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2014年5月16日 第17回 社会保障審議会生活保護基準部会
社会・援護局
○日時
平成26年5月16日(金)10:00~12:00
○場所
厚生労働省省議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
阿部 彩 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
園田 眞理子 (委員) |
道中 隆 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
(1)住宅扶助等について
(2)その他
○議事
○駒村部会長 ほぼ定刻だと思います。委員もそろわれたので、開始したいと思います。
ただいまから「第17回社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
まず、本日の委員の出席状況について事務局より御報告をお願いいたします。
○大西保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、岩田委員、大竹委員、宮本委員より御欠席との連絡をいただいております。
それでは、部会長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
前回の部会では、住宅扶助について、現状や関連する制度などを踏まえながら、フリートーキングの形で議論をしていただきました。
本日は、事務局のほうで住宅扶助の検証手法等についての資料を用意していただいているので、事務局から報告いただいた上で、住宅扶助に関する論点や具体的な検証手法等について議論を深めたいと思います。
また、生活扶助や住宅扶助以外の扶助、加算制度については、速やかな検証が宿題として残されているところです。生業扶助や一時扶助については前回までの部会で議論いただいたところですが、冬季加算や有子世帯の扶助・加算については、財政制度等審議会などにおいて見直すべきとの指摘があるようですので、事務局から紹介された上で、冬季加算や有子世帯の扶助・加算についても議論を開始したいと思います。
それでは、まず事務局より提出された資料1「住宅扶助等について」の御説明、御報告をお願いいたします。
○井上保護課長補佐 今年の4月に保護課のほうに異動してまいりました井上と申します。よろしくお願いいたします。
私のほうから、資料1の中の住宅扶助に係る部分の説明をさせていただきたいと思います。
資料1の表紙をおめくりいただきまして、2ページ目に目次がございますけれども、資料1は、大きく2つに柱が分かれておりまして、前半が昨年度後半にも御議論いただいておりました住宅扶助の関係、後半がその他の扶助・加算の関係になっております。
住宅扶助の関係ということで、3ページには前回の基準部会での御議論ですとか、次のページにございます財政制度等審議会におけます問題提起などを踏まえまして、住宅扶助について検証を行う必要があると考えておりまして、その検証を行おうとした場合の論点としては以下の3つが考えられるのではないかということで、挙げさせていただいております。
論点1は住宅扶助特別基準額の水準についてでございます。
現行の特別基準額の水準が一般世帯の家賃の実態と比べて妥当なものか否か検証するためには、どういった調査を用いてどのような集計・比較を行うべきか、この後、御議論をいただきたいと思っております。
論点2は特別基準額の改定方法についてでございます。
改定するに当たっては、どのような方法が客観的でわかりやすく、かつ一般国民との均衡を図る観点から適当であるかということ。
論点3は運用面についてでございます。
住宅扶助、家賃の支給について、住宅の質を適切に反映したものとするための運用としてはどういったことが考えられるかということでございます。
下に[その他]として挙げさせていただきましたけれども、こちらの基準部会のミッションからは外れるかもしれませんが、悪質な貧困ビジネス関係につきまして、論点とは別に挙げさせていただいておりますので、上の論点のほうとあわせて、こちらについても御意見をいただければと考えております。
続きまして、4ページは、議論に当たっての材料の1つということで、財政制度等審議会に提出されました住宅扶助に係る問題提起の資料の御紹介でございます。
扶助基準の水準とか改定方式とか、貧困ビジネスへの対応という形で、それぞれ下の囲みのところに問題が提起されてございます。
左の水準のところでは、財務省独自の試算では、これは住宅扶助基準額の上限額ですけれども、一般低所得世帯の家賃の実態より2割程度高い。検証を速やかに実施し、水準を適正化すべきとされております。
真ん中の改定方式のところでは、近年、家賃CPI、物価指数が下落しているにもかかわらず、基準額は据え置かれている。家賃CPIとの連動性を高めた改定方式とすべきとされております。
右の貧困ビジネス関連のところでは、無料低額宿泊施設等で住居とともに生活サービスを提供して、その対価として生活保護費をもらっている例がありますけれども、生活サービス提供については、規制する法的根拠がないとか、そういったところは実態把握も困難ではないか。実効性ある規制の枠組みの検討が必要ではないかとされております。
続きまして、5ページは住宅扶助の検討スケジュールでございます。本日は、住宅扶助に関しての論点なり検証手法につきましてフリートーキングしていただいて、その議論を踏まえまして、事務局で再度論点とか検証手法についての整理を行いまして、それを次回5月30日にまたお示しして、御議論いただきたいと考えております。
この後、御紹介しますけれども、検証に活用できる1つのデータとして、住宅・土地統計調査の特別集計をしてはどうかと考えておりますので、その集計の仕方などにつきましても本日御意見をいただいて、次回にまた整理したものをお出ししたいと考えております。
6月以降、皆様方にいただきました意見を参考に、住宅・土地統計調査の特別集計を開始して、できたものからこちらの部会に提出をして、10月、11月くらいまでに御議論をいただきまして、できれば11月中には検証結果の取りまとめが行えればと思っております。
そのほか、下の※2にございますが、住宅扶助以外にも問題が提起されている扶助・加算につきましても、検証の進め方などにつきまして随時議論を開始していければと考えております。
6ページでございます。
まずは論点1にございました水準につきましての検証方法の案についてでございます。
水準の検証方法としましては、住宅扶助特別基準額が一般低所得世帯の住宅水準と均衡がとれているかどうかにつきまして、家賃額と住宅の質の両面から検証することとしてはどうかということでございます。
その検証を行う場合に使用する1つのデータとしまして、一般世帯につきましては平成20年の住宅・土地統計調査を活用してはどうかということで、こちらにその調査の概要を載せております。
調査対象は350万世帯。この調査は5年に一度でございまして、公表している中では平成20年10月1日現在のものが直近になっております。
調査項目は、この後御紹介しますけれども、居住室の数、広さなどの住宅等に関する事項、家賃とか建築時期、あるいは世帯に関する事項、世帯主、世帯員に関する事項などでございます。
調査方法は、調査員が世帯を訪問して調査票を配って、その調査票を調査員が回収をするという形でございます。
一番下にございますけれども、この調査の個票データを総務省のほうから借りて特別集計をできればと考えておりますので、特別集計を行うに当たりましてのいろいろな御意見、あるいはアドバイスを後ほどいただければと思っております。
7ページは、被保護世帯のほうの調査についてでございます。
被保護世帯につきましては、今までも被保護者全国一斉調査を毎年行っておりますけれども、住宅に関するデータは少ないということで、その下に記載しましたような居住実態に関する調査をこの夏にでも実施して、実態を把握できればと考えております。
調査対象としましては、調査月にケースワーカーの方が訪問計画に基づいて家庭訪問される世帯の中から一定数を対象としたいと考えております。一定数はまだ検討中でございますけれども、ケースワーカーの方は全国に一万数千人おられるということでございまして、ケースワーカー1人当たりに数世帯お願いしても数万件単位の数になろうかと思います。
調査項目は、一般世帯との比較を行いますので、基本的には前ページにございました住宅・土地統計調査にある項目を参考に考えたいと思っております。
調査方法は、基本的にはケースワーカーの方に賃貸契約書の記載内容から把握いただくというのと、契約書がないとか、契約書からは把握できない、そういった部分につきまして、訪問時に可能な範囲で確認をしていただくという形でできないかなと思っております。この調査につきましてもぜひ皆様のお知恵をおかりできればと思っております。
続きまして、8ページでございます。
こちらからは、平成20年住宅・土地統計調査につきまして、実際どういった調査項目があるのかというのを参考までに載せております。世帯についてとか、世帯の家計を主に支える人など、13ページまで項目が続いております。
例えば11ページをごらんいただきたいのですけれども、こちらにございますような設備関係の項目につきましては、今後公表される平成25年の調査のほうでは、トイレとか浴室とか、一部項目が削除されておりますので、あと半年待てば平成25年の調査が公表されるとしましても、質の面を検証するには平成20年の調査を活用することになろうかと思います。
住宅扶助の水準との検証に当たっては、例えばこの場だけですぐ思いつかないかもしれませんけれども、この統計調査の項目のどれとどれをクロスしてみるとよいのではないかといったこととか、この調査以外にも有効な調査がありますよといったようなことをこの後、御意見をいただければと思っております。
続きまして、14ページをごらんください。
ここからは、これまでの住宅扶助に関します議論を踏まえまして、事務局のほうで考えてみた検証手法案として5つほどイメージ案を提示させていただいております。
14ページは、まず一般世帯につきまして、家賃と住宅の質がどうなっているのかを年間収入階級の切り口で見てはどうかということ。一般世帯の家賃と比較して、住宅扶助特別基準額はどの程度の水準なのかというのを見られるように、住宅・土地統計調査を特別集計して、地域別、世帯人数別、住宅の所有関係別に資料にございますような表を作成することとしてはどうかという御提案でございます。
15ページでございます。
イメージ2のほうも前ページと同じ一般世帯の実態把握ですけれども、こちらは家賃額を十分位に分けて、その十分位階級の切り口から家賃額と質との関係、あるいは特別基準額との関係について、同じく住宅・土地統計調査を特別集計して、地域別なり世帯人数別に資料にございますような表を作成してみてはどうかというものでございます。
16ページでございます。
イメージ3は、今度は被保護世帯のほうの実態把握についてということです。先ほどの一般世帯と同じように家賃と住宅の質がどうなっているのかにつきまして、生活保護受給世帯の居住実態に関する調査を新たに行って、地域別とか世帯人数別に資料にございますような表を作成して、先ほどの一般世帯の実態と比較することとしてはどうかというものでございます。
