いします。5ページの分布そのものではないですね。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 今回の5ページは世帯単位でございます。一方、前回お示ししましたのは世帯員ごとでございます。
○駒村部会長 これは今回のものに対応する分布も提出は可能ですか。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 次回でしたら作成可能でございます。
○駒村部会長 世帯単位でも見せていただくと。
○庄司委員 お願いできればありがたいです。
○駒村部会長 3ページのどの辺にどういう分布があるのか、これはモデルですから何とも言えない部分もありますけれども、どういうところに分布があるのかがわかるだろうと思います。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 それでは、世帯分につきましても御用意させていただきます。
○駒村部会長 あと先ほど栃本さんがおっしゃっていた話はいいんですね。被保護者全国一斉調査の中に類型別の精神疾患を持たれているかどうかという状況は入っているんですか。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 個別調査という調査票では残っておりますので、次回ご用意させて頂きます。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○道中委員 細かい話なんですけれどもよろしいでしょうか。
時系列的な世帯類型の分類なんですけれども、傷病・障害者世帯が一くくりにされていまして、できるだけ細かい区分の方がいろいろな指数を見るときによろしいのではないかなということで、特に傷病者世帯と障害者世帯は少し分けられた方がいいのではないかと思います。特に類型が4つ5つぐらいしかございませんので、これでも更に粗いですので、できるだけ細かいところでその辺の時系列の把握をしていただいたらと思います。これまでの間で資料をお出しいただいている部分は傷病・障害が一くくりになってございますね。それから、行政報告例のところでいつしか分けられたという時点があったと思いますので、過去の時系列的な部分との比較という意味ではしにくいかもわかりませんが、これから是非そういった細分化した形で数値をお出しいただきたいと思います。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 次回以降工夫させていただければと思います。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
事務方の資料に特段もう議論がないとするならば、次の議題に入りたいと思います。今日は委員より御報告をいただくことになっておりまして、まず岩田委員より御提出いただいた資料2について御報告をお願いいたします。
○岩田部会長代理 それでは、資料2というホチキスでとめてある資料をごらんいただきたいと思います。
私の今日の報告は、家計実態アプローチと呼んでいるものですけれども、私どもが科研の調査でやりました最低生活費の試算を、別にマーケットバスケット方式でなされた類似の若年単身者の首都圏の試算がございますので、それと比較する形でその結果を見ていただこうと思います。
まず、最低生活費をどういうふうに算定するかということですけれども、生活保護基準それ自体が幾つか変遷を経ていることからもわかりますように、何か1つの方法が決まっているわけでもありませんし、また何が正しいかを決められるかどうかについては大変疑わしいというのが今のところの世界的な貧困研究の到達点でございます。
近年の特にイギリス等の貧困研究はむしろ多様なアプローチを使った貧困測定、あるいは最低生活費の水準を決めるという、そういういろいろな試みをしておりまして、そうした結果、1つでやるのではなくて、むしろ複数のアプローチを併用して、それぞれのメリット、デメリットを勘案した複合的な判断といいますか、そういうことが望ましいのではないかという意見が大変強くなっています。
例えば最近政府も報告なさっているOECDの相対的所得アプローチの中央値の50%水準という基準があるわけですけれども、これは所得だけで見ていますので、50%水準というのは一体どういう最低生活なのかという生活のリアリティーがそこからは浮かび上がってきにくいわけです。そうなりますと、別途例えばちょうど生活保護基準が1948年にマーケットバスケットを採用したような、こういう古典的な手法と組み合わせるということも考えられるわけです。
それから、別に例えばこういうアプローチは専門家が決めていくことが多いわけですけれども、それとは違う、市民が自分たちの主観でこの辺が最低生活だということを決めるとか、あるいは合意によるアプローチというようなことで社会の常識的な基準を引き出していくということも近年大変提唱されて、いろいろな測定例がございます。
3ページは私が書いたいろいろなアプローチの例です。縦軸の緑色のところがアプローチの手法、横軸は主な決定者といいますか、だれがこれを決めるかということです。この会議は一応専門家の部会ですけれども、当然例えば市民あるいは当事者であるとか、あるいはそういう人たちの合意形成という手法があり得ます。
マーケットバスケットのような必要な生活財やサービスを積み上げていくようなやり方は、このいずれのやり方でも可能です。
私どもが今回やりました実態消費パターンから試算していく方法も市民がやることも大体可能だと思いますが、一般的には家計の専門家といいますか、そういう専門的な判断でやられることが多い。
それから、相対的剥奪とか、あるいは社会的排除というような指標をつくって、これを利用してその所得との関係で判断するというやり方があります。これも専門家、市民、合意形成、いずれの方法でも可能です。
先ほど申しましたOECD等がやっております相対所得基準というものがございます。これは所得基準だけで判断できますので、国際比較などに非常に簡便に使われていますし、ヨーロッパなどでは一応貧困基準としては公式にはこれを持っているところが多いようです。その場合は、それと制度が持つ基準はまた別ということになることが少なくありません。
先ほど申しました主観的尺度、これは後で山田委員の方から御報告になると思います。、市民の合意形成という形で、人々がどういうふうに貧困あるいは最低生活を考えているのかということを決めてもらう方法については、本日の阿部委員のご報告があります。
まだほかにもあり得ると思いますけれども、このようないろいろなアプローチがありまして、なおかつそれらへの果敢な試行錯誤がこれまでなされてきておりますので、私たちもそういうものを利用しながら、例えば生活保護基準の合理的な妥当性判断を考えていくことができるのではないかと思います。
実態消費アプローチというのは、主に家計消費のパターンあるいは消費水準と所得の関係の中で出てくる、所得の低下に対して消費水準が低下するパターンがあるわけですけれども、そのパターンを利用して判断するというものです。一番有名なのはエンゲル方式というもので、マーケットバスケットの次の生活保護基準改定方式で採用されたものです。けれども、エンゲル係数を使う方法は、今日では非常に難しいということが私たちの調査でもわかりまして、この方式ではなくて、むしろ水準均衡を決めたときに使ったやり方があります。つまり、所得の低下と消費水準の動きをみていきますと、所得の低下と一緒に消費水準が低下するのではなくて、収入の低下に消費が抵抗する点がある。抵抗点とか、あるいは変曲点という言い方をされていますけれども、そうした点があるのかどうかということと、それがあればそれを利用できるのではないかということを考えました。
もう一つは、家計における赤字黒字分岐点を使えないかということを考えました。
データとしては、1つは私たちが科研で行った首都圏で低所得層への独自の1か月の家計調査と生活状況調査の調査結果と、これは非常にケースが少ないので、全国消費実態調査のマイクロデータを使いました同様の方式で再集計したものを利用しています。
データの細かい点は5ページに書いてあるとおりです。
比較しますのは、佛教大学の金澤誠一さんが労働総合研究所と協力してやりました2009年の首都圏20代のマーケットバスケットによる最低生活費の試算結果です。私どもの調査は、20~40代の低所得単身男女半々なんですけれども、有効71名の1か月の家計簿データ、そして全消のマイクロデータは659ということになります。全消の方は首都圏だけ選べませんでしたので、3大都市圏の20~40代単身世帯ということです。
その下に「用語」と書いて、これはなかなかややこしいんですけれども、首都圏の場合、住宅費が非常に高いこともありまして、住宅費と光熱費を生活基盤費と考えまして、可処分所得から生活基盤費を引いてしまった可処分所得Cをつくったというのと、消費支出からも生活基盤費を除いてしまった消費支出Bというような特別のカテゴリーをつくっています。
もう一つは、私たちのやった家計調査では収入ゼロという人ははじいているのですけれども、失業中で非常に低い所得しかなくて貯金を引き出しているとか、あるいは借金をしたりというような人が混ざっています。最低生活費は、実収入外収入とか実支出外支出といいますけれども、そういうものを利用しながら維持しようとしますので、これを加味した可処分所得Bというものを作りました。これから具体的にお示しします。
