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2010年11月22日 第13回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会 議事概要
医政局研究開発振興課
○日時
平成22年11月22日(月)16:00~19:30
○場所
厚生労働省 12階 専用第14会議室
○出席者
(委員)
永井委員長 | 青木委員 | 位田委員 | 貴志委員 | 木下委員 |
小島委員 | 高橋委員 | 中畑委員 | 中村委員 | 前川委員 |
松山委員 | 水澤委員 | 湊口委員 | 山口委員 |
(事務局)
厚生労働省医政局研究開発振興課 |
○議事
議事概要
すでに厚生科学審議会科学技術部会に付議されたヒト幹細胞臨床研究実施計画のうち、継続審議となっていた名古屋大学医学部附属病院及び岡山大学病院からの申請に加え、平成22年10月29日付で、新たに付議された東京女子医科大学、国立国際医療研究センター、東京大学大学院医学系研究科、東京大学医科学研究所附属病院、大阪大学医学部附属病院及び東北大学大学院医学系研究科からの申請をあわせた、計8件の申請について審議された。
その結果、継続審議の岡山大学病院、新規申請の東京女子医科大学、国立国際医療研究センター、東京大学大学院医学系研究科、大阪大学医学部附属病院及び東北大学大学院医学系研究科の計6つの申請は持ち回り審議、継続審議の名古屋大学医学部附属病院、新規申請の東京大学医科学研究所附属病院の2つの申請については、次回審査委員会以降も継続して審議していくこととされた。
(審議された臨床研究実施計画の概要は別紙1~8参照。)
(別紙1)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性に関する研究 |
申請年月日 | 平成21年8月11日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:名古屋大学医学部附属病院 総括責任者:後藤 百万 |
対象疾患 | 腹圧性尿失禁 |
ヒト幹細胞の種類 | ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 登録期間 承認後から平成25年3月31日まで 計30症例(女性10例、男性20例) |
治療研究の概要 | 皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞(ADRCs)は、腹部または臀部の皮下脂肪から従来の脂肪吸引法により採取し、ADRCs分離装置により回収する。障害された尿道の括約筋及び尿道粘膜下に経尿道的内視鏡下で注入し、括約筋機能を回復させ、尿失禁を治療する。ADRCsが括約筋障害のために開いた尿道を閉鎖すること、ADRCsが括約筋再生に向かうこと、ADRCsから分泌されるサイトカインが局所の血流を改善することなどが、尿失禁を改善させる機序と考えられる。 |
その他(外国での状況等) | ADRCsを用いた腹圧性尿失禁治療は国内外において行われていない。オーストリアにおいて間葉系細胞を用いたヒト培養自己骨格筋細胞を使用する臨床再生治療が行われているが、培養過程における安全性の問題は大きなハードルとなる現状がある。 |
新規性について | ADRCsを用いる本研究では、細胞供給源として大量の前駆細胞が含まれる脂肪組織を用いる。細胞分離装置を用いることで、短時間で前駆細胞が得られる。さらに、腹圧性尿失禁に対する、ADRCsを用いた臨床研究は世界で初めてのものであるという点で、新規性が極めて高い。 |
(別紙2)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 機能的単心室症に対する自己心臓内幹細胞移植療法の第1相臨床試験 |
申請年月日 | 平成22年5月13日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:岡山大学病院 森田 潔 |
対象疾患 | 機能的単心室症由来の小児心不全 |
ヒト幹細胞の種類 | 心臓内幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 登録期間(試験開始から1年間)、試験期間(最終症例の移植後1年間) 7症例 |
治療研究の概要 | 機能的単心室症の小児心不全患者に対して姑息的心修復術を行う際に、心筋組織を採取する。細胞調節センターにて心臓内幹細胞を精製、培養する。術後一カ月後に心筋内幹細胞を心臓カテーテルにより冠動脈内に注入し、移植する。安全性の評価を主要エンドポイントとする第1相試験。 |
