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2013年6月27日 平成25年度第3回第医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録
○日時
平成25年6月27日(木)14:00~16:00
○場所
三田共用会議所 1階 講堂
東京都港区三田二丁目1番8号
○議事
平成25年度第3回 医道審議会 医師分科会
医師臨床研修部会
日時 平成25年6月27日(木)
14:00~
場所 三田共用会議所(講堂)
○臨床研修指導官 定刻になりましたので、ただ今から医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催いたします。
本日は、御多忙のところ御出席頂きまして誠にありがとうございます。本日は、河野委員、山下委員から、所用により御欠席との御連絡をいただいております。なお、本日の議題に関連して、参考人の先生方にお越しいただいておりますが、後ほど改めて御紹介をさせていただきます。また、文部科学省医学教育課からは、渡辺企画官にお越しいただいております。
○渡辺企画官 渡辺と申します。よろしくお願いします。
○臨床研修指導官 以降の議事運営につきましては、部会長にお願いいたします。桐野先生よろしくお願いいたします。
○桐野部会長 それでは、どうぞよろしくお願いします。まず、資料の確認を事務局からお願いします。
○臨床研修指導官 お手数ですが、お手元の資料の御確認をお願いいたします。
上から、議事次第、委員名簿等の束です。次が、ヒアリング資料1、京都府提出資料です。ヒアリング資料2、青森県提出の資料です。ヒアリング資料3、全国自治体病院協議会提出の資料ですが、パワーポイントの資料と参考1と参考2があります。ヒアリング資料4、田中先生提出の資料です。
続いて、事務局提出資料1「中断及び再開、修了等に関する論点」、事務局提出資料2「各論点に係る参考資料の概要」、事務局提出資料3「地域における医師の確保対策について」、事務局提出資料4「今後のスケジュール(案)」です。
なお、先生方に参考資料として、青い紙ファイルをいつものとおり置かせていただきますので、適宜御参照いただければと思います。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。お願いいたします。
○桐野部会長 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、1.関係団体等からのヒアリングで、今日おいでいただいております先生方からお話を伺います。2.中断及び再開、修了等について、3.地域医療の安定的確保について、4.その他となっています。
それでは、始める前に参考人の取扱いについて御了解をいただきたいと思います。
本部会での参考人出席の扱いについては、事前に事務局を通じて部会長の了解を得ること及び当日の部会において承認を得ることとなっています。参考人として参加し発言をいただく先生方は次のとおりです。
京都府健康福祉部医療専門監の横田昇平先生です。京都大学医学研究科医学教育推進センター長の小西靖彦先生です。京都府立医科大学長特別補佐の山脇正永先生です。続いて、青森県健康福祉部次長の藤本幸男先生です。青森県良医育成支援特別顧問の小川克弘先生です。続いて、全国自治体病院協議会常務理事の酒井和好先生です。最後に、東京医科歯科大学医学部附属病院長の田中雄二郎先生です。どうぞよろしくお願いしたいと思いますが、この点について御了承をいただけますでしょうか。
(異議なし)
○桐野部会長 ありがとうございます。それでは、順次お話をしていただきますが時間の都合上、少し順序を変えて議題3の「地域医療の安定的確保」から始めて、その後にヒアリングとします。それでは、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○医師確保等地域医療対策室長 医師確保等地域医療対策室長の平子です。どうぞよろしくお願いいたします。以後座って、また説明が終わりましたら中座させていただきますことをあらかじめお許しいただきたいと思います。
事務局提出資料の3です。これは一般的なものですが、「都道府県別にみた人口10万対医師数」になります。御案内のとおり、各県間で差があることと、ここには資料は添付していませんが、例えば、県内で二次医療圏別などで、それぞれ差があるという状況にあります。
1ページをめくっていただき、「診療科別」、これも御案内のとおり、診療科により異なりますが、これも県内でも診療科の偏在といったところは地域であるという状況です。
そのようなことにも対応することを含めて、医療計画制度が、医療法の中に位置付けられています。これは、都道府県が地域の医療提供体制全般について定める計画で、一言で申し上げれば、医療関係者が共通でみるべき医療提供体制の地図とお考えいただければと思います。この中でも特に、医療従事者の確保については、真ん中の中ほどになりますが、「地域医療支援センターにおいて実施する事業等による医師、看護師等の医療従事者の確保」といったことが、記載が求められています。こういったことが、都道府県の医療審議会において議論されることになります。
また、右側に移ります。「地域医療対策協議会」、これは特に、医療の確保のために必要な施策を定める際に、協議会として御議論をいただくわけですが、構成員としては、そこに記載しているような、特定機能病院など多くの関係者に入っていただいています。ここでは特に医療従事者の確保について議論をしていただき、医療計画にも議論の経過などを記載していただくことになっています。
下の「地域医療支援センター」ですが、この協議会での議論などを受けて、実際に実働部隊として都道府県における地域偏在の解消に取り組むコントロールタワーだと思っていただけたらと思います。これについては、予算が9.6億円で、本年度30箇所ということで、各都道府県にお願いしているところです。おおまかに申しますと、個々の役割は、キャリアパスの策定などを行っていくわけですが、こういったプロ取り込みによって平成23年度以降、20道府県で合計808名の医師が都道府県内の医療機関へあっせん・派遣などの実績を上げられています。
1ページをめくっていただき、実際に配置されている都道府県の位置ですが、平成23年度から開始されて、平成24年度、25年度から実施というところで合計30箇所です。更に、私どもには、設置したいという要望が寄せられています。
その他「地域医療支援センターの実績」が、下から2枚ほどスライドに付けていますが、ここは平成24年度までの実績ですので、総計都道府県数は20がマックスと見ていただければと思います。例えば、医師派遣実績は、都道府県については、全ての道府県が行っていただき808名ということ。また、講習会については、16都道府県が6,237名の延べ人数といったことなどがあります。
右側に移りまして、「学生支援」で、例えば、都道府県が研修病院の説明会に参加する、あるいは修学資金の貸与について説明するなど、学生支援として取り組んでいるものです。
具体的な取組は、例えばドクターバンク事業については、長野県がされています。修学資金貸与医師の配置調整は岐阜県、静岡県などが特徴的な取組だと思いますが、岐阜県の取組としては、修学資金を貸与した人を対象にキャリアプログラムを策定し、義務年限内の半数以上は地方勤務を必須とするなどのローテーションルールを作り、対応されているというものです。また、広島県においては、自治医科大学の卒業生の医師についても対応されているという状況です。
1ページめくりまして、今度はお金のメンテを考えてみますと、下の所にありますが、「地域枠」、特に医学部の定員増と連携しだしたものが、平成22年度からされているものですが、ここは奨学金の受給が必須条件となっています。そういったものに対応するために、「地域医療再生基金」、これは地域医療再生計画を都道府県が策定し、そこの中に事業などを位置付けることにより、地域医療臨時再生特例交付金を国から支援を行っているという仕組みです。
これまで、ここにあるように5,550億円というところで、今度、特に医師確保も含めて500億円を全国に配分する予定です。
また、地域枠の学生については、奨学金の貸与額は結構たくさんありますが、月額10~15万円。返還免除については、貸与期間の1.5倍といったところが標準的なパターンであるとお聞きしてます。
1ページめくりまして、「再生基金を活用した医師確保の取組」ですが、平成24年度までの実績として、総事業費として約101億円、そのうち基金充当額として53億8,000万円程度で、これら国費あるいは県費が投入されている状況です。こういった貸与者は、1都道府県あたり1学年ということで、9人程度が平均となっています。特に、こういった奨学金を貸与した方については、先ほど申し上げた岐阜県などの取組。また、新潟県では定着支援ということで様々な取組をされている状況です。
「奨学金制度の現状」です。下の所で、ここでABCDとありますが、Aについては、県内の指定された特定の医療機関、Bについては、県内の指定された複数の医療機関、Cについては、県内のいずれかということで、勤務先が特定されているものですが、そういったところが一定程度の割合を占めるということです。特に特定のというときには、プログラムでは20ほどありますので、このあたりの対応ということが課題となります。
1ページめくりまして、「地域枠学生の研修病院の選定に関する都道府県の意見」ですが、都道府県内の指定された特定の医療機関で臨床研修を受けることとされた地域枠の学生については、マッチング外とすべきという意見が44.7%と最も多かった。一方で、県内の医療機関から自由に選択して臨床研修を受けることとされた地域枠の学生については、マッチング内とすべきという意見が48.9%と最も多かったという状況です。
また、「地域枠学生の研修病院に関する都道府県の状況」ですが、地域枠の学生の臨床研修先について、医療機関を指定している都道府県が17、地域を指定している都道府県が10あります。したがって、こういったところが課題になるわけですが、ここで言うと3番の所です。医師臨床研修システムの活用について、活用しないと回答した都道府県が9。活用すると回答した都道府県が28あります。活用するときには、どのように活用するのかというところが課題になろうかと思います。こういった結果を見ると、地域枠の趣旨や多額の国費、県費が投入されていることを踏まえて、都道府県が地域枠の医師の研修先や配置先に、一定程度責任を持てることも重要な視点かと存じます。
また、1ページめくりまして、「その他」ですが、「医師不足の診療科の医師確保対策」として、産婦人科、小児科等の厳しい勤務環境にある診療科については、様々な手当について財政支援を行っている状況です。国としても、こういった地域における医師確保対策について、全力で取り組んでいますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。後ほど、医師確保の問題は審議していただきますが、今の御説明に対して、何か御意見や質問がありましたらお願いします。
○吉岡委員 最後の所の、3つに対する財政支援というのは、どこがどのように行うのかという話まであるのでしょうか。
○医師確保等地域医療対策室長 これについては、少し説明を省かせていただきましたが、具体的には例えば、救急医であれば、救急勤務医手当を支給する二次救急医療機関などに対して、そういったことを実際にやるところについて支援をするという形になります。
○吉岡委員 施設側ということですね。
○医師確保等地域医療対策室長 施設側ですね。
○桐野部会長 ほかにいかがでしょうか。また、最後の地域医療の安定的確保の所で、これに関係する御意見も頂くということで、次に進んでよろしいですか。
○小川委員 ちょっとお願いなのですが、一概に地域枠と言っても、様々な地域枠のスキームがあるように聞いています。その辺を是非事務局でまとめていただけませんでしょうか。
○医師臨床研修推進室長 お配りしている紙ファイルを御覧いただきたいのですが、小川委員がおっしゃったとおり、地域枠と一口に言いましても様々なバリエーションがある旨は、前にも御案内をしたとおりです。その中の大きなページで52ページを御覧ください。こちらで以前御案内したとおり、多様なバリエーションがあるということで、奨学金の有無あるいは実施主体がどこなのか、あるいは定員増との関係があるのかないのか、臨床研修期間を含む勤務地の限定の有無といったような様々なバリエーションがあります。