17ページでございます。
イメージ4は、前回の議論の中で、ある程度質をコントロールした上での比較の議論を行う必要があるのではないかといったことがあったかと思いますので、標準的な質を備えた住宅に着目してみた場合、一般世帯の家賃額と住宅扶助特別基準額でどうなっているかというのを、資料にございますような表を作成して比較してみてはどうかというものでございます。
年間収入階級の切り口の表と家賃額の十分位階級別の切り口の表を案として載せさせていただいております。
それと、そもそも標準的な住宅とはどういったものが考えられるかといったことがございますので、この点もいろいろ御意見をいただければと思っております。
18ページでございます。
イメージ5は、少し毛色が変わりまして、回帰分析を使った検証もできないかという御提案でございます。家賃に大きく影響を与える要素としましては、例えば床面積とか築年数などがあろうかと思いますけれども、どういったものが考えられるか。そしてそういった要素、住宅の属性と家賃との関係から、一般低所得世帯の家賃の水準を推計できないかということで、検証手法のところにございますが、住宅・土地統計調査のデータから床面積、築年数などを説明変数とした家賃関数を推定して、一般低所得世帯の住宅の質とか環境から家賃水準を算出してみてはどうかというものでございます。
下の参考の1ポツ目にございますけれども、公営住宅の家賃の決め方、あるいは19ページもあわせて見ていただきたいのですが、立地条件とか規模とか経過年数、そういったものを考慮して決める算式になっております。
20ページ、21ページにもございますけれども、総務省の全国消費実態調査の持ち家の帰属家賃の推計の方法に当たりましても、住宅の構造とか建築時期とか延べ床面積、そういったものから家賃額を推計するという式を用いておりまして、これらを参考にしてはどうかと考えております。
少しページを飛ばさせていただいて、22ページでございます。
こちらは、《参考》として一般世帯において最低居住面積水準を満たす世帯がどれくらいあるかというのを表にしてみたものでございます。
こちらは住宅・土地統計調査のデータでございますので、表にあります最低居住面積水準とか、再掲欄のその水準以上の世帯での設備等の条件を満たしている、そういった定義につきましては、そちらの調査での定義を下の欄外のほうに記載しております。
この水準を満たす世帯割合がどれくらいあるかを持ち家、公営の借家、民営の借家の世帯人数別に年間収入階級別であらわしてみた表がこちらでございます。
生活保護世帯の一番多くの層が属しております民営借家の部分に色をつけておりますけれども、最低居住面積水準を満たす割合というのは結構多いのですが、隣の再掲欄の設備等の条件を満たしている世帯の割合というのは、年間収入が上がっていくほど高くなっております。
23ページでございます。
こちらは、今、見ていただきました最低居住面積水準を満たす世帯の割合は地域別で見ると差がありますよという資料でございます。
特徴的な県に網かけをしております。岩手県は、面積水準でいいますと満たす世帯の割合は多いのですが、設備面では満たす世帯の割合が低めになっている。
東京都は、面積の面あるいは設備の面とも低め。
逆に、石川県は面積の面、設備の面とも高めとなっているという結果でございます。
24ページは、前のページの特色ある3都県を深掘りしてみたスライドでございます。
網かけ部分は、住宅扶助特別基準額が属している家賃額の層でございます。
右のほうの家賃の分布の欄で一番分布が多い層に特別基準額も含まれておりますけれども、だからといって必ずしも面積とか設備水準がよいとも限らない状況ということになっております。
続いて、25ページは、住宅扶助特別基準額の現在の改定方法でございます。
上の囲みにございますけれども、家賃物価指数の伸び率を基礎として、基準額の変動による受給者への影響を緩和するなどの観点から、所要の調整を行って、毎年度の必要な改定を行っているというものでございます。
ここで御議論いただきたいポイントは、客観的で国民にわかりやすく、かつ一般国民世帯との均衡を図る観点から、毎年の改定方法について改善する点はないかということでございます。
家賃物価指数による改定額の算出につきましては、1のところにございますけれども、現行の都道府県別、級地別の特別基準額に地方別の家賃物価指数の伸び率を乗じて算出しております。
この算出された額のほかに、急な額の変動の影響を緩和するために以下の2にございますような増減幅の調整を行うこととしております。
その調整の仕方としましては、2にございますけれども、1で算出された物価指数改定額のほかに、現行の基準額と住宅扶助受給世帯の実態家賃の下から97%をカバーする額に家賃物価指数の伸び率を乗じて得た額。これを「97%カバー額」と呼んでおりますが、この3つの額を比較して一番高く出るものと低く出るものを除いて、真ん中に来る額を次年度の改定額としております。
例えば下に6つのパターンを載せておりますけれども、上の2つは物価指数改定額がそのまま次年度の改定額となる例でございます。
そうではなくて、上から3つ目とか一番下のような、例えば物価指数改定額が一番低い額となったとしましても、ほかの2つがそこまで低い額となっていなければ、2番目に来るほうの額に合わせるということでございます。ほかの2つの額が下げどめの機能を果たしている形になっております。
下の※1にございますけれども、2で算定された改定額、一番右の実線の囲みの額が現行の基準額より1,000円以上増額ないしは減額とならない場合は、改定は行わないこととしております。その場合でも、翌年度の改定作業に当たりましては、家賃物価指数を乗じるもととなる額というのは、1,000円に満たない端数をそのまま生かした一番右の次年度の改定額を使用して算出して、現行の基準額より1,000円以上変動するかを見て、変動するようだったら改定を行っているということでございます。
26ページは、現行のような改定の仕方がよいのか、御議論いただく材料として用意してみたものでございます。物価の動向と基準額との関係を見るために、過去5年間分だけ表にしてみたものでございます。
過去5年間を調べてみた感じでは、次のスライドに地域別の家賃物価指数の推移のグラフを載せていますけれども、物価動向は全体的には下がってきている傾向にある。ただ、沖縄地方は上がってきている傾向にございまして、地域によって異なる動きとなっているということでございます。
物価指数の伸び率だけを見ますと、26ページの一番左の(A)の欄は現行の基準額に相当する部分ですが、その基準額に5年間の物価指数伸び率を乗じた額が真ん中辺の(E)欄で、こちらが物価指数改定額に相当するものです。
その右隣の欄には物価指数改定額と現行の基準額との差額が載っております。1,000円以上、下がっている地域もございます。
ただ、右のほうの欄にございますように、97%カバー額あるいは一番左の現行の基準額が物価指数改定額よりも高い額となって、下げどめがきいていて、一番右の欄にございますけれども、5年間では栃木、富山の2県だけが特別基準の改定を行っているという状況でございます。
27ページのほうは、先ほど触れたので飛ばさせていただきます。
28ページは、今の運用の取り扱いの紹介でございます。
上の囲みの中に書いてございますが、現行制度におきましては、最低生活としての住居として不適切な住居から転居する場合で、実施機関が必要と認める場合には転居費用の支給が可能となっております。
また、保護開始時に入居した住居が敷金等を必要とする場合でも、住環境が著しく劣悪な状態といったように、不適切と実施機関が判断した場合には敷金等の支給は認めない取り扱いということになっております。
現在はこのような運用でございますけれども、2つの矢印で書いてございますように、運用面におきまして、被保護世帯であるがゆえに合理的な理由もなく高額の家賃が設定されている。例えば同一建物に住んでいるのに一般世帯と家賃設定に差があるなど、そういった判断をされる場合に、転居指導等によって家賃を適正化するための効果的な方法というのはどういったことが考えられるか。
あるいは被保護世帯の家賃額が住宅の質に見合ったものとなっているかどうか、近隣の同条件の家賃の額と比較して著しく高くなっていないかどうか、そういったことを判断する方法としてはどのようなものが考えられるかといった点につきまして、皆さんの御意見をいただければと思っております。
次に、30ページは、《参考》として住宅扶助関係の会計検査院からの指摘を載せております。
上のほうの下線を引いた部分ですけれども、被保護者との間であえて住宅扶助の上限額で契約する業者がいるといったこととか、近隣価格を上回る被保護世帯向けの家賃相場が形成されているといった意見があったことを踏まえまして、検査院のほうで調査をした結果としまして、下の下線部でございますが、被保護世帯であるがゆえに合理的な理由もなく高額の家賃が設定されていることはないか実態把握に努めること、適切な家賃額となっているかどうか判断できるような仕組みを設けるなど、住宅扶助の適切なあり方について検討する必要があるといった指摘がなされております。
以上が住宅扶助に関する資料の説明でございます。
○駒村部会長 ありがとうございます。
きょう、今後のスケジュールと集計方法についての考え方が出されて、11月をめどに、行政の御都合もあるようですので、作業が進められていくと思います。ただ、住宅の場合は質が非常に重要で、質と価格の関係は密接ですし、質によっては介護や子育てや就労にも大きな影響を与えると思いますので、慎重な議論が必要なのかなと思います。
まず、資料について御質問があれば、その後、御意見をいただきたいと思いますので、資料の構成、中身について御質問があれば指摘をいただきたいと思います。よろしくお願いします。栃本委員、お願いします。
○栃本委員 先ほど資料の7ページのところで、被保護世帯の住宅の質に関するデータをとるということで、これは後ほどそれぞれの専門の先生方からさまざまな指摘があると思うのですけれども、私は全く知らない立場からお尋ねするのですが、前の期間の基準部会でも全国の福祉事務所のケースワーカーにお願いして、かなりいい資料をつくっていただいたと思うのです。したがって、この調査、今、全国で一万数千人いる福祉事務所のケースワーカーの方々に対して、1人当たり何ケースというか、何人かとっていただいて、データを整備するという部分なのですが、これは先ほどのスケジュールで言うともっと後になるのかもしれないけれども、1ケースワーカー当たり4つとるとか5つとるといった場合の選び方の合理性というか、妥当性、そういう部分を本当に丁寧に丁寧にしていただく必要があるのではないか。
それは前回、すごくいい資料ではあったのですが、全国のケースワーカーと研修会、研修に来ていただいたときのあれがありますね。大切な、初めての資料でもありますので、そういう部分についてもそれぞれの先生方の専門的なことをお聞きして丁寧にやっていただきたいなと。現場の人たちはお忙しいでしょうし、御負担をおかけするということから注文がしにくかったりすることもあるかもしれませんけれども、せっかくのデータからということです。
ほかにもあるのだけれども、また後でお話しします。