7ページ、この実態家計の中からどこを最低生活費とするかということを裁定する場合に、実態のデータをそのままシンプルに全部使ってしまうと非常に間違うことになります。特に全消は注意が必要となります。全消は3か月調査で、単身は2か月で、実際1か月の人も入っています。私たちがやったのは1か月調査なので、1か月の家計は1年ならしたらもうちょっとなだらかになるものが、例えばたまたますごく高い洋服を買ってしまったとか、結婚式の祝い金を出してしまったとか、そういうようなことが入ってきます。
それから、私たちがやった調査の中には、単身世帯なんだけれども親からの家賃補助があったり、あるいはどうもルームシェアをしているらしいとか、労働住宅に住んでいる、つまり寮のようなところに住んでいる人たちが混じっておりましたので、こういう場合をはじいて、賃貸住宅居住をしている自立した単身世帯というモデルをつくりました。つまり1人で首都圏で賃貸アパートに入って生活している場合の最低生活費をモデル的につくる必要がある。単なる実態ではないという前提を置きました。そこで幾つかの工夫をしています。
1つは食費が2万円以下または10万円以上というのは除いています。2万円以下というのは、私たちの家計調査ではレシートを全部集めましたので何を食べているかわかるのですが、これは非常にマーケットバスケットに近い考え方ですけれども、恐らく余りに栄養が十分ではないだろうとか、例えばコンビニでおにぎりと野菜ジュースだけ買って日々を過ごしているというようなケースは除いています。逆に非常に高い何か宴会を催したみたいな場合も除いています。
それから、住居費3万円以下は家賃補助や何かがかかっているか、あるいはルームシェアをしているであろうということが生活状況調査からわかっているようなものは除いています。
交通費10万円以上も、これは何か仕事関係で出したようなケースだったのですが、これを除いています。
そのほかいろいろな形でクリーニングしまして、可処分所得Cというのは可処分所得Bから生活基盤費を除いた可処分所得なんですが、40万円以上が1ケースありまして、これを除外しています。
私たちのやった科研の家計調査は非正規労働者が中心です。4分の1が正規ですが、4分の3が非正規ないしは失業状態、男女半々、平均月収が約20万円です。上記のモデルに該当するのは41世帯となります。
全消は659世帯が該当しますが、私たちが非常に驚いたのは、この中の316世帯が寮・寄宿舎居住だったんです。家計の調査というのは協力世帯を求めるのが非常に難しいものですから、多分結果的にこうなってしまったんだろうと思いますが、そうするとこれは除外せざるを得ない。また、これ以外の上記のようなレアケースを除いて、結局202世帯と非常に小さくなりました。
私どもの調査は非常に小さいケースしかとれませんでしたが、全消で実は我々の平均月収20万円というところを目安にして、それ未満を取り上げると88世帯しかないんです。ですから、実は全消データがカバーしている低所得層は、特に単身の場合にはかなり限界があるかもしれないということが少し懸念されるわけです。
それでは結果を見ていただきます。9ページですが、我々のやった科研調査で、まず41世帯の消費と可処分所得の分布を見たものです。これを見ますと、真ん中に破線を引いてありますのが17万5,000円のラインなんですけれども、鮮やかに右上がりに行くというよりは、上下にかなり開きながら緩く右上がりになっているというような分布でして、上の消費支出額の高いグループと低いグループが大体17万5,000円ぐらいのところで分かれていきます。
その2つのグループをまとめまして消費構造を見たのが下の図になります。これでごらんいただくとわかりますように、住居費と光熱・水道費を足したものを生活基盤費とここでは呼んでいるんですが、両方とも5~6万円の間くらいに収まっていまして、余り変わらないんです。消費支出額は相当違うんですけれども、その中で住居、光熱・水道費は首都圏においてはかなり一定している。実はこれに携帯電話の通信費を入れまして、大体6万円前後といいますか、ちょっと出るか出ないかぐらいで、これが固定費になっているということがはっきりわかります。
そうしますと消費水準の高い低いというのはそれ以外の費目で決まることになります。つまりそれ以外の、例えばその他とか教養娯楽費とか交通・通信費とか被服費とか、そういうようなものが高額消費グループは高くて、低い方はここが縮んでいるということがわかります。
そこで、消費支出から生活基盤費をとってしまったデータを作ります。同時に可処分所得から生活基盤費を除いた可処分所得Cの階層をつくりまして、それと生活基盤費を除いた消費支出Bの関係を見たのが12ページの図になります。なお、ここでは収支から生活基盤費を除いたので、これが影響している賃貸自立層以外のケースを戻し入れ、記載不明を除く67ケースを対象としています。
これで見ていただくと、消費支出Bは大体15~20万円のところで一遍ちょっと落ちるんですけれども、そこからもう一回はね返して、5~10万未満のところでまた下がってしまうというような形をとります。
私たちは5~20万、かなり幅がありますけれども、そこで大体抵抗が生じているだろうと考えまして、5~20万円の消費支出Bの平均額を破線で引いています。ここに抵抗点があると考えたわけです。これが10万7,140円ということです。
13ページは赤字黒字分岐点を考えてみました。
赤字黒字というのは本来の可処分所得から見ていかなければなりませんので、ここから生活基盤費を引いた可処分所得Dと、同じく生活基盤費を除いた消費支出Bで確認しますと、図のように黒字額は5~10万未満でゼロで収支がとんとんということになります。10~15万未満でやや黒字になっています。そこでこの5~15万未満の層の消費支出Bを加重平均してみると、10万5,601円となります。これは前の抵抗点とそんなに大きくは違わないということになります。
15ページ、今、2つのどちらかを利用するかですが、まず、抵抗点を採用した場合ですけれども、そのときはここに生活基盤費を入れ戻しますので、10万7,140円に生活基盤費の平均額の6万897円を足し上げますと、16万8,037円になります。これに税・社会保険料が乗っていくというようなことになります。
赤字黒字分岐点を採用した場合は、そこにありますように16万6,498円になって、余り大きくは変わらないということになります。
次のスライドからは、もう一つの全消を使った計算を同じように行った結果です。
全消の場合は18ページの下のところに書いてありますけれども、科研結果よりもかなり幅が広い試算結果が出ています。抵抗点が2つ、赤字黒字分岐点2つで、15万6123円から、高いもので19万8,820円の幅の試算結果が出ています。
その次に、金澤さんたちがなさったマーケットバスケットの試算が19ページに出ています。これは2008年に首都圏で実施された9パターンの世帯類型の試算のうち、20代単身世帯のものをここでは使います。マーケットバスケットは専門家の試算なんですけれども、この調査ではあらかじめ持ち物財調査とか生活実態調査をして、持ち物財では7割保有しているものを理論値として加えています。光熱費は全消データから推定したり、食費は家計調査の費目分類を用いて年収第1五分位階層の卵とか牛乳とか、そういうものの品目、100g当たりの消費単価を、女子栄養大の香川式4点法という栄養学のやり方があるんですけれども、それで算定をしています。更に消費支出額の1割を予備費として計上しているというのが特徴です。
ここでは予備費を外して比較したいと思います。算定結果は25歳男性、賃貸アパート1K、これは私たちの科研でも賃貸アパート1Kがモデルで出てきますけれども、それでやりますと、そこにありますように17万4,407円ということになります。これは予備費が加わりますともうちょっと高くなります。
21ページですが、今度は科研と全消とマーケットバスケットの比較をしてあります。マーケットバスケットは今のとおりですが、その消費構造がここで出ています。科研のものは16万8,037円を使っています。全消は一番低い抵抗点15万6123円を使っています。そうしますと、どれも住居費が高いんですけれども、なぜか全消はやや高く出ているのと、マーケットバスケットは家事用品が高い。これは理論値なので、今あるものを全部減価償却費的に計算して入れ込みますから、積み上げ方式というのはいずれにしても高目に出ます。しかし、教養娯楽、その他が高く出ています。ここが理論値の難しいところだと思います。科研の方は保健・医療費と交通・通信費が高く出ていまして、これはたまたまこの調査の対象が失業していて、多少体を壊していてというような人が混じっていたり、あるいは1人で何か所もの仕事を掛け持ちしていて、交通費や何かが自分持ちというようなものが入っていることがあるいは影響したかもしれないですけれども、そういう傾向があります。食費はそれほど変わっていません。
それを図にしたのが下のものです。住居費、光熱費が固定費だということはここでもはっきりしていると思いますが、その他の消費種出のところが差異を生み出していると思われます。
23ページ「生活保護基準検証へのインプリケーション」ということです。今、お示ししたようないろいろなやり方で最低生活費は計算できることになりますけれども、これらと生活保護基準の何と比較するかというのが問題になってきます。例えば加算とか減免とか控除をどう考えるかとか、地域差をどう考えるかということがあります。