このうち、私どもで把握できる範囲で、いろいろなアンケートであるとか、調査をしてみた結果を別途お配りをしていますが、同じファイルの中の248ページを御覧ください。「地域枠学生数の推移」で、速報値になっています。手集計の状況ですが、臨床研修の2年間の間に、県内の勤務要件が課されている奨学金貸与者に限った場合の1年次から6年次までの、今の人数についても把握しています。ただ、小川委員が御指摘のとおり、これは把握できる分でして、全部の地域枠の全貌を一人ひとりまで十分まだ現段階では把握ができていません。それはまた把握できた段階で御案内をしたいと思いますが、いくつかの観点から御案内をしています。
もう一つ、275ページの上です。「地域枠等の状況について」で、研修修了者に対してアンケート調査をした結果です。自身が地域枠で入学したかどうか、もう一つは、奨学金の受給を受けているかどうかということで、御案内したとおり、これもベンズが一致はしていません。地域枠への入学者であり、奨学金は受給していないとか、奨学金を受給する者であって、地域枠での入学者ではないといったもの。研修生に対するアンケート調査の結果はこのような形になっています。
したがって、どこに軸を置くのかによって、いろんなバリエーションがあるものですので、以上のような範囲では把握をしているところです。以上です。
○桐野部会長 今の説明で大体よろしいですか。そのほかに。もしよろしければ次に進ませていただきまして、議題1「関係団体等からのヒアリング」に入らせていただきます。
まずは、京都府よりお話をいただきたいと思います。横田先生、小西先生、山脇先生どうぞよろしくお願いいたします。
○横田参考人 京都府の横田です。代表してプレゼンテーションをさせていただきます。皆様のお手元に2アップの資料がありますので、これに基づいて説明いたします。
「激変緩和措置廃止に伴う京都府への影響について」、その下に、「研修医が激減!」とあります。先月開かれた臨床研修部会で、都道府県定員数の激変緩和措置が、平成27年度募集から廃止される方向で決まったと聞いております。最も大きな影響を受ける京都府の意見をお聞きくださる前に、決定が下されたと聞きまして、私どもにとっては大変遺憾なことでございます。本日は京都府に与える影響について、お話していきたいと思います。
次のページのスライド3を御覧ください。激変緩和措置が廃止された場合を想定して、京都府の定員を試算いたしました。そうすると、なんと一気に82人、29%もの研修医の定員が減ります。今回予定されている激変緩和措置廃止で減少する全国の研修医の数が、約500人と聞いておりますので、全国の50分の1の人口しかない京都府が、定員減の全体の6分の1も背負うという形になります。京都は平安時代の昔から、医師を育てて全国に派遣してきた自負がございますので、こういったことは容認できないというのが私たちの気持ちです。
下の図です。それでは、比較的医師数が多く、研修医定員が定数上限よりも多い、6都府県ではどのように変化するのでしょうか。全国的にデータがそろっている平成24年度の採用実績と、定員計算のキーとなる都道府県募集定員上限を比較してみますと、減少は多くの県で数パーセントです。大阪府や福岡県でも10%程度ですが、京都府は23.7%です。京都府は本年度の実績を知っておりますので、この最新値を入れて計算しますと、なんと32%も減少します。この突出した減少がどうして京都府だけに課されるのか、計算方法も含めて理解に苦しむところです。
次に、スライド5を御覧ください。この新臨床研修制度が始まる直前の平成15年度の研修医数と、平成27年度の募集定員の計算値を比較したグラフを示しております。この間、約12年間あるわけですけれども、京都府においては新制度が始まる前と比べて、51%の減少です。これは募集定員レベルで、国家試験で9割合格すると180人ですから、56%も採用が減ってしまう、411人だったのが180人になってしまうという計算になります。これも非常に大きな減少幅であると思います。
次にスライド6を御覧ください。同じことを全国の都道府県で比べてみました。東京、大阪、福岡は減少傾向にありますが、ほとんどの都道府県の平成27年度定員試算値は、新臨床研修制度開始前よりも増えております。ほかにも減っている県はありますが、京都府だけが50%を超える突出した研修医の減少となるという事実が見えようかと思います。
次がスライド7です。「京都府の施策と現状」についてお話したいと思います。これまで京都府としては何もしなかったのか。いや、いろいろな施策を講じてまいりました。下のスライドにありますように、いわゆる地域医療支援センターです。先ほどもお話が出ましたけれども、これを初年度に認めていただき、京都大学、府立医科大学、医師会、病院協会等が一体となって、京都府で医師を育てるKMCC(Kyouto
Medical Career support
Center)を運営しております。今日一緒に来ていただいた京都大学の小西先生と府立医大の山脇先生は、実はこのKMCCの常任メンバーで、実務も担当していらっしゃいます。私たちは京都府医師会との連携も緊密で、何度も合同で会合を持っており、独自のキャリアパス作り、あるいは研修会を開催することで、京都府北部の医師不足地域の改善に努めてきました。そのような経過がございます。
次に、スライド9を御覧ください。京都府の医療供給体制の実態を御説明申し上げます。実は、京都市を除く全ての二次医療圏で、人口10万人当たりの医師数が、全国平均を大きく下回っているのが京都の実態です。これらの医師不足地域の公的病院のほとんどを、京都府立医科大学の医局から派遣しております。更に今年の4月には、京都府立与謝の海病院を、京都府立医科大学の北部医療センターとして開設して、本院との人事交流を活発にし、北部医療の更なるてこ入れを図っているところです。激変緩和中止で府立医大の定員が更に減ると、若手医師を中心としたこれらの派遣が大変困難になり、北部医師の不足は深刻化するのではないかと考えております。
次がスライド10です。皆さんも既に御存じと思いますが、公立大学は国庫補助金というものを受けておりません。府立医大とほぼ同等の大学は、国立も私立も100億円単位の国庫補助を受けております。一方、京都府は一般財源から年間100億円近い運営費を投じて、府立医大を支えております。加えて、北部医療センターにも、今年度は約12億円の予算を計上いたしました。今回のような研修医激減が起これば、いずれは負担主である府民への説明責任がつかなくなってくることを危惧しております。
スライド11を御覧ください。「京都府の地域枠学生」です。京都府立医科大学に7名の地域枠があり、現在35名が在籍しております。京都府から年間180万円の奨学金を受け取ることを条件に、推薦入試で選抜しており、卒業後は京都府立医大で2年間の初期研修、更に大学で1年間の後期研修を受けた後、京都府の指定する医師不足地域の公的病院において6年間の勤務をすることで、奨学金の返還免除を受けるというシステムになっております。
下のスライド12です。御存じのとおり、京都には開学以来、100年以上の歴史を持っている京都大学と京都府立医科大学の2つの大学があります。これらの医師派遣の実績ですが、京都大学では京都府外の54の病院に卒後7~15年の指導員クラスの医師を193名派遣しております。府立医大も127名の指導医を府外に送り出しております。京都大学の派遣医師のほとんどである184名は、臨床研修病院に派遣されており、定員ベースで考えますと418名が、京都府外の研修医を教えているという実績もございます。京大は数多く他府県に医師を派遣して、その地域の医療を守っているという実態が見えてくると思います。京都府立医大は、比較的京都府外の病院に派遣されておりますけれども、基本的には京大と同じように、地域を守っています。この2つの大学はお互いに折り合いながら、地域の医療を守る歴史と伝統を守ってきたということが御覧いただけるかと思います。
スライド13、14は「激変緩和措置廃止による影響」です。まとめますと、まず1番に、大学の医師派遣能力は間違いなく低下いたします。それにより京都府内外で医師不足地域の医療が崩壊する危険がございます。医師不足地域の中核病院も研修医の定数が減りますので、これにより地域医療の供給体制が後退していくことになろうかと思います。更に、研修医数が10数年前の半分以下になる。こういう状況では大学の活性、ポテンシャルも明らかに低下します。この状況下で未来を担う医療者や医学者、国際的に通用するような研究分野で、これまでのレベルを保っていくことは難しくなるのではないかと考えております。
スライド15、16は「京都府としての要望」です。初めに申し上げたとおり、京都府は減員数全体の6分の1を負担して、卒後研修と医師確保に大きなダメージを受けます。このような画一的な都道府県別の定数設定の在り方については、前回平成21年度の見直しの前と見直し後の平成23年6月に、私たちの京大、府立医大から、京都府知事あるいは市町村長に強い要望を重ねてお願いしたところですけれども、今回、それが全く省みられない。それで定数設定が行われようとしていることについては、強く抗議したいと思っております。そもそも人口比と医学部卒業生から導かれる都道府県定数の設定そのものが、本当にそれで正しいのだろうかという議論を、もう一度していただきたいと考えております。
最後のスライドです。その上で定数の算定については、以下のような要素を評価していただきたいと考えております。第1は、医師を養成するための医師派遣に対する評価です。医師派遣加算については、算定方法を見直していただきたいと思います。2番目に、医師不足地域の医療の充実のための地域枠の加算です。今は計算に入っておりませんが、これも入れて計算だと思います。3つ目が、国際的な医学研究を行う大学の評価を高めていただきたいということです。研究枠で入ってこられる学生さんもいらっしゃいます。彼らも必ず臨床研修を受けますので、この数も含めた定数の算定法にしていただきたいと思います。以上が京都府の意見でございます。御清聴、どうもありがとうございました。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。それでは今のお話に対して御意見、御質問はありますか。
○山脇参考人 京都府立医大の山脇でございます。少し追加させていただきます。激変緩和措置ですけれども、激変のそもそもを考えますと、やはりマッチングの受入れの枠が実際の人数に対して多いということは、非常によく理解できるところです。それをいかにして適正な数にするかというところから、そもそもこの議論が出てきたと私は理解しております。今回、激変緩和措置あるいは激変に使われた数式に関しては、やはり横田対策監が言われたように、どうしても京都府が突出して非常に減少するということがあります。この数は我々の次を見てみますと、先ほどの表にありますように、10%、10.1%、10.2%の所ですので、明らかに非常に大きい減少です。私たちとしては是非、3点申し上げたいことがございます。
第1点目は、この数式で言いますと、私たち京都府に関しては、全体の人口は比較的少ないのですけれども、その中で特に京都市に特色の違う2大学が集まっているということがあるかと思います。2番目はそれにも関係するのですが、京都大学は全国区の大学で、研究者も輩出しています。私たちの京都府立医科大学は京都府内はもちろん、比較的近畿圏あるいは北陸圏にも人材を派遣しているという機能もあります。「地方」あるいは「府立」とは言いますけれども、全国区の京大と、近畿圏あるいは北陸圏も含めた我々京都府立医大があるという形で、県外への派遣機能も非常に大きなウエイトを占めているという点があります。
激変の数に関して、今の計算式では日本全国を見た場合に、どうしてもこういう式になるかと思いますけれども、その中でも突出して、第2位よりも2.数倍の数値で減少するところがありますので、是非。我々も努力はしておりますが、その減少の上限も勘案する、あるいは出てくるかどうかはなかなか難しいかもしれませんけれども、新たな式という形で、無理のない常識的な範囲内で是非、減少率を勘案していただければと考える次第です。