その他(外国での状況等) | 左室低形成症候群の小児を対象として骨髄幹細胞の冠動脈注入を施行した症例が、2009年にRuppらにより報告された。一方、成人の心筋梗塞に対する心臓内自家幹細胞の冠動脈内への移植療法について、米国ではMarbanらによって30例の第1相臨床試験が実施されている。 |
新規性について | 本研究は、小児心不全を対象として、心筋内幹細胞を培養し冠動脈内に注入する自家幹細胞治療の安全性を検証する臨床研究。
なお、本研究で安全性が判定された後に、第2相試験で有効性の評価を行う計画も予定。 |
(別紙3)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 自己培養歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建 |
申請年月日 | 平成22年9月27日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:東京女子医科大学 宮崎 俊一 |
対象疾患 | 中等度の歯周欠損(歯周ポケット4~9 mm)を有する歯周病 |
ヒト幹細胞の種類 | 自己歯根膜組織由来細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 大臣意見発出から2年間 10名 |
治療研究の概要 | 本研究では、歯周病によって引き起こされた歯周組織の欠損に対して、自己培養歯根膜細胞シート移植法による、歯周組織再建技術の治療効果及び安全性を検討する。 自己培養歯根膜細胞シートは、被験者の血清及び組織由来細胞を用いて作製し、また、温度応答性培養皿を用いて培養することで、広範な欠損に対して、より短期間の創傷治癒を期待する。術後最低6ヶ月間の観察を行い、自覚症状、各種歯周組織検査にて有効性を判定する。 |
その他(外国での状況等) | 本研究機関では、歯根膜組織から分離した歯根膜細胞を培養増殖してシート化し、硬組織誘導した培養歯根膜細胞シートを用いることにより、より短期間で歯周組織を再建できることをラット移植モデルで確認した。さらに、イヌを用いた自己培養歯根膜細胞シートによる歯周組織再生モデルについても検討を行い、良好な結果を得ている。 |
新規性について | 温度応答性培養皿上で作製された自己培養細胞シートを用いた本研究は、歯周分野初の試みで、新規治療法として期待される。 また、今まで困難とされてきたセメント質様組織を誘導し、より強固な靭帯様組織を再建する。 |
(別紙4)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 肝硬変を有するHIV感染者に対する自己骨髄細胞投与療法の有効性と安全性に関する研究 |
申請年月日 | 平成22年9月28日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:国立国際医療研究センター病院 桐野 高明 |
対象疾患 | HIV感染症を合併している肝硬変症 |
ヒト幹細胞の種類 | 自己骨髄細胞中に含まれると想定される幹細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 臨床試験実施予定期間(結果通知日から3年間) 10例 |
治療研究の概要 | 肝移植以外の治療法では改善が見込まれない肝硬変を有する75歳以下のHIV感染者に対して、全身麻酔下で自己骨髄細胞採取・投与を行う。骨髄液400mLを採取後に血球分離装置を用いて無菌的に単核球分離を行い、得られた単核球を経静脈的に投与する。治療6カ月後にChild -Pughスコア、血液生化学検査で治療効果を判定する。 |
その他(外国での状況等) | 共同研究者である坂井田(山口大学)らは、肝線維化モデルマウスによる実験で、骨髄より採取された細胞を経静脈投与することにより、肝機能の回復、生存率の上昇を示した。骨髄由来細胞が障害部に遊走し、コラゲナーゼ、MMP9 等が産生され、線維化が改善することで肝機能が回復したと考えられている。この知見を参考に、平成15 年11 月より山口大学を中心に肝硬変症例に対して「自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法」の臨床応用が開始され、良好な治療成績が報告されている。 |
新規性について | 同様の研究は山口大学を中心とする複数施設で行われているが、HIV感染者を対象としたものはない。今回の研究はHIV感染者においても本治療法が同様の効果をもたらすかを検討するものである。 |
(別紙5)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 口唇口蓋裂における鼻変形に対するインプラント型再生軟骨の開発 -アテロコラーゲンハイドロゲルとポリ乳酸(PLLA)多孔体によって構成される足場素材に自家耳介軟骨細胞を投与して作製するインプラント型再生軟骨 |