それから、消費の内容を比較するときに、働いているかどうかとか社会参加の状態がどうか、あるいは逆に言いますと、先ほどありましたように病気の人が非常に多いとか、そういうようなことをどういうふうに考えながら比較していくかということがあるだろうと思います。これは先ほど御意見が出ていましたが、例えば障害世帯のような場合にこういうことをどう考えるかということが多分出てくるだろうと思います。
ここではそういう難しいことは避けまして、生活扶助の1類、2類、期末手当と冬季加算の1か月分、それと住宅扶助の特別基準、これはすべて1級地-1で20~40歳単身世帯の場合として、それから、私たちがやった最低生活費あるいはマ・バの方には、そもそも高額な費用は入っていませんので、、医療扶助に該当する医療費と民間保険料だけを除いています。
そうしますと24ページの下の棒グラフのようになります。黒いものが生活扶助の部分だけで、それに住宅扶助を加えたものが薄い方のものです。生保がここでは一番小さくはなっていますけれども、こんなようになります。生保、全消、科研、マ・バというような感じです。
25ページは勤労控除を上乗せしてみたんです。これは特別控除は入れていません。これはちょっと古いのですけれども、2005年の一斉調査の中で、勤労控除の平均は2万5,370円というものが出ています。それから、上限が3万3,190円なので、平均値を乗せたものと上限を乗せたものと3つを比較してみました。そうすると生保の勤労控除の平均を乗せたぐらいが科研でやったものとほぼ近い金額になり、上限を乗せますとマ・バまでは行きませんけれども、かなり高いということになります。マーケットバスケットは労働者というようなことが入っていますので、そういう意味で割合近いところになったと言えるかもしれません。
以上です。
○駒村部会長 それでは、ただいまの岩田先生からの御報告について質疑をしたいんですけれども、山崎局長がお着きになりましたのでごあいさついただきたいと思います。
○山崎社会・援護局長 このたびの異動で社会・援護局長になりました山崎と申します。よろしくお願いいたします。
私事になりますが、私も厚生労働省に5年ぶりに戻ってまいりました。その間、内閣府などで社会全体のとりまとめの仕事をさせていただきました。社会保障、社会福祉を外で見る立場だったわけですが、そこで少し感じたこととしては、社会保障は大変大きな節目に来ているなという感じを持っております。私も旧厚生省に昭和53年に入りまして、30年来仕事をしてきましたが、入った当初は社会保険をいかに充実するかということが我々の使命だとずっと感じてまいりました。いろいろな社会保険のメニューを用意したり、その拡充に努めてきたんですけれども、やはり社会保険という仕組みは雇用と家族の支えがあって初めてできるものだなと最近痛感しております。
社会保険はある面は助け合い機能がありますが、逆に保険という仕組みは排除していくという機能もあるんだなということを肌身に感じております。その裏では、今回こういう社会福祉の仕事をさせていただくのは私自身もありがたいことだと思っています。
まさに社会全体をどういうふうに維持するか、もしくは発展させるかという面で、今、生活保護や社会福祉の問題は大事だと思っておりますので、微力でございますけれども、皆様のお知恵をお借りしながらしっかり進めてまいりたいと思います。
この部会も今回5回目ということでございますけれども、いろいろな専門の皆様の御意見を参考にいたしまして、しっかりした議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 どうもありがとうございます。
では、今の岩田委員からの御報告についての質疑に入りたいと思います。いかがでしょうか。
先生の資料の19ページ、これは先生御自身の研究ではないわけですが、金澤先生の研究ですけれども、「7割の保有のものを」とありますが、これはどういう理由でこのようにしたのでしょうか。
○岩田部会長代理 私たちの科研のグループの研究会に金澤さんに来てもらっていろいろ聞いたんですけれども、7割保有というのは多分生活保護での資産保有の目安ですね。それを利用したそうです。試算の前提として持ち物財調査をやっています。その持ち物財のうち7割以上の人は持っているというのを入れたということです。ただしいろいろな世帯類型で試算していますので、例えば、単身世帯の前提として、単身世帯だけの持ち物材調査をしたというわけではないらしいんです。労働組合とか地域団体と組んでやっていますので、それらの協力者へのアンケートから判断されたようです。
○駒村部会長 阿部委員、お願いいたします。
○阿部委員 ありがとうございます。
これも岩田先生の科研の方の結果は私も勉強させていただいていますが、金澤先生の方は余りよく知らなくて質問させていただきます。
ここで用いられている例えば先ほどの持ち物の調査ですとか住宅費ですとか、マーケットバスケットに積み上げるときのそういうものの価格はどこから持ってきた価格を使っているのでしょうか。
○岩田部会長代理 生活実態調査で、利用するお店を聞いた上で価格調査をしていると書かれています。また、この場合地域はさいたま市在住で都心勤務をモデルにしておられます。耐用年数は国税庁「減価償却資産の耐用年数等に関する政令」を参考にしたとのことです。ただ、例えば光熱費は全消データを持ってくるとか、そういうような形で補っているようです。これは理論値が実態と離れることを非常に警戒なさってやったのと、後で金澤さんも変曲点を書いて、いわば追試しているんです。それとか生活保護との比較もして、大幅には外れていないので、ほぼ合理的なものだと書いていらっしゃいます。生活実態調査とか持ち物財調査をしているので、勝手な理論値ではないということはあるのですが、この調査をだれにやったかというのは大変な問題になるので、そこのところがやはり難しいといえば難しいかもしれません。
○駒村部会長 栃本委員、お願いします。
○栃本委員 何か大学院のゼミの、クエスチョンと言われるとまずいのであれなんですけれども、時間の関係で多分「生活保護基準検証へのインプリケーション」の部分の水準比較と、もう一つの黒ポツの部分は時間がなくて今日はそれほど話されなかったんですけれども、先ほどの22ページの科研と全消とマーケットバスケットの比較の部分ですが、上の方を見ますと、やはり教養娯楽がマーケットバスケットと科研と全消でいうと2倍の開きがあって、しかも額が1万円オーダーの形になっているということと、あと交通・通信はどういう事情なのかわからないんだけれども、やはりそれぞれ約2倍違いが出ているというのがありますね。それとあとは保健・医療は全体的な額は少ないんだけれども、これも倍ということで、ここら辺の評価というか、単に追加方式が違うからという意味の違いではなくて、この部分の違いを理解すると、先ほどのインプリケーションの下の方、特に消費内容比較と消費行動と社会参加と勤労の部分が明らかになるという感じですね。
特にその場合、今までは一番最初のところで最低生活費というか、最低生活という概念の言説というか、それと貧困基準というのと、それについての全体的なさまざまなアプローチがあって、専門家、市民、合意形成とか、主観的尺度とか、そういうものがあったわけです。いわゆる主観というといろいろな意味があるんだけれども、共同主観でもいいんですが、つまりこう扱うべしという部分が多分教養娯楽とかに反映するわけだから、そういう意味で教養娯楽の部分について、これが少ないからいいとか多いからあれだとか、そういうことではなくて、最低生活需要の中にというと変だけれども、社会参加であるとか、そういう部分が含まれている。だからそういう部分について勘案しながら見ていかなければいけないんだよというようなインプリケーションがあるという理解でよろしいんですか。
○岩田部会長代理 特にその他の消費支出はかなり交際関係の費用が入ってくるのと、教養娯楽の場合はテレビとかインターネットとか、私たちがやった調査では、やはり若い人ですから携帯電話も仕事を探す上でも本当は必須であることがよく出ています。ですから携帯の利用料とか、教養娯楽、交際費などの具体的な消費の内容を、例えば生保基準が妥当だと言ったときにどう考えるかが大きな問題です。むろん、生活保護の利用世帯と言っても一様ではなく、若くて病気があって生活保護を利用している方とか、傷病・障害世帯とか、高齢者になっても違うと思います。ですけれども、少し幅を持たせて、例えば教養娯楽でも何をやるかというのを、実態の場合ですと平均値が出るんですけれども、当然個々の世帯は、例えば本を買うのが好きな人もあれば、映画に行きたいという人もあったりして違うわけですが、いずれにしても月3,000円くらいはそこに割いてもいいかなというような合理性が実態の中からも理論値としてもわかってくるといいますか、あるいは合意がとれるといいますか、そういうことがあると判断しやすい。水準だけだとやはり非常に判断しにくい。
○栃本委員 それともう一つは、先ほどのさまざまなアプローチの部分で実態消費パターンにしろ、最低基準の構成をいろいろ区分けするにしろ、実は相対的収奪部分と妥当性を持った主観的部分が入り込んでいるということですね。そういう意味になるわけですね。では、理論的にそれをどういうふうに判断するかということが極めて重要だという理解でよろしいですか。
○岩田部会長代理 はい。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
先生、今回は年齢層は20、30、40と若い現役グループだけですか。