○小西参考人 京都大学医学教育推進センター長の小西靖彦です。また少し違った観点から申し上げます。私は、そもそもこの会が激変緩和措置の廃止を検討する会議というのでは、部会の先生方の見識からすると、余りにももったいないと思っております。研修医の定数の問題は、前回の基準が設定されましたが、その妥当性が十分に検討されたものではありません。例えば、これ以外にも厚労省には100キロメートル当たりの医師数のデータ等がございます。これを使えば、また違う結果になっておりました。それで言いますと、京都府の医師は173名です。先ほどの6都府県との比較をしますと、東京は京都の10.6倍、大阪は7.0倍、2番目に少ない愛知県でさえ1.7倍です。この中で京都はむしろ医師不足地域となります。それでも京都府は突出して削減されるのだろうかと、私は疑問に思います。
ただ私は、あえてこのデータをハンドアウトとして提出して議論を求めることはいたしません。妥当性を検証されていない1つの手法を基に、過剰だとか不足だとか論じること自体が、愚かな結果を生むことがあると申し上げたいだけです。この砂城の楼閣に立った研修医定数のそのまた激変緩和措置の廃止論を論議する代わりに、ビジョンを持った研修制度について考えていただきたいというのが、私の願いでございます。
京都大学は研究を中心に置く大学です。私の研修センターの84名の研修医の全数聞取りでは、研究者として日本の医学と医療を支える将来の目標を胸に刻んで、京都大学の研修医を選んだ者が多いのです。山脇教授からもありましたように、京都大学と京都府立医科大学には、それぞれのミッションとビジョンがあります。それは医学と医療の多様性を支えております。京都大学の学是は「自由」です。何よりも多様性を大切にしております。卒前教育でも研究者育成の多様性を持ち、研修も画一化せずに多様な対応を取ることを重要視しているところです。それによって研究を中心とした将来を担う人材を育成するというのが、私ども京都大学の使命です。当部会での論議が、日本の将来を担う人材育成に負の影響を与えないことを切に願います。
臨床研修制度ができて、大学と研修病院は、言葉は乱暴かもしれませんが、研修医の取合いを起こしました。私はそのときに臨床研修病院の一員でしたので、そのときの病院側の論理が何であったかはよく知っております。誤解を恐れずに単純に言いますならば、研修医たちは大学から都会の研修病院に移りました。その研修医たちは今、30代半ばに差しかかっております。私が最も危惧するのは、これら市中の研修病院が研修後の医師のキャリアをつくり得るかという1点です。
私がここであえて申し上げたいのは、研修病院が役目を果たしていないとか、大学研修が良いとか悪いとか、そういうことをパーツで申し上げたいのではありません。そして、お互いを批判し合うことではないのです。そんなことをしている余裕はないと思います。臨床研修病院側は特に卒前教育から大学が負っている使命について、もう少し理解していただきたいと思います。その一方で、大学病院側も臨床研修病院の教育体制から学ぶべきものがたくさんあるように思います。この国の医師育成という大きな視点で、大学と臨床研修病院の協力体制が形成されるような道筋を示していただきたい。これが私の願いでございます。このままでは日本の医学と医療は衰退すると危惧しております。
最後に、卒業した医学生、つまり医師ですけれども、彼らは社会の財産です。彼らがトラックを降りずに、社会のために貢献でき続ける道をつくっていただきたい。それが我々の仕事だと思います。そのために私は大学の力が再度必要になると考えております。生涯学習のためのベースとしての大学の力を決してそぎ落とすことのないように。それは大学に人を集めようという短絡論議ではありません。大学と臨床研修病院は、初期研修とそれに続く後期研修専門医に関して、プログラムを共有するような体制を早くつくるべきだと私は思います。彼らの将来のキャリアを育んで、今のように研修先を大学か病院かを選ぶ時代は、早く終わらせてはどうかと思います。その状況で都道府県別定数などというのは、全く次元の違う話だと私は思っております。臨床と研究、臨床と教育を行き来できる構造を作るように、高い見識からこの部会が力を発揮されることを期待いたします。ありがとうございました。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。何か御意見、御質問はございますか。
○神野委員 小西参考人からいただいた、大学と研修病院の協力体制とか、いろいろな情報交換といったことに、全く異議はございません。また、京都の中でも学都京都市と、それ以外の所との非常に大きな地域内偏在というのも、クローズアップされたかと思います。今回のお話を伺うと、おそらく京都には多少特殊性があります。学問の雄の京都大学と京都府立という2つがあるというところで、大変難しいのかもしれません。ただ、学者を育てる、あるいは派遣機能というか、医師を派遣するという問題と、2年間の初期臨床研修を短絡にしていいかどうかということは、もうちょっと考えなければいけないのではないかと思います。
特に、前回の資料の青いファイルの263ページに、「京都府の医学部卒業生の動向」と書いてあります。京都の2大学を卒業した方々が京都の臨床研修病院に46%残る。そして3年目も46%ということで、東京都を除いて歩留りが非常にいいと言えます。東京を除いてほかの都道府県は、臨床研修はたとえ自分の県でやっても、3年目以降はいなくなってしまう県がほとんどです。京都は京都に残っているのです。それはやはり京都に魅力があるということになると思います。そういった意味では研修医の2年間、たとえ京都にいなくても、また京都に戻って来るマグネットと言いますか、力を持っているのが京都ではないかと思います。先ほどお示しになった12ページの資料を見ても、京都大学が府外へ派遣している病院54に対して、そこの研修医が418名と書いてあります。そういうことで、府外の派遣病院に418名の初期臨床研修医がいるということですよね。
○横田参考人 それは府外の臨床研修病院の定員です。要するに、府外の臨床研修医を京都大学から派遣された人が教えているという読み方をしていただきたいと思います。
○神野委員 ということは、京都大学から派遣したドクターのいる所に、研修医が418人いるということですね。3年目以降のこの人たちの動向というか、この人たちを連れてくるパワーがおありになると読むこともできるかもしれない。私が言いたいのは、医師派遣機能と初期臨床研修の2年間、京都にいるかいないかということと、その次の研究者を育てる、あるいは派遣医を確保するというのと、全く同一視していいのだろうかということだけ、ちょっと疑問を感じるところがあります。
○横田参考人 先生の御意見ももっともだと思います。私もストレート研修で2年間大学におりましたけれども、やはり大学にいると、例えば研究室に呼ばれて「ちょっと実験をやってみよう」とか、「この培養をやってみろ」と言われて、かなりラボに近い所にいるので、その後に受ける影響というのは、かなり大きく違ってくると思います。将来の研究医を確保するという観点では、臨床主体の病院に行くのも大事ですけれども、大学病院などで、リサーチマインドを植え付けられることは、私は非常に重要だと思っています。そういう点で、初期研修は大学病院に近い京都にいてほしいと思います。
○神野委員 いろいろなパターンがあるわけです。例えば、私どもでしたら一般病院で研修した研修医はほとんど全部大学に帰る。それは大学から来ている派遣医が一生懸命、自分たちの魅力を語って、それに賛同した人たちがその人の医局に入るというパターンもあって、一概に大学に残った研修医だから大学に残るという問題でもないような気もします。
○山脇参考人 先ほどの別添資料263ページ、京都府の医学部卒業生の動向に関してです。確かに先生がおっしゃったように、医師1年目と3年目ではほぼ変わりがないというデータはあります。実は、私たちはこれがもっと増えないと、マグネットとは言えないのではないかと思っております。京都大学も府立医科大学も、京都府内の病院というのは全て我々から指導医を派遣しています。それで将来的に京都にいたいという方たちが研修している。実際に今までのマッチ率を見ますと、ほぼフルなのです。今のマッチの枠で100%近くきております。彼らがその後、3年後にどうなるかというと、我々の指導医がそれぞれの大学から派遣されている指導医ですので、大学に戻ることは当然という形できております。ですから私たちは、むしろこの数が増えないとマグネットとは言えないのではないかと考えているわけです。そういう意味でこの数字で1年目と3年目というのは、京都府立医大と京都大学だけの問題ではなくて、府内全体が指導医も府立医大と京都大学から来ていて、その結果を反映しているのではないかと考えております。
○桐野部会長 よろしいですか。また後で御意見を頂くことにして、次に進みたいと思います。それでは、青森県よりお話いただきたいと思います。
○藤本参考人 青森県の健康福祉部次長をしております藤本と申します。本日はこのような機会を頂き、ありがとうございます。私から、青森県の臨床研修の状況について御説明し、その状況を踏まえた課題と、今般の制度の見直しに当たって幾つか御意見を申し上げたいと思います。
ヒアリング資料-2の3ページを御覧ください。臨床研修の状況の説明の前に、最初に、「地域医療確保に当たっての県の基本的な考え方」について説明いたします。青森県においては地域医療を確保する上で様々な課題がございますが、やはり最大の課題は、地域医療を支える人材、特に医師の不足の解消です。県といたしましては、この課題について、医師を確保するという視点ではなく、ここに書いてあるとおり、「地域全体で医師及び医師を目指す若い人たちをきちんと支え、育成する」ことを基本的な考え方として、平成17年度に「良医」を育くむグランドデザインを策定しております。これは3つの戦略を定めており、1つには、医師が学ぶ環境を整える、2つ目は、意欲を持って働く環境を整える、3つ目として、これらがうまく機能するような仕組みを整える。このような戦略に基づき、医師を目指す段階、医学生の段階、臨床研修の段階、医師の段階ということで、それぞれのステージごとに取組を進めております。
4ページ、「臨床の研修の取組」についてです。青森県には13の臨床研修病院があり、臨床研修病院と県の医師会と県などで、青森県医師臨床研修対策協議会を設置しております。この協議会によって合同で様々な事業を展開しております。ここに書いてあるとおり、合同の説明会、また、県内の臨床研修医が一堂に会してのセミナーやワークショップ、また指導医のワークショップ等を行っております。ここに記載しておりませんが、このほかに、研修病院の指導医が、いわゆる本県出身の医学生のいる全国各地に赴いて、そこで進路相談会をやることも行っております。
5ページ、「臨床研修の状況」です。まず、マッチング者数の推移です。平成16年度に必修化された当時は65名でスタートしておりますが、ちょっと低調な傾向にありました。その後堅調に増加傾向ということで、平成25年度マッチングは76人と、これまでで最高を示しております。ただ、募集定員が130名ですから、充足率はまだ6割弱という状況です。
6ページは、マッチング者数を大学別、出身県別にどのように推移しているかを示したものです。まず大学別では、地元の弘前大学卒の割合が当然高い傾向にありますが、実は出身県別で見ると、他県の出身者のほうが若干高い傾向にあります。これはなぜかといいますと、1つの要因としては、そもそも本県出身の医学部への進学者数がこの当時少なかったことがあります。
7ページを先に見ていただきたいのですが、本県高校出身者の医学部進学者の推移です。これまでのマッチングに対応するのが、平成19年度以前の進学者になります。これでいきますと、ラベンダー色が弘前大学、オレンジ色が他県大学です。弘前大学が20名台、他県大学も10名~20名しか入っていなかったという状況があります。平成26年度以後のマッチを迎える平成20年の進学者以後は、これらが大幅に増加しており、弘前大学がほぼ倍増で40名台、他県の大学も30~40名台、この春には50名に達したということで、大幅な増加となっております。よって、これからはマッチング者数は相当増えるだろうという見込みを持っております。
6ページに戻りまして、これらを踏まえて若干分析しますと、1つ言えるのは、弘前大学に進学した本県出身の8割以上、平均しますと約85%、そのまま本県の臨床研修を選択しています。また他県大学に進学した本県出身者の約4割が本県に戻って臨床研修を選択しています。この4割は若干少ないので、これから増やしていく取組も必要かと思います。先ほど申しましたように、本県出身の医学科進学者数が大幅に増加しておりますので、今後臨床研修でのマッチング数の増加が見込まれる状況になっています。