申請年月日 | 平成22年9月29日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科 清水 孝雄 |
対象疾患 | 口唇口蓋裂における鼻変形のうち、隆鼻術および鼻尖形成が必要な、高度な変形を有する患者 |
ヒト幹細胞の種類 | ヒト培養耳介軟骨細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 平成22年10月から2年間、3例 |
治療研究の概要 | 口唇口蓋裂における鼻変形(唇裂鼻変形)のうち、隆鼻術および鼻尖形成が必要な高度な変形を有する、20歳以上、40歳未満の患者を対象として、インプラント型再生軟骨(アテロコラーゲンハイドロゲルとポリ乳酸(PLLA)多孔体によって構成される足場素材に自家耳介軟骨細胞を投与して作製)を移植する。安全性を確認することを主目的とする探索的臨床研究。 |
その他(外国での状況等) | 海外で、最も普及している再生医療のひとつが関節軟骨欠損に対する自家軟骨細胞移植法(ACI法)であり、ACI法は米国Genzyme社で産業化され、製造された再生軟骨はCarticelTMとして販売されている。しかし、足場素材を用いない細胞療法であるため性能や治療成績に課題が残る。 広島大学医学部整形外科の越智教授は、アテロコラーゲンの導入を図り、軟骨細胞の基質産生能を維持するとともに、軟骨細胞投与における操作性の向上を図っている 。 |
新規性について | インプラント型再生軟骨は剛性のある足場素材、すなわち生分解性ポリマー多孔体を新規に導入する点で、これまでの軟骨再生医療にはない新規な研究である。 |
(別紙6)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討(第1、第2a相試験) |
申請年月日 | 平成22年10月1日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:東京大学医科学研究所附属病院 今井 浩三 |
対象疾患 | 歯槽骨萎縮症 |
ヒト幹細胞の種類 | 骨髄由来間質細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 承認から4年間 最終目標症例数25例(第1相15例、第2相10例) |
治療研究の概要 | 歯槽骨萎縮症患者を対象として、顆粒状の担体に対して最適化された自家骨髄間質細胞の培養、分化誘導条件を用いて、歯槽骨再生治療の有効性及び安全性を評価する。従来、自家骨移植が必要とされた患者に対して、歯槽骨を再生し、最終的にはインプラント義歯による治療を可能とすることを期待する。自己骨髄由来間質細胞をリン酸カルシウム顆粒上で培養し、デキサメサゾン、アスコルビン酸等を加え骨芽細胞様細胞へ分化誘導、手術に用いる。 |
その他(外国での状況等) | 当施設では、先行する臨床研究として、平成16年から「自己骨髄由来培養骨芽細胞様細胞を用いた歯槽骨再生法の検討」を行っており、培養自己骨髄間質細胞の移植、およびその後の観察期間中に、本治療に起因すると考えられる副作用などの有害事象は認められず、全例で骨再生を認めた。 |
新規性について | より効率的な骨再生を行うために先行臨床研究のプロトコールを改良し、ヒト細胞を用いた動物実験を行った。本研究では、最適化と簡便化が図られており、先行する臨床研究との比較により、有用性を検討する。 |
(別紙7)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床試験 |
申請年月日 | 平成22年10月12日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:大阪大学医学部附属病院 福澤 正洋 |
対象疾患 | 角膜上皮幹細胞疲弊症 |
ヒト幹細胞の種類 | 口腔粘膜上皮細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 試験許可日から3年間 10症例 |
治療研究の概要 | 有効な治療法がない角膜上皮幹細胞疲弊症を対象にして、有効な治療法を確立することを目的。培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の有効性と安全性を検討する。患者の口腔粘膜を採取して、ディスパーゼ・トリプシン処理の後に未来医療センターCPCにて上皮細胞を培養する。フィーダー細胞3T3-J2を用いて培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製し、手術室にて移植する。一年後に角膜上皮欠損のない面積を測定し有効性を評価する。 |