○駒村部会長 まず、7ページの表は、スケジュール感としては、大体6月以降11月までの間にやられている。これは確認です。
あとは、今、栃本委員がおっしゃったように、世帯の選び方にバイアスがないようにという趣旨だと思いますが、この辺は事務局からいかがでしょうか。
○村木保護課長補佐 栃本委員から調査対象の選び方の合理性について御質問がございました。これについては、ケースワーカーが被保護世帯の住宅に家庭訪問するという訪問計画を立ててございまして、7ページに書いてありますように調査対象を調査期間に訪問する世帯とすれば、選び方に恣意性が入らないため、バイアス無くできるのではないかということです。
また、なるべく負担がかからないようにということもございますので、ケースワーカーのほうで賃貸契約書を確保している範囲で、その内容からわかる項目はそこから書き、わからない部分は訪問の中で確認するという形をとることで、負担なく実施できるのではないかということで、このような方法で御提案をさせていただいているところでございます。
○駒村部会長 どうぞ。
○栃本委員 その際、被保護世帯の世帯類型別、いろんな世帯類型がありますし、あと年齢とかありますね。そこら辺について、縦と横でやると、濃淡が出ないようにしなければいけないというのもあると思うのです。そもそも生活扶助基準を定める際に幾つかの構成要素でもって定めているわけだから、そういう意味では、世帯類型であるとか、年齢であるとか。ただ、御負担をおかけしないようにするという前提の上で、世帯類型ごとに対応したというか、それらしいデータというのが、十数万事例とれるということなので、数的には大丈夫なのかもしれないけれども、そこら辺も工夫していただきたいなと思いました。
○駒村部会長 ほかの委員からいかがでしょうか。岡部委員、お願いします。
○岡部委員 貴重な資料を提出していただきありがとうございます。
私は、22ページの「《参考》最低居住面積水準を満たす世帯等について」と、その次の都道府県別の割合を出されている箇所は、とりわけ非常に参考になりました。
その上でお尋ねしたい点は、最低居住面積水準を満たす世帯等についてと、その設備が満たしているかどうか、ある意味では機能の問題についてこの中でお示しをしていただいていると考えます。そこでそもそも何をもって「最低」としているのかについてを御説明していただきたい。
例えばこれは国土交通省の最低居住の水準を使われているがそのことに同意していただければ結構です。
その上で確認ですが、今後調査をするに当たり、またはこれまでの調査の中で、住宅扶助の基準は、規範的な概念である憲法25条の健康で文化的な生活の住居の側面から基準を設定していると考えますが、ここで言う住宅扶助基準の最低限は、最低居住水準という国土交通省の政策判断にのっとっているのか、いないのかについてまず確認をさせて下さい。
その上で、後でまた意見を述べさせていただきます。
○駒村部会長 では、今の点について事務局からお願いします。
もし関連する話があれば、園田先生から今の最低居住水準の定義と意味について、ちょっと御解説いただければと思います。
○園田委員 私の知っている範囲で。
22ページの下の注書きのところに書いてありますけれども、日本では1965年から住宅建設計画法という法律があり、2006年に住生活基本法という法律に切りかわりまして、それと同時に国全体で住生活基本計画、各都道府県で住生活基本計画をつくるようになっています。
今の御質問の件につきましては、国全体でその中で最低居住面積水準として、居住人員に応じて最低限確保すべき面積水準という基準が決まっています。それ以外に誘導居住面積水準の都市型、一般型という形の水準があります。都市型というのは主に都市部の集合住宅で居住する前提。一般型というのは戸建て住宅に居住する前提で面積水準が決まっています。
もう一つ、設備水準は、22ページの一番下にあるのですけれども、専用の台所、水洗トイレ、浴室、洗面所を自分の住戸の中に有していることを現在では最低基準としています。歴史的な経緯では、例えば水洗トイレは、以前はマストではありませんでしたし、専用の浴室も住生活基本法制定以前は何回か見直しが行われています。当時は「最低居住水準」と言っていたのですけれども、専用の浴室は必須要件ではなかったのですけれども、日本が豊かになるにつれてそういう水準が見直されて現行の考え方に至ったということだと思います。
○駒村部会長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 今の御説明でよくわかりました。住宅扶助基準というのは、住居のミニマムですので、生活保護の基準の住宅扶助基準は、住居のミニマムをクリアしているということが必要です。
そう考えたときに、広さであるとか、部屋数であるとか、あるいは台所であるとか、洗面所であるとか、そういうものがどの程度具備されているかというものが目安としては出されている。生活保護の方にアンケートをとるときに、そういう面積や機能を前提に調査票ができていると私は読み取ったのですが、そうなったときに、最低限の基準で最低限になったときに、それが地域の住宅の市場価格の中で妥当性を持っているかどうかが次のステップになると考えます。1つは、住宅の質といったときに、広さであるとか機能の問題がどの程度保障されているか。もう1つは、それが金額として妥当性を持っているかどうか検証する必要があると考えます。
厚労省が御説明された資料は非常に有益で、これがそこに正確に示されているかどうか精査しなければいけないと考えます。
長くなって申しわけないのですが、次に御質問があったことで、1点目は、家賃の妥当性について、家賃の妥当性の目安はある意味ではマーケットの中で決められて、もっと言うと大家の言い値で決まっている。そう相場が決まっていることに関して、地域の中でこの住宅の水準であるならば、その目安が出せないのかどうか。
2点目は、住居が非常に不安定な方が住宅を設定するに当たっての初期費用と、住居をそのまま継続するときの更新料、転居するに当たっての敷金・礼金が妥当性を持っているかどうかという点も検証して頂きたい。
3点目は、資料の中で出されていた[その他]というところの論点になってくることです。高額な家賃を搾取するいわゆる貧困ビジネスに対しての対応策に関してです。具体的には、簡易宿泊所での家賃設定、あるいは最近出てきている第二種の社会福祉事業である宿泊所では、ある意味では住宅費以外のコスト、食費であるとか管理費であるとか、あるいは対人サービス料も含めて住宅費に乗せている、あるいはそれ以外の費用を取っているということがあります。私の考え方からすると、住宅の適正な値段として住宅扶助を設定すべきであって、それ以外の対人サービスコスト等は別立てで考えるべきではないかということです。[その他]の議論の中でどうしても入り込んでくるので、そもそもの最低居住水準に見合った住宅扶助の設定といったときに、いわゆる対人サービスコスト等についての峻別を考えていただければと考えます。
以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
3つありましたので、最初の質のコントロールは、議論としては、質のコントロールをした推計式で、ヘドニック的なアプローチでちゃんと説明できるかどうかというのがあるのだろうと思います。
それから、更新とかそういう費用の扱いはまた議論しなければいけない。
○岡部委員 そうですね。この中には入っていないのですけれども、住宅扶助の中に入っていますので、そこは俎上にのせていただけないかということです。
○駒村部会長 最後の対人サービス部分、[その他]の話は後半に入ってくると思いますけれども、会計検査院のレポートも、上限に張りついている理由、割増でほかの人よりも取っている理由は一体何なのかとか、そういう特別な配慮、その分がプレミアムとして乗っかっているかどうか。この辺も議論しなければいけないと思いますが、岡部先生のほうからは、財政制度等審議会で出されたような、単に基準額と平均値の比較を質のコントロールをしないでやるのではなくて、やはり質を細かく整理して、さらには価格を左右する質の構成要素も抽出すべきであると。考え方としては、事務局のクロス集計はいいとしても、今回と次回議論しなければいけないのは、何を説明するファクターとして入れていくのか、クロス集計はこれでいいのかどうかということを詰めなければいけないと思います。
山田委員、お願いします。
○山田委員 岡部委員並びに園田委員の後ほどのメモと重なるところも多いかもしれませんけれども、1つ問題提起として4ページに財政審の資料が挙げられています。住宅扶助基準の水準で住宅扶助基準額と一般低所得世帯の家賃額の実態を比べて、住宅扶助のほうが2割高いと書いてあるのですが、これは意図的なミスリーディングを導く比較であって、非常にまずい比較だと考えております。
住宅扶助基準額は住宅扶助の上限であって、いわゆる最大値なわけです。
一方で、一般低所得世帯の家賃というのは、ミニマムを考えないで、いろんな質のものがまじったものの平均値なわけです。ですから、2つ問題があって、左側は最大値で、右側は平均値を比べていること。これは統計学的にちょっとおかしな比較であって、あまり意味をなさない比較だということが1点目。
2点目としては、岡部委員からの指摘もありましたし、一般低所得世帯の家賃実態の中には最低居住面積水準などを満たさないものもたくさん含まれていて、そういったものの平均をとっているということで、また問題がある。2つの意味でこれは非常に問題がある、ミスリーディングな図と言えるのではないかと思います。これはこちらの省が用意したのではなくて、財政審が用意した図ということですが、非常に問題がある比較だと考えています。
その上で、これからいろいろな統計を使って住宅扶助について見ていくということは悪いことではないと思うのですが、ただ、2割違うということを出発点とするというこのグラフは、非常に意図的なミスリーディングですから、そのことについては改めてコメントを申し上げたいと思います。
その上で、どういったことをやっていくかという基本方針なのですけれども、1つは、住宅扶助というのは居住水準のミニマムを具現化したものですから、低所得層の平均家賃というものを参照するのは問題があって、あくまでも居住水準、ミニマムを満たした中での住宅費用、家賃の分布というのを見ていかなくてはいけないということで、住宅・土地統計調査を使ったものでは、あくまでも居住水準のミニマムを満たしているかどうかを基準にして家賃の分布を見ていただきたいというのが1点目になります。
2点目については、生活保護受給世帯の居住実態に関する調査で、これも前回か前々回に議論があったと思いますけれども、無低などで提供されているサービス部分をどのように評価するかといった場合に、サービス部分に関する何らかの情報というのはどこかから持ってこなくてはいけないというので、そちらについても考える必要があるのではないかということです。
栃本委員から出ましたサンプリングの問題については、地方に行くと供給自体が少ないので、同じ比率でサンプリングすると、地方の物件が非常に少なくなるという可能性もありますので、そこら辺を考慮したサンプリング。単に平均的に同じ率を与えるのではなくて、少ない物件については、より多くの情報が得られるようなサンプリングを考えておく必要があるというのがもう一つの意見です。