8ページを御覧ください。このように、これらマッチング数の増加要因に加え、弘前大学では全国でも屈指の大規模な地域枠を設定しております。地域枠の内訳はグラフにも出ておりますが、ラベンダー色がAO枠ということでAOの入試枠のものです。全て地域枠ということで、定員が40名です。赤が県内定着枠、一般入試の中に設定しておりますが、現在17名の定員。それから学士編入の中に学士県内枠を設けており、これが5名です。ですので、現在トータルで62名の地域枠があります。弘前大学の医学科の定員が127名ですから、約半数49%が地域枠です。この地域枠の方々、実はここに書いてありますとおり、平成24年4月から既に臨床研修に入っており、この春にも25名が出てきております。来年度は35名、その後55名、そして60名、最大値が62名と増えていく見込みです。
これらの地域枠について、では臨床研修についてどういう条件が付されているかというものですが、県内定着枠、AO枠という地域枠で57名と大勢を占めておりますが、平成24年4月から平成30年4月までに臨床研修に入る方については、臨床研修先の明確な指定がされておりません。「卒業後は弘前大学医学部又は関連施設で勤務することを確約できる者」という確約書を取っている状況です。弘前大学では、平成25年4月に入学する者については、実際これらの方々は平成30年4月に臨床研修に入るわけですが、卒業後直ちに弘前大学医学部附属病院の臨床研修プログラムに従って臨床研修を行うということで、ここで初めて臨床研修先を指定しております。
学士県内枠は5名ですが、ここについては最初から臨床研修先が指定されており、平成29年4月までに臨床研修に入る者については、卒業後は弘前大学医学部附属病院の臨床研修プログラムに従って臨床研修を行うことになっております。また、平成25年秋入学の方々については、平成30年4月に臨床研修に入る予定ですが、弘前大学医学部附属病院に加え、医学研究科関連施設のプログラムに従って臨床研修を行うと、幅を広げております。医学研究科関連施設は主に自治体病院を中心とする臨床研修病院という理解です。
これに加えて、県の場合は、医師の修学資金を貸与しているわけですが、修学資金の対象枠は30名です。基本的に、地域枠と全て連動してはおりません。学士県内枠のみ制度上はリンクしております。ただ、実質上、貸りている方のほとんどは、この地域枠と重複している実態にあります。そして修学資金では貸付条件としては臨床研修先の指定はしておりません。
9ページですが、以上のような説明の上で、今後マッチングがどうなっていくかを推計しております。これまでの話のように、1つには大幅に増加した本県出身の医学生が、平成26年度以後臨床研修に入ってマッチングしていくことで、これが増加が見込まれるという状況です。2つ目として、ただいま説明したように、多くの地域枠の医学生が今後臨床研修に入っていく状況から検討したものです。結論から言いますと、右にありますとおり、制度見直しに当たって、最初の臨床研修になる平成27年の県内マッチ数は、恐らく110名を超えるだろうということで、現在の76名より大幅に増加すると見込んでおります。平成29年は115名、平成31年は121名と現行の130名の募集定員をかなり充足していく見込みと県は見ている状況です。
これらを踏まえての課題については、11ページです。1つは「募集定員の確保」が必要ということで、今後臨床研修の増が見込まれておりますので、特に青森県のような医師不足地域に配慮した募集定員を確保していただきたいということです。2つ目としては、「地域枠のマッチングにおける配慮」ということです。大規模な地域枠による臨床研修医の増が見込まれておりますので、地域で、確実に受け入れることのできる仕組みが必要であり、これが課題と認識しております。
そこで青森県からの意見ですが、13ページです。まず、「募集定員について」は、募集定員を定める際にはやはり地域枠を十分に配慮していただきたい。例えば、地域枠の5年次の在学者数や医学部の入学定員に占める地域枠の割合を募集定員の上限の算出要素に加えるなど、地域の従事義務がある地域枠からの卒業生が、当該地域で確実に研修を行うことに配慮した制度設計としていただきたい。その上で、大都市部に研修医が流れないような、全国の募集定員がマッチング申込者数、医学部医学科卒業生実数に近づくようなシステム構築に努めていただければと考えております。
2つ目として、「地域枠のマッチングについて」は先ほど説明しましたように、実は地域枠のほとんどが、これから平成30年4月までのしばらくの間は臨床研修先の指定が条件づけられていない状況が1つあります。もう1つは、地域枠以外の医学生との公平性もやはり保つ必要があるであろうことも考え、また県内での臨床研修という制約があるにしても、マッチング枠内の取扱いでよろしいのではないかと考えております。ただ、何も手だてを講じなければ、恐らくアンマッチが出てくる可能性はあるので、現在のマッチング制度の中でどこまで可能かという課題はありますが、ここに書いてありますとおり、まず個別に本人・病院と相談した上で、お互いに内定とか上位登録などを調整する必要があるのではないかと考えております。また、どうしても地域枠医学生が上位登録されますと、県内の特定の臨床研修病院、特に人気のあるような所から、地域枠以外の医学生が押し出されてアンマッチとなるような可能性もあるので、そうならないような対策も必要と考えております。
県としては、県内の全ての臨床研修病院がフルマッチとなるように、今後も更なる魅力向上などに努め、関係機関と連携して進めてまいりますので、引き続き国においても支援が必要と考えております。なお、地域枠からの卒業生については、この2年後の平成27年度から55名、そして60名と大幅に増加してまいりますので、先ほど言ったような取扱いにするにしても、そのときの状況がうまく機能しているかどうかをきちんと見極めた上で、5年といわず、2、3年後にはまた臨床研修制度の中間的な見直しも必要ではないかと考えております。青森県からは以上です。
○桐野部会長 何か御意見、御質問ございますか。小川先生から何か追加はございますか。よろしいですか。
○小川参考人 はい。
○桐野部会長 次に、東京医科歯科大学の田中先生からお願いいたします。
○田中参考人 東京医科歯科大学の田中でございます。ヒアリング資料-4を御覧ください。今日、私の立場としては都会の大学の臨床研修プログラム責任者ということで、意見を述べさせていただきます。機会を頂きまして、ありがとうございます。
お伝えしたいことは、1ページ目に書いてある3つのことです。医師派遣というのは大学の所在地の自治体を越えて行われていること、大学と一般病院の協調は重要であること、そのためには政策的な誘がは必要であること、この3点です。
次のページを御覧ください。東京医科歯科大学の卒後研修プログラムです。平成23年度からは変わっておりませんので、平成23年度のものを出しております。大きく分けて2つのプログラムがあります。プログラム1は、1年目は大学で基本科をやって、2年目に協力病院に行くものです。(含む大学)とありますが、これはせいぜい5、6人ですので、大半は1年大学、2年協力病院という形になります。プログラム2は逆で、1年目が協力病院、2年目が大学というものです。大きく分けて、メジャー科をやりたい人はプログラム1を取る人が多く、いわゆるマイナー科、つまり一般病院ではなかなか自由選択で選べないような診療科を希望する研修医が、プログラム2を選ぶ傾向があります。このような協力病院の研修は、その下にありますが、基幹型で研修医を取っている病院に協力病院になっていただいております。
スライド番号で言いますと5番になりますが、非基幹型で、単独では研修医は取れない中規模の地域密着型の病院も入っていただいております。このような形のプログラムは、医科歯科大学独自のものではありません。
スライド6になりますが、一般に「たすき掛けプログラム」と呼ばれています。これは、大学病院プログラムに特有の研修方法で、特定機能病院と地域中核病院を1年ずつ経験できる、マグネットホスピタル以外の地域病院でも研修の機会を設定できることが、先ほど実例を示したとおりですが、メリットとされております。大学が1年目、2年目が協力病院という形、協力病院が1年目で、2年目が大学という形でたすきのようになっているので、たすき掛けと言うわけです。国立大学附属病院に所属する大体2,000名の研修医のうち、協力病院で研修するのは1年目も500名前後、2年目も500名前後となっております。ということは、2年間大学にいる者もいるということですが、かなりの数が協力病院に出ているということです。
次のページはマスコミのウェブページから持ってきたものです。いわゆる中間公表の第1位希望者数の大学プログラムランキングです。上位8大学のうち、5大学がたすき掛けを持っているプログラムです。こちらに今日来られている京都大学や京都府立医科大学もそうです。要するに、人気があるプログラムの中にたすき掛けのものが多い。あるいは、たすき掛けがあると人気があるとも言えるかもしれません。
このようなたすき掛けプログラムは国立大学の全てではありませんが、国立大学の中にはかなりこうしたプログラムを持っている大学が多くあります。それが下の一覧表です。大体プログラムの定員の3分の1以上協力病院に出しているプログラムをピックアップしています。御覧いただくと、医科歯科大学はその中でも協力病院に出ている研修医数は多いことが御理解いただけると思います。ほかの大学でも、結構定員の半分ぐらいが出ている所は幾つもあります。
次のページは、医科歯科大学の研修プログラムに例年300名ぐらいが応募しますが、その応募者にアンケートを取って、医科歯科大学の一体どこが良くて応募したのかを聞いてみますと、いつも1位になるのは、「大学病院と地域中核病院を経験できる」という理由です。もちろん医科歯科大学を選んでいるという集団の中での結果ですが、医科歯科大学の指導体制が良いということが1位になるわけではなく、両方の環境が経験できることが、研修希望者にも評価されていることが窺えます。
社会的に見ましても、下にありますが、これからの社会は高齢化がますます進むとともに、必要とされる医療資源は限られていますので、医療資源の効率的な運用が強く求められるようになります。そういう観点からすれば、たとえ専門医であっても、広い視野を持って関連領域を理解することが求められるわけで、それは決して臨床研修が終わってからではなく、臨床研修の段階からでもこのように大学病院、地域中核病院、街の診療所というのを研修することは非常に重要なことであり、意味のあることと考えております。
次のページはスライドの番号11です。ちょっと観点を変えて、都会の大学は研修医を地方から収奪しているという批判が、私どもの所にも届いております。先ほどから、例えば青森県出身の方が青森に残るというお話もありましたが、実際に御覧いただきますと、東京医科歯科大学の臨床研修プログラムの定員は100名を超えますが、そのうちの最も多いカテゴリーは、首都圏高校出身で、首都圏大学を卒業した集団です。それに首都圏高校出身で、地方大学に行った、いわゆるユーターン組を含めると80%を占めるので、決して地方高校で地方大学という人が東京になだれ込んで、少なくとも東京の大学、私どもの大学になだれ込んでいるということではないわけです。
逆に、次のページを見ていただきますと、東京出身者が多いのですが、そういう人たちを周辺の県に研修医に出しているということです。すなわち、協力病院といいましても、東京都の枠は38名で、東京都以外の所、例えば医師不足県でいいますと茨城や福島、長野、静岡といったような所に研修医を出していて、そこで研修の機会を与えております。
その後の研修ですが、専門研修においてもスライド14にありますように、東京都に出ている数と東京都以外に出ている数は、ほぼ等しい数になっております。すなわち関東一円から来た研修医をむしろ外に出して、経験を与えているということです。
これは私は非常に重要なことと考えておりまして、医師不足の環境の中でどういうことが起こっているのかということ、また、その中でどういう医療が行われているかを初期研修の段階でも是非経験させる機会を増やしたいと考えていて、次のページ、スライド15になりますが、秋田大学と島根大学に御協力を頂いて、医科歯科大学の研修医を秋田の山奥の病院や、島根の病院、診療所に出しております。これは非常に人気のあるプログラムで、彼らは東京出身の人あるいは都会出身の研修医が多いので、「外に行くと真っ暗でびっくりした」と言うわけですが、そういう環境の中でなじんで、3か月間研修してくると、たくましくなって戻って来ます。また、「視野が広がった」と言っております。