○岩田部会長代理 金澤さんたちは20代ですけれども、私たちは20~40代までの幅でやっています。若い方がやや多い。若年単身世帯でアパート独り暮らしという条件を付けたために、これでも大変だったんですけれども、それでも単身は扱いやすい。この後阿部委員が報告されますけれども、子どもの問題とか家族がいる場合にどういうふうに考えるかは非常に難しい。でも、単身を1つのモデルとしてやってみるというのはいいのではないかなと思うんです。
○駒村部会長 サンプルが小さいので、男女別とか年齢別には特段大きな違いはなかったんですね。
○岩田部会長代理 やってみたんですけれども、余り違わないです。それから、非正規か正規かでもやったんですけれども余り違わないというのは、ここに入った正規労働者は正規でも収入が低いんです。だからかもしれませんかもしれませんけれども、余り差異は出ませんでした。
○駒村部会長 基準の体系論的に考えると、この話を例えば50代60代に考えたときにどう変わってくるのか、それから、複数人世帯を考えたときにどういうふうな次の展開として出てくるのか。今回先生はまさに若年非正規単身というグループにフォーカスしたんですけれども、もしこれを扶助の計算体系の方に持っていくとすればどういう課題が出てくるんですか。
○岩田部会長代理 実は単身だけではなくて、母子と高齢者もやったんですけれども、母子は失敗しまして、子どもがいる世帯はやはり消費は拡大するんですが、だから家計簿記入が不十分になってしまった世帯が少なくなかったのと、子どもの数がばらばらだと、どういうふうにモデル化するかが非常に難しくて、断念して実態だけということにしました。
高齢者は対象数が少なかったので、モデル計算はできませんでした。しかし高齢単身がたまたま半分が生活保護を受けている高齢世帯で、半分は受けていない世帯と言う結果になりましたので、その家計の分析はしてあります。これは最低生活費を計算するというよりは、両者がどういうふうに違うのかをやったところ、今日お持ちしていませんので次回それを持ってきますけれども、生活保護を受けている世帯の場合は消費水準が大体そろうのです。これは当たり前と言えば当たり前なんですけれども、生活保護費の若干下ぐらいのところに抑えて消費している。だからきれいにそろいます。
これに対して非生活保護世帯の場合は非常に変動が激しくて、ものすごく高い層からすごく低い層まで出てきまして、これは数が少ないためそうなってしまっているというのがあますけれども、非常に多様なんですが、生活保護を利用すると当然収入の保障がありますので、一定の最低限というのはまさに底として機能しているのはきれいにわかる感じでした。ただ、それはその収入で暮らすからこの辺ということです。逆に必要な生活費は幾らかというのは、ちょっとそこからはわかりません。
○駒村部会長 いかがでしょうか。
今日はもう一つ阿部委員からも報告がございますので、阿部委員の御報告もいただいた後、関連するところもあるでしょうからまた議論を続けたいと思います。
では、阿部委員の方から御報告をお願いいたします。
○阿部委員 それでは、私からの報告をさせていただきます。
資料3になりますけれども、「Minimum Income Standard手法による最低生活費の推計(三鷹MIS)」というものをごらんください。
ちなみにこの研究は、ここにいらっしゃいます岩田先生や山田先生を初め、6名の共同研究でございますので、その点をここで皆様に御了承いただきたいと思います。
それでは、内容に入っていきますが、岩田先生の生活保護との比較の部分もありましたので、結果というか、手法についてより重点を置きながら話していきたいと思います。
「MISの背景」ですけれども、これも岩田先生の方からもありましたように、やはり所得データは非常に便利なところもあるんですけれども、それだけではなかなか最低生活費の妥当性が確保できないというのがあるかと思います。ですので、いろいろなやり方が試されている中で、先ほど岩田先生の御紹介にもありましたように、これはいわゆるマーケットバスケット方式という理論方式です。実際の家計に基づくものではなくて、理論的に家計をつくっていくというやり方で、しかもこれは決める裁定者を一般市民にゆだねているというのが普通のマーケットバスケットと異なる点でございます。
スライド3ですけれども、ここに調査段階ということで簡単に図を付けさせていただいております。全部で8つの段階までありますが、地域効果の段階は今回三鷹でしかやっておりませんので、やっておりません。ですので7段階までとなります。この中の丸で囲んである部分は一般市民のグループインタビューで行うところです。四角の部分が専門家研究チームによって関与するところですが、基本的にはすべての決断は一般市民グループの中で話し合っていただくというのがMISの一番大きな特徴です。
下にMISの特徴を幾つか書きました。
先ほど申しましたように、MISは基本的には積み上げ方式です。
最低生活の中身について専門家ではなく、「(属性が近い)」と付けましたけれども、一般市民に決断をゆだねるということがあります。この一般市民というのも、例えば通常の郵送方式で一般市民の人にこれが必要ですかと聞く方法もあります。ですけれども、そうではなくて、ここでは属性が近い一般市民、例えば母子世帯だったら母子世帯の方々に集まっていただく、単身の勤労者世帯の方であれば単身の勤労世帯の人に集まっていただくという形で、自分たちに近い生活を思い浮かべることができる人に決断をゆだねます。
かつ、ここはフォーカスグループという手法で、これは専門的に言いますとグループインタビューとフォーカスグループは微妙に違うんですけれども、フォーカスグループというのはグループの話し合いの中で意見を形成していく手法です。
つまり例えばグループの中に8人いて、その中で大多数の人が、4人以上がオーケーと言ったらそれを採択するというような形ではなくて、その中で全員が合意していけるようにその場で話し合っていただく。つまりこのグループのインタビュー自体が市民の合意形成の場になるという形をとっております。
また何が必要かどうか物品リストを決めるだけではなくて、なぜそれが最低必要かということも議論していただきます。
また、最低生活というのはどのようなものかというようなことも、その場でも市民の方々に話し合ってもらいます。
ただ、1回だけのグループインタビューでやりますと、勿論意見が偏ったり、非常に自己主張の強い方が入っていたりするとその方の意見に寄ってしまったりすることがありますので、これを全部で導入グループも含めますと4回ですけれども、4回繰り返し、違う対象者を入れ替えてやっていきます。ですので各グループで7名程度、それのグループの数の一般市民の方々のインボルブメントが必要となります。これを複数回行うことによって、たとえ最初のグループがちょっとぶれたものになったとしても、だんだん一般市民の常識、英語の文献ではcommon senseという言葉が使われておりましたけれども、それに近づくものになっていくと考えられています。
「MISの特徴(続き)」のところに行きます。またここで1つの特徴というのが、個人単位でニーズを考えるということをいたします。世帯単位の中で、この世帯には何が必要ですかと聞くのではなくて、この世帯に属するこの人、例えば5歳の子どもであればその5歳の子どもには何が必要かということで議論して、その5歳の子どもが母子世帯にいるのか、二親世帯なのか、3世代世帯かということは関係なしに個人のニーズとして考えていきます。それを後で、例えば32歳の男性と30歳の女性と5歳の子どものニーズを合せたときに、勿論冷蔵庫だとかテレビとか共通部分がありますので、それはオーバーラップしますので数えていかないというような形にして、世帯をつくっていきます。
それから、架空の人物を設定するということがあります。一般市民の方々に例えば「あなたのおうちにはテレビが必要ですか」と聞きますと、テレビを見るのが好きな人は「絶対必要です」と答えますし、テレビを見るのが余り好きではない人は「要らないです」と言うんですけれども、そうではなくて、あくまでも架空の例えば「三鷹に住む32歳のAさんがいるとします。この人にはテレビが必要ですか」というふうな聞き方をすることによって、個人のプレファレンスといいますか、趣味ですとか選好ということに関係なく、普通の人に必要なものは何かということを考えていきます。また、実際にある1人の人物が設定されておりますので、非常にリアルですので、生活が非常にイメージしやすいということがあります。
また、性別や年齢、家族構成、居住地は設定しますけれども、それ以外のことはなるべく隠してといいますか、あえて設定しないで議論していただきます。そうしますと例えばこの人は働いていないからスーツは必要ないだろうとか、そのような偏見的なものの見方がだんだん除外されていくことになります。
次に、この方法はニーズから考えていきますので、それを満たすための費用は考えないでくださいと一般市民の方にお願いします。実際は私たちの生活は幾らの収入があって、その中からこれだけをこのように使おう、これに使おうといって振り分けていくわけですけれども、そうではなくてAさんの生活を見たときにその人が必要なものから考えていったときに幾ら必要なのかという反対の方向のやり方ですので、それが通常の家計のやりくりとは大きく異なっています。