私からはとりあえず以上です。
○駒村部会長 どうぞ。
○栃本委員 岡部委員が、先ほど住宅扶助が我が国の国民生活における最低というものの内実だというような感じでおっしゃったと思うのですが、一般的にはそう言うかもしれないけれども、住宅扶助がもともと上限額というか、ああいう価格で出されて、なおかつ実費として使うという形になっているのは、他の扶助とはある意味では違うということだね。そういうふうに考えた場合、果たして住宅扶助における最低というか、そういうものが実際に我が国における住宅という観念の中での最低の基準というか、コンテンツを示すものかどうかというのは疑問だと思うのです。
戦後、公営住宅法でもそうだけれども、そういう中で考えるべきものだったわけだから。というのは、なぜかというと、6月、7月とか11月で住宅扶助についてどうあるべきか、そして今後かなりこの部分が拡大するということも想定されるわけだから、そうすると、かなり重要な議論になってくると思ったので、それについてはまた議論しましょうよということ。
つまり、生活保護制度の生活扶助とかいろいろあるけれども、住宅扶助そのものをもって、それの中身、最低基準をコンテンツ的に定めて、それが我が国における住宅の最低というものを示すある種のスタンダードにするというのは、なかなか難しいと思うのだね。
○駒村部会長 かかわる話ですね。それに関する話は園田先生からメモも出ていますので、阿部さんにはちょっと待っていただいて、今のところに集中して、住宅扶助の質的、ミニマム的な性格についての議論を深めておく必要があると思いますので、お願いします。
○岡部委員 私がお話をしたのは、生活保護法というのは、第1条の憲法25条を具体化していると。その中で2つの役割を果たしている。憲法25条の最低生活の保障をする。最低生活保障というのは、以前ですと7つの扶助で保障する、今ですと介護扶助を入れて8つの扶助で行っています。そういう前提に立てばそういう考え方に立ちます。ある意味では規範的な概念から導き出すと言えるでしょう。
本質的なというか、どういうふうに考えるかというのは、もう少しいろいろあろうかと思います。しかしここで住宅扶助基準の水準とか質をどういうふうに担保するかというところの一つのメルクマールを決めるときに、それはどういう考え方、どういう枠組みの範囲でどの程度の水準を考えるかということになろうかと思います。実態として今おっしゃったことはわかるのですけれども、そういう考え方を出し、議論ができればなと考えています。
○駒村部会長 どうぞ。
○栃本委員 十数万取るとするでしょう。先ほど先生からも指摘があったけれども、その際、他の扶助と違って、満額、7万だったら7万を渡して何とかだというのではない世界で、それと全国消費実態調査との関係で見るということなのだけれども、住宅の場合はまさに実費の部分だから、ちょっと違った動きをしているのを分析することによって、各世帯類型ごととか年齢階層ごとのある種の実態というか、そういうのがわかると思う。だから、そういうことを含めて調査をうまくやってもらいたいなと。
もう一つは、前のケースワーカーの方々に対する調査や、研修が行われた際にアンケートみたいなのがとられていますね。アンケートみたいなもの、つまり、それは霞が関で決めればいいということでもあるかもしれませんけれども、一線のケースワーカーの方々は実務をされていて、どういうところに課題があるか。それは役所の人とか皆さん方は御存じのことなのでしょうけれども、現場、一線のケースワーカーの人たちがどういうことを日々感じられているかということも聞けるようなものにしていただくと、現場のものが反映するので、ぜひそれをお願いしたいなということです。
以上です。
○駒村部会長 ケースワーカーの方に住宅扶助についてのアンケートを行う。
○栃本委員 それはいろいろあるでしょうけれども、ここでどうしてこうしてというのでなくて、そういう機会も使って工夫されたら、現場の課題とかそういうのも大分。それぞれ専門家の方々も御存じではあるのですが、それをある種のデータ化するといったらあれなのだけれども、こういうことがあるのですよということをわかっていただくためにはいいのではないか。
○駒村部会長 その辺はまた事務局と相談しなければいけないのですが、今回の主力は、統計的、客観的な数字を出したいと思っているのですけれども、今の話は、園田先生のほうから提出された資料で特に2つ目のポツあたりがかかわるのかなと思いますので、阿部さんにはちょっと待っていただいて、今の質をどうコントロールして比較すべきなのか、両方とも居住されて面積をクリアした同士で比較するのかとか、いろいろアイデアがあると思いますので、よろしければ資料2、あるいは2ポツの部分を中心に御説明をいただければと思います。
○園田委員 では、私が提出しました資料2で、1つ目の四角のところが今のことに関連している部分なので、そこだけで意見を言いたいと思います。
事務局案を見たところ、既に山田委員が御指摘になったように、統計的な手法の扱いとして少し問題点があるだろうということです。まさにおっしゃったように、4ページの財政制度等審議会のこのデータ自体が非常に恣意的で、一般低所得世帯3.8万円という中に例えば公営住宅も含まれていたり、さまざまなものが入っているので、そういうことをなしに比較してしまうのは問題があるだろう。
そうすると、それと同じ問題が、住宅統計調査の再分析についてもいえます。住調の分析について、今回一般世帯の中の低所得の人たちの家賃とか住宅水準を見ますということが提案されていたのですが、前回も申し上げましたけれども、4ページの住宅統計調査は350万戸というサンプル調査ですが、集計をとるときには重みをつけて、全数に換算してこのデータを取り扱うというのが一般的です。データの精度としては、余りクロスをかけると市町村単位でもちょっと問題があるかなというぐらいのサンプル数なのです。とはいいながら、この住調のデータ中、生活保護世帯99万4,000世帯、約100万世帯が民間賃貸住宅に住んでいるということは、日本の民間賃貸住宅のマーケットの5%が生活保護世帯なのです。20軒に1軒。ですから、そこの部分のバイアスがそもそも住調にはかかっている。そのことを含んで一般世帯はこうですと言ってしまうと矛盾があるので、そこのところは気をつける必要があるだろうということです。
ですから、何回も申し上げますけれども、日本の場合には最低の居住を保障しているのは公営住宅ではなくて民間の賃貸住宅だということを前提にしなければならない。そこが民間賃貸住宅市場の20軒に1軒相当、5%あるということを忘れてはいけないと思うのです。
もう一つの問題点は、14ページからのクロス集計、住宅・土地統計調査もそうですし、それから今回生活保護世帯について、ケースワーカーを通してとるというデータもそうなのですが、全てとは言いませんが、横軸のところが世帯型に応じて住宅が確保できているかどうかとか、世帯型に応じて家賃水準がどうかということになっているのです。けれども、実はそれは非常に相対的なものです。日本の一般的な低所得と言われている人はどのぐらいの住宅に住んでいて、どのぐらいの家賃分布かということは、確かにこのクロスでわかるし、つかみはできるのですが、今、問題になっているのは住宅そのものの家賃が妥当かどうかということなので、極端に言うと、住宅を私が借りようと、生活保護世帯の人が借りようと、普通のマーケットであれば同じ家賃なわけです。
ですから、追加提案を矢印のところに書いたのですけれども、「ナショナルミニマム」の住宅水準を一定にして、その家賃分布をみればよいのではないか。とはいいながら、先ほど岡部先生から御指摘があって、私が回答したように、住生活基本計画の最低居住面積についてナショナルミニマムかどうかというのは、栃本先生がおっしゃったようにずっと議論があります。
しかし、皆さんの頭にぜひ入れておいていただきたいのは、それがナショナルミニマムとは言えないと言っていた時代は全部右肩上がりの時代で、住宅の数が圧倒的に足りない時代に何とか屋根を確保しようという議論だったということなのです。
もうすぐ直近の2013年の住宅・土地統計調査の結果が公表されますけれども、どのぐらいの空き家率で出てくるかということです。現状では、完全に需給状況が逆転していて、もはや住宅が足りない時代ではないのです。住宅の質を一体どういうふうにするのかというのを初めて本格的に議論できるので、そういうことも念頭に置いて、ここではとりあえず仮置きでも結構ですので、住宅水準は仮に最低居住面積水準プラス設備の部分をパラメーターにして、それに応じて家賃の分布がどうであるのかということを見ると、物に対する家賃の広がり方がわかるということです。
そのときにもう一つ重要なのは、クロス集計をかけるときに、これまでの資料を拝見すると、昭和38年に決まったもので、1級地、2級地、3級地という地域区分なのですが、要するに、家賃というのは利便性、土地の利回りとか、そういうことに左右されていますので、今の生活保護の住宅扶助上使っている1級地、2級地、3級地という区分自体が妥当かどうかというところまでさかのぼって考えなければいけない可能性が高いと思っているのです。だから、クロス集計をするときに、どういう軸で住宅水準と分布をとるのかということをよく考える必要があります。
もう一つは、世帯類型のところも驚いたのですが、1人、2~6人という区分が今の生活保護上の区分なのですけれども、これは実態からわかっているように、生活保護世帯のかなりの部分が1人世帯で、しかも2人も多い。そういう世帯が大宗を占めているときに、1人、2~6人という区分自体が本当に妥当かどうかというかなり根本的な問題がある。住宅水準に応じて家賃分布をとるのですけれども、クロス集計のときの軸の立て方をどういうカテゴリーでクロスするのかという極めて統計的なこと、そこをきちっと考えてとることによって、今の時代で言うエビデンスに即した議論ができるのではないかと思います。
もう一つ、生活保護世帯の方に対する調査も、まず生活保護世帯が今、言った適正な住宅水準が確保できているのかどうかということと、その方たちの住宅水準の分布がどうであるかということから現状がわかります。そのときの住宅水準が最低居住面積水準以上の場合の家賃分布と以下のときの家賃分布というふうに比較して、住宅の属性のカテゴライズがちゃんとできて、家賃分布がどうなっているのかという関係を見れば、かなりのことがわかるだろうと思うのです。
最後に1点。いわゆる貧困ビジネスかどうかということもある程度の検証が可能ではないかと思ったのです。貧困ビジネスというのは、必ずしも悪いものばかりではないということで、仮に同じ住宅水準のものを置いたときに、一般世帯の人が借りている家賃分布、同じ水準のものを生保世帯の人が借りている家賃分布というのが同じ地域でとれたときに、仮に生保世帯の払っている金額のほうが多過ぎるということがあれば、実は生保世帯の人たちは過払いしているか、あるいは一般の人が借りられる金額では貸してもらえない別の理由があるということですね。
その原因は何なのかというと、その人に信用力がない。お金のほうは住宅扶助で出てくるのだけれども、それ以外の部分で信用力がない部分が実はそこの金額になっている可能性があるというような類推が立つわけです。