同様に、このプログラムでは、今日の本筋からずれますが、秋田や島根大学から、都会型のERを研修してもらうために、医科歯科大学でも同じように受け入れております。
17ページです。これは社会的にもインパクトがあったようで、全国紙の一面や地方紙の一面に大きく取り上げられております。それが今も続いております。
18ページです。このような試みに対して厚生労働省から医師派遣加算を頂いているわけですが、この医師派遣加算は、研修医の募集を行う年度の前年度末の時点において、医師派遣等が行われている常勤の医師数が20名を超えると1名ずつ加算されることになっていて、65名以上で10という上限が働いております。ただ、この医師派遣は自圏、自分の大学の県内でも医師派遣ですし、医師不足地域に派遣しても、同じ派遣です。ですので、ひとつ私たちが御考慮いただきたいと思っているのは、そういう医師不足地域への派遣の評価をしていただければと。そしたらますますそのインセンティブがかかっていくことになりますし、それは決して研修医の本来の趣旨に反するものではないだろうと思っております。
スライド19です。この医師派遣加算ですが、先ほど申し上げましたように、65人以上の場合でキャッピングになっています。国立大学の地域医師派遣数は、データベースセンターの調べでは、平均で557人ですので、65人というキャッピングが妥当かどうかということです。では、いったい何人ならいいのか、無尽蔵でいいのかと、それはまた別な議論ですけれども、この65という数字が妥当かどうかというのは再検討の余地があるのではないかと思います。ちなみに医科歯科大学の場合、その指導員の派遣はどうなっているかと申しますと、下を見ていただきますと、やはり東京都が400人ちょっとで、東京都以外が396、同じ400人ぐらいですので、違う所にもいろいろ派遣しております。例えば長野や新潟、栃木、福島、茨城、静岡といった所にも派遣していますので、こういったところも評価していただければと思っております。
次に申し上げたいのは、卒前教育との関係です。今は卒前教育においてはカリキュラムの国際認証評価に耐え得るものに変えるという、全国医学部の方針があり、最も大きく変更が行われるのは臨床実習です。臨床実習で学生がチームの一員となって、より深い実習を行うということですが、そうなりますと「屋根瓦方式」、すなわちすぐ上の人間から教えてもらうということで、臨床研修と臨床実習の一体化がこれから急速に進むし、またその課題となると思われます。そうしますと、大学だけではなく、研修医が派遣されている病院にも学生が出向くということがだんだん現実のものとなってくると考えております。
もう1つの問題は地域枠です。この地域枠は自県の地域枠もありますが、実は県を越えた地域枠もあります。例えば、医科歯科大学の場合は茨城県と長野県。これは研修医を派遣しているからということもあって、地域枠を引き受けたのですが、こういったものもあります。文部科学省の医学教育課にお調べいただいたところによりますと、2013年度で、県外の地域枠は67名いるということです。こういう地域枠も含めて、学生は例えば私どものところでは、卒業した後、茨城や長野にお返しすることが順調にいくように、1年生のときから夏休みに茨城県や長野県の地域医療の現場に実習に出しております。こういうことも含めて、県外での研修は非常に重要なものになっていることをもう一度御理解いただきたいということです。
最後に、既に前の参考人の方からも御指摘がありましたけれども、大学と地域病院のパーセントの割合が毎年公表されて、これはこれで統計資料として貴重なものだと思いますが、大学が減った、一般病院が増えたと、よく二項対立というのが、大学という医療資源を活用する、教育資源を活用する点ではマイナスだと考えています。その理由は下にありますが、これは厚生労働省の調べで、今は4分の1ぐらいの医師が大学と関わらない、個人で専門研修を展開していると考えています。個人でキャリアを作ることは悪いことではないのですが、偏らない指導医、偏らない経験という点では、非常に難しい面があります。更に、4割が女性医師というこの時代において、出産・育児というとライフイベントとキャリアを形成する時期がオーバーラップする女性たちにとってみても、個人の立場でずっとキャリアを作り続けていくのは非常に難しい点がありますので、大学との接点が2年間切れるというのは非常に問題だと考えております。すなわち医科歯科大学でも2年間外で研修する卒業生は一定程度いますが、やはり2年間たつと、なかなか戻りにくい。私たちのほうでは迎えるつもりですが、戻りにくい学生たちがいるということです。
以上まとめますと、まず臨床研修病院群というのが、私は非常に重要なことだと考えています。それには大学と地域病院がもっと協調すべきだろうと考えています。そのためにやるべきこととして、政策的な支援は必要であると考えていて、それは、病院群形成を促す仕組みをやはり考えるべきだと。例えば、具体例でいえば、大学を病院群に組み込むことを義務付けることです。決して大学を中心にということではなくて、大学は協力病院として入ることでも十分だと思いますが、そういったことを義務付けることによって2年間は大学から完全に離れてしまうことがないというようにするべきではないかと考えます。また、医師派遣加算数は派遣数に比例して、少し見直しを考えていただきたいということです。以上です。
○桐野部会長 今の田中先生のお話に質問をどうぞ。
○神野委員 1点だけ確認させてください。医科歯科大学の場合は、さっきのアンケート調査でも、臨床研修のマッチングですが、300何十人受けて、合格するのは100人ぐらいですよね。
○田中参考人 110名です。
○神野委員 110名ですね。全国的にもいちばん高倍率の人気病院ですけれども、先ほどありました茨城と長野の地域枠ですが、ここの地域枠を応募した方々は、この高倍率の大人気の医科歯科大学に自動的に研修ができるわけでしょうか。
○田中参考人 まず、大人気という点についてですが、この競争率が3倍に見えますが、マッチングの最低順位が結構そんなことないということは、要するに300人の方が、別に第1希望で医科歯科を希望しているとは限らないので、実際の実質競争倍率は1.2倍ぐらいだと思います。でも、1倍を超えていることは事実です。
それで地域枠の人たちが医科歯科大学を研修できるかと申しますと、これは茨城県や長野県とのお約束で、それはできないことになっているので、卒業したら茨城県や長野県の研修プログラムで研修することになります。
○桐野部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは最後になりますが、全国自治体病院協議会の酒井先生からお願いいたします。
○酒井参考人 全国自治体病院協議会常務理事で愛知県公立陶生病院院長の酒井と申します。本日は自治体病院の立場から、医師臨床研修の現状と課題について、お話をします。まず初めに、私どもの公立陶生病院の臨床研修の現状から話を進めたいと思います。お手元のパワーポイントの資料、7ページと8ページにありますが、8ページです。私どもの病院、公立陶生病院は愛知県名古屋市の東、名鉄電車で約30分の距離にある、大都市近郊の公立病院です。
私どもの病院は昭和57年に臨床研修指定病院の指定を受けて以来、平成16年の新臨床研修制度の導入に先立ちまして、約40年の長きにわたり、名古屋大学方式による非入局スーパーローテート方式で研修を行い、これまでに400名余りの研修修了者を輩出してまいりました。こうした経験から、新臨床研修制度による研修体制にもスムーズに移行することが可能でした。現在も名古屋大学と名古屋市立大学の関連病院として、両大学と密接な関係を保っています。
資料2ページに戻っていただきますが、私ども名古屋大学関連病院は、名大ネットワークというネットワークを作っています。ここに基本方針を挙げています。この2ページと3ページですが、かつての名大方式研修病院群の流れを受け継ぐこのネットワークは、愛知県を中心とした東海4県の研修病院など70施設が参加する、規模の大きなものでして、研修病院群の情報供有や協働活動を通じて、研修の質の向上に、大変役に立っています。
5ページを御覧ください。当院の研修のキーワードは、「夢と可能性」を最大限に伸ばす環境の提供、それから「屋根瓦方式」の実践です。
9ページを御覧ください。私どもの病院は、救急機能と災害対応機能のレベルアップを図って、急性期医療部門の整備充実を目的に、目下、新病棟を建設中です。本年9月末に完成予定でして、屋上には防災ヘリ対応のヘリポートを備え、三次救急医療機関として、更なる医療水準の向上の実現を目指しています。5年後には、また病院を全面的に建て替えるという計画も立てています。このためにも医師の確保は必要不可欠な問題です。これは、どこの自治体病院でも同じことだと思います。
12ページを御覧ください。当院が取得している施設認定を挙げています。合計で52あります。続いて17ページは、周産期母子センター、そして18ページは「地域がん診療連携拠点病院」関係のがん診療関係の機能を示しています。19ページに、研修理念と研修基本方針を挙げています。自治体病院らしく、理念には地域医療への貢献、そして基本方針には、地域の基幹病院としての役割の理解と、地域医療の現場の体験を挙げています。
当院は新臨床研修制度の導入に先駆けて、平成13年に研修管理委員会を発足させました。総勢70名の多職種で構成される大所帯であるため、少人数で効率的に実務をこなす下部組織としてのアクティブコア委員会を作り、会の実効性を高めることにしました。メンバーは中堅以下の医師を主体とし、研修医を含めた20人程度の構成員から成り、初期研修プログラムに関して活発な議論を行いながら、個々の研修に関する基準や体制の原案を作成して、研修体制の改善・改革に努めてまいりました。更に平成21年からは、研修の充実と学生見学受入れの改善を図るべく、研修管理室に専従の事務職員を配置することを始めました。ここはアクティブコア委員会と並んで、当院研修体制のフロントラインを担う重要な部署であり、国が定める臨床研修制度の遂行を主な業務としています。
20ページを御覧ください。こうした体制整備の甲斐がありまして、NPO法人卒後臨床研修評価機構の評価を、2011年12月9日に受審しまして、翌12年2月1日付で4年間の認定をいただきました。4年間の認定取得は、私たちにとって大きな励みになりました。
21ページに私どもの研修プログラムの実例を挙げています。1年目は内科6か月、外科3か月、救急1か月、麻酔1か月、小児科1か月をローテート研修し、2年目は地域医療1か月、ICU2か月、産婦人科1か月、小児科1か月、精神科1か月、選択科目6か月、これをローテート研修し、平成22年度の国の研修プログラムの弾力化導入以降も、従来のローテーション方式を続けています。
選択科目の組み合わせ等は、研修医の希望を優先し、具体的な割り振りについては、研修医同士で調整してもらいます。その結果、完成したローテート希望表を、各担当科が承認する形式をとっていますので、個々の研修医の希望と、研修科人数のバランスがとれたローテートの作成が可能となっています。
22ページを御覧ください。当院の研修プログラムは、Primary
careとSpeciality研修の融合を目指したものです。専門医への道を希望する場合にも、これは最適な環境を提供しています。
23ページには、16名の初期臨床研修修了者の過去5年間の進路を示しています。約8割の研修医は、引き続き当院での後期研修を選択しています。24ページです。過去5年間の研修医の出身大学を示しました。出身大学は全国に及んでいますが、かなりの研修医は、ユーターン組が多いです。
25、26ページは救急です。救急は研修1年目のみで対応することはなく、26ページにありますが、屋根瓦方式の教育体制実践の場になっています。当直明けには必ず指導医によるチェックが行われ、監査機構と教育体制の両輪を備えています。
27ページには、年間の救急外来受診者数を示しています。外来患者数は年間約3万人、救急車搬送数は6,000~7,000件で、救急診療に参加する研修医にとっては、十分な症例数を経験できます。
28ページは院内で行われる救命救急医療教育でして、ICLSコース、JPTECプロバイダーコースは、1年次研修では全員必須受講です。次の29ページは、各教育コースのインストラクターの一覧です。30ページは救急医療の指導体制、31ページは院内勉強会の一覧です。研修医対象の抱負で充実した院内勉強会は、当院の自慢できるポイントです。特にこの4番の、月に2回行います臨床研究会とCPCは、研修医がプレゼンテーションを行う場でして、プレゼンテーションスキルを磨く場でもあります。それから9番の「研修医のはてな」は、当直での疑問点を解決する場でして、研修医に人気のある勉強会です。