その他(外国での状況等) | 大阪大学では、2003年から培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究を実施(単群無対照オープン試験)。自己脂肪組織由来細胞をフィーダー細胞として共培養した。4例の結果、術後13から15ヶ月後においていずれも角膜は透明化し、視力も有意に改善し、特に大きな有害事象は発生せず安全性を確認した。さらに、両眼の角膜上皮幹細胞が完全に欠損している患者6例を対象として、顕著な改善を認めている。 |
新規性について | 本研究では、3T3-J2細胞をフィーダー細胞とするプロトコルに修正して実施。更に先進医療として治療法の確立を目指す。 |
(別紙8)ヒト幹細胞臨床研究実施計画の概要 平成22年11月22日審議分
研究課題名 | 角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床試験 |
申請年月日 | 平成22年10月14日 |
実施施設及び 総括責任者 | 実施施設:東北大学医学系研究科 山本 雅之 |
対象疾患 | 角膜上皮幹細胞疲弊症 |
ヒト幹細胞の種類 | 口腔粘膜上皮細胞 |
実施期間及び 対象症例数 | 試験許可日から3年間 10症例 |
治療研究の概要 | 有効な治療法がない角膜上皮幹細胞疲弊症を対象にして、有効な治療法を確立することを目的。培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の有効性と安全性を検討する。患者の口腔粘膜を採取して、ディスパーゼ・トリプシン処理の後に東北大学未来医工学治療開発センターCPCにて上皮細胞を培養する。フィーダー細胞上に培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製し手術室で移植する。一年後に角膜上皮欠損のない面積を測定し有効性を評価する。 |
その他(外国での状況等) | 大阪大学で、2003年から培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究を実施(単群無対照オープン試験)。自己脂肪組織由来細胞をフィーダー細胞として、培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製して移植した。4例の結果、術後13から15ヶ月後においていずれも角膜は透明化し、視力も有意に改善し、特に大きな有害事象は発生せず安全性を確認した。さらに、両眼の角膜上皮幹細胞が完全に欠損している患者6例を対象として、顕著な改善を認めている。 |
新規性について | 東北大学において新たに施行することに新規性が認められる。更に先進医療として治療法の確立を目指す。 |
厚生科学審議会科学技術部会 ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会委員名簿
氏 名 所 属 ・ 役 職
青木 清 上智大学名誉教授
阿部 信二 日本医科大学呼吸器感染腫瘍内科部門講師
位田 隆一 京都大学大学院法学研究科教授
春日井 昇平 東京医科歯科大学インプラント・口腔再生医学教授
貴志 和生 慶應義塾大学医学部形成外科教授
木下 茂 京都府立医科大学眼科学教室教授
小島 至 群馬大学生体調節研究所所長
島崎 修次 杏林大学救急医学教室教授
高橋 政代 理化学研究所神戸研究所網膜再生医療研究チームチームリーダー
戸口田 淳也 京都大学再生医科学研究所組織再生応用分野教授
○ 永井 良三 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
中畑 龍俊 京都大学iPS細胞研究所臨床応用研究部門疾患再現研究分野教授
中村 耕三 東京大学大学院医学系研究科整形外科学教授
前川 平 京都大学医学部付属病院輸血部教授
松山 晃文 先端医療振興財団先端医療センター研究所膵島肝臓再生研究グループグループリーダー
水澤 英洋 東京医科歯科大学大学院脳神経病態学教授
湊口 信也 岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学・呼吸病学教授
山口 照英 独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査第一部
(敬称略)
○:委員長
<照会先>
医政局研究開発振興課
電話:03-5253-1111(内線)2587
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