最後に、先ほど私が金澤先生の研究に質問したところと関係するんですけれども、生活に基づいて価格設定をいたします。例えば今、私たちは三鷹を設定してやっておりますけれども、三鷹に住んでいる若者の方が買い物をする場所と、三鷹に住んでいる高齢者の方が買い物をする場所は違うわけです。実際にその年齢の方でどこで買い物をするか、どういうオプションがあるのか、例えばインターネットでもっと安いものが買えるんだとしても、高齢者の人はそういうような買い物の仕方はしないので、高いとしても近くの商店街で買うですとか、そのような形でやります。
価格設定には実際に市場に出回っているものを考慮します。例としては不動産なんですけれども、実際に私たちは例えば若者ではワンルームでこれとこれとこのような条件が最低限必要な部屋だろうといいましても、その物件が三鷹の周辺にあるかどうかということはわからないわけです。ですので、実際にこれも不動産屋さんに全部リストアップしていただいて、どのような案件があるのかということまで調べてやっています。
イメージ的にはある人が例えば三鷹であれば、三鷹で全くのさらの部屋に入って、そこからすべてを買わなければいけない、そのときに実際に必要なお金は幾らなのかというような形で積み上げていくものです。後ほど申しますけれども、勿論耐久年数もありますので、耐久年数を月数で割っておりますので、それで実際の大きな消費、机ですとか冷蔵庫ですとかテレビの価格もならすようにしていきます。
7ページになりますけれども、MISは英国で開発された手法なんですが、ラフバラ大学を中心とする幾つかの研究組織が実施しております。Family Budget Unit、Joseph Rowntree Foundation、BMG Researchというのは、最後のものは民間の会社なんですけれども、貧困研究で非常に有名なNPOです。さまざまな世帯類型やいろいろな地域のMISを実際に推計しておりまして、常時アップデートされております。これは例えばLiving wageの推計ですとか各種の給付との比較ですとか等価スケール、例えば1人世帯から2人世帯になったとき、2人世帯から3人世帯になったときにどれくらい変わるのかというような妥当性の検討などに用いられております。ですけれども、英国では既に公式の貧困線が存在しておりまして、MISがそれを代替するとは理解されておりません。
次に、実際の結果の方に入っていきたいと思います。
「三鷹MISプロジェクト(H22~24)」と書いてあるスライドをごらんください。昨年度は32歳の単身男性、32歳の単身女性、それと子ども、5歳、小5、中3男女それぞれの最低生活費を推計いたしました。平成23年、現在進行中ですけれども、71歳と設定していますが高齢者の単身男性、高齢者の単身女性、それから、子どもの親を出しています。母親と父親別々です。これで親と子どもを合体させることによって世帯類型をつくることを考えています。
結果に入る前に幾つかMISの実施に当たっての課題を説明させていただきたいと思います。
まず、去年やりまして、三鷹という設定の妥当性が、やはりこれが日本を代表するとは言えないなということが非常によくわかったということがあります。英国でもそうですけれども、結局1つの地域をやるだけでは、それで国全体の最低生活費を推計することにならないということがあるのではないかと思います。
それから、参加者と事例の設定が微妙に異なるというような場合には、その判断が妥当かどうかというところはやはり考えなければいけないなと思いました。例えば今、子どもを持つ母親のニーズをやっているんですけれども、フルタイム就労をしている設定なんですが、参加者が就労していない母親の方々だったりすると、就労している母親の生活はなかなか想像しにくいところがありまして、そこのところが難しいなと思いました。
2つ目が、後ほどMISの定義を説明いたしますけれども、これを共有することがやはり難しいところもあります。
次に、参加者自身の生活とMISで描く生活のギャップがあります。この点は私も強調したいんですけれども、これは上の場合と下の場合と両方あるかと思います。例えば日本のすべての人が共有すべき最低生活の定義というのを議論しまして、その中で出てきた1つが、将来例えば自分の収入を上げるだとか、違う職に就くという、そういう見通しを持てるような生活は最低限必要なのではないかということで一応合意されたんですけれども、実際に例えば単身男性の方々を集めてみると、「おれたちにそんな余裕はない」というような方々も非常に多かったりして、そうしますとここで描かれるMISの最低限の生活より下の生活をしている一般人の方が実際にいっぱいいるわけで、そのような方々の意見がとにかく下の方に、自分たちの生活の方により引きずるようになっていくということがあります。またその逆は、最低生活より相当上の生活をしていらっしゃる方が、その生活よりやはりもうちょっとこれも必要ではないか、これも必要ではないかというような引き上げる方向になっていくということなので、この2つの引き合いをうまく合意形成ができていけばいいんですけれども、そこのところが参加者の人数ですとか意見の強さによって引きずられてしまうのではないかなと思いました。
それから、日々の活動と特別な日として、例えば結婚式ですとか夏休みに実家に帰るですとか、そのようなことも最低生活の中に入るんですけれども、実際にその内容を決めるのは非常に難しいことがあります。
また、個人のニーズという形で入るんですけれども、例えば子どもの生活を考えるときに、親の生活を抜きにして子どもの生活だけを考える、5歳の子どものニーズだけを考えるのは参加者の方にはなかなか難しいという声が上がりました。
次に、実際の結果に入らせていただきたいと思います。
スライドの11番にありますけれども、「『最低生活水準』の定義」の矢印から下のところがあります。「現代の日本における誰にでも最低必要な基礎的生活は」というところです。これは勿論日本国憲法25条ですとか、児童の権利条約ですとか、イギリスで使われたMISの定義ですとか、いろいろな定義を参加者の方々に提示して、あなたが考える最低生活とは何が必要ですかというような形で話し合ってもらいます。この話し合いを約2時間行いました。この中で出てきたものです。こんなふうなきれいな文章には勿論なっていないんですけれども、やはり将来の見通しが必要だよねとか、教育を受ける権利もあってほしいよねとか、娯楽は必要だとか、そのようなことが出てきたのを私たちの方で文章としてまとめさせていただいたものです。その後のMISはすべてこの定義を基に実際の生活を考えていきます。
次に、下の最低生活の住居というところですが、ここは単身の男女の32歳の方という設定になっています。そこで皆さんが最低限必要と言われたのが、最低6畳以上の居住スペースと収納スペース、冷蔵庫が置ける程度の台所、それとおふろとトイレが別々にある設定と、洗濯物や布団が干せるベランダということで、実際にこのような条件を満たす物件を三鷹の方で探してきたもので、それを住宅費として計上しています。
次に、若年単身者の基礎的な費用ですけれども、必要なもののサービスを列挙しまして、それを実際にどこで買うかということを出していただいて、それを私たちの方で価格調査をしまして、すべて積み上げたもの、皆様の前にお配りしている薄紫色の報告書の36ページからになります。ここからまず単身男性、単身女性、子どもというふうに載っていますけれども、これがすべて話し合いの結果、マーケットバスケットで積み上げられた物品になります。
住居、家具類というところを見ていただきますと、例えば家具類ですと電子レンジ、勿論配送料やリサイクル料も含めます。炊飯器、コンロ、冷蔵庫、掃除機、洗濯機というふうに、非常に長いリストができ上がるわけです。これも例えば1つ冷蔵庫といいましても、価格は非常に違うんです。安いものから高いものまでピンキリなんですけれども、その中でも幾つかのオプションをその場でグループに提示しまして、どのくらいのものが必要かというようなことを提示した上で、最低限これくらいでいいのではないのというのが品名や型番も含めて書いてあります。これは去年の12月ぐらいの価格です。勿論微妙に季節によって違いますが、そのときの時点を設定して出したものです。そうしますと月額が単身男性19万3,810円、単身女性18万3,235円となりました。
その内訳を見ていただきますと、男女ともに住居と食費で60%を超えます。住居費を除く合計額は、男性11万円、女性10万9,193円です。これを先ほどの岩田先生の方と比較していただければMISの方が若干高目に出ているところがありますけれども、それほど遜色ないものということがおわかりになるかと思います。男性と女性ではやはり微妙に内訳が違います。
15ページ「一般の単身者平均値との比較」をごらんください。ここでは全消と総務省の家計調査の2つの調査を比較に使っております。
その下の棒グラフがわかりやすいかと思います。青いところが男性のMISによる推計、赤が全消の男性です。ですので、全消の男性に比べて若干低目です。90%です。女性の方は全消が赤で、MISが緑なんですけれども、87%ということになります。
今回のMISは住宅費が非常に高く出たんです。三鷹という場所の設定かもしれませんけれども、それを住居費を抜いた比率で見てみますと、男性は全消に比べますと68%、女性は74%、家計調査に比べると71%と66%というような状況になります。
17ページが「費目別『一般平均』との比較」になりますけれども、食費ですとか光熱費、家具・家事用品のような生活必需品項目は一般平均にほぼ近い数値になっておりますが、交通・通信、教養娯楽、その他のような選択的な費目は相対的に低くなっております。40~80%程度になります。