続いて32、33ページです。「ランチョンセミナー」、これは毎週金曜日の昼休み、1時間に開催する勉強会です。見学や実習の医学生も参加する当院の売りの勉強会です。
34ページは、先ほどの臨床研修、CPCの実例です。研修医は年間必ず1人1演題を担当します。35ページは、一般診療と学術研究用の支援ツールも充実していまして、このようなサービスを病院が契約して、院内各部署から閲覧可能となっています。
36ページと37ページは、研修医の寮です。38ページから43ページは、新規採用研修医のオリエンテーション、災害訓練、医局行事としての歓迎会や送別会の場面などです。研修病院の立場から見れば、研修医獲得に次いで重要なのが、初期研修から後期研修に移行する医師をいかに獲得するかです。このためには、初期研修における屋根瓦方式での教育体制を維持しつつも、各専門家のアクティビティーを高めることが重要です。また、後期研修医のモチベーションに合わせた、個別性のある研修への対応も重要です。当院の年間学会発表数は、平成23年度で376題ですが、忙しい日常臨床の合間を縫っての学会活動となっているのが現状です。現場の医師が疲弊せず、実地臨床と臨床研究の両立が可能となるような研修教育体制、事務処理体制、研究支援体制をいかに整備していくかが、今後の課題です。
以上、長くなりましたが、当院の臨床研修の現状について報告しました。内容は補足資料の論文に挙げています。本日の補足資料は、私が編集委員長を務めている全国自治体病院協議会雑誌の昨年秋の「研修医の確保と育成特集」から抜粋したものです。当院のものともう一編、八戸市立病院の今明秀先生が執筆された論文を添付しておきました。自治体病院は、どこも研修医の獲得には、並大抵ならぬ苦労をしていますが、八戸市立では平成17年の定員割れの苦い経験を踏み台に、臨床研修センターの設立、臨床研修センターと救命救急センターの連携による救急ブランド化、広報活動による研修医募集の全国展開などによって、研修医確保に成功されています。当院と八戸市立の研修プログラムは、いずれもスーパーローテートを堅持していることに共通点があります。
このほか、「研修医の確保と育成」特集には、この2病院を含めて合計18病院からの研修医確保・育成に関する報告をいただいています。私たちのように研修医確保に成功している所は、自治体病院協議会の中では少数派でして、大半の自治体病院は大変な苦労と様々な工夫をして、研修医の確保に努力しているのが実情です。
10年目を迎える新臨床研修制度も、多くの自治体病院は医師不足解消や、崩壊に貧した地域医療の再生の解決策とはなっていないと受け止めています。全自病協としては、基幹型臨床研修病院の指定基準のうち、内科、救急部門、地域医療を必須ローテーション科目とし、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科を選択必須科目とする弾力化プログラムについては反対であります。そもそも、「“全ての医師にプライマリーケアを”という理念を掲げて始まった“質の高い医師を育成するための制度”であるはずの臨床研修は、本来の理念と到達目標を達成するためには、7診療科ローテーションを必須とするプログラムに戻すべきである」と考えます。
本日紹介した当院と八戸市立のプログラムをはじめ、多くの自治体病院の研修プログラムは、弾力化導入後も従来の7診療科ローテーションプログラムを続けています。平成22年度の見直しによる基幹型臨床研修病院の指定基準につきましては、全自病協としては特段の意見は出ていません。臨床研修病院群を構成する医療施設としては、自院の関連大学の関連施設とか、県立病院群などの設置母体が同一等のグループ医療施設などにより構成されていまして、まだ近隣の病院同士でのグループとか、いろいろありますが、当院は前述の名大ネットワークに所属する病院群がこれに当たります。これは愛知県に限らず、周辺の3県を含めて、非常に大きな範囲でのネットワークとなっています。
それから、県立病院群としては、岩手県などがその1例ではないかと思います。また、都道府県別募集定員の上限設定については、全自病協としては、これは様々な地域からの病院で成り立っていますので、私どものような愛知県、この激変緩和がこの度終わるというような県におきましては反対意見が非常に強いのですが、実は地方の病院では賛成だという声も聞いていまして、自治体病院協議会としては統一した意見は申し上げることができません。
ただ、今回は愛知県の病院ということでお話をさせていただきますが、先ほど京都からも出ていましたが、この激変緩和が終わると、研修医の定数がかなり減ってまいります。地域医療への多大な影響が出るのではないかと危惧しているのが現状です。できることなら激変緩和措置については、もうしばらく何らかの軟着陸の方式がないか、お願いしたい気持ちでいます。
それから最後に、医師臨床研修には研修教育体制をはじめ、研究の支援体制、事務処理体制の整備充実に多大な費用を要します。臨床研修に対する費用の確保は、研修病院にとっては大きな課題となっている現状に配慮していただき、こうした様々な費用に対する、国からの何らかの財政的支援を望むところです。以上です。御清聴、ありがとうございました。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。それでは酒井先生のお話に、御意見や御質問はありませんか。
○吉岡委員 先生は名古屋大との連携があるということを前提にお話をされていますが、実質的には陶生病院のほうで、全て初期臨床研修は賄っていきたい、あるいは、そのために努力をされているというふうに理解しました。名古屋大学との関連ということと、初期臨床研修を受け入れている先生の病院のお立場とでは、一体どちらが主体なのでしょうか。
○酒井参考人 例えば指導医を派遣してもらっているとか、そういったことは一切ありません。ただ、この非入局スーパーローテート方式というのをずっと長くやっているものですから、先ほど医科歯科の田中参考人が最後のまとめでおっしゃっていましたが、大学と地域の病院が協働するということに関しては、非常にこれはうまくいっているわけです。
非入局ではありますが、うちで研修した研修医のかなりの部分が、名古屋大学に最終的には帰っていっているわけでして、大学の立場と、地域の臨床研修病院の立場が非常にいい関係が保てている。
ネットワークは人の派遣と言うよりは、むしろ情報共有と、何かみんなが力を合わせて、研修に対する活動をするときの協働活動で役には立っています。
○桐野部会長 よろしいでしょうか。それでは、ほかにございますか。よろしければ、これまでまだ十分議論していないことがありますので、従来どおり30分だけ時間をいただくとすると、50分ほどありますので、たっぷりとまでは言わないけれども、一応時間があります。今日はいくつか議論の論点がありますが、研修医の処遇の確保、それから、これは一緒に論じるか、別々にしたほうが問題がありますが、第三者評価、都道府県の役割、制度運用上の問題、3番目に研修の中断、再開、修了です。最後に地域医療の安定的確保ということで、いつもこういう論点に関して、事前に検討されている資料、参考資料の概要等が事務局から提出されていますが、資料の「事務局提出資料1」と「事務局提出資料2」でして、1のほうの15ページに「研修医の処遇等の確保」という、今日の議論の部分があります。ちょっと説明をされますか。
○医師臨床研修推進室長 はい。
○桐野部会長 では、お願いします。
○医師臨床研修推進室長 事務局提出資料1を御覧ください。「中断及び再開、修了等に関する論点」です。従来どおりワーキンググループでいただいた論点整理の上から、本部会でいただいた御意見を盛り込む形で整理をしています。特にアンダーライン部分が、前回の部会でいただいた主な御意見です。お時間の関係もありますので、本日御議論いただきたい項目を中心に御案内いたします。
部会長からも御案内がありましたが、15ページを御覧ください。「以下、今回の御議論部分」とありますが、今回の主たる項目については、一番最初の議題にもありましたとおり、中断・再開等です。
ただ、前回の部会におきまして、議題に挙げておきながら、お時間の関係で十分に御議論を給われなかった項目がいくつかあります。そのうちの1つが、ここに掲げています、5)研修医の処遇等の確保等です。これにつきまして、また改めて御案内を申し上げます。
まず、この処遇等の確保については、現状、指定基準として、研修医に対する適切な処遇を確保していることが定められていますが、論点としては、まず給与・手当の面では、この研修医の給与・手当の状況についてどう考えるか。あるいは、労働環境については、研修医の労働時間の状況(当直回数、あるいは当直明けの連続勤務等を含む」についてどう考えるかということが挙げられています。
本部会におきましても、16ページの上のほうですが、アンダーライン部分。前回、小さな病院でも医局員や研修医、事務職員、他のスタッフの集まる場所をワンフロアに配置し、研修医が研修の合間に、様々な職種と交流することで、診療内容だけでなく、病院全体の仕組みや、病院の活動そのものを理解してもらうような工夫をしている例もある、というような御発言がありました。
その下のほう、「以下、前回御議論部分」につきましては、この点については前回御議論いただいたところ、病院郡の形成です。これは割愛をさせていただきます。
次の17ページ、一番下のほうです。ここから、また「今回の御議論部分」とありますが、これも前回議題としながら、十分御議論をいただけなかったものでして、マル2「第三者評価」です。
次の18ページですが、現状としては、現在、指定基準として、「将来、第三者による評価を受け、その結果を公表することを目指すこと」とされています。この上で論点としては、この第三者による評価の在り方についてどう考えるか。特に第三者評価を、無作為抽出での訪問調査により行うことについてどう考えるか、ということが挙げられていまして、本部会においても前回、「第三者評価については、現在よりも強い意味での努力目標とし、最終的には研修病院に第三者評価を義務付ける方向とすべきではないか」といった御意見をいただいています。
その下のマル3「都道府県の役割」についてです。現在、指定基準としては、地域医療の確保のための協議、あるいは施策の実施に参加するよう都道府県から求めがあった場合には、これに協力するよう努めることとされています。また、都道府県は、管轄する地域における各病院の募集定員について、各病院の研修医の受入実績、あるいは地域の実情等を勘案して必要な調整を行うことができるとされています。更に、都道府県等において、臨床研修に関して関係者が協議する場、いわゆる地域協議会を設けまして、臨床研修の質の向上ですとか、研修医の確保等について、協議、検討することが望ましいとされています。その上で論点としては、地域協議会の活用の在り方を見直す等、都道府県の役割、あるいは権限の明確化を図ることについて、どう考えるかという論点が挙げられています。
19ページの下のほうですが、制度運用上の問題です。これは当初、部会からサジェスチョンをいただいたものですが、現行では研修医の受入実績が2年間なかったことによって、指定を取り消された病院が、翌年すぐに再申請をすることが可能となっています。また、指導医講習会については、翌年度の受講予定の段階で申請されている場合があります。その上で論点としては、この基幹型臨床研修病院の指定に係る再申請について、受入実績が2年間なかったことにより、取り消された病院の再申請の在り方について、どう考えるか。
次のページにまいりまして、協力型臨床研修病院について、研修医の受入実績がない場合の指定の取扱いについて、どう考えるか。指導医講習会については、この受講と指定申請の時期との関係について、どう考えるかといった論点が挙げられています。
20ページの中程です。大きな3.として、「中断及び再開、修了について」、ここからが本来、本日御議論いただきたい項目です。現状としては、まず、臨床研修の中断です。この中断は、研修プログラムにあらかじめ定められた研修期間を、途中で臨床研修を中止することでして、原則として病院を変更して研修を再開することを前提としています。
一方、未修了ですが、こちらは研修期間の終了に際する評価において、修了基準を満たしていないなどの理由によりまして、管理者が当該研修医の臨床研修を修了したと認めないことを言います。原則として、引き続き同一の研修プログラムで研修を行うことを前提としています。