そのときに、よい貧困ビジネスと悪い貧困ビジネスというのは変な言い方ですが、それをどこかに持っていってしまうと悪い貧困ビジネスだけれども、結局、その人たちの持っていない信用力の部分、例えば関係資本の部分を人的な対応、先ほど岡部先生がおっしゃったようなところで実は誰かがサポートしている可能性もあるわけです。
なので、私としても、かなり住宅統計に携わってきた立場から言うと、ある意味ちゃんと理論的にも乗っかった作業をしていただいて、フェアな議論ができるといい。それが言いたかったことの1つ目です。
○駒村部会長 価格差のところは非常に丁寧に今の議事録を後でチェックしてもらったほうがいいと思いますが、まさにおっしゃる部分はよくわかると思います。
この部分は全消でも同じ話になったわけですけれども、住宅・土地統計調査の中で生保世帯そのものがまざっているというか、抽出できるかどうかなのですが、それだけの情報量がないと結局、ループ計算みたいになってしまうおそれがあるわけです。この辺をどうしていくかという園田先生の1番目の指摘。
2番目の指摘は、先ほどの栃本さんや岡部先生の発言との絡みで言うと、住宅扶助が保障すべき最低居住水準というのが現状どうなっているかというのと、それがミニマムであるべきだと。これはそういう評価をするかどうかで後でクロス集計にかかわってくると。
あとは、先生おっしゃったように、供給過剰な状態になっている一方で、質の上昇も一方であるわけですけれども、改定にもこれは多分影響を与えてくるのだろうなという御指摘があったと思います。
特に園田先生の1番目の辺について、事務局からアイデアはありますでしょうか。
○村木保護課長補佐 住宅・土地統計調査には生活保護を受けているかどうかという項目がございませんので、そこは抜くことができないということであります。先ほど園田委員から、一般世帯の人が借りる場合と生保世帯の人が借りる場合とで、例えば信用力の問題などで家賃額に違いが生じる可能性があることについてお話がございましたが、そういった点を検証することで、その違いがない場合とある場合とで一般低所得世帯の中の生保世帯をどう捉えるかといったことが変わってくるかと思いますが、検証の中で、調査に含まれる生保世帯を考慮するのは非常に難しいということです。
あと、るるお話がございましたが、そもそも基準として、一般低所得世帯との相対的な水準で見ていくのか、最低居住面積水準などの一定の住宅水準を見ていくのかということもございますので、その整理が前提としてあるのではないかと考えます。
○駒村部会長 園田先生から今の点について。
○園田委員 私はそんなに難しいことを言っているわけではなくて、できることを申し上げています。住宅の水準を一定にして、住調でどういう家賃分布になっているのかというのを見ればいい。生保世帯の人の住宅について今回調査されるわけなので、それの水準を同じカテゴライズで設定して、同じ場所で幾ら支払われているのかということを見ればいいので、人の問題は全部捨象して分析したほうがよりクリアなデータが得られますという、極めてできることで単純なことを申し上げているのです。
○村木保護課長補佐 その点については、技術的には可能かと思います。
○駒村部会長 では、阿部先生、お待たせしました。
○阿部委員 重なってしまうところも多いかと思いますけれども、私のほうから意見を述べさせていただきたいと思います。
1点目の点は、先ほど山田委員のほうから御指摘があった財政制度等審議会の1つ目の一般世帯との比較というところで、私も非常に問題と思っておりますので、そこについて発言させていただきます。
以前、生活扶助の基準値のときに全国消費実態調査を使ってこのような形の検証をしたわけです。なぜそれをしたかというと、生活扶助のほうは一般世帯の消費実態の何%という形で決められるべきだというものがあったからしたのです。もちろん、一般世帯の中では貧困世帯が多くて、最低限の生活を保障できない方々も多くいるという御指摘もありながら、そのような検証をしたわけです。
ただ、今回は、住宅扶助に関して私たちがその比較をする必要はないと思うのです。なぜかといいますと、先ほど何人かの先生からも御指摘がありましたように、国交省が最低居住水準というのをつくっているからなのです。
実際にこれが満たされていない方々も今、日本の中にはいらっしゃいますけれども、国の方針として、国交省がそれ以上の誘導水準というのもつくっていますが、そちらのほうに持っていきましょうという方針があるわけです。なので、私たちは、では、ミニマムはどこかというのは、ここをベースにするしかないなと思うのです。
それ以外のラインをどうやってこの生活保護基準部会でつくることができるのかということなのです。それは多分できないと思います。住宅の専門家でもないですし、これについてはそれなりの住宅の専門家の方々がいろんな議論の上つくった。
ですので、私たちが見なければいけないのは、生活保護の世帯がどれぐらいこの最低居住面積を満たしているか、満たす住居に住むことができているかという視点であって、それは一般世帯の方との比較ではないはずだと思います。
その上で、ほかの一般の世帯の方々が払うよりも多くのお金を払わなくては最低居住面積を満たせないのだということ、先ほど園田先生がおっしゃったような、生活保護であることによるペナルティーみたいなものがつくのであれば、それをつけているのは、あくまでも大家さんのほうなのです。家賃は生活保護者のほうで決められるものではなくて、何がマーケットでアベイラブルかという形で選びますので、それのペナルティーを被保護者の方に負わせるというのは本末転倒ではないだろうかと思います。
また、考慮しなければいけないのは、家賃というのは継続性があるものなのです。食費のように、きょう行ってそこのレートのものを買うというものではなくて、ずっと何年も前から住んでいるといった継続性の中で家賃も決まっていますし、昔、安いところに入れて、そこにずっといられるというような継続性もあると思います。
では、この家賃を下げろと言われたら、急に動けるのか。特に高齢の単身の方などは、社会的な排除という意味からでもそこの場にい続けるというのが非常に重要だということもあるかと思いますので、そうした場合には、もし生活保護の方々がそのようなペナルティーみたいなものでエクストラの家賃を払っているのだとすれば、そこはなぜなのか。
そこで、先ほどの生活保護世帯に対する調査でぜひ聞いていただきたいのが、生保がかかる前から同じところに住んでいるのか、生保がかかってから家賃が上がったのかということなのです。もし本当にあるのであれば上がっているはずです。上がったのかということ。では、生保にかかる前と違うところに住んでいるのであれば、その住居をその家賃で見つけたときにどのような問題があったのかということを聞いていただくほうがむしろ重要なのではないかなと思います。
私はそれほど多くは経験がないですけれども、生活保護の方々の聞き取りなどの話をしますと、生活保護者ということでアベイラブルな地域がもう決まっているということがありますので、その地域で借りることを余儀なくされるというような実態があるのかもしれないということです。ですので、そこを聞いていただきたいということ。
先ほど山田委員がバイアスの問題をおっしゃいましたけれども、家庭訪問時に聞かれるということですが、その月の家庭訪問の全数調査ということは徹底していただきたいと思います。何らかの全数調査です。ケース全体、10軒の中で2軒出してきましたみたいな形であれば、絶対そこに恣意性が入ってきてしまいます。そうしますと、どうしてもぶれがあるものですから、上のほうのぶれのものをとるのか、下のほうのぶれをとるのかというのと平均というのはまた違いますので、ここは全数ということにこだわっていただきたい。
私がもしこれを設計するのであれば、多少お金はかかるかもしれませんけれども、全国的に地域を選んできて、その地域の中の全数調査をします。ですので、これはケースワーカーの方ができる範囲のものではないかもしれないですが、国の統計情報、厚労省の国民生活基礎調査などでもそうですけれども、調査単位区を選んできて、その中の全数調査をするほうがよりバイアスのないものができるのではないかなと思います。
○駒村部会長 道中さん、お願いいたします。
○道中委員 私のほうから意見として2点ございます。
1つは、貧困ビジネスのお話にもありましたし、さまざまな形で生活実態が生活の最低居住水準とは随分違う世界で動いてきています。それはとりもなおさず住宅政策からこぼれ落ちた人たちがそういったニッチの世界に追いやられているのだということで理解しています。支援を必要とする人たちはしばしば通常の賃貸借契約になじまない対象者であることが多く受け入れてもらえない。そのため貧困ビジネスでの悪質不良な集合住宅へと追いやられてしまうということなのです。
では、契約という概念で、契約当事者がいらっしゃるわけですから、財政のほうで出されている2割高ということで、その2割は、実勢の価格としては当然リスク負担を家主側が負うわけです。敷金もない、人的保証もない、家賃の滞納リスク以外のさまざまな生活の課題を抱えている方々が非常に多いわけです。契約当事者の大家さんは、当然トラブルとかそういったリスキーな人たちを回避したいですね。それは偏見もあるかもしれませんが、そういった人は信用力の点からもハイリスクということになりますので、通常の一般の方に入っていただくということになります。入っていただくというからにはは、多少は危険負担の部分を家賃という形でそちらにかぶせるというのが市場の現実と考えます。
阿部委員のほうは「ペナルティー」とおっしゃっていましたが、ペナルティーは払う側ですから、当事者である店子の本人は負担感はないわけです。保護受給者の方はもらって払うのですけれども、その金額の多寡に関係なく、公費で支払われるわけですから、そういう要素はあまり関係ないのかなということがあります。要するに家賃額の決定には、被保護者の負担感がなく牽制作用が働いていないことが問題なのです。
そういった意味で、強いその他の要素がパラメーターのように入らないところで実勢価格が動いているということです。債務不履行事態に入ってどう対応するのだと言えば、そのときは敷金が動くわけですけれども、敷金も取っていないし、さあ、どうするのだといったら、また人的保証もないし、次の段階はどうするのだということになったときに、家主の相当な負担がある。その負担の回避のためには、多少高いということも市場原理としては当然だろうと思います。そういった部分や契約に際して当事者の牽制が働いていないところが少し気がかりだということです。
一方、貧困ビジネスで、そういう形の契約がどこまでが適正価格なのか、あるいは不当な利得を得ているのかというところは、市場に介入することとなり、行政で適正化誘導するのはなかなか難しい部分があるのかなと考えます。それが1つ目です。
2つ目は、金額と質保証の関係という絡みの中で、金額は別にして、実は生活保護の方法としては、居宅の場合と入所の場合があります。質の段階でいくならば、施設入所の場合の入所する部屋の広さとかそういったところにも影響が随分と及ぶものと考えます。たしか保護施設の場合の基準は、3.3平米というような、非常に狭隘きわまりない入所者の施設基準であります。質を言うならば、施設保護のそういった平米とかその辺も少し整合を図っていく必要があるのではないかと思います。