18ページが子どもの最低生活費になりますけれども、5歳、小学校5年生、中学校3年で、小学生と中学生は公立の三鷹の学校に行っているという設定になります。5歳については就学前教育に行く必要があるのかというところまで含めて議論していただいて、やはり幼稚園に通園するのが必要であろうということになりまして、幼稚園の費用を含めております。
19ページ、合計額で見てみますと、5歳児では6万1,044円、小学校5年生では5万7,000円、中学校3年生では男女微妙に違うんですけれども、9万5,000円と8万3,000円というような数値になります。
その内訳ですが、黄色の部分が幼稚園や学校で必要な費用になります。5歳の子どもの場合は全体の6万1,000円のうちの多くは幼稚園の月謝になります。
学校外教育費用の比較で見てみますと、文科の調査と本調査と比べてみますと、文科の方が圧倒的に高い数値となっておりますので、ここのところはかなり抑え目になっていることがわかるかと思います。
最後に、MISはまだ途中段階ではございますけれども、やることの意義はどういうところなのかということを考えてみました。
まず、一般市民の方々に話し合っていただくというような手法が日本で適用できるのかということを非常に疑問視していたんですけれども、実際実施してみるとほとんどの方は非常にリアリスティックかつ理論的に最低生活を議論することができることがわかりました。
MISの推計は一般平均の約7割で、必需的な費目は大体一般平均と同程度ということを考えますと、手法的には非常に妥当性があるのではないかなと思われます。
これらの数値が実際の最低生活費と比べてもそれほど大きな差はないんですけれども、1円1円すべて積み上げられてここまで来たということは非常に意義が大きいのではないかなと思いました。
例えばこれをほかの地域で繰り返したり、これから家族類型という形で個人個人のニーズを積み上げて家族の世帯のニーズをつくっていくんですけれども、そうしますと例えば地域区分のときの1級地、2級地、3級地といったような比率の妥当性ですとか、1類費と2類費の分け方の検討材料としては非常に効果的な材料となるのではないかなと思いました。
最後に、多分岩田先生が生活保護費とMISの比較を御報告の中に含めるんだろうなと思っていたのでそこの部分はあえて入れなかったんですけれども、それはこちらの数値と岩田先生の方の棒グラフとを比べながら、比較しながら見ていただければと思います。
ありがとうございました。
○駒村部会長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの阿部委員からの報告について質問等あればお願いいたします。
では、私が最初に。このフォーカスグループの構成というんでしょうか、報告書を見ると70名という数字ですね。この人たちはどういう属性の方を集められているんでしょうか。
○阿部委員 リクルーティングは調査会社に頼んでおりまして、その調査会社のモニターです。ただ、こちらの方から居住地域と年齢と、男女一緒の場合には男女の比ですとか年齢構成、例えば39歳以下と決めた中でも20代と30代がどれくらいあるかだとか、所得もなるべくばらけるようにというような形でお願いしております。モニターだというところの偏りは避けられないのですけれども、それ以外ではなるべくばらけるようにとは考慮しています。
○駒村部会長 その70人の中、構成というか、情報、何か統計的なものはこの報告書の中にはありますか。
○阿部委員 報告書の中の別添のところにございます。ただ、70名といっても、1回のグループは7名なんです。ですので70名全部を見て、その分布を見てどうのこうのという議論は余り意味がないかなと思います。やはり7名の中でのダイナミックスといいますか、議論のダイナミックスによってやりますので、1つの7名のグループが低所得層にすごく偏っていたりするのであればそれはいけないですし、1つのグループの中でのばらつきがあるということが一番重要かと思います。
○駒村部会長 気になったのは、どういう人たちの間で議論したのか、要するに特殊な状況の人たちがたまたま集まって、70名そのもののグループが例えば三鷹の単身なりを代表しているような形で70名集まっているのかどうか。この間非正規の方だけのインタビューをやったことがあったので、そのときは全部非正規で不安定な方ばかりで、当然将来展望に対しては暗い話ばかりだったので、例えばこの70名の方の構成が高齢者みたいな、ある種今の時代とは現役のときに全然違う状況を経験した人たちが入っていたりしているのかどうかということを知りたかったので、70名はどういう構成だったのかなと。7名でもいいんですけれども、その構成によって、もしかしたら議論にどのくらいの幅が出てくるか、この辺はMISの過去の研究でどういう人をフォーカスグループに選ぶべきかという議論はあるんですか。
○阿部委員 なるべく属性の近い人を選びます。そのケーススタディーの属性に近い人です。私たちも、例えば32歳の男性であれば25~39歳までの男性と限って選んでいます。今回親もやったんですけれども、親の方もお子さんの年齢によって多分意見が大分違うんです。ですので設定されるケースになるべく近い人たちを選ぶというふうにしています。
○駒村部会長 わかりました。
岩田先生、お願いします。
○岩田部会長代理 ちょっと補足なんですけれども、70名全体の分布がどうかというので決まるというよりも、これはやった感じなんですが、それぞれの7名の中にだれかコモンセンスとは違う意見を持っている人がいるかどうかでかなり違ったり、何か妙に合意がついてしまってもまずいときがあるので、これはこちらの進め方にもよります。全員に発言してもらうとか。それから、なぜそうかというところを発言してもらうなどが重要です。
例えば三角形のごみ箱がシンクに要るか要らないかみたいなことを延々と30分くらいやるんですけれども、なぜそうかという議論をしてもらう。そこで最低生活のニーズとはどういうものかということをお互いが議論し合う。そういうふうに振り向けることが結構難しくて、最初はこちらのリードが余りうまくなかった。
今、第2段階をやっていますけれども、高齢者をやっていますが、その経験があるので少しましになりつつあります。だから対象もそうなんですが、こちらがどういうふうにそれを引き出していくかということにも相当影響されることはあります。ただ、それぞれ違うグループが何回かやりますので、前のものをひっくり返したりもします。ですからそれを何回かもむことでいいところに落ち着くことが期待されている。それがもしかすると延々と10回も12回もやるとどんどんそう行ってしまうのかなという感じはちょっとあります。難しいところです。
○駒村部会長 山田委員。
○山田委員 私からも補足いたしますと、阿部委員が配付したスライドの3番目にありますように、丸で囲ったグループが1、3、5、7とあります。確かに7人の中に議論をリードする人とか個性的な意見をおっしゃる方がいるとそれに引っ張られることはあるんですけれども、何度ものチェックによってそれが引き戻され引き戻されという形で1つのコモンセンスに落ち着くというステップをとっていることになります。
ですから、要するに何度も何度も議論させることで、一番最後の方でも一旦は決まったものだけれども、ひょっとしたらそれが最終確認グループ、7番目の丸にある方たちがちょっとおかしいと思わないかどうかを最終的にチェックしていただいて、ずれがないことを確認するという手続は踏んでおります。
あともう一点、合意形成に至るところで実は重要なことがスライドの11にある「『最低生活水準』の定義」です。これは阿部委員からも強調されていましたけれども、そもそも最低生活水準とは何かというのを一番最初の段階で議論して定義を決める。毎回毎回グループのディスカッションが始まる前に最低生活水準とは何かということをディスカッションの中で共有していただくことで、これにのっとって、もしくはもう一ついわゆる例示、高齢単身だったらとか、そういう形のリアルな設定に沿って、あなただったらどう考えるかではなくて、この人だったら何が最低生活水準の定義に従って必要と考えるのかというふうに議論を進めていくので、実際やってみた感想に近いことなんですけれども、それほど大きなずれは、一時的には議論の途中であっても引き戻されるという印象でした。ですから、何か非常に議論を強くリードされる方があったり、大きくずれたものになるということは、この手法を使っている限りかなり回避されているというのがやってみた実際の感想です。
あとこちらの研究報告書の100ページに、私も来週、次回報告させていただきますけれども、一応すべての生保を含めた比較の資料が載っています。
以上です。
○駒村部会長 ほかに御意見、御質問は。
庄司委員、お願いいたします。
○庄司委員 今日はお二方の御報告はすごく専門性の高い、かつ私にとってものすごく刺激的な勉強をさせていただいてありがたく思っています。特に今の阿部先生の御報告の調査の手法は、やはり今後これをもう少しいろいろな形で質的にも追求していく余地があるのではないかと関心を持ちました。