それを踏まえまして、論点としては、研修の中断者のうち病気療養が約半数を占め、かつ研修の再開割合が低い傾向があることについて、どう考えるか。あるいは研修医に対するメンタルヘルスの面からのケアの必要性について、どう考えるか。研修中の妊娠・出産等への対応や障害を有する研修医への対応について、何らかの具体的な方策を考える必要があるかといったような論点が挙げられています。
次のページ。本部会においても、これまで中断者、特に女性の中断者の扱いについて、丁寧に議論する必要がありますとか、あるいは女性医師への対応、妊娠・出産後の育児のサポート等は大変重要であるといったような御意見をいただいているところです。
21ページの中程、「その他」ですが、1)地域医療の安定的確保、この項目は他の様々な項目、例えば募集定員の設定とか、地域枠の取扱い、病院群の形成などを、地域医療の視点から、いわゆる横串を刺す性格のものです。したがいまして、主な御意見についても全て再掲の形になっていまして、例えば前回の部会においても、23ページのアンダーラインの部分、これが前回御意見をいただいた部分ですが、例えば上のほうですが、激変緩和措置については、予定どおり廃止すべきとか、都道府県別の募集定員の上限については、人口の分布や高齢者などを勘案したスキームで、漸次、定員と受入実績の差を縮めていく必要があるのではないか。あるいは、少し飛びますが、中程で、地域枠の学生も、基本的にはマッチングの枠内とすべき。ただし、都道府県内で微調整できる仕組みの検討が必要ではないか。あるいは、地域枠をマッチングから外すこととなると、様々な意味でのクオリティ・コントロールができなくなるのではないか。あるいは下のほうにまいりますが、地域や病院の規模というよりも、どのような内容の病院群であるかが重要であり、例えば、第三者評価などで、病院群全体の研修体制として評価していくことが大切ではないか、といったような御意見をいただいたところです。
資料1の御説明は以上ですが、引き続き資料2の御説明を申し上げます。事務局提出資料2「各論点に係る参考資料の概要(中断及び再開、修了等)」です。諸々のデータ等の参考資料については、別にお配りしている紙ファイル、先ほども御案内した紙ファイルに一括してまとめていますが、そのうち今回の論点項目に係る部分について、その概要をまとめたものです。これらは全て紙ファイルに盛り込まれていますので、ここでの御説明は割愛させていただきます。ただ、それぞれのページの末尾に括弧書きで記載しているページ番号ですが、これは今回、紙ファイルのページ番号を改めて全部振り直した結果、完全に一致していない所があります。申し訳ありません。次回以降、十分に整理した上で、改めて御案内したいと思っています。
続いて資料4、最後の資料を御覧ください。「今後のスケジュール(修正案)」です。これは枠で囲った部分について、上からずっと下げてきていまして、今回は本日6月27日の論点を掲げています。この後、7月、8月と続きますが、前回の部会でも申し上げましたとおり、8月以降については、できれば月2回程度のペースで部会の開催をお願いしたいと考えているところです。事務局からの説明は以上です。よろしくお願いします。
○桐野部会長 早速御意見を頂きたいと思うのですが、いろいろと錯綜しているので、「中断及び再開、修了」ということと、「地域医療の安定的確保」については、これまで余り議論されていないので、しっかり御意見を頂くことにして、研修医の処遇等の確保の問題について、何か御意見はありますか。
○小森委員 この問題は相当議論されたものと思っているので、次のステップに移るのかと思って、意見を述べます。強制的にある額に統一するのは、なかなか難しい問題があると思います。とはいえ、今まで議論したことで、720万円以の施設に対しての措置として上カット率がある。その方式をするのであれば、それは厳しい基準にすべきだと。また、逆に諸手当のあまりに貧弱な施設に対しては、指導、監督をきちっと行うことの2点は、既に具体的な検討の場面にもなっているのではないかという認識です。
○桐野部会長 第三者評価についても、これも相当やりましたよね。都道府県の役割、制度運用上の問題、この3つについてはいかがですか。いずれにせよ、一度全体の意見を伺った上で、報告書のたたき台を作って、それについてかなり詳しくまた戻って議論していただくという順番になると思いますが、まずは全く今まで御議論のサブジェクトになってなかったことを一つずつやっている段階です。また、第三者評価についても、そういう方向で努力する目標として考えたほうがいいということと、最終的には第三者評価をきちっと受けなければならないという方向で考えたらどうかという意見だったと理解しています。都道府県の役割については今まで余りやっていないように思うのですが、何か報告書に盛り込んでおくべき素案として都道府県の役割という御発言はありますか。
○神野委員 第三者評価ですが、これは前回からお話しているとおり、先ほど陶生病院にありましたような研修病院のみの評価事業も大事だと思うのですが、その前に一般的には病院機能評価でも、今、新しいバージョンでは臨床研修機能のことも書いてあるので、せめてそれぐらいは努力目標にしてもよろしいのかというのが現実的なのかと思います。
2番目の都道府県の役割ですが、実際に先ほどのプレゼンテーションでも、青森の例でして、地域協議会の機能とかがありましたが、例えば実際に地域の偏在があったときに、県庁所在地の大きな病院から1人剥がして地方に持っていけるかどうか、より過疎地域に持っていけるかどうか。それを都道府県にお願いできるかどうかという機能については、地域協議会の構成員によると思うのですが、実際にそれを地域に任せて果たして地域が対応できるかどうかは、ちょうど青森と京都の方がいらっしゃいますので、行政の立場で御意見をいただければと思うのですが。
○桐野部会長 今日お話いただいた先生方の中からも御意見があれば、どうぞ。
○藤本参考人 現行でも地域医療対策協議会の中でそういう議論はされたことがありまして、実質的に県でできるかとなると、多分、県単独ではできないと思っています。結局、これは各地域に大学、医師の育成機関があって、そこでは地域の派遣機能を持っている所もあるから、強制的にやるとすれば、大学もそれに従うのだとか、そのようなものが担保されればできますが、恐らくそういうことが今、現行法制上はまだできていないし、過去に、もしやるのであればそこまでやってくれという要望を出したことはありますが、実際はなかなかそこまで行っていないという状況になっています。
○横田参考人 私はやるべきだとは思いますが、やるためには、お互いの信頼関係が重要で、今はまだ十分に熟成されていないと思うので、そういうものを十分つくった上でやるのであればいいのかと思います。今、厚生局などがすべての臨床研修病院の定数を決めていますが、それだから何とか話がまとまるという所もあります。
○小川委員 行政で主導して強制的に医師を配置するのは、医師に関しては難しいのではないかと私は思います。なぜかというと、医師の場合には、診療技能があって、一応、診療技能評価をして、その上で配置をしなければ、むしろ地域住民に大変な健康被害も含めて御迷惑をおかけすることになる。ということになると、きちんとした個々の医師の診療技能評価をした上でやることになるとすると、これは医局がそこに絡まないと到底無理な話だと私は思っています。
○桐野部会長 今の問題を詳しくやっていくと、相当あれですね。大体、地域のいろいろな調整は、どこかが全部司令塔みたいにしてやるのも、なかなか難しい実情があるのだと思うので、そこは現状の地域医療支援センターみたいな所が十分調整をすることだろうと思うのです。具体的には、初期臨床研修だけの問題ではないので、まだ踏み込んだ議論はなかなかしにくい。制度運用上の問題は、指導医とか、この問題だったですよね。指導医の研修の修了と認定の問題で、これは指導医は、現状では相当な数、既に養成。
○医師臨床研修推進室長 約4万3,000人が個別にあります。
○神野委員 これも何回かお話しましたが、今は必須であるべきだし、逆に、ここに出ていませんが、プログラム責任者の講習もありますよね。プログラム責任者の講習も、これは「努力義務」か何かで一言入れておいたほうがよろしいのではないかと思います。
○桐野部会長 だんだん時間もなくなってきたので、次に進んでいいですか。もちろん大きな問題は、また戻って議論することになります。「中断、再開、修了について」、これはこれまでの特に女性の中断の問題が1つと、メンタルヘルスケアが必要となる場合の問題、この2点だったと思うのですが、何か。
○小森委員 この前ある研究を拝聴したのですが、このなかで研修中の女性医師の避妊率が非常に高いということでした。女性の研究者が女性同士でも調査した結果ですした。女性の妊娠・出産は、一般の疾病とは全く異なりますよね。臨床研修ということの視点から、中断、再開を、例えばメンタルヘルスと女性医師の妊娠・出産を同率に論じられているのは、極めて問題だと思っています。それ以上の理由は時間の関係で申し述べませんが、そのあたりについての特段の御配慮をお願いしたいと思います。
○神野委員 1点。私は理解していなかったのですが、「中断」の後は、資料1の(現状)の上の○ですが、「原則として病院を変更して研修を再開することを前提としている」という一言があるわけですよね。今の女性医師の出産の場合、あるいは、たとえメンタルだとしても、十分に治療して、また復職するということを考えると、「原則として病院を変更して研修を再開する」ということについては、私はいかがなものかと、もう1回検討を要するのかと思います。そういった意味では、研修も大学の単位みたいな形で、これだけのコマ数をやって、あと残り、例えば半年分は「中断」をもう1回やるといったプログラムがあってもいいのかと思います。
○臨床研修指導官 今の神野先生の御意見に関して、補足です。「中断」は、原則は御自身の病院では引き続き研修ができないものを想定していますが、原則です。一方、当初からお休みはなされるけれども、自身の同じ病院で復帰されることを前提としているのであれば、下にある「未修了」という別の手続があり、そちらで処理されている病院が多いのかと考えてはいます。
○清水委員 私も以前からずっと不思議に思っていたのですが、参考資料の大きい数字の63ページの「中断の理由」で「妊娠・出産・育児」というのがあるのが、なぜこの「中断」に入ったのだろうかという理由を知りたいと思っていたのです。今おっしゃったように、通常でしたら、例えば日数の問題で未修了になるのが当然かと思うのですが、なぜ「中断」に入った方がおられるのか、理由がもし分かりましたらお教えいただきたいと思うのですが。
○医師臨床研修推進室長 先生が御指摘のとおり、63ページに「中断の理由」として私どもが把握している範囲で項目を分けた中に、妊娠・出産が入ってきています。これは先ほど来申し上げているとおり、原則は別のプログラムで再開をすることを前提にしたのが「中断」であって、別のカテゴリーとして「休止」という、90日まで2年間の中にカウントできるものもあって、本来はそちらのほうで妊娠・出産もカウントできるようにはなっているのですが、「中断」については、妊娠・出産を理由とする中断をしてはいけないというところまで言っていないものですから、原則論だけであって、中の理由を伺うと、こういう形で一部妊娠・出産・育児が出てくるということです。
ですから、そこは運用上がっちり分けているわけではなくて、そういうものが出てきているという状況です。さらに、先生がおっしゃったように、なぜ「中断」の理由の中に妊娠・出産がこうやって出てくるのかまでは調べていないものですから、私どもで挙がってくる分についての整理だけです。
○清水委員 いろいろ類推するに、恐らくこれが「中断」に入ってくる理由として、お子さんを持っていると研修がその病院ではしづらいとか、例えば育児の保育所の問題とか、そういうものがあるのではないかという気がしたのでお聞きしたのです。現実にそういうことがあるのでしたら、そういうサポート体制をきっちりとっていただいて、女性も同等にキャリアが継続できる方策をつくっていただくのがいいかと思いましたので、理由をお聞きしました。
○中島委員 以前は女性の委員がいなかったのですかね。それでこうなったのではないかと思うのです。これは小森先生がおっしゃったように、章立てを変えてしまうことをきちっとやったほうがいいのではないかと思います。そうしないと、あくまで障害と同等に扱われているように女性が感じてしまうことは、当然あるわけですから、そこははっきりされたほうがいいのではないかと思います。