というのは、高齢者の施設とか児童とか、あるいは生活保護の救護・更生とか、そういう社会福祉施設においても随分と格差があり不整合な部分が出ているように思います。
そういうところで、金額以外の質を言うならば、現に居住されているということですので、少し土俵が外れるかもわかりませんけれども、そういう部分も少し頭の片隅に置きながら検討を進める必要があるのではないかと考えます。
以上です。
○駒村部会長 住宅市場の特殊性を少し考慮しておかないと、18ページの推計式で、これは山田先生が得意かもしれませんけれども、2つのグループで推計して、例えばaは有意に差があったとか、あるいは一般世帯と生保世帯をまぜて回帰分析して、例えば生保世帯のほうにある種ダミーが有意に出たと。その部分が意味のない加算というよりは、住宅市場における信用度とかいろんなハンディーが出ている可能性もあるので、その部分がけしからぬというわけではない。そのような分析は可能なのでしょうか。
○山田委員 回帰分析自体は可能だと思います。ただ、そのときに注意しなくてはいけないのは、住宅・土地統計調査と生活保護受給世帯の居住実態に関する調査をつなげるわけですから、タイムラグが発生するのをどういうふうに考えるのかというのが1点です。要するに、タイムラグの発生で、本来だったら全然差がないにもかかわらず、差が大きく出たり、逆に差がないというふうに見られるのをどういうふうに考えたらいいのかというのが手法上の問題点としては考えられると思います。
あとは、そういうことでマッチングさせるのであれば、生活保護受給世帯の居住実態に関する調査についても比較可能なように、質問項目なども同じ質問項目で、同じ並びで細かく精査していく。調査票の違いによって変な差が検出されないように非常に細心の注意を払う必要があると考えております。
○駒村部会長 岡部先生、どうぞ。
○岡部委員 そもそも論の話になりますが、住宅の質を見るときに、社会関係であるとか、あるいは住宅を借りるときに人の問題とかお金の問題、要するに、初期費用に当たるような敷金・礼金、保証人がつけられるのか、つけられないのかということは住宅に関連しての状況であって、住宅そのものの値段ではありません。住宅関連費用を入れるのか、入れないのかというのは結構大きな話で、これはある意味では貧困ビジネスにつながる問題です。対人サービス等住宅関連費用が住宅費の中にパッケージ化されているところでいろんな問題が生じてくる構造的な問題があります。純粋に面積であるとか設備であるとか、それが適正な価格かどうかということが最低居住水準の話です。オプションをつけて住宅を見ていくのかどうかというのは住宅扶助の次のステップの課題ではないかと考えます。
ですから、先ほどの話と関連して、調査票の中でそういう項目を聞く、なぜここだけこんなに値段が上がっているのかというのを見ることはできるかもしれません。そもそも先ほどの最低の居住水準とは何か、住宅の質をどこまで担保するかに対人サービス等住宅関連費用は入ってこないのではないか。それは対人サービスのコストであるとか、あるいはほかのサービスで考えることではないかなということを意見として述べたいと思います。
○駒村部会長 これは後で整理したほうがいいかもしれないです。今、2つの話が入っていて、1つは賃貸住宅の市場の中で生活困窮を持っている人全般、あるいは社会的な関係資本が弱い人全般が不利に扱われていることによって発生しているプレミアム部分を今、住宅扶助が吸収しているのではないかという部分と、それからサービスにかかわるコストの部分の話がありましたので、そこら辺は少し整理したほうがいいと思います。
ただ、調査項目については、継続の敷金・礼金等々のこともきちんと留意しなければいけないということだろうと思います。
阿部先生、お願いします。
○阿部委員 検証手法の1から4のあたりでクロス表のところですけれども、これは一体何を言いたいのかというのがちょっとよくわからないというところもあるのです。というのは、先ほど園田先生のほうから級地の区分が妥当ではないのではないかというお話もありましたが、そのほかに世帯類型、2~6人の一般世帯がどういうところに住んでいるかというのを知って一体何が言えるのかというのがすごくわからないのです。
というのは、私が昨年度と昨々年度ぐらいの間でミニマム・インカム・スタンダード、こちらの部会でも前に紹介したことがありますけれども、それをやっていたときにも、家賃というのはどういう理由でそれぞれの家庭が選ぶのかというと、例えばお子さんがいるところでは、学校の近くとか公園があるとか、働いている方がいらっしゃる世帯であれば、駅から近いこと。深夜労働になることもあるからバスでは行けないので、駅から徒歩で行けるところとか、自転車で通えるところとか、いろいろな条件があるわけです。
一般世帯でこういうのをつくっても、一般世帯での平均的な世帯のニーズをあらわしているだけであって、それと被保護世帯の価格が幾らであるべきかというのは直結して言えるものではないのではないかなと。
本当にやるのであれば、この世帯で言えば、すごく細かく切っていけばそういうことができるのかもしれませんけれども、こちらの個票データはそれほどサンプル数があるわけではないので、そこまで詳しく区切っていってこのような表をつくるというのは、どのぐらい意味があるのかなと思います。
○駒村部会長 住宅の場合はまさに個別の事情がたくさんあるわけで、特に男性と女性では、女性のほうが安全重視で高い家賃、利便性、安全性を重視しているという話もありますから、その辺をどういうふうに考えていくのかという提案ですけれども、ただ、検証手法、先ほど園田先生がおっしゃったように、質をコントロールして、そちらから逆に比較していくというやり方も提案されています。
作業上は、次の5月30日の会合ではどういう分析方法が両グループ、要するに、財政審が出されたこういう形だけでは専門的、技術的な検証とは言えないわけですので、今のところも踏まえて、どういう比較方法をすることによって基準として設定できるかということをやらなければいけないので、もしあれでしたらアイデアを出していただければと思います。
○阿部委員 先ほど園田先生がおっしゃったことを間違って解釈していたら直していただきたいのですが、おっしゃっていたのは、誰が住んでいるかということはそれほど重要ではなくて、どういった物件がマーケットでアベイラブルなのかということが重要なのですね。だとすれば、地域はもちろんありますけれども、例えば検証の5は、誰がということはそれほど関係なくやっているわけですね。回帰分析でやるもの。
○駒村部会長 そうですね。
○阿部委員 なので、1、2、3、ここら辺の世帯類型別というのを詳しく見ていくというのがどれほど意味があるかということですね。結局、御老人の方でどこにも行く必要がないのであれば、駅から遠くて、バスでしか行けないようなところに安い家賃で住んでいるというのと、今、どれぐらいの家賃設定をそこの基準値とするべきかという話はまた全然別の話だと思うのです。
マーケットのほうの分析をするべきであって、誰がどういうところに住んでいるのかという分析をするのは余り意味がないのではないかなと思います。
○駒村部会長 お願いします。
○園田委員 私が申し上げたことも今、阿部先生がおっしゃったことと同じことなのです。
もう一つ、今、検証1から4についておっしゃったので、検証5についてもちょっと申し上げておきます。
検証5については、ここで重回帰分析か何かをやるということもあると思うのですが、ビッグデータの時代で、例えば賃貸住宅の世界だと、SUUMOとかネクストという会社などは研究所を持っていて、民間の賃貸住宅経営の分析をやっていて、どういう係数でどういうふうにして家賃が決定できるかというノウハウがあるので、あえてここでやらなくてもそういうやり方が複数あると思うので、そこから見てみるということも必要だと思います。
本当にやるのであれば、先ほど阿部先生がおっしゃったように、地域を限定してということであれば、GISという地理情報システムを使えば、一戸ずつの住宅にフラッグをつけて、それの家賃が幾らであるかということを統計解析することはものすごく容易にできます。
ですから、コストパフォーマンスと時間ということを考えると、どういう統計のとり方、処理の仕方をするのかというのを、次回が決定だと思いますので、この間検討していただく必要があるのかなと思います。
○駒村部会長 その辺の地理データの使い方とか民間マーケット、どういう形のものが出ているか、この分析もやってはいけないとは思いませんけれども、今、既にマーケットベースで似たようなことがやられていて、それは当然チェックしなければいけないわけですが、事務局にそういうアイデアを出していただきたいなと思います。
次回まで2週間ぐらいしかないので、そういう意味では時間がなかなかタイトだと思いますけれども。
お願いいたします。
○園田委員 ペーパーでまだ言っていないことを2点申し上げたいのと、あと、道中委員の御指摘でもう一つ重要なことがあります。実は、最低居住面積というのは「住戸」を前提にしています。一方、日本の面積水準を言うときには「居室」を前提とする基準があります。長らく「住戸」の面積水準は国交省が所管していた。「居室」というのは、専用の居室ということです。部屋の広さです。ですから、その中で生活が完結するわけではなくて、それ以外の廊下とか共用部分とかがくっつかないと生活できない。一人当たりの居室面積は厚労省の基準があって、ちょっとうろ覚えなのですが、私が調べた限り一番小さいのは、旧労働省、労務上の飯場みたいなところだと思うのですが、それが2.5平米、それから介護保険の関連の施設で認知症のグループホームが四畳半相当で7.43平米です。特別養護老人ホーム等の個室は13平米でしたが、民主党政権のときに縮められて六畳相当の10.65平米だと思うのです。
居室の面積水準というのは別のそういう取り決めがあるので、「住戸」という暮らし方と、「居室」は専用面積だけれども、それ以外のサポートや、共用空間を使って住む住み方はスタイルが違うので、面積を扱うときにもそこのところを留意する必要があるだろうということです。
時間が押していると思うので、資料2で申し上げたかったことを言うと、先ほど山田委員もおっしゃってくださったのですが、タイムラグが発生することの問題はすごく大きいと思うのです。
今回使えるのは、新しい住調が出ますけれども、いろいろデータが足りないということで、2008年の住調でやるということなのですが、5年以上前のデータであるということです。2008年10月ですから、リーマンショック直後なので、完全に経済変動の余波を受けていないぐらいのタイミングだったので、その辺の問題。
生活保護の不正受給等が2年前にかなり問題になったことが今回のこの政策的な検討をやろうということになっていると思うのですが、その時点から既にもう2年以上経過していて、社会・経済状況の変化もすごく大きいと思うのです。政権も変わりましたし、去年は量的緩和ということでバズーカ砲が撃たれたり、この4月には消費税が上がっているわけです。そういう意味で言うと、常に相対的なマーケットをつかまえて解析している間にどんどん実態は変わっていく。