いっぱい刺激を受けているんですが、いきなりすごく瑣末なところに質問が飛んで申し訳ないかなと思うのですけれども、例えばこの報告書をいただいた36ページが単身男性、41ページが単身女性となっていて、つまり非常に私は一般人代表みたいな感じで、こういった領域に専門性はありませんので、こういうものを普通の、一般の目から見てすごく興味深いというので、ばっとリストを見たりしてしまうんですが、一番気になったのが冒頭の住居のところで、例えばJR三鷹駅南口徒歩3分の住宅というこの物件は、私は正直言って最低生活を考えるときには仰天だなと。やはり三鷹と言えば交通も特別恵まれた状況がありますし、かつそういうところであの辺の駅3分のところに住めたら夢だみたいなイメージがあったのです。
何が言いたいのかというと、この研究の手法ではやはり価格付け、専門家の検証とか、そういうところが入って行ったり来たりしたのだと思いますが、それにも関わらずこれが出てきたいきさつを簡単に教えていただきたいと思います。
○阿部委員 住居についてはかなりの時間を費やしました。実際に私たちが条件として付けたのは三鷹市であることだけです。別にJR線でも構わないし、私鉄の沿線でも構いません。駅から徒歩何分でも構わないし、自転車でなければ行けないようなところでも構わないというようなことで、でも最低生活に必要なのは何ですかといって聞いた場合、やはり単身者の場合には最終電車が遅いというのが特に男性では大きく出てきて、残業とかをすることも多くなってしまって、三鷹である必要があるという意見がありましたし、女性の方では治安の問題ですとかスーパーに行けるところだとか、子どものいる世帯でしたらまた違ういろいろな条件が出てきたりして、この3分というのはたまたま出てきたんですけれども、実際は徒歩3分よりもうちょっと遠いところも含めて相当幾つかの候補を不動産屋さんに出してもらって、この中で価格もお見せして一番最低限住む住居を選ぶとしたらどれにしますかと言った結果がこうなったんです。ですので見ていただければわかりますが、そんなにハイクラスな物件ではございません。近い物件の方が、例えばもう少し離れていても木造でないような物件に比べればこちらの方がいいという結果になったということで、最終的に選ばれてきたものがこのようなものだったということです。
○庄司委員 ありがとうございました。余りに瑣末なことでも何か興味津々でつい聞きました。
○駒村部会長 ただ、今の議論を聞いていると、これは阿部委員、皆さんの研究の問題意識が政策的なインプリケーションとどのくらい近く考えているのか、政策的インプリケーションを生活保護の基準の話と考えていくとするならば、この調べ方は32歳をリアルに想像できる、つまり同じ世代で想像しているということになると、ある種世代によって何に重きを置くかとか、ライフスタイルで何を重点にするかという評価が非常に大きく影響を与えて、社会の合意というよりは特定世代の合意形成の中、だから世代によって何に重きを置くかが違ってくるので、世代によっては全然違うものに重きを置くとすると、いわゆる政策としての生活保護の基準と直接比較するのはなかなか難しいのかなと思いますけれども、その辺はどうなんですか。
○阿部委員 実際にこれは全員32歳の方だけを集めたわけではなくて、上は39歳ぐらいだと思いますけれども、下は20歳までの勤労世代の若い男性を集めたものなんですが、その中での32歳の生活の合意なんです。ただ、生活保護では例えば20~40歳まで同じようにとっていたりしますけれども、年齢によって最低生活の中身は大きく変わります。
例えば女性であれば、20代のときに許される化粧品でも30代ではだめだとか、すごく細かいこだわりがあるわけで、それが何回ものグループでも繰り返し、コンファームされる、1回のグループだけではなくて次のグループでもやはりそうだよね、次のグループでもやはりそうだよねと言われていく。
例えば男性の40歳であれば、40歳で会社に勤めている人なら同じスーツをずっと毎日来ていくわけにはいかないよねとか、そういう社会から要求される最低生活が年齢によってやはり違うんだなということはすごく感じました。
MISのやり方としてどうしてもケーススタディーになってしまうので、32歳のこの人とか35歳のこの人とか36歳のこの人という形になってしまうんですけれども、これはもしかしたら私たちが最低生活費を考える際により詳しく考慮しなければいけないことなのかなと思います。
○駒村部会長 山田委員。
○山田委員 特に庄司委員からも家の選択の話もありましたけれども、その背後にあるのは就労という要素をどういうふうに考えるかなんです。例えば30代の単身であれば、男性であればライフスタイルで描くものとしては深夜まで働くこともあり得るといったこととか、あと女性の単身の場合には、特に働いているんですか、働いていないんですか、パートなんですか、フルタイムなんですかとか、そこら辺のどういう就労スタイルを背後に思い描くか尋ねられたということがあり、そこが議論のポイントになるというのが何度かあったということです。
ですから、駒村先生の方からあった世代というよりは、むしろどういう就労スタイルを暗黙に皆さんが考えているのかというところが1つの議論のポイントになったという印象を受けました。
以上です。
○駒村部会長 世代というのは時代背景というか、私が今の30代の世代は恐らく車に対する関心とか、要するに消費パターンがその上のバブルの世代と随分違うのでという意味ですので、ライフスタイルの話は勿論織り込んだ上で、世代というより時代です。
○岩田部会長代理 今、高齢世帯をやっている最中なんですけれども、やはり違います。住宅も違います。MISのやり方はニーズから積み上げてしまうので、どうしてもそういうものが最後に出てしまう。そのときに、では生活保護のような制度でこういう測定方法のどこを見るかというのは、これは議論になると思います。ただ、住宅に限ってみますと、賃貸住宅はやはり若い人を念頭に置いて供給されているんです。だから高齢者がこういう間取りがいいわと言っても実際には市場にはない。畳でお布団を敷きたいと言ってもないわけですね。
先ほどの徒歩3分なんですけれども、私たちもきっと何か批判されるとかいってやめたかったんですが、近い遠いというよりは、新しいか古いかでほぼ家賃が決まっていまして、耐震の問題とか安全を考えると、必ずしもすべてのジェネレーションのニーズを満たすグッズやサービスがマーケットにあるかというと、決してそうではない。、ニーズで積み上げたものをどういうふうに政策的なものとして使うかというのは次のステージです。
○駒村部会長 栃本委員。
○栃本委員 瑣末なことを言うと、三鷹というのは駅の右側と左側で全然違う様相がある。あと交通が結構不便なんだ。近いとか便利そうに見えるんだけれども、結構不便なんですよ。だから少し離れると違う様相がある。あと最大限瑣末なことを言うと、個人企業名を言ってはいけないかもしれないけれども、この中に和民が書いてあったではないですか。通常土地勘のある人だったら伊勢屋が必ず出てくる。知っている人は知っているはずなんだけれども、それは瑣末な話です。
今度はまじめな話なんですけれども、MISのやり方というのはまさに一番最初に岩田先生が話されたさまざまなアプローチの例の主観的尺度の部分とだれが決めるかというもののマトリックスの中で非常に有効な方法であるというのがわかります。
今、MISのホームページでデータを見ていたんです。問題だという意味ではないんだけれども、先ほど阿部先生の説明された4ページ目の先ほどの話でもあるんですが、属性が近い一般市民という部分は非常に難しくて、難しいというのは1つは当事者という言い方は変なんだけれども、当事者というのは高齢者も当事者だし、要介護者も高齢者だし、非正規の何とかというカテゴリー化をしたら当事者であるんですが、その部分とそれ以外の部分がありますね。属性が近いといっても、当事者ではない部分がありますね。それを含めるのか含めないのかによって、どちらにしても重要だと思うんだけれども、調査の持つ意味合いがかなり違ってくるのではないかと思うんです。
それはなぜかというと、ある種こういう作業をするのは極めてコストがかかるというか、労力がかかって、合意の形成まで何十回とやらないと、疲れ果てさせないと、異常値発言をする人を排除できないというか、そういうものがありますね。何とか民主主義ではないけれども。それで徐々に徐々に補正されていくプロセスを経た上でこういうデータができるので、そういう意味ではすごく大変だというのはわかります。その上でなんですけれども、言わばその時々でロールズの『A Theory Of Justice』の無知のベールをかぶせてというのがある部分では重要だと思うんだけれども、その部分が当事者だけのものと当事者以外のものでやったときに、やはりまだというとあれだけれど、ここまでよく行ったというのはよくわかるんですが、完璧に無知のベールをかぶせて、なおかつ判断させるということになると、コンプリートな主観的尺度で、コモンセンスでコモンのものができ上がるんだけれども、なかなかそこら辺は難しいという感じがするんです。難しいからだめだという意味ではないですよ。
そういう意味で当事者に限定した部分のやり方で、なおかつ無知のベールの部分を徹底化するというか、会議の先ほどの調査段階の導入グループはプロセスを経てとやるときの、参加していないのに何を言っているんだということだけれども、無知のベールのときの資料というか、その出し方とか、そういう資料といったら何だけれども、そういうもののやり方も進んでいくと、更に一層興味深いなと私は思いました。