○桐野部会長 確かに、今、中島先生が言われたような配慮をプログラムの中にするのが望ましいぐらいのことは、言う必要があるのではないかと思います。あと、メンタルケアについては、これはどのような職場であってもメンタルヘルスに配慮するのは常識ですので、特に研修医は初めて学生を終了して、つまり幸せな学生時代から厳しい研修時代に突入するのですから、メンタルヘルスの問題が起きやすい状況にあるのですよね。だから、それは配慮すると。では、具体的にどうなのだと言われても、あれですが、これはどこもされているとは思うのですが。
○清水委員 今の点についても、社会的にも未熟で職業人としても未熟な研修医が受けるストレスは結構なものがあって、それは恐らくどの職業でも同じかもしれませんが、医師という職業上大きいものがあるのかというのが予測されるので、そういうときにプログラム責任者はきっちりとそこをメンタルヘルスも含めてフォローするという体制が、研修病院には必要かと思っていて、そういう意味でプログラム責任者もプログラム責任者講習会を受けるなどの処理をして、きちんと立場というか責務をはっきりさせていただくといいのかと思っています。
○神野委員 ちょっと別の視点で。そうすると、「中断」は、例えば、本当に指導医と全く合わなかったとか、お互いに全く相容れなくてデボースしてしまうものを想定しているのが「中断」ですよねということです。もちろん、「中断」に対しての道を残しておくというか、何が何でも2年間我慢しろというわけにはいかないと思います。私どもも、実はよそで全く合わなくて、本人も相当メンタルがおかしくなったのを、厚生局は違いましたが、たまたま定員が空いていて受けたことがありますが、場所を変えたらいきいきしていたという事例も経験しています。一応「中断」は置いておかなくてはいけないけれども、これは結構特殊なケースであるという認識が必要なのかと思いました。
○桐野部会長 「中断」は1.数パーセントだったと思うのですが、それでも数から言えば1つの医学部全部が該当するぐらいの数で、これはできるだけきちんと修了に持っていける配慮ができればと思います。どうしても無理な人もまれにはいるかもしれませんが。もし御意見がなければ、地域医療に移りますが。
○中島委員 簡単に申し上げますと、特にメンタルヘルス等での中断が起こった場合に、各地域で後をきちっとみる病院を指定しておかれたほうがいいのではないかと。そこまで言うかどうかは別として、何らかの仕組みをつくっておかれたほうが指導医もやりやすくなるのではないかと思います。再開率は、30数パーセントが再開できていないということですが、余りひどく神経質にならなくても、どうしても駄目な人は駄目なのですから、それはそれでいいと思ってやったらよろしいと思います。
○桐野部会長 研修医が少なくとも研修のメンバーである限りは、各病院の研修医の担当者がまあまあ見ていると思うのですが、その後どうなったかというフォローは、確かに十分ないかもしれないですね。やはり中断者などは、きちんとフォローしないとならないのだろうと思いますが。
「地域医療の安定的確保」の問題に移りたいと思います。これもいろいろな論点がありますが、今まで随分議論したことが多いと思います。激変緩和と地域枠の問題が相当出て、以前に激変緩和についてはもうしないと。地域枠については、いろいろな御意見が出て、マッチングの中に含めて、地域枠以外の学生と同じ条件でやって、それで不都合は余りないのではないかという御意見だったと思いますが、これについては。
もう1つ、教育的に言って、卒業して研修病院を選ぶときも、全く別コースで全然違うというのはどうかという意見もあったと思います。もう1つは、地域枠は、全国統一ルールというよりは、完全にローカルルールになっていて、それぞれの県が独自のお考えでやっておられるので、本質的にこう考えるというのもなかなかやりにくいところがあり、恐らく県としては、あるいはそれぞれの病院の先生方にとっては、必ず当該県に、あるいはある一定の病院に研修医が行ける仕組みが必要だというお考えは分かるのですが、今のマッチングの中に入れて、それができないという理由もよく分からないと思います。
これまでの議論は、地域枠についてはマッチングの中で各県でいろいろ工夫をされれば、マッチング制度の外でやる理由がよく見つからなかったということだったと思います。それにマッチングは、大部分の人が、ほとんど全てに近いぐらいの人が参加して、マッチングに参加する病院側も全てをマッチング枠内から採用すること。それで、一度マッチングが全部終了した後で、アンマッチというかノーマッチになった方については、後で2次募集という救済の方法もあるし、いろいろなことがあるということだったと思いますが、これはよろしいですよね。
○吉岡委員 正に先生のおっしゃることが基本的なことだと思っています。都道府県によっての事情は恐らく千差万別、今おっしゃった地域枠とか県費奨学生のいろいろな縛りも千差万別。そうなると、協議会が調整することをもう少し強化して、皆さんの同意のもとに、協議会が微調整をやれるような権限とまではいきませんが、同意というかコンセンサスを得る努力をするしか、細かいところの調整は無理だと思うのです。あとは都道府県レベルでの微調整をどういう形で行うかを、それぞれに工夫していただくしかない気がします。
○桐野部会長 この問題は、結局、最終的には、各県の採用上限の数を決めて、これでいきましょうという話になるのだと思いますが、前からここでも議論していただいているように、数を最初に出してしまってから、どう調整しようかという議論をし始めると、後出しジャンケンみたいになって、議論が紛糾して、何が何だか分からなくなるので、原則をきちっと決めて、その原則に従ってやれば、もちろん下一桁の小さなところまでは難しいけれども、大体の枠、つまりどれぐらい激変しても構わないのか、それとも激変緩和をとった後で非常に大きく変わる県がありますが、そういう県をどういう扱いにするかなどは、それぞれいろいろな考え方があるのだろうと思うのです。
○中島委員 1つ、地域枠の問題は非常に大きくて、差し当たりは今の形で行っていいのではないかと思うのですが、長い目で見たときに、地域枠をどう考えるかは、国のレベルできちんと決めないといけないと思うのです。都道府県に丸投げという形でやっていくのは、いくら地域主権とはいいながら、行き過ぎということで、どの程度の地域枠を持ってもよろしいということを国がきちっと言うべきですよ。今は地域主権を盾にとって都道府県に丸投げ、都道府県は訳が分からないから下に丸投げ、結局、誰も責任をとらない体制ができている気がするので、研修制度でそれをやってはいけないと思います。地域枠の考え方はどう考えるのですよ、ということを国がきちんと示したほうがいいのではないかと。ただ、その示し方にはいろいろ工夫がいると思います。よろしくお願いします。
○桐野部会長 医師不足が全国で厳しいということがあって、10年間の時限的な措置で定員枠をかなり拡大したのです。その頃から各県が地域枠をつくられている。その前から一部あったのではないかと思うのですが、つくられている。だから、歴史的にいろいろな県がいろいろな時点でスタートしているので、最初から多様性があったのです。ですから、例えば、○○県の国立大学が、国立大学であるけれども、地域の医師確保がすごく大変だから、全部地域枠にするなどという判断はいいのかという問題も出てきますよね。
○医師臨床研修推進室長 地域枠については、これまでも大分いろいろな観点から御意見を賜りました。何度か繰返しになって恐縮ですが、今の時点で地域枠がどういうものがあるのかは、今日も冒頭御案内申し上げたとおり、今となってはいろいろなバリエーションがあります。もちろん、それは地域枠というやり方は、当初、各大学で自主的に御自身の都道府県あるいは大学の中で設定をした入学枠として始まっていて、これが我々の平成20年度以降ですが、政府として医学部の定員増をすると、文部科学省もいらっしゃいますが。これは緊急医師確保対策として平成20年度から始めた。
この後、医学部定員増を伴う地域枠が定着をしていっていると。こういう中で地域枠が、定員増に伴うもの、伴わないもの、各大学で自主的にやっているもの、あるいは財源の振出元が都道府県であるもの、各大学自身であるもの、いろいろあるものですから、これを今の段階で地域枠を定義するのはなかなか難しいのかとは思っているのです。ただ、一方で、臨床研修制度の中で地域枠を定員あるいはマッチングシステムの中でどう位置づけるのかと。その場合の地域はどういう枠組かは、ある程度整理が必要であろうと考えています。
○桐野部会長 青森県の例でおっしゃっていましたが、今後、地域枠の効果が、今度から、来年度以降に地域枠の学生の数がだんだん増えてくると思うし、定員増をした数も来年以降に出始めることがあって、大体、全部でかつての7,700人ぐらいの時代から2,000人近く医学部の卒業生の数が増える、地域枠も相当数出ると。それが地域医療にとってどういう効果があるのか。結構効果があって、青森県が期待しておられる所まで行くのか、それとも、県によっては非常に難しいのかは、まだ我々は知らないのです。よく分からない。それが結構うまく回って有効であるということになれば、しばらく続けてみようということになるのでしょう。そうなると、初期臨床研修のいろいろなものも変わってくる可能性があるので、個人的には少しその効果の様子を見ながら、除々に見ていかないと、ここで数の変更をドラスティックにするのは、なかなか難しいのではないかと思いますが。
○神野委員 臨床研修と離れてしまうと思うのですが、人口の少ない県で医学部に行こうと思う高校生と、人口が非常に多い県で医学部に行こうと。同じ学力があったとしても、地域枠という制度を利用すると、人口の少ない県のほうが、もしかしたら相対的に低い学力でも医学部に入れる可能性があると。その卒業生が地域枠で出てきたときに、どういう医者になっているかは、これからの評価だし、それをどういう指標で評価するかは大変難しいですが、でもそれを評価していくのは私たちの役割であろうと思います。
同時に、ただ地域枠の学生は、多くは地域のへき地とか、いろいろな所で病院の臨床医として働くという前提であります。ただ、6年間の医学部教育の中で、もしかしたら私は研究者に向くかもしれないし、京都大学へ行ってiPS細胞をやりたいと思うかもしれない、移植をやりたいと思うかもしれないけれども、それはやれないのです。そういった矛盾はこれから一杯出てくる気がします。その子たちをどう救済するか、また、ここでも研究者をどうするかという話が出てくるかもしれませんが、これから考える必要があるのかと思いました。
○小森委員 地域枠の問題について、ワーキングでもデータを出してほしいというお願いをして、ちょうど文科省もいらっしゃっておられましたが、不十分なデータしか出ないのです。ここは臨床研修の部会だから余り議論を拡散したくないので申し上げていませんが、今、神野委員もおっしゃられたことを含めて、恐らく全ての方が思っている。地域の医療の確保のためにこのことは極めて大きな問題なので、文科省ともしっかり協力をして、報告を義務付けて、分析をして、国としても今後のことについて、別途そういう検討会をしっかり設けて考えていくべきだと思います。
○桐野部会長 その他に地域医療の安定的確保の問題はいろいろあるとは思いますが、いかがでしょうか。重要な問題ですので、またもう一度立ち返って議論することになると思いますが、大体時間になりましたので、今日はこれぐらいにして、また次回以降にお願いしたいと思います。最終的には、この部会としての意見、これはここで何をまとめようとしているのかという素案をここに持ってきて、それについて御意見をいただかないと、この議論もなかなか盛り上がってこないというところがあるので、もう1回だけこういう審議をずっとやってきて、その次からはたたき台を作った上で、それに御意見をいただくと、そういう審議方法になってくると思います。夏休み明けぐらいに、いよいよもっと具体的なことをお考えいただくことになるのではないかと思いますが、大体そういう予定ですね。本日はここまでにします。事務局からどうぞ。
○医師臨床研修推進室長 次回の部会は7月を予定しています。日程が確定し次第、また改めて御案内をします。よろしくお願いします。
○桐野部会長 どうもありがとうございました。
※ 照会先
厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室
直通電話: | 03-3595-2275 |
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