ですから、先ほど阿部委員が分析がどうしてこういうふうになるのかわからないとおっしゃったのだけれども、物的なものは一定にして、それでプライスのほうがどう変わっていったのかというのをきちっと捕捉する。そうすれば、では、どういう保護費が必要なのかというふうにロジカルに詰められると思います。調査時期にかかわらず、一定の物的条件(住宅)のその時々の家賃相場水準を的確に捉えられる手法を開発するということが本来的には必要なのではないかと思います。
最後に1点。もうちょっと先の話なのですが、その他の懸念事項です。先ほど申し上げたように、民間賃貸住宅の5%相当に保護世帯が住んでいて、民間家主が大宗を占めているということなのですけれども、実はこれが大きな問題です。地域によっても違うのですが、関東と関西で商習慣がすごく違ってきていて、例えば先ほど出ていた礼金・敷金の問題が違ったり、今、マーケットが激変なので、ゼロゼロ物件とかフリーレントとか、皆さんお聞きになったことがあると思いますし、更新料を本当に取れるのか、取れないのかということもすごい係争になっていたりする。そういう問題があります。
もっと言うと、仮に民間の家主さんに入る家賃がすごく下がった場合、東京で想定すると、一番古いものは庭先木賃と言って、大きな戸建て住宅の庭先に建てたものが木造密集市街地にあって、そういうものは防災上も問題なのですが、建てかえようと思っても現行法規に合わないので建てかえられない状態のものが一番質の低い民間賃貸住宅のある部分を占めているのです。そうすると、そこで家賃が仮に下がるとなると、恐らく空き家化と放置がすごく進む可能性があって、更新することもできませんし、意味もないですから、家主さんは放置していく。何で放置なのかというと、これは相続税の問題が絡むからなのです。
2つ目は、90年代以降、現在もそうなのですが、これは建築屋さんが悪いのですけれども、資産活用とか、土地活用とかを名目にしたり、相続税対策として建てた賃貸物件が延々とある。
もう一つは、特に2000年以降は、それまでやっていた仕事が立ち行かなくてなって、何か商売をやっていたところが業態転換でアパートを建てて、その家賃収入で食べていくみたいなところがすごく多い。けれども、そういうところで仮に家主さんの収入が下がると債務超過がすごく進むのです。
ですから、何を申し上げたいかというと、今の民間賃貸住宅のマーケットは完全な供給過多ですから、ここでは保護者の方に扶助すべき金額をやっているのだけれども、その後ろには家主さんがいて、そういうことをすると資産デフレが加速するというようなストーリーもあるので、厚労省で議論しているということは、そういう連関も押さえた上でこのことをやっていかないといけないので、何がいいか悪いかわかりませんけれども、一応問題提起ということです。
以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
そうしましたら、まだ続きの部分がございますので、ここで住宅扶助の話は1回打ち切って。
○山田委員 CPIの話が。
○駒村部会長 では、山田先生から簡潔にお願いできますでしょうか。
○山田委員 今、園田委員からもありましたように、その時々の家賃相場を的確に捉える手法の開発が非常に必要で、そのときに考えなくてはいけないのは、家賃のCPIの話が出ましたけれども、平均の家賃変動と低所得層が直面している家賃の変動というのは異なる可能性がありますので、そこの部分についても一度確認しておく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○駒村部会長 これはスライドのところの議論だと思いますので、その辺も事務局のほうで次回の議論に考慮していただきたいと思います。
お願いいたします。次もありますのでシンプルに。
○栃本委員 5月末のときにもう一回事務局のほうで取りまとめたやつがたたき台として出ると思うのだけれども、先ほど来申し上げている全国のケースワーカーの方々に対する調査の組み立てとか、そういうものについても5月末のときには出てくるのですか。
○駒村部会長 この辺はスケジュール感の話にかかわりますので、事務局からお願いします。
○井上保護課長補佐 次回までに詰められるかはちょっと難しいかもしれません。
○栃本委員 ただ、先ほど来申し上げているように、すごく重要であるということ。
もう一つは、住宅・土地統計調査における調査項目の部分の質というか、そこにかかわる部分というのはすごく重要で、家賃相場の形成過程とかはもちろんあるのだけれども、それとは別途、一般のとリファーして、生保で借りている人たちのフリンジというか、台所にガスバーナーがあるとか、その他もろもろというのはすごく重要で、それは質の部分。つまり、絶対的な貧困というよりも、相対化されたものというのは結構重要だからね。ソーシャルキャピタル、住宅を提供する人の諸サービスがあるかないかというのはもちろんわかるのだけれども、それよりももっと基礎的な部分で、単なる空間論だけでなくて、水洗トイレとか、下水道がどうしたとか、さびついているとか、そういうのはすごく重要です。住宅何とかでは選択としてそれがあるはずなんだよね。負担をかけないで、なおかつ工夫したものを出していただけると本当に活用しやすいものになる。それで5月末に間に合うのかなと思っていて、間に合わない場合はどうなるのかな。
○駒村部会長 事務局から作業スケジュールは一応出ているわけですので、間に合わないというわけにはいかないと思うので、その辺は議論を尽くさなければいけないと思うのです。事務局からお願いします。
○井上保護課長補佐 はっきりいつまでに固めるとか御提案するとかいう時期は言えないのですけれども、そもそも新たにやろうとしている調査を今年の7月か8月ごろに考えていますので、当然それよりも前に詰めてお諮りしたいと思っております。
○栃本委員 わかりました。
○駒村部会長 ここでその議論は1回やるべきだということですね。
○栃本委員 はい。
○駒村部会長 わかりました。
時間が本当に押しているので申しわけないのですが、まだその他の扶助の部分がありますので、これについて事務局から御報告をお願いいたします。
○井上保護課長補佐 それでは、資料1の31ページをごらんいただきたいと思います。他の扶助及び加算ということでございます。
こちらのページ以降、生活扶助とか住宅扶助以外の扶助や加算制度に関しまして、検証に係る議論を開始するに当たって、少しでもその材料になればということで、おつけしているものでございます。
31ページは、扶助や加算制度に関して出されております主な意見ということで、こちらの部会の報告書ですとか経済財政諮問会議資料、財政制度等審議会資料におけます該当部分の抜粋を載せております。
基準部会資料のほうでは、「加算制度及び扶助制度についても、統計データの収集方法、検証手法の開発等について速やかに検討を行うべき」とございます。
経済財政諮問会議では、民間議員提出資料でも麻生議員の提出資料でも、冬季加算等の各種扶助・加算措置の水準を検証し、適正化すべき、見直しを実施すべきと言われております。
財政制度等審議会では、最後の2ページに参考でおつけしておりますけれども、有子世帯の扶助加算について、その水準が低所得の一般有子世帯の消費水準を上回っているのではないかとか、水準は母子加算の趣旨であります貧困連鎖の防止や子供の教育機会の確保、そういったこととの関係が不明確ではないかとか、児童養育加算、母子加算、教育扶助基準額、学習支援費の趣旨というのは重複する可能性があるのではないかといったこと。
いずれの加算扶助も現金給付なので、実際の使途は限定されていないといったような指摘がなされております。
冬季加算につきましては、冬季に増加する光熱費の地域差は、家計調査のデータですと2倍弱であるのに、冬季加算は4倍以上の地域差があるとか、冬季加算も使途が限定されていないので、本来の趣旨以外に充てられている可能性があって、見直しが必要という指摘がなされております。
32ページからは、今、御紹介した各指摘に対しまして、この後、御議論いただく材料として今の制度の概要を載せております。
32ページは児童養育加算の概要でして、加算の目的は、児童の教養文化的経費、レクリエーション経費などの特別需要に対応するものとして創設しておりまして、児童手当の効果が生活保護世帯の子供にも等しく及ぶよう、金額と支給対象者を児童手当と同一となるように改定をしてきております。基準額は児童手当の額と同一で、資料に記載のとおりでございます。
33ページを飛ばして、先に34ページを見ていただきたいのですけれども、母子加算についてでございます。母子加算は経緯がございますので、34ページから説明をさせていただきたいと思います。
創設経緯としましては、1人で子育てをする母親に対する追加的飲食物費として創設をしましたが、平成16年の専門委員会の報告書におきまして、「母子加算を含む保護基準は、一般母子世帯の消費水準より高い。世帯の自立に向けた給付に転換すること」と提言されて、平成17年度から段階的に廃止をしてきております。
その後、子供の貧困解消を図るためという趣旨で母子加算が平成21年12月に復活をしております。復活に当たっては、厚労大臣と訴訟の原告団との間で基本合意も取り交わされております。
33ページに戻っていただきまして、母子加算の概要です。ひとり親世帯の保護受給世帯に対して、児童の人数に応じて表にございますような額を支給しております。
例えば児童1人で、在宅の1級地の世帯でありましたら、月額2万3,170円が支給されるという形になっております。
続きまして、35ページは冬季加算の概要でございます。
趣旨は、冬季の光熱費等の増加需要に対応するものとして、11月から3月の5カ月間、生活扶助基準に上乗せして支給しております。
額は、下の1区から6区の地域区分ごとに2類費のように世帯人員別、級地別に金額が定められております。
36ページは教育扶助でございます。義務教育に伴って必要となる学用品ですとか、そういった費用につきまして支給しております。
月額基準額のほかに教材代とか給食費などは実費支給となっております。
この表にあるもののほか、下の※印にございますけれども、入学準備に必要な一時扶助も支給しております。
37ページは、高等学校等就学費の概要でございます。高等学校等の就学に伴って必要な学用品などの費用を給付しております。こちらも月額基準額のほか、教材代、授業料、入学料などを支給しております。
38ページと39ページは、先ほど少し触れましたけれども、参考として財政制度等審議会におきまして、有子世帯の加算扶助と冬季加算につきまして課題提起がなされた資料をおつけしております。
説明のほうは以上です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
では、時間も限られてきていますけれども、皆様から御意見をいただきたい。では、山田委員、岡部委員の順番でお願いいたします。
○山田委員 2つほど意見があります。
1つは、先入観を排していろいろな加算とか扶助を検討していくということがこの基準部会に課せられたタスクだと思うのです。38ページと39ページは財政審が出してきた資料なのですけれども、まず質問なのですが、ひとり親世帯の一般低所得世帯というのは、同じく世帯収入300万未満で切った世帯の中にいるひとり親世帯という理解でよろしいでしょうか。
○駒村部会長 事務局、この辺はわかればお願いします。
○村木保護課長補佐 注書きにあるとおりだと思います。
○山田委員 わかりました。