○駒村部会長 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 お答えにはなっていないかもしれませんけれども、私もすごく同じことを考えていて、一番最初私たちは無知のベールをかけようとしていたんです。例えば就労については全く何も就労していない人からフルタイムで就労している人まで、どういう人なのか言いませんよと。ただ、やはりそうすると参加者がその人の生活を想像できないんです。フルタイムとパートタイムでさえも生活が想像できない。そうしますと、例えば5歳の子どものことを考えるときに、母親が就労していることを最低生活に含めるかどうかを議論するだけでもう軽く2、3時間経ってしまうんです。なのでやはり「もうパートということにしましょう」みたいな、そういうふうに決めざるを得なかった。決めた時点で、もう決めてしまったらその当事者だけ集めた方がよかったなという気がするんです。そこのどこまでを無知のベールで、どこまでをケースとして特定してしまうかというところは非常に難しいかなと思って、それが一つ今回母子世帯のMISができるかどうかが非常に難しいところです。今、5歳の子どもと母親をやっていますけれども、その2つをくっ付けて母子世帯になるかというと、ならないのではないかなというのが私たちの印象です。
○駒村部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。
道中委員、お願いします。
○道中委員 私はエクスペリメンタルなところから少し離れまして、MISの方法論的な部分の有効性と、政策的なインプリケーションという意味では限界的なところも少し感じながら、いろいろな世帯類型的な調査も引き続き期待を申し上げるわけなんですが、例えば13のナンバリングがあるところですけれども、「若年単身者の『最低必要な基礎的生活』費用」で男女差の違いみたいなものが月額表示で、単身男性で19万幾ら、女性の場合で18万というようなことで、特に男性と女性の違いの黄色の外食というところがあるんですが、これはやはりケーススタディーの結果かなと思ったりもするんです。
私は関西の方におりますけれども、最近は非正規の方は外食の場合でもほとんどコンビニで一番安い弁当を食べている。通常正規就労の雇用形態で働いている人は、やはり晩に食事したらちょっとお酒とかビールというような形で、そのような食費の嗜好みたいなものがあるんです。最近はどうもそこらが男性の場合でも非常に財布のひもが固くて、とりわけ非正規ということになりますれば、その辺のところはセーブしてむしろコンビニの安いものを食しているというようなことになります。ここら辺りも女性の場合はもっと食材をたくさん買ってきて、自宅で細かくやって、冷凍をかけて、3日間くらい食材を使えるようにいろいろ工夫算段をやるからこういうふうに低くなっているのかとか、逆に言ったらコンビニで一番安いものを買えばもっと安上がりにいけそうだとか、そこら辺りは本当に多様なライフスタイルが出てきているので、岩田先生が冒頭におっしゃっているような、一様にこれだというものは難しいのでありましょうけれども、この辺で阿部委員の方でサジェスチョンがあれば教えていただきたいと思います。
○阿部委員 余りお答えになっていないかもしれませんが、報告書の60ページの方に実際に何を食べるかということを、これも一つひとつ参加者の方に出していただいたんですが、書いてあります。おっしゃるとおり男性は朝食をコンビニで食べることが非常に多いということになりまして、女性はその分家でつくっていたり、あとお昼も男性の方がやはりコンビニ、または外食、といっても牛丼屋とかそういうようなところなんですけれども、そういうところで食べられたりして、女性は残り物のご飯を持っていくという、60ページが男性で63ページが女性なんですけれども、そういうところから食費の差が出てきてしまっているというところがあるかと思います。
ただ、この食生活は非常にリアルなものではあるかなと思いました。実際に最低生活で食費をもっと低くあげようと思ったら、コンビニのおにぎりなんかは高いんです。1個100円とか120円とか非常に高くて、家でつくった方が絶対単価は安いんですけれども、実際に単身で住んでいる32歳の男性がそういう生活をするかというと、しないというのが何回ものグループで確認されたことであるので、そういう意味でより現実に近いものになるのではないかと。決してぜいたくではないですけれども、本当にこれ以上下にやろうと思ったら全くできないかというとそうではないような余地があるところがあるかと思います。
ただ、食生活というのはただ単に栄養を得るというだけではなくて、楽しみですとかほかの人との交流とかいうところもすごく入ってきますので、そういう意味で例えば週に1回は同僚の人と牛丼屋さんに行くというのも入るべきだというような意見も加えられているんです。ですので、食費というだけで見て、それだけで判断できない要素も非常にあるのかなと思いました。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
○山崎社会・援護局長 このMISをイギリスで始めたというのはどういう背景で、どういうねらい、目的でこれは始まったんですか。
○岩田部会長代理 そもそもニーズをベースにして市民の合意形成をしながら最低生活費を考えようというのは、主に障害者を持っている世帯についての、ラフバラ大学の研究グループがありまして、もう一つはヨーク大学の方にブラッドショーという有名な先生がいらっしゃいますが、新しいマーケットバスケット、食費や何かを中心とするというよりは、社会参加とか社会的な生活様式を崩さないような最低生活をどういうふうに構築するかという研究グループがあって、そこがジョイントしてつくられたものです。これはあいろいろなファウンデーションからの補助を受けてやっています。今はラフバラ大学が中心となり、そのホームページに詳細が載っていますが、政府が主に用いているOECD基準の60%水準とか、あるいはそれとは別に制度がそれぞれ、例えばインカムサポートはこういう水準、とか別々の最低限を持っているわけですけれども、そういうものとか最賃や何かを考えるときの1つの参照基準といいますか、そういうものとしてつくったと言っています。貧困線なんですかというと、そうではないと。いろいろな最低限というものを参照する基準として提供しているというような言い方をしています。ホームページに行っていただくとわかるんですけれども、あなたの最低生活はどうなりますか、というのをMISに基づいてシミュレーションしてくれるということです。
○山崎社会・援護局長 これも一種のマーケットバスケット方式ですよね。その中をどういうふうにやっているかというものだと思うんですけれども、従来のマーケットバスケットで批判があったんですか。批判というか、いろいろな問題点が出ていたんですか、そうでもないんですか。
○駒村部会長 マーケットバスケットの課題としては、専門家が定義していくという中で、そこが市民、いわゆる生活者との距離が非常に出てくるのではないかと。要するにマーケットバスケットというのは理論上専門家が評価するミニマム、そこで市民からの評価の乖離をどう埋めるかという議論がやはりイギリスでもありまして、専門家だけではなくて市民側からの見方を入れないと、おおよそ家計のスペシャリストでなければ、あるいは調理のスペシャリストでなければこの具材でこれだけのカロリーを確保することはできないとか、そういう生活はできないという非難があったわけですので、それに対応して入ったものです。厳密に言うと、専門家が設定するマーケットバスケットと市民が合意形成したマーケットバスケットの違いだと思います。
○岩田部会長代理 要するに生活保護でも何でもそうですけれども、最終的には社会が合意するかどうかが決定的に重要です。専門家がどのくらい信用されているかということにもよりますけれども。専門家がやっているのはブラックボックスに入ってしまって、専門的な用語で例えば私が抵抗点とか言ってもわかりにくい。それに対して市民参加でやることによって、社会の中で開かれたといいますか、より合意されたミニマムとして提供できる、そういうふうになっています。
○駒村部会長 そろそろ時間でございます。
今日の2報告は大変興味深い報告で、今の最後の議論がまさにそうだったように、最低生活水準といったものを生活保護の扶助基準に持っていくと、それはある種社会的な合意が必要になってくるわけで、今日はそういう意味ではリアリティーというか、近い人たち、栃本委員の話の言い方だと当事者というんでしょうか、当事者がイメージしている最低生活費はこういうものであるという1つの最低生活費の目安というか、見方があったということだと思います。これが恐らく政策的な議論になってきたときに、保護基準の話になってくると、社会的な合意という次の議論になってくるのではないかと思いますが、最新のイギリスの1つのアプローチを日本に適用するとこういう議論ができるというお話だったと思います。
それでは、予定の時刻になりましたので、私の進め方が悪くて少しオーバーしておりますけれども、本日の審議はこれで終了したいと思います。
最後に、次回の開催について事務局から連絡をお願いいたします。
○古川社会・援護局保護課長 次回は既にお知らせ申し上げておりますけれども、10月4日、火曜日、15時からこの同じ建物の会議室で、17階でございますけれども開催を予定しております。よろしくお願い申し上げます。
○駒村部会長 本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。御多忙の中をありがとうございました。
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