いずれにしましても、ここも一般低所得世帯と比較しているのですけれども、ここにいる委員、メンバーは御存じのとおり、有子世帯の貧困率というのは先進加盟国の中で非常に高いわけです。特に就労していても有子世帯の貧困率は高くなっている。さらに言えば、就労していても、ひとり親世帯の貧困率は6割ということで、先進加盟国の中で突出して高くなっているわけです。
主な理由は2つあって、これもわかっていることで、子供を持つ一般低所得世帯向けの住宅補助が存在しないこと。もう一つは、家族手当というのがほかの先進加盟国と比べて非常に貧弱なことというのが既にわかっているわけです。ですから、ここはもう一度中立的な目で見れば、一体これが一般低所得世帯の消費水準を上回っていると見るべきなのか、それとも一般低所得世帯の支出が非常に低いと見るべきなのかといったら、どちらかといえば低いと見るべきなのが社会保障の専門家の間では常識です。
38ページの枠囲い「生活保護世帯と一般低所得世帯との間の公平感を生じさせないためにも、有子世帯向けの加算・扶助のあり方・水準については総合的な見直しが必要」ということですが、逆を返せば、一般低所得世帯の住宅補助というのも考えるべきかもしれませんし、家族手当の充実というのも不公平感を生じさせないためには考える必要があるというのが1点目です。
2点目は冬季加算です。冬季加算のところばかりがクローズアップされていますが、実はこの比較についても注意が必要で、人によっては健康等の理由で、住宅で過ごす時間がどうしても長くなる。もしくは疾病等によって寒さに対する感じ方が違うということで、ひょっとしたら光熱費というのは、家に滞在する時間、疾病の有無、疾患の有無によって変わってくる可能性がある。これはそうしたことをコントロールしないで一般世帯の光熱費と冬季加算を比べているので、ここは注意が必要だということ。
もう一つは、夏季にどれほど光熱費が上がるのかということは、夏季加算というのがないので、ここでは議論されていませんけれども、そういったことについても考える必要がある。ひょっとしたら、そういったものを考えると、こうした光熱費というのは地域によって均衡している可能性がある。だから、そういったことも考える必要があるのではないかなというのがコメントです。
○駒村部会長 では、岡部委員、お願いします。
○岡部委員 時間の関係もあるかと思いますので、大枠的な話だけさせていただきたいと思います。
子どもの貧困対策法が昨年制定されて、今年になりまして研究会あるいは検討会が始められました。子供の貧困については、対象層というのは一般低所得層あるいは要保護層と言われている生活保護に当たる子ども達が、養育、教育、進路において不利益を生じている。それを打開する法律です。
ここの中で子どもの貧困対策法がどれだけ具体化するか推移を見守りたいと思いますがその中でそれを解消する方策が、生活保護の中で挙げられている教育扶助であるとか、生業扶助であるとか、各種加算がそれに当たるものです。この点について安倍首相のもとでやられているわけですので、ある意味ではアクセルを踏んでいるときに、もう一方で経済財政諮問会議、財政審はブレーキを踏んでいるみたいな御意見を出されているわけです。
このあたりのところは、生活保護というのは、ほかの制度がない場合については代替したり、補完したり、補充するという性格があるわけですから、他の制度がある程度行っているならば別ですが、そうでなければ、このあたりは慎重に考えるべきではないか考えます。これは生活保護制度の外在的な話です。
もう一つは、生活保護制度の中で各種加算というのは、それぞれの経緯の中で出てきたものでありますから、見直しをして制度間の総合調整していくことを考えてもよいのではないか。これは生活保護の中で考えられることではないかなと考えます。
その他、個別にはいろいろ言いたいのですが、子どもの貧困解消とは逆の話が出てきていますので、このあたりは強く主張したいということです。
以上です。
○駒村部会長 栃本先生、お願いします。
○栃本委員 今のお話にも関係あるし、山田先生のお話にも関係があるのだけれども、もともと前回の生活扶助を検討する際に、今のお話のように、我が国の社会保障制度が発展して充実する過程の中でそれにリファーする形で、生活保護制度の中で対応するために加算とかそういうものがつけ加えられたという経緯があるわけで、そちらのほうで対応できるような形になっているものについては、ついているのだからいいのだという話でなくて、それは冷静にきちっとやるべきなのですね。
なおかつ、生活扶助基準について、展開というある種の操作的概念というか、そういう形で世帯類型であるとか年齢ごとに対応できるような形の中で入れ込むという算段が行われているわけだから、外形的な形での加算とか扶助というものの持つ本質的な意味というのは、前回のときに申し上げたとおりなので、そこら辺についてはきちっとやるということが必要だと思うのです。それは政権とかそういうのは関係なしと言ったらあれなのだけれども、時期とかそういうのは関係なしに行うべきであると思います。
その一方で、31ページのところで冬季加算であるとか有子世帯の扶助加算について、このような御意見が出ているわけで、特に経済財政諮問会議(26年4月22日)で麻生議員から提出されたものについては、担当ということもあるので、27年度の予算編成において各種扶助・加算制度の見直しを実施する必要があるというような発言もされているように承っているのです。
ただ、その場合、先ほど来の議論のように、その審議会では非常に丁寧に議論されて、そのような御意向が諮問会議で言われていますので、我々とすれば、今回の基準部会のもともとの設立の趣旨、設置の趣旨というのは、客観的にきちっとデータをとって、その上で議論するということですので、まずはデータをきちっと整備するということであろうかと思います。
冬季加算であるとか、その他の扶助・加算について、事務局は先ほどの住宅扶助のほうでも手いっぱいであろうと思うのだけれども、外の省庁に統計の活用とかそういうものをお願いしなければいけないこともありますので、データの整備の必要ということで、特別集計などについてできるような体制をできる限り早くとっていただくということが、まずは取り組まなければいけないことで、先ほど岡部先生が言われたように、言いたいことはいろいろあるということもよくわかるのですけれども、まずはデータを整備するための準備、特別集計の関係の作業を事務局のほうで淡々としていただくということが、先ほどの他の扶助の意見についての対応ということでは一番大事ではないかなと思いました。
以上です。
○駒村部会長 園田委員、阿部委員の順番でお願いします。
○園田委員 住宅との関係で、水光熱費というのは生活保護費から各自が払うということなのでしょうか。まず質問です。
○駒村部会長 事務局、お願いします。
○村木保護課長補佐 住宅扶助費からではなくて、生活扶助費から支払うということになります。
○園田委員 だとすると、私は、「北緯45度問題」と言っているのですが、家賃補助とか住宅手当がつくというのは、北緯45度以上の国ではかなり行われていて、それは冬期間のエネルギーコストがすごくかかるので、そこの部分を保障しないと生殺与奪にかかわる。その場合、住まいを保障するという必然性があると思うのです。
日本は幸い温暖なので、そういう必然性がないからこういう議論になるのだと思うのですけれども、逆に最近は先ほど山田委員がおっしゃったように、夏の間にすごい気温が上がる中で、エアコンをつけると電気代が払えないとかそういうことがある。
栃本委員が住宅について設備の水準がどうであるかというふうにおっしゃったのですが、実態を見るとお風呂もついていて、ガス台もついているけれども、それを払いたくないのでお風呂は使わないとか、ガスも固定料金がかかりますから、ボンベ式のもので煮炊きをしているということがあるのです。冬季加算ということの意味合いが、冬だからということではなくて、エネルギーコスト、水光熱費という捉え方をすると、ものすごく大きい問題なのです。
それともう一つ、これもタイムラグがあって、御存じのように、電気代は何割というふうに上がっていますので、そういうことと重ね合わせて捉えると全然違った問題になるので、ちょっと気になったので申し上げました。
○駒村部会長 阿部委員、お願いします。
○阿部委員 まず、子供にかかわる加算のほうですけれども、これもよく言われることですが、子どもの貧困対策法のほうでは貧困の連鎖を防止するということがまずうたわれており、先日行われました有識者会議の中でも、被保護世帯の高校進学率が低いということはもう既に指摘されていることです。これは法律の中でも書かれています。そのほかにも、高校の中退率も保護世帯のほうが高いといったような指摘もある中で、まさにここは一番重要なところで、先ほど岡部先生もおっしゃいましたけれども、それと逆行するようなことは絶対にしてはいけないと思います。
あと、冬季加算についてです。私はここについては専門ではないのですが、1点だけ申し上げたいのが、一番最後の財政審の資料、グラフでは地域差が大きいという話なのですが、地域差というのは、沖縄の被保護者と北海道の被保護者の間での不公平感の話はできますけれども、それ以外のものは何も言えないはずですね。額自体を比較しなければいけないわけですから。
ですので、見たいのは、例えば上に書かれている2万8,230円、1区のところの光熱費が高過ぎるのか、低過ぎるのかという議論をするのであって、これは一般世帯と比べるしかない。普通に使ったらどれぐらいかかるのだという話だと思うのです。ですので、地域差を持ち出して、それが北海道、東北、北陸地区のほうで高過ぎるというのは根拠にはならないと思います。
○駒村部会長 道中委員、お願いします。
○道中委員 1点だけ。非常に微細な話で申しわけないのですけれども、36ページと37ページのところなのですが、教育扶助と生業扶助と生活扶助が混在しています。特に36ページの※印の「入学準備金」のところは、教育扶助の費目に入っているような誤解を与えかねません。これはたしか生活扶助の「入学準備金」と読んだらいいのですね。ですので、そこは生活扶助内での入学準備金ということにしていただければありがたいです。申しわけないですが修正方をお願いします。
○駒村部会長 ありがとうございます。
この表のつくり方についてのコメントがあったと思います。
扶助の体系や位置づけについては前から議論の1つのテーマになっていたのと、水準に関しては、財政審等の報告とは別の角度で見ていくと、また違う見え方もするのではないか。この辺はきょうの御発言、御指摘を事務局で整理していただいて、あとは栃本委員から御指摘があった、データをきちんとそろえないとそもそも議論できないねという話も事務局のほうで検討していただきたいと思います。
私の運営が稚拙だったので少しオーバーをしておりますけれども、本日の審議はこれで終了したいと思います。
事務局から次回の開催について御連絡をお願いできればと思います。
○井上保護課長補佐 次回は5月30日金曜日15時から省内の22階の専用14会議室で開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。御多忙の中、どうもありがとうございました